生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_電荷移動錯体及びその作成方法
出願番号:2002061685
年次:2007
IPC分類:C07C 39/15,C07C 309/35,C07C 309/44,H01B 1/12,H01B 13/00


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玉置 信之 木戸脇匡俊 JP 3911560 特許公報(B2) 20070209 2002061685 20020307 電荷移動錯体及びその作成方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 玉置 信之 木戸脇匡俊 20070509 C07C 39/15 20060101AFI20070412BHJP C07C 309/35 20060101ALI20070412BHJP C07C 309/44 20060101ALI20070412BHJP H01B 1/12 20060101ALI20070412BHJP H01B 13/00 20060101ALI20070412BHJP JPC07C39/15C07C309/35C07C309/44H01B1/12 ZH01B13/00 Z C07C 39/15 C07C309/35 C07C309/44 CAplus(STN) REGISTRY(STN) Collection of Czechoslovak Chemical Communications,1987年,Vol.52, No.7,p.1658-65 3 2003261489 20030916 6 20030618 井上 千弥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、電荷移動錯体とその製法、特に溶液中から容易に生成する多成分で構成される分子結晶に関する。【0002】【従来の技術】有機電導性材料はこの分野でノーベル賞受賞者が出るなど、近年、非常に注目されており、今後もエレクトロニクス技術の進歩とともにますます需要も増えると予想される。その理由として、銅や鉄等の金属材料に比べて軽量で柔軟性があり加工性に優れていること、または腐食性がないことなどが挙げられる。しかし、一般に有機物質は電気絶縁体としての性質を有しており、これに導電性を付与するには電荷移動錯体を形成させることが一つの方法であると考えられる。また、TTFとクロラニル(CA)からなる電荷移動錯体への光照射が、錯体中のイオン性相を中性相へと変化させ、それに伴い結晶構造変化が起きる現象が近年報告された(S. Koshihara et al, J. Phys. Chem. B, Vol.103, (1999)p. 2592)。この電荷移動錯体への光照射がもたらす構造相転移現象は、新たな物質探求の動きとして非常に注目されてきている。電荷移動錯体はドナーと呼ばれる電子供与体とアクセプターと呼ばれる電子受容体で構成される錯体であり、これまでに種々の電子供与体と電子受容体が合成され、これらの組合せから多数の新しい電荷移動錯体が提供されている。しかし、これまでに開発されたテトラチアフルバレン(TTF)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体等は、合成に煩雑な工程を含んでいる等、実用化に向けての欠点を有している。また、電子供与体と電子受容体の混合溶液から電荷移動錯体の結晶を生成する際に非水系溶媒中で長時間を要する場合が多い。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、比較的安価で大量に市販されている試薬を利用して、容易に電荷移動錯体を生成する手法を提供することを目的としている。また、この発明のもう一つの目的は、環境への負荷の大きい有機溶媒を使用せず、水系の溶媒により電荷移動錯体を生成する手法を提供することである。【0004】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために本発明は、化1の構造を有するジカチオンと芳香族ジスルホネートからなるイオン対溶液と芳香族アルコールの溶液を混合することで、3成分からなる電荷移動錯体を水溶液中より生成させる。 また、本発明は化1の塩化物または臭化物、芳香族ジスルホン酸または芳香族ジスルホン酸のアルカリ金属塩及び芳香族アルコールを溶媒中混合することより3成分からなる電荷移動錯体を水溶液中より生成させる。【0005】【発明の実施の形態】本発明は、電荷移動錯体及びその製法に関して、従来の手法と比べてより簡便で環境への負荷の少ない手法を見いだしたものであり、カチオン、アニオン、ドナーの3成分の組み合わせにより種々の電荷移動錯体を水系溶液より生成させることができる。本発明で用いる一般式(I)のジカチオンは、式中、R1,R2がそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の合成上可能な限りのハロゲン化アルカンより生成するアルキル基、好ましくは生成するジカチオンの二ハロゲン化物が水系溶媒に溶解するものが挙げられる。また、フェニルメチル基、フェネチル基等の芳香族を含む置換も利用できる。本発明で用いるジアニオンは、ベンゼン−1,3−ジスルホン酸 二ナトリウム塩、ビフェニル−4,4‘−ジスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸 二ナトリウム塩、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸 二ナトリウム塩、ナフタレン−2,7−ジスルホン酸 二ナトリウム塩、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸 二ナトリウム塩、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸 二ナトリウム塩、アントラキノン−2,7−ジスルホン酸 二ナトリウム塩等、多核芳香族のジスルホン酸、または、そのアルカリ金属塩が挙げられる。スルホン酸基の置換位置は置換可能ないずれの位置であっても良い。好ましくはジカチオンとイオン対を生成しやすい配置であるものが良い。【0006】 本発明で用いるドナー分子は、ハイドロキノン、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1−ナフトール、チロシン、2−ナフトール等の芳香族アルコール類、その他、芳香族多価アルコール、が挙げられ、好ましくは水系溶媒に可溶なものが良い。 本発明で用いる溶媒は、水やメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトントリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等と水との混合物が挙げられる。 合成時の濃度は数十から数百mMの範囲、好ましくは原料が析出しない範囲でより高いこと。 合成時の温度は室温、場合によっては溶液の沸点から凝固点近傍への冷却を要する。【0007】本発明について実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。(実施例1)アントラキノン−2,6−ジスルホン酸 二ナトリウム 41.9mg、メチルビオロゲン 二塩化物 三水和物 32.4mgをそれぞれ6g、2gの水に加熱溶解し、それらの溶液を混合した。室温まで冷却し、析出した薄緑色針状結晶を濾取した。収量48.8mg、収率85%、プロトンNMR及び元素分析から次に示すイオン対であることを確認した。【化3】上記イオン対12.4mg、4,4‘−ビフェノール 4.2mgをそれぞれ水5g、エタノール0.5gに加熱溶解し、両溶液を混合した。直ちに朱色の固体の析出が観察された。室温まで冷却した後、溶液を濾過し、次式に示すジカチオン−ジアニオン−ドナーの三成分からなる電荷移動錯体15.2mgを91%の収率で得た。【化4】上記の電荷移動錯体は通常の雰囲気下では安定であり、300℃以上に加熱しても溶解しなかった。【0008】(実施例2)アントラキノン−2,6−ジスルホン酸 二ナトリウム 41.2mg、メチルビオロゲン 二塩化物 三水和物 31.1mgを11.0gの水に加熱溶解し、そこへ4,4‘−ビフェノール 18.6mgのエタノール1.0g溶液を加えた。直ちに朱色の固体の析出が観察された。室温まで冷却した後、溶液を濾過し、化3に示すジカチオン−ジアニオン−ドナーの三成分からなる電荷移動錯体69.6mgを94%の収率で得た。以下同様な手法によりメチルビオロゲン、ジスルホン酸と芳香族アルコールからなる電荷移動錯体を合成した例を表1に示した。【0009】【表1】注 44BPOH: 4,4’-ビフェノール26NOH: 2,6-ジヒドロキシナフタレン27NOH: 2,7-ジヒドロキシナフタレン15NOH: 1,5-ジヒドロキシナフタレン2NOH: 2―ヒドロキシナフラレン1NOH: 1-ヒドロキシナフタレンHQ: ハイドロキノン【0010】【本発明の効果】表1に示すように本発明で用いる特定構造を有するジカチオン、芳香族ジスルホンネート及びドナー分子を溶液中で混合することにより容易に電荷移動錯体を合成することができ、この手法を利用することで市販試薬から種々の電荷移動錯体を合成することができる。従って、産業における製造行程の簡易化、コストの削減等ができる。また、水系溶媒を主に用いるので環境への負荷が少ない。 一般式(I)(式中、R1, R2はそれぞれ独立で1価のアルキル基、フェニルメチル基またはフェネチル基)で表される構造を有するジカチオン、芳香族ジスルホネート及び芳香族アルコールを含む電荷移動錯体。 一般式(I)(式中、R1, R2はそれぞれ独立で1価のアルキル基、フェニルメチル基またはフェネチル基)で表される構造を有するジカチオンと芳香族ジスルホネートのイオン対の溶液と芳香族アルコールの溶液を混合することによる電荷移動錯体の作成方法。 一般式(I)のジカチオンの塩化物または臭化物と芳香族ジスルホン酸または芳香族ジスルホン酸のアルカリ金属塩及び芳香族アルコールを溶媒中で混合することによる電荷移動錯体の作成方法。


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