生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法
出願番号:2002046701
年次:2006
IPC分類:C12Q 1/68,A01H 1/00,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

森本 隆義 下中 雅仁 田平 弘基 JP 3760247 特許公報(B2) 20060120 2002046701 20020222 ナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法 鳥取県 592072791 森山 陽 100121197 大塚 博一 100088476 森本 隆義 下中 雅仁 田平 弘基 20060329 C12Q 1/68 20060101AFI20060309BHJP A01H 1/00 20060101ALN20060309BHJP C12N 15/09 20060101ALN20060309BHJP JPC12Q1/68 AA01H1/00C12N15/00 A C12Q 1/68 C12N 15/00-15/90 A01H 1/00 JICSTファイル(JOIS) PubMed GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/GeneSeq Theor. Appl. Genet.,1999年,Vol. 98,961-967 J. Biochem.,1996年,Vol. 120,335-345 Plant Mol. Biol.,1998年,Vol. 37,931-941 園芸学会雑誌,2000年,Vol. 69 別冊2,255 Gene,1998年,Vol. 211,159-167 1 2003245022 20030902 11 20020222 特許法第30条第1項適用 園芸学会等主催「アジアナシに関する国際シンポジウム」(平成13年8月28日、倉吉市鳥取二十世紀梨記念館および定住文化センター)において「PCR Based Method for Screening Self−Compatible Varieties of Japanese Pear」なる課題名で文書をもって発表 田村 明照 【0001】【発明の属する技術分野】この発明は,自家和合性のナシを育成する際に自家不和合性に連鎖するマーカーDNA断片を用い自家和合性の交雑種を選抜するナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法に関する。【0002】【従来の技術】従来,自家和合性のナシ品種は,人工交配の手間が不要であり,着果が安定するため,果樹栽培農家等にとって農業上極めて有用である。自家和合性のナシ優良品種の育種は交雑育種法により行われているが,交雑種子を取得してから開花し,結実するまでの期間が約7年と長いことから,自家和合性の判別に非常に長期間を要しているのが現状である。【0003】また,鳥取県は品種‘二十世紀’を代表とするナシの日本一の産地であるが,ナシの人工交配時期の天候が不安定であり,4年に1度はナシの果実の開花や着果が不良となっているのが現状である。1980年頃に,鳥取県内のナシ栽培農家の圃場(果樹ばたけ)において,‘二十世紀’の枝変わりによる自家和合性を示す突然変異の品種‘おさ二十世紀’が発見された。その後に,‘おさ二十世紀’は自家和合性ナシを育種する際に,交配親として多く用いられている。【0004】ニホンナシの育種において,果実形質が評価できるようになるまでには,通常7年以上かかるのが現状である。また,広大な育種ばたけが必要であり,果実の栽培管理などに多くの労力を伴うものであり,従って,従来の育種法では,自家和合性の優良品種を育成することは非常に困難である。従来,ナシの自家和合性遺伝子についての研究が他研究機関で進められている。また,ナシの自家不和合性自体の研究については,多くの研究機関が取り組んでいる。【0005】また,特開平10−127290号公報には,病害抵抗性植物及び病害抵抗性母本の選抜法が開示されている。該病害抵抗性植物の選抜法は,病害罹病(りびょう)性植物に存在し,病害抵抗性植物に存在しない罹病性に連鎖する特異的なマーカーDNA断片を用いるものである。また,上記病害抵抗性母本の選抜法は,上記マーカーDNA断片を得て,この特異的なマーカーDNA断片を有し且つ病害抵抗性を示す植物を選抜するものである。上記病害抵抗性植物の選抜法は,従来の接種検定法等によるものと比較して,容易に抵抗性植物を選抜することができるものである。また,上記病害抵抗性母本の選抜法は,欠失領域のより小さな,したがって連鎖する劣悪形質のよりすくない優良な劣性病害抵抗性母本を選抜することができるものである。【0006】また,特開2000−342280号公報には,新規抵抗性因子様DNAを用いるバラ科作物の識別方法及びそれに利用される新規抵抗性因子様DNAが開示されている。該バラ科作物の識別方法は,特定の4種類の塩基配列のいずれかを含む抵抗性因子様DNA,又はそれらのDNAにおいて1以上の塩基が置換,欠失,挿入若しくは付加された塩基配列を含み,且つ抵抗性因子様DNAとして機能し得るDNAがバラ科作物のゲノムDNA中に存在するか否かを調べるものである。【0007】【発明が解決しようとする課題】ところで,大学や研究所では,PCR−RFLP法によるナシ品種のS遺伝子型決定法の改良の研究が行われたり,それらが発表した成果や情報を基にして,育成されたナシ品種のS遺伝子型の決定を行い,自家和合性の優良品種が有用であることが分かってきた。また,交雑育種により自家和合性のナシ品種を育成するには,自家和合性の判別に長期間を要し,その間の栽培管理に多大な労力と多額の費用がかかっているのが現状である。そこで,DNAマーカーを用いた自家和合性の判別法の開発が待ち望まれている。即ち,ナシ栽培者からは,ナシの交配作業が不要になり,ナシ果実の着果が安定する自家和合性の優良品種の開発が強く求められているのが現状である。【0008】近年,ナシの自家和合性に関わる遺伝子であるS−RNase遺伝子が単離され,遺伝子の塩基配列が明らかとなっている。即ち,‘二十世紀’等の花柱の蛋白質を解析して,ナシの自家不和合性をコントロールするS遺伝子はS−RNaseであることが分かってきた。また,近年,DNAマーカーによる自家和合性の遺伝子診断法の開発が行われている。【0009】そこで,鳥取県園芸試験場では,ナシの自家和合性の遺伝子のDNA配列を利用して自家和合性個体の選抜育種を実施することに着眼し,研究を行っている。本発明者は,1994年頃からナシの自家不和合性遺伝子について,研究を行ってきたが,その成果として,自家不和合性を判別するDNAマーカー(PCRプライマーペア)を開発し,その実用化に取り組んでいる。現在,自家和合性品種‘おさ二十世紀’を交配親に用いた交雑種集団については,DNAマーカーによる自家和合性個体の選抜を実施しているところである。【0010】ナシ遺伝子診断の今後の予定としては,‘おさ二十世紀’以外の自家和合性品種を交配親に用いた交雑種集団についても,自家和合性の遺伝子診断を行うべく,あらゆる交配組み合わせに対応できるDNAマーカーの開発に取り組んでいるのが現状である。【0011】【課題を解決するための手段】この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,ナシの自家不和合性に係わるS−RNase遺伝子座の各対立遺伝子に特異的な塩基配列を利用して,特定のS遺伝子のみを検出することにより,交雑種の自家和合性の判別を行うことによって,ナシの交配作業が不要になり,ナシ果実の着果が安定する自家和合性の優良品種を得ることができるナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法を提供することである。【0013】 請求項1に記載のナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法は、S4sm遺伝子を持つ自家和合性のナシ品種を交配親に用いて自家和合性の交雑種を育成するナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法であって、ナシの自家不和合性に係わるS−RNase遺伝子座の各対立遺伝子に特異的な塩基配列を利用して、自家和合性のナシ品種が持つS4sm遺伝子と対をなすS遺伝子を検出する方法が、S2遺伝子だけを特異的検出するために、上流プライマーとしてAAAGAAAATCCCAACCAAAGCAを用い、下流側プライマーとして、ACRTTCGGCCAAATAATTとを用い、PCR増幅を行い、S2遺伝子の検出がないものを、自家和合性個体として選抜することを特徴とする、又は、S5遺伝子だけを特異的検出するために、上流プライマーとして、ATACGTCCTCAAACATAGATを用い、下流側プライマーとして、ACRTTCGGCCAAATAATTとを用い、PCR増幅を行い、S5遺伝子の検出がないものを、自家和合性個体として選抜することを特徴とする。【0014】この自家和合性個体選抜法は,ナシ交雑種集団より自家和合性個体を選抜する際,ナシの自家和合性に関わるS−RNase遺伝子の塩基配列の一部をオリゴヌクレオチドプライマーとして用い,PCR法により単独のDNA断片として増幅し,このDNA断片の有無で自家和合性を幼苗段階で判別し,それらの個体のみを育種圃場に定植するものである。【0015】【発明の実施の形態】以下,図面を参照して,この発明によるナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法の実施例を説明する。【0016】本発明者は,クローニングした7つのS−RNase遺伝子のDNA配列を基に,特定のS遺伝子のみを検出するプライマーペアを設定し,これを用いた高効率なDNA診断技術を開発した。この発明によるナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法は,上記のDNA診断技術を用いることによって,多数のナシの交雑種集団より,簡便かつ低費用で,自家和合性の個体のみを幼苗段階で選抜することが可能になったものである。【0017】この発明によるナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法は,上記の事実に基づいて達成されたものであり,PCR法を用いたニホンナシの自家和合性品種の選抜についてであり,ニホンナシは自家不和合性であり,結実させるには,人工交配作業が必要である。‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)は‘二十世紀’(S2 S4 )の自家和合性突然変異であり,自家和合性で高品質の新品種を育成するための交配親として用いられてきた。なお,( )内は各品種のS遺伝子型を示し,添え字の符号smは花柱突然変異を示す。本発明は,自家和合性の‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)または‘秋栄’(S4 smS5 )の後代より自家和合性の雑種を選抜するために,迅速で多数のサンプルを効率よく処理できる選抜法である。この手法は,S遺伝子特異的PCR増幅と,蛍光によるDNA検出より構成される。この手法を用いて,我々は‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)または‘秋栄’(S4 smS5 )の交雑種585個体より290個体の自家和合性個体を選抜した。【0018】ところで,ニホンナシは自家不和合性であり,結実させるには人工交配作業が必要である。ニホンナシは,一つの複対立遺伝子座(7つのS対立遺伝子:S1〜S7)により支配される配偶体型自家不和合性を示す。‘二十世紀’の自家和合性突然変異である‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)(smは花柱突然変異を示す)は鳥取県で発見された。‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)は,自家和合性で高品質の新品種を育成するための交配親として用いられてきた。しかしながら,‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)の後代の自家和合性を判別するには7年以上を要する。即ち,人工交配作業は,多くの労力と時間が必要となるため,その必要のない‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)は広く栽培され,自家和合性で高品質な新品種を育成するための交配親に用いられてきた。これまでは自家和合性の品種を選抜するために,従来,袋かけ試験により和合性の判別を行っていた。しかし,この方法は,数年間続けて試験を行う必要があり,更にこの判別結果は,多くの環境的,生理的要因により不確実なものであった。【0019】このナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法では,上記の問題点を解決するため,自家和合性の品種の後代より自家和合性の雑種を選抜するためにPCR法を用いた判別法を用いたものである。即ち,近年,ニホンナシのS遺伝子座の自家不和合性に関わるS−RNase遺伝子の塩基配列が明らかになり,‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)の自家和合性はS4遺伝子座のS4−RNase遺伝子が大きく欠失したため,自家和合性になったことが明らかとなった。【0020】そこで,本発明者は,PCR法を用いたS遺伝子型の不明な品種のS遺伝子型決定法の手法が開発されているので,‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)又は自家和合性品種‘秋栄’(S4 smS5 )の交雑種からの自家和合性個体選抜法を行うために,上記手法を改良した。また,‘秋栄’(S4 smS5 )は,‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)の後代より選抜された自家和合性で耐病性の品種であり,自家和合性で耐病性の新品種を育成するために交配親として用いられている。【0021】−実施例−〔植物材料〕鳥取県園芸試験場において,ニホンナシ品種,‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)の交雑種,及び‘秋栄’(S4 smS5 )の交雑種の幼葉を2000年春に採取し,それらの幼葉は,使用するまで−80℃で保存した。〔ゲノムDNAの抽出〕ゲノムDNAはCTABを用い抽出して精製した。〔プライマーの設計〕各S遺伝子特異的プライマーはニホンナシの7つのS−RNase遺伝子の塩基配列を基に設計した。〔S2遺伝子座特異的プライマーペア〕S遺伝子座を決定するために設計されたプライマー‘RV’(ACRTTCGGCCAAATAATT)を下流側のプライマーとして用いた。また,このプライマーと一緒に用いることができ,S2遺伝子だけを特異的検出する上流プライマー‘S2I−U’(AAAGAAAATCCCAACCAAAGCA)を設計した。〔S5遺伝子座特異的プライマーペア〕同様に,上記下流プライマー‘RV’と一緒に用いることができ,S5遺伝子だけを特異的検出する上流プライマー‘S5I−U2’(ATACGTCCTCAAACATAGAT)を設計した。〔PCR増幅〕PCRは全量30μl(組成50ngDNA,200μMdNTPs,各1μMのプライマー,2.5U DNA polymerase )で行った。反応は,94℃で30秒,52℃で30秒,74℃で30秒を30サイクル行った。〔DNA濃度測定〕PCR増幅産物を96穴マイクロプレートに分注した。DNA濃度を蛍光イメージアナライザFMBIOにより,2本鎖DNAのみを特異的に検出するインターカレート蛍光試薬を用いて測定した。【0022】遺伝子座特異的プライマーの選抜の結果は次のとおりである。(1)S2遺伝子座S遺伝子座は,メンデルの法則に従い遺伝するため,図1に示すように,‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)の後代は,S2遺伝子座とS4s m 遺伝子座が,l:1に分離する。S4s m 遺伝子座のS4−RNaseは,欠失しており,検出できないため,本発明者は,S2−RNaseのみを検出するプライマーペアをニホンナシの7つのS−RNase遺伝子の塩基配列を基に設計した。即ち,本発明者は,図2に示すように,S2−RNaseのみを検出するプライマーペアをS2−RNase遺伝子の塩基配列を基に設計し,5つのペアのオリゴヌクレオチドを化学合成し,PCR増幅に用いた。その結果,図2に示すように,‘RV’と‘S2I−U’のプライマーペアを用いた時だけ,S2遺伝子座特異的断片が増幅された。図1に示すように,‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)の後代の自家和合性の個体は,S2−RNase遺伝子を持っていないため,自家和合性の個体は,S2遺伝子座特異的断片の増幅が無いことにより選抜することができる。【0023】(2)S5遺伝子座同様に,‘秋栄’(S4 smS5 )の後代は,図3に示すように,S5遺伝子座とS4s m 遺伝子座が,1:lに分離する。S4s m 遺伝子座のS4−RNaseは,欠失しており,検出できないため,本発明者は,S5−RNaseのみを検出するプライマーペアを設計した。そして,本発明者は,11のペアのオリゴヌクレオチドを化学合成し,PCR増幅に用いた。その結果,図4に示すように,‘RV’と‘S5I−U2’のプライマーペアを用いた時だけ,S5遺伝子座特異的断片が増幅された。図3に示すように,‘秋栄’(S4 smS5 )の後代の自家和合性の個体はS5−RNase遺伝子を持っていないため,自家和合性の個体はS2遺伝子座特異的断片の増幅が無いことにより選抜することができる。【0024】次に,自家和含性栽培種の後代からの自家和合性品種の選抜を行った。〔‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)の後代〕‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)ב水秀’(S3 S5 )の後代を試験に用いた。自家不和合性個体からは,これらが持つS2遺伝子座より特異的断片(796bp)がS2−RNase遺伝子よりPCR増幅されるため,これらの反応液のDNA濃度は高くなる。しかし,自家和合性でS2遺伝子座を持たない個体の反応液は,DNA濃度が変化しない。そこで,本発明者は,図5に示すように,96穴マイクロタイタプレートを用い,PCR増幅産物の濃度を蛍光イメージアナライザ(遺伝子診断装置)により測定することによって,自家和合性の個体を選抜した。その結果を表1に示す。【表1】【0025】〔‘秋栄’(S4 smS5 )の後代〕‘秋栄’(S4 smS5 )ב水秀’(S3 S5 )の後代を試験に用いた。自家不和合性個体からはこれらが持つS5遺伝子座より特異的断片(144bp)がS5−RNase遺伝子よりPCR増幅されるため,これらの反応液のDNA濃度は高くなる。しかし,自家和合性でS5遺伝子座を持たない個体の反応液は,DNA濃度が変化しない。そこで,本発明者は,図6に示すように,96穴マイクロタイタプレートを用い,PCR増幅産物の濃度を蛍光イメージアナライザ(遺伝子診断装置)により測定することで,自家和合性の個体を選抜した。その結果を表2に示す。【表2】【0026】上記の各実施例から分かるように,ニホンナシのS遺伝子型を決定する方法は,PCR増幅したDNA断片を各S遺伝子特異的な制限酵素で消化するものであったが,本発明者は,上記の研究によって,増幅したDNA断片を制限酵素で消化する過程を改善し,コストと手間を削減することができた。制限酵素で消化する過程は,多くの費用とそれに伴うポリアクリルアミドゲルによる電気泳動を必要とするため,本発明者は,各S遺伝子特異的PCRと,蛍光によるDNA濃度測定をこの過程に置き換え,改良することによって高効率化させることができた。制限酵素で消化する場合に,96検体のPCR産物を検定するのに1日を要したが,このナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法を用いると,96検体を10分で検定することができた。【0027】このナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法を用い‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)又は‘秋栄’(S4 smS5 )の交雑種585個体より,290自家和合性個体を選抜し,育成圃場に定植した。また,残りの295の自家不和合性個体は幼苗段階で廃棄した。本発明者は,数千の交雑種をこの手法を用い検定していくことが好ましいことが分かった。【0028】次に,図7及び図8を参照して,本発明と従来例とのナシの自家和合性品種の育成法を説明する。まず,ナシの自家和合性品種の育成法を説明するにあたって,自家和合性品種である‘おさ二十世紀’(S2 S4 sm)とその他のナシ品種とを交配させる。この交配により自家和合性と自家不和合性の混在した交雑種集団が作出される(ステップS1)。【0029】次に,図7を参照して,この発明によるナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法を用いた場合,即ち,自家和合性DNAマーカーを利用した場合のナシの自家和合性品種の育種法について説明する。ステップ1で得られた自家和合性と自家不和合性が混在した交雑種集団から所定の数の個体を取り上げ,それらの個体即ち幼苗をポットに植える(ステップS2)。該個体に対して自家和合性DNAマーカーによる遺伝子診断を行い,診断の結果は黒丸が検定で陽性の幼苗であり,白丸が検定で陰性の幼苗であるとする(ステップS3)。黒丸の陽性の幼苗は自家不和合性と診断して廃棄し,白丸の陰性の幼苗は自家和合性と診断して選抜し(ステップS4),個体数を幼苗段階で1/4に削減する(ステップS5)。次いで,自家和合性と判別して選抜された個体のみを圃場に定植し(ステップS6),これらの幼苗を育種する(ステップS7)。従来の1/4以下の圃場面積で栽培管理が容易であり,全ての幼苗が自家和合性となり(ステップS8),その結果,自家和合性の優良品種の育成が可能になった(ステップS9)。従って,本発明は,育種圃場面積及び栽培労力を1/4以下に削減でき,しかも効率的な育種が可能であり,育種年限を短縮できることが分かった。【0030】次に,図8を参照して,従来のナシの自家和合性品種の育成法について説明する。ステップ1で得られた自家和合性と自家不和合性が混在した交雑種集団から所定の数の個体を取り上げ,それらの個体即ち幼苗をポットに植える(ステップS10)。該個体に対して自家和合性DNAマーカーによる遺伝子診断を行うことなく,幼苗の選抜をせずに,全ての幼苗を育種圃場に定植し(ステップS11),これらの幼苗を全て育成する(ステップS12)。従って,広大な圃場面積の栽培管理が必要であり,自家和合性の判別には7年を要することになる(ステップS13)。その結果,自家和合性の優良品種の育成が困難であった(ステップS14)。【0031】【発明の効果】この発明によるナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法は,上記のように構成されているので,自家和合性と判別された個体のみを定植することによって育種はたけ面積及び栽培労力は,選抜しなかった場合に比較して,1/4以下で済むようになり,効率的な育種が可能になり,従来の7年を要していた育種年限を大幅に短縮することができ,しかも,全ての個体が自家和合性の優良品種の育成が可能になった。【図面の簡単な説明】【図1】自家和合性品種‘おさ二十世紀’の後代からの自家和合性個体の選抜を説明する図である。【図2】S遺伝子型が明らかな品種を用いたS2遺伝子のみのPCR増幅を示す写真図である。【図3】自家和合性品種‘秋栄’の後代からの自家和合性個体の選抜を説明する図である。【図4】S遺伝子型が明らかな品種を用いたS5遺伝子のみのPCR増幅を示す写真図である。【図5】‘おさ二十世紀’ב水秀’の交雑種からのS2遺伝子増幅用プライマーを用いたPCR増幅産物のDNA濃度測定を示す図である。【図6】‘秋栄’ב水秀’の交雑種からのS5遺伝子増幅用プライマーを用いたPCR増幅産物のDNA濃度測定を示す図である。【図7】このナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜方法によってナシの自家和合性品種の育成法を示す説明図である。【図8】従来の方法によってナシの自家和合性品種の育成法を示す説明図である。【符号の説明】SC 自家和合性SI 自家不和合性 S4sm遺伝子を持つ自家和合性のナシ品種を交配親に用いて自家和合性の交雑種を育成するナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法であって、ナシの自家不和合性に係わるS−RNase遺伝子座の各対立遺伝子に特異的な塩基配列を利用して、前記自家和合性のナシ品種が持つS4sm遺伝子と対をなすS遺伝子を検出する方法が、S2遺伝子だけを特異的検出するために、上流プライマーとしてAAAGAAAATCCCAACCAAAGCAを用い、下流側プライマーとして、ACRTTCGGCCAAATAATTとを用い、PCR増幅を行い、S2遺伝子の検出がないものを、自家和合性個体として選抜することを特徴とする、又は、S5遺伝子だけを特異的検出するために、上流プライマーとして、ATACGTCCTCAAACATAGATを用い、下流側プライマーとして、ACRTTCGGCCAAATAATTとを用い、PCR増幅を行い、S5遺伝子の検出がないものを、自家和合性個体として選抜することを特徴とする、ナシの遺伝子診断による自家和合性個体選抜法。


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