生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_夾雑物質による影響回避方法
出願番号:2002086503
年次:2008
IPC分類:C12Q 1/30,C12Q 1/26,C12Q 1/28,G01N 33/50


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中村 義之 木全 伸介 水口 克彦 JP 4081709 特許公報(B2) 20080222 2002086503 20020326 夾雑物質による影響回避方法 東洋紡績株式会社 000003160 中村 義之 木全 伸介 水口 克彦 20080430 C12Q 1/30 20060101AFI20080410BHJP C12Q 1/26 20060101ALI20080410BHJP C12Q 1/28 20060101ALI20080410BHJP G01N 33/50 20060101ALI20080410BHJP JPC12Q1/30C12Q1/26C12Q1/28G01N33/50 E C12Q 1/00-1/70 BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed JMEDPlus/JST7580/JSTPlus(JDream2) G-Search 特公平04−034400(JP,B2) 特開昭57−147058(JP,A) 2 2003274996 20030930 9 20050126 三原 健治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、夾雑物質による影響回避方法に関する。詳しくは、試料中に存在する分析対象物から過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を測定することにより分析対象物を検出するにあたり、分析対象物以外の物質(妨害物質)に由来する過酸化水素をカタラーゼを用いて消去した後、分析対象物を検出する際にカタラーゼ活性を阻害する方法に関する。【0002】【従来の技術】体液などの試料中の分析対象物を酵素を用いて検出する場合、その検出反応系は脱水素酵素を補酵素であるNAD(P)Hとを共役させる反応系と、酸化酵素とペルオキシダーゼを共役させる過酸化水素測定系が一般的に多い。後者は分析対象物またはその反応生成物に酸化酵素を作用させ、生成する過酸化水素をペルオキシダーゼと色原体により、例えばキノンイミン色素に変え、該色素を吸光度測定して比色定量する方法である。また、分析対象物を検出する場合、その分析対象物に直接、酸化酵素を作用させる場合もあるが、多くの場合は、酸化酵素およびペルオキシダーゼの他に、更に1種類以上の他の酵素を必要とする。【0003】分析対象物に酸化酵素の他に1種類以上の他の酵素を必要とする例として、トリグリセリド、クレアチニン、クレアチン、遊離コレステロール、コレステロールエステル、リン脂質、無機リン、アミラーゼ、GOT、GTP、シアル酸、グアナーゼなどが挙げられる。【0004】近年、臨床検査試薬の精度向上の為に生体試料中の夾雑物質による影響回避が試薬性能上重要な要素となっている。これらの分析対象物を含む試料、例えば体液中には上記酵素反応系に関与する内因性の物質が存在し、目的の分析対象物の測定に正の誤差を生じることが問題となる。例えばトリグリセリドを測定する場合、遊離グリセロール、クレアチニンを測定する場合、クレアチンおよびザルコシン、エステル型コレステロールを測定する場合、遊離コレステロール、リン脂質を測定する場合、コリン、無機リンを測定する場合、ヒポキサンチン、アミラーゼ活性を測定する場合、グルコース、GOTまたはGTP活性を測定する場合、ピルビン酸、シアル酸を測定する場合、ピルビン酸、グアナーゼを測定する場合、尿酸などが例示される。【0005】従来、問題点の対策として実施されてきた方法は、1つは内因性の夾雑物質を検体ブランクとして差し引く方法がある。この方法は誤差を防ぐことはできるが、検体ブランクとして専用の試薬が別に必要となり、更にその為の測定操作が加わり、煩雑な方法で自動分析機等への適用性が低く実用的ではない。【0006】別の方法として夾雑物質に特異的な酸化酵素を作用させることによって生成させた過酸化水素をカタラーゼによって無色の物質に変換することで消去した後、本反応に必要のないカタラーゼをカタラーゼ阻害剤によって活性を阻害する方法が知られている。【0007】例えばクレアチニン測定では、クレアチニンにクレアチニンアミドヒドロラーゼが作用して生成するクレアチンも生体内に存在するのでクレアチニンを測定する場合、あらかじめクレアチンを消去しておく必要性が生じる。内因性のクレアチンを消去するために、カタラーゼを用いた2試薬系のクレアチニン測定用試薬が知られている(特公平4-34400号公報) 。【0008】クレアチニン測定試薬としては、例えば下記組成を有するものが挙げられる。試薬R1:クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、カタラーゼ、試薬R2:クレアチニンアミドヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼ、色原体。【0009】つまり、試薬R1に用いる第1酵素反応で、試料中のクレアチンをクレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、カタラーゼの反応により無色の物質に変換して消去する。【0010】次いで第2酵素反応として、試薬R2を試料および試薬R1の系に添加して、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、色原体およびペルオキシダーゼの反応により、試料中のクレアチニンから有色物質を生成し、該物質を比色定量する。【0011】第2酵素反応に共存するカタラーゼは、そのカタラーゼ阻害剤を添加することにより該酵素反応をブロックできる。クレアチニンと同様にトリグリセリド、無機リン測定などの検出においても同様に分析対象物以外に由来する過酸化水素の消去が必要とされる。【0012】上記のカタラーゼ阻害剤としては、従来アジ化ナトリウムが汎用されてきた。【0013】【発明が解決しようとする課題】アジ化物は金属塩を形成することによって爆発性を有することが知られており、試液中の含有量は少ない事が望ましい。また、試液の調製時に酸性域において有毒なアジ化ガスが発生することが知られており、含有量は少ない事が望ましい。また、アジ化ナトリウムは測定反応には直接関わらない物質であるが、生体試料には多くの物質が混合しているため、試料中の未知の成分とアジ化ナトリウムまたは原料としてのアジ化ナトリウム製剤中の不純物などとの非特異反応の可能性も考えられ、この点からも試液中の含有量は少ない事が望ましい。【0014】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために種々検討した結果、アジ化リチウムがアジ化ナトリウムよりも高いカタラーゼ活性阻害能を持つことを見いだし、これにより、アジ化リチウムを用いることで試薬中のアジ化物を低量に抑えることが可能なことを見いだし、本発明を完成した。【0015】すなわち本発明は、(1)検出反応系として酸化酵素とペルオキシダーゼを共役させる過酸化水素測定系を経由する生体成分の測定に際して、試薬が2種類以上の溶液から構成され、その反応液への添加が特定の順序で行われるよう規定されている測定方法において、第1試薬にカタラーゼを含み、検出反応時にカタラーゼ反応を阻害する方法において、5〜500mg/Lのアジ化物を用いることを特徴とする、夾雑物質による影響回避方法。(2)アジ化物が1価のアルカリ金属塩より選ばれる少なくとも1種のアジ化物を用いた(1)記載の方法。(3)アジ化物がアジ化リチウムである(2)記載の方法。(4)試薬のpHが5〜10である(1)〜(3)記載の方法。である。【0016】【発明の実施の形態】本発明において「カタラーゼ活性の阻害」とは、本反応において生成された過酸化水素をカタラーゼの反応によって消去されないことを意味する。【0017】本発明において「夾雑物質」とは還元物質であるアスコルビン酸や中性脂肪を測定する場合の遊離グリセロール、クレアチニンを測定する場合のクレアチン及びザルコシン、エステル型コレステロールを測定する場合の遊離コレステロール、アミラーゼ活性を測定する場合のグルコース、シアル酸を測定する場合のピルビン酸、グアナーゼ活性を測定する場合の尿酸等がそれである。【0018】この発明において「酸化酵素」とは、アスコルビン酸オキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ、グリセロリン酸オキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、ウリカーゼ等があり、過酸化水素を発生する酸化酵素であれば、いかなる起源のものでも良い。【0019】この発明において使用するカタラーゼは、いかなる起源のものでも良い。例えば肝臓、赤血球、胃等に含まれる動物由来のものや、ミクロコッカス属、アスペルギルス属等の微生物に含まれるものなどが挙げられる。従来から牛の肝臓由来の酵素が多く使用されている。上記のほか、他の動物や微生物由来のカタラーゼを用いることが可能である。【0020】この発明において使用する、カタラーゼ活性阻害剤はアジ化物である。アジ化物としては、1価のアルカリ金属との化合物であればよく、アジ化ナトリウム、アジ化リチウム等が挙げられるが、好ましくはアジ化リチウムを用いたほうが良い。【0021】アジ化物の使用濃度として、5〜500mg/dLの範囲でカタラーゼ活性阻害能を認めるが、好ましくは5〜100mg/dLが良く、さらに好ましくは10〜50mg/dLの範囲で使用するのが良い。【0022】緩衝液としては特に制限は無く、その反応系に適当なpHを保つことが出来るならば、いかなる種類のものでも良い。通常用いられる緩衝液としてトリス緩衝液、リン酸緩衝液、GOOD緩衝液などが挙げられる。なかでも、トリス緩衝液、リン酸緩衝液は濃度、温度によってpHが変動しやすいが、安価であるという利点がある。一方、GOOD緩衝液にはMES、Bis−Tris、ACES、BES、MOPS、PIPES、TES、HEPES、Tricine、Bicine、POPSO、TAPS、CHES、CAPSなどが例示される。【0023】使用するpHとしては、特に限定されるものではないが、通常の酵素反応に使用するpH5〜10の範囲であれば良い。好ましくは、pH6〜8の範囲で使用するのが良い。【0024】次に具体的な基質又は酵素活性の定量方法について説明する。【0025】中性脂肪(トリグリセライド)の定量試料に第1試薬を加えた後、第2試薬を加えて生じた吸光度より比色定量する。第1試薬グリセロールキナーゼグリセロールリン酸オキシダーゼカタラーゼアデノシン3リン酸4アミノアンチピリン第2試薬リポプロテインリパーゼペルオキシダーゼアジ化リチウムDEA(ジエチルアニリン)反応系を式1に示す。【0026】【式1】【0027】クレアチニンの定量試料に第1試薬を加えた後、第2試薬を加えて生じた吸光度より比色定量する。第1試薬クレアチンアミジノヒドラーゼザルコシンオキシダーゼカタラーゼ4アミノアンチピリン第2試薬クレアチニンアミジドヒドラーゼペルオキシダーゼアジ化リチウムDEA(ジエチルアニリン)反応系を式2に示す。【0028】【式2】【0029】エステル型コレステロールの定量試料に第1試薬を加えた後、第2試薬を加えて生じた吸光度より比色定量する。第1試薬コレステロールオキシダーゼカタラーゼ4アミノアンチピリン第2試薬コレステロールエステラーゼペルオキシダーゼアジ化リチウムDEA(ジエチルアニリン)反応系を式3に示す。【0030】【式3】【0031】アミラーゼの定量試料に第1試薬を加えた後、第2試薬を加えて生じた吸光度より比色定量する。第1試薬グルコースオキシダーゼβ−グルコシダーゼカタラーゼ4アミノアンチピリン第2試薬デンプン(基質)ペルオキシダーゼアジ化リチウムDEA(ジエチルアニリン)反応系を式4に示す。【0032】【式4】【0033】シアル酸の定量試料に第1試薬を加えた後、第2試薬を加えて生じた吸光度より比色定量する。第1試薬ピルビン酸オキシダーゼカタラーゼ4アミノアンチピリン第2試薬ノイラミンダーゼペルオキシダーゼアジ化リチウムDEA(ジエチルアニリン)反応系を式5に示す。【0034】【式5】【0035】グアナーゼの定量試料に第1試薬を加えた後、第2試薬を加えて生じた吸光度より比色定量する。第1試薬キサンチンオキシダーゼウリカーゼカタラーゼ4アミノアンチピリン第2試薬グアニン(基質)ペルオキシダーゼアジ化リチウムDEA(ジエチルアニリン)反応系を式6に示す。【0036】【式6】【0037】【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により特に限定されるものではない。【0038】(実施例1)カタラーゼを含有する水溶液にアジ化物を5〜1000mg/dLとなるように添加した時のカタラーゼ活性阻害率(アジ化物無添加の時の活性値を0%とした場合の相対活性率)を検討した。なお、カタラーゼ活性測定方法はチタン呈色法を用いて実施した。【0039】(試薬調整)PIPES緩衝液(pH7.0) 50mMカタラーゼ(牛肝臓由来) 1000U/mLアジ化物 5〜1000mg/dL【0040】【表1】【0041】(結果)表1に示す。すべての添加濃度において、アジ化リチウムの方がカタラーゼ活性の阻害率が有意に高いことが分かる。【0042】【発明の効果】本発明においては、アジ化物としてアジ化リチウムを添加することによって、アジ化ナトリウムよりも少量でカタラーゼ活性の阻害ができる。このため、危険物質であるアジ化物の含有量を少なくすることが可能となり、また、試薬調製時に問題となるアジ化ガスの発生頻度をも低減させることが可能である。 検出反応系として酸化酵素とペルオキシダーゼを共役させる過酸化水素測定系を経由する生体成分の測定に際して、試薬が2種類以上の溶液から構成され、その反応液への添加が特定の順序で行われるよう規定されている測定方法において、第1試薬にカタラーゼを含み、検出反応時にカタラーゼ反応を阻害する方法において、5〜500mg/Lのアジ化リチウムを用いることを特徴とする、夾雑物質による影響回避方法。 試薬のpHが5〜10である請求項1に記載の方法。


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