生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_酵素反応生成物の製造方法
出願番号:2002125787
年次:2008
IPC分類:C12P 7/64


特許情報キャッシュ

野畑 靖浩 山口 善治 JP 4142887 特許公報(B2) 20080620 2002125787 20020426 酵素反応生成物の製造方法 伯東株式会社 000234166 野畑 靖浩 山口 善治 20080903 C12P 7/64 20060101AFI20080814BHJP JPC12P7/64 C12P 7/00-7/66 BIOSIS/WPI(DIALOG) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) G-Search 特開平05−301904(JP,A) 特開平02−291292(JP,A) 特開平09−051797(JP,A) 日本生物工学会大会講演要旨集(2001)p.162 工業技術,Vol.40,No.8(1999)p.47-49 工業技術,Vol.36,No.7(1995)p.1-6 生物工学会誌,VOl.80,No.3(Mar.2002)p.118-123 機能材料,Vol.19,No.10(1999)p.24-34 3 FERM BP-2015 2003310290 20031105 11 20050413 三原 健治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、水系の酵素反応生成物の製造方法に関する。この製造方法は、リパーゼによる油脂類の改質等に適用して好適である。【0002】【従来の技術】酵素を含み、酵素の基質が分散した水系の酵素反応生成物を用いた酵素反応生成物の製造方法は、従来から知られている。例えば、リパーゼを含む水相に油脂や脂肪酸エステル等を分散することにより、油脂や脂肪酸エステルの加水分解を行うことができる。この性質を利用し、チーズの熟成促進やバターフレーバーの製造、その他、エステル合成反応やエステル交換反応の触媒としても機能するため、ステロイドの製造や各種脂肪酸エステルの改質等にも用いられている。【0003】これらリパーゼを利用した酵素反応は、リパーゼを含む水相と酵素反応基質を含む油相とが分散された酵素反応組成物を適度な温度で静置することによって進行させることができる。【0004】しかし、一般に酵素は水溶性であるが、酵素の基質は水難溶性あるいは水不溶性であり、酵素と基質との酵素反応の進行が遅くなる場合がある。【0005】そこで、従来より酵素を含む水相と基質を界面活性剤を用いてエマルションとして、酵素反応を行う方法が行われてきた。しかし、この方法では、使用する界面活性剤により酵素活性が低下する場合があったり、界面活性剤で基質が水中にミセル状態で分散させるために水相の酵素と基質の間が界面活性剤のミセルで分断され、酵素と基質の直接接触が妨げられ、基質の安定な分散性の向上の割に酵素反応が促進されない不具合がある。【0006】【発明が解決しようとする課題】かかる不具合を解消するため、例えばリパーゼを用いる場合、脂肪酸等の油溶性の基質に対して、リパーゼを疎水性の担体表面に化学結合させて固定化して酵素反応を行う方法(特開平6−38779号公報、特開平9−271387号公報、特開平10−327892号公報)が提案されている。この方法により、酵素を不溶性担体に固定化して使用することで、非水溶性条件下で基質と酵素を接触させることができる。しかし、この方法では、水溶性である酵素が担体と結合するために酵素の化学構造が変化し、酵素活性が十分発揮されない場合があること、非油溶性の基質あるいは固形の基質には適用されないこと、実用的な担体と酵素の組合せの種類は限られる等の不具合がある。【0007】また、水系の酵素反応組成物において、油脂や脂肪酸アルコールエステル等の基質の分散にポリオキシエチレンラウリルエーテルやポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等の特定の界面活性剤を使用して、酵素による加水分解を選択的に促進する方法(特開平9−51797号公報)も提案されている。しかし、この方法では、特定の基質に対して酵素の作用を促進させるものであり、界面活性剤で基質がミセルに囲まれ、酵素と基質の直接接触が妨げられることには何ら変わりなく、広く適用できるものではない。【0008】本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、水難溶性あるいは水不溶性の基質を迅速に酵素反応生成物とすることが可能な水系の酵素反応組成物を用いた酵素反応生成物の製造方法を提供することを解決すべき課題としている。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題解決のために鋭意研究を行った結果、少なくともラムノース、グルクロン酸、グルコース及びフコースを構成単糖として含む多糖類を少量含めば、水難溶性あるいは水不溶性の基質を水相に分散することができ、その安定性も優れていることを発見した。更に酵素を含む水相に基質を分散して酵素反応を行う際、当該多糖類を共存させれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。【0010】 すなわち、請求項1に係る発明は、酵素を含み、酵素の基質が分散した水系の酵素反応組成物を用いた酵素反応生成物の製造方法において、前記酵素がリパーゼであり、前記酵素反応組成物中に少なくともラムノース、グルクロン酸、グルコース及びフコースを構成単糖として含む多糖類が該酵素反応組成物に含まれていることを特徴とする酵素反応生成物の製造方法である。【0012】 請求項2に係る発明は、請求項1記載の酵素反応生成物の製造方法において、多糖類の含有量が乾燥固形分として0.005〜0.5質量%であることを特徴とする。【0013】 請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の酵素反応生成物の製造方法において、酵素反応組成物中の多糖類がアルカリゲネス レータス(Alcaligenes latus)B−16株細菌(FERM BP−2015号)の産生物であることを特徴とする。【0014】【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。【0015】本発明は、少なくともラムノース、グルクロン酸、グルコース及びフコースを構成単糖として含む多糖類を用いて酵素を含む水相と基質あるいは基質を含む油相を分散あるいはエマルションとした酵素反応組成物を調製することにより、当該酵素反応組成物を安定な分散状態に維持し、酵素と基質との酵素反応を継続的に促進させることができ、酵素反応生成物の反応効率を改善する方法である。【0016】前記多糖類は、界面活性剤と異なりミセルを形成することがなく、酵素を含む水相と基質を含む油相を安定な分散状態に維持する。【0017】本発明に利用できる酵素は、水溶性の酵素で有れば、特に限定されるものではなく、加水分解酵素、酸化還元酵素、転移酵素などが使用できる。例えば、脂質加水分解酵素のグルコシダーゼ、リパーゼやホスフォリパーゼ、ペプチド系の加水分解酵素のプロテアーゼ、澱粉など多糖類や少糖類の加水分解酵素のアミラーゼ、酸化還元酵素のグルコースオキシダーゼ、転移酵素のトランスグルコシダーゼやトランスグルタミナーゼなどがある。【0018】中でもリパーゼが好適である。リパーゼとしては、微生物由来のものであれば、ノボ ノルディスク ジャパン(株)製の「パタラーゼ」〔商品名、ムコール マイヘイ(Mucor miehei)由来〕、三共(株)製「リパーゼ三共」〔商品名、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来〕、名糖産業(株)製「リパーゼOF」〔商品名、キャンディダ シリンドラセ(Candida cylindracea)由来〕、「リパーゼQL」〔商品名、アルカリゲネス属由来〕、「リパーゼPL」〔商品名、アルカリゲネス属由来〕天野製薬(株)製「リパーゼGC」〔商品名、ジオトリカム キャンディダム(Geotricum candidum)由来〕、等をあげることができ、これらを常法により培養し、培養液および/または菌体からリパーゼを分離,精製して用いることができる。また、これらの市販品を利用してもよい。本発明で使用するリパーゼは上記の例示に限定されるものではない。また、これらの酵素は、動物、植物及び微生物由来のいずれの酵素でも良く、酵素は粗製のものでも、高純度のものでも何ら構わない。【0019】本発明に利用できる酵素の配合割合は、酵素の種類、基質の種類と目的とする分散状態、酵素反応組成物の粘度等の物性、酵素反応条件及び反応目的物により適宜、選択されれば良く、一律に決められないが、通常、酵素反応組成物に対して0.05重量%〜50重量%(以下、「重量%」を「%」とする)であり、好ましくは1〜30%である。【0020】本発明に使用できる基質は、酵素が酵素反応を起こす反応基質であり、本発明に使用される酵素が反応できる基質で有れば、特に限定されるものではなく、一般に親油性の植物油脂や動物油脂、水難溶性の植物油脂、動物油脂、蛋白質、糖質等があり、これらの単独あるいは2種以上組み合わせたものが用いられる。また、その形状は液状、半固形、固形のいずれでも構わない。【0021】具体的には、植物硬化油、パーム油、牛脂、豚脂、魚油、乳脂、ナタネ油、トウモロコシ油、大豆油、コメ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、ピーナッツ油、ひまわり油、サフラワー油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ヤシ油、パーム核油、ひまし油、桐油、パラフィン、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸の低級アルコールエステルなどを用いることができる。【0022】基質の配合割合は、使用する酵素の種類、基質の種類と目的とする分散状態、酵素反応組成物の粘度等取扱上の物性、酵素反応条件及び反応目的物により異なり一律に決められず、適宜、選択されれば良く、通常は1〜40重量%を目安とされる。【0023】また、本発明の製造方法における基質の分散形態は、基質の形状により適宜、考慮選択されれば良い。例えば、基質が液状である場合、それを単独あるいは有機溶剤に溶解して水に分散することができる。また、基質が固形状物である場合、微粉末として単独で分散したり、有機溶剤に溶解して分散したりする。【0024】本発明に使用する多糖類は、少なくともフコース、グルコース、グルクロン酸、ラムノースを構成単糖として含む多糖類であり、好ましくは下記式(1)に示されるようなグルコース、グルクロン酸、ラムノースからなる繰返し構造の主鎖からなり、主鎖中の1つのグルコースに1つのフコースが分岐した構造を有する多糖類である。【0025】【化1】【0026】上記式(1)の多糖類は、例えばアルカリゲネス レータスB−16株細菌(FERM BP−2015号)の産生物として得ることができる。アルカリゲネス レータスB−16株細菌は、通常の微生物培養方法で培養され、培養後、該培養液にアセトン、エタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒を入れると産出多糖類が不溶解物として析出する。析出物を分離して多糖類を得ることができる。【0027】微生物は一般に2種以上の多糖類を産生することが多いが、本発明の効果を妨げるものでなければ、他種の多糖類が含まれていても差し支えない。例えば、アルカリゲネス レータスB−16株細菌の産出多糖類には少なくとも2種の多糖類が含まれていることが確かめられており、培養液から分離した多糖類の構成単糖比率はモル比でフコース:グルコース:グルクロン酸:ラムノース=1:(0.5〜4):(0.5〜2):(0.5〜2)であるが、2種の多糖類を分離すると、一つは、前記一般式(1)に示すようなグルコース、グルクロン酸、ラムノースからなる繰返し構造の主鎖中にある1つのグルコースに1つのフコースが分岐した構造を有する多糖類であり、他はフコースとマンノースを繰り返し単位とする一般式(2)で示される多糖類である。【0028】【化2】【0029】前者は、フコース:グルコース:グルクロン酸:ラムノースの単糖構成からなり、その比は1:2:1:1、分子量は109程度の高分子成分である〔1998年度日本農芸化学会大会要旨集、371頁参照〕。後者は、フコースとマンノースが1:1の繰り返し構造の多糖類であり、分子量が103〜107の低分子成分である〔Y.Nohata,J.Azuma,R.Kurane,Carbohydrate Research 293,(1996)213〜222参照〕。一般式(2)で示される多糖類が、一般式(1)の多糖類中に含まれていても、水相と水に難溶性の酵素反応基質との分散の安定性を高める効果を妨げない。このため、一般式(2)で示される多糖類を除去することなく、一般式(1)の多糖類と一般式(2)の多糖類を混合状態で含まれても何ら差し支えない。【0030】多糖類の配合割合は、酵素反応組成物に対して乾燥固形分として通常、0.001〜0.5%であり、好ましくは0.05〜0.3%、より好ましくは0.01〜0.1%である。0.001%未満では、水相と基質との分散の安定性が不充分となり、酵素反応の向上に寄与しないことがある。また、0.5%を超えるて配合しても、該多糖類の配合割合に見合うだけの水相と基質の分散安定性向上及び酵素反応の向上は少なく、経済的メリットが得られないことがある。【0031】本発明の製造方法で使用される多糖類の作用は、高分子量の多糖類が水中で溶解・分散することにより該多糖類の大きな分子鎖が、機械力等でエマルジョン様あるいは微細分散状態になった親油性又は水難溶性の基質の会合及び合一を阻止して分散状態を長時間、しかも安定に維持することができる。その結果、酵素と基質との接触面積を大きくして維持し、更に界面活性剤を使用することないためにミセル形成による酵素と基質との接触阻害もなく、酵素反応が維持されて酵素反応効率の向上につながる。【0032】本発明の製造方法で使用される、少なくともフコース、グルコース、グルクロン酸、ラムノースを構成単糖として含む多糖類とともに、他の多糖類を混合して用いることも可能である。例えば、ペクチン、フコイダン、トラガントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の半合成高分子等がある。【0033】酵素反応組成物の調製方法は、特に限定されるものではないが、従来の公知の方法を使用して調製することができる。具体的には、水に少なくともフコース、グルコース、グルクロン酸、ラムノースを構成単糖として含む多糖類と酵素を溶解し、ホモミキサーで撹拌しながら基質あるいは基質を溶解した油相を加えて、基質あるいは基質を含む油相を分散・エマルション化し、更に撹拌を続けて、粒度分布計、例えば、レーザー回析式粒度分布計「LP−500」(商品名、堀場製作所(株)製)で適宜、粒径を調整して酵素反応組成物が得られる。また、基質あるいは基質を含む油相を攪拌下、本発明の多糖類、酵素を溶解した水相を添加して分散・エマルション化した本発明の酵素反応組成物を得ることもでき、いずれの方法でも良い。【0034】酵素反応組成物の調製時の温度は、使用する酵素、基質により適宜、選択して決定されれば良いが、通常、20〜70℃である。また、酵素反応組成物のエマルション調製に使用する装置としては、通常、羽根型撹拌機、ホモミキサー、ボールミル、超音波分散機、ニーダー、時方法等があり、適時、これらを単独あるいは組み合わせて用いられる。【0035】また、本発明の効果を妨げない範囲において、従来から酵素反応系で使用されてきた界面活性剤を使用しても構わない。使用できる界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、大豆リン脂質、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル類等があり、これらを単独あるいは組み合わせて用いられる。【0036】本発明の酵素反応生成物の製造方法は、特定の多糖類を用いることによって酵素反応組成物を安定な酵素―基質の分散系とすることにより、使用酵素の反応至適条件下の温度、pH、撹拌条件に維持して酵素反応を行うことによって、酵素と基質との接触面積が極めて大きくなると共に接触が分断されることもなく、酵素反応を継続的に促進させることができ、酵素反応生成物の効率を著しく高める方法である。【0037】【実施例】以下、本発明を具体化した実施例1〜20及を比較例1〜24と比較しつつ、説明する。本発明の実施例及び比較例において使用した多糖類及び界面活性剤等については、以下に示す略称で表した。【0038】(実施例で使用した多糖類)・A−1:アルカリゲネス レータスB−16株細菌の産出多糖類「アルカガム」〔商品名、伯東(株)製〕・A−2:アルカリゲネス レータスB−16株細菌の産出多糖類「アルカラン」(INCI name:Alcaligenes Polysaccharides)〔商品名、伯東(株)製〕・A−3:特開平5−301904号公報の方法に従い、アルカリゲネス レータスB−16株細菌より生産される多糖類から一般式(2)で示される低分子多糖類の除去を行なった高分子成分の多糖類(1)主体の多糖類。・A−4:多糖類A−1の0.5%水溶液を1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHを13に調整し、このアルカリ性水溶液2Lを3Lのジャーファーメンターに入れ、室温にて一晩静置した。この後、オートクレーブにより120°Cで20分間の加熱を行った後、アルカリ処理した当該多糖類水溶液を大気圧に戻して100°Cまで温度を下げ、その後、ジャーファーメンターの外部を15℃の冷水を流したステンレス製蛇管(内径20mm、長さ12.5m)で30分間、冷却し、30°Cまで冷却し、更にアルカリ処理した当該多糖類水溶液を1モル/Lの硫酸で中和し、約3倍容量のイソプロピルアルコールを添加し、析出した凝集物をろ過し、減圧乾燥してアルカリ処理した多糖類A−4を得た。【0039】(比較例で使用した多糖類)・B−1:キサンタンガム(関東化学(株)製 試薬)・B−2:アルギン酸ナトリウム(関東化学(株)製 試薬)(基質及び脂肪酸)・C−1:トリオレイン(関東化学(株)製 試薬)・C−2:ナタネ油(不二製油(株)製)・C−3:ヤシ油(不二製油(株)製)・C−4:ラウリン酸(関東化学(株)製 試薬)・C−5:ミリスチン酸(関東化学(株)製 試薬)(界面活性剤)・D−1:ショ糖脂肪酸エステル(「L−160」商品名、第一工業製薬(株))・D−2:ソルビタンモノオレイン酸エステル(「レオドールSP−S10」商品名、花王(株)製)・D−3:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(「レオドールTW−O120」商品名、花王(株)製)(酵素)・E−1:「リパーゼOF」(商品名、名糖産業(株)製、キャンディダ 属由来)・E−2:「リパーゼQL」(商品名、名糖産業(株)製、アルカリゲネス属由来)〔エステル交換反応〕(実施例1)200mlのフラスコに水79.95g入れ、プロペラ型攪拌機で100rpmで撹拌しながら多糖類(A−1)を0.01g(乾燥固形物として)加えて均一な多糖類水溶液とした。この多糖類水溶液にリパーゼ(E−1)0.04g加え、ホモミキサー「TKオートホモミキサー M型」(型式)〔商品名、特殊機化工業(株)製〕で6000rpmの回転速度で撹拌しながら、トリオレイン(C−1)10.00gとナタネ油(C−2)10.00gとを加えた。さらに、レーザー回折式粒度分布計LP−500(堀場製造所(株)製)で分散粒子の粒子径を測定しながら、平均粒子径が200μm以下となるまで撹拌を継続し、酵素反応組成物を得た。【0040】次に共栓付の10ml目盛付試験管に上記の酵素反応組成物10mlを入れ、40°Cで1日間静置して分散状態を以下のように目視評価した。【0041】○:(分離なし)油分の分離が1ml以下×:(分離有り)油分の分離が1mlを越える分離の少ない方が好ましい。【0042】得られた酵素反応組成物を50°Cで1日間静置して、エステル交換反応を行った。その間、2時間後、6時間後、24時間後にn−ヘキサンで酵素反応生成物を含む酵素反応組成物を抽出し、n−ヘキサンを蒸発させて抽出物を得た。高速液体クロマトグラフィー(ヒュレッドパッカード社製 商品名「1090M」)によって抽出物中のトリオレイン含有率(%)を測定した。エステル交換反応率(%)は、酵素反応前のトリオレイン含有率(%)の値のときをエステル交換反応率が0%とし、24〜48時間酵素反応を行わせて実質的に酵素反応が平衡に達した時のトリオレイン含有率(%)の値のときのエステル交換反応率(%)を100%として、サンプリング時のトリオレイン含有率(%)からエステル交換反応率(%)を次式より計算した。【0043】エステル交換反応率(%)=〔(X1−a)/(X1−Y1)〕×100a :サンプリング時のトリオレインの含有率(%)X1:反応前のトリオレイン含有率(%)Y1:反応平衡時のトリオレイン含有率(%)なお、高速液体クロマトグラフィーの測定条件は以下に示すとおりである。・カラム:ODS−80((株)ワイエムシー製 250mm×4.6mmID)・移動相:アセトニトリル/イソプロパノール(55/45)・流速:1ml/min・温度:37℃・検出器:UV検出器以下、同様にして表1記載の酵素配合組成物を調製し評価を行った。その結果を表1に示す。【0044】【表1】【0045】本発明の酵素反応生成物の製造方法である実施例No.1〜9では、酵素反応組成物の分散状態が24時間経っても良好で、エステル交換反応率は6時間で67%以上、24時間で82%以上に達し、酵素反応が促進されていることがわかる。一方、比較例No.1、2及び5では、酵素反応組成物が分離し、24時間経ってもエステル交換反応率は20%以下で酵素反応が遅い。また、比較例No.3、4及び6では、界面活性剤の使用により酵素反応組成物の分散状態は良好であるが、界面活性剤によってミセルが形成され、リパーゼと酵素反応基質の直接接触が妨げられ、エステル交換反応率は24時間経って42〜50%にしか達していない。【0046】〔エステル加水分解反応1〕(実施例10)多糖類(A−1)0.05g(乾燥固形物として)を水200mlに溶解し、更に塩化カルシウム6g、リパーゼ(E−2)0.05gを溶解させた水溶液を、ホモミキサー「TKオートホモミキサー M型」(型式)〔商品名、特殊機化工業(株)製〕で6000rpmの回転速度で撹拌しながら、トリオレイン20gを加えて分散し、レーザー回折式粒度分布計LP−500(堀場製造所(株)製)で分散粒子の粒子径を測定しながら、平均粒子径が200μm以下となるまで撹拌を継続し、酵素反応組成物を得た。得られた酵素反応組成物を40°Cで24時間静置して、エステル加水分解反応を行った。24時間後、n−ヘキサンで酵素反応生成物を含む酵素反応組成物を抽出し、n−ヘキサンを蒸発させて抽出物を得た。上記の「エステル交換反応」と同様に高速液体クロマトグラフィーによって抽出物中のトリオレイン含有率(%)を測定し、サンプリング時のトリオレイン含有率(%)からエステル加水分解率(%)を次式より計算した。【0047】エステル加水分解率(%)=〔(X2−b)/(X2−Y2)〕×100b:サンプリング時のトリオレインの含有率(%)X2:反応前のトリオレイン含有率(%)Y2:反応平衡時のトリオレイン含有率(%)同様に表2記載の酵素配合組成物を調製し評価を行った。その結果を表2に示す。【0048】【表2】【0049】本発明の酵素反応生成物の製造方法である実施例No.10〜15では、酵素反応組成物の分散状態が12時間経っても良好で、エステル加水分解反応率は81%以上に達し、酵素反応が促進されていることがわかる。一方、比較例No.7、9では、酵素反応組成物が分離し、12時間経ってもエステル交換反応率は26%以下で酵素反応が遅い。また、比較例No.8、10では、界面活性剤の使用により酵素反応組成物の分散状態は良好であるが、界面活性剤によってミセルが形成され、リパーゼと酵素反応基質の直接接触が妨げられ、エステル加水分解反応率は49%にしか達していない。【0050】【発明の効果】本発明の方法により、酵素反応が大きく促進される。特に、酵素と基質を含む酵素反応組成物に界面活性剤を使用することなく安定性の高い酵素反応組成物が得られ、しかも、界面活性剤のミセルによる酵素反応阻害も解消され、広範囲の酵素の反応効率を向上し、大いに産業に寄与する。 酵素を含み、酵素の基質が分散した水系の酵素反応組成物を用いた酵素反応生成物の製造方法において、前記酵素がリパーゼであり、前記酵素反応組成物中に少なくともラムノース、グルクロン酸、グルコース及びフコースを構成単糖として含む多糖類が該酵素反応組成物に含まれていることを特徴とする酵素反応生成物の製造方法。 酵素反応組成物中の多糖類の含有量が、乾燥固形分として0.005〜0.5質量%であることを特徴とする請求項1記載の酵素反応生成物の製造方法。 多糖類がアルカリゲネス レータス(Alcaligenes latus)B−16株細菌(FERM BP−2015号)の産生物であることを特徴とする請求項1又は2記載の酵素反応生成物の製造方法。


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