タイトル: | 特許公報(B2)_肥厚性瘢痕、ケロイドまたは慢性関節炎症性疾患予防・治療剤 |
出願番号: | 2002049299 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 45/00,A61K 38/00,A61K 39/395,A61P 17/02,A61P 19/02,A61P 29/00 |
安田 佳子 中村 幸雄 村上 仁志 上田 晃一 JP 4081281 特許公報(B2) 20080215 2002049299 20020226 肥厚性瘢痕、ケロイドまたは慢性関節炎症性疾患予防・治療剤 安田 佳子 501417387 青山 葆 100062144 田中 光雄 100081422 安田 佳子 中村 幸雄 村上 仁志 上田 晃一 JP 2001052956 20010227 JP 2001052957 20010227 20080423 A61K 45/00 20060101AFI20080403BHJP A61K 38/00 20060101ALI20080403BHJP A61K 39/395 20060101ALI20080403BHJP A61P 17/02 20060101ALI20080403BHJP A61P 19/02 20060101ALI20080403BHJP A61P 29/00 20060101ALI20080403BHJP JPA61K45/00A61K37/02A61K39/395 DA61K39/395 NA61P17/02A61P19/02A61P29/00 101 A61K 45/00 A61K 38/00 A61K 39/00-395 A61P 17/00-02 A61P 19/00-02 A61P 29/00 MEDLINE(STN) BIOSIS(STN) EMBASE(STN) CA(STN) PubMed JSTPlus(JDream2) JST7580(JDream2) JMEDPlus(JDream2) 特開平10−101574(JP,A) 新井克志, 他.,瘢痕ケロイド由来細胞のin vitroでの生物学的特性の観察,医学のあゆみ,日本,医師薬出版株式会社/今田喬士,1983年 2月26日,第124巻/第9号,p.824-826,ISSN:0039-2359 CODEN:IGAYAY OGILVIE, M., et al.,Erythropoietin Stimulates Proliferation and Interferes with Differentiation of Myoblasts,The Journal of Biological Chemistry,2000年12月15日,Vol.275, No.50,p.39754-39761 2 2002326958 20021115 25 20040817 横井 宏理 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、エリスロポエチン拮抗物質を有効成分として含有する肥厚性瘢痕、ケロイドまたは慢性関節炎症性疾患の予防・治療剤に関する。詳しくは、抗エリスロポエチン抗体やエリスロポエチン受容体蛋白質等のエリスロポエチン拮抗物質を有効成分として含有する、肥厚性瘢痕、ケロイドまたは慢性関節炎症性疾患の予防・治療剤に関する。【0002】【従来の技術】肥厚性瘢痕(瘢痕ケロイド)は熱傷、手術創や外傷後の皮膚欠損に生じる瘢痕組織の異常増殖である。しかし、患者総数は膨大であると予想され且つ統計は明らかにされていない。手術創の術後の肥厚性瘢痕は外科全科が対象となるが、これ以上は治療できないものとして放置されている場合がかなりあると思われる。治療法はトラニラストの内服、スポンジによる圧迫療法、ステロイドの局所注射、Z形成術や植皮術などの手術療法などがあげられる。トラニラストやステロイドの治療効果は非常に緩やかであるため、高度な肥厚性瘢痕はもっぱら手術療法に頼らざるを得ない。しかし、局所投与で効果を示す軟膏剤や注射剤は知られていなかった。上記の肥厚性瘢痕と異なり、ケロイド(真性ケロイド)は原因不明の疾患で、一般的には体質が関与しているといわれている。特に、前胸部や肩などに多発するコラーゲン線維の異常増殖で、手術創や外傷の既往がある場合とない場合の両方で発生する。増加傾向にあるかどうかは不明であるが、発症例数は非常に多いと言われている。治療法はトラニラストの内服、スポンジによる圧迫療法、手術療法、放射線療法などがあるが再発傾向が強いためいずれの治療も決定的ではない。この疾患のための軟膏剤や注射剤も未だ知られていない。【0003】肥厚性瘢痕およびケロイド(両者を併せてケロイドと総称することがある)は、真皮中の膠原質(コラーゲン)の過剰増殖によって生ずる進行性に拡大する瘢痕で、腫瘤状の隆起を示す。肥厚性瘢痕は、初発の損傷の部域に限局して生ずる瘢痕である。これらの瘢痕の成因や原因は不明であるが、コラーゲン線維の蓄積、コラーゲン線維の複雑な交錯およびIII型コラーゲンとI型コラーゲンの比(III型/I型)が増大することは判明している。【0004】関節リウマチは加齢により発症数が増加する。従って、平均年齢が延びるに従い、発症例数が増加する。約0.5%の人間がこの疾患にかかるとされているので、世界人口59億(1998年国連統計)の内約3000万人の関節リウマチ患者が存在すると予測される。我国では、人口が1億2000万人であるので、約60万人の患者が存在すると予測される。典型的なもの以外の関節リウマチ疾患を含めると人口の1〜1.5%が罹患していると考えられ、約200万人となる。さらに、寿命延長で年々増加傾向にある。【0005】関節リウマチの治療は主に手術と薬物による方法がある。薬物は非ステロイド抗炎症薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、ステロイド薬等が用いられている。最初に非ステロイド抗炎症薬が使用されることが多い。非ステロイド抗炎症薬は、炎症の程度を低下させ鎮痛効果は速やかに得られるが、症状の進行や関節の破壊を防御することは出来ない。疾患修飾性抗リウマチ薬は、免疫異常を是正することによりリウマチ異常を緩快させる薬で現在9種類あるが、鎮痛効果はなく遅効性であり、効果の発現が一定しないので、全ての患者に効力がある訳ではない。ステロイド剤はリウマチの炎症を軽減させる効果はあるが、その効果、特に鎮痛効果が顕著な為、投薬の中断が困難となり、その結果、副作用の為、患者は生命の予後を短縮させることもある。これらの薬物は関節リウマチの発症原因に対する原因療法ではないので、所謂対症療法の域を出ていないのが現状である。【0006】関節リウマチは、滑膜の絨毛性増殖および肥厚とその滑膜絨毛へのリンパ球および増殖している毛細血管周辺の単球やマクロファージなどの強度の浸潤を特徴とする慢性関節炎症性疾患である。更に随伴症状として血管内皮の炎症性病変・壊死が現れる。これらの浸潤細胞でIL1が産生され分泌されて、更に病状が悪化・進行する。この病変の原因は不明であるが、病理組織像の本態である滑膜の増殖に伴う膠原質産生を抑制すること、さらにIL1分泌細胞を死滅させれば、症状が改善されると考えられる。また、同様の関節の症状を呈するリウマチ類縁疾患、膠原病による関節炎、腱鞘炎等の慢性関節炎症性疾患にも有効であると考えられる。【0007】エリスロポエチン(EPO)は、血球の増殖と分化に関与し、他のサイトカインとは異なり血球では産生されず、腎臓または肝臓で産生され血液中に放出される。エリスロポエチンは赤血球前駆細胞の内、赤芽球バースト形成細胞(BFU−E)と赤芽コロニー形成細胞(CFU−E)に作用し、その分化と増殖を促進し、赤血球の産生を誘導していると考えられている(Krantz S.B.,Blood,Vol.77,pp419-434(1991))。エリスロポエチンが前駆細胞の細胞膜に存在するエリスロポエチン受容体と結合すると、シグナルが細胞核内に伝達され、赤血球の分化、即ちグロビンmRNAの細胞内集積、ヘモグロビンの産生、赤血球の分化が起こるとされている(D’Andrea A.D.et al.,Cell,Vol.57,pp277-285(1989))。しかし、そのメカニズムの詳細についてはまだ解明されておらず、今後解決すべき点が多い。【0008】エリスロポエチンが腎、肝臓以外の組織でその遺伝子を発現している部位として、着床直後の胚体(Yasuda Y.et al.,Develop.Growth Differ.,Vol.35,pp711-722(1993))、ヒト、サル、およびマウスの脳(Marti H.H.et al.,Eur.J.Neu.Sci.,Vol.8,pp666-676(1996))が知られている。また、本発明者らは、エリスロポエチン受容体遺伝子が赤芽球系以外にマウス脱落膜に発現していることを見出した(Yasuda Y.et al.,Develop.Growth Differ.,Vol.35,pp711-722(1993))。これらの血球系以外の部位におけるエリスロポエチンあるいはエリスロポエチン受容体遺伝子の機能については、明らかにされていないのが現状である。【0009】エリスロポエチンは遺伝子組換えによって製造され、貧血治療、特に腎透析患者の貧血治療や外科手術時の自己血輸血の準備にも有効に使用されている。エリスロポエチン受容体については、貧血症に対するアゴニストまたは赤血球増加症などのアンタゴニストとしての用途が期待されており(WO90/08822号公報)、エリスロポエチン過剰症、高エリスロポエチン血症に利用され得るとの記載がある。また、特定のドメインにおいてエリスロポエチン受容体に結合する物質が慢性関節リウマチの治療に利用され得るとの記載がある(WO00/66632号公報)。しかし、抗エリスロポエチン抗体やエリスロポエチン受容体蛋白質などのエリスロポエチン拮抗物質(エリスロポエチンと結合する物質)については、癌などの増殖性臓器疾患に対して治療効果を示すことが知られているものの(特開平10−101574号公報)、肥厚性瘢痕もしくはケロイド等の膠原質性過剰増殖、および関節リウマチ等の慢性関節炎症性疾患に対する予防・治療効果については全く知られていない。【0010】【発明の解決しようとする課題】したがって、本発明は、肥厚性瘢痕もしくはケロイド等の膠原質性過剰増殖、または関節リウマチ等の慢性関節炎症性疾患に対し優れた効果を有する予防・治療剤を提供することを目的とする。【0011】【発明を解決するための手段】上記課題に鑑み、本発明者らは、鋭意研究の結果、エリスロポエチン拮抗作用を有する抗エリスロポエチン抗体などに膠原質の進行性過剰増殖、特に肥厚性瘢痕あるいはケロイドなどを改善する作用があること、ならびに関節リウマチなどを改善する作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。【0012】すなわち、本発明は、(1)エリスロポエチン拮抗物質(エリスロポエチン拮抗物質とはエリスロポエチンに結合性を有する物質)を有効成分として含有する、肥厚性瘢痕、ケロイドまたは慢性関節炎症性疾患予防・治療剤、(2)エリスロポエチン拮抗物質が抗エリスロポエチン抗体である、上記(1)記載の剤、(3)エリスロポエチン拮抗物質がエリスロポエチン受容体蛋白質である、上記(1)記載の剤、(4)エリスロポエチン受容体蛋白質が可溶性エリスロポエチン受容体蛋白質である、上記(3)記載の剤、(5)慢性関節炎症性疾患が関節リウマチ、リウマチ類縁疾患、膠原病による関節炎、またまたは腱鞘炎である、上記(1)記載の剤、(6)肥厚性瘢痕、ケロイドまたは慢性関節炎症性疾患予防・治療剤の製造のためのエリスロポエチン拮抗物質の使用、(7)哺乳動物にエリスロポエチン拮抗物質の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物における肥厚性瘢痕、ケロイドまたは慢性関節炎症性疾患の予防・治療方法、等を提供するものである。【0013】【発明の実施の形態】本発明の肥厚性瘢痕、ケロイドまたは慢性関節炎症性疾患治療剤(以下、「本発明の剤」と略記する)の成分、特に有効成分としては、エリスロポエチン拮抗物質が用いられる。本発明におけるエリスロポエチン拮抗物質は、一般的に抗体が抗原に結合する程度の強さ、あるいは受容体がリガンドと結合する程度の強さでヒトエリスロポエチンに結合性を有し、エリスロポエチンのオートクライン(自己分泌)の産生を抑制するもの、すなわち、エリスロポエチンのアンタゴニストであればよい。このようなエリスロポエチン拮抗物質には、抗エリスロポエチン抗体、エリスロポエチン受容体蛋白質などがある。【0014】抗エリスロポエチン抗体は、エリスロポエチンもしくはその部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。抗エリスロポエチン抗体は、エリスロポエチンもしくはその部分ペプチドまたはその塩を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法(例えば特開平1−228492号公報に記載の方法)に従って製造することができる。エリスロポエチンもしくはその部分ペプチドの塩としては、酸(例えば無機酸、有機酸など)または塩基(例えばアルカリ金属塩など)との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。以下に、抗エリスロポエチン抗体の一般的製造法を説明する。【0015】〔モノクローナル抗体の作製〕(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製エリスロポエチンもしくはその部分ペプチドまたはその塩は、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤などとともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどが挙げられるが、マウスおよびラットなどが好ましく用いられる。モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化エリスロポエチン等と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGなどが用いられる。ミエローマ細胞としては、例えば、P3/NSI/1−Ag4−1、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3/NSI/1−Ag4−1などが好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数とミエローマ細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。【0016】モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、エリスロポエチン等の抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したエリスロポエチン等を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。【0017】(b)モノクローナル抗体の精製モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。【0018】〔ポリクローナル抗体の作製〕本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(エリスロポエチン等の抗原)とキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物からエリスロポエチン等に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオピリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤などとともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液などから採取することができる。抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。【0019】エリスロポエチン受容体蛋白質は、公知の方法(WO90/08822号公報;特開平6−38787号公報;化学と生物,31(4),270−274頁(1993);米国特許第52926545号明細書など)により得ることができる。エリスロポエチン受容体蛋白質のなかで、特に好ましくは可溶性エリスロポエチン受容体蛋白質が用いられる。可溶性エリスロポエチン受容体蛋白質は、特開平6−38787号公報記載の方法等の公知の方法により得ることができる。これらのエリスロポエチン受容体蛋白質も抗エリスロポエチン抗体も臓器あるいは組織内でエリスロポエチンと結合し、エリスロポエチンとエリスロポエチン受容体との結合を遮断する作用を有し、機能的に互いに同等な物質であると考えられる。【0020】上記のようにエリスロポエチン受容体蛋白質は公知の蛋白質であり、また上述の特許公報あるいはその他の文献にそのDNA配列およびアミノ酸配列が記載されている。本発明におけるエリスロポエチン受容体蛋白質は、一般的に受容体がリガンドと結合する程度の強さで、好ましくは可逆的にヒトエリスロポエチンに結合性を有し、エリスロポエチンのオートクライン(自己分泌)の産生を抑制するもの、すなわちエリスロポエチンのアンタゴニストであればよい。従って、ヒトエリスロポエチン受容体蛋白質もしくはエリスロポエチン親和性フラグメント、ヒトエリスロポエチン受容体蛋白質と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する非ヒト哺乳動物(例えばマウスなど)のエリスロポエチン受容体蛋白質やそのフラグメント、あるいはこれらの類縁体でもよい。【0021】本発明の剤は、ヒトおよび動物に対し、非経口的(例えば局所投与、静脈投与、経皮投与、経直腸投与、経鼻投与、経膣投与、経口腔粘膜投与、経肺粘膜投与など)に安全に投与される。製剤の形態としては、注射用製剤、点滴用製剤、坐剤、経鼻剤、舌下剤、経皮吸収剤、外用剤、徐放剤、粉末吸入剤などが挙げられる。これらの製剤のうち固形のものは、公知の製剤学的製法に準じ、製剤として薬理学的に許容され得る担体として、賦形剤(例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸など)、安定剤、着色剤、界面活性剤、結合剤(例えば結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トラガント、アラビアゴムなど)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなど)、その他添加剤などを用いることにより、目的とする製剤とすることができる。液状製剤の場合は、有効成分エリスロポエチン拮抗物質の薬理学的有効量および製剤学的に許容しうる賦形剤/賦活剤と溶剤(例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油など)との混合物とし、その中にアミノ酸(例えば、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸など)、糖類(例えばグルコース、D−ソルビトール、D−マンニトールなど)、セルロース誘導体、無機塩(例えば塩化ナトリウムなど)およびその他の有機/無機化合物などの一般的に注射用組成物に添加される賦形剤/賦活剤(あるいは等張化剤)を用いても良い。また、有効成分とこれらの賦形剤/賦活剤を用い注射剤を調製する場合は、必要に応じてpH調整剤(例えば炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど)、緩衝剤(例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩など)、安定化剤(例えばヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸など)、可溶化剤(例えばアルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)など)、無痛化剤(例えば塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、保存剤(例えばベンジルアルコール、フェノールなど)、抗凝固剤(例えばデキストラン硫酸、ヘパリンなど)、防腐剤(例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸など)、酸化防止剤(例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸など)などを添加して常法によって各種注射剤とすることができる。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。投与に当たっては、上記の注射用組成物を慣用の水性希釈剤中で溶解し、液剤として用いることができる。水性希釈剤としてはぶどう糖水溶液、生理食塩水、リンゲル液、栄養補給剤液などが含まれる。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや非ヒト哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。【0022】注射剤にリン酸またはその塩が含まれる場合、その注射剤中のリン酸ナトリウムあるいはリン酸カリウムの濃度は約0.1mMないし500mMであり、約1mMないし100mMのときが好ましい。無菌製剤にするには、製造全工程を無菌にする方法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法等が挙げられるが、特に限定されない。【0023】常法に従って有効成分を分散させた懸濁液を溶解し、マイクロカプセル、球状、棒状、針状、ペレット状、フイルム状等に賦形して本発明の剤を製造することもできる。また本発明の剤は、有効成分と生体内分解性高分子化合物とを含む徐放剤に成形してもよい。該徐放剤の調製は、特開平9−263545号公報に記載の方法に準ずることができる。【0024】本発明の剤において、エリスロポエチン拮抗物質の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常、製剤全体に対して約0.1〜100重量%、好ましくは約10〜99.9重量%、さらに好ましくは約20〜90重量%程度である。本発明の剤において、エリスロポエチン拮抗物質以外の成分の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常、製剤全体に対して約10〜99.9重量%、好ましくは約20〜90重量%程度である。【0025】本発明の剤が肥厚性瘢痕およびケロイドの予防・治療剤である場合、本発明の剤は具体的には、例えば手術後瘢痕、熱傷ケロイド、ケロイド、外傷後の瘢痕、経冠動脈血管形成術後の再狭窄、肥厚性瘢痕パンヌス等の予防、治療、改善に用いることができ、本発明の剤は注射剤あるいは軟膏等の外用剤として局所的に直接投与することが特に好ましい。外用剤としては、固状、半固状または液状のいずれでもよく、例えば固状の外用剤は、エリスロポエチン拮抗物質をそのまま、あるいは賦形剤(例えばグリコール、マンニトール、デンプン、結晶セルロースなど)、増粘剤(例えば天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体など)などを添加、混合して粉状の組成物とすることにより製造される。半固状の外用剤の場合には、水性または油性のゲル剤、あるいは軟膏状として用いることが好ましい。液状の外用剤は、注射剤の場合とほとんど同様で、油性あるいは水性懸濁剤とすることにより製造される。上記した固状、半固状または液状の外用剤に、pH調整剤(例えば炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど)、防腐剤(例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなど)などを加えてもよい。具体的には、例えばワセリン、ラノリンなどを基剤として、1gあたりエリスロポエチン拮抗物質を約0.1〜100mg、好ましくは約1〜50mg含有する軟膏剤として、皮膚あるいは粘膜等に用いる。投与量は疾患の程度、年齢、体重、剤形、投与方法、投与期間、投与対象動物(例えばヒト、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウサギ、ウシ、ブタなどの哺乳動物)により異なるが、例えば、成人(体重60kg)1人あたり1回にエリスロポエチン拮抗物質として約0.1〜100mg、好ましくは約1〜50mg、より好ましくは2〜20mg程度を、1日1回から3回程度投与すれば良い。【0026】本発明の剤が慢性関節炎症性疾患予防・治療剤である場合、本発明の剤は関節に炎症症状を呈する総ての関節炎、具体的には例えば慢性関節リウマチによる関節炎、リウマチ類縁疾患、膠原病による関節炎症状、あるいは腱鞘炎等の予防、治療、改善に用いることができ、本発明の剤は特に好ましくは注射剤等の液剤の形態として局所的に直接投与する。関節腔内へ局所投与剤として直接投与するような場合には、注射用ヒアルロン酸製剤(例えば、科研製薬製:アルツ注)を分散媒として、有効成分を分散することにより調製することができる。分散媒中に用いられるヒアルロン酸は、その非毒性塩を用いてもよく、その例としてはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩があげられ、とりわけナトリウム塩が好ましく用いられる。ヒアルロン酸およびその非毒性塩としては分子量約20万ないし500万(粘度法)、好ましくは約50万ないし300万、さらに好ましくは約70万ないし250万のものが用いられる。本分散剤におけるヒアルロン酸またはヒアルロン酸ナトリウムの最終濃度は1%(W/V)未満が粘度として適当であり各種操作、投与の容易さなどの点で好ましく、とりわけ約0.02ないし1%未満が好ましく、さらに好ましくは約0.1ないし1%(W/V)である。【0027】上記分散媒には、自体公知の方法により、pH調節剤、局所麻酔剤、抗生物質、溶解補助剤、等張化剤、吸着防止剤、グリコサミノグリカン、多糖類などを含有させてもよい。その好ましい例としては、マンニトール、ソルビトール、食塩、グリシン、酢酸アンモニウム、あるいは実質的に薬理活性を示さずに体液内に注入しうる水溶性蛋白などが挙げられる。該グリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケウタン硫酸などが挙げられる。該多糖類としては、アルギニン酸のような酸性多糖類が挙げられる。上記水溶性蛋白としては、水、生理食塩水または緩衝液に溶解するものであればよく、例えばヒト血清アルブミン、ヒト血清グロブリン、コラーゲン、ゼラチンなどがあげられる。上記pH調節剤としては、例えばグリシン、酢酸アンモニウム、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウムなどがあげられる。上記局所麻酔剤としては、例えばクロロブタノール、塩酸キシロカインなどがあげられる。上記抗生物質としては、例えばゲンタマイシンなどがあげられる。上記溶解補助剤としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール400などがあげられる。上記等張化剤としては、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどがあげられる。上記吸着防止剤としては、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどがあげられる。さらに分散媒中に水溶性蛋白を含有する場合の該水溶性蛋白の含有量としては、一回投与の製剤あたり、好ましくは0.05〜50mg、さらに0.5〜20mgが好ましく、より好ましくは0.75〜10mgである。該製剤は、リン酸またはその塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等)を含有していてもよい。【0028】本発明の剤が慢性関節炎症性疾患予防・治療剤である場合、投与量は疾患の程度、年齢、体重、剤形、投与方法、投与期間、投与対象動物(例、ヒト、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウサギ、ウシ、ブタ等の哺乳動物)により異なるが、肩または膝関節部内には、例えば、成人(体重60kg)1人あたりエリスロポエチン拮抗物質約100〜4000μg/mlの濃度に調製した製剤を1回に約1〜10ml、好ましくは約2.5ml程度、1日1回から3回程度投与すれば良い。手関節、肘関節、足関節には約0.5〜5ml、好ましくは約1.5ml、手および足の伸筋屈節腱鞘内には約0.5〜5ml、好ましくは約1ml、指節関節には約0.1〜1ml好ましくは約0.5mlを1日1回から3回程度注入すれば良い。【0029】本発明の剤が徐放剤である場合の投与量は、エリスロポエチン拮抗物質の種類と含量、剤形、薬物放出の持続時間、投与対象動物(例、ヒト、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウサギ、ウシ、ブタ等の哺乳動物)、投与目的により種々異なるが、例えば非経口投与により適用する場合には、1週間に約0.1から約100mgのエリスロポエチン拮抗物質が投与製剤から放出されるように投与すればよい。【0030】本発明の剤は、活性成分としてエリスロポエチン拮抗物質以外の他の医薬成分を含有または併用していてもよい。このような医薬活性成分としては、抗アレルギー剤(例えばケトチフェン、テルフェナジン、アゼラスチン、エピナスチンなど)、抗菌剤(例えばセフィキシム、セフジニル、オフロキサシン、トスフロキサシンなど)、抗真菌剤(例えばフルコナゾール、イトラコナゾールなど)、抗炎症ステロイド剤(例えばプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾンなど)、非ステロイド性消炎鎮痛剤(例えばインドメタシン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、アスピリン、ピロキシカム、スリンダク、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えばセレコキシブ、ロフェコキシブなど)など)、疾患修飾性抗リウマチ薬および免疫薬(例えばメトトレキセート、レフルノミド、プログラフ、スルファサラジン、D−ペニシラミン、経口金剤など)、ヒアルロン酸製剤(例えばヒアルロン酸ナトリウムなど)などが挙げられる。これらの成分は本発明の目的が達成される限り特に限定されず、非ペプチド性またはペプチド性のいずれであってもよく、適宜適当な配合割合で使用が可能である。【0031】本発明の剤と併用薬との併用に際しては、本発明の剤と併用薬の投与時期は限定されず、本発明の剤と併用薬とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。本発明の剤と併用薬の投与形態は、特に限定されず、投与時に、本発明の剤と併用薬とが組み合わされていればよい。このような投与形態としては、例えば、(1)本発明の剤と併用薬とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)本発明の剤と併用薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)本発明の剤と併用薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)本発明の剤と併用薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)本発明の剤と併用薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明の剤→併用薬の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)などが挙げられる。以下、これらの投与形態をまとめて、本発明の併用剤と略記する。【0032】本発明の併用剤は、毒性が低く、例えば、本発明の剤または(および)上記併用薬を自体公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体と混合して医薬組成物とすることができる。本発明の併用剤の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、上記した本発明の医薬組成物に使用されるものと同様のものを使用することができる。本発明の剤および併用薬とを同時に製剤化して単剤として使用する場合、本発明の併用剤におけるエリスロポエチン拮抗物質の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常、製剤全体に対して約0.1〜100重量%、好ましくは約10〜99.9重量%、さらに好ましくは約20〜90重量%程度である。また、本発明の併用剤における併用薬の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常、製剤全体に対して約0.1〜100重量%、好ましくは約10〜99.9重量%、さらに好ましくは約20〜90重量%程度である。本発明の併用剤において、エリスロポエチン拮抗物質および併用薬以外の成分の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常、製剤全体に対して約10〜99.9重量%、好ましくは約20〜90重量%程度である。本発明の併用剤におけるエリスロポエチン拮抗物質と併用薬との配合比は、投与対象、投与ルート、疾患等により適宜選択することができる。本発明の併用剤の投与量は、エリスロポエチン拮抗物質および併用薬の種類、投与ルート、症状、患者の年令などによっても異なるが、例えば、ケロイドを治療する目的で局所に投与する場合、成人(体重60kg)1人あたり1回にエリスロポエチン拮抗物質および併用薬として約0.1〜100mg、好ましくは約1〜50mg、より好ましくは2〜20mg程度を、1日1回から3回程度に分けて投与すれば良い。【0033】本発明の剤に含有されるエリスロポエチン拮抗物質および併用薬物をそれぞれ別々に製剤化する場合も同様の含有量でよい。本発明の剤に含有されるエリスロポエチン拮抗物質と併用薬をそれぞれ別々に製剤化して併用投与するに際しては、本発明の剤と併用薬を含有する医薬組成物とを同時期に投与してもよいが、併用薬を含有する医薬組成物を先に投与した後、本発明の剤を投与してもよいし、本発明の剤を先に投与し、その後で併用薬を含有する医薬組成物を投与してもよい。時間差をおいて投与する場合、時間差は投与する有効成分、剤形、投与方法により異なるが、例えば、併用薬を含有する医薬組成物を先に投与する場合、併用薬を含有する医薬組成物を投与した後1分〜3日以内、好ましくは10分〜1日以内、より好ましくは15分〜1時間以内に本発明の剤を投与する方法が挙げられる。本発明の剤を先に投与する場合、本発明の剤を投与した後、1分〜1日以内、好ましくは10分〜6時間以内、より好ましくは15分から1時間以内に併用薬を含有する医薬組成物を投与する方法が挙げられる。【0034】【実施例】以下の実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、これらは単に例示したのみであり、これらによって本発明は何ら限定されるものではない。【0035】実施例1抗エリスロポエチン抗体の生産▲1▼抗原EPOの調製:特開昭60−41614号公報に記載の方法に従って、貧血患者尿より分離したEPO(貧血患者尿濃縮物をSDS処理後、抗体吸着処理およびゲル濾過により取得したEPO標品)のPBS溶解物を氷冷し、−20℃に冷却した99.5%エタノールの9倍量を添加してEPOを沈殿させた。この沈殿を−20℃の90%エタノール溶液で洗浄した後、減圧下に乾燥し、0.01mM CaCl2を含む10mM Napiバッファー(pH6.8)に溶解し、予め同じバッファーで平衡化したハイドロキシアパタイトカラムに通し、非吸着画分にEPOを回収した。得られたEPOの純度は99%であった。このEPOを用いて、特開平1−228492号に記載の方法に従って、以下のように抗EPO抗体を調製した。【0036】▲2▼上記EPOによる実験動物の免疫:上記の方法にて調製した純化EPOを抗原として使用し、実験動物としてマウス(BALB/cマウス)を用い、このマウスに対し、次のとおり2週間間隔で3回免疫を行った。第1回免疫:PBS中に純化EPOタンパク質を1mg/mlで溶解し、これに等量のフロイント完全アジュバントを混合して得たエマルジョン0.2mlをマウスに対し腹腔内注射で投与した。第2回免疫:2週間後に同上のエマルジョン液100μlをマウスに対し腹腔内注射で投与した。第3回免疫:PBS中に純化EPOを0.5mg/mlで溶解し、100μlをマウスに対し、2週間後に腹腔内投与した。【0037】▲3▼抗EPO抗体産生ハイブリドーマの調製:i)細胞融合の作製上記免疫処理終了から3日後に免疫マウスの脾細胞を無菌的に摘出し、合成培地(PRMI1640;Gibco BRL社)と15%牛胎児血清(FCS)との混合液で洗浄後、該混合液中で脾臓細胞をハサミで細断して単細胞化を行い、該混合液で2回洗浄した後、単細胞化した細胞をRPMI1640液に分散した。細胞数は8×108個であった。別にマウスのミエローマ細胞(P3/NSI/1−Ag4−1)を上記RPMIおよびFCSの混合溶液中で培養し、増殖した細胞をRPMI1640液で洗浄した。細胞数は4×108個であった。次に上記で調製した免疫マウス脾細胞とマウスミエローマ細胞とをRPMI1640液に分散し混合した後、遠心し上清を除去した。混合細胞をポリエチレングリコール1500の50%溶液中で細胞融合させた後、融合細胞をHT培養液(ヒポキサンチン、チミジンおよび15%牛胎児血清を含むRPMI1640液)に混合し、混合液を8枚の96穴マイクロタイタープレートにまいて2日目以降、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンおよび15%牛胎児血清を含むRPMI1640液)を添加して、各穴で2週間培養してHAT選択を行った。増殖したハイブリドーマ細胞を確認した。【0038】ii)上記ハイブリドーマ細胞のスクリーニングによる選出上記で得たハイブリドーマより特定の細胞、即ち、EPOと特異的に結合し得る抗体を産生するハイブリドーマを選び出すために、125I−EPO(ヒト尿由来純化EPOをIODO−GEN法にて125Iで標識したもの;98μCi/μgEPO)を用いて125I−EPOと特異的に結合する抗体が、ハイブリドーマ培養液中に存在することを確認して選出した。その結果、目的に適合したものとして25種類の細胞が選出され、その内125I−EPOとの結合値の高かったもの8種についてハイブリドーマの継代培養を続け、限界希釈法によりモノクローン化を行い、安定的に抗体産生を行う5種のハイブリドーマ細胞を得た。この5種類のうち、EPO活性の吸着、溶出の最も良好な細胞(n−#2)を採用してモノクローナル抗EPO抗体の産生を行った。【0039】▲4▼モノクローナル抗EPO抗体の生産:上記のハイブリドーマ細胞n−#2を用いて、抗体産生を行った。すなわち、上記と同様にマウス腹腔内で抗体を生産させ、50%硫安分画に付した後、DE52(DEAE−セルロース;ワットマン社)充填カラムを通し、0.1M〜0.2M NaCl画分として精製免疫グロブリン(IgG)を得た。マウス30匹を用い、900mgの精製モノクローナル抗体(R2)を得た。【0040】実施例2可溶性エリスロポエチン受容体蛋白質の生産特開平6−38787号公報の実施例3の方法に従ってsEPO−R発現ベクターpcmEPR sol・dhfrを構築し、この遺伝子を大腸菌MC1061/P3にトランスフェクションした(この菌株は微工研(現工業技術院生命工学工業技術研究所)に微工研菌寄第12814号として寄託されている)。本発明では、これらの大腸菌から上記プラスミドを取り出して、CHO・dhfr−細胞にトランスフェクションした。即ち、sEPO−R発現ベクターpcmEPRsol・dhfrをリン酸カルシウム法によりCHO(dhfr−)細胞に導入し、可溶型エリスロポエチン受容体蛋白質(sEPO−R)生産細胞を選出した。メトトレキセート(MTX)によるsEPO−R遺伝子の増幅を行い、sEPO−Rの高生産細胞株N14.2を得た。得られた細胞株を、核酸非含有α−MEM合成培地に透析ウシ胎児血清10%、MTXを100nM添加した培養液中で増殖させた後、0.5%透析ウシ胎児血清を含むOPTI−MEMI培地(ギブコ製)に交換し、sEPO−Rの生産を行った。得られた培養液200mlに6mlのEPO固定化CH−セファロース4B(15mg EPO/ml gel)を加え、4℃で一晩穏やかに接触させた後、固定化担体を10倍量のPBSで洗浄後、担体に吸着したsEPO−Rを1.5M MgCl2を含むPBSで溶出した。溶出液を限外濾過法で濃縮およびPBSに溶媒置換した後、TSKgel G3000SW(東ソー製)を使用したHPLCにより分子量分画を行い、部分精製sEPO−R(0.6mg)を得た。得られたsEPO−RはSDS−PAGEおよびセファデックスG−75ゲル濾過法を用いて分子量測定を行ったところ約33kDaを示した。【0041】実施例3軟膏の製造実施例1で得られた抗エリスロポエチン抗体をワセリンに混入し、1%の軟膏を得た。【0042】実施例4注射剤の製造・1実施例1で得られた抗エリスロポエチン抗体を生理的食塩水に溶解し、1g/mlまたは10g/mlの溶液とした。これを濾過し、滅菌ミクロチューブに200μlずつ分注し、凍結保存して注射剤とした。使用時には、これを生理食塩水で溶解して使用する。【0043】実施例5注射剤の製造・2実施例2で得られたエリスロポエチン受容体蛋白質を生理的食塩水に溶解し、200μg/mlの溶液とした。これを濾過し、滅菌ミクロチューブに200μlずつ分注し、凍結保存して注射剤とした。使用時には、これを生理食塩水で溶解して使用する。【0044】実施例6エリスロポエチン拮抗物質(抗エリスロポエチン抗体)のケロイドに対する効果1)免疫染色組織検索材料として、ケロイド患者より4例、肥厚性瘢痕患者より2例の摘出試料を固定液(Zamboni;Zamboni L.and DeMartino C.,J.Cell Biot.,Vol.35,p148A(1967))にて6時間固定後、25%蔗糖溶液に入れ冷暗所で保存した。これらの試料片をOCT剤(マイル社)で包埋し、液体窒素で凍結し、クリオスタットで7μmの凍結切片とした。切片を、1次抗体として抗エリスロポエチン抗体(Genzyme社)、抗エリスロポエチン受容体抗体(Yasuda Y.et al.,Develop.Growth Differ.,Vol.35,pp711-722(1993))、抗FactorVIII抗体(Dako社)、抗コラーゲンIII抗体(Chemicon社)、抗コラーゲンI抗体(Chemicon社)、および2次抗体としてビオチン化抗ウサギ抗体(Vector社)を反応させた。次いでABCキット(Vector社)を用いて、DAB反応で発色し検鏡に供した。【0045】2)組織移植ヌードマウスにケロイド組織を移植し、本発明薬剤がケロイド増殖を抑制する効果を確認した。移植材料として、ケロイド患者より摘出した組織片を移植するまで培養液中(MEM+10% FCS+PC+SM)に入れて、冷暗所に保存した。次に、ヌードマウス(Balb/c、Jcl−nu、日本クレア社)を6週齢で、麻酔下で細切ケロイド組織片を肩甲骨間に皮下に1匹に1片ずつ5匹のマウスに移植した。移植後、週に3回ケロイド組織の増殖した腫瘍の大きさ(長径×短径×高さ)をノギスで測定した。腫瘍の大きさが安定した3ケ月目に5匹のマウス腫瘍にエリスロポエチンの400Uまたは800U/ml溶液を200μl、1時間間隔で3回注入した。更に3ケ月後に2匹のマウスの腫瘍に、外皮より実施例1で得られた抗エリスロポエチン抗体(R2)の8mg/ml溶液を200μl、1時間間隔で注入した。対照マウス2匹には生理食塩水またはマウスの全血清をそれぞれ200μlずつ同様に3回局注した。残りの1匹のマウスは注入しなかった。注入1週間後にR2注入マウスと血清注入マウスより腫瘍を取り出し固定した。注入4週で残存のR2注入マウスと生理食塩水注入マウスより腫瘍を取り出し固定した。結果を以下に示す。【0046】1.ケロイド組織の病理組織検査a)ケロイドの組織におけるエリスロポエチンの発現膠原質を産生する多数の線維芽細胞および毛細血管内皮細胞はエリスロポエチン受容体抗体に陽性反応を示している(図1)。これらの所見により、線維芽細胞と毛細血管内皮細胞はエリスロポエチンに応答していることが明らかとなった。b)ケロイド組織のコラーゲンIII型線維の存在線維芽細胞は抗コラーゲンIII型抗体に強陽性を示した(図2)。コラーゲン線維束も陽性反応を示すが辺縁に存在する線維芽細胞と比較して反応は弱い(図2)。c)ケロイド組織の血管の分布多数の毛細血管内皮および内皮細胞が、内皮細胞の同定に用いる抗体である抗FactorVIII(第8因子)抗体に陽性反応を示した(図3)。【0047】2.ケロイド組織の移植a)移植後の経過ケロイド組織片を皮下に移植し、移植後腫瘍化した組織(腫瘍)を観察した。移植時に比べて、成長が低下した時点(16週後)で、各腫瘍にエリスロポエチン400Uあるいは800Uを1時間毎に3回局所注入した所、成長度の上昇を認めた(表1)。投与10日後に1例の腫瘍を除去したが、3週後に腫瘍が出現した。移植後28週で、R2の局所注入を1時間間隔で3回行い、1週間あるいは4週間後に腫瘍を摘出した。b)エリスロポエチン投与による移植腫瘍の増大表1に示す通り、2例においてエリスロポエチン投与後12時間と24時間の時点で腫瘍が投与前の大きさと比べてそれぞれ6倍〜9倍、8倍〜7.5倍の大きさに増大し、4日後においても3倍の大きさを示した。また、投与濃度による増大の差は認められなかった。c)抗エリスロポエチン抗体注入による移植腫瘍の抑制表2に、抗エリスロポエチン抗体投与前と投与後の、腫瘍の大きさの変化を示した。抗体投与マウス(3番)で軽度の抑制が認められ、また4番のマウスでは腫瘍の柔軟性を欠き硬化塊の腫隆と変化していた。尚、3番マウスの増殖腫瘍および4番マウスの残存軟部組織の病理組織観察では、以下に述べるように明確なケロイド様の病理観察像は認められず、移植組織の破壊および石灰沈着から腫瘍塊の3/4の組織石灰化が認められた。【0048】【表1】【0049】【表2】【0050】病理組織像a)移植腫瘍における抗エリスロポエチン抗体注入による変化i)R2処置でコラーゲンIII型の線維束の断裂が著しい。断裂束は白血球やマクロファージ、NK様細胞の攻撃を受け融解、消失して線維のみになっている。線維芽細胞は核濃縮を示し、死細胞の集積も認められる(図4)。ii)対照処置において、増殖したコラーゲン線維束の存在が認められる。線維芽細胞や線維細胞は変性を示してない(図5)。b)移植腫瘍ではコラーゲン束の近傍の血管は移植前と比べて、密度は少ない。i)R2処置の腫瘍では内皮細胞死を認めた(図6)。ii)対照処置の腫瘍では内皮細胞の存在が認められた(図7)。c)移植片の石灰沈着i)R2処置では全てに石灰沈着を認め、4番では腫隆の3/4の組織が石灰化を示し、石灰化近傍のコラーゲン束は断裂し、断裂コラーゲンが石灰化していく像であった(図8)。ii)生理食塩水処置では1腫瘍に認められたが、石灰化近傍のコラーゲン束は変化なく増殖像を示した。これらの結果を表3にまとめた。無処置群、対照群では組織の変化は殆ど無かったが、抗エリスロポエチン抗体処置群では、線維芽細胞の変性、コラーゲン束の断裂、消失、石灰質沈着から組織石灰化、膠原質産生の抑制を誘導した。これらの結果より、抗エリスロポエチン抗体はケロイドの増殖を抑制することが確認された。【0051】【表3】【0052】実施例7エリスロポエチン拮抗物質(エリスロポエチン受容体蛋白質)のケロイドに対する効果実施例6と同様に、抗エリスロポエチン抗体の代わりに実施例2で得られたエリスロポエチン受容体蛋白質を用いて同様の実験を行った。抗体を用いた時の結果と同様に、エリスロポエチン受容体蛋白質もケロイドの増殖を抑えることが確認された。【0053】実施例8エリスロポエチン拮抗物質(抗エリスロポエチン抗体)の関節リウマチに対する効果1)免疫染色組織検索材料として、関節リウマチ患者5症例より、手術により摘出された増殖性滑膜片を約20mm×10mm×5mmの大きさに細切し、固定液(Zamboni液; Zamboni L. and DeMartino C., J. Cell Biot., Vol.35, p148A(1967))にて6時間固定後、25%蔗糖添加PBSに入れ替え、冷暗所にて保存した。これらの試料片をOCT剤(マイル社)で包埋し、液体窒素で凍結し、クリオスタットで7μmの凍結切片とした。切片を、第1抗体としてi)抗エリスロポエチン受容体抗体(Yasuda Y. et al., Develop. Growth Differ., Vol.35, pp711-722(1993))、ii)抗IL1α抗体(Genzyme社)、iii)抗コラーゲンIII抗体(Chemicon社)、iv)抗エストロゲン受容体抗体(Chemicon社)、v)抗第8因子抗体(Dako社)の5種類の抗体をそれぞれ反応させた。次に、i)、iii)とv)で反応させたものには、ビオチン化抗ウサギ抗体(Vector社)を、また、ii)とiv)で反応させたものには、ビオチン化抗マウス抗体(Chemicon社)を第2抗体として反応させた。発色はDAB(同仁製薬、和光純薬)を用いて反応させ検鏡に供した。【0054】2)器官培養器官培養材料として、上記のうち3症例については、術後直ちに摘出試料を培養液(MEM+10% FCS、PC 100U/ml、SM100μg/ml)に入れ洗浄し、洗浄後同液中で培養開始まで冷暗所に保存した。このようにして準備された新鮮滑膜片(術後10〜24時間以内)を2×5×10mmの大きさ、重量50〜100mgに細切し、1個の組織片を60mmのシャーレ(3042;Falcon社)に入れ、重量を測定した。このシャーレに、実施例1で得られた抗エリスロポエチン抗体(R2)の生理食塩水溶液16mg/mlにEvans blueを0.25%加えて着色した溶液を注入した。また、対照としては、Evans blueを加えた生理食塩水(大塚製薬社)を用いた。注入は、ハミルトンの32ゲージ注射針(90131)と注射筒(725)を用いて、組織重量mg当たり0.5μl、即ち0.5μl/mg重量のR2あるいは生理食塩水を、組織片に複数ヵ所注入した。注入後シャーレに蓋をして、5%CO2、95%空気、37℃で、60分シャーレ内で反応させた。この操作を繰り返して、R2あるいは生理食塩水処理を3ないし4回処理した後、組織片をMEM+10% FCSの培養液で24穴の培養皿(3047;ファルコン社)で、1片ずつメッシュ(3014;ファルコン社)にのせ、5%CO2、95%空気、37℃の条件で6時間から8時間、器官培養した。尚、培養時間はR2処理開始時より12時間をもって終了するため、時間差がある。培養片をZamboni液で固定し、6時間後に25%蔗糖添加PBSに入れ替え冷暗所に保存し、病理組織検索用に供した。組織検索の結果を以下に示す。【0055】関節リウマチの滑膜組織の特性1)滑膜絨毛におけるエリスロポエチン反応部位膠原質を産生する線維芽細胞、線維束や滑膜絨毛に浸潤するマクロファージ、単球、および毛細血管内皮細胞がエリスロポエチン反応部位である(図9、10、11)。2)滑膜絨毛におけるIL1αの発現膠原質を産生する線維芽細胞、浸潤している単球、マクロファージ、リンパ球に認められる(図12)。3)滑膜絨毛の血管分布絨毛には毛細血管と細血管が多数存在し、多数の単球、リンパ球が血管周辺に浸潤している(図13)。4)滑膜絨毛の膠原質絨毛の膠原質はコラーゲンIIIを主体とした線維に富んでする。線維芽細胞は卵型の網目状の染色質を持つ核でコラーゲンIIIを持つ細胞質を示す(図14)。5)滑膜絨毛のエストロゲン受容体の発現絨毛においてエストロゲン反応部位(図15右)はエリスロポエチン受容体(図15、16左)とIL1α陽性部位(図16右)に相当し、これら3者は共存している(図15、16)。【0056】R2処置による滑膜絨毛片の変化1)線維芽細胞の死R2の3回処置(図17)および4回処置(図18)で、多数の死んだ線維芽細胞が認められた。核は網目状の染色質が凝縮・濃縮され、細胞質は消失していた。この現象はR2の4回処置において、3回処置よりも顕著であり、アポトーシス死と考えられる。対照群では、線維芽細胞は変化を示さなかった(図19)。2)単球、リンパ球、マクロファージの死細胞浸潤の多い毛細血管周辺で多数の核濃縮で死亡したリンパ球、単球マクロファージを認めた(図20)。この現象はR2の4回処置の方が程度が強く(図20)、培養片のIL1α陽性細胞の減少を認めた。対照群の培養片ではこれらの浸潤細胞に変化を認めなかった(図21)。3)毛細血管の崩壊R2の3回処置および4回処置において毛細血管の消失を認めた(図22)。対照群では、多数の毛細血管が存在していた(図23)。4)コラーゲン線維の変化R2の3回処置(図17)および4回処置(図18)では、コラーゲン束の断裂と希薄を認めた。対照群の組織片では、コラーゲン線維の断裂や希薄は認めなかった(図19)。以上の結果を表4にまとめた。抗エリスロポエチン抗体は、関節リウマチ等の疾患の主要症状である滑膜の増殖に伴う膠原質産生の抑制(線維芽細胞の変性、壊死、コラーゲン束の消失)、毛細血管の消失、IL−1分泌細胞の壊死(単球、マクロファージの壊死)を誘導した。これらの結果より、抗エリスロポエチン抗体は、関節リウマチの炎症を抑えることが確認された。【0057】【表4】【0058】実施例9エリスロポエチン拮抗物質(エリスロポエチン受容体蛋白質)の関節リウマチに対する効果実施例8と同様に、抗エリスロポエチン抗体の代わりにエリスロポエチン受容体蛋白質を用いて同様の実験を行った。この結果、抗体を用いた時の結果と同様に、エリスロポエチン受容体蛋白質も炎症を抑えることが確認された。【0059】実施例10ケロイド組織サンプルにおけるエリスロポエチンおよびエリスロポエチン受容体mRNAの発現ケロイド瘢痕5例、萎縮瘢痕1例および赤色瘢痕3例の組織よりRNAを抽出し、それらのRNAを用いてRT−PCR法により、エリスロポエチンおよびエリスロポエチン受容体mRNAの検出を試みた。 全例においてエリスロポエチン受容体mRNAの発現が認められた。エリスロポエチンmRNAはケロイド瘢痕および赤色瘢痕に発現が認められたが萎縮瘢痕では非常に弱い、あるいは無い発現であった(図24)。採取RNAの状態はベータアクチンのmRNAの増幅が弱くないので、良好と考えられる。【0060】実施例11滑膜組織におけるエリスロポエチンおよびエリスロポエチン受容体mRNAの発現8例の患者の滑膜よりRNAを抽出してRT−PCR法によりそれぞれのmRNAの検出を試みたところ、発現に強弱はあるが、全例にエリスロポエチンとその受容体の発現が認められた(図25)。【0061】実施例12滑液中のエリスロポエチン含有量リウマチ患者9例と変形性関節症の患者5例の滑液を用いて、総タンパク量(mg/ml)とエリスロポエチン量(mU/ml)を測定したところ、両症例においてタンパク量には変化がなかったがエリスロポエチン量は有意にリウマチ症例で変形性関節症よりも高値を示した。結果を表5に示す。【表5】【0062】【発明の効果】以上から明らかなように、本発明により、肥厚性瘢痕もしくはケロイド等の膠原質性過剰増殖、または関節リウマチ等の慢性関節炎症性疾患に対し優れた効果を有する予防・治療剤が提供される。【図面の簡単な説明】【図1】 患者より摘出したケロイド片における多数の線維芽細胞のエリスロポエチン受容体抗体に対する陽性反応を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維芽細胞を、矢尻は血管内皮細胞を、*は線維束の部域を示す。(倍率:180倍)【図2】 患者より摘出したケロイド片における多数の線維芽細胞のコラーゲンIII型抗体陽性反応を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維束を、小さい矢印は線維芽細胞を示す。(倍率:180倍)【図3】 患者より摘出したケロイド片における第8因子抗体に陽性反応を示す多数の毛細血管の分布を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は血管内皮細胞を示す。(倍率:180倍)【図4】 ヌードマウスに移植したケロイド腫瘍にエリスロポエチン抗体を3回連続投与し、1週間後に摘出した腫瘍片の、石灰化組織の周辺部の組織像を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、矢尻は断裂して小さく分解されたコラーゲン像を、*は分解して消失していくコラーゲン像を示す。(倍率:360倍)【図5】 ヌードマウスに移植したケロイド腫瘍にマウス血清を3回連続投与し、1週間後に摘出した腫瘍片の組織像を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←はコラーゲン束の1束を示す。(倍率:360倍)【図6】 図4と同一標本(R2の3回処置)の第8因子抗体陽性反応を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は点状に粉砕された内皮細胞の核断片を示す。(倍率:720倍)【図7】 図5と同一標本(マウス血清3回処置)の第8因子抗体陽性反応を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は内皮細胞質の突起を示す。(倍率:720倍)【図8】 図4と同一標本(R2の3回処置)のvan Kossa染色により、組織石灰化の組織像を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←はコラーゲン断裂塊の石灰沈着を示す。(倍率:72倍)【図9】 患者Aより摘出した滑膜絨毛片における、エリスロポエチン受容体抗体に陽性部位を示す細胞(矢印)と細胞性浸潤を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維芽細胞を、←←はマクロファージを示す。(倍率:150倍)【図10】 患者Bより摘出した滑膜絨毛片のエリスロポエチン受容体抗体に陽性部位を示す強拡大の像を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は毛細血管周辺の単球を、←←はマクロファージを、矢尻は線維芽細胞を示す。(倍率:600倍)【図11】 図10と同一患者の組織切片のエリスロポエチン受容体抗体に陽性反応を示す線維芽細胞像を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維芽細胞を示す。(倍率:600倍)【図12】 図10と同一患者の組織片のIL1α抗体に陽性反応を示す線維芽細胞と浸潤細胞群を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維芽細胞の核を、←←はマクロファージを示す。(倍率:300倍)【図13】 図9と同一患者の組織切片の第8因子抗体に反応する毛細血管の存在を示す像を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は第8因子抗体に陽性を示す毛細血管内皮細胞を示す。(倍率:150倍)【図14】 図10と同一患者の組織片のコラーゲンIII抗体に陽性反応を示す線維芽細胞像を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維芽細胞を示す。(倍率:600倍)【図15】 図10と同一患者の組織片のエリスロポエチン受容体抗体(左図)とエストロゲン受容体α抗体(右図)の二重染色像を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維芽細胞を、矢尻は単球を示す。(倍率:480倍)【図16】 図10と同一患者の組織片のエリスロポエチン受容体抗体(左図)とIL1α抗体(右図)の二重染色像を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維芽細胞を、矢尻は単球を示す(倍率:480倍)【図17】 図9と同一患者の組織片にR2を3回、1時間間隔で処置(処置開始より12時間後に固定したもののコラーゲンIII抗体陽性部位を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は死亡した線維芽細胞の核を、←←は死亡したマクロファージの核を示す。(倍率:180倍)【図18】 図10と同一患者の組織片にR2を4回、1時間間隔で処置し、処置開始より12時間後に固定したものの、コラーゲンIII抗体陽性部位を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は死亡した線維細胞の核を、矢尻は死亡細胞周辺のコラーゲン線維質の抜けた部位を示す。(倍率:150倍)【図19】 図10と同一患者の組織片に生食を4回、1時間間隔で処置し、処置開始より12時間後に固定したものの、コラーゲンIII抗体陽性部位を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維芽細胞の核を、←←はコラーゲンIIIの線維束を示す。(倍率:300倍)【図20】 図18と同一培養切片(R2の4回処置)のIL1α抗体陽性部位を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は死亡した線維芽細胞の核を、←←は核の断片を示す。(倍率:240倍)【図21】 図19と同一培養片(生食4回処置)のIL1α抗体陽性部位を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は線維芽細胞を、←←はマクロファージを示す。(倍率240倍)【図22】 図17と同一培養片(R2の3回処置)の第8因子陽性部位を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は破損している血管壁を、←←は核濃縮を示す内皮細胞の核を示す。(倍率:360倍)【図23】 図19と同一培養片(生食4回処置)の第8因子陽性部位を示す顕微鏡写真を表す図である。図中、←は血管内皮細胞を、←←は単球を、矢尻は線維芽細胞の核を、矢尻2個はリンパ球を示す。(倍率:360倍)【図24】 ケロイド組織サンプルにおけるエリスロポエチンおよびエリスロポエチン受容体mRNAの発現結果を示す電気泳動図である。図中、1〜5レーンはケロイド瘢痕患者、6レーンは萎縮瘢痕、7から9レーンは赤色瘢痕を示す。EPO RT+は、逆転写酵素を加えたRNAサンプルにおけるエリスロポエチンcDNAの増幅を示す。EPO RT−は、逆転写酵素を加えなかったRNAサンプルではエリスロポエチンcDNAの増幅は確認されなかったことを示す。EPOR RT+は、逆転写酵素を加えたRNAサンプルにおけるエリスロポエチン受容体cDNAの増幅を示す。EPOR RT−は、逆転写酵素を加えなかったRNAサンプルではエリスロポエチン受容体cDNAの増幅は確認されなかったことを示す。ベータアクチンは、サンプル間におけるRNA量差を考慮するため、内部標準としてベータアクチンを用い、その増幅を示している。各バンドの上の表示は患者識別を示す。【図25】 滑膜組織のエリスロポエチンおよびエリスロポエチン受容体のmRNA発現結果を示す電気泳動図である。図中、EPO RT+は、逆転写酵素を加えたRNAサンプルにおけるエリスロポエチンcDNAの増幅を示す。EPO RT−は、逆転写酵素を加えなかったRNAサンプルではエリスロポエチンcDNAの増幅は確認されなかったことを示す。EPOR RT+は、逆転写酵素を加えたRNAサンプルにおけるエリスロポエチン受容体cDNAの増幅を示す。EPOR RT−は、逆転写酵素を加えなかったRNAサンプルではエリスロポエチン受容体cDNAの増幅は確認されなかったことを示す。ベータアクチンは、サンプル間におけるRNA量差を考慮するため、内部標準としてベータアクチンを用い、その増幅を示している。各バンドの上の表示は患者識別を示す。 抗エリスロポエチン抗体およびエリスロポエチン受容体蛋白質から選ばれるエリスロポエチン拮抗物質を有効成分として含有する、肥厚性瘢痕、ケロイドまたは慢性関節炎症性疾患予防・治療剤。 慢性関節炎症性疾患が関節リウマチ、リウマチ類縁疾患、膠原病による関節炎、または腱鞘炎である請求項1記載の剤。