タイトル: | 特許公報(B2)_共役リノール酸の製造法 |
出願番号: | 2002110773 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C11C 3/14,A23C 9/123,C12P 7/64,A23L 1/29,C12R 1/225 |
水澤 直美 工藤 聰 酒井 正士 JP 4213906 特許公報(B2) 20081107 2002110773 20020412 共役リノール酸の製造法 株式会社ヤクルト本社 000006884 佐藤 正年 100092082 佐藤 年哉 100099586 水澤 直美 工藤 聰 酒井 正士 20090128 C11C 3/14 20060101AFI20090108BHJP A23C 9/123 20060101ALI20090108BHJP C12P 7/64 20060101ALI20090108BHJP A23L 1/29 20060101ALN20090108BHJP C12R 1/225 20060101ALN20090108BHJP JPC11C3/14A23C9/123C12P7/64A23L1/29C12R1:225 C11C 3/14 A23C 9/123 C12P 7/64 A23L 1/29 C12R 1/225 CAplus(STN) REGISTRY(STN) JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) Science Direct PubMed 国際公開第00/021379(WO,A1) Int.J.Syst.Evol.Microbiol.,2000年,50(6),p.2127-2133 J. Am. Oil Chem.Soc.,2002年 2月,Vol.79,No.2,p.159-163 油化学討論会要旨集,2001年,Vol.40th,p.53-54 Food Chemistry,2000年,Vol.69,No.1,p.27-31 4 2003306693 20031031 12 20041028 近藤 政克 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、Lactobacillus oris、Lactobacillus pontis及びLactobacillus panis から選ばれる1種又は2種以上の乳酸菌を利用して特定の共役脂肪酸を効率よく製造する方法及びこの方法により得られた共役脂肪酸を含有する飲食品に関するものである。【0002】【従来の技術】共役脂肪酸は隣り合う炭素が単結合を挟んで二重結合を持つ脂肪酸であるが、とりわけ炭素数18の脂肪酸分子内に共役ジエンを1個持つ共役リノール酸は、様々な生理活性を持つことが明らかにされている。【0003】共役リノール酸を工業的に製造する方法としては、例えばリノール酸を含む油脂、あるいは遊離型のリノール酸をエチレングリコールなどの有機溶媒下で共役化するアルカリ共役化法が知られている。【0004】アルカリ共役化法では、通常、不飽和脂肪酸と過剰のアルカリとを有機溶媒中で150℃以上に加熱する。この時、得られる共役脂肪酸は、二重結合の結合位置や配置が異なる混合物の形であり、例えば原料にリノール酸を用いた場合には、cis-9, trans-11型あるいはtrans-9, cis-11型、trans-10, cis-12型の共役リノール酸が得られ、この他にも幾つかの位置あるいは幾何異性体を含んでいる。【0005】従って、上記共役脂肪酸の生理作用は、共役脂肪酸の混合物としての作用であり、特定の共役脂肪酸が製造できれば学術的にも産業的にも応用価値は高い。また、アルカリ共役化法では、環化およびその他の副反応も起こり、共役脂肪酸の収率が低下すること、精製が困難になることなどの問題点も指摘されている。【0006】一方、微生物あるいはその酵素が共役脂肪酸を作ることが報告されている。例えば、ルーメン細菌が多価不飽和脂肪酸から共役脂肪酸を産生すること(Shorland F.B., et al., Nature , vol.175, p.1129, 1955)をはじめとして、Treponema(Yokoyama, et al., J. Bacteriology , vol.107,p519-527,1971)、Butyrivibrio fibrisolvens (Kepler C.R., et al., J. Biol. Chem., vol.242, p5686-92, 1967)、Propionibacterium freudenreichii(Jiang J., Doctoral thesis, Swedish Uni. Uppsala, 1998 )、種々の肺の病原菌の一割強(Jack C.I.A., et al., Clinica Chlimica Acts., vol224, p139-4, 1994 )などがリノール酸異性化活性を持ち、また、これらの微生物によって産生される共役リノール酸はcis-9、trans-11型異性体が主体であることも報告されている。【0007】一方、反芻動物は自らの体内でcis-9,trans-11型共役リノール酸を産生していることから、乳製品や畜肉にはcis-9,trans-11型共役リノール酸が多く含有されており、従って、cis-9,trans-11型共役リノール酸は通常の食生活でヒトが摂取する機会の多い共役リノール酸であると考えられる。それゆえ、本異性体の生理効果については多くの研究が行われ、種々の癌に対する防御作用があることが明らかとなってきた(Ha, Y.L., et al., Cancer Research vol.50, p1097-1101, 1990, Ip C., et al., Cancer Research vol.51, p6118-6124 )。【0008】以上のように、微生物を用いれば、前述のアルカリ異性化法に比べ副産物が少なく、抗癌作用の期待されるcis-9,trans-11型共役リノール酸含量の高い生成物が得られることから、微生物、中でも食品への利用価値が高い乳酸菌を用いた共役リノール酸製造に関しては、精力的に研究が進められており、いくつかの乳酸菌がリノール酸から共役リノール酸への変換能力を持つこと(京大院農・松村賢司ら、1999年度日本農芸化学会、福岡)や、また発酵乳中で乳酸菌を用いて共役リノール酸を製造できること(Tung Y. Lin, et al., Food Chemistry vol.67, p1-5, 1999、Tung Y. Lin, et al., Food Chemistry vol.69, p27-31, 2000)などが報告されている。【0009】しかしながら、上述した種々の微生物による共役化反応ではcis-9,trans-11型共役リノール酸以外に all trans型共役リノール酸もまた同時に副産してしまうことがわかってきた。【0010】【発明が解決しようとする課題】前述の通り、アルカリ共役化法は、高温における反応のため副反応が起こりやすく特定の共役脂肪酸を得ることが困難であり、その後の精製工程が煩雑であるなどの問題点があった。更に、微生物による変換反応によって得られる共役リノール酸では、all trans型共役リノール酸もまた同時に副産してしまい、cis-9, trans-11型共役リノール酸のみを選択的に得る方法については現在のところまだ報告されていない。【0011】本発明は、生理活性が高いとされているcis-9,trans-11型共役リノール酸に代表される共役脂肪酸を選択的かつ高効率で製造する製造法を得ることを目的とする。【0012】【課題を解決するための手段】 本発明に係る共役リノール酸の製造法では、ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及び/又はラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis)の乳酸菌を用いて二重結合を少なくとも二つ以上有する不飽和脂肪酸を共役化する工程を含み、 前記二重結合を少なくとも二つ以上有する不飽和脂肪酸がリノール酸であり、前記共役化する工程によって、cis-9,trans-11型の共役リノール酸を得ることにより、上述の課題を解決するものである。【0014】 本発明においては、二重結合を少なくとも二つ以上有する不飽和脂肪酸を含有する培地に、ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及び/又はラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis)の乳酸菌を接種して培養することが好ましい。このための培地として、乳培地を用いることが好適である。【0015】 本発明は更に、上述の本発明による方法によって得られた共役脂肪酸を含有する飲食品を提供することができる。【0016】【発明の実施の形態】 本発明による方法においては、ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及び/又はラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis)の乳酸菌を用いて二重結合を少なくとも二つ以上有する不飽和脂肪酸を共役化する工程を含み、 前記二重結合を少なくとも二つ以上有する不飽和脂肪酸がリノール酸であり、前記共役化する工程によって、cis-9,trans-11型の共役リノール酸を得るものであるため、生理活性が高いとされているcis-9,trans-11型共役リノール酸に代表される共役脂肪酸を選択的かつ高効率で製造することができる。【0017】本発明による共役脂肪酸の製造方法で用いられるラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)は人の唾液から分離された乳酸菌である(Farrow J.A.E. et al., Int. J. Syst. Bacteriol.vol.38, p116, 1988)。菌株としては、例えば、Lactobacillus oris NCD02160(ATCC49062), NCD02161, NCD02162, NCD02163, NCD02164等が挙げられ、特に、NCD02160(ATCC49062)が好ましい。【0018】また、ラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis)は、ライ麦パン種から分離された乳酸菌であり(Vogel,R.F., et al., Int. J. Syst. Bacteriol., vol.44, p223-229, 1994)、菌株としては、例えば、Lactobacillus pontis ATCC51518, ATCC51519等が挙げられ、特にATCC51519を用いることが好ましい。【0020】 本発明において共役脂肪酸を製造するためにラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及び/又はラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis) の乳酸菌を用いて不飽和脂肪酸を共役化する処理としては、原料の不飽和脂肪酸を含有する増殖培地中で乳酸菌を培養して直接共役脂肪酸を生成させる方法、或いは何らかの方法で乳酸菌を培養して集菌し洗浄した菌体(洗浄菌体)を原料の不飽和脂肪酸を含有する溶液に加えて反応させることにより共役脂肪酸を生成させる方法等何れの方法を用いることも可能である。更に、不飽和脂肪酸を含有する溶液中では、乳酸菌の生菌のみならず、死菌体、菌体抽出液などを利用して反応を行うことも可能である。【0021】 ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及び/又はラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis) の乳酸菌を培養するための培地としては、乳酸菌の増殖用に通常用いられる培地や乳を含む培地を用いることが出来るが、特に乳を用いた発酵乳中で不飽和脂肪酸を処理することが好ましく、これにより乳中に含まれる蛋白成分などの影響によって原料油類の均質化が比較的容易となる。なお、本明細書中において乳とは、牛乳・山羊乳などの獣乳の生乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、生クリーム、あるいは豆乳・アーモンド乳・ココナッツミルク等の植物乳の各種乳蛋白質含有物を指す。【0022】 また、不飽和脂肪酸を含有する溶液中でラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及び/又はラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis) の乳酸菌の洗浄菌体或いは菌体末、死菌体、菌体抽出液などを利用して反応を行う場合、洗浄菌体や菌体末、死菌体、菌体抽出液の調製は常法に従えば良い。例えば、洗浄菌体は、生理食塩水やバッファーなどで培養菌体を洗浄して得ることができ、菌体末は凍結乾燥や噴霧乾燥などの乾燥技術により得ることができる。【0023】死菌体を得る方法としては、細胞壁溶解酵素を作用させる方法の他に、低浸透圧で処理する方法、凍結融解する方法、高圧処理する方法、破砕処理する方法、加熱処理する方法等がある。中でも、菌体を加熱処理し自己融解させる方法は、コストをかけずに大量の菌体を処理できる点で好ましい。菌体抽出液は、上記のようにして得た洗浄菌体、菌体末、死菌体などに適切な溶媒を添加した後、遠心分離上清として得ることができる。【0024】本発明において、原料として用いられる、二重結合を少なくとも二つ以上有する不飽和脂肪酸は特に限定されず、例えばリノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などいずれも好適に使用し得る。特に、リノール酸を原料として共役リノール酸を生成させた場合、生理活性の報告されている特定の異性体が特異的かつ効率よく生成し、他の異性体(副産物)の量は極微量となるため好ましい。【0025】また、上記不飽和脂肪酸は、塩またはエステルなどを形成していても良く、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニンム塩等が挙げられ、エステルとしてはメチルエステル、エチルエステルのほか上記脂肪酸を含むその他の脂質類(リン脂質、糖脂質等)、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライドなども用いることも可能である。また、天然油脂も原料として用いることができ、例えばリノール酸を分子内に多く含むものとしてはサフラワー油、綿実油、大豆油、ヒマワリ種子油、トウモロコシ油、落花生油、米ヌカ油、アマニ油、カカオ脂などの植物由来の天然油脂などが、リノレン酸を分子内に多く含むものとしてはアマニ油、ナタネ油などが、多価不飽和脂肪酸を多く含むものとしてはイワシ油、ニシン油、タラ肝油などの動物由来の天然油脂などが挙げられ、さらにこれらのリパーゼ分解物なども原料として用いることが可能である。【0026】 ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及びラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis) から選ばれる1種又は2種以上の乳酸菌を用いて共役脂肪酸を製造するための共役化処理法としては例えば以下の(a)〜(e)を挙げることができる。 (a) 乳酸菌を増殖培地や発酵乳中で培養して発酵生産の形で不飽和脂肪酸を共役化する方法 (b) 不飽和脂肪酸を乳酸菌の洗浄菌体で共役化する方法 (c) 乳酸菌菌末を用いて不飽和脂肪酸を共役化する方法 (d) 乳酸菌死菌体を用いて不飽和脂肪酸を共役化する方法 (e) 乳酸菌菌体抽出液を用いて不飽和脂肪酸を共役化する方法【0027】以下、処理法(a)〜(e)について詳述する。(a) 乳酸菌を増殖培地や乳培地中で培養して発酵生産の形で不飽和脂肪酸を共役化する方法:増殖培地あるいは発酵乳中で共役化を行う際は、基本操作は一般的に行われている手法で行えば良いが、スターターとしては以下のものを用いるのが好ましい。【0028】まず菌体調製において変換能を効率的に誘導するため、文献(京都大学大学院農学研究科・大村依子ら、平成11年度日本生物工学会要旨集、p191)を参考にしてリノール酸などの不飽和脂肪酸をMRS(LACTOBACILLI MRS BROTH、DIFCO社製)培地などの乳酸菌用増殖培地に添加した。この濃度は0〜0.2%で、特に0.05〜0.1%が好ましい。この際の培養は、pH3.5〜5.5で停止することが好ましく、特に、4.5〜5.5で停止することが好ましい。pH3.5 以下まで培養すると菌の過増殖により共役化能が低下してしまう場合もあり、pH5.5 以上では共役化を行うのに充分な菌体量が得られないためである。【0029】以上のようにして培養した培養液をスターターとして用いるのが好ましく、スターター接種量は発酵乳調製用培地の 0.5〜8%程度が好ましく、特に1〜4%程度が好ましい。原料は培地中に0.02〜0.8 %程度が好ましく、特に0.1〜0.2%が好ましい。培養温度は20〜40℃程度、好ましくは28〜37℃である。【0030】より効率良く目的とする共役脂肪酸を得るためには培養はpH3.5〜5.5で停止することが好ましく、特にpH4.5〜5.5で停止することが好ましい。また、中和培養でも同様に目的とする共役脂肪酸を得ることが出来る。【0031】(b) 不飽和脂肪酸を乳酸菌の洗浄菌体で共役化する方法:処理法(a) のスターター調製時と同様の培養条件によって培養した菌体を生理食塩水にて洗浄したものを回収し、緩衝液に懸濁させたものを洗浄菌体として用いるのが好ましく、この菌体を懸濁させる緩衝液および洗浄菌体反応は適度なpHを維持できる条件の水溶液を用いて行う。例えば0.1〜1.0Mのリン酸緩衝液が好ましく、pHは5.0〜7.5であるが、好ましくは6.0〜7.0である。菌体懸濁液の菌体濃度は、湿重で0.025〜0.25%であり、好ましくは0.025〜0.1 %である。【0032】原料は、添加時の原料を牛血清アルブミン等のバッファーとの混合液として用いることが原料を均一に混ぜるためには、好ましい。おり原料濃度は反応溶液中に0.1〜4.0%程度添加することが好ましく、特に0.3〜1.0%が好ましい。また牛血清アルブミンの混合比率は原料に対して5分の1程度が好ましい。洗浄菌体による変換反応の際の温度は20〜52℃だが、好ましくは32〜37℃である。変換生成の適正な時間は0〜96時間であり、好ましくは24〜72時間である。なお、pHを中和しながら培養した菌体も同様に用いることが出来る。【0033】(c) 乳酸菌菌末を用いて不飽和脂肪酸を共役化する方法:乳酸菌菌末は、例えば処理法(a) のスターター調製時の培養条件と同様の方法にて得た乳酸菌菌体を乾燥処理により粉末化することにより得ることが出来る。乾燥処理方法としては凍結乾燥、噴霧乾燥などを利用することができる。尚、菌末調製後の変換反応は、処理法(b) の洗浄菌体反応の反応条件と同様に行えば良い。【0034】(d) 乳酸菌死菌体を用いて不飽和脂肪酸を共役化する方法:乳酸菌死菌体は、例えば処理法(a) スターター調製時の培養条件と同様の方法にて得た乳酸菌菌体の細胞壁を破壊することにより得ることができる。細胞壁破壊は、細胞壁破壊酵素で処理する方法や、菌体を溶媒に懸濁させて低浸透圧で処理する方法、凍結融解する方法、高圧処理する方法、破砕処理する方法、加熱処理する方法などを利用することができる。細胞壁破壊液調製後の変換反応は、処理法(b) の洗浄菌体反応の反応条件と同様に行えば良い。【0035】(e) 乳酸菌菌体抽出液を用いて不飽和脂肪酸を共役化する方法:乳酸菌菌体抽出液としては、例えば処理法(b)〜(d)と同様の方法にて得た乳酸菌洗浄菌体、菌体末、死菌体などを適切な溶媒で抽出し、遠心分離など方法により残渣を除去して得ることができる。尚、菌体抽出液調製後の反応は、処理法(b)の洗浄菌体反応の反応条件と同様に行えば良い。【0036】 上記処理法(a)〜(e)等、ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及びラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis) から選ばれる1種又は2種以上の乳酸菌の何れかにより得られる反応液または培養液の脂肪酸組成は、ガスクロマトグラフィー分析により内部標準物質と各脂肪酸の面積値の比率をもとに各脂肪酸量を算出できる。なお、例えば、共役リノール酸を対象とする場合には、ガスクロマトグラフィーは以下の表1に示す条件で行えばよい。【0037】【表1】【0038】本発明により得られる共役脂肪酸は、医薬品、食品、化粧品等の形態で投与することができる。例えば共役リノール酸の生理効果を訴求する医薬品や栄養補助食品等の形態で用いる場合であれば、カプセル剤、顆粒剤、錠剤、散剤等の固形製剤、或いはシロップ剤等の液状製剤として経口投与することができる。また、経口投与剤でなくとも、注射剤、皮膚外用剤、直腸投与剤等非経口形態で投与することも可能である。【0039】各製剤の製造時には、乳糖、澱粉、結晶セルロース、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水ケイ酸等の賦形剤、白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、モノグリセリド、蔗糖脂肪酸エステル等の滑沢剤や、その他、医薬・食品等として許容され得る成分を適宜使用すればよい。【0040】また、同様の生理効果を期待して一般食品形態(「明らか食品」の形態)で用いる場合には、本発明の方法により得られた共役脂肪酸をそのまま或いは適宜精製処理したものを油脂、錠菓、発酵乳、飴、調味料、ふりかけ等の飲食品に添加し、常法を用いて製造すればよい。発酵食品として用いる場合には、発酵原料中の二重結合を二つ以上有する脂肪酸を添加し、発酵菌により発酵(培養)させ、製造することができる。特にリノール酸を含む乳を発酵した発酵乳とすれば、前記のとおりcis-9, trans-11型共役リノール酸を特異的かつ多量に含有させることが容易であるため好ましい。【0041】なお、発酵乳とは、乳等省令により定められている発酵乳、乳製品乳酸菌飲料等の生菌含有タイプの飲料や殺菌処理の施された発酵乳を含有する乳性飲料、更には、ケフィア等のことである。発酵に際しては、その他の菌、例えばラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ ブルガリカス、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ デルブルッキィ等のラクトバチルス属細菌やストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ラフィノラクチス等のラクトコッカス属細菌、ロイコノストック・メセンテロイテス、ロイコノストック・ラクチス等のロイコノストック属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム等のエンテロコッカス属細菌等を使用できる。【0042】また、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アニマーリス等のビフィドバクテリウム属細菌や酵母その他の微生物を使用しても良い。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。【0043】また、これらの食品には、その他の食品素材、すなわち、各種糖質や乳化剤、増粘剤、甘味料、酸味料、果汁等を適宜配合してもよい。具体的には、蔗糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム等の増粘(安定)剤、が挙げられる。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類等の各種ビタミン類やカルシウム、鉄、マンガン、亜鉛等のミネラル類を配合しても、優れた風味の耐光性発酵乳を得ることができる。【0044】これら医薬品、食品等の形態での使用に際しては、本発明の方法により得られた共役脂肪酸を適宜配合することができる。また、共役脂肪酸の生理効果を訴求する場合であれば、その効果を得られかつ過剰摂取等の問題が生じない程度の量、10mg〜1000mg/日程度の摂取が見込まれる量を適宜配合しておけばよい。【0045】【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら制約されるものではない。【0046】実施例1:共役脂肪酸を産生する乳酸菌のスクリーニング100mMリン酸緩衝液(pH6.5)1mL中にリノール酸50mgとBSA 10mgを溶解し、あらかじめリノール酸−BSA−複合体溶液を調製した。15mLの0.07%リノール酸含有MRS(LACTOBACILLI MRS BROTH、DIFCO社製)培地に各菌を接種し、28℃、120rpm、20時間振盪培養した。得られた培養液はpH 4.7であった。【0047】この培養液を遠心分離して菌体を回収し生理食塩水で2回洗浄して洗浄菌体を得た。この洗浄菌体にリノール酸−BSA−複合体溶液を100μL、100mMリン酸緩衝液(pH6.5)を0.9mL添加し、酸素吸収・炭酸ガス発生剤(Anaero Pack、三菱ガス化学(株)社製)にて嫌気状態に保った酸素不透過性のビニール袋内で37℃、120rpmで24時間反応した。【0048】得られた反応液に内部標準物質(HEPTADECANOIC ACID)を1mg添加後Bligh-Dyer 法にて抽出し、メチルエステル化(4%塩酸メタノール溶液で30分間室温静置)後、ガスクロマトグラフィーの分析に供し脂肪酸分析を行った。【0049】【表2】【0050】共役リノール酸のピークは標準品(リノール油脂製 CLA80)のリテンションタイムを基準に判断し、基質として添加したリノール酸を100とした時の相対値を算出した。その結果、表2に示したようにLactobacillus orisで共役リノール酸の産生が認められた。このLactobacillus oris NCD02160は、ATCC49062としてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に登録されている。【0051】実施例2:共役脂肪酸の異性体の同定実施例1でLactobacillus orisによって産生された共役リノール酸の異性体を調べた。図1はLactobacillus orisによって産生された共役リノール酸の異性体のガスクロマトグラムのチャートである。図1に示したようにLactobacillus orisによって産生された共役リノール酸の全てがcis-9,trans-11型共役リノール酸であった。以上の結果から、数ある乳酸菌の中でLactobacillus orisが選択的、且つ効率的にcis-9,trans-11型共役リノール酸を産生することが明らかとなった。【0052】実施例3:発酵乳中での共役脂肪酸の産生100mMリン酸緩衝液(pH6.5)1mL中にリノール酸50mgとBSA 10mgを溶解し、あらかじめリノール酸−BSA −複合体溶液を調製した。このリノール酸−BSA−複合体溶液200μLをMRS(LACTOBACILLI MRS BROTH、DIFCO社製)培地15mL に添加後、Lactobacillus orisを接種し28℃、120rpm、20時間振盪培養し、pH4.7の培養液を調製した。【0053】15mL 容試験管(キャップ付き)に5mL 分注した10%スキムミルク(グルコース1%、大豆ペプチド0.1%添加)培地に、リノール酸−BSA−複合体溶液を100μL、先に調製した各菌株の培養液を200μL添加し、キャップを閉めた。この培地を28℃、120rpmで48時間培養しpH4.6 の発酵乳を調製し、実施例1と同様に脂肪酸分析を行った。【0054】その結果、添加したリノール酸の2.0%が共役リノール酸に変換されていた。産生された共役リノール酸の全てがcis-9、trans-11型共役リノール酸であり、実施例2と同様の結果が得られた。以上の結果から、発酵乳中でもLactobacillus orisが選択的、且つ効率的にcis-9,trans-11型共役リノール酸を産生することが明らかとなった。【0055】実施例4:Lactobacillus oris 死菌体による共役脂肪酸の産生100mMリン酸緩衝液(pH6.5)1mL中にリノール酸50mgと BSA10mgを溶解し、あらかじめリノール酸−BSA −複合体溶液を調製した。このリノール酸−BSA−複合体溶液200μLをMRS(LACTOBACILLI MRS BROTH、DIFCO社製)培地15mL に添加後、Lactobacillus orisを接種し28℃、120rpm、20時間振盪培養し、pH4.7 の培養液を調製した。【0056】この培養液0.5mLを、0.3%glc加ILS培地15mLに接種し、37℃、120rpmで18時間(pH5.6まで)培養し、遠心分離して菌体を回収し0.2Mグリシン緩衝液(pH10.6)で2回洗浄し、洗浄後菌体を 6.7%蔗糖−50mMトリスアミノメタン−1mM EDTA溶液2mLに溶解した。この液に lysozyme溶液(10mg/mL in 25mM トリスアミノメタン ,pH8.0、生化学工業(株)社製)0.8mLおよびN-Acetylmuramidase水溶液(1mg/mL 、生化学工業(株)社製)0.15mLを添加し、37℃、120rpmで30分反応した。反応液をセントリプレップ10(amicon社製)に移し濃縮操作を行うことによりLactobacillus oris死菌体懸濁液を約0.6mL得た。【0057】この死菌体懸濁液にリノール酸−BSA−複合体溶液を100μL、100mMリン酸緩衝液(pH6.5)を0.9mL添加し、酸素吸収・炭酸ガス発生剤(Anaero Pack、三菱ガス化学(株)(株)社製)にて嫌気状態に保った酸素不透過性のビニール袋内で37℃、120rpmで24時間反応した。【0058】得られた反応液について実施例1と同様に脂肪酸分析を行った結果、添加したリノール酸の1.6%が共役リノール酸に変換されていた。産生された共役リノール酸の全てがcis-9,trans-11型共役リノール酸であり、洗浄菌体および発酵乳中と同様の結果が得られた。以上の結果から、細胞壁を破壊した死菌体でもLactobacillus orisが選択的、且つ効率的にcis-9,trans-11型共役リノール酸を産生することが明らかとなった。【0059】実施例5:Lactobacillus pontisによる共役脂肪酸の産生100mMリン酸緩衝液(pH6.5)1mL中にリノール酸50mgと BSA10mgを溶解し、あらかじめリノール酸−BSA −複合体溶液を調製した。このリノール酸−BSA−複合体溶液200μLをMRS(LACTOBACILLI MRS BROTH、DIFCO社製)培地15mL に添加後、Lactobacillus pontis (ATCC51518)を接種し28℃、120rpm、48時間振盪培養し、pH4.9 の培養液を調製した。【0060】15mL 容試験管(キャップ付き)に5mL 分注した10%スキムミルク生地に、リノール酸−BSA −複合体溶液を100μL 、先きに調整した各菌株の培養液を400μL 添加し、キャップを閉めた。この培地を28℃、120rpmで48時間培養し、pH5.5の発酵乳を調整し、実施例1と同様に脂肪酸分析を行った。【0061】 その結果、添加したリノール酸の0.5%が共役リノール酸に変換されていた。産生された共役リノール酸の全てがcis-9,trans-11型共役リノール酸であった。以上の結果から、Lactobacillus pontisが選択的、且つ効率的にcis-9,trans-11型共役リノール酸を産生することが明らかとなった。【0062】【発明の効果】以上説明した通り、本発明の共役不飽和脂肪酸の製造方法によればcis-9, trans-11型共役不飽和脂肪酸を選択的に高効率で製造できるという効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】 Lactobacillus orisによって産生された共役リノール酸の異性体のガスクロマトグラムのチャートである。 ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及び/又はラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis)の乳酸菌を用いて二重結合を少なくとも二つ以上有する不飽和脂肪酸を共役化する工程を含み、 前記二重結合を少なくとも二つ以上有する不飽和脂肪酸がリノール酸であり、前記共役化する工程によって、cis-9,trans-11型の共役リノール酸を得ることを特徴とする共役リノール酸の製造法。 前記共役化する工程が、二重結合を少なくとも二つ以上有する不飽和脂肪酸を含有する培地に、ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)及び/又はラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis)の乳酸菌を接種して培養する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の共役リノール酸の製造法。 培地として、乳培地を用いることを特徴とする請求項2に記載の共役リノール酸の製造法。 前記乳酸菌が、ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)ATCC49062及び/又はラクトバチルス・ポンティス(Lactobacillus pontis)ATCC51518であることを特徴とする請求項2に記載の共役リノール酸の製造方法。