生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_噴霧乾燥による菌体乾燥物
出願番号:2002181207
年次:2006
IPC分類:C12N 1/00,A23L 1/28,A23L 1/30,A61K 9/20,A61K 35/74,A61P 1/14,A61P 3/02


特許情報キャッシュ

水口 泰治 荒井 輝彦 平山 耕一 JP 3824312 特許公報(B2) 20060707 2002181207 20020621 噴霧乾燥による菌体乾燥物 ビオフェルミン製薬株式会社 391015351 岩谷 龍 100077012 水口 泰治 荒井 輝彦 平山 耕一 JP 2000133307 20000502 20060920 C12N 1/00 20060101AFI20060831BHJP A23L 1/28 20060101ALI20060831BHJP A23L 1/30 20060101ALI20060831BHJP A61K 9/20 20060101ALI20060831BHJP A61K 35/74 20060101ALI20060831BHJP A61P 1/14 20060101ALI20060831BHJP A61P 3/02 20060101ALI20060831BHJP JPC12N1/00 NA23L1/28 ZA23L1/30 ZA61K9/20A61K35/74 AA61P1/14A61P3/02 C12N 1/00 特開平10−057031(JP,A) 特開平08−281155(JP,A) 木村進編,乾燥食品事典,株式会社朝倉書店,1984年,p.71-81 7 2000339267 20001107 2003033173 20030204 22 20030109 田村 明照 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、噴霧乾燥を用いた菌体乾燥物の製造方法および該製造方法により得られる菌体乾燥物、ならびに該菌体乾燥物を含有する医薬または食品等の組成物に関する。【0002】【従来の技術】医薬や食品の製造工程おける乾燥方法としては、凍結乾燥または真空凍結乾燥が多用されている。凍結乾燥は、液体窒素等を使用して約−20℃〜−160℃程度の低温で乾燥させる方法であり、真空凍結乾燥は約35℃以下、約50〜400hPa程度の圧力下で乾燥させる方法である。【0003】しかし、乳酸菌や酵母等の菌体、またはそれを含む医薬もしくは食品等の組成物の製造工程において、乾燥方法として凍結乾燥または真空凍結乾燥を採用した場合、乾燥時に菌体が死滅し、また損傷を受けるという欠点があった。これは、凍結乾燥または真空凍結乾燥において凍結温度に達するまでに長い時間を要し、その間に生成される菌の代謝物や凍結プロセスにより菌が障害を受けるためである。特に、真空凍結乾燥は乾燥速度が極めて遅く、医薬または食品中の水分を全て除こうとすると乾燥時間がさらに長くなるため、上記問題がより顕著となる。【0004】また、凍結乾燥または真空凍結乾燥を行うには、非常に大規模な設備が必要であり、その設備投資にも多大な費用がかかる。さらに、乾燥方法として凍結乾燥または真空凍結乾燥を採用すると、連続工程により製造するのが難しくなるため、製造工程が煩雑になる。また、凍結乾燥または真空凍結乾燥の後さらに粉砕および均質化等の工程が必要となるため製造工程が多くなり、その間の菌死滅も問題となる。凍結乾燥または真空凍結乾燥については、このような問題点が指摘されていた。【0005】一方、乾燥方法としては、凍結乾燥または真空凍結乾燥以外にも、噴霧乾燥が知られている。噴霧乾燥は、液体を微粒化装置により液滴にし、その液滴に比較的高温の乾燥風を接触させることで水分を蒸発させ乾燥させる方法である。しかし、従来の噴霧乾燥は、乾燥風の温度が高く、乾燥風の熱により菌体が死滅してしまうことから、一般に生菌を含む医薬または食品の製造には適さないとされていた。また、この問題を解決しようとして乾燥風の温度を低くすると、十分に乾燥した菌体乾燥物が得られず、収量および安定性が共に落ちるという欠点があった。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、菌体乾燥物またはそれを含む医薬もしくは食品等の組成物の製造工程において、菌体の死滅または損傷を極力抑え、生菌率を高く保持できる菌体液の乾燥方法を提供することにある。本発明の他の目的は、単位重量あたりの菌体数が多く、また医薬または食品として成形しやすいシングルミクロンサイズの菌体乾燥物を提供することにある。本発明の更に他の目的は、製造工程を大幅に簡略化することができる菌体組成物の製造方法および該製造方法に係る装置を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討した結果、シングルミクロンの噴霧液滴を乾燥風で乾燥することにより、従来の噴霧乾燥における問題点を解決できるという知見を得た。すなわち、従来の噴霧乾燥装置において形成される噴霧液滴は約10〜40μm程度であったのに対し、これがシングルミクロンという非常に小さな噴霧液滴になると、噴霧液滴の単位重量あたりの表面積が大きくなるので、乾燥風との接触が効率よく行われる。したがって、従来の噴霧乾燥と同程度の温度の乾燥風により乾燥させた場合、菌体液の乾燥に要する時間が短くなり、菌体の死滅または損傷を極力抑えることができる。また、乾燥風の温度を従来の噴霧乾燥における乾燥風の温度より低くしても、収量または安定性を落とすことなく十分な乾燥を行うことができ、また乾燥風の温度が低いので乾燥風の熱による菌体の死滅または損傷を極力抑えることができる。【0008】また、本発明者らは、シングルミクロンの噴霧液滴を乾燥風で乾燥することにより得られる菌体乾燥物は、その粒径が小さく、シングルミクロンサイズの粒子を含んでいることを知見した。粒径の小さい菌体乾燥物は、圧縮成形等の際に菌体にかかる圧力が少なくて済み、また静電気も起こりにくいなど、錠剤等の剤形の医薬または食品に成形しやすいという利点がある。【0009】すなわち、本発明は、(1)シングルミクロンの菌体乾燥物、(2)生菌数が1.0×105〜2.0×1012CFU/gであることを特徴とする前記(1)に記載の菌体乾燥物、(3)生菌数が1.0×1011〜2.0×1012CFU/gであることを特徴とする菌体乾燥物、(4)菌体が、ビフィズス菌、乳酸桿菌、乳酸球菌、有胞子性乳酸菌、糖化菌、酵母、麹菌、放線菌、Bacillus toyoi、B.licheniformis、酪酸菌、酢酸菌またはアミノ酸発酵菌である前記(1)〜(3)に記載の菌体乾燥物、(5)前記(1)〜(4)に記載の菌体乾燥物がさらにコーティングまたはマスキングされていることを特徴とする菌体乾燥物、(6)シングルミクロンの噴霧液滴を乾燥風で乾燥することを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の菌体乾燥物の製造方法、(7)シングルミクロンの噴霧液滴が4流路ノズルで形成されることを特徴とする前記(6)に記載の菌体乾燥物の製造方法、(8)乾燥風が乾燥室の入り口において5〜150℃の温度であることを特徴とする前記(6)または(7)に記載の菌体乾燥物の製造方法、(9)液状のコーティング剤またはマスキング剤と菌体液とを同時に噴霧して噴霧液滴を形成し、該噴霧液滴を乾燥風で乾燥することを特徴とする前記(5)に記載の菌体乾燥物の製造方法、(10)2本の液体流路と2本の気体流路を有する4流路ノズルにおける一の液体流路から菌体液を供給し、他の液体流路から液状のコーティング剤またはマスキング剤を供給し、2本の気体流路から圧縮気体を供給して生じた噴霧液滴を乾燥風で乾燥することを特徴とする前記(9)に記載の菌体乾燥物の製造方法、(11)粉状物と結合剤を用いて流動層造粒を行う工程と、噴霧乾燥によりシングルミクロンの菌体乾燥物を得る乾燥工程とを、同一容器内で行うことを特徴とする菌体組成物の製造方法、(12)粉状物と結合剤を用いて流動層造粒を行う工程と、噴霧乾燥によりシングルミクロンの菌体乾燥物を得る乾燥工程とを、同一容器内で行うことを特徴とする装置、(13)粉状物と結合剤とからなる造粒物に、シングルミクロン菌体乾燥物が付着していることを特徴とする菌体組成物、(14)前記(1)〜(5)に記載の菌体乾燥物または(13)に記載の菌体組成物を含有する医薬または食品、および、(15)菌体を含有するシングルミクロンの液滴、に関する。【0010】また、本発明は、(1)シングルミクロンの噴霧液滴を乾燥温風で乾燥したシングルミクロンの菌体乾燥物、(2)シングルミクロンの噴霧液滴が4流路ノズルで形成される前記(1)に記載の菌体乾燥物、(3)乾燥室の乾燥温風の入り口温度が5〜150℃である前記(1)または(2)に記載の菌体乾燥物、(4)コーティングまたはマスキングされている前記(1)〜(3)に記載の菌体乾燥物、(5)噴霧液滴が、液状のコーティング剤またはマスキング剤と菌体液とを同時に噴霧し形成されることを特徴とする前記(1)〜(4)に記載の菌体乾燥物、(6)2本の液体流路と2本の気体流路を有する4流路ノズルにおいて、一の液体流路から菌体液を供給し、他の液体流路から液状のコーティング剤またはマスキング剤を供給し、2本の気体流路から圧縮気体を供給して生じたシングルミクロンの噴霧液滴を乾燥温風で乾燥したことを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の菌体乾燥物、(7)菌体が、ビフィズス菌、乳酸桿菌、乳酸球菌、有胞子性乳酸菌、糖化菌、酵母、麹菌、放線菌、Bacillus toyoi、B.licheniformis、酪酸菌、酢酸菌またはアミノ酸発酵菌である前記(1)〜(6)に記載の菌体乾燥物、(8)生菌数が1.0×1011〜2.0×1012CFU/gであることを特徴とする前記(1)〜(7)に記載の菌体乾燥物、および(9)前記(1)〜(8)に記載の菌体乾燥物を含有する医薬または食品、にも関する。【0011】【発明の実施の形態】本発明における菌体乾燥物とは、通常は乾燥された個々の菌体または乾燥された菌体の集合物をいう。本発明にかかる菌体乾燥物または本発明にかかる医薬もしくは食品等の組成物に含まれる菌体乾燥物は、その粒径がシングルミクロンである菌体乾燥物が含まれる限りどのような場合でも本発明に属する。従って、上記菌体乾燥物がシングルミクロンの粒径の菌体乾燥物とシングルミクロン以上の粒径の菌体乾燥物との混合物である場合、例えば粒径の平均値がシングルミクロンである場合も本発明に属する。ここで、シングルミクロンとは、小数第1位を四捨五入して1〜10μmとなる値をいう。【0012】本発明で用いる菌体としては、特に限定されないが、例えば、Bifidobacterium bifidum、B. longum、 B. breve、B. adrecentis、B. infantis、B.pseudolongum、B.thermophirum等のビフィズス菌;例えば、Lactobacillus acidophilus、L. casei、L. gasseri、L. plantalum、L. delbrueckii subsp bulgaricus、L. delbrueckii subsp lactis等の乳酸桿菌;例えば、Leuconostoc mecenteroides、Streptococcus(Enterococcus) faecalis、Streptococcus(Enterococcus) faecium、 Streptococcus(Enterococcus) hirae、Lactococcus lactis、Streptococcus thermophilus等の乳酸球菌;例えば、Bacillus coagulans等の有胞子性乳酸菌; 例えば、Bacillus subtilis, Bacillus mesentericus, Bacillus polyfermenticus等の糖化菌; 例えば、Saccaromyces cerevisiae, Candida等の酵母;例えば、 Aspergillus oryzae、Asp. nigar、Asp.Sojae等の麹菌; Streptomyces等の放線菌;例えば、Bacillus toyoi、B.licheniformis、Clostridium butyricum等の酪酸菌;例えば、Acetobacter等の酢酸菌;Corynebacterim等のアミノ酸発酵菌またはその他の有用菌が挙げられる。【0013】上記菌体は、公知の条件またはそれに準じる条件で培養することにより得ることができる。例えば、乳酸菌類の場合、グルコ−ス、酵母エキスおよびペプトン等を含む液体培地で前記乳酸菌類の1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜24時間程度培養し、培養液から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。菌体は、上記菌体の処理物であってもよい。処理としては、適当な溶媒による抽出等が挙げられる。具体的には、例えば、酵母の熱水抽出液である酵母エキス等が挙げられる。【0014】本発明に係る菌体乾燥物の製造方法においては、まず、上記菌体を溶媒に溶解して菌体液とする。溶媒は、当業界で用いられる公知の溶媒を用いてよいが、水が好ましい。所望によりエチルアルコール等を加えてよい。エチルアルコール等を加えることによって、最初にエチルアルコール等が気化し次いで水が気化するため、段階的な乾燥が可能になる。菌体液は懸濁液であってもよい。溶媒は上記の通り、公知の溶媒を用いてよいが、水または水にエチルアルコール等を添加した水溶液が好ましい。懸濁させる際に、懸濁剤を用いてもよい。懸濁剤は、例えばアルギン酸ナトリウムまたはメチルセルロース等の公知のものを用いてよい。【0015】上記菌体液に、保護剤を添加してもよい。保護剤は当業界で通常用いられるものであってよく、例えば、アスコルビン酸等のビタミン類;例えば、グルタミン、グルタミン酸、L−システイン、グリシン、フェニルアラニン、セリンもしくはトレオニン等のアミノ酸;例えば、グルコース、果糖、蔗糖、マルトース、マンニトールもしくはマルチトール等の糖類又は糖アルコール類;例えば、オリゴ糖、シクロデキストリンもしくはデキストリンなどの多糖類;例えば、菜種、大豆もしくは落花生等から得られる高級脂肪酸類などの脂肪;例えば、牛乳もしくは大豆等から得るタンパク、またはペプチドなどのタンパク分解物;例えば、硫酸マグネシウムなどの無機類;またはその他、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、リンゴ酸、核酸類、酵母エキス、脱脂粉乳、ペプトン、ゼラチンもしくはタンニン等が挙げられる。該保護剤は、上記の物質を単独で用いても、任意の二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該保護剤は、湿菌体重量の約0.1〜5.0倍量程度、好ましくは約0.5〜3.0倍量程度となるように加えるのが好ましい。【0016】上記菌体液に、さらに例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤もしくは静電気防止剤など当業界で一般に用いられている添加剤を通常の配合割合で添加してもよい。賦形剤としては、例えば、乳糖、グラニュー糖もしくはコーンスターチなど糖類;例えば、マンニトールなど糖アルコール;例えば、天然セルロースもしくは結晶セルロースなどのセルロース、またはヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体などが用いられる。結晶セルロースとしては、例えば、天然セルロースを例えば酸処理することによって、網状の分子構造をある程度細分化した白色粉末状の水不溶性セルロース等が挙げられる。また、例えば、結晶セルロースにカルメロースまたはカルメロースナトリウム等を混合したものを挙げられる。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、デキストリンまたはα化デンプンなどが挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルメロースカルシウム、カルメロースもしくはカルメロースナトリウム等のクロスリンク品(アクジゾル)、ポリビニルピロリドン等のクロスリンク品(プラスドン)、コーンスターチまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。静電気防止剤としては、例えばサイロイド、タルクまたはエアロジルなどが挙げられる。【0017】本発明に係る菌体乾燥物の製造方法においては、ついで、上記菌体液を噴霧乾燥に付する。該噴霧乾燥に用いる噴霧乾燥装置としては、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できる微粒化装置を備えた噴霧乾燥装置が好ましい。非常に粒径の小さな噴霧液滴にすると、噴霧液滴の単位重量あたりの表面積が大きくなり、乾燥風との接触が効率よく行われ、乾燥風の熱による菌の死滅または損傷を極力抑えることができるためである。ここで、シングルミクロンの噴霧液滴とは、噴霧液滴の粒径が小数第1位を四捨五入して1〜10μmであるものをいう。【0018】噴霧乾燥装置として、具体的には、例えば、その微粒化装置がロータリーアトマイザ(回転円盤)、加圧ノズルまたは圧縮気体の力を利用した2流路ノズルもしくは4流路ノズルである噴霧乾燥装置が挙げられる。本発明においては、その形式は問わず上記いずれの噴霧乾燥装置を用いてもよいが、微小な噴霧液滴を得ることができるという観点から4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置を使用するのが好ましい。該噴霧乾燥装置は自体公知のものでよい。【0019】4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置における4流路ノズルの構造としては、気体流路と液体流路とを1系統とすると、これがノズルエッジにおいて対称に2系統設けられており、かつ流体流動面となる斜面がノズルエッジに設けられている。4流路ノズルの構造の一態様について図1を用いてさらに詳しく説明する。4流路ノズルのノズルエッジにおいて、液体流路3または4から湧き出るように出た菌体液が、気体流路1または2から出た高速気体流により流体流動面5で薄く引き伸ばされ、引き伸ばされた液体がノズルエッジ先端の衝突焦点6で発生する衝撃波で微粒化され、シングルミクロンの噴霧液滴7を形成する。このように、4流路ノズルは、ノズルエッジ先端の衝突焦点に向かって両サイドから圧縮気体と液体を一点に集合させる外部混合方式をとるものがよい。この方式であれば、ノズル詰まりがなく長時間噴霧することが可能だからである。【0020】圧縮気体としては、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガスまたはアルゴンガス等の不活性ガス等を用いることができる。とくに、酸化されやすいもの等を噴霧乾燥させる場合は、窒素ガスまたはアルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。圧縮気体の圧力としては、約1〜15kg重/cm2程度、好ましくは約3〜8kg重/cm2程度である。ノズルにおける気体量は、ノズルエッジ1mmあたり、約1〜100L/分程度、好ましくは約5〜50L/分程度、より好ましくは約10〜20L/分程度である。【0021】4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置の一態様を図2に示す。図2を用いて本発明にかかる噴霧乾燥の一実施態様を述べると、菌体液(符号21)は、上記図1を用いて説明したようにして4流路ノズル(符号28)から噴霧される。乾燥室(符号31)において、該噴霧液滴に、乾燥風送入口(符号25)から整流器(符号33)を通って送られてくる乾燥風を接触させることで水分を蒸発させ菌体乾燥物を得る。乾燥風の乾燥室入り口における温度(以下、「入り口温度」という。)は、約2〜400℃程度、好ましくは約5〜250℃程度、より好ましくは約5〜150℃程度である。入り口温度が約200〜400℃程度の高温であっても、水分の蒸発による気化熱により被乾燥物の温度はそれほど高くならず、また、乾燥室内の滞留時間を短くすることにより、生菌の死滅や損傷を極力抑えることができる。また、乾燥風の乾燥室出口における温度(以下、「出口温度」という。)は、約0〜120℃程度、好ましくは約5〜90℃程度、より好ましくは約5〜70℃程度である。なお、図2に示した噴霧乾燥装置においては、入り口温度とは入り口温度計(符号26)で計測された温度をいい、また、出口温度とは出口温度計(符号29)で計測された温度をいう。【0022】また、乾燥室は減圧してもよい。減圧することにより乾燥効率が上がり乾燥時間が短くなるという利点がある。乾燥室の減圧後の圧力は、噴霧液滴の大きさなどにより異なるので一概には言えないが、例えば低真空領域程度の圧力、具体的には、約1.0×103〜7.0×103Pa程度とすることが挙げられる。【0023】4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置を用いれば、上述のようにノズルに液体流路が2流路あるので、異なった2種の菌体液または菌体液と他の溶液もしくは懸濁液とを別々の液体流路から同時に噴霧することにより、これらが混合された菌体乾燥物を製造できる。例えば、異なった2種類の菌体の菌体液を同時に噴霧することにより、該2種の菌体を含有する菌体乾燥物が得られる。また、菌体液と食用組成物とを同時に噴霧することにより、菌体と食用組成物を含有する菌体乾燥物が得られる。【0024】本発明において用いられる食用組成物としては、例えば、乳、食肉、魚、果実または野菜の液体組成物が挙げられる。または、これらが二種以上混合されていてもよい。これら食用組成物は、流動性を失わない程度の水分を残しつつ、噴霧乾燥前に約70重量%程度未満の水分含量に濃縮しておくのが好ましい。【0025】上記の果実または野菜の液体組成物としては、例えば、食用植物由来の種子、根、塊茎、茎、葉、花もしくは果実の加熱または生の微細砕部が挙げられる。好ましい果実または野菜としては、例えば、ニラ、ネギ、アスパラガス、ウイキョウもしくはキャベツ等の葉;例えば、ダイオウもしくはブロッコリ等の茎;例えばココア、エンドウ、大豆もしくは穀類等から得られる種子;例えば、ニンジン、玉ネギ、ハツカダイコン、セロリもしくはビート等の根;例えば、キャッサバもしくはジャガイモ等の塊茎;例えば、トマト、クルジェット、ナス、バナナ、リンゴ、アンズ、メロン、スイカ、ナシ、スモモ、桃、サクランボ、キウイ、シーバックソーンベリーカリンもしくはミラベルチェリー等の果実;またはマッシュルーム等が挙げられる。乳、食肉または魚の液体組成物としては、例えば、乳、卵、食肉もしくは魚;その加熱もしくは生の微細碎部;そこから得られるタンパクもしくはタンパク加水分解物などが挙げられる。【0026】また、4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置において、ノズルにおいて2流路ある液体流路のうち、一の液体流路から菌体液を噴霧し、他の液体流路から液状のコーティング剤またはマスキング剤を噴霧することにより、菌体のコーティングやマスキングをすることができ、本発明に係るコーティングまたはマスキングされた菌体乾燥物を得ることができる。菌体をコーティングすることにより、崩壊の時間を調節したり、腸など特定の器官で作用するように調節したりすることができる。また、外観の改善や品質の向上を図ることもできる。さらに、2種以上の成分の含有する医薬または食品において、該成分同士が接触することで変質する場合、どちらかまたは両方の成分をコーティングすることで変質を抑えることができる。また、菌体をマスキングすることにより、苦味や酸味を抑えることができる。特に、乳酸菌などを高濃度に含む医薬または食品は独特の味を有しており、菌原末の表面の一部または全部をコーティングまたはマスキングすることにより、そのような独特の味を緩和できるという利点がある。【0027】本発明において用いられるコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと略す)、デンプンのり、シリコン、アメ等の糖液または各種コーティング基材など、被覆能がある公知の材料を用いてよい。例えば、腸溶性コーティング基材としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、メタクリル酸−アクリル酸エチルエステル共重合体またはメタクリル酸−メタクリル酸メチルエステル共重合体等が挙げられる。その他のコーティング基材としては、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースまたはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等が挙げられる。本発明において用いられるマスキング剤としては、例えば、アミノアクリルメタアクリレートコポリマーE、アミノアクリルメタアクリレートコポリマーRS、メタアクリル酸コポリマーLDまたはHPC等が挙げられる。これらコーティング剤やマスキング剤が液状であれば、そのまま用いることができる。また、水などの希釈剤で希釈してもよい。また、固体であれば、水などの溶媒に溶解しまたは懸濁したものを用いる。【0028】さらに、コーティング剤やマスキング剤の代わりに、4流路ノズルの一液体流路から壁膜物質を噴霧することにより、マイクロカプセルを形成させることができる。この場合は、菌体液は、菌体をグリセリン、中鎖トリグリセリドまたはコーン油等の菌体に対して不活性な溶媒に懸濁させるのがよい。菌体液の溶媒が水であると、菌の活発な代謝に伴う生産物により、菌体の生存率が低下することがありえるからである。壁膜物質としては、例えば、エチルセルロース等のセルロース系物質;例えば、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリブタジエンもしくはスチレン−アクリル酸メチル重合体など高分子物質;または、例えば、硬化パーム油等の体温以上の融点を有する硬化油などが挙げられる。これら壁膜物質が液状であれば、そのまま用いることができる。また、水などの希釈剤で希釈してもよい。また、固体であれば、水などの溶媒に溶解しまたは懸濁させたものを用いる。【0029】本発明にかかるコーティングもしくはマスキングされている菌体乾燥物を製造する方法、または菌体乾燥物を含有するマイクロカプセルを製造する方法として、上記方法のみならず、上述した菌体液とコーティング剤、マスキング剤または壁膜物質とを予め混合しておき、該混合液を本発明にかかる噴霧乾燥に付するという方法も挙げられる。【0030】本発明にかかる上述の噴霧乾燥によって得られる菌体乾燥物は、菌体液が溶液なのか懸濁液なのか、またはその濃度や粘性等の性質を鑑みたうえで、ノズルに送られる圧縮気体の気体量と菌体液の液体量を調整することにより、任意の粒径の菌体乾燥物を得ることができる。しかし、上述のように、菌体乾燥物の粒径は、小数第1位を四捨五入して約1〜10μm程度の粒径のものが好ましい。粒径が小さいほど、例えば、製剤の工程において静電気が起こりにくかったり、打錠の際に菌体にかかる圧力が少なくて済んだりするからである。なお、菌体乾燥物の粒径は検鏡にて容易に測定できる。また、得られる菌体乾燥物の粒径を小さくするために、噴霧乾燥前に自体公知の処理を行っておいてもよい。公知処理としては、菌体液の粘度や表面張力を小さくしたり、また、菌体液が菌体懸濁液の場合は一次粒子径を小さくし、またはよく懸濁させておく等の処理が挙げられる。【0031】上記のように菌体乾燥物の粒径を小さくすることにより、生菌率が上がり、生菌数の多い医薬や食品を提供できるという利点もある。すなわち、シングルミクロンの菌体乾燥物を得るために、噴霧液滴はシングルミクロンであることが好ましい。噴霧液滴の粒径が小さいと、噴霧液滴の単位重量あたりの表面積が大きくなるので、乾燥風との接触が効率よく行われ、乾燥風の温度が比較的低温であっても効率よく乾燥できるため、乾燥風の熱による菌体の死滅または損傷を極力抑えることができる。その結果として、生菌率が上がり生菌数の多い菌体乾燥物が得られる。したがって、本発明にかかる噴霧乾燥によれば、生菌率が約1.0×105〜約2.0×1012CFU/g程度、好ましくは約1.0×1011〜2.0×1012CFU/g程度、より好ましくは約1.2×1011〜1.5×1012CFU/g程度、最も好ましくは約1.5×1011〜8.0×1011CFU/g程度である菌体乾燥物を得ることができる。ここで、菌体乾燥物中の生菌数の測定は菌体によって異なるが、例えば日本薬局方外医薬品規格に記載されたそれぞれの菌体の定量方法により容易に測定できる。【0032】本発明においては、上記噴霧乾燥と流動層造粒を組み合わせてもよい。すなわち、粉状物と結合剤を用いて流動層造粒を行う工程と、噴霧乾燥によりシングルミクロンの菌体乾燥物を得る乾燥工程とを、同一容器内で行うことを特徴とする装置を用いて、該装置内で造粒、菌体の噴霧乾燥、混合を連続的に行ってもよい。従来、噴霧乾燥、造粒、混合の工程はそれぞれ別々の装置を用いて行われていたが、このように造粒、菌体の噴霧乾燥、混合を同一装置内で行うことにより、製造工程が簡略化できると同時に、菌体乾燥物と造粒物の混合均一性が向上し分級も起こりにくくなるという利点がある。【0033】本発明に係る該装置の具体的態様としては、乾燥室の上方から下方に向かって結合剤を噴霧できる結合剤噴霧用ノズルと、同じく乾燥室の上方から下方に向かって菌体液を噴霧できる菌体液噴霧用ノズルとが設置され、かつ、圧縮気体を吹き込むことにより、または排気ファンで装置内の空気を吸引することにより、粉状物を流動状態に保つことができる流動層が装置の底部に併設されている装置が挙げられる。ここで、流動層を形成する空気は、自体公知の除湿装置を用いて乾燥したものを用いてよい。ここで、該装置においては、噴霧ノズルを2つ設けて、それぞれを結合剤噴霧用ノズルまたは菌体液噴霧用ノズルとする場合はもちろん、噴霧ノズルを1つしか設けずに、該噴霧ノズルを結合剤噴霧用ノズルおよび菌体液噴霧用ノズルとして併用させてもよい。【0034】上記装置を用いて、粉状物と結合剤を用いて流動層造粒を行う工程と、噴霧乾燥によりシングルミクロンの菌体乾燥物を得る乾燥工程とを、同一装置内で行うことを特徴とする菌体組成物の製造方法の具体的な態様を以下に述べる。以下の態様では、まず流動層造粒の工程を行い、ついで乾燥工程を行っているが、これらの工程は同時に行ってもよい。まず、粉状物と結合剤を用いて流動層造粒を行う。具体的には、(a)装置の底部から圧縮気体、好ましくは窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガスを吹き込むことにより、または(b)排気ファンで装置内の空気を吸引することにより、粉状物を流動状態に保ちながら、結合剤を結合剤噴霧用ノズルより噴霧して、流動化している粉状体に結合剤の液滴を接触させることにより粉状体を凝集させて造粒を行う。ここで、結合剤噴霧用ノズルは自体公知のものを用いてよいが、上記4流路ノズルを用いるのが好ましい。4流路ノズルを用いれば、結合剤の噴霧液滴が小さくなるため、造粒物の粒径も小さくなる。その結果、造流物の乾燥に要する時間が短くなり、製造の効率化につながる。また、4流路ノズルを用いれば、比較的均一な粒子径の造粒物を得ることができる。その結果、粉砕・整粒の工程を省くことができ、また菌体乾燥物と造粒物の混合の際に分級が起こりにくくなる。なお、造粒物の粒子径は、約100〜500μm程度が好ましい。【0035】ついで、菌体液噴霧用ノズルから菌体液を噴霧し、噴霧乾燥によりシングルミクロンの菌体乾燥物を得る。このとき、前段階から引き続いて、装置の底部から吹き込まれる圧縮気体または排気ファンにより吸引される装置内の気体(以下、これらを「流動用気体」と総称する)が乾燥風ともなり菌体液の噴霧液滴を乾燥すると同時に、流動用気体により流動状態となっている造粒物との混合を行う。得られる混合物の態様としては、造粒物の粒子と菌体乾燥物の粒子が別個独立し、それらが混合している場合はもちろん、粉状物の粒子と菌体乾燥物の粒子が結合剤により1つの粒子を形成する場合、該粒子と造粒物の粒子または/および菌体乾燥物の粒子が混合している場合が挙げられる。このようにして、粉状物と結合剤からなる造粒物にシングルミクロン菌体乾燥物が付着していることを特徴とする菌体組成物を容易に製造することができる。ここで、菌体液噴霧用ノズルは自体公知のものを用いてよいが、上記4流路ノズルを用いるのが好ましい。4流路ノズルを用いれば、上述した噴霧乾燥における4流路ノズルの利点をこの製造方法においても発揮することができるからである。【0036】上記装置および本発明にかかる菌体組成物の製造方法の一態様を図4を用いて説明する。流動層造粒については、流動床42を備えた本発明に係る装置本体41内に、粉状体48を収容させた状態で、結合剤45を結合剤噴霧用ノズル47から噴霧させながら、排気ファンを駆動させて、熱交換器で加熱された流動用気体49を装置本体41の下部側から連続的に導入する。このとき、流動用気体49は予め除湿装置(図示せず)を用いて乾燥させておいてもよい。導入された流動用気体49は排気ファンにより上方に向かって吸引される。流動用気体49の風速が増加するに従って粉状体48は流動床42から吹き上げられ空気中に浮遊懸濁し、いわゆる流動層を形成する。そして、この流動している粉状体48に結合剤45の液滴を接触させることにより粉状体48を凝集させて、造粒を行うことができる。噴霧乾燥については、菌体液噴霧用ノズル46を用いて菌懸濁液44を噴霧すると、排気ファンにより流動床42から上方に向かって引き上げられる流動用気体49により該菌体液の噴霧液滴が乾燥される。このとき、流動用気体49の温度を所望により流動造粒のときよりも下げ、約2〜400℃程度、好ましくは約5〜250℃程度、より好ましくは約5〜150℃程度、さらに好ましくは約20〜70℃程度とするのが好適である。流動用気体の熱により菌体が死滅し損傷するのを極力抑えるためである。上記のように製造された造流物と菌体乾燥物とは、流動用気体49により装置41内で混合される。【0037】流動層造粒に用いる上記粉状物としては特に限定はないが、菌体乾燥物と併用して投与または摂取することができるものが好適である。具体的には、例えば菌体乾燥物以外の他の薬理作用を有する物質、賦形剤または他の微粉末状食品材料等が挙げられる。これらは自体公知のものを用いることができ、また2種以上の混合物であってもよい。該微粉末状食品材料としては、例えばシナモン、ジンジャー、マスタード、ナツメグ、ペッパー、サフラン、セサミ、ターメリック、パセリ、ミント類、セロリ、オニオン、ガーリック等のスパイス類、ハーブ類の乾燥粉砕物及びこれらのスパイス、ハーブ類を適宜混合して調製されるカレー粉、ミックススパイス等の香辛料類;アップル、オレンジ、レモン、ストロベリー、パインアップル、グレープフルーツ、グレープ、メロン、ライム等の果汁粉末;コーヒー、緑茶、紅茶、ウーロン茶、ココア、麦茶等の嗜好飲料粉末;ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキス、ホタテエキス、アサリエキス、カキエキス、カニエキス、エビエキス、鰹節エキス等の動物エキス類粉末;ニンニクエキス、玉ねぎエキス、セルリーエキス、キャベツエキス、ミツバエキス等の植物類エキス粉末;脱脂粉乳、全脂粉乳、醗酵乳粉末等の粉末状乳製品類;卵黄粉末、全卵粉末;穀類粉末、動植物タン白質加水分解物、食塩、アミノ酸類、核酸系調味料粉末を挙げることができる。【0038】流動層造粒の際の結合剤としては、粉状物の粒子間または粉状物の粒子と菌体乾燥物との結合力を高める添加剤をいい、代表例として水溶性高分子を挙げることができる。具体的には、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等を挙げることができる。その他に、結合剤として、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、でんぷんのり液または糖液等を用いることもできる。結合剤には、所望により配合剤が添加されていてもよい。配合剤としては自体公知のものを用いることができるが、例えばレシチン、キラヤサポニン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の天然又は合成の界面活性剤;またはゼラチン、カゼイン、水溶性ペプチド、大豆タン白質、アルブミン、グルテン等のタン白質類などが挙げられる。【0039】本発明にかかる菌体乾燥物を含有する医薬または食品は、本発明にかかる菌体乾燥物を含有していれば、他の成分を含んでいてもよい。例えば、他の薬理作用を有する成分や他の食品が含まれていてもよいし、所望により他の所望の機能を有する添加剤または添加物が含まれていてもよい。【0040】上述のように噴霧乾燥によって得られる菌体乾燥物は、そのまま散剤もしくは顆粒剤の剤形で、または錠剤、丸剤もしくはトローチ剤の剤形にして、本発明にかかる菌体乾燥物を含む医薬または食品にすることができる。本発明における菌体乾燥物を含む医薬または食品が散剤または顆粒剤の剤形をとる場合は、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物をそのまま用いてよいし、当業界で行われている自体公知の処理を行ってもよい。【0041】本発明における菌体乾燥物を含む医薬または食品が錠剤の剤形をとる場合は、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物を打錠機により打錠して製造する。打錠機は、例えばロータリー型打錠機など公知のものを用いることができる。本発明にかかる噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物に、例えば通常は粉状または粒状の賦形剤、結合剤、崩壊剤もしくは静電気防止剤など当業界で一般に用いられている添加剤を通常の配合割合で混合し、得られた混合物を打錠機により打錠して製造してもよい。さらに、得られた錠剤に糖衣コーティング、腸溶性コーティンクもしくはフィルムコーチングなどのコーティングまたはマスキングをしてもよい。コーティング剤またはマスキング剤は上述のもの等公知のものを用いてよい。また、コーティングまたはマスキングは、公知またはそれに準ずる方法で行うことができる。上記錠剤は、除放性錠剤であってもよい。除放性錠剤としては、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物を、体外にそのまま排出されるプラスチック格子に分散させたグラジュメット、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物をスポンジ状のワックス格子中に分散させたワックスマトリックス、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物をイオン交換樹脂に吸着させたレジネート、または溶解および放出性の異なる複数層からなるスパンタブなどが挙げられる。これら除放性錠剤は、公知またはそれに準ずる方法で製造することができる。【0042】本発明における菌体乾燥物を含む医薬または食品が丸剤またはトローチ剤の剤形をとる場合は、錠剤と同様にして製造できる。ただし、トローチ剤の場合は、口の中で徐々に溶解または崩壊させるため、通常崩壊剤は加えない。上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物をカプセルに充填してカプセル剤としてもよい。カプセル基材としては、例えばゼラチン等の公知のカプセル基材を用いてよい。また、軟カプセル剤の場合は、例えばグリセリンやソルビトール等の可塑剤を用いてよい。また、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物を打錠などの方法で圧縮成型し、これを所望により油脂などに含浸させた後、固体状の油脂で被膜し、ついでカプセル基材で被膜して製造してもよい。こうすることによって、カプセル被膜を通して内部に水が浸透しても、菌体乾燥物に水が直接ふれることがないので、水による菌体の損傷または死滅を防ぐことができる。また、従来公知の手段に従い、ポリ乳酸等を使用してマイクロカプセル化してもよい。【0043】本発明における菌体乾燥物を含む医薬または食品は、薬剤的に許容される溶解剤、懸濁剤、シロップ剤またはエリキシル剤等の液体の剤形であってもよい。用いる希釈剤としては、例えば精製水、植物油またはエタノール等が挙げられる。また、希釈剤以外に浸潤剤、懸濁剤、甘味剤、風味剤、芳香剤または防腐剤等の添加剤を混合させてもよい。【0044】懸濁剤は、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物を、懸濁剤または他の所望の添加剤とともに水または植物油等の溶媒に加え、全体が均質になるように公知の方法で懸濁して製造するのが好ましい。懸濁剤は公知のものを用いてよく、例えば、アラビアゴム、カルメロースナトリウム、メチルセルロースまたはアルギン酸ナトリウム等が挙げられる。シロップ剤は、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物を、ショ糖および所望により他の糖類または甘味料とともに、例えば精製水等の希釈剤に溶解または懸濁させて製造するのが好ましい。菌体乾燥物を用時に溶解または懸濁して用いるドライシロップ剤としてもよい。エリキシル剤は、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物を、所望により添加剤とともに、甘味および芳香のあるエタノールに溶解して製造するのが好ましい。エタノール含量は約4〜40重量%程度であるのが好ましい。【0045】本発明における菌体乾燥物を含む医薬を、水性注射剤、非水性注射剤、水性懸濁注射剤または非水性懸濁注射剤などの非経口のための注射剤に調製してもよい。注射剤は、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物を、所望により添加剤とともに溶剤に溶解した後ろ過し、または溶剤に懸濁させ、その後容器に充填し、容器を密封したのち滅菌を行い製造するのが好ましい。溶剤としては、注射用蒸留水、生理食塩水もしくはリンゲル液等の水性溶剤;プロピレングリコール、ポリエチレングリコールもしくはオリーブ油のような植物油、またはエタノールのようなアルコール類等の非水性溶剤が挙げられる。添加剤としては、(a)例えば、エチレンジアミンなどの安定剤、(b)例えばパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノールもしくはクレゾール等の保存剤、(c)例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、蔗糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、またはレシチンもしくは水添レシチン等の可溶化剤、(d)例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖もしくはグリセリン等の等張化剤、(e)例えば、リン酸塩もしくはクエン酸塩等の緩衝剤、または(f)例えば、アラビアゴム、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、またはアルギン酸ナトリウム等の懸濁剤が挙げられる。【0046】本発明にかかる菌体乾燥物を含有する医薬または食品は、哺乳類の健康状態を促進するために用いられる。また、農薬として、または飼料の添加物として用いることもできる。例えば、乳酸菌類は有用な腸内細菌の一つとして広く知られており、健康に深いかかわりがあるとされている。特にビフィズス菌、乳酸球菌または乳酸桿菌等の生理学的意義については多数の報告があり、腸内において乳酸もしくは酢酸等の有機酸を産生し有害菌の増殖を抑制する作用、ビタミンの産生または免疫力の賦活化等が明らかになっている。したがって、旧来よりヒト、家畜動物、または愛玩動物等の健康の維持強化や疾患の予防または治療を目的とした乳酸菌を含む医薬または食品等多数の製品が開発されている。また、乳酸菌類は味噌、醤油、漬物または日本酒等の食品の製造工程において、風味や保存性の向上または品質の維持に深いかかわりがあるとされ、利用されている。【0047】本発明における乳酸菌またはビフィズス菌を含有した医薬は、例えば下痢、便秘、高コレステロール血症、肝疾患、免疫低下性疾患(immunosuppressant )、腸炎(例えば、胃腸炎または結腸炎等)の治療または予防;食品、薬剤、化学薬品もしくは物理的薬剤による失調の後の、または外科的侵襲、化学療法もしくは接触感染症の後の腸の回復;内毒素の吸収の阻害及び内因性毒物の生成に対する拮抗に用いることができる。該医薬は、腸粘膜を回復させ、また、腸管の酵素ポテンシャルがストレス状況の結果として変化するときこれらを調節する作用があるためである。また、腸内細菌叢の機能を正常化し、ビタミン及びたんぱくの合成、消化過程もしくは酵素過程及び吸収過程を促進し、病原性微生物の集落形成を防止し、免疫応答を刺激する作用があるためでもある。【0048】本発明における乳酸菌またはビフィズス菌の菌体乾燥物を含有した食品としての用途は、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物を、ヨ−グルトもしくはチ−ズ等の乳製品、菓子類または飲料類等に添加する等が挙げられる。また、調味料として、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物をそのまま用いることもできる。また、上記噴霧乾燥により得られた菌体乾燥物を水または油等の溶媒に溶解もしくは懸濁させ調味料として用いてもよい。さらに、他の調味料と混合してもよい。【0049】上記噴霧乾燥により得られた乳酸菌の菌体乾燥物は、乳酸発酵食品を工業的規模で安定生産するためのスターターとして用いることもできる。粉末乳酸菌スターターは、例えば、乳製品、ライ麦パンや発酵ソーセージ等に用いられる。【0050】上記噴霧乾燥により得られた酵母の菌体乾燥物は、酵母がアルコール発酵を盛んに行う性質を応用して、ビール、清酒またはぶどう酒などの酒類工業で利用できる。また、パンなどの発酵に用いることもできる。さらに、酵母の自己消化液または熱水抽出液である酵母エキスは、ビタミン類、有機塩基類またはアミノ酸類を多量に含有し栄養価が高いので、上記噴霧乾燥により得られた酵母エキスの菌体乾燥物は、ビタミン剤などの医薬や健康食品として用いることができる。【0051】上記噴霧乾燥により得られた麹菌の菌体乾燥物は、清酒、甘酒、焼酎、味噌、みりんまたは醤油などの製造に用いることができる。Aspergillus oryzaeが用いられることが多いが、アルコールの製造にはAsp. nigarが用いられることもある。また、麹菌はアミラーゼ、プロテアーゼその他の各種酵素や各種有機塩基類ビタミン類などの生成する株が多く、したがって本発明における麹菌の菌体乾燥物は消化酵素剤やビタミン剤などの医薬または健康食品として用いることができる。【0052】【実施例】〔実施例1〕〔菌体の培養〕GAM培地(日水製薬株式会社製)であらかじめ増菌したBifidobacterium bifidumの培養液を同培地に0.1重量%接種し、37℃で16時間培養した。これを遠心分離し、得られた沈殿物を湿菌体とした。【0053】〔菌懸濁液の作成〕マンニトールが0.5M、グルタミン酸ソーダが0.5M、アルギニンが0.1M、コハク酸ソーダが0.1M、硫酸マグネシウムが0.01Mの濃度になるように調整した水溶液中に、デキストリンを35重量%となるように加えて調製した分散媒に、得られた湿菌体を懸濁させた。【0054】〔菌懸濁液中の生菌数の測定〕日本薬局方外医薬品規格「ビフィズス菌」の項に記載されているビフィズス菌の定量法に準じて測定した。すなわち、菌懸濁液1mLをとり、下記のように調製した希釈液を用いて10倍希釈法にて1mL中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったビフィズス菌試験用カンテン培地を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で60時間嫌気培養し、出現したコロニー数と希釈倍率から菌懸濁液中の生菌数を求めた。【0055】ここで、ビフィズス菌試験用カンテン培地は、以下の成分のうち、ウマ血液以外の成分を加熱して溶かし、pH7.2に調整し、高圧蒸気滅菌器を用いて115℃で20分間加熱して滅菌した後、50℃に冷やし、ウマ血液を加えて作製した。ウシ肝臓浸出液 150mL獣肉製ペプトン 10gカゼイン製ペプトン 5g酵母エキス 5g肉エキス 3g大豆製ペプトン 3gブドウ糖 10gリン酸一水素カリウム 1gリン酸二水素カリウム 1gデンプン 0.5gL−塩酸システイン 0.5g硫酸マグネシウム 0.2g塩化ナトリウム 0.01g硫酸第一鉄 0.01g硫酸マンガン 7mgポリソルベート80 1gカンテン 15gウマ血液 50mL精製水 790mLpH 7.1〜7.3【0056】上記希釈液は、下記の成分を混合し、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌して調製した。無水リン酸一水素ナトリウム 6.0gリン酸二水素カリウム 4.5gポリソルベート80 0.5gL−塩酸システイン 0.5gカンテン 1.0g精製水 1000mLpH 6.8〜7.0【0057】〔噴霧乾燥〕上記にように作成した菌懸濁液を、4流路ノズル(特許2797080に記載のもの)を組み込んだ図2に示した噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥した。すなわち、2本の液体流路から菌懸濁液を8mL/分(4ml/分/1mmノズル)の速度で供給し、2本の気体流路から圧縮気体を40NL/分(20℃で換算した値)の速度で供給して生じた噴霧液滴を、乾燥風により乾燥し、本発明にかかる菌体乾燥物を製造した。なお、乾燥風は、入り口温度が100℃で、1.0m3/分の割合で乾燥室内に供給し、出口温度が67℃であった。【0058】〔菌体乾燥物中の生菌数の測定〕得られた菌体乾燥物中の生菌数を日本薬局方外医薬品規格「ビフィズス菌」の項に記載されているビフィズス菌の定量法に準じて測定した。すなわち、菌体乾燥物5gをあらかじめ37℃に加温した上記と同じ希釈液にとり、全量を50mLとした。これをよく攪拌した後37℃で30分間加温し、試料原液とした。これを希釈液を用いて10倍希釈法にて1mL中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったビフィズス菌試験用カンテン培地を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で60時間嫌気培養し、出現したコロニー数と希釈倍率から菌体乾燥物中の生菌数を求めた。【0059】乾燥風の入り口温度を、順次80℃、60℃、50℃にして、同様に実施した。【0060】〔比較例1〕実施例と同様にして得られた菌懸濁液を凍結乾燥させた。凍結乾燥条件は棚温度30℃以下、到達真空度0.1Torr(13.3Pa)であった。乾燥後の粉末中の生菌数を実施例1と同様に測定した。【0061】実施例および比較例の生菌数、生存率を表1に示す。ここで、生存率は次式から算出した。生存率(%)={(菌体乾燥物1g当たりの生菌数×菌懸濁液固形分含有率)/(菌懸濁液1g当たりの生菌数)}×100【表1】表1に示す通り、本発明に係る噴霧乾燥を用いれば、凍結乾燥を用いるよりも生存率の高い菌体乾燥物が得られることがわかった。【0062】〔菌体乾燥物の粒径〕実施例1において、入り口温度を60℃として得られた本発明にかかる菌体乾燥物を、顕微鏡(株式会社キーエンス製、デジタルHDマイクロスコープVH−7000)を用いて測定した。粒径の分布は、以下の様であった。【表2】【0063】〔実施例2〕実施例1と同様にして、菌体を培養し、菌懸濁液を作成し、菌懸濁液中の生菌数の測定した。〔噴霧造粒〕流動層造粒機FLO−120(フロイント社製)に、従来の2流路の噴霧ノズルに加えてさらに4流路ノズル(特許2797080に記載のもの)を組み込んだ装置を用いて、流動層中に乳酸菌懸濁液を噴霧することにより乳酸菌含有粉末を作成した。工程は大きく二つに分けられ、第一工程は2流路ノズルを用いて粒状物としての賦形剤に結合剤を吹き付け、造粒を行った。第二工程では、引き続き流動層を低温で維持した状態で4流路ノズルを用い乳酸菌懸濁液を噴霧乾燥すると同時に第一工程で得られた粒状物と混合した。本実験で使用された機械の運転条件は、給気風量が70m3/分、ノズルエア量が40NL/分(20℃で換算した値)であった。また、造粒に用いられた賦形剤、結合剤の組成は以下のものを用いた。【0064】第一工程について以下に詳細に述べる。上記賦形原料120kgを秤量しホッパーに入れ、給気温度を100℃に設定し乾燥空気を送り込み流動層を形成させ、2流路ノズルを用いて結合剤を液流速1.6L/分で噴霧した。この時の排気温度は45〜50℃、流動層内温度は55〜60℃であった。結合剤の噴霧が終了すれば、そのまま流動層で20分間乾燥させて低水分の造粒物を得た。【0065】次に、第二工程について以下に詳細に述べる。造粒物の後乾燥終了後、給気温度を70℃に下げた状態で4流路ノズルを用いて実施例1と同様にして作成した菌懸濁液を液流速16mL/分で350mL噴霧した。この時の排気温度は30〜35℃、流動層内温度は35〜40℃であった。このような低温での噴霧乾燥により乳酸菌は粉末化され、同時に流動層内で混合することにより本発明に係る乳酸菌含有粉末を得た。【0066】〔比較例2〕製剤中に乳酸菌が同量含まれるように調整した乳酸菌混合粉末を作成した。実施例1で得られた菌体粉末2gをトウモロコシデンプンで10倍に倍散して20gとし、実施例2の第一工程で得られた賦形剤と結合剤とからなる造粒物1180gに加え、V型混合機で100rpm、3分間混合したものを乳酸菌混合粉末とした。【0067】実施例2または比較例2で得られた粉末1g中に含まれる生菌数を、実施例1の〔菌体乾燥物中の生菌数の測定〕の項にしたがって測定した。実施例2では生菌数は5.12×108(CFU/g)であり、比較例では生菌数は4.85×108(CFU/g)であった。したがって、噴霧乾燥と流動層造粒を組み合わせた本発明に係る方法を用いれば、従来の噴霧乾燥、造粒および混合工程よりなる粉末の製造方法と少なくとも同程度、あるいはそれ以上の生菌率を保ちつつ、製造工程の簡略化が可能であることがわかった。【0068】〔実施例3〕蒸留水500gに、下記成分を添加し、攪拌してコーティング剤を作成した。一方、実施例1と同様にして、菌懸濁液を作成した。4流路ノズル(特許2797080に記載のもの)を組み込んだ図2に示した噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥した。すなわち、2本の液体流路と2本の気体流路を有する4流路ノズルにおける一の液体流路から菌体液を5g/分の速度で供給し、他の液体流路から液状のコーティング剤を20g/分の速度で供給し、2本の気体流路から圧縮気体を40NL/分の速度で供給して生じた噴霧液滴を、乾燥風により乾燥し、本発明に係る部分コーティング菌体乾燥物を製造した。なお、乾燥風は、入り口温度が100℃であり、1.0m3/分の割合で0.9mPaの乾燥室内に供給した。従来のビフィズス菌原末と本実施例にかかる部分コーティング菌体乾燥物をそれぞれ10mgとり、食味試験を行ったところ、本実施例にかかる部分コーティング菌体乾燥物の食味は改善されていた。【0069】〔実施例4〕実施例1と同様に作成した菌懸濁液100gと下記組成の腸溶性コーティング基剤を混合し、該混合液を4流路ノズル(特許2797080に記載のもの)を組み込んだ図2に示した噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥した。すなわち、2本の液体流路から混合液を5.6g/分の速度で供給し、2本の気体流路から圧縮気体を40NL/分の速度で供給して生じた噴霧液滴を、乾燥風により乾燥し、本発明にかかる腸溶性コーティングされた菌体乾燥物を製造した。なお、乾燥風は、入り口温度が80℃であり、1.0m3/分の割合で0.9mPaの乾燥室内に供給した。【0070】〔腸溶性コーティングされた菌体乾燥物の耐酸性試験〕日本薬局方・一般試験法・崩壊試験法に記載の第1液(pH1.2、36〜38℃)を用いて耐酸性試験を行った。1000mL程度の保温できる容器に第1液を入れ36〜38℃に保温した。これに得られた菌体乾燥物を加えて良く攪拌し、菌体乾燥物投入5、15、30、60分後に1mLずつサンプリングした。サンプリングした献体は、実施例1に記載した希釈液を加えて適当な濃度に順次希釈し、実施例1と同様にして生菌数の測定を行った。なお、局方第1液は、人工胃液であり、塩化ナトリウム2.0gに塩酸7mLおよび蒸留水を加えて溶かし1000mLをしたものである。また、従来のビフィズス菌原末についても、同様の試験を行った。図3に第1液保護時間と生菌数の関係を示した。従来の菌原末においては投入5分後で生菌数が1000分の1以下となり、30分後以降は生菌が認められなくなったのに対して、本発明にかかるコーティング菌原末においては投入60分後においても1%程度の生菌が認められた。つまり、上記のコーティングを行うことで菌体乾燥物の耐酸性が大幅に改善された。【0071】〔実施例5〕菌体としてLactobacillus acidophilusを用いた以外は、実施例1と同様にして菌懸濁液を作成した。菌懸濁液中の生菌数を日本薬局方外医薬品規格「ラクミトン」の項に記載されているラクミトンの定量法に準じて測定した。すなわち、菌懸濁液1mlをとり、下記のようにして調製した希釈液を用いて10倍希釈法にて1ml中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mlをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったラクミトン試験用カンテン培地を20ml加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で48時間培養し、出現したコロニー数と希釈倍率から菌懸濁液中の生菌数を求めた。【0072】ここで、ラクミトン試験用カンテン培地は、下記成分を混合し、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌し作製した。ここで、トマトジュースは、トマトジュースに等量の精製水を加え時々かき混ぜながら煮沸した後、pHを6.8に調整しろ過したものを用いた。カゼイン製ペプトン 20g酵母エキス 5g肉エキス 15gブドウ糖 20gL−塩酸システイン 1gポリソルベート80 3gトマトジュース 200mLカンテン 20g精製水 800mLpH 6.8【0073】上記希釈液は、下記成分を混合し、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌し、調製した。リン酸一水素ナトリウム 6.0gリン酸二水素カリウム 4.5gポリソルベート80 0.5gL−塩酸システイン 0.5gカンテン 1.0g精製水 1000mlpH 6.9【0074】上記にように作成した菌懸濁液を、実施例1と同様に噴霧乾燥した。機械の運転条件は、入り口温度が60℃、排気温度が45℃であった以外は実施例1と同様であった。得られた菌体乾燥物中の生菌数を日本薬局方外医薬品規格「ラクミトン」の項に記載されているラクミトンの定量法に準じて測定した。すなわち、菌体乾燥物5gをあらかじめ37℃に加温した希釈液にとり、全量を50mLとした。これをよく攪拌した後37℃で30分間加温し、試料原液とした。これを希釈液を用いて10倍希釈法にて1mL中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったラクミトン試験用カンテン培地を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で48時間嫌気培養し、出現したコロニー数と希釈倍率から菌体乾燥物中の生菌数を求めた。【0075】菌体乾燥物中の生菌数は7.24×1011(CFU/g)であり、生存率は90%であった。なお、生存率は実施例1と同様にして求めた。したがって、本発明にかかる噴霧乾燥を用いれば菌体の生存率が高まり、その結果生菌数の非常に多い菌体乾燥物が得られることがわかった。【0076】【発明の効果】シングルミクロンの噴霧液滴を形成できる微粒化装置を備えた噴霧乾燥装置を用いることにより、噴霧液滴の単位重量あたりの表面積が大きくなり、乾燥風との接触が効率よく行われる。したがって、従来の噴霧乾燥と同程度の温度の乾燥風より乾燥させた場合、菌体液の乾燥に要する時間が短くなり、菌体の死滅または損傷を極力抑えることができる。また、乾燥風の温度を従来の噴霧乾燥における乾燥風の温度より低くしても、収量または安定性を落とすことなく十分な乾燥を行うことができ、また乾燥風の温度が低いので乾燥風の熱による菌体の死滅または損傷を極力抑えることができる。したがって、本発明にかかる菌体乾燥物の製造方法により、生菌数の多い菌体乾燥物を得ることができる。【0077】また、このように粒径の小さな噴霧液滴を乾燥風で乾燥することによって得られるシングルミクロンサイズの粒子を含有する菌体乾燥物は、圧縮成形等の際に菌体にかかる圧力が少なくて済み、また静電気も起こりにくいなど、錠剤などの剤形の医薬または食品に成形しやすい。【0078】本発明にかかる噴霧乾燥装置として、2本の液体流路と2本の気体流路を有する4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置を用いることにより、液体流路が2本あるので大量噴霧が可能になり製造効率が上がるほか、2種の異なる溶液または懸濁液を別々の液体流路から同時に噴霧することにより、これらが混合された菌体乾燥物を製造できる。また、一方の液体流路からは液状のマスキング剤もしくはコーティング剤を、他方の液体流路からは菌体液を噴霧することにより、マスキングもしくはコーティングされている菌体乾燥物を製造できる。したがって、マスキングもしくはコーティングを別途行う必要がなくなるので製造工程が少なくなる。また、同様にしてカプセル基材を菌体液と同時に噴霧することによってマイクロカプセルを製造することもできる。さらに、4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置を用いることにより、粒度分布が比較的狭い範囲に収まるため、その後の整粒、篩過等の工程を行いやすい。【0079】噴霧乾燥は、装置の規模が凍結乾燥の場合に比べて小規模であり、かつ装置の運転に要するエネルギーも少ないことから、コスト的にも資源的にも有用である。また、本発明にかかる粉状物と結合剤を用いて流動層造粒を行う工程と、噴霧乾燥によりシングルミクロンの菌体乾燥物を得る工程とを、同一容器内で行うことを特徴とする装置を用いて、該装置内で造粒、菌体の噴霧乾燥、混合を連続的に行うことにより、製造工程が簡略化できると同時に、菌体乾燥物と造粒物の混合均一性が向上し分級も起こりにくくなる。【図面の簡単な説明】【図1】4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置におけるノズルエッジ部分の内部構造を示す。【図2】4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置の概要図を示す。【図3】腸溶性コーティングされた菌体乾燥物の耐酸性試験における生菌数の経時的変化を示す。【図4】本発明にかかる粉状物と結合剤を用いて流動層造粒を行う工程と、噴霧乾燥によりシングルミクロンの菌体乾燥物を得る工程とを、同一容器内で行うことを特徴とする装置の概要図を示す。【符号の説明】1、2 圧縮気体が供給される気体流路3、4 被乾燥体を含む液体が供給される液体流路5 流体流動面6 衝突焦点7 噴霧液滴21 菌体液、コーティング剤またはマスキング剤22 液体流路23 気体流路24 圧縮空気送入口25 乾燥風送入口26 入り口温度計27 微粒化装置28 噴霧ノズル29 出口温度計30 乾燥室内圧力計31 乾燥室32 菌体乾燥物出口33 整流器41 装置本体42 流動床43 バグフィルター44 菌体液45 結合剤46 菌体液噴霧用ノズル47 結合剤噴霧用ノズル48 粉状体49 流動用気体 粒径の平均値がシングルミクロンである菌体乾燥物。 生菌数が1.0×105〜2.0×1012CFU/gであることを特徴とする請求項1に記載の菌体乾燥物。 菌体が、ビフィズス菌、乳酸桿菌、乳酸球菌、有胞子性乳酸菌、糖化菌、酵母、麹菌、放線菌、Bacillus toyoi、B.licheniformis、酪酸菌、酢酸菌またはアミノ酸発酵菌である請求項1または2に記載の菌体乾燥物。 請求項1〜3に記載の菌体乾燥物がさらにコーティングまたはマスキングされていることを特徴とする菌体乾燥物。 粉状物と結合剤とからなる造粒物に、粒径の平均値がシングルミクロンである菌体乾燥物が付着していることを特徴とする菌体組成物。 請求項1〜4に記載の菌体乾燥物または請求項5に記載の菌体組成物を含有する医薬または食品。 錠剤であることを特徴とする請求項6に記載の医薬または食品。


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