生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_消臭剤及びそれを含有する飲食品並びに消臭組成物
出願番号:2002139226
年次:2010
IPC分類:A61K 8/97,A23L 2/00,A23L 2/38,A61Q 11/00


特許情報キャッシュ

清水 和正 前田 裕一 大澤 謙二 志村 進 JP 4578047 特許公報(B2) 20100903 2002139226 20020514 消臭剤及びそれを含有する飲食品並びに消臭組成物 株式会社ロッテ 307013857 浜田 治雄 100064012 清水 和正 前田 裕一 大澤 謙二 志村 進 20101110 A61K 8/97 20060101AFI20101021BHJP A23L 2/00 20060101ALI20101021BHJP A23L 2/38 20060101ALI20101021BHJP A61Q 11/00 20060101ALI20101021BHJP JPA61K8/97A23L2/00 AA23L2/38 CA61Q11/00 A61K8/00-8/99 特開2000−229118(JP,A) 特開平04−193277(JP,A) The American Physiological Society 1999,G425−430 3 2003335647 20031125 10 20040521 2007006586 20070305 星野 紹英 穴吹 智子 森井 隆信 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、ニンニク代謝臭であるアリルメチルモノスルフィドを、バラ科キイチゴ属(Rubus)に属する甜茶の含水有機溶媒又は水の抽出物を使用して消臭することを特徴とするアリルメチルモノスルフィド用消臭剤及びそれを含有する飲食品並びに消臭組成物に関する。【0002】【従来の技術】口臭は、一般に生理的口臭、食事由来の口臭、疾病由来の口臭に分類される。食事由来の口臭の原因としては、ニンニク等のにおいの強い食物の摂取が考えられる。一般にニンニクを摂取した直後は、口臭中にアリルメルカプタンやジアリルジスルフィドが多く検出されるが時間とともにその臭気は低下し、翌日には検出されない。【0003】しかしながら、Johann Taucherらの研究(J.Agric.Food Chem. 44(12),3778−3782(1996))によりモノスルフィド化合物であるアリルメチルモノスルフィド、ジメチルモノスルフィド及びケトン化合物であるアセトンは、ニンニク摂取後から呼気中に検出され、24時間以上経過しても高い濃度で検出されることが示されている。【0004】アリルメチルモノスルフィドは、ジメチルモノスルフィドよりもニンニク食後の呼気中の濃度が有意に高く、またニンニクの食後臭はアリルメチルモノスルフィドと官能的に同じにおいの質であり、ジメチルモノスルフィドが有するにおいの質とは異なっている。また、アセトンは文献において測定された呼気中の最大濃度(5ppm)と比較して、におい識別のいき値(100ppm)は20倍高いことから、ニンニク食後の呼気中のにおいとは無関係である。【0005】従って、アリルメチルモノスルフィドは、ニンニク食後の口臭の主原因物質であり、本化合物由来の臭気を消臭することが、ニンニクの代謝臭除去に有効である。【0006】アリルメルカプタンやメチルメルカプタン等のチオール化合物は、その分子内に存在する-SH基が高い反応性を示すことから▲1▼酸化剤による酸化反応、▲2▼α、β不飽和結合へのマイケル付加反応、▲3▼ポリフェノール化合物との結合反応等のメカニズムにより消臭されることが明らかとなっている。アリルメチルモノスルフィドは、チオール化合物と同様に悪臭を有する硫黄化合物であるが、反応性の高い官能基を持たないためにその反応性は一般に口臭物質とされているメチルメルカプタン等のチオール化合物より低く、消臭が困難な物質と考えられている。従来報告されている消臭素材においてもアリルメチルモノスルフィドの様なモノスルフィド化合物に対して消臭効果を示すものは少なく、チオール化合物の消臭に高い効果を示すクロロフィル化合物類(月刊フードケミカル 11号 106−110(1995))及び緑茶抽出物(特許第1330988号公報)においても、アリルメチルモノスルフィドに対しては効果が不充分である。【0007】このように、アリルメチルモノスルフィドの様なモノススルフィド化合物とアリルメルカプタンやメチルメルカプタン等のチオール化合物とは、消臭メカニズムが大きく相違するためチオール化合物に消臭効果を有する消臭剤であっても、モノスルフィド化合物には効果がないものが多い。【0008】天然物由来の成分としては、ベンズアルデヒド及びケイヒアルデヒドがモノスルフィドと反応し、消臭効果を示すことが知られている(臭気の研究、13巻、63号、19−28(1985))が、これらのアルデヒド類は特有な強い香りを持ち、実際の使用は制限されることから、モノスルフィド化合物に対して実用性が高く安全性も高い消臭剤の開発が望まれていた。【0009】バラ科キイチゴ属植物は、特許第1823565号公報においてチオール化合物であるメチルメルカプタン及び窒素化合物であるトリメチルアミンに対する消臭効果が明らかにされ、また、同属植物である甜茶を有効成分とする消臭用組成物(特開平05−269187号公報)がメチルメルカプタンに対する消臭素材として開示されている。しかしいずれも、モノスルフィド化合物であるアリルメチルモノスルフィドに対する消臭効果は明らかとなっていない。【0011】ヤマモモについては、特開昭51−27882号公報に空気浄化剤として腐敗肉片及び動物飼育室内の臭気に対する効果が明らかとなっているが、これらの臭気は一般に動植物体の分解によって生じた硫化水素、メルカプタン類等の硫黄化合物、アンモニア、アミン類等の窒素化合物、低級脂肪酸類を主要原因物質としており、アリルメチルモノスルフィドに対する消臭効果は明らかとなっていない。【0012】ハマメリスから得られる抽出物(特開2000−186025号公報)は、人体の腋臭、足臭及び体臭並びに獣臭等に対する消臭剤として開示されているが、これらの臭気成分は、イソ吉草酸を始めとする低級脂肪酸類やアルデヒド類が主であり、アリルメチルモノスルフィドが含まれている報告は見られない。従って、ハマメリス由来成分によるアリルメチルモノスルフィドに対する消臭効果は明らかとなっていない。【0013】グアバ及び紅景天についても、アリルメチルモノスルフィドに対する消臭効果に関する報告は見られない。【0014】【発明が解決しようとする課題】本発明は、食品に対しても安心して使用できる安全性の高い天然植物抽出物を有効成分として含有する消臭剤であって、モノスルフィド化合物であるアリルメチルモノスルフィドに対して強い消臭効果を示す消臭剤及びそれを含有する飲食品並びに消臭組成物を提供することである。【0015】【課題を解決する為の手段】 本発明者らは、上記課題を解決するため、副作用がなく安全性が高く古来より利用されている生薬及びハーブ等の天然物抽出物に注目し、アリルメチルモノスルフィドに対する消臭効果を示す素材を見出すため、アリルメチルモノスルフィドを悪臭源とする消臭試験を実施した。その結果、バラ科キイチゴ属(Rubus)植物、フトモモ科植物のグアバ(Psidium guajava)、ヤマモモ科植物のヤマモモ(Myrica rubra)、マンサク科植物のハマメリス(Hamamelis virginiana)及びベンケイソウ科植物の紅景天(Rhodiola sacra)より得られた抽出物が、アリルメチルモノスルフィド消臭活性を有することを見出し、本発明品を完成させた。【0016】 即ち、本願の第1の発明は、バラ科キイチゴ属(Rubus)植物、フトモモ科植物のグアバ(Psidium guajava)、ヤマモモ科植物のヤマモモ(Myrica rubra)、マンサク科植物のハマメリス(Hamamelis virginiana)及びベンケイソウ科植物の紅景天(Rhodiola sacra)からなる群より選択される1種または2種以上の抽出物を有効成分とすることを特徴とするアリルメチルモノスルフィド用消臭剤であり、本願の第2の発明は、上記アリルメチルモノスルフィド用消臭剤を含有した飲食品であり、また本願の第3の発明は、上記アリルメチルモノスルフィド用消臭剤を含有した消臭組成物である。【0017】【発明の実施の形態】本発明を以下に詳細に説明する。【0018】 本発明のアリルメチルモノスルフィド用消臭剤は、バラ科キイチゴ属(Rubus)植物、フトモモ科植物のグアバ(Psidium guajava)、ヤマモモ科植物のヤマモモ(Myrica rubra)、マンサク科植物のハマメリス(Hamamelis virginiana)及びベンケイソウ科植物の紅景天(Rhodiola sacra)から選択される1種または2種以上を原料とする。【0019】バラ科キイチゴ属(Rubus)植物としては、ラズベリー(Rubus idaeus)、ブラックベリー(Rubus fruticosus)、カジイチゴ(Rubus trifidus)、クロミキイチゴ(Rubus allegheniensis)、甜茶(Rubus suavissimus)等が挙げられる。【0020】 バラ科キイチゴ属(Rubus)植物、フトモモ科植物のグアバ(Psidium guajava)については、果皮、葉、果肉、果実、材、樹皮、根、好ましくはその葉を乾燥させたものを使用する。ヤマモモ(Myrica rubra)及びハマメリス(Hamamelis virginiana)についても植物各部位が使用可能であるが、好ましくはその樹皮を乾燥させたものが適している。紅景天(Rhodiola sacra)についても同様に植物各部が使用可能であるが、好ましくはその根及び根茎を乾燥させたものが原料として適している。【0021】本発明の有効成分である上記植物の抽出物を得る方法については特に限定しないが、上記植物を適当な粉砕手段で粉砕し、溶媒抽出等の方法により抽出物を調製する。抽出溶媒としては、水及びメタノール、エタノール、n−プロパノール並びにn−ブタノール等の低級アルコール、エーテル、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、グリセリン、プロピレングリコール等の有機溶媒の1種または2種以上を混合して使用するが、好ましくは水または親水性の有機溶媒を使用する。さらに、本発明の抽出物は、人にまたは飲食品として用いられことが多いことを考慮すると、抽出溶媒としては安全性の面から水とエタノールとの組み合わせを用いるのが好ましい。【0022】抽出条件としては、高温、室温、低温のいずれかの温度で抽出することが可能であるが、50〜90℃で1〜5時間程度抽出するのが好ましい。得られた抽出物は、濾過し、抽出溶媒を留去した後、減圧下において濃縮または凍結乾燥してもよい。また、これらの抽出物を有機溶剤、カラムクロマトグラフィ等により分画精製したものも使用することができる。【0023】また、本発明のアリルメチルモノスルフィド用消臭剤は、香り、呈味性に優れ、安全性が高いことから、例えば、含そう剤、練り歯磨き、消臭スプレー等の消臭組成物、或いはチューインガム、キャンディ、錠菓、グミゼリー、チョコレート、ビスケット、スナック等の菓子、アイスクリーム、シャーベット、氷菓等の冷菓、飲料、パン、ホットケーキ、乳製品、ハム、ソーセージ等の畜肉製品類、カマボコ、チクワ等の魚肉製品、惣菜類、プリン、スープ並びにジャム等の飲食品に配合し、日常的に利用することが可能である。【0024】その添加量としては、飲食品または消臭組成物に対して乾燥抽出物を約0.001重量%以上、好ましくは約0.01重量%以上添加する。さらに飲食品においては、特に嗜好性の面を考慮すると約0.001〜5重量%、好ましくは約0.01〜1重量%の割合になるように添加するのが好適である。【0025】さらに、本発明のアリルメチルモノスルフィド用消臭剤は、サイクロデキストリン等の他の一般的な消臭剤と組み合せて使用することも可能である。【0026】 本発明品の原料となるバラ科キイチゴ属(Rubus)植物(ラズベリー、ブラックベリー、甜茶等)は、ハーブティや茶として飲用され、その果実は食用されているものであり、また、ヤマモモの樹皮、ハマメリス樹皮及び紅景天の根及び根茎は、生薬、食品素材、ハーブティ並びに食品添加物として古くより用いられているものである。フトモモ科に属するグアバ(Psidium guajava)は、バンジロウ、バンザクロとも呼ばれ、日本ではその葉から得た茶を飲用し、広く分布している熱帯アメリカではその果実をそのまま食べたり、ジャムやジュースの原料としても利用されているものである。【0027】従って、本発明品の原料となる植物は、いずれも生薬、食品素材、ハーブティ並びに天然添加物として古くより用いられているものであり、これらの植物の抽出物を有効成分とするアリルメチルモノスルフィド用消臭剤及びそれを含有する飲食品並びに消臭組成物の安全性については全く問題ない。【0028】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明品を更に詳細に説明するが、それらによって本発明品の範囲を制限するものではない。【0029】〔実施例1〕甜茶葉乾燥葉粉末20gに水400mlを加え、還流冷却器をつけて、80℃で3時間還流しながら抽出する。得られた抽出液をろ別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を4.6g得た。【0030】〔実施例2〕グアバ葉粉末20gに50%エタノール400mlを加え、還流冷却器をつけて、80℃で3時間還流しながら抽出する。得られた抽出液をろ別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を4.1g得た。【0031】 同様にして、ラズベリー葉、ブラックベリー葉、カジイチゴ葉、クロミキイチゴ葉、ヤマモモ樹皮、ハマメリス樹皮及び紅景天根について、水もしくは50%エタノールを用いて抽出し、抽出液を濃縮または凍結乾燥することにより抽出物を調製した。各抽出物の収率を表1に示した。【0032】〔対照例1〕緑茶葉粉末20gに水400mlを加え、還流冷却器をつけて、80℃で3時間還流しながら抽出する。得られた抽出液をろ別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を5.4g得た。【0033】同様にして、ローズマリー、コンフリー、セージについて、水もしくは50%エタノールを用いて抽出し、抽出液を濃縮または凍結乾燥することにより抽出物を調製した。【0034】【表1】【0035】〔試験例〕30mlのバイアル瓶中で試料10mgを0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)1mlで溶解した。これに、1ppmアリルメチルモノスルフィド溶液0.25mlを添加し、直ちにゴム栓をして混合した。コントロールとしては、試料を加えずリン酸緩衝液単独で同様に操作した。これを37℃で、2時間振とうした後、ヘッドスペースガス100μlをガスクロマトグラフに注入し、アリルメチルモノスルフィドのピークの高さを測定した。結果は予め作成したアリルメチルモノスルフィドの検量線によりアリルメチルモノスルフィド量を算出し、下記計算式により消臭率で示した。【0036】消臭率(%)=(C−S)/C【0037】式中、Cはコントロールのアリルメチルモノスルフィド量、Sは試料添加時のアリルメチルモノスルフィド量である。【0038】 アリルメチルモノスルフィドに対する消臭効果の測定結果を表2に示した。一般的に消臭効果が知られている鉄クロロフィリンナトリウム、緑茶水抽出物、ローズマリー水抽出物、コンフリー50%エタノール抽出物及びセージ50%エタノール抽出物を対照として評価したところ、消臭率は緑茶の21%以外は10%以下であった。本発明品である甜茶葉、ラズベリー葉、ブラックベリー葉、ヤマモモ樹皮、グアバ葉、ハマメリス樹皮及び紅景天根の抽出物はいずれもアリルメチルモノスルフィドに対して35%以上の消臭活性を示した。特に甜茶葉抽出物が非常に強い活性を有することがわかった。【0039】 以上の試験結果により、本発明品であるバラ科キイチゴ属植物、ヤマモモ、グアバ、ハマメリス及び紅景天より得られた抽出物は、アリルメチルモノスルフィド消臭活性を持つことが今回初めて明らかになった。【0040】【表2】【0041】 実施例1及び実施例2で示した方法により調製した本発明品を用いて、以下の処方により、散剤、錠剤、チューインガム、錠菓、飲料、練り歯磨及び消臭スプレーを製造した。【0042】【0043】【0044】【0046】【0047】【0048】これを噴射ガス(窒素ガス)とともにエアゾール容器に充填し、消臭スプレーを調製した。【0049】【発明の効果】本発明の消臭剤は、従来技術では消臭することが困難であったアリルメチルモノスルフィドを消臭する作用を有する。従って、これを飲食品及び消臭組成物に含有させて経口的に摂取したり、呼気等に吹つけることにより、ニンニクの代謝臭であるアリルメチルモノスルフィドを消臭することが可能である。【0050】また、本発明品の原料となる植物は、いずれも食品素材やハーブティ、天然添加物として古くより用いられているものであり、その安全性については全く問題はない。 ニンニク代謝臭であるアリルメチルモノスルフィドを、バラ科キイチゴ属(Rubus)に属する甜茶の含水有機溶媒又は水の抽出物を使用して消臭することを特徴とするアリルメチルモノスルフィド用消臭剤。 請求項1記載のアリルメチルモノスルフィド用消臭剤を含有することを特徴とする飲食品。 請求項1記載のアリルメチルモノスルフィド用消臭剤を含有することを特徴とする消臭組成物。


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