タイトル: | 特許公報(B2)_アポリポプロテインD分泌抑制剤 |
出願番号: | 2002098900 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 8/97,A61K 36/75,A61P 17/00,A61Q 15/00 |
笹嶋 美知代 吉塚 直伸 JP 4703935 特許公報(B2) 20110318 2002098900 20020401 アポリポプロテインD分泌抑制剤 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 笹嶋 美知代 吉塚 直伸 20110615 A61K 8/97 20060101AFI20110526BHJP A61K 36/75 20060101ALI20110526BHJP A61P 17/00 20060101ALI20110526BHJP A61Q 15/00 20060101ALI20110526BHJP JPA61K8/97A61K35/78 KA61P17/00A61Q15/00 A61K8/00-8/99 特開2000−256156(JP,A) 特開2002−29954(JP,A) 特開昭64−16713(JP,A) 特開2003−113013(JP,A) 特開2002−226386(JP,A) 1 2003292427 20031015 9 20050114 2007027909 20071011 秋月 美紀子 森井 隆信 内田 淳子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ヒトの不快な体臭の発生を抑えるデオドラント剤に関する。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】体臭は汗の臭いを始め、口臭、頭皮臭、足臭等の体全体に及ぶ。その中でも特に汗の臭いについては、「わきが」に代表される腋臭と体全体に及ぶ酸臭が混合して構成されている。特に腋臭は嫌悪感を催す臭いの代表として、近年ますますその防御が望まれている。腋臭のもととなる汗が分泌されるアポクリン腺は、エックリン汗腺とは異なり腋窩や乳輪,陰部等に多く存在するが、それらの部位に局在するのものではなく、体幹部に広く存在しており(Pinkus H; Mehregan AH; Adnexal Nevi and Benign Adnexoid Tumors, in A Guide to Dermatohistopathlogy;2nd ed, pp528, pp29, by Appleton-Century-Crofts, New York、1976)、清潔志向が進む近年においては、斯かる腋臭を持続的に除去することが課題となっている。【0003】アポクリン腺から分泌された汗はそれ自体では強い臭気を発することはないが、皮膚表面に存在する皮膚常在菌によって臭気物質に変化することが知られており(Leyden JJ, et al, J Invest Dermatol, 77: 413-416, 1981)、最近では、におい分子の一つである3−メチル−2−ヘキセン酸(3M2H)がキャリア蛋白質であるアポリポプロテインD(Apolipoprotein D)と結合した形で皮膚表面へ分泌されることも報告されている(Zeng C, et al, Proc Natl Acad Sci U S A, 93 : 6626-6630, 1996)。また、におい分子の種類も、脂肪酸(Zeng XN, et al; Analysis of characteristic odors from human male axillae., J Chem Ecol, 17: 1469-1492, 1991)や男性ホルモンの誘導体(Labows JN. et al., Steroids, 34 :249-258, 1979、Gower DB, et al., J Steroid Biochem Mol Biol, 48:409-418, 1994)他、多岐わたることが報告されている。【0004】一方、これまで体臭を防止するための主たる方法としては、体表の微生物を抑える技術(殺菌剤、抗菌剤等)、汗の分泌を収斂作用で抑える技術(金属酸化物などの収斂剤等)、発生した不快な体臭を消臭する技術及び香りによるマスキング技術等が報告されている。【0005】しかしながら、これらの技術はいずれも腋臭に代表される不快な体臭を根本から絶つものではなく、その効果も充分ではない。また、抗菌技術によれば、不快臭の発生原因菌以外に皮膚常在菌をも殺菌することで皮膚の一次バリアー機能を低下させるおそれも示唆されている。【0006】本発明は、安全性が高く、汗の臭いを始めとする、不快な体臭、特に腋臭の発生を根本的に抑制できるデオドラント剤を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、アポクリン汗腺におけるキャリアタンパク質の一つとして知られているアポリポプロテインDの合成・分泌を抑制すれば、腋臭の原因となるにおい分子の皮膚表面への放出を抑制できると考え、当該タンパク質の合成・分泌を抑制する物質について検討したところ、特定の植物抽出物にアポリポプロテインDの分泌抑制作用があり、デオドラント剤として有用であることを見出した。【0008】すなわち本発明は、オウバク、ゴバイシ、コメ、ログウッド、アルニカ、ウイキョウ、エンメイソウ、オウレン、サイシン、サンショウ、レンゲソウ、セイヨウキヅタ、ケイヒ、メリッサ、マロニエ、アセンヤク、コウホネ、ツボクサ及びワレモコウから選ばれる植物又はその抽出物からなるデオドラント剤及びアポリポプロテインD分泌抑制剤を提供するものである。【0009】【発明の実施の形態】 本発明のデオドラント剤及びアポリポプロテインD分泌抑制剤として用いられる植物は、オウバク(黄柏 PHELLODENDRI CORTEX;キハダ Phellodendron amurens Ruprecht)、ゴバイシ(五倍子 GALLAE RHOIS;ヌルデ Rhus javanica L, Rhus chinensis Miller)、コメ(イネ Oryza sativa L.の種子)、ログウッド(魯格烏特;Haematoxylon campechianum L.)、アルニカ(アルニカArnica montana L.)、ウイキョウ(茴香 フェンネル FOENICULI FRUCTUS;ウイキョウ Foeniculum vulgare Miller)、エンメイソウ(延命草ISODONIS HERBA;ヒキオコシ Isodon japonicus Hara)、オウレン(黄連 COPTIDIS RHIZOMA;オウレン Coptis japonica Makino)、サイシン(細辛 ASIASARI RADIX;ウスバサイシン Asiasarum sieboldii F. Maekawa又はケイリンサイシンAsiasarum heterotropoides F. Maekawa var. mandshuricum F. Maekawa)、サンショウ(山椒 ZANTHOXYLI FRUCTUS;サンショウZanthoxylum piperitum De Candolle)、レンゲソウ(蓮華草、連花草、ゲンゲ、翹揺 Astragalus sinicus)、セイヨウキヅタ(Hedera helix)、ケイヒ(桂皮CINNAMOMI CORTEX;Cinnamomum cassia Blume)、メリッサ(セイヨウヤマハッカ、コウスイハッカ、メリッサソウ Melissa officinalis)、マロニエ(セイヨウトチノキ、マロニエ、ウマグリ Aesculus hippocastanum)、アセンヤク(阿仙薬 ガンビール GAMBIR;Uncaria gambir Roxburgh)、コウホネ(センコツ 川骨 NUPHARIS RHIZOMA;コウホネNuphar japonicum De Cancolle)、ツボクサ(ツボクサ Centella asiatica)、ワレモコウ(地楡;ワレモコウ Sanguisorba officinalis L.)から選ばれるものである。【0010】これらの植物は、その全草又は葉、根、根茎、果実、種子及び花をそのまま又は粉砕して用いることができるが、オウバクは樹皮、ゴバイシは虫エイ、コメは種子、ログウッドは木部、アルニカは根及び花、ウイキョウは果実、エンメイソウは地上部、オウレンは根茎、サイシンは根及び根茎、サンショウは果皮、レンゲソウは地上部、セイヨウキヅタは地上部、ケイヒは樹皮、メリッサは地上部、マロニエは種子、葉及び樹皮、アセンヤクは葉及び若枝、コウホネは根茎、ツボクサは地上部及びワレモコウは根及び根茎を用いるのが好ましい。また、コメにはコメヌカも含まれ、更にこれを酵母等で発酵させたコメヌカ発酵物も含まれる。【0011】本発明において抽出物とは、更にこれらの植物を常温又は加温下にて抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液又はその乾燥末を意味するものである。ここで抽出物は、2種以上の植物から得られた混合物であってもよい。【0012】抽出に用いる溶剤としては水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ピリジン類などが挙げられ、これらを単独又は混合物として用いることができる。【0013】また、液々分配等の技術により、上記抽出物から不活性な爽雑物を除去して用いることもでき、本発明においてはこのようなものを用いることが好ましい。これらは、必要により公知の方法で脱臭、脱色等の処理を施してから用いてもよい。【0014】当該植物又はその抽出物は、本発明のデオドラント剤及びアポリポプロテインD分泌抑制剤としてそのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈調製して又は濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。斯かる植物又はその抽出物は、後記実施例に示すように、におい分子のキャリア蛋白質であるアポリポプロテインDの分泌量を減少させ、腋臭抑制効果を発揮する。従って、これらはにおいの原因物質の発生を根本的に抑制できるデオドランド剤として有用である。【0015】本発明のデオドランド剤及びアポリポプロテインD分泌抑制剤は、化粧料、外用医薬品又は医薬部外品等の製剤、例えばクリーム、乳液、ローション、パウダー、スプレー、スティック、シート又は湿布等の貼付剤として用いることができ、またいくつかの使用方法を併用することも可能である。【0016】化粧料、外用医薬品又は医薬部外品として用いる場合のデオドランド剤又はアポリポプロテインD分泌抑制剤の含有量は、一般的に0.1〜20重量%とするのが好ましく、特に0.5〜10重量%とするのが好ましい。また、植物抽出物としての含有量は、一般的に固形分換算で0.00001〜10重量%とするのが好ましく、特に0.0005〜5重量%とするのが好ましい。【0017】これらの化粧料、外用医薬品又は医薬部外品には、通常用いられる各種成分、例えば化粧料成分として一般的に使用される油分、界面活性剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素類、香料等の他、紫外線吸収剤、美白剤、しわ改善剤、保湿剤、皮脂分泌抑制剤、柔軟剤、角質保護剤、薬効剤、酸化防止剤、溶剤等の成分を任意に組み合わせ配合して製剤化することができる。【0018】また、上記の各製剤には、天然又は合成された多孔性金属酸化物の微粒子粉体、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛等の金属を成分とする収れん性化合物、殺菌剤、抗菌剤、抗生物質等を適宜配合することにより、デオドラント効果を増強させることができる。【0019】本発明のデオドランド剤及びアポリポプロテインD分泌抑制剤は、足、腋、頭部、陰部等不快臭の発生しやすい箇所に適用することにより、体臭の発生を制御することができる。斯かる場合の製剤の使用量は、有効成分の含有量により異なるが例えば液状製剤の場合皮膚面1cm2当たり1〜20mg、固形状の製剤の場合、同じく1〜50mgとするのが好ましい。【0020】【実施例】製造例1 オウバク抽出物の調製オウバク(キハダ Phellodendron amurense Ruprechtのコルク層を除いた樹皮)40gに50v/v%エタノール水溶液400mLを加え、室温で7日間抽出後、濾過して抽出液を得た(収量:350mL、蒸発残分:0.87w/v%)。【0021】製造例2製造例1に準じて、表1に示す植物抽出物を調製した。【0022】【表1】【0023】実施例1 アポリポプロテインD分泌抑制作用(1)細胞培養およびサンプル添加細胞培養は乳がん由来の細胞株T−47D(ATCC No.HTB-133)を用い、10%FCS添加DMEM培地(LIFE TECHNOLOGIES社 Cat.11995-065)にて、37℃、5%−CO2、加湿で継体培養を行った。6wellプレートに40×104cell/wellとなるように接種し、10%FCS(チャコール処理)添加DMEM培地で2日培養を行った。培地を除去し、PBS(LIFE TECHNOLOGIES社 Cat.14190-144)で二回洗浄の後、レチノイン酸10-6Mと各種エキス0.1%を添加したDMEM培地をいれる。二日後に、培地交換しさらに二日後培地を回収し、ウェスタンブロッティングを行った。【0024】(2)ウェスタンブロッティング前処理:回収した培地から遠心により浮遊する細胞を除去し、400μLをマイクロコン10で限外ろ過濃縮しその後、電気泳動のサンプルバッファー(2mL 10%SDS, 2mL 2-mercapoethanol, 2.5mL 1M Tris pH 6.8, 3.5mL 70%sucrose)10μLを添加し、95℃で5分間加熱処理後、2000rpm,3minの遠心で回収した。SDS−PAGE:Tris/Glycine/SDSバッファー(BIO-RAD社製、Cat.161-0772)、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル(BIO-RAD社製、Cat.161-J331)を用いて、前処理を施した培地濃縮液を1ウェルにつき、マイクロコン10(MILLIPORE社製、Cat.42407)1本分(培地400μL相当)ずつアプライし、10〜20mAの定電流で電気泳動を行った。セミドライブロッティング:ブロッティングバッファーは0.01%SDS・20%メタノール含有Tris/Glycineバッファー(BIO-RAD社製、Cat.161-0734)。ゲル1枚につきブロッティング用濾紙(BIO-RAD社製、Cat.170-3932)2枚をブロッティングバッファーに浸し、メタノール化したPVDFメンブレンと電気泳動したゲルもブロッティングバッファーも浸した。Trans-Blot SD(BIO-RAD社製、Cat.170-3957)に下から、濾紙2枚、表を下にしたPVDFメンブレン、表を下にしたゲル、濾紙2枚の順にセットし、20V、60分通電した。ブロッキング:ブロックエース(雪印社製、UK-B25)に、通電後PBSで洗浄したメンブレンを浸漬した。(約20時間冷蔵保存)1次抗体:anti-HUMAN Apolipoprotein D(RDI社製、Cat.RDI-APODabm)をブロックエース中に300倍希釈になるよう加え、室温で1時間振盪した。2次抗体:メンブレンを1×TBST(DAKO社製、Cat.S3306を希釈)で2回リンスし、更に15分1回、5分2回振盪しながら洗浄した。Anti-mouse IgG F(ab')2(アマシャム ファルマシア社製, NA931)をブロックエースで30000倍に希釈して用い、メンブレンを浸漬し1時間振盪した。検出:メンブレンを1×TBSTで2回リンスし、更に15分1回、5分2回振盪しながら洗浄した。SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Pierce社製, Cat.34095)中に5分浸漬した。その後オートラジオグラフィーフィルムに露光してアポリポプロテインDを検出した。フィルムをスキャナー(EPSON社製、GT-9500WIN)でコンピューターに読み込んで、Lane&Spot Analyzer(ATTO社製)でバンドの濃さを数値化し、エキス無添加サンプルに対するアポリポプロテインD量の比を算出した。結果を表2に示す。【0025】【表2】【0026】実施例2 体臭抑制試験体臭が強く、かつ腋臭を有している被験者20名の片方の腋にプラセボサンプル(表3)を、もう片方の腋にオウバク抽出物サンプル(表3)を4週間、1日2回塗布した。体臭の評価は専門のパネラー2名が、使用前と使用後の腋窩部分の体臭を、下記の5段階で評価した。結果を表4に示す。【0027】1:微かに臭う2:はっきりと臭う3:やや強く臭う4:強く臭う5:非常に強く臭う【0028】使用後のスコアから使用前のスコアを差し引いた値は、オウバク塗布側で体臭の低下を示しており、中でも特に腋臭の低減が確認された。各被験者の両腋のスコア変化について、ウィルコクソン符号順位検定を行ったところ、危険率1%未満の有意差があった。【0029】【表3】【0030】【表4】【0031】以上より、本発明のオウバク抽出物に体臭を抑制するとともに、特に腋臭を低減する効果が認められた。【0032】【発明の効果】本発明のデオドラント剤及びアポリポプロテインD分泌抑制は、不快な体臭の発生を持続的に抑えられることから、優れた消臭効果と高い安全性を有する化粧料、外用医薬品又は医薬部外品として有用である。 オウバク又はその抽出物からなるアポリポプロテインD分泌抑制剤。