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タイトル:公開特許公報(A)_ヘモグロビン分析装置
出願番号:2002073675
年次:2005
IPC分類:7,A61B5/145,G01N21/27,G01N21/35,G01N33/72


特許情報キャッシュ

柄川 俊二 JP 2005253478 公開特許公報(A) 20050922 2002073675 20020318 ヘモグロビン分析装置 シチズン時計株式会社 000001960 柄川 俊二 7 A61B5/145 G01N21/27 G01N21/35 G01N33/72 JP A61B5/14 310 G01N21/27 Z G01N21/35 Z G01N33/72 A 6 1 OL 13 2G045 2G059 4C038 2G045AA01 2G045CA30 2G045DA45 2G045FA11 2G045GC30 2G045JA01 2G059AA01 2G059BB13 2G059CC18 2G059DD13 2G059EE01 2G059EE11 2G059FF06 2G059FF10 2G059GG01 2G059GG02 2G059GG03 2G059HH01 2G059HH02 2G059HH06 2G059JJ02 2G059JJ26 2G059MM01 2G059PP04 4C038KK10 4C038KL05 4C038KL07 4C038KX02 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、非侵襲で血液中のヘモグロビンがグルコースと結合した割合を分析するヘモグロビンA1c分析装置に関する。【0002】【従来の技術】従来から、糖尿病の診断や血糖コントロールの状態を知るための指標として、ヘモグロビンA1c(グリコヘモグロビンとも言う。)が臨床的に利用されている。これは血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが、血液中のグルコースと結合した状態を調べるものである。ヘモグロビンは血液中のグルコース濃度に応じてグルコースと結合する。これは反応時間の遅い不可逆反応であり、赤血球の寿命が約120日である。このことから、ヘモグロビンA1cは過去1から2ヵ月の平均血糖レベルを反映しているのである。【0003】ヘモグロビンA1cの分析方法としては、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)や免疫法などある。例えば、市販されているHPLC法のヘモグロビンA1c分析装置としては、東ソー自動グリコヘモグロビン分析計HLC−723G7(医療用具許可番号 第35BZ0019号)がある。また免疫法のヘモグロビンA1c分析装置としては、ADAMSマスターDM−3310(医療用具承認番号2100BZZ00391)がある。【0004】これらのヘモグロビンA1c分析装置は、患者の静脈血を採血して全血を検査している。このような検査方法では、患者は採血の際に苦痛と不快感を味わっていた。また、医師や看護婦、検査技師がいないと採血できないことや、装置が大型であり高価であるために、病院などでの糖尿病の診察時や健康診断のときに限られていた。【0005】採血しないで血液成分を検査する装置としては、分析内容が違うが動脈血の酸素飽和度(以下「SpO2 」と略記する。)を測定するパルスオキシメーターがある。このパルスオキシメーターの一例が、特公昭53−26437号公報に開示されている。それによれば、血流の脈動に起因する透過光の変化分を、630nmと900nmのふたつの波長帯域において測定して、このふたつの変化分の比、つまり吸光係数の比から動脈血のSpO2 を算出している。特公昭53−26437号公報では、オキシヘモグロビン(以下「Hb−O2 」と略記する。)とデオキシヘモグロビン(以下「Hb」と略記する。)の2成分の成分比を、630nmと900nmの2波長で測定したものであった。【0006】パルスオキシメーターは、一般にHb−O2 とHbの2成分のみの成分比を求めるものであり、一酸化炭素と結合したカルボキシヘモグロビン(以下「Hb−CO」と略記する。)の存在は無視していた。確かに、手術中や術後、集中治療室、救急の輸送中などの臨床現場において、Hb−COの存在が引き起こす誤差は、無視できる程度のものであった。しかし、このことに着目してHb−COを分析対象とすることが考えられた。その一例が特開平5−228129号公報に開示されている。それによれば、660nm、750nm、940nmの3つの光源で、Hb−O2 とHbに加えて、Hb−COの3つの成分比を算出して、動脈血のSpO2 を求めるものである。【0007】【発明が解決しようとする課題】前述の病院の診察や健康診断で使われるヘモグロビンA1c分析装置は、患者の血液を採血して分析する方法であり、患者は苦痛を伴なうばかりでなく、感染の危険性もあった。また、装置が大型であり高価でもあることから、患者が在宅で検査できる装置にはならなかった。【0008】また、パルスオキシメーターは、動脈血中のオキシヘモグロビンHbの成分比であるSpO2 を求めるものであり、糖尿病の診断や血糖コントロールの状態の指標とするヘモグロビンA1cを求めることはできなかった。【0009】図8に、従来のパルスオキシメーターを使った測定の結果を示す。なおこの装置の光源には、660nmと940nmの発光ダイオードが使われている。測定の被験者は、糖尿病患者5症例、正常者22症例、合計27症例であり、集計はたばこを吸う習慣がない禁煙者群16症例と、たばこを吸う習慣がある喫煙者群11症例に分類した。パルスオキシメーターの表示値SpO2 を、ヘモグロビンA1c相当値に変換するために、100−SpO2 の処理をしている。例えば、SpO2 が92%ならば、ヘモグロビンA1c相当値は8%としている。なお、測定の結果は、症例数(度数)を示してある。【0010】禁煙者群ではヘモグロビンA1c相当値が糖尿病患者だけが高値を示し、正常者は低値を示した。喫煙者群でも糖尿病患者は高値を示したものの、正常者に高値を示す症例が含まれていた。このように喫煙者の場合には、ヘモグロビンA1cを高値と測定してしまう恐れがあり、従来技術によるパルスオキシメーターではヘモグロビンA1cを求められないことが、測定からも明らかになった。【0011】本発明の目的は上記課題を解決し、糖尿病の診断や血糖コントロールの状態を知るために、ヘモグロビンA1cを非侵襲で分析できるヘモグロビンA1c分析装置を提供することである。【0012】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明の特徴は、第1の波長の光を発する第1の発光素子と、第1の波長より長い第2の波長の光を発する第2の発光素子と、第2の波長より長い第3の波長の光を発する第3の発光素子と、該第1の発光素子と該第2の発光素子と該第3の発光素子から発せられたそれぞれの光を生体組織を通して受ける少なくとも1つの受光素子と、該受光素子の受光量に基づいてそれぞれの波長ごとに前記生体組織の拍動成分を取り出す拍動抽出手段と、前記拍動成分に基づいてヘモグロビンのなかの第1の成分の成分比、第2の成分の成分比および第3の成分比のうちの少なくとも1つを演算する演算手段と、該演算手段の演算結果を表示する表示手段を有するヘモグロビン分析装置において、前記第1の成分のモル吸光係数、前記第2の成分のモル吸光係数および前記第3の成分のモル吸光係数をそれぞれk1、k2、k3としたとき、前記第1の波長はk3>k1>k2の領域に設定し、前記第2の波長はk1≧k3>k2の領域に設定し、前記第3の波長はk1≒k2≒k3の領域に設定し、前記第1の成分の成分比、前記第2の成分の成分比または前記第3の成分の成分比のうちの少なくとも1つを前記表示手段に表示することを特徴とする。【0013】また、第1の波長の光を発する第1の発光素子と、第1の波長より長い第2の波長の光を発する第2の発光素子と、第2の波長より長い第3の波長の光を発する第3の発光素子と、該第1の発光素子と該第2の発光素子と該第3の発光素子から発せられたそれぞれの光を生体組織を通して受ける少なくとも1つの受光素子と、該受光素子の受光量に基づいてそれぞれの波長ごとに前記生体組織の拍動成分を取り出す拍動抽出手段と、前記拍動成分に基づいてヘモグロビンのなかの第1の成分の成分比、第2の成分の成分比および第3の成分の成分比のうちの少なくとも1つを演算する演算手段と、該演算手段の演算結果を表示する表示手段を有するヘモグロビン分析装置において、前記第1の波長は、前記第3の成分の吸光度比が600nm以上1000nm以下の範囲でほぼ極大となる波長に設定し、前記第2の波長は、前記第1の成分の吸光度比がほぼ極大となる波長に設定し、前記第3の波長は、前記第2の成分の吸光度比が600nm以上1000nm以下の範囲でほぼ極大または最大となる波長に設定し、前記第1の成分の成分比、前記第2の成分の成分比または前記第3の成分の成分比のうちの少なくとも1つを前記表示手段に表示することを特徴とする。【0014】【発明の実施の形態】以下、図面により本発明の実施の形態を詳述する。図2(a)および(b)は本発明の一実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置の外観図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。図3は本発明の一実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置の測定時の姿勢を示す装着図であり、第4図は本発明の一実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置のセンサ部構造を示す断面図である。図5は本発明の一実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置のブロック図である。図1は各種ヘモグロビンの各波長におけるモル吸光係数の変化を示す吸光特性曲線である。図7は各種ヘモグロビンの各波長におけるモル吸光係数の割合を示す特性曲線である。図6は本発明の一実施の形態による他のヘモグロビンA1c分析装置の外観図である。【0015】まず図2(a)および(b)を用いて、本実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置の外観を説明する。図2において、10は血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが、血液中のグルコースと結合した割合を調べるヘモグロビンA1c分析装置である。分析装置10の側面には、測定部位を入れられる挿入穴11があり、被験者の指が入るようにほぼ円筒形状をしている。正面には電源を入れて分析を開始させるスイッチ12と、分析結果を表示する表示器13が設けられている。表示器13には血糖コントロールの指標となる、ヘモグロビンA1cが表示される。【0016】次に図3を用いて、本実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置の使用方法を説明する。挿入穴11には指が挿入されている。標準的な指の使い方は、右手第3指(中指)を挿入穴11に入れて、両脇の第2指(人差し指)と第4指(薬指)で軽く分析装置10を支えて、手のひらを上に向ける。これが測定時の標準的な装着姿勢である。この場合には測定対象の生体組織1は右手第3指となる。この姿勢のままで、スイッチ12を他の指、例えば第1指(親指)で押せば、電源が入り分析が開始される。分析結果のヘモグロビンA1cは、表示器13が上を向いているので、簡単に読み取ることができる。ここでは挿入穴11に入れる生体組織1を、指を右手第3指としたが、この指に限るものではなく他の指でも同様に測ることができる。受光フィルタ26に指の腹を軽く押し当てられるならばどの指でもかまわない、手足の指ならばすべて測定対象とすることができる。またさらに、耳たぶや鼻もヘモグロビンA1cの測定対象とすることができる。【0017】次に図4を用いて、本実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置のセンサ部構造を説明する。まず挿入穴11は先端が閉じたほぼ円筒形状のホルダ27からなり、指である生体組織1をホルダ27の先端に突当たるように挿入する。ホルダ27には、指の腹が当たる部分に受光フィルタ26と、その反対側には拡散板25が備え付けられている。拡散板25は透明なポリスチレン(PS)樹脂やアクリル(PMMA)樹脂を成形したものであり、その奥には発光素子21、22、23が近接して配置されている。発光素子21、22、23は、それぞれのピーク発光波長がλ1、λ2、λ3のチップ型発光ダイオードである。発光素子21、22、23は近接して配置しているものの、同一位置から発光することは不可能である。このことによる誤差を最小限にするために、拡散板25を挿入することによって、チップ型発光ダイオードによる点発光ではなく、拡散板25による面発光に変換している。このことによって、発光素子21,22、23の光路差による影響を解消している。なお、ここでは発光素子21、22、23を発光ダイオードとしたが、波長選択性のすぐれたレーザーダイオードとすることもできる。【0018】受光フィルタ26は、発光素子21,22、23から発せられた波長λ1、λ2、λ3の光が、生体組織1を透過したものだけを受けるようにしている。つまり、蛍光燈や太陽光を減衰させるための光学フィルタであり、挿入穴11と生体組織1との隙間から漏れてくる外来光の影響を少なくしている。また、受光フィルタ26は防塵効果もあり、清掃を簡単に行なうことができるようにしてある。受光フィルタ26の奥には受光素子24が配置されている。受光素子24は発光波長λ1、λ2、λ3を含んでいる感度波長範囲を持ったフォトダイオードである。回路基板30は、受光素子24が実装され、それぞれの波長における脈動による光電流の変化を求め、さらにヘモグロビンA1cを算出している。その算出結果は、回路基板30に接続してされた表示器13によって表示される。【0019】次に、図5を用いて本発明の実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置のブロック図を説明する。第1の波長λ1、第2の波長λ2、第3の波長λ3の光を発光する第1の発光素子21、第2の発光素子22、第3の発光素子23があり、これらは発光駆動回路31の出力を受けて順番に点灯する。これらの発光素子21,22,23の光が、生体組織1である指に照射される。照射された光は、生体組織1の各種ヘモグロビンによって吸収されるが、赤血球による散乱も起こしている。生体組織1を挟んで対向して配置された受光素子24によって透過光が受光される。ここでは、発光波長λ1、λ2、λ3は、λ1<λ2<λ3の関係にあり、例えば630nm、680nm、940nmにそれぞれ設定されている。【0020】受光素子24は、発光素子21,22、23から発せられた光が、生体組織1を透過した、減衰されたあとの透過光量I1、I2、I3に対応する光を受けている。増幅器32は受光素子24の光電流を電圧変換し、それを電圧増幅している。なお、各波長における透過光量I1、I2、I3には、脈動に相当する拍動成分が含まれている。【0021】マルチプレクサ(MPX)33では、増幅器32の出力信号が、λ1、λ2、λ3の各波長ごとに振り分けられ、バンドパスフィルタ(BPF)34、35、36に供給される。BPF34、35、36は、各信号中に含まれる高周波のノイズ成分が除去され、さらに生体組織1における各波長λ1、λ2、λ3についての透過光の拍動成分に相当する振幅信号、つまり指尖容積脈波を出力する。【0022】拍動抽出手段(DET)37、38、39は、BPF34、35、36からの各出力信号より、各波長ごとに生体組織1の拍動成分の振幅値に相当する信号を検出して取出している。これら検出信号は、生体組織1での各波長λ1、λ2、λ3における透過光の拍動成分ΔA1、ΔA2、ΔA3に対応したものであり、アナログ/デジタル変換されたデータである。DET37、38、39の出力信号ΔA1、ΔA2、ΔA3は、演算手段40に供給されて、全ヘモグロビンに対する各種ヘモグロビンの成分比が演算される。そして、表示手段41では演算結果であるヘモグロビンA1cの成分比が表示される。【0023】ここで、演算手段41で演算されるヘモグロビンの成分比の算出について説明する。各種ヘモグロビンのモル吸光係数と生体組織1の吸光度から、数学的変換により、吸収成分である各種ヘモグロビンの成分比を算出できるのである。まずモル吸光係数εijは、波長λi(i=1,2,3)における、各種ヘモグロビンj(j=1はHbA1c−O2 、j=2はHb−O2 、j=3はHb−CO)のモル吸光係数であり、実験などから得られた既知として扱うことができる。xはHbA1c−O2 の濃度であり、yはHb−O2 、zはHb−COの濃度である。kは血管による光路長を表す比例定数である。aiは、波長λi(i=1,2,3)における生体組織1による吸光度であり、吸収成分は主にHbA1c−O2 、Hb−O2 、Hb−COの各種ヘモグロビンによるものである。ランベルト・ベールの法則に従って、(1)、(2)、(3)式の連立方程式が導かれる。【数1】【数2】【数3】この連立3元1次方程式を、3次の行列式で表すと(4)式となる。【数4】【0024】これを、HbA1c−O2 、Hb−O2 、Hb−COの濃度x、y、zについて解くと、それぞれ(5)、(6)、(7)式となる。【数5】【数6】【数7】【0025】ここで、ヘモグロビンA1cは全ヘモグロビンに対するHbA1c−O2 の割合であり、HbA1c−O2 の成分比Xは(8)式となる。同様に、Hb−O2 の成分比Y、及びHb−COの成分比Zは、それぞれ(9)、(10)式となる。【数8】【数9】【数10】【0026】なお、各種ヘモグロビンの成分比X、Y、Zでは、比例定数kは消去されている。これは血管による光路長が未知であっても解けることを示している。また、εijをモル吸光係数として説明したが、各種ヘモグロビンの濃度が不明な場合には、同一濃度条件での吸光度として扱うこともできる。このときにはディメンジョンが変わるが、基本的な考え方は同じである。【0027】これまでに、HbA1c−O2 、Hb−O2 、Hb−COの各波長におけるモル吸光係数から数学的変換によって、成分比を算出できることを説明した。しかし、光の吸収を利用する吸光分析では、測定精度の向上や計算の簡略化を考えると発光波長の設定方法には工夫が必要である。基本的にはそれぞれのヘモグロビン成分のモル吸光係数に特徴がある特異波長を設定する。【0028】吸光分析で使われる吸収スペクトルについて説明する。電子遷移由来の電子スペクトルは、紫外可視領域に大きな吸収スペクトルが現れる。しかし、600nm未満の波長ではヘモグロビンによる吸収が強く、生体組織を通した透過光が少なくなるために、透過光を検出するは困難である。また、分子振動由来の振動スペクトルは、近赤外領域に吸収スペクトルが現れるが吸収自体は小さい。特に1000nmを越えた波長では、ヘモグロビンによる吸収は小さく、水分子による吸収が大きくなることから、分析するのは困難である。そこで、発光波長λ1、λ2、λ3は、600nmから1000nmの可視光及び近赤外光から設定する。さらに、モル吸光係数の違いに着目して発光波長を設定する場合には、電子スペクトルが現れる可視光領域つまり、600nmから780nmの領域から設定すると良い。【0029】ここで、HbA1c−O2 、Hb−O2 、Hb−COの各波長におけるモル吸光係数の変化を分光光度計によって測定した。図1にその測定結果である吸光特性曲線を示す。また各種ヘモグロビンの各波長におけるモル吸光係数の違いが良くわかるように、図7に各種ヘモグロビンのモル吸光係数の割合を、吸光度比として特性曲線を示した。【0030】この図1を用いて、本実施の形態のヘモグロビンA1c分析装置における波長λ1、λ2、λ3の設定方法について説明する。縦軸は各種ヘモグロビン成分のモル吸光係数、横軸は波長である。第1の成分であるHbA1c−O2のモル吸光係数をk1、第2の成分であるHb−O2のモル吸光係数をk2、第3の成分であるHb−COのモル吸光係数をk3とする。まず、第1の波長λ1は、各種ヘモグロビンでのモル吸光係数の違いが大きい波長を選ぶ。図1によれば、波長630nm付近でモル吸光係数の違いが大きい。600nmから650nmの領域で、モル吸光係数が大きい順に並べると、Hb−CO、HbA1c−O2 、Hb−O2 つまり、k3>k1>k2となっている。この600nmから650nmの領域から第1の波長λ1を設定する。例えば発光波長λ1を630nmとして、橙色の発光ダイオードを使用するように設計すれば、部品調達においてコスト及び納期などで有利である。【0031】次に、第2の波長λ2は、先に設定した波長λ1におけるモル吸光係数の割合と違った領域から設定する。図1によれば、650nmから780nmの領域で、モル吸光係数が大きい順に並べると、HbA1c−O2 、Hb−CO、Hb−O2 となり、HbA1c−O2 とHb−COが逆転していることがわかる。つまり、k1≧k3>k2となっている。この650nmから780nmの領域から第2の波長λ2を設定する。例えば発光波長λ2を680nmとして、赤色の発光ダイオードを使用すれば、部品調達においてコスト及び納期などで有利である。勿論、660nmや700nmの赤色の発光ダイオードが部品調達しやすいならば、それを使って設計すればよい。【0032】次に、第3の波長λ3は、先に設定した波長λ1及びλ2におけるモル吸光係数の割合と違った領域から設定する。850nmから1000nmの領域では、HbA1c−O2 、Hb−O2 、Hb−COのモル吸光係数の違いはほとんどない。つまり、k1≒k2≒k3である、この等吸収ということが、波長λ1及びλ2におけるモル吸光係数の割合と違った特徴を示している。この850nmから1000nmの領域から第3の波長λ3を設定する。例えば発光波長λ3を赤外光による光通信用として良く使われる940nmの赤外光の発光ダイオードを使用するように設計すれば、部品調達においてコスト及び納期などで有利である。【0033】図7を用いて、ヘモグロビンA1c分析装置における波長λ1、λ2、λ3の設定方法について、各種ヘモグロビンのモル吸光係数の割合、つまり吸光度比から求める方法を具体的に説明する。図7の縦軸の吸光度比は、各種ヘモグロビンのモル吸光係数の割合であり、kj/(k1+k2+k3)としている、横軸は波長である。まず、第3の成分であるHb−COに着目すると、吸光度比はk3/(k1+k2+k3)である。ここで、Hb−COの吸光度比の極大が、波長600nmから650nmの領域にあることがわかる。この波長領域から第1の波長λ1を設定すればよい。特に630nm付近でほぼ極大となっていることがわかる。Hb−COの吸収帯がこの領域にあるためである。【0034】次に、第1成分であるHbA1c−O2 に着目する。HbA1c−O2 の吸光度比の極大が、波長650nmから780nmの領域にあることがわかる。この波長領域から第2の波長λ2を設定すればよい。特に680nm付近ではほぼ極大となっていることがわかる。この領域にHbA1c−O2の吸収帯があるためである。【0035】さらに、第2成分であるHb−O2 に着目する。波長850nmから1000nmの領域において、Hb−O2 の吸光度比が極大または最大となることがわかる。この領域から第3の波長λ3を設定する。このように、それぞれ波長λ1、λ2、λ3は、各種ヘモグロビンの吸光度比から、極大または最大となる波長から設定されている。【0036】さらに、発光波長に等吸収点を選ぶことによって、計算を簡略化することができる。第3の波長はすでに等吸収点を選んでいるが、第2の波長を650nm付近のHbA1c−O2 とHb−O2 の等吸収点を選ぶことができる。ヘモグロビンA1cの算出式を(8)式に示したが、波長λ3をHbA1c−O2 、Hb−O2 、Hb−COの等吸収点として、ε31=ε32=ε33 とする。さらに波長λ2をHbA1c−O2 、Hb−COの等吸収点として、ε21=ε23 とすると、(11)式となり、計算を簡略化することができる。【数11】【0037】以上が本実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置の説明である。図6に本発明の実施の形態による他のヘモグロビンA1c分析装置の外観図を示す。図2に示したヘモグロビンA1c分析装置と異なるのは、表示器13にヘモグロビンA1cを表示する他に、カルボキシヘモグロビンHb−COの成分比を表示していることである。このHb−COは、たばこの煙に含まれる一酸化炭素とヘモグロビンが結合することが多く、喫煙者の健康管理の指標とすることができる。特に肺機能の低下した肺気腫の患者にとっては、Hb−COは息切れの原因にもなるので、重要な健康管理の指標となる。【0038】【発明の効果】以上説明したように、従来ヘモグロビンA1cの測定は、患者には負担が掛かるが静脈血を採血して、HPLC法や免疫法など大型装置で血液分析していた。しかし本発明によれば、採血を伴わずに感染の危険性もない、非侵襲によるヘモグロビンA1c分析装置を実現できる。さらにこの分析装置は、構成が簡単になり小型化したことによって、安価なヘモグロビンA1c分析装置が実現できるようになり、患者が在宅で気軽に検査できるようになった。【0039】糖尿病は食事療法と運動療法を気長に続けなければならない。それは強い意志を持ち続けて、治療に専念することが必要である。在宅で気軽にヘモグロビンA1cを自己測定できれば、それを正常値に近づけようとする意志を、絶やさずに持ち続けることができる。つまり、非侵襲で安価なヘモグロビンA1c分析装置は、単に苦痛を伴なわずに測定できるということだけでなく、糖尿病患者にとって治療意識の向上も期待できる有用なセルフケア手段となるのである。そして、神経障害、網膜症、腎症などの合併症予防になる。さらに、ヘモグロビンA1cの自己測定が、糖尿病患者だけでなく健常な成人も測定するように大衆化すれば、糖尿病の予防にもつながるのである。【0040】さらに、光源となる発光素子の波長を適正に選ぶことにより、正確なヘモグロビンの成分比を算出できるようになった。特に本発明によれば、喫煙者に対してグリコヘモグロビンとカルボキシヘモグロビンの分離ができるようになり、正確なヘモグロビンA1cを測定できるようになった。また、発光ダイオードの波長を供給量の多い波長の発光ダイオードからを選んで設計することによって、さらに調達しやすく、安価な製品を設計できるという効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】グリコヘモグロビンHbA1c−O2 、オキシヘモグロビンHb−O2 、カルボキシヘモグロビンHb−COの各波長におけるモル吸光係数の変化を示す吸光特性曲線である。【図2】本発明の実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置の外観図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。【図3】本発明の実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置の装着図である。【図4】本発明の実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置のセンサ部構造を示す断面図である。【図5】本発明の実施の形態によるヘモグロビンA1c分析装置のブロック図である。【図6】本発明の実施の形態による他のヘモグロビンA1c分析装置の外観図である。【図7】HbA1c−O2 、Hb−O2 、Hb−COの各波長におけるモル吸光係数の割合を示す特性曲線である。【図8】市販のパルスオキシメーターを使った測定の結果である。【符号の説明】1 生体組織10 分析装置11 挿入穴13 表示器21、22、23 発光素子24 受光素子25 拡散板33 マルチプレクサ34、35、36 バンドパスフィルタ37、38、39 拍動抽出手段40 演算手段 第1の波長の光を発する第1の発光素子と、第1の波長より長い第2の波長の光を発する第2の発光素子と、第2の波長より長い第3の波長の光を発する第3の発光素子と、該第1の発光素子と該第2の発光素子と該第3の発光素子から発せられたそれぞれの光を生体組織を通して受ける少なくとも1つの受光素子と、該受光素子の受光量に基づいてそれぞれの波長ごとに前記生体組織の拍動成分を取り出す拍動抽出手段と、前記拍動成分に基づいてヘモグロビンのなかの第1の成分の成分比、第2の成分の成分比および第3の成分比のうちの少なくとも1つを演算する演算手段と、該演算手段の演算結果を表示する表示手段を有するヘモグロビン分析装置において、前記第1の成分のモル吸光係数、前記第2の成分のモル吸光係数および前記第3の成分のモル吸光係数をそれぞれk1、k2、k3としたとき、前記第1の波長はk3>k1>k2の領域に設定し、前記第2の波長はk1≧k3>k2の領域に設定し、前記第3の波長はk1≒k2≒k3の領域に設定し、前記第1の成分の成分比、前記第2の成分の成分比または前記第3の成分の成分比のうちの少なくとも1つを前記表示手段に表示することを特徴とするヘモグロビン分析装置。 第1の波長の光を発する第1の発光素子と、第1の波長より長い第2の波長の光を発する第2の発光素子と、第2の波長より長い第3の波長の光を発する第3の発光素子と、該第1の発光素子と該第2の発光素子と該第3の発光素子から発せられたそれぞれの光を生体組織を通して受ける少なくとも1つの受光素子と、該受光素子の受光量に基づいてそれぞれの波長ごとに前記生体組織の拍動成分を取り出す拍動抽出手段と、前記拍動成分に基づいてヘモグロビンのなかの第1の成分の成分比、第2の成分の成分比および第3の成分の成分比のうちの少なくとも1つを演算する演算手段と、該演算手段の演算結果を表示する表示手段を有するヘモグロビン分析装置において、前記第1の波長は、前記第3の成分の吸光度比が600nm以上1000nm以下の範囲でほぼ極大となる波長に設定し、前記第2の波長は、前記第1の成分の吸光度比がほぼ極大となる波長に設定し、前記第3の波長は、前記第2の成分の吸光度比が600nm以上1000nm以下の範囲でほぼ極大または最大となる波長に設定し、前記第1の成分の成分比、前記第2の成分の成分比または前記第3の成分の成分比のうちの少なくとも1つを前記表示手段に表示することを特徴とするヘモグロビン分析装置。 前記第1の成分は、グリコヘモグロビンであり、前記第2の成分は、オキシヘモグロビンであり、前記第3の成分は、カルボキシヘモグロビンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘモグロビン分析装置。 前記第1の波長は、600nm以上650nm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘモグロビン分析装置。 前記第2の波長は、650nm以上780nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘモグロビン分析装置。 前記第3の波長は、850nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘモグロビン分析装置。 【課題】ヘモグロビンA1c分析は、患者の血液を採血して分析する方法であるが、患者は苦痛と感染の危険性もあった。また分析装置は大型で、患者が在宅で検査できるものではなかった。またパルスオキシメーターは、動脈血中の酸素飽和度を求めるものであり、糖尿病の診断や血糖コントロールの状態の指標とするヘモグロビンA1cに応用できるものではなかった。【解決手段】各種ヘモグロビン、HbA1c−O2 、Hb−O2 、Hb−COの3成分の吸光特性曲線から吸光分析に適した波長を選び、各波長における各種ヘモグロビンのモル吸光係数と、各波長における生体組織の吸光度から、ヘモグロビンの成分比を演算により求めて、非侵襲で血液中のヘモグロビンA1cを表示する。【選択図】 図1


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