タイトル: | 公開特許公報(A)_L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の精製法 |
出願番号: | 2002161545 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C227/42,C07C229/26,C07M7:00 |
井上 幸次 久村 孝治 JP 2004010483 公開特許公報(A) 20040115 2002161545 20020603 L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の精製法 協和油化株式会社 000162607 小栗 昌平 100105647 本多 弘徳 100105474 市川 利光 100108589 高松 猛 100115107 栗宇 百合子 100090343 井上 幸次 久村 孝治 7 C07C227/42 C07C229/26 C07M7:00 JP C07C227/42 C07C229/26 C07M7:00 3 OL 7 4H006 4H006AA02 4H006AB84 4H006AD15 4H006BB11 4H006BB14 4H006BT12 4H006BU32 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の精製法に関する。得られたL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩をホスゲン化することによって、イソソアネートを与え、ポリウレタンの原料等として用いられることができる。【0002】【従来の技術】L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の製造方法としては、特開昭55−105649号に提案されている方法がある。この方法は、アミノ酸塩酸塩とアミノアルコール塩酸塩を加熱反応させてエステル化を行うに際し、水と共沸化合物をつくる有機溶媒の非存在下に、塩化水素ガスを反応系に吸収させて、エステル化を行うものであり、その精製法としては、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)の混合溶媒を再結晶溶媒として精製する方法が有効であるとしている。【0003】しかし、前記の再結晶化方法では、不純物が十分に除去することができず、再結晶化を繰り返し行うことになることから、工程が長くなり、コストが高くなる、生産効率が低下するという欠点を有する。また、濾過洗浄液を回収してリサイクル使用するに際して、沸点差があまりない低級アルコールの混合溶媒では、精製蒸留による各アルコールの分離が難しく再使用も困難になる欠点を有する。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡便な工程で、精製用再結晶溶媒のリサイクル性に優れ、且、高純度のL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩を精製する方法を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者等は鋭意検討の結果、晶析用の溶媒の組成を工夫することにより、上記、従来の技術の欠点を克服できることを見出し、本発明を成すに至った。即ち、本発明は以下の(1)〜(3)に関する。(1)芳香族炭化水素とアルコール類の混合溶液を晶析の溶媒として用いることを特徴とするL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の精製法。(2)前記芳香族炭化水素がキシレンまたはトルエンであることを特徴とする前記(1)のL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の精製法。(3)前記アルコール類がメタノールであることを特徴とする前記(1)のL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の精製法。【0006】本発明の方法により、L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩を簡易な工程で、迅速に、高純度で、且、高収率で精製することができる。また、本発明で用いた再結晶溶媒は、蒸留等により分離させやすくリサイクル性にも優れている。さらに、本発明の精製法によって得られるL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の結晶は、その結晶径が大きく、濾別時に、濾過膜等に目詰まりすることがなく、そのため、濾過速度が速い。よって、本発明の精製法は、得られるL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の濾過速度が速いことから、生産効率の点でも優れている。【0007】【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明の方法によって精製するL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩は、下記の構造式で示されるものである。【0008】【化1】【0009】L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩を含む混合物は、リジン2塩酸塩とエタノールアミン塩酸塩を原料として、塩化水素ガスを触媒としてエステル化反応を行うことにより合成される。リジン・2塩酸塩とエタノールアミン塩酸塩とのモル比は、1:0.8〜5、好ましくは1:1.2〜3.0である。用いる塩化水素ガスの量は、リジン・2塩酸塩1モル当たり毎分50〜1000ml(常温常圧換算)である。反応は、20.0kPa〜53.3kPa(絶対圧換算)、好ましくは26.7kPa〜−40.0kPa(絶対圧換算)の減圧下、温度50〜160℃、好ましくは90〜130℃で3〜15時間行われる。【0010】エステル化を行うことにより得られる上記のL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩を含む混合物には、目的物であるL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩以外に、原料であるリジン・2塩酸塩やエタノールアミン塩酸塩及びエタノールアミン塩酸塩と塩酸が反応して生成する副生物であるクロロエチルアミン塩酸塩が含まれる。本発明の方法は、それらの不純物を効率的に除去する方法であって、L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩を含む混合物を特定の有機溶媒に加熱溶解した後に、結晶化させる方法である。ここで、有機溶媒として用いるアルコール類と芳香族炭化水素としては、それぞれ、アルコール類としてはメタノール等があげられ、芳香族炭化水素としてはキシレン、トルエン等があげられる。【0011】結晶化の際の温度は、10〜100℃、好ましくは40〜80℃で行われる。溶媒の添加については、一度に添加してもよく、好ましくは、溶媒を分割滴下する。例えば、メタノール75〜95重量%、キシレン(o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン・工業用)またはトルエン5〜25重量%の混合溶液の量を、混合物中に含有するL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩重量に対し、好ましくは3〜10倍、さらに好ましくは4〜7倍、最も好ましくは5〜6倍程度用いて溶解し、含有しているL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩に対して好ましくは0.5〜15重量%相当の種晶を加たえた後、1〜5時間熟成し室温まで4〜20時間かけて冷却し、室温下で1〜5時間晶析する。また、反応物をメタノールに溶解した後に、種晶を加えてキシレンまたはトルエンを1〜6時間かけて滴下することでも同様の効果が得られる。なお、種晶を加える際の温度としては、特に限定されないが、60℃から使用される晶析溶媒の沸点の範囲であることが好ましい。【0012】晶析後は、結晶を濾別し、50〜80℃及び2.7kPa〜5.3kPa(絶対圧換算)の減圧下で乾燥し、L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の結晶を高収率および高純度で得ることができる。得られた結晶は、晶析に使用した溶媒と同じ組成の溶媒で洗浄してもよく、その際に使用される溶媒は、結晶に対して、0.5〜5倍量(重量比)であるのが好ましい。本発明の方法によって得られた、L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩は、公知の方法(特公昭60−26775号公報)に準じて、ホスゲンと反応させることにより、リジントリイソシアネートとすることができ、該化合物は、ポリウレタンの原料(WO96/17881等)等として使用することができる。また、本発明の方法で得られるL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩は、高純度であるため、ホスゲンとの反応速度が速い。【0013】【実施例】本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例のHPLC条件は、以下の方法で分析を行った。【0014】分析機器(島津製作所社製HPLC)・ポンプ:LC−10Ai・データ処理装置:class−LC10・カラムオーブン:CTO−10A・検出器:RID−10A・オートサンプラー:SIL−10Ai【0015】分析条件・カラムオーブン温度:30℃・流量:0.7ml/min・移動相:過塩素酸(70%)を520mmοl/リットルの濃度に正確に蒸留水を用いて調製する。調製後、脱気して使用する。・カラム:CROWNPAK CR(+),(ダイセル化学工業社製)・内部標準液:ο−トルイジンを3mg/mlの濃度に正確に移動相で調製する。・サンプル調製:サンプルを約100mg正確に測り取る。その中に、内部標準液を5mlのホールピッペトで正確に測り取り添加する。混合した後、HPLCへ5μl注入し分析を開始する。・計算方法:内部標準法・濾過速度の測定:真空中を4.0〜5.0kPa(絶対圧換算)に制御した状態で、晶析溶液を桐山ロート(φ60mm)に投入した時点から母液が出なくなるまでの濾過時間と濾別した母液量を測定し、下記の計算を用いて濾過速度を算出した。【0016】【数1】【0017】参考例リジン・1塩酸塩182g(1モル)を濃塩酸(35%)315g(3モル)と混合し溶解する。その後に、冷却し、内温を20〜50℃に保持しながら、エタノールアミン195g(2モル)を添加した。この混合物を掻き混ぜ機を付けた1リットルの反応フラスコに入れ、33.3kPa(絶対圧換算)で水を留去させながら、115℃で塩化水素ガス[塩化水素ガスの量はリジン・2塩酸塩1モル当り毎分1000ml(常温常圧換算)]を導入して5時間、エステル化反応行い、エステル化率約65%の反応物を得た。また、前記と同様に、エステル化反応を10時間、行うことにより、エステル化率75%の反応物を得た。ここで、エステル化率とは、以下の式で表わされる値のことである。【0018】エステル化率(%)=(A/B)×100A:生成したL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩のモル数B:原料で使用されたリジン・1塩酸塩のモル数【0019】実施例1参考例で得られた、エステル化率65%の反応物400g(L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩が、48%含有物)に対し、メタノール733g,キシレン205gの混合液を加えて60℃まで加熱し、溶解後、60℃で種晶を加え、60℃から40℃まで4時間かけて冷却し、40℃から室温(20℃)まで6時間かけて冷却した。析出した結晶を濾別し、晶析時と同一組成のメタノール/キシレン混合液321.3gを用いて結晶を洗浄し、湿結晶を得た。この結晶を60℃及び2.7kPa〜5.3kPa(絶対圧換算)の減圧下で乾燥し、L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の結晶を155g得た。この際の収率は80%であり、結晶の純度は、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略す)分析により測定した結果、99%以上であった。また、結晶の形状は、顕微鏡による観察の結果1×100μm程度(長径)の針状結晶であった。【0020】実施例2参考例で得られたエステル化率75%の反応物400g(L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩、56%含有物)に対し、メタノール845g、キシレン118gの混合液を加えて60℃まで加熱し溶解後、60℃で種晶を加え、60℃から40℃まで4時間かけて冷却し、40℃から室温(20℃)まで6時間かけて冷却した。得られた結晶を濾別し、晶析時と同一組成のメタノール/キシレン混合液321.3gを用いて結晶を洗浄し、湿結晶を得た。この湿結晶を、60℃及び、2.7kPa〜5.3kPa(絶対圧換算)の減圧下で乾燥し、L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の結晶を180g得た。この際の収率は80%であり、結晶の純度は、HPLCにより測定した結果、99%以上であった。また、結晶の形状は、顕微鏡による観察の結果、1×100μm程度(長径)の針状結晶であった。【0021】比較例1実施例2と同様、エステル化率75%の反応物(L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩が56%含有物)400gに対し、メタノール845g、エタノール100gの混合液を加えて、60℃まで加熱し、溶解後、60℃で種晶を加えて結晶の析出が確認後に熟成を行い、エタノール109gをゆっくり滴下した。その後、室温まで冷却して晶析した。得られた結晶を濾別し、晶析時と同一組成のメタノール/エタノール混合液321.3gを用いて結晶を洗浄し、湿結晶を得た。この湿結晶を60℃及び2.7kPa〜5.3kPa(絶対圧換算)の減圧下で乾燥し、L−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の結晶を146g得た。この際の収率は、65%であり、結晶の純度は、HPLCにより測定した結果、98%以上であった。また、結晶の形状は、顕微鏡による観察の結果、1×10μm程度(長径)の微細な針状結晶であった。【0022】実施例1〜2及び比較例1におけるL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の結晶のHPLC分析結果や濾別効果(固液分離)について評価した結果を表−1に示す。【0023】【表1】【0024】【発明の効果】本発明の精製法は、晶析の溶媒として芳香族炭化水素とアルコール類の混合溶液を用いることにより、固液分離が簡便で迅速に、且、高純度のL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩を得ることができ、また用いた晶析用溶媒はリサイクル性に優れる。 芳香族炭化水素とアルコール類の混合溶液を晶析の溶媒として用いることを特徴とするL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の精製法。 前記芳香族炭化水素がキシレンまたはトルエンであることを特徴とする請求項1記載のL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の精製法。 前記アルコール類がメタノールであることを特徴とする請求項1記載のL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩の精製法。 【課題】簡便な工程で、精製用再結晶溶媒のリサイクル性に優れ、且、高純度のL−リジンアミノエチルエステル・3塩酸塩を精製する方法を提供する。【解決手段】芳香族炭化水素とアルコール類の混合溶液を晶析の溶媒として用いることを特徴とし、該芳香族炭化水素としてはキシレンまたはトルエンが好ましく、該アルコール類としてはメタノールが好ましい。【選択図】 なし