タイトル: | 特許公報(B2)_カリックスアレーン誘導体およびその製造方法並びに屈折率変換材料および光−熱エネルギー変換蓄積材料 |
出願番号: | 2002114628 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 69/618,C07C 69/753,C07C 67/26,C08G 8/36,C09K 5/00,G02B 1/04 |
西久保 忠臣 工藤 宏人 JP 3989281 特許公報(B2) 20070727 2002114628 20020417 カリックスアレーン誘導体およびその製造方法並びに屈折率変換材料および光−熱エネルギー変換蓄積材料 学校法人神奈川大学 592218300 JSR株式会社 000004178 大井 正彦 100078754 西久保 忠臣 工藤 宏人 20071010 C07C 69/618 20060101AFI20070920BHJP C07C 69/753 20060101ALI20070920BHJP C07C 67/26 20060101ALI20070920BHJP C08G 8/36 20060101ALI20070920BHJP C09K 5/00 20060101ALI20070920BHJP G02B 1/04 20060101ALI20070920BHJP JPC07C69/618C07C69/753 ZC07C67/26C08G8/36C09K5/00 ZG02B1/04 C07C 67/00-69/96 C08G 4/00-16/06 C09K 5/00 G02B 1/04 REGISTRY(STN) CA(STN) JST7580(JDream2) JSTPlus(JDream2) 特開2001−089764(JP,A) 特開平09−263560(JP,A) 特開平04−018052(JP,A) 特開昭61−212532(JP,A) 筒井耕介 他,環状エーテル残基を有するp−アルキルカリックスアレーンおよびカリックス(4)レゾルシンアレーン誘導体の合成とその光反応特性,高分子学会予稿集,1998年,Vol.47,No.10,p.2591-2592 西久保忠臣 他,光機能性ネットワークポリマーの最近の動向,ネットワークポリマー,1997年,Vol.18,No.1,p.8-20 西久保忠臣,高性能光硬化性オリゴマーの合成とその応用,日本化学会予稿集,2001年,80th,p.140 8 2003306470 20031028 18 20040624 中野 孝一 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、カリックスアレーン誘導体およびその製造方法、並びにこの化合物よりなる屈折率変換材料および光−熱エネルギー変換蓄積材料に関する。【0002】【従来の技術】ノルボルナジエン(以下、「NBD」ともいう。)は、紫外線の照射により、分極率の低いクワドリシクラン(以下、「QC」ともいう。)に光原子価異性化し、また、QCは、触媒との接触および短波長の光の照射により、放熱を伴ってNBDに異性化する特性を有することから、NBD構造を有する化合物は、光エネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積する光−熱エネルギー変換蓄積材料として注目されている。また、NBD構造を有する化合物は、異性化したQC構造を有する化合物と異なる屈折率を有する、すなわち光の照射によって屈折率が変化する特性を有することから、例えば光記憶素子や光スイッチシステムに用いられる屈折率変換材料への応用が期待されている。【0003】このような光−熱エネルギー変換蓄積材料および屈折率変換材料においては、容易に成膜され得るものであることが肝要である。そして、従来、成膜化が可能なNBD構造を有する化合物として、NBD構造が導入された種々のポリマーが提案されている。しかしながら、従来のNBD構造が導入されたポリマーは、光照射による屈折率の変化量が0.01程度またはそれ以下であり、屈折率の変化量が十分に大きいものではない。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その第1の目的は、光照射によって屈折率が変化し、かつ、屈折率の変化量が大きく、しかも、容易に成膜することができる新規な化合物およびその製造方法を提供することにある。本発明の第2の目的は、屈折率の変化量が大きく、しかも、容易に成膜することができる屈折率変換材料を提供することにある。本発明の第3の目的は、蓄熱量が大きく、しかも、容易に成膜することができる光−熱エネルギー変換蓄積材料を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明のカリックスアレーン誘導体は、下記一般式(1)で表されるものである。【0006】【化6】〔一般式(1)において、R1 は、炭素数が1〜4のアルキル基を示し、R2 は、下記式(a)で表される基または下記式(b)で表される基を示す。nは6〜8の整数である。〕【0007】【化7】【0008】本発明のカリックスアレーン誘導体の製造方法は、下記一般式(2)で表される化合物と、3−フェニル−2,5−ノルボルナジエン−2−カルボン酸とを反応させることにより、上記一般式(1)におけるR2 が式(a)で表される基であるカリックスアレーン誘導体を得ることを特徴とする。【0009】【化8】〔一般式(2)において、R1 は、炭素数が1〜4のアルキル基を示す。nは6〜8の整数である。〕【0010】また、本発明のカリックスアレーン誘導体の製造方法は、上記一般式(2)で表される化合物と、けい皮酸とを反応させることにより、上記一般式(1)におけるR2 が式(b)で表される基であるカリックスアレーン誘導体を得ることを特徴とする。【0011】本発明のカリックスアレーン誘導体の製造方法においては、下記一般式(3)で表される化合物と、エピブロモヒドリンまたはエピクロロヒドリンとを反応させることにより、上記一般式(2)で表される化合物を得ることが好ましい。【0012】【化9】〔一般式(3)において、R1 は、炭素数が1〜4のアルキル基を示す。nは6〜8の整数である。〕【0017】 本発明の屈折率変換材料は、上記一般式(1)で表されるカリックスアレーン誘導体よりなり、特定の光を受けることにより屈折率が変化する特性を有することを特徴とする。 この屈折率変換材料は、前記特定の光が紫外線であることが好ましく、また、光記憶素子や光スイッチシステムに用いることができる。【0018】 本発明の光−熱エネルギー変換蓄積材料は、上記一般式(1)で表されるカリックスアレーン誘導体よりなることを特徴とする。【0019】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。〔カリックスアレーン誘導体〕本発明に係るカリックスアレーン誘導体は、上記一般式(1)で表されるカリックスアレーン誘導体(以下、「特定のカリックスアレーン誘導体」という。)である。特定のカリックスアレーン誘導体を示す一般式(1)において、R1 は、炭素数が1〜4のアルキル基を示し、その具体例としては、メチル基、t−ブチル基などが挙げられる。R2 は、上記式(a)で表される基または上記式(b)で表される基を示す。また、nは6〜8の整数である。【0020】特定のカリックスアレーン誘導体のうち、上記一般式(1)においてR2 が上記式(a)で表される基であるカリックスアレーン誘導体(以下、「特定のカリックスアレーン誘導体(1)」という。)は、以下のようにして製造することができる。【0021】先ず、適宜の溶媒中において、上記一般式(3)で表される化合物と、エピプロモヒドリンまたはエピクロロヒドリンとを反応させることにより、一般式(2)で表される化合物(以下、「中間体A」という。)を合成する。上記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、p−メチルカリックス[6]アレーン、p−tert−ブチルカリックス[8]アレーンなどが挙げられる。この中間体Aを得るための反応工程(以下、「反応工程(a−1)」という。)において、溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドンなどを用いることができる。上記一般式(3)で表される化合物とエピプロモヒドリンまたはエピクロロヒドリンとの使用割合は、一般式(3)で表される化合物中の水酸基1モルに対してエピプロモヒドリンまたはエピクロロヒドリンが1.0〜2.0モルであることが好ましい。また、反応工程(a−1)においては、例えば炭酸セシウム等のアルカリ剤を添加することが好ましく、その使用割合は、一般式(3)で表される化合物中の水酸基1モルに対して1.0〜2.0モルである。また、反応工程(a−1)における反応条件としては、例えば反応温度が60〜80℃、反応時間が24〜48時間である。【0022】次いで、適宜の溶媒中において、触媒の存在下に、中間体Aと3−フェニル−2,5−ノルボルナジエン−2−カルボン酸とを反応させることにより、特定のカリックスアレーン誘導体(1)を合成する。この特定のカリックスアレーン誘導体(1)を得るための反応工程(以下、「反応工程(a−2)」という。)において、溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドンなどを用いることができる。触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラフェニルフォスフォニウムブロミドなどを用いることができる。また、触媒の使用割合は、中間体Aにおけるグリシジル基1モルに対して0.3〜0.5モルである。中間体Aと3−フェニル−2,5−ノルボルナジエン−2−カルボン酸との使用割合は、中間体Aにおけるグリシジル基1モルに対して3−フェニル−2,5−ノルボルナジエン−2−カルボン酸が1.0〜2.0モルである。また、反応工程(a−2)における反応条件としては、例えば反応温度が60〜80℃、反応時間が24〜48時間である。【0023】上記の特定のカリックスアレーン誘導体(1)の合成プロセスを、下記反応式(i)に示す。【0024】【化11】〔反応式(i)において、R1 は、炭素数が1〜4のアルキル基を示す。nは6〜8の整数である。〕【0025】特定のカリックスアレーン誘導体のうち、上記一般式(1)においてR2 が上記式(b)で表される基であるカリックスアレーン誘導体(以下、「特定のカリックスアレーン誘導体(2)」という。)は、以下のようにして製造することができる。【0026】先ず、前述の特定のカリックスアレーン誘導体(1)の製造方法と同様にして中間体Aを合成する(反応工程(a−1))。次いで、適宜の溶媒中において、触媒の存在下に、中間体Aとけい皮酸とを反応させることにより、特定のカリックスアレーン誘導体(2)を合成する。この特定のカリックスアレーン誘導体(2)を得るための反応工程(以下、「反応工程(a−3)」という。)において、溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジオキサンなどを用いることができる。触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラフェニルフォスフォニウムブロミドなどを用いることができる。また、触媒の使用割合は、中間体Aにおけるグリシジル基1モルに対して1.0〜2.0モルである。中間体Aとけい皮酸との使用割合は、中間体Aにおけるグリシジル基1モルに対して3−フェニル−2,5−ノルボルナジエン−2−カルボン酸が1.0〜2.0モルである。また、反応工程(a−3)における反応条件としては、例えば反応温度が60〜80℃、反応時間が24〜48時間である。【0027】上記の特定のカリックスアレーン誘導体(2)の合成プロセスを、下記反応式(ii)に示す。【0028】【化12】〔反応式(ii)において、R1 は、炭素数が1〜4のアルキル基を示す。nは6〜8の整数である。〕【0036】〔用途〕 本発明に係る特定のカリックスアレーン誘導体は、カリックスアレーン骨格を有するため、容易に成膜することが可能である。 具体的には、特定のカリックスアレーン誘導体を適宜の溶媒に溶解し、得られた溶液を適宜の支持体上に塗布して乾燥処理することにより、成膜することができる。 特定のカリックスアレーン誘導体を溶解するための溶媒としては、メチルセルソルブアセテート、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、クロロホルム、塩化メチレンなどを用いることができる。【0037】 本発明に係る特定のカリックスアレーン誘導体は、NBD構造またはシンナモイル基を有するため、後述する実施例から明らかなように、いずれも特定の光例えば紫外線を受けることによって屈折率が変化する特性を有し、かつ、屈折率の変化量が大きく、しかも、カリックスアレーン骨格を有するため、容易に成膜することが可能である。また、本発明に係る特定のカリックスアレーン誘導体は、光エネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積する特性を有し、かつ、蓄熱量が大きいものである。従って、本発明に係る特定のカリックスアレーン誘導体は、光記憶素子や光スイッチシステムなどに用いられる屈折率変換材料として極めて有用であり、また、光−熱エネルギー変換蓄積材料として極めて有用である。【0038】【実施例】以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0039】 以下の実施例において、原料および溶媒等として下記のものを使用した。(1)p−メチルカリックス[6]アレーン(以下、「MCA」という。)としては、市販品を、テトラヒドロフラン(良溶媒)およびメタノール(貧溶媒)を用いて2回再沈精製したものを使用した。(2)p−tert−ブチルカリフレックス[8]アレーン(以下、「BCA」という。)としては、市販品を、クロロホルムを用いて1回再結晶したものを使用した。(3)テトラブチルアンモニウムブロミド(以下、「TBAB」という。)としては、市販品を、脱水酢酸エチルを用いて2回再結晶したものを使用した。(4)3−フェニル−2,5−ノルボルナジエン−2−カルボン酸(以下、「PNC」という。)としては、市販品を、n−ヘキサンを用いて1回再結晶したものを使用した。(5)1−ブロモ−2−クロロエタン(以下、「BCE」という。)としては、市販品を、塩化カルシウム(乾燥剤)を用いて蒸留精製したものを使用した。(6)β−シクロデキストリン(以下、「β−CD」という。)としては、市販品を、蒸留水を用いて2回再結晶したものを使用した。(7)N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」という。)としては、市販品を、水素化カルシウム(乾燥剤)を用いて蒸留精製したものを使用した。(8)水素化ナトリウムとしては、市販品をそのまま使用した。【0040】また、測定装置としては、下記のものを使用した。(1)赤外分光光度計:日本分光(株)製「FT/IR−420」(2)紫外分光光度計:(株)島津製作所製「UV−2500PC」(3) 1H核磁気共鳴装置:日本電子(株)製「JNM−FX−200」(200MHz)および「JNM−α500」(500MHz)(4)質量分析装置(MALDI−TOF−MS):(株)島津製作所製「SHIMAZU/KRATOSマトリックス支援レーザー離脱イオン化飛行時間型質量分析装置 KOMPACT MALDI IV tDE」(5)エリプソメーター:ガードナー社製「L115Bエリプソメーター」【0041】〈実施例1〉(1)中間体Aの合成:MCA1.20g(10mmol/OH)および炭酸セシウム3.92g(12mmol)の混合物に、NMP12mL(0.8mol/L)を添加し、50℃で3時間攪拌した。その後、エピブロモヒドリン(以下、「EBH」という。)1.64g(12mmol)を滴下し、さらに50℃で48時間の条件で反応させた。反応が終了した後、反応溶液から副生成物であるCsBrをろ別し、当該反応溶液をクロロホルムによって希釈した後、この希釈溶液に対して蒸留水による洗浄を5回行い、さらにクロロホルム相に乾燥剤として無水炭酸ナトリウムを添加して乾燥処理を行った。次いで、良溶媒としてクロロホルムを用い、貧溶媒としてメタノールを用いて2回再沈精製を行い、60℃で24時間減圧乾燥することにより、白色の粉末固体1.21gを得た。IR分析、 1H−NMR分析および質量分析の結果から、得られた生成物は、下記式(イ)で表される化合物(5,11,17,23,29,35−ヘキサメチル−37,38,39,40,41,42−ヘキサキス(グリシジロキシ)カリックス[6]アレーン)であると同定された。収率は69%であった。また、 1H−NMRスペクトルにおいて、グリシジル基に基づく2.90〜3.05ppmのシグナルおよびベンゼン環に基づく6.67ppmのシグナルの積分強度比から、MCAにおける水酸基に対するエーテル化率を算出したところ、100%であった。以下、この生成物を「中間体(A−1)」とする。【0042】【化15】【0043】また、中間体(A−1)のIR分析、 1H−NMR分析および質量分析の結果を下記に示す。○IR(film,cm-1):1467(vC=C of aromatic),1215(vPh−O−C),911(vC−O−C of cyclic ether)○ 1H NMR(200MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):1.85〜2.72(m,5.0H,CH3 ,Ha ,Hb ),2.90〜3.05(m,1.0H,Hc ),3.19〜4.32(m,3.8H,Hd ,He ,Ph−CH2 ),6.67(s,2H,aromatic H)○質量分析(MALDI−TOF−MS):実測値(m/z)1096.02,計算値(m/z)1095.36[M+K]+ 【0044】(2)特定のカリックスアレーン誘導体の合成:中間体(A−1)0.529g(0.5mmol/OH)、PNC0.96g(4.5mmol)およびTBAB0.073g(0.225mmol)の混合物に、NMP4.5mL添加し、70℃で15時間の条件で反応させた。反応が終了した後、反応溶液を酢酸エチルによって希釈し、この希釈溶液に対して蒸留水による洗浄を5回行い、さらに酢酸エチル相に乾燥剤として硫酸マグネシウムを添加して乾燥処理を行った。次いで、乾燥剤をろ別した後、良溶媒としてクロロホルムを用い、貧溶媒としてメタノールを用いて2回再沈精製を行い、60℃で24時間減圧乾燥することにより、褐色の粉末固体0.776gを得た。IR分析および 1H−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(ロ)で表される化合物であると同定された。収率は68%であった。また、 1H−NMRスペクトルにおいて、MCAにおけるメチル基に基づくシグナルを基準とし、NBD残基におけるオレフィン部位に基づくシグナルの積分強度比から、グリシジル基に対するエステル化率を算出したところ、97%であった。以下、この生成物を「カリックスアレーン誘導体(I)」とする。【0045】【化16】【0046】また、カリックスアレーン誘導体(I)のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示す。○IR(film,cm-1):3478(νOH),1696(νC=C of ester ),1593(νC=C in NBD),1455(νC=C of aromatic),1235,1217(νPh−O−C of ether )○ 1H NMR(200MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):1.93〜2.08(m,1.9H,CH2 in NBD),2.16(s,3H,CH3 ),3.58〜4.33(m,8.6H,Ha ,Hb ,Ph−CH2 ,Hc ,Hd ,He ,CH in NBD),6.45〜7.53(m,8.6H,CH=CH in NBD,aromatic H)【0047】〈実施例2〉(1)中間体Aの合成:BCA0.811g(5.0mmol/OH)および炭酸セシウム2.281g(7mmol)の混合物に、NMP5mL(1.0mol/L)を添加し、50℃で3時間攪拌した。その後、EBH0.959g(7.0mmol)を滴下し、さらに50℃で48時間の条件で反応させた。反応が終了した後、反応溶液から副生成物であるCsBrをろ別し、当該反応溶液をクロロホルムによって希釈した後、この希釈溶液に対して蒸留水による洗浄を5回行い、さらにクロロホルム相に乾燥剤として無水炭酸ナトリウムを添加して乾燥処理を行った。次いで、良溶媒としてクロロホルムを用い、貧溶媒としてメタノールを用いて2回再沈精製を行い、60℃で24時間減圧乾燥することにより、白色の粉末固体1.08gを得た。IR分析、 1H−NMR分析および質量分析の結果から、得られた生成物は、下記式(ハ)で表される化合物(5,11,17,23,29,35,41,47−オクタ−tert−ブチル−49,50,51,52,53,54,55,56−オクタキス(グリシジロキシ)カリックス[8]アレーン)であると同定された。収率は50%であった。また、 1H−NMRスペクトルにおいて、グリシジル基に基づく3.09ppmのシグナルおよびt−ブチル基に基づく1.11ppmのシグナルの積分強度比から、BCAにおける水酸基に対するエーテル化率を算出したところ、100%であった。以下、この生成物を「中間体(A−2)」とする。【0048】【化17】【0049】また、中間体(A−2)のIR分析、 1H−NMR分析および質量分析の結果を下記に示す。○IR(film,cm-1):1478(vC=C of aromatic),1247(vPh−O−C),909(vC−O−C of cyclic ether)○ 1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):1.11(s,9H,C(CH3 )3 ),2.30〜2.58(m,2.0H,Ha ,Hb 3.08〜3.10(m,1.0H,Hc ),3.40〜4.15(m,4.3H,Hd ,He ,Ph−CH2 ),6.96(s,2.0H,aromatic H)○質量分析(MALDI−TOF−MS):実測値(m/z)1783.21,計算値(m/z)1784.42[M+K]+ 【0050】(2)特定のカリックスアレーン誘導体の合成:中間体(A−2)0.87g(4.0mmol/OH)、PNC1.27g(6.0mmol)およびTBAB0.097g(0.3mmol)の混合物に、NMP6mL添加し、70℃で15時間の条件で反応させた。反応が終了した後、反応溶液を酢酸エチルによって希釈し、この希釈溶液に対して蒸留水による洗浄を5回行い、さらに酢酸エチル相に乾燥剤として硫酸マグネシウムを添加して乾燥処理を行った。次いで、乾燥剤をろ別した後、良溶媒としてクロロホルムを用い、貧溶媒としてメタノールを用いて2回再沈精製を行い、60℃で24時間減圧乾燥することにより、褐色の粉末固体0.776gを得た。IR分析および 1H−NMR分析および質量分析の結果から、得られた生成物は、下記式(ニ)で表される化合物であると同定された。収率は26%であった。また、 1H−NMRスペクトルにおいて、BCAにおけるt−ブチル基に基づくシグナルを基準とし、NBD残基におけるオレフィン部位に基づくシグナルの積分強度比から、グリシジル基に対するエステル化率を算出したところ、93%であった。以下、この生成物を「カリックスアレーン誘導体(II)」とする。【0051】【化18】【0052】また、カリックスアレーン誘導体(II)のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示す。○IR(film,cm-1):3443(νOH),1698(νC=C of ester ),1594(νC=C in NBD),1481(νC=C of aromatic),1086(ν 1087 Ph−O−C of ether ),1236(νC−O−C of ester )○ 1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):1.04(bs,9H,C(CH3 )3 ),2.07(d,1.9H,CH2 in NBD),3.56〜4.02(m,8.5H,Ha ,Hb ,Ph−CH2 ,Hc ,Hd ,He ,CH in NBD),6.82〜7.43(m,8.5H,CH=CH in NBD,aromatic H)【0053】〈実施例3〉実施例1と同様にして中間体(A−1)を調製し、この中間体(A−1)1.059g(6mmol/OH)、けい皮酸1.333g(9mmol)およびTBAB0.1451g(0.45mmol)の混合物に、NMP9mL(0.7mol/L)を添加し、70℃で16時間の条件で反応させた。反応が終了した後、反応溶液を酢酸エチルによって希釈し、この希釈溶液に対して蒸留水による洗浄を5回行い、さらに酢酸エチル相に乾燥剤として硫酸マグネシウムを添加して乾燥処理を行った。次いで、乾燥剤をろ別した後、良溶媒としてクロロホルムを用い、貧溶媒としてメタノールを用いて2回再沈精製を行い、60℃で24時間減圧乾燥することにより、褐色の粉末固体0.972gを得た。IR分析および 1H−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(ホ)で表される化合物であると同定された。収率は54%であった。また、 1H−NMRスペクトルにおいて、MCAにおけるメチル基に基づくシグナルを基準とし、シンナモイル基におけるオレフィン部位に基づくシグナルの積分強度比から、グリシジル基に対するエステル化率を算出したところ、85%であった。以下、この生成物を「カリックスアレーン誘導体(III )」とする。【0054】【化19】【0055】また、カリックスアレーン誘導体(III )のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示す。○IR(film,cm-1):3414(νOH),1718(νC=C of ester ),1637(νC=C in CM),1481(νC=C of aromatic),1253(νPh−O−C of ether ),1204(νC−O−C of ester )○ 1H NMR(200MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):2.10(s,3H,CH3 ),3.51〜3.82(m,4.0H,Ha ,Hb ,Ph−CH2 ),4.21〜4.27(m,3.0H,Hc ,Hd ,He ),6.42(d,0.8H,Hf ),6.68(s,2.0H,aromatic H in MCA),7.34(m,4.3H,aromatic H in CM),7.64(d,0.8H,Hg )【0062】〔カリックスアレーン誘導体の特性〕(1)光反応特性: カリックスアレーン誘導体(I)およびカリックスアレーン誘導体(II)の各々2mgを、テトラヒドロフラン2mLに溶解し、得られた溶液の各々を、石英セルの内壁面に塗布し、室温で2時間減圧乾燥処理することにより、薄膜を形成した。石英セル内に形成された薄膜に対して、500Wキセノンランプ「UXL−500D−O」(ウシオ電機(株)製)および熱線カットフィルター「HA50」(HOYA(株)製)を用い、1.20mW/cm2 (310nm)の条件で、光照射時間を変えながら光照射処理を行うと共に、紫外分光光度計により、当該薄膜における紫外線の吸光度の変化を測定した。結果を図1および図2に示す。【0063】 図1の結果から、カリックスアレーン誘導体(I)よりなる薄膜においては、NBD構造に基づく最大吸収波長281nmの紫外線の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、波長249nmに等吸収点が確認されたことにより、NBD構造からこれに対応するQC構造への光異性化反応は、副反応が生じることなしに進行することが理解される。また、光異性化反応は、光照射時間が300秒間で完了することが確認された。 図2の結果から、カリックスアレーン誘導体(II)よりなる薄膜においては、NBD構造に基づく最大吸収波長279nmの紫外線の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、波長249nmに等吸収点が確認されたことにより、NBD構造からこれに対応するQC構造への光異性化反応は、副反応が生じることなしに進行することが理解される。また、光異性化反応は、光照射時間が300秒間で完了することが確認された。【0064】 また、カリックスアレーン誘導体(I)およびカリックスアレーン誘導体(II)における異性化反応率を一次速度式にプロットした結果を図3に示す。 図3の結果から、カリックスアレーン誘導体(I)およびカリックスアレーン誘導体(II)における光異性化反応は、いずれも一次で進行していることが理解される。【0065】(2)屈折率変化:カリックスアレーン誘導体(I)およびカリックスアレーン誘導体(II)の各々をメチルセルソルブアセテートに溶解し、得られた溶液を、スピンナー(浅沼製作所(株)製)によってシリコン板に塗布して乾燥処理することにより、厚みが約1.0μmの薄膜を形成した。得られた薄膜に対し、250W超高圧水銀等を用いて20分間紫外線を照射し、エリプソメーターを用い、波長632.8nmのレーザー光により、紫外線照射前後における屈折率をそれぞれ6回測定し、最大値および最大値を除く4回の測定値の平均値を算出すると共に、紫外線照射前後における屈折率の変化量を求めた。また、カリックスアレーン誘導体(III )をメチルセルソルブアセテートに溶解し、得られた溶液を、スピンナーによってシリコン板に塗布して乾燥処理することにより、厚みが約0.1μmの薄膜を形成した。得られた薄膜に対し、250W超高圧水銀等を用いて20分間紫外線を照射し、エリプソメーターを用い、波長632.8nmのレーザー光により、紫外線照射前後における屈折率をそれぞれ6回測定し、最大値および最大値を除く4回の測定値の平均値を算出すると共に、紫外線照射前後における屈折率の変化量を求めた。以上、結果を表1に示す。【0066】【表1】【0067】表1の結果から明らかなように、カリックスアレーン誘導体(I)〜カリックスアレーン誘導体(III )の各々は、紫外線が照射されることによって屈折率が変化する特性を有し、また、屈折率の変化量が大きいものであり、屈折率変換材料として有用なものであることが確認された。【0068】(3)熱的特性: カリックスアレーン誘導体(I)およびカリックスアレーン誘導体(II)の各々をテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液の各々を、ガラス板に塗布し、室温で2時間減圧乾燥処理することにより、薄膜を形成した。得られた薄膜に対して、500Wキセノンランプ「UXL−500D−O」(ウシオ電機(株)製)により、1時間光照射処理を行った。この薄膜について、示差走査熱量計(DSC)「EXTRA 6000 DSC6200」(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/minの条件で、示差走査熱分析を行うことにより、蓄熱量を測定した。 また、カリックスアレーン誘導体(I)〜カリックスアレーン誘導体(III )について、窒素気流下、昇温速度10℃/minの条件で、熱重量−示差熱分析を行うことにより、重量減少開始温度および5%重量減少温度を測定した。 以上、結果を表2に示す。【0069】【表2】【0070】 表2の結果から明らかなように、カリックスアレーン誘導体(I)およびカリックスアレーン誘導体(II)の各々は、紫外線が照射されることにより、当該紫外線エネルギーを熱エネルギーとして蓄積する特性を有し、また、蓄熱量が大きいものであり、光−熱エネルギー変換蓄積材料として有用なものであることが確認された。 また、カリックスアレーン誘導体(I)〜カリックスアレーン誘導体(III )の各々は、いずれも重量減少開始温度が300℃以上であり、高い耐熱性(耐熱劣化性)を有するものであることが確認された。【0071】【発明の効果】 本発明に係る特定のカリックスアレーン誘導体は、光照射によって屈折率が変化し、かつ、屈折率の変化量が大きく、しかも、容易に成膜することができるものである。 本発明のカリックスアレーン誘導体の製造方法によれば、特定のカリックスアレーン誘導体を有利に製造することができる。 本発明に係る屈折率変換材料は、屈折率の変化量が大きく、しかも、容易に成膜することができるものである。 本発明に係る光−熱エネルギー変換蓄積材料は、蓄熱量が大きく、しかも、容易に成膜することができるものである。【図面の簡単な説明】【図1】 実施例1に係るカリックスアレーン誘導体(I)における紫外線の吸光度の変化を示す図である。【図2】 実施例2に係るカリックスアレーン誘導体(II)における紫外線の吸光度の変化を示す図である。【図3】 カリックスアレーン誘導体(I)およびカリックスアレーン誘導体(II)における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。 下記一般式(1)で表されるカリックスアレーン誘導体。〔一般式(1)において、R1 は、炭素数が1〜4のアルキル基を示し、R2 は、下記式(a)で表される基または下記式(b)で表される基を示す。nは6〜8の整数である。〕 下記一般式(2)で表される化合物と、3−フェニル−2,5−ノルボルナジエン−2−カルボン酸とを反応させることにより、請求項1に記載の一般式(1)におけるR2 が式(a)で表される基であるカリックスアレーン誘導体を得ることを特徴とするカリックスアレーン誘導体の製造方法。〔一般式(2)において、R1 は、炭素数が1〜4のアルキル基を示す。nは6〜8の整数である。〕 請求項2に記載の一般式(2)で表される化合物と、けい皮酸とを反応させることにより、請求項1に記載の一般式(1)におけるR2 が式(b)で表される基であるカリックスアレーン誘導体を得ることを特徴とするカリックスアレーン誘導体の製造方法。 下記一般式(3)で表される化合物と、エピブロモヒドリンまたはエピクロロヒドリンとを反応させることにより、一般式(2)で表される化合物を得ることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のカリックスアレーン誘導体の製造方法。〔一般式(3)において、R1 は、炭素数が1〜4のアルキル基を示す。nは6〜8の整数である。〕 請求項1に記載のカリックスアレーン誘導体よりなり、特定の光を受けることにより屈折率が変化する特性を有することを特徴とする屈折率変換材料。 前記特定の光が紫外線であることを特徴とする請求項5に記載の屈折率変換材料。 光記憶素子や光スイッチシステムに用いられることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の屈折率変換材料。 請求項1に記載のカリックスアレーン誘導体よりなることを特徴とする光−熱エネルギー変換蓄積材料。