タイトル: | 特許公報(B2)_エチレングリコールの回収蒸留釜残の処理方法 |
出願番号: | 2002040153 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 67/03,C07C 67/54,C07C 69/82,B01D 3/00,C07B 61/00 |
稲田 修司 佐藤 菊智 JP 4187979 特許公報(B2) 20080919 2002040153 20020218 エチレングリコールの回収蒸留釜残の処理方法 株式会社ペットリバース 502042861 大島 正孝 100080609 稲田 修司 佐藤 菊智 20081126 C07C 67/03 20060101AFI20081106BHJP C07C 67/54 20060101ALI20081106BHJP C07C 69/82 20060101ALI20081106BHJP B01D 3/00 20060101ALI20081106BHJP C07B 61/00 20060101ALN20081106BHJP JPC07C67/03C07C67/54C07C69/82 BB01D3/00 AC07B61/00 300 C07C 67/03 C07C 67/54 C07C 69/82 特公昭45−041215(JP,B1) 特開昭48−062732(JP,A) 特開平08−225496(JP,A) 特開2000−169623(JP,A) 国際公開第01/10812(WO,A1) 資源循環技術研究発表会講演論文集,2001年,Vol.9,p.17-22 ペトロテック,2001年,Vol.24, No.5,p.398-402 5 2003238480 20030827 9 20041210 安田 周史 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はエチレングリコール回収蒸留釜残の処理方法に関する。さらに詳しくは、粗エチレングリコール、特にポリエチレンテレフタレートからビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する過程で発生する粗エチレングリコールの回収蒸留釜残に含まれるジエチレングリコールのテレフタル酸エステルをビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに変換する処理方法に関する。【0002】【従来の技術】ポリエチレンテレフタレートは、機械特性、熱特性、化学特性等に優れることから、ボトル、繊維、フィルムなど各種成形品分野で用いられている。ポリエチレンテレフタレートは、通常、テレフタル酸とエチレングリコールのエステル化反応またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールのエステル交換反応によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびそのオリゴマーを主成分とする反応生成物を得、これをさらに重縮合させることによって製造される。その際、用途に応じた要求特性を満足させる目的で、第三成分を共重合させたり、特性付与剤例えば、着色剤、安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を添加することが行われている。【0003】近年、ポリエチレンテレフタレート製成形品、特にポリエチレンテレフタレート製ボトル(以下、PETボトルという)の使い捨てが環境を悪化するとして社会問題となっており、この回収、再利用の検討が進められている。【0004】この方法の一つとして、ポリエチレンテレフタレート製成形品、特にPETボトルを回収し、これを粉砕してチップまたはフレークにし、エチレングリコールを用いて解重合(グリコリシス)し、得られる反応生成物から分離精製して高純度のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを得、さらにこの高純度のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを重縮合させることでポリエチレンテレフタレートとする方法がある。【0005】本発明者等は、この方法について検討した結果、ポリエチレンテレフタレートのグリコリシスで得られた反応生成物が、不純物として、前記特性付与剤(例えば着色物)、主として反応触媒や安定剤によるイオン、ポリマー製造時やグリコリシス時に副生するジエチレングリコール、該ジエチレングリコールのテレフタル酸エステル、成形品に取付けられ乃至付着して混入した他種樹脂(例えば、ボトルキャップ、ラベル等)などを含むこと、これら不純物を脱色、脱イオン、晶析、分子蒸留などの精製技術を組み合わせて除去することで高純度のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造し得ることを見出し、先に提案した(特開2000−169623号公報、国際公開WO01/10812号公報)。【0006】この精製過程において、不純物および有効成分を含む粗エチレングリコールが発生するが、この粗エチレングリコールは蒸留精製に付され、精製エチレングリコールと、主として高沸点成分からなる蒸留残渣(エチレングリコール回収蒸留釜残)に分けられる。この精製エチレングリコールは、通常、前記グリコリシスの原料として循環使用される。【0007】前記蒸留残渣は、大部分がビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下、BHETということがある)、オリゴマー、ジエチレングリコールのテレフタル酸エステル(以下、DEGエステルということがある)、モノエチレングリコールテレフタレート(以下、MHETエステルということがある)、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび原料に同伴した不純物からなる。【0008】ところで、前記DEGエステルが製品ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに含まれると、この製品ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを原料として重縮合したポリエチレンテレフタレート中のジエチレングリコールの含有量に直接影響することになる。そしてジエチレングリコールの含有量の高いポリエチレンテレフタレートは、融点の低下、着色、結晶化速度等の物性を低下させ、好ましくない。【0009】そのため、DEGエステルおよび遊離のジエチレングリコールを含んでいる前記残渣は、そのままではビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造工程へ戻して、再利用することが困難であり、これまでは産業廃棄物として処分するしか方法がなかった。【0010】しかし、前記残渣は有効成分を多く含んでいることから、このまま廃棄することは製品ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの収率低下、製造コストの上昇等をもたらし、極めて不経済である。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、前記残渣に含まれるDEGエステルを有効成分のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに変換し、かつ遊離のジエチレングリコールを除去できれば、前記残渣を廃棄処分にする必要がなくなり、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの収率を著しく高め得ることに着目し、その方法を鋭意検討した結果、本発明に到達した。【0012】したがって、本発明の目的は、エチレングリコール回収蒸留釜残に含まれるDEGエステルを有効成分のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに変換し、該蒸留釜残を有効活用する方法を提供することにある。【0013】本発明の他の目的は、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造工程で発生する粗エチレングリコールを蒸留精製に付し、その際生じる蒸留釜残を、これに含まれるDEGエステルを有効成分のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに変換した後、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造工程へ戻すことで、製品ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの収率を高めるのに寄与する方法を提供することにある。【0014】本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。【0015】【課題を解決するための手段】本発明の上記目的および利点は、本発明によれば、固形分として少なくともジエチレングリコールのテレフタル酸エステルを含む、エチレングリコール回収蒸留釜残に、該蒸留釜残中の全固形分に対して2〜20重量倍のエチレングリコールおよび0.1〜1.0重量%のエステル交換触媒を加え、加熱下に該テレフタル酸エステルとエチレングリコールのエステル交換反応を行ってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートとジエチレングリコールを生成するとともに生成したジエチレングリコールを常圧〜0.5MPaの圧力下でエチレングリコールとともに蒸発留出させることを特徴とするエチレングリコール回収蒸留釜残の処理方法によって達成される。【0016】本発明は、さらに好ましい態様として、前記エステル交換反応時に、圧力を常圧〜0.5MPaに調節しながらエチレングリコールとともにジエチレングリコールを留出させつつ留出量にほぼ等しい量のエチレングリコールを連続的にないし間歇的に新たに供給して反応液の固形分濃度をほぼ一定に保持すること、前記蒸留釜残中の、ジエチレングリコールのテレフタル酸エステルの含有量が10〜30重量%であること、前記エステル交換反応の時間が0.5〜3時間であること、前記蒸留精製処理により回収蒸留釜残が発生したエチレングリコールが、ポリエチレンテレフタレートをエチレングリコールを用いて解重合した反応生成物からビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを精製分離する過程で生じたものであること、等を包含する。【0017】【発明の実施の形態】本発明における蒸留釜残は、粗エチレングリコールの蒸留精製処理で釜残として取出された、固形分として少なくともジエチレングリコールのテレフタル酸エステル(DEGエステル)を含む蒸留残渣である。この蒸留残渣中の、DEGエステルの含有量は10〜30重量%であることが好ましい。この粗エチレングリコールは、例えば、ポリエチレンテレフタレートのエチレングリコールによるグリコリシスによって得られる反応生成物からビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを精製分離する過程で発生したものである。【0018】前記ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートからなる使用済み成形品例えばボトル、繊維、フィルムなど、または成形不良もしくは品質不良で製品にならなかったポリエチレンテレフタレートを回収したものであり、少量、例えば10モル%以下、好ましくは7モル%以下の第三成分例えばイソフタル酸を共重合されたり、特性付与剤を加えて製造されたものであってもよい。【0019】前記ポリエチレンテレフタレートを過剰のエチレングリコールを用いて解重合する方法としては、例えば特開2001−48837号公報、特開2000−53802号公報、国際公開WO01/10812号公報等に記載されている方法を用いることができる。そして、この解重合で得られた反応生成物を脱色処理、脱イオン処理、晶析精製処理、蒸留処理等の精製処理に付して精製ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る方法としては、例えば特開2001−48837号公報、国際公開WO01/10812号公報等に記載されている方法を用いることができる。【0020】例えば、ポリエチレンテレフタレートに3〜10重量倍のエチレングリコールを加え、温度220〜270℃、圧力常圧〜0.7MPa下で加熱反応(解重合)させ、得られた反応生成物に着色物、油脂分を除去する脱色吸着処理、カチオンおよびアニオンを除去する脱イオン処理、晶析精製処理、さらに分子蒸留の精製処理を施すことで高純度の精製ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートが得られる。この精製処理において、エチレングリコールは溶媒として作用する。そして、この処理で発生した粗エチレングリコールは通常、精製されて前記ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造工程にリサイクルされる。この間に、エチレングリコールの一部は熱履歴によってジエチレングリコールに転換し、さらにその一部はビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートとのエステル交換によってDEGエステルとして存在することになる。【0021】ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する工程においては、不純物の製造工程での蓄積を防止するために若干の系外への排出は必要であるが、循環使用されるエチレングリコールは、不純物の除去操作のための溶媒としても使用され、その一部はエチレングリコールの精製処理を行ってエチレングリコールより沸点の高いジエチレングリコールを除去することが必要である。【0022】このように、前記グリコリシスおよび精製処理工程では、エチレングリコールの加熱縮合によってジエチレングリコールが副生する。そして、このジエチレングリコールはテレフタル酸成分と結合してDEGエステルを生成する。このため、精製処理過程で発生する粗エチレングリコールには、前記工程で生成したDEGエステルが濃縮された形で含まれることになり、その除去が必要である。【0023】ここで、ジエチレングリコールのテレフタル酸エステル(DEGエステル)とは、テレフタル酸の少なくとも一方のカルボキシル基にジエチレングリコールがエステル結合したものであり、主としてテレフタル酸の一方のカルボキシル基にジエチレングリコールがエステル結合し、他方のカルボキシル基にエチレングリコールがエステル結合したエステル(エチレングリコール/ジエチレングリコールテレフタレート)からなるものである。【0024】この精製処理で発生する粗エチレングリコールは蒸留精製処理に付されて精製エチレングリコールと釜残としての蒸留残渣に分けられ、該精製エチレングリコールは再度ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート製造工程、例えば解重合工程に戻される。粗エチレングリコールの蒸留精製は従来から知られている方法、例えば減圧蒸留法で行うことができる。例えば、粗エチレングリコールは、先ず水分のような低沸点成分を蒸発留去し、次いで同じ蒸留塔または別の蒸留塔を用いてエチレングリコールを蒸発留去する方法で蒸留精製することができる。この場合、釜残として取出された残渣はそのまま本発明の方法に供することが出来るが、場合によっては該残渣をさらに遊離のジエチレングリコールを蒸発除去する処理に掛けてから本発明の方法に供してもよい。【0025】前記蒸留残渣は蒸留条件にもよるが、通常、重量単位で15〜25%のDEGエステル、50〜60%のBHET、10〜20%のエチレングリコール、5〜10%のジエチレングリコール、2〜5%のオリゴマーおよび0.1〜0.5%のイソフタル酸エステル等を含有している。この中、ジエチレングリコール、DEGエステルおよびイソフタル酸エステル以外の成分(すなわち、BHET、オリゴマーおよびエチレングリコール)は有効成分として使用でき、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート製造工程に戻しても製品品質に何ら影響を与えないものである。【0026】本発明においては、蒸留残渣中に存在するDEGエステルをエステル交換触媒の存在下で過剰のエチレングリコールを用いてエステル交換を行って、該DEGエステルのジエチレングリコール成分をエチレングリコール成分と入れ替え、遊離するジエチレングリコール(DEG)をエチレングリコール(EG)とともに蒸発させ、系外に留去させ、代わりに新しいEGを供給することによって、DEGの含量の少ないBHETを主成分とするテレフタル酸のエチレングリコールエステル(以下、EGエステルということがある)となし、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート製造プロセスへリサイクルする方法によって、廃棄物の減少と工程収率の向上を図ることができる。【0027】本発明におけるエステル交換反応は、蒸留残渣中の全固形物重量に対して、好ましくは2〜20重量倍、より好ましくは3〜10重量倍、さらに好ましくは4〜8重量倍のエチレングリコール(EG)および好ましくは0.1〜1.0重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%のエステル交換触媒を用い、これらを前記蒸留残渣と混合し、加熱下に、例えば常圧〜0.5MPa、好ましくは0.1〜0.2MPaの圧力下でEGを沸騰蒸発させながら行う。その際、蒸発量に見合った量のEGを添加して反応液中の固形分濃度をほぼ一定に維持するのが好ましい。これによって、エステル交換を効率的に行うことが出来る。また、この蒸発によって、遊離のジエチレングリコールも分圧に比例した割合でエチレングリコールとともに蒸発して系外に留去される。反応時間としては、好ましくは0.5〜3時間、さらには1〜2時間が好ましい。このエステル交換反応は回分式で行っても連続式で行ってもよい。連続式で行う場合には、反応液の滞留時間を、好ましくは0.5〜3時間、さらには1〜2時間として行うのが好ましい。このエステル交換反応によって、DEGエステルの含有量を、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下にすることができる。【0028】前記エステル交換触媒としては、公知の触媒を用いることができ、例えば酢酸コバルト、酢酸亜鉛、酢酸マンガンなどの酢酸塩、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラートなどのアルカリ金属化合物等を好ましく挙げることができる。これら触媒は、その種類によって活性度に違いがあるが、0.1〜1.0重量%の範囲で触媒活性度に見合った使用量を決定すればよい。また、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート製造工程で用いる解重合触媒と同じ種類の触媒を用いるのが工程管理上望ましい。そして、脱カチオン処理の負荷を大幅に増加させるものや脱イオン性の低いものは好ましくない。因みに、DEGエステルのビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートへの変換が円滑に進行する触媒が望ましいほか、重金属の使用は当然回避しなければならない。【0029】前記蒸留残渣中のDEGエステルの量は、蒸留精製に供する粗エチレングリコール中の遊離のジエチレングリコール(DEG)量、pH、エチレングリコール回収精製系の滞留時間等によって変化し、DEG量が多い場合、pHが低く酸性度が強い場合、また滞留時間が長い場合には多くなる。【0030】因みに、粗エチレングリコールを第1蒸留塔に供給して水分等の低沸点物を塔頭から除き、塔底物を第2蒸留塔に供給して該第2蒸留塔の塔頭から精製されたエチレングリコールを回収し、塔底から抜出した液を濃縮器に供給して残存するエチレングリコール、ジエチレングリコールを蒸発回収する方法において、エチレングリコールよりも沸点の高いジエチレングリコールが、残渣中のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートとのエステル交換反応によってDEGエステルに移行するために高いDEGエステル含有量となる。【0031】本発明においては、このDEGエステル生成反応を逆方向に進めるためにエステル交換触媒および大量のエチレングリコールを用いてエステル交換反応を行う必要がある。【0032】本発明においては、エステル交換反応は回分式で行っても連続式で行ってもよく、またエステル交換反応器から蒸発する蒸気はエチレングリコール蒸留塔へ直接供給するか、あるいは一旦凝縮器によって凝縮してから粗エチレングリコールと混合してエチレングリコール精製供給液として用いてもよい。【0033】前記エステル交換反応は粗エチレングリコールの精製が連続式で行われるのであれば連続式、回分式で行われるのであれば回分式で行うのが望ましい。【0034】本発明においては、エステル交換反応器へ供給する、エチレングリコール回収蒸留釜残量に見合った量のエステル交換反応生成物を、該反応器から取出してビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート製造のための、国際公開WO01/10812号公報に記載の方法における脱イオン処理工程より前の工程へ戻すことが好ましい。特に、解重合反応工程へ戻すことが好ましく、この場合エステル交換触媒を解重合触媒としても使用することができる。【0035】本発明においては、反応器から取出したエステル交換反応生成物をさらに晶析精製の処理に付して精製することで、ジエチレングリコール、DEGエステルおよびイソフタル酸エステルのビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート製造工程へのリサイクル量を大幅に減少することができる。このことは、エチレングリコールに対するジエチレングリコール、DEGエステルおよびイソフタル酸エステルの溶解度がビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートやオリゴマーよりも数倍も高いことに起因している。【0036】この晶析処理は、反応液を0〜40℃、さらには10〜30℃に冷却しながら3〜7時間、さらには3.5〜5時間掛けて行うのが好ましい。濾過は従来から知られている方法で行うことが出来る。この晶析処理ではジエチレングリコール、DEGエステルおよびイソフタル酸エステルは主として濾液側に存在し、濾過したケーク中のDEGエステルの含有量を3重量%以下、さらには2重量%以下にすることができる。濾過したケークはビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート製造工程の脱イオン処理工程より前の工程へ戻すことが好ましい。特に、解重合反応工程へ戻すことが好ましい。【0037】本発明によれば、蒸留残渣中のDEGエステルをEGエステル、特にビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに変換し、かつジエチレングリコール量を低減できるから、従来廃棄処分にしていたものを有効活用することが出来るようになり、この為ポリエチレンテレフタレート成形品、特にPETボトルから高純度のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造する方法の効率をより一層高めることができる。【0038】【実施例】以下に実施例を用いて本発明をさらに説明する。なお、例中の特性は下記の方法で測定した。(1)蒸留残渣、反応液の組成分析1) 成分の分離、量測定試料5mgをクロロフォルムに溶解して約1,000ppmの溶液を調製し、島津製作所製のHPLC LC−6型にて、4.6mmID×250mmLのシリカ−60のカラムによって温度40℃、流速1.0ml/分、注入量5μl、移動相としてジクロロメタン/ジオキサンを用い、測定波長240nmで紫外線吸光光度計の検出器を用いて測定した。2) LC/MSによる同定HPLCのピークを同定するために、LC/MS測定を行った。【0039】日本電子製SX−102A型を用い、上記と同じ条件で測定同定した。(2) ジエチレングリコールの量試料1gと30mlのメタノールおよび酢酸亜鉛2mgを100mlのカリウス管中200℃でメタノリシスした液を用いてクロマトグラフで測定した。【0040】実施例1ボトルから回収したポリエチレンテレフタレート65kg、エチレングリコール430kgおよび苛性ソーダ225gを1m3の解重合槽に仕込み、圧力0.13MPa、温度220℃で2時間解重合反応を行い、85℃まで冷却し活性炭による脱色処理、カチオン交換体およびアニオン交換体による脱イオン操作を120リットル/時で行い、ついで15℃で5時間晶析を行い、固液分離し流下薄膜蒸発器で140℃、133Paで留去した後、205℃、12Paで分子蒸留を行って精製ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を製造した。この製造工程から発生した粗エチレングリコールを回収し、塔頂温度143℃、圧力13.3KPaでの蒸留に付し、塔底から釜残として蒸留残渣を取出した。【0041】この蒸留残渣、すなわちBHET55重量%、DEGエステル23重量%、オリゴマー9重量%、ジエチレングリコール6重量%、エチレングリコール7重量%を含む蒸留残渣1kg、エチレングリコール5kgおよび触媒として苛性ソーダ3gを10リットルのジャケット付きオートクレーブに仕込み、圧力0.15MPa、温度224℃でエステル交換反応を開始し、0.5MPaの圧力に調節しながら沸騰蒸発して圧力調節弁の出口から出る蒸気を凝縮器で凝縮して留出量を500kg/時になるように加熱調節し、同時に新しいエチレングリコールを500kg/時加えて90分間反応した後反応を停止した。【0042】得られた反応生成物中の全固形分の分析を行ったところ、BHET94重量%、DEGエステル3.0重量%、オリゴマー2.7重量%の結果が得られ、前記エステル交換反応によるオリゴマーおよびDEGエステルの大幅な減少とBHETの増加が確認された。【0043】続いて、反応生成物を攪拌しつつ2℃/分の速度で冷却して15℃まで下げ、晶析を4.2時間行った後、晶析スラリーをNo.5Aの濾紙によって吸引濾過して36重量%の濾液成分を含む潤滑ケークを得た。このケーク中の全固形分の分析を行ったところ、BHET96.7重量%、DEGエステル1.6重量%、オリゴマー1.1重量%、MHET0.6重量%の結果が得られた。反応生成物の晶析によってさらにDEGエステルが大幅に減少することが確認された。【0044】比較例1実施例1で用いた蒸留残渣10kg、ボトルから回収したポリエチレンテレフタレート65kg、エチレングリコール430kgおよび苛性ソーダ225gを1m3の解重合槽に仕込み、圧力0.13MPa、温度220℃で2時間解重合反応を行い、85℃まで冷却し脱色、脱イオン操作を120リットル/時で行い、ついで15℃で5時間晶析を行い、固液分離し流下薄膜蒸発器で140℃、133Paで留去した後、温度205℃、圧力12Paで分子蒸留を行ってBHETを得た。【0045】得られたBHETの組成分析を行ったところ、BHET86.3重量%、DEGエステル9.6重量%、オリゴマー2.3重量%、MHET1.8重量%の結果が得られた。粗エチレングリコールの蒸留精製処理で釜残として取り出された蒸留残渣をエステル交換処理することなしに、BHETの製造工程に戻すと、極めて純度の低いBHETしか得られないことが確認できた。【0046】【発明の効果】本発明によれば、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造工程で発生する粗エチレングリコールを蒸留精製に付し、その際生じる残渣に含まれるジエチレングリコールのテレフタル酸エステルを有効成分のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに変換することで、該残渣をビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造工程へリサイクルすることを可能にし、製品ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの収率を高める方法を提供することができる。 固形分として少なくともジエチレングリコールのテレフタル酸エステルを含む、エチレングリコール回収蒸留釜残に、該蒸留釜残中の全固形分に対して2〜20重量倍のエチレングリコールおよび0.1〜1.0重量%のエステル交換触媒を加え、加熱下に該テレフタル酸エステルとエチレングリコールのエステル交換反応を行ってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートとジエチレングリコールを生成するとともに生成したジエチレングリコールを常圧〜0.5MPaの圧力下でエチレングリコールとともに蒸発留出させることを特徴とするエチレングリコール回収蒸留釜残の処理方法。 エステル交換反応時に、圧力を常圧〜0.5MPaに調節しながらエチレングリコールとともにジエチレングリコールを蒸発留出させつつ留出量にほぼ等しい量のエチレングリコールを連続的にないし間歇的に新たに供給して反応液の固形分濃度をほぼ一定に保持する、請求項1に記載の方法。 蒸留釜残中の、ジエチレングリコールのテレフタル酸エステルの含有量が10〜30重量%である、請求項1または2に記載の方法。 エステル交換反応の時間が0.5〜3時間である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 蒸留精製処理により回収蒸留釜残が発生したエチレングリコールが、ポリエチレンテレフタレートをエチレングリコールを用いて解重合した反応生成物からビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを精製分離する過程で生じたものである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。