タイトル: | 特許公報(B2)_トリエチルアミンの回収方法 |
出願番号: | 2002109584 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 209/86,C07C 209/84,C07C 211/05,B01D 3/36 |
長門 康浩 清水 克也 JP 4209626 特許公報(B2) 20081031 2002109584 20020411 トリエチルアミンの回収方法 旭化成ケミカルズ株式会社 303046314 長門 康浩 清水 克也 20090114 C07C 209/86 20060101AFI20081218BHJP C07C 209/84 20060101ALI20081218BHJP C07C 211/05 20060101ALI20081218BHJP B01D 3/36 20060101ALI20081218BHJP JPC07C209/86C07C209/84C07C211/05B01D3/36 C07C 209/84 C07C 209/86 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開2001−097916(JP,A) 5 2003300943 20031021 16 20050408 野口 勝彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、トロポロン化合物を製造する際に副生するトリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液からトリエチルアミンを回収する方法に関するものである。さらに詳しくは、抗菌・抗カビ作用をはじめ防虫作用などにも優れる有用な物質であるトロポロン化合物の製造工程において副生するトリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液に、酸に対して当量以上のアルカリを加えることにより主としてトリエチルアミンを含む層と主として水を含む層とに分離させ、トリエチルアミンを回収する方法に関するものである。【0002】【従来の技術】トリエチルアミンは有機合成において酸、特に塩化水素の捕捉剤として広く使われており、シクロペンタジエンまたはアルキルシクロペンタジエンとジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンとから7、7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物(以下ジクロロケテン付加体と略す)を合成し、該ジクロロケテン付加体を塩基の存在下に分解することによってトロポロン化合物を得る方法においても、塩化水素の捕捉剤として使用されている。例えば特公昭51−33901号公報には、石油エーテル中でイソプロピルシクロペンタジエンとジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンを反応させ、ジクロロケテン付加体を得る方法が記されている。特開平08−040971号公報には、n−ヘキサン中でイソプロピルシクロペンタジエンとジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンを反応させ、得られたジクロロケテン付加体をアセトン−酢酸−トリエチルアミン−水の混合溶媒中で加熱することによりトロポロン化合物を得る方法が記されている。特開2001−97915号公報では、n−ヘキサン中でシクロペンタジエン化合物とジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンを反応させ、得られたジクロロケテン付加体をターシャリーブタノール−酢酸−水の混合溶媒中で加熱しながらトリエチルアミンを滴下することによりトロポロン化合物を得る方法が記されている。【0003】これらの方法では使用後のトリエチルアミンはそれ自身が捕捉した塩化水素との塩の形で存在するが、このトリエチルアミン塩酸塩は不要なので反応系から分離除去することになる。通常は固形物としてろ過分離または、水洗浄または酸洗浄によって水溶液として分離することになるが、最終的には取扱いのし易さから水溶液として廃棄することになる。このような水溶液を廃棄することは経済的にも不利であるし、環境に対する負荷も大きくなり好ましくない。工業的規模での実施に際しては、回収再使用する方法の提供が望まれている。【0004】トリエチルアミンの回収再使用に関しては、例えば特開昭50−59305号公報には、トリエチルアミン製造の際に、トリエチルアミンを含む混合物に水を加えて40℃〜70℃に保ち混合物を水洗したのち、相分離させて水を除き精留して精製する方法が記されている。特開昭56−31485号公報には、トリエチルアミンを含む排ガスを鉱酸水溶液に吸収させた後に、アルカリを添加してトリエチルアミンを相分離させ除去する廃水処理方法が記されている。特開2001−164033号公報には、ポリカーボネート樹脂溶液からトリエチルアミンを酸抽出した廃水に水酸化ナトリウムを加えてアルカリ性とし、精留塔を用いて蒸留を2回行ってトリエチルアミンを回収する方法が記されている。特開2001−329059号公報には、ポリカーボネート樹脂溶液からトリエチルアミンを酸抽出した廃水に水酸化ナトリウムを加えてアルカリ性とし、トリエチルアミンを塩化メチレンで抽出した後、精留塔を用いて蒸留を行ってトリエチルアミンを回収する方法が記されている。【0005】上記のトリエチルアミンの回収方法は、トリエチルアミンと水との混合物が下部臨界完溶点を持ち、18.7℃以下ではトリエチルアミンと水はどの比率でも混ざり合うが、それ以上の温度では2液層に分離するという性質を利用したものである。【0006】しかしながらこの方法は、トロポロン化合物の製法において、ジクロロケテン付加体を得る反応で副生するトリエチルアミン塩酸塩からのトリエチルアミン回収には適用できるが、加溶媒分解後の反応液からトリエチルアミンを回収する際には、適用できないという問題があった。すなわち前述の公知の方法のように加溶媒分解においてアセトンやターシャリーブタノールといった水溶性溶媒を使用しているときには、その反応液に直接水、塩酸、および水に不溶性の有機溶媒を加える従来の方法では、トロポロン化合物を含む有機溶媒層とトリエチルアミン塩酸塩を含む水層との相分離が不十分で、結果的に目的物であるトロポロン化合物のロスが多く、一方のトリエチルアミン塩酸塩のロスも多いという欠点があった。これは水溶性有機溶媒がトロポロン化合物を含む有機溶媒層とトリエチルアミン塩酸塩を含む水層との両方に溶け込むためである。さらに、トリエチルアミン塩酸塩を含む水層にアルカリを加えて、トリエチルアミン層と水層とに分離するときにも水溶性溶媒が混入するため相分離が不十分で、トリエチルアミンの回収率は低いものであった。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、トロポロン化合物の製造する際に副生するエチルアミン塩酸塩を含む水溶液からトリエチルアミンを、簡便且つ効果的に回収する方法を提供することを目的とする。すなわちシクロペンタジエンまたはアルキルシクロペンタジエンとジクロロ酢酸クロライドとをトリエチルアミンの存在下に反応させて対応するジクロロケテン付加体を得、該ジクロロケテン付加体をトリエチルアミン、水、水溶性有機溶媒の存在下に加溶媒分解することによってトロポロン化合物を製造する方法において、トリエチルアミンの回収が工業的規模での実施に好適な方法であってトリエチルアミンを含む廃水を排出しない環境対応型の製造プロセスを提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、加溶媒分解の反応液に水、塩酸を加えて液中のトリエチルアミンを塩酸塩にして蒸発しないようにすることにより、水溶性有機溶媒を蒸留で留去し、以降の操作に対する水溶性有機溶媒の影響をなくすることができ、残存した液に水に不溶性の有機溶媒を加えてトロポロン化合物を含む液とトリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液とを相分離させると、その分離性は良好でトロポロン化合物のロスも少ないことがわかった。さらに、トリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液に、酸に対して当量以上のアルカリを加えることにより、前述の合成法では反応に使用した酢酸をはじめ雑多な不純物が多量に含まれているにもかかわらず、主としてトリエチルアミンを含む層と主として水を含む層とに分離することを見出し、なおかつ分離回収したトリエチルアミンを再びトロポロン化合物の製造に用いることができることを見出し本発明を完成した。【0009】このように、加溶媒分解で使用される水溶性有機溶媒を予め留去することにより、トリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液には雑多な不純物が多量に含まれているにもかかわらず、アルカリの添加によって2液層に分離することができ、なおかつ分離回収したトリエチルアミンを再びトロポロン化合物の製造に用いることができるのである。【0010】 1.下記式(3)で表されるジクロロケテン付加体を、トリエチルアミンと水、およびアセトンおよびターシャリーブタノールから選ばれる水溶性有機溶媒の存在下に加溶媒分解し、得られた下記式(1)で表されるトロポロン化合物を含む反応液に水、塩酸を加えて水溶性有機溶媒を留去した後、ヘキサン、トルエン、酢酸エチルからなる群より選ばれる非水溶性有機溶媒を加えてトロポロン化合物を含む液とトリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液とを相分離させ、得られたトリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液に、該水溶液中に含まれる酸に対して当量以上のアルカリを加えることにより、主としてトリエチルアミンを含む層と主として水を含む層とに分離させ、トリエチルアミンを回収する方。【化3】【化4】(ただし、R1からR3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、または直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基をあらわす。) 2.式(3)で表されるジクロロケテン付加体が、7,7−ジクロロ−3−イソプロピルビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オンであり、式(1)で表されるトロポロン化合物が4−イソプロピルトロポロンである前記1.に記載の方法。 3. ジクロロケテン付加体を、酢酸−トリエチルアミン−ターシャリーブタノール−水系溶媒の存在下に加溶媒分解する前記1.または2.に記載の方法。 4. 主としてトリエチルアミンを含む層を、さらに蒸留することを特徴とする、前記1.から3いずれか一項に記載の方法。5. 主としてトリエチルアミンを含む層を蒸留する際に、n−ヘキサンを添加して蒸留を行うことによって、水を除去することを特徴とする、前記4.に記載の方法。【0011】【発明の実施の形態】以下、本発明につき、特にその好ましい実施態様を中心に具体的に説明する。本発明でいうトロポロン化合物、シクロペンタジエン化合物およびジクロロケテン付加体とは、それぞれ下記式(1)、(2)および(3)で表される。【0012】【化1】【0013】【化2】【0014】【化3】【0015】ただし、R1からR3は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素、または直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基を表し、直鎖状または分岐状を問わない。また不飽和結合が含まれていてもかまわない。また酸素、ケイ素、ハロゲンなどのヘテロ原子が含まれていてもかまわない。【0016】アルキル基としては例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。【0017】 アルケニル基としては一般式−CH=CR4R5で表され、アルキニル基としては一般式−C≡C−R4で表される。 R4、R5は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素または炭化水素基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。【0018】シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペンテン−1−イル、2−シクロペンテン−1−イル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、1,3−シクロヘキサジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、シクロヘプチル、1−シクロヘプテン−1−イル、2−シクロヘプテン−1−イル、3−シクロヘプテン−1−イル、4−シクロヘプテン−1−イル、シクロオクチル、1−シクロオクテン−1−イル、2−シクロオクテン−1−イル、シクロノニル、シクロデシルなどが挙げられる。【0019】また酸素が含まれるものとしては、今まで述べた基に一般式−OR6や一般式−COOR7で表される置換基が有するものが挙げられる。R6やR7は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素または炭化水素基であり例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。また今まで述べた基にケイ素やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲンが含まれていてもかまわない。【0020】前記式(1)で表されるトロポロン化合物の中で、4位にイソプロピル基を有する4−イソプロピルトロポロン(β−ツヤプリシン、別名ヒノキチオール)、4−位にイソプロペニル基を有するβ−ドラブリン、3位にイソプロピル基を有するα−ツヤプリシン、5位にイソプロピル基を有するγ−ツヤプリシンは、青森ヒバや台湾ヒノキの精油中に含まれる天然物であり、その安全性の高さから有用性が高く広く用いられている物質である。中でも、4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)は、上記精油中に最も多く含まれる成分のひとつであり、天然抽出品を端緒として用途が広がり、近年では化学合成品が主流となって様々な分野で利用されている。この化学合成品のほとんどが前記の化学合成法によるものであり、本発明におけるトリエチルアミンの回収方法を好適に実施することができる。【0021】シクロペンタジエン化合物とジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンとを反応させてジクロロケテン付加体を合成する方法は前述の公知の方法に準じればよい。例えば、シクロペンタジエン化合物を石油エーテル、n−ヘキサン、トルエンなどの溶媒に溶解した液に、ジクロロ酢酸クロライドを加えた後にトリエチルアミンを滴下する、あるいはシクロペンタジエン化合物を溶解した液にジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンの両者を同時に滴下する、などの方法により実施できる。反応を行う温度は、−10℃から40℃の範囲が好ましい。この反応ではジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンとの反応によって発生したジクロロケテンがシクロペンタジエン化合物と反応するのであるが、同時にジクロロケテンの重合反応も起こっており、この重合反応の影響によるジクロロケテン付加体の収率低下を抑止する観点から−10℃以上が好ましい。また、シクロペンタジエン化合物自体が二量化してジクロロケテン付加体の収率が低下したり、シクロペンタジエン化合物がアルキルシクロペンタジエンの場合には熱による異性化が進行して置換基の位置が変わるために所望のジクロロケテン付加体が得られなかったりするのを抑止する観点から40℃以下が好ましい。【0022】この工程ではトリエチルアミンはトリエチルアミン塩酸塩となって反応液中に析出するため、反応液をろ過して固形物として分離しても良いし、反応液に水を加えてトリエチルアミン塩酸塩を水溶液として分離しても良い。しかしいずれに場合でも取扱いのし易さから、最終的には水溶液とするのが望ましい。このようにして得られた水溶液はトリエチルアミンの回収に用いられる。一方、ジクロロケテン付加体を含む液は、溶媒を留去し、場合によってはさらに精製を行った後に、次に述べる加溶媒分解に供される。【0023】ジクロロケテン付加体を加溶媒分解することによってトロポロン化合物を得る反応は、塩基と水を含む混合溶媒中で該ジクロロケテン付加体を加熱することによって実施される。例えば、酢酸−酢酸カリウム−水系、酢酸−酢酸ナトリウム−水系、酢酸−トリエチルアミン−アセトン−水系などの公知の混合溶媒が提案されているが、酢酸−トリエチルアミン−アセトン−水系が反応速度が速く好ましい。また本発明者らが鋭意検討した結果、酢酸−トリエチルアミン−アセトン−水系の代わりに酢酸−トリエチルアミン−ターシャリーブタノール−水系を用いる方が、良好な収率で目的物が得られ好ましい。また、アセトンまたはターシャリーブタノールを用いるどちらの系においても、トリエチルアミンを予め全量仕込むのでなく後から滴下する方法の方が高収率で目的物が得られ、好ましい。【0024】 このようにアセトンまたはターシャリーブタノールといった水溶性有機溶媒を用いて反応を行った場合には、前述のように水溶性溶媒を留去する必要がある。反応液に水および塩酸を加えて、反応液中の遊離のトリエチルアミンをいったんトリエチルアミン塩酸塩に変換した後に、水溶性有機溶媒を蒸留によって除去する。ここで塩酸とともに水を加えるのは、水溶性溶媒を除去したときに蒸留釜内で濃縮物が乾固しないようにするためである。また水と共沸するターシャリーブタノールを用いる場合には、共沸で留去される水の量を考慮して水を加えるのが好ましい。このようにして水溶性有機溶媒を留去した後に残った水溶液に対してヘキサン、トルエン、酢酸エチルからなる群より選ばれる非水溶性の有機溶媒を加えて、目的物であるトロポロン化合物は非水溶性の有機溶媒層に抽出し、トリエチルアミン塩酸塩は水層に抽出し、相分離させる。またこの反応で使用した酢酸はこの抽出、分離に対して悪影響を与えることはなく、ほとんど全て水層に溶け込む。このようにして得られた水溶液はトリエチルアミンの回収に用いられる。一方、トロポロン化合物を含む液は、溶媒を留去した後に精製を行って製品となる。【0025】上記の2つの工程で得られたトリエチルアミン塩酸酸を含む水溶液からトリエチルアミンを回収するにあたっては、それぞれ個別に回収操作を行っても良いし、予め混合した後に回収操作を行っても良い。トリエチルアミンの回収操作は、トリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液にアルカリを加え、トリエチルアミンを含む層と水を含む層とに分離させることにより行う。加えるアルカリはトリエチルアミン塩酸塩と反応して遊離のトリエチルアミンを生成するもの、すなわちトリエチルアミンよりも塩基性が強いものであって水溶性であれば良いが、入手し易さ、取扱いし易さの点で水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。加えるアルカリの形態はフレーク状、粒状の固形物でも良いし、水溶液でも良い。加えるアルカリの量は、トリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液中に含まれる酸に対して当量以上であることが好ましい。ここでいう酸とは遊離の酸およびトリエチルアミン塩酸塩の形で存在する酸の両方を含めたものである。加えるアルカリの量が、酸に対して当量以下の場合はトリエチルアミン塩酸塩が残存し、トリエチルアミンの回収率が低下するので好ましくない。また、アルカリを加え2層分離させる際には、加熱を行うのが好ましい。加熱する温度はトリエチルアミンを含む層と水を含む層とに分離する温度であれば良いが、良好な回収率を得るためには40℃以上が好ましい。【0026】上記の方法によって回収したトリエチルアミンはそのまま再使用しても良いし、蒸留によって精製した後に再使用しても良い。回収したトリエチルアミンを蒸留する場合、その方法には特に制限はなく、例えば蒸発釜と凝縮器からなる簡単な単蒸留装置や、棚段塔や充填塔などの蒸留塔を用いることができる。また蒸留精製における圧力は特に制限はなく常圧でも減圧でも良い。また、本発明者らが鋭意検討した結果、水分を含まないトリエチルアミンが必要な場合には、第3成分を添加して蒸留を行うことによって水分の除去が可能であることがわかった。すなわち、トリエチルアミンと水とは共沸するため蒸留では分離が困難ではあるが、第3成分として例えばn−ヘキサンを共存させることにより蒸留で分離が可能である。水とn−ヘキサンが共沸し、かつその沸点がトリエチルアミンと水の共沸点よりも低いので、n−ヘキサンとの共沸で水を除去した後、引き続き蒸留によって残存したn−ヘキサンを除けば、水分を含まないトリエチルアミンを得ることができるのである。【0027】以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、実施例等における各種測定は以下の方法にしたがった。1.シクロペンタジエン化合物、トリエチルアミンのガスクロマトグラフ分析装置:島津製作所GC−14A、島津製作所クロマトパックCR−4Aカラム:J&Wサイエンティフィック社キャピラリーカラムDB−1、長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm温度条件:カラムオーブン40℃×5分→250℃(10℃/分)、注入口60℃、検出器250℃(FID)【0028】2.シクロペンタジエン化合物、ジクロロケテン付加体、トロポロン化合物のガスクロマトグラフ分析装置:島津製作所GC−14A、島津製作所クロマトパックCR−4Aカラム:J&Wサイエンティフィック社キャピラリーカラムDB−1、長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm温度条件:カラムオーブン100℃×2分→250℃(10℃/分)、注入口300℃、検出器250℃(FID)【0029】3.トロポロン化合物白色度測定分光光度計(430nmにおける透過率をもって白色度の指標とした。)装置:日立製作所 U−2000溶媒:エタノール試料濃度:10.0wt%光路長:10mm本発明の実施例で使用した試薬類は下記のとおりである。・トルエン:和光純薬工業(株)製、1級・ジクロロ酢酸クロライド:東京化成工業(株)製・トリエチルアミン:和光純薬工業(株)製、特級・ターシャリーブタノール:和光純薬工業(株)製、特級・酢酸:和光純薬工業(株)製、特級・濃塩酸:和光純薬工業(株)製、特級・エタノール:片山化学工業(株)製、特級【0030】【実施例1】1−イソプロピルシクロペンタジエン1123.2g(10.383mol)を含む液2730.2gおよびトルエン9855.7gをガラス製ジャケット付き反応器に仕込み、溶液温度を15℃に冷却した。該溶液を撹拌しつつ、該溶液に対しジクロロ酢酸クロライド1706.5g(純度97.7%、11.312mol)およびトリエチルアミン1212.8g(純度99.9%、11.973mol)を同時に2時間かけて滴下し、ジクロロケテン付加反応を実施した。その間、溶液温度が18〜22℃の範囲に維持されるよう、ジャケットに冷却水を流通させて反応熱を除去した。ジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンの滴下終了後、反応液に水1476gと濃塩酸52.6gを添加し、15分間撹拌した。その後30分間静置して有機層と水層を分離させた後、反応器底部から水層を抜き出した。この水層はケテン付加水層と称し、後にトリエチルアミンの回収に使用する。【0031】 残った有機層からトルエンを減圧留去し、粗ジクロロケテン付加体(7,7−ジクロロ−3−イソプロピルビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン)2838.7g(純度77.9%、10.092mol)を得た(収率97.2%)。 得られた粗ジクロロケテン付加体1198.2g(純度77.9%、4.258mol)および、ターシャリーブタノール5689.1g、水851.5g、酢酸1533.5g(25.537mol)、濃塩酸360.0g(HClとして3.556mol)を、ガラス製ジャケット付き反応器に仕込み、還流冷却器を設置し、還流温度まで昇温した。該溶液を撹拌しつつ、還流状態でトリエチルアミン3021.3g(29.8577mol)を2時間かけて滴下し、分解反応を実施した。滴下終了後さらに1時間加熱還流した後、粗ジクロロケテン付加体1198.1g(純度77.9%、4.258mol)および、酢酸1533.4g(25.5354mol)、濃塩酸361.8g(HClとして3.573mol)を追加し、トリエチルアミン3022.1g(29.8656mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間加熱還流した後、室温まで冷却した。【0032】 水8534.8gと濃塩酸1329.8g(HClとして13.130mol)を加えた後、ターシャリーブタノールを減圧留去し、トルエン9045.4gを加えて20℃で5分間撹拌した。撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させた。ここで分離した水層は加溶媒分解水層と称し、後にトリエチルアミンの回収に使用する。 得られた有機層に純水4268gを加え5分間攪拌した。撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させた。さらに、得られた有機層に純水4268gを加え5分間攪拌し、撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させる、という操作を3回繰り返した。得られた有機層からトルエンを減圧留去し、粗4−イソプロピルトロポロン(以下粗ヒノキチオールという)1618.8gを得た(純度74.2%、7.315mol、収率85.9%)。【0033】得られた粗ヒノキチオール100.3gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ160℃、25mmHgで4時間加熱した。その後トルエンを添加して減圧下で留出させることで装置を洗浄した。ついで減圧下に単蒸留し(130℃/5mmHg)、初留分を除去した後に、留分69.6g(純度94.3%、収率88.0%)を得た。ガラス製フラスコ中に、単蒸留により得られた留分66.13gと混合溶媒264.5g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製ロートで吸引ろ過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)132.3gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶49.8gを得た(収率79.3%)。【0034】得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製フラスコ中に、該結晶47.4gおよび混合溶媒189.6g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)94.8gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶39.7gを得た(収率83.8%)。得られた結晶は、ガスクロマトグラフ純度99.9%以上、白色度(430nm透過率)98.8%であった。【0035】次にトリエチルアミンの回収を行った。上記のケテン付加水層1500.2gと加溶媒分解水層9054.3gとを混合し、25%水酸化ナトリウム水溶液7638g(NaOHとして47.738mol)を加え、50℃に加熱して30分撹拌した。液温度を50℃に保ったまま1時間静置し、水層とトリエチルアミン層とを分離した。回収したトリエチルアミンの純度は94.9%、回収収率は94.7%、水分は2.1%であった。【0036】このようにして得た回収トリエチルアミンを使用した反応の例を以下に記す。上記と同様にして得た粗ジクロロケテン付加体99.8g(純度83.5%、0.380mol)および、ターシャリーブタノール508.5g、水76.1g、酢酸137.3g(2.286mol)、濃塩酸32.3g(HClとして0.319mol)を、ガラス製ジャケット付き反応器に仕込み、還流冷却器を設置し、還流温度まで昇温した。該溶液を撹拌しつつ、還流状態で回収トリエチルアミン285.0g(2.673mol)を2時間かけて滴下し、分解反応を実施した。滴下終了後さらに1時間加熱還流した後、粗ジクロロケテン付加体100.4g(純度83.5%、0.383mol)および、酢酸137.5g(2.290mol)、濃塩酸32.2g(HClとして0.319mol)を追加し、回収トリエチルアミン284.6g(2.669mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間加熱還流した後、室温まで冷却した。【0037】水763.4gと濃塩酸108.3g(HClとして1.069mol)を加えた後、ターシャリーブタノールを減圧留去し、トルエン917.2gを加えて20℃で5分間撹拌した。撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させた。得られた有機層に純水459gを加え5分間攪拌した。撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させた。さらに、得られた有機層に純水459gを加え5分間攪拌し、撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させる、という操作を3回繰り返した。得られた有機層からトルエンを減圧留去し、粗ヒノキチオール133.1gを得た(純度77.2%、0.626mol、収率82.0%)。【0038】得られた粗ヒノキチオール112.8gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ160℃、25mmHgで4時間加熱した。その後トルエンを添加して減圧下で留出させることで装置を洗浄した。ついで減圧下に単蒸留し(130℃/5mmHg)、初留分を除去した後に、留分78.5g(純度94.3%、収率84.7%)を得た。【0039】ガラス製フラスコ中に、単蒸留により得られた留分74.8gと混合溶媒299.3g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製ロートで吸引ろ過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)148.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶59.7gを得た(収率82.0%)。【0040】得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製フラスコ中に、該結晶54.6gおよび混合溶媒218.5g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)109.2gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶45.0gを得た(収率82.5%)。【0041】得られた結晶は、ガスクロマトグラフ純度99.9%以上、白色度(430nm透過率)98.6%であった。本実施例では回収したトリエチルアミンをジクロロケテン付加体の分解反応に使用したが、精製度の良好なヒノキチオール結晶が得られている。【0042】【実施例2】本実施例では実施例1において回収したトリエチルアミンをさらに蒸留精製して再使用した例を示す。実施例1で得た回収トリエチルアミン707.98g(純度94.9%)をガラス製単蒸留装置に仕込み、常圧で蒸留を行い、留分695.7gを得た。(純度94.7%、収率98.1%、水分2.2%)このようにして得た回収トリエチルアミンを使用した反応の例を以下に記す。【0043】実施例1と同様にして得た粗ジクロロケテン付加体100.2g(純度83.5%、0.382mol)および、ターシャリーブタノール508.3g、水76.0g、酢酸137.4g(2.289mol)、濃塩酸32.2g(HClとして0.318mol)を、ガラス製ジャケット付き反応器に仕込み、還流冷却器を設置し、還流温度まで昇温した。該溶液を撹拌しつつ、還流状態で上記の回収トリエチルアミン285.2g(2.668mol)を2時間かけて滴下し、分解反応を実施した。滴下終了後さらに1時間加熱還流した後、粗ジクロロケテン付加体100.0g(純度83.5%、0.381mol)および、酢酸137.4g(2.288mol)、濃塩酸32.2g(HClとして0.318mol)を追加し、上記の回収トリエチルアミン286.9g(2.684mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間加熱還流した後、室温まで冷却した。【0044】水764.4gと濃塩酸108.2g(HClとして1.068mol)を加えた後、ターシャリーブタノールを減圧留去し、トルエン916.5gを加えて20℃で5分間撹拌した。撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させた。得られた有機層に純水459gを加え5分間攪拌した。撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させた。さらに、得られた有機層に純水459gを加え5分間攪拌し、撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させる、という操作を3回繰り返した。得られた有機層からトルエンを減圧留去し、粗ヒノキチオール135.8gを得た(純度79.8%、0.660mol、収率86.5%)。【0045】得られた粗ヒノキチオール112.4gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ160℃、25mmHgで4時間加熱した。その後トルエンを添加して減圧下で留出させることで装置を洗浄した。ついで減圧下に単蒸留し(130℃/5mmHg)、初留分を除去した後に、留分74.3g(純度97.0%、収率80.4%)を得た。ガラス製フラスコ中に、単蒸留により得られた留分70.4gと混合溶媒282.3g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製ロートで吸引ろ過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)139.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶52.5gを得た(収率76.8%)。【0046】得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製フラスコ中に、該結晶48.0gおよび混合溶媒193.0g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)94.2gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶42.3gを得た(収率88.0%)。【0047】得られた結晶は、ガスクロマトグラフ純度99.9%以上、白色度(430nm透過率)99.3%であった。本実施例では実施例1において回収したトリエチルアミンをさらに蒸留精製してジクロロケテン付加体の分解反応に使用したが、反応収率の低下は見られず、精製度の良好なヒノキチオール結晶が得られている。【0048】【実施例3】本実施例では実施例1において回収したトリエチルアミンをさらに精留によって精製して再使用した例を示す。実施例1で得た回収トリエチルアミン700.5g(純度94.9%)を、内径30mm、高さ1600mmで磁製ラシヒリング(外径3mm、高さ5mm)を充填した精留塔を備えたガラス製蒸留装置に仕込み、常圧で蒸留を行った。この蒸留ではヘキサン15gを添加することによって、第3成分を添加しない蒸留ではトリエチルアミンから除去することが困難であった水を、ヘキサンとの共沸で沸点を下げて除去した。精留塔の頂部に約20mlの容量を持つ液だめを設け、全還流させて凝縮液をこの液だめで受けると、最初に水とヘキサンが凝縮されてくるが、水とヘキサンは分離し水は液だめの底部にたまるので水のみを系外に抜き出すことができる。このようにして水を除去した後にヘキサンを除去し、トリエチルアミンを含む留分636.9gを得た。(純度97.7%、収率93.6%、水分0.1%)【0049】(参考例) このようにして得た回収トリエチルアミンを使用した反応の例を以下に記す。 1−イソプロピルシクロペンタジエン108.5g(1.003mol)を含む液258.3gおよびトルエン1009.0gをガラス製ジャケット付き反応器に仕込み、溶液温度を15℃に冷却した。該溶液を撹拌しつつ、該溶液に対しジクロロ酢酸クロライド164.9g(純度97.7%、1.093mol)および上記で回収したトリエチルアミン119.8g(純度97.7%、1.156mol)を同時に2時間かけて滴下し、ジクロロケテン付加反応を実施した。 その間、溶液温度が18〜22℃の範囲に維持されるよう、ジャケットに冷却水を流通させて反応熱を除去した。ジクロロ酢酸クロライドとトリエチルアミンの滴下終了後、反応液に水150.9gと濃塩酸5.1gを添加し、15分間撹拌した。その後30分間静置して有機層と水層を分離させた後、反応器底部から水層を抜き出した。【0050】残った有機層からトルエンを減圧留去し、粗ジクロロケテン付加体266.8g(純度79.5%、0.968mol)を得た(収率96.5%)。粗ジクロロケテン付加体104.6g(純度79.5%、0.380mol)および、ターシャリーブタノール507.7g、水76.6g、酢酸137.3g(2.286mol)、濃塩酸32.0g(HClとして0.316mol)を、ガラス製ジャケット付き反応器に仕込み、還流冷却器を設置し、還流温度まで昇温した。該溶液を撹拌しつつ、還流状態で上記の回収トリエチルアミン273.6g(2.642mol)を2時間かけて滴下し、分解反応を実施した。滴下終了後さらに1時間加熱還流した後、粗ジクロロケテン付加体105.0g(純度79.5%、0.381mol)および、酢酸137.6g(2.291mol)、濃塩酸32.8g(HClとして0.324mol)を追加し、上記の回収トリエチルアミン273.2g(2.638mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間加熱還流した後、室温まで冷却した。【0051】水762.6gと濃塩酸119.5g(HClとして1.180mol)を加えた後、ターシャリーブタノールを減圧留去し、トルエン919.3gを加えて20℃で5分間撹拌した。撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させた。得られた有機層に純水385gを加え5分間攪拌した。撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させた。さらに、得られた有機層に純水385gを加え5分間攪拌し、撹拌を停止した後10分間静置して有機層と水層を分離させる、という操作を3回繰り返した。得られた有機層からトルエンを減圧留去し、粗ヒノキチオール136.0gを得た(純度78.9%、0.654mol、収率85.9%)。【0052】得られた粗ヒノキチオール115.3gをガラス製の単蒸留装置に仕込み、撹拌しつつ160℃、25mmHgで4時間加熱した。その後トルエンを添加して減圧下で留出させることで装置を洗浄した。ついで減圧下に単蒸留し(130℃/5mmHg)、初留分を除去した後に、留分77.1g(純度95.9%、収率81.3%)を得た。【0053】ガラス製フラスコ中に、単蒸留により得られた留分69.0gと混合溶媒276.3g(エタノール:水=1:1重量比)を加え、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製ロートで吸引ろ過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)138.0gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶51.6gを得た(収率77.2%)。【0054】得られた結晶を再度晶析を行うため、ガラス製フラスコ中に、該結晶47.5gおよび混合溶媒190.1g(エタノール:水=1:1重量比)を加えて、40℃で30分間攪拌して均一溶液とした後、緩やかに攪拌しつつ2時間かけて22℃まで温度を下げ、種晶(ヒノキチオール結晶)10mgを添加し、さらに4時間かけて0℃まで温度を下げてヒノキチオールの結晶を析出させた。析出した結晶をガラス製装置で吸引濾過により採取した。採取した結晶を0℃に冷却した溶媒(エタノール:水=1:1重量比)95.2gで洗浄した後真空乾燥し、ヒノキチオールの結晶39.6gを得た(収率84.2%)。【0055】 得られた結晶は、ガスクロマトグラフ純度99.9%以上、白色度(430nm透過率)99.1%であった。 本参考例では実施例1において回収したトリエチルアミンをさらに充填塔により蒸留精製してイソプロピルシクロペンタジエンとジクロロ酢酸クロライドとの反応および、ジクロロケテン付加体の分解反応に使用したが、反応収率の低下は見られず、精製度の良好なヒノキチオール結晶が得られている。【0056】【発明の効果】本発明により、抗菌・抗カビ作用はじめ防虫作用などにも優れる有用なトロポロン化合物の製造において、トリエチルアミンの回収が工業的規模での実施に好適な方法であってトリエチルアミン塩酸塩のような廃棄物を排出しない環境対応型の製造プロセスを提供することができる。 下記式(3)で表されるジクロロケテン付加体を、トリエチルアミンと水、およびアセトンおよびターシャリーブタノールから選ばれる水溶性有機溶媒の存在下に加溶媒分解し、得られた下記式(1)で表されるトロポロン化合物を含む反応液に水、塩酸を加えて水溶性有機溶媒を留去した後、ヘキサン、トルエン、酢酸エチルからなる群より選ばれる非水溶性有機溶媒を加えてトロポロン化合物を含む液とトリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液とを相分離させ、得られたトリエチルアミン塩酸塩を含む水溶液に、該水溶液中に含まれる酸に対して当量以上のアルカリを加えることにより、主としてトリエチルアミンを含む層と主として水を含む層とに分離させ、トリエチルアミンを回収する方法。(ただし、R1からR3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、または直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基をあらわす。) 式(3)で表されるジクロロケテン付加体が、7,7−ジクロロ−3−イソプロピルビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オンであり、式(1)で表されるトロポロン化合物が4−イソプロピルトロポロンである請求項1に記載の方法。 ジクロロケテン付加体を、酢酸−トリエチルアミン−ターシャリーブタノール−水系溶媒の存在下に加溶媒分解する請求項1または2に記載の方法。 主としてトリエチルアミンを含む層を、さらに蒸留することを特徴とする、請求項1から3いずれか一項に記載の方法。 主としてトリエチルアミンを含む層を蒸留する際に、n−ヘキサンを添加して蒸留を行うことによって、水を除去することを特徴とする、請求項4に記載の方法。