生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_環境ストレス耐性を強化した魚類
出願番号:2002031384
年次:2006
IPC分類:A01K 67/027,C12N 5/10,C12Q 1/02,C12N 15/09


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山下 倫明 尾島 信彦 北条 弥作子 JP 3823148 特許公報(B2) 20060707 2002031384 20020207 環境ストレス耐性を強化した魚類 独立行政法人水産総合研究センター 501168814 藤野 清也 100090941 吉見 京子 100113837 藤野 清規 100076244 山下 倫明 尾島 信彦 北条 弥作子 20060920 A01K 67/027 20060101AFI20060831BHJP C12N 5/10 20060101ALI20060831BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20060831BHJP C12N 15/09 20060101ALN20060831BHJP JPA01K67/027C12N5/00 BC12Q1/02C12N15/00 A A01K 67/027 ZNA C12N 5/10 C12Q 1/02 C12N 15/09 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/Geneseq PubMed JSTPlus(JDream2) 中央水研ニュース, (1998), [20], p.2-4 第4回マリンバイオテクノロジー研究発表会講演要旨集, (1995), 4, p.80(404E) 化学と生物, (1996), 34, [4], p.215-216 5 2003230328 20030819 11 20021113 柴原 直司 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、環境ストレスに対する耐性が向上したトランスジェニック魚類に関する。また、本発明は、このような魚類に由来する組織断片または培養細胞に関する。さらに本発明は、このような魚類、組織断片または培養細胞を用いて、環境応答またはストレス耐性を解析する方法に関する。【0002】【従来の技術】従来、人為的に環境ストレス耐性魚類を作出する場合、高温または塩耐性の系統の選抜や交配などの手法が用いられてきたが、選抜法には多くの時間が必要であり、一方、交配法は限られた種間にしか用いることができないため、高い環境ストレス耐性を有する魚類の作出は困難であった。近年のバイオテクノロジーの進歩に伴い、魚類に異種生物由来の特定の遺伝子を導入するトランスジェニック技術などの手法を用いて、成長ホルモン遺伝子を導入して成長ホルモンの血中濃度を高めることにより、成長のよい魚類の作出が試みられており、トランスジェニックサーモンが実用化のレベルにまで達している(Hew, C and Fletcher, G. L. : Transgenic Fish, World Scientific, 1992, p. 1-274, Singapore) 。また、魚類の血液中に不凍タンパク質を発現させたトランスジェニック魚は耐冷性が向上することが報告されている(Wang, R., Zhang, P., Gong, Z., and Hew, C. L. : Mol. Mar. Biol. Biotechnol., 4, 20-26 (1995))。一方、これまでに、魚類をとりまく水圏環境における高温、紫外線、放射線、環境汚染物質、浸透圧、感染などの環境ストレス耐性にストレス応答性遺伝子群が関与することが知られているが、これらストレス応答性遺伝子群の機能を高める技術が確立されておらず、ストレス耐性を強化したトランスジェニック魚類は作出されていない。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、このような魚類をとりまく水圏環境における高温、紫外線、放射線、環境汚染物質、浸透圧、感染などの環境ストレスに対する耐性に関与する遺伝子を見出した。従って、本発明は、このストレス耐性に関与する有用な遺伝子を用いて遺伝子工学的手法によってストレス耐性を強化したトランスジェニック魚類を作出することを目的とする。すなわち、本発明は、ストレス応答性遺伝子群のプロモーターに結合して転写活性化を促す転写因子に着目してこの遺伝子を導入することにより作出される、高温、紫外線、放射線、環境汚染物質、浸透圧、感染などの環境ストレスに対する耐性が向上したトランスジェニック魚類を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなトランスジェニック魚類の組織断片または培養細胞を提供することを目的とする。さらに本発明は、このようなトランスジェニック魚類またはそれに由来する組織断片または培養細胞を用いて環境応答またはストレス耐性を解析する方法を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、ストレス耐性の獲得に働くストレス応答性遺伝子群を制御する転写因子に着目し、この転写因子の遺伝子を魚類に導入して、過剰に発現させることにより、ストレス耐性が著しく向上した魚類を作出することに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、環境ストレスに対する耐性が向上したトランスジェニック魚類に関する。なお、本発明におけるトランスジェニック魚類は、遺伝子工学的手法によって作出されたトランスジェニック魚類ばかりではなく、その魚類と同じ形質を有する子孫をも含むものである。本発明における環境ストレスに対する耐性の向上は、ストレス応答性遺伝子群を活性化する転写因子遺伝子を発現させることによってなされるものである。従って、本発明のトランスジェニック魚類は、ストレス応答性遺伝子群の転写を活性化する転写因子をコードする遺伝子発現系を含んでいる。このようなストレス応答性遺伝子群の発現は、プロモーターの下流にストレス応答性遺伝子群を活性化する転写因子をコードする遺伝子あるいはその一部を欠失した変異体遺伝子を連結したベクターを組み込むことによってなされ得る。また、このような転写因子をコードする遺伝子の一部を欠失した変異体として、ゼブラフィッシュの熱ショック転写因子遺伝子のGlu-351 からAla-402 までの DNAを欠失した変異体(Del 1) またはSer-236 からAla-402 までのDNA を欠失した変異体(Del 2) を挙げることができる。これらのトランスジェニック魚類を作出することは種々の魚類、例えば、サケ、ニジマス、ティラピア、コイ等の養殖魚で行われるがなかでもゼブラフィッシュが作出が容易である。また、本発明は、このようなトランスジェニック魚類に由来する組織断片または培養細胞に関する。さらに本発明は、これらのトランスジェニック魚類またはその組織断片、培養細胞を用いて環境応答またはストレス耐性を解析する方法に関する。【0005】【発明の実施の形態】本発明のトランスジェニック魚類は、まず(1) ストレス応答性遺伝子群の転写を活性化する転写因子遺伝子を単離し、(2) この転写因子遺伝子を発現するベクターを構築し、(3) このベクターを魚類に導入することにより行われる。これらのトランスジェニック魚類の作出工程について説明する。(1) 転写因子遺伝子の単離1) 本発明のトランスジェニック魚類は、ストレス応答性プロモーターに結合し、その下流のストレス応答性遺伝子群を活性化させる転写因子の遺伝子を導入することによって作出したものであり、ストレス応答性遺伝子群が高いレベルに発現し、環境ストレスに対する耐性が強化されている。本発明において用いられる転写因子遺伝子は脊椎動物に普遍的に分布しており、ゼブラフィッシュ由来の熱ショック転写因子(HSF, heat shock transcription factor)のほか、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、アフリカツメガエル等動物由来のHSF をコードする遺伝子を利用することができる。また、重金属応答性転写因子MTF-1 (Saydam N, Georgiev O, Nakano MY, Greber UF, Schaffner W,; J.Biol. Chem. 276, 25487-25895, 2001 年) 、浸透圧応答性エレメントに作用する転写因子 (Ko BC, Turck CW, Lee KW, Yang Y, Chung SS.: Biochem. Biophys. Res. Commun. 270, 52-61,2000年: Ferraris JD, Williams CK, Jung KY, Bedford JJ, Burg MB, Garcia-Perez A.: J.Biol.Chem. 271, 18318-18321, 1996; Ruepp B, Bohren KM, Gabbay KH: Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.93, 8624-8629, 1996 年; インターフェロン調節因子IRF (Au WC, Moore PA, Lowther W, Juang YT, Pitha PM: Proc, Natl. Acad.Sci. U.S.A. 92, 11657-11661, 1995 年) 等はいずれもストレス応答性遺伝子のプロモーター領域に位置するストレス応答性エレメントに結合して転写活性化する機構をもっており、本発明に利用できる。転写因子をコードするcDNAまたはゲノムDNA をポリメラーゼ連鎖反応(PCRともいう)を行い、増幅することにより得ることができる。また HSFはストレス条件下で構造が活性型に変化することが知られているが、この活性を制御する活性化領域を欠失した変異型HSFは強い転写活性化能を有している(山下倫明:ストレス応答に関する遺伝子「魚類のDNA .分子遺伝学的アプローチ(青木宙・隆島史夫・平野哲也編)」、恒星社恒星閣、1997年 p. 219-243)。そこで、このような変異型 HSFもストレス耐性を強化したトランスジェニック魚の作出に利用できる。【0006】2) 転写因子のストレス応答性エレメント結合能および転写活性化能の測定転写因子のDNA 結合能は、in vitro転写翻訳キット(Promega 社)による合成法、大腸菌発現系を用いる方法で発現させたタンパク質を用いて、ゲルシフトアッセイ(Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) を行うことにより確かめることができる。ゲルシフトアッセイは、DNA とタンパク質との相互作用を調べる方法である。すなわち、32P などで標識したストレス応答性エレメントを含むDNAプローブと前記の転写因子とを混合してインキュベーションした後、この混合物を電気泳動し、ゲルを乾燥する。次に、オートラジオグラムをとり、DNA プローブとタンパク質との結合による複合体が遅れて泳動されたバンドを検出する。本発明において、転写因子がエレメント配列に特異的に結合していることは、トランスジェニック魚の細胞・組織抽出物に含まれる転写因子とDNA プローブとの間で生じる複合体のバンドを検出することを調べることにより確認することができる。【0007】転写因子の転写活性化能は、ストレス応答性エレメントを含むプロモーターの下流に、GFP 遺伝子、β- ガラクトシダーゼ遺伝子などのレポーター遺伝子に連結したレポータープラスミドを構築し、魚類細胞または受精卵に導入したのち、レポーター遺伝子の発現量を測定する。ここで転写因子を同時に発現させることにより、レポーター遺伝子の発現量の上昇が見られれば、転写因子が、ストレス応答性エレメントの配列を介して転写を活性化していることがわかる。【0008】(2) 発現ベクターの構築この転写因子遺伝子を、動物細胞・魚類細胞で発現するプロモーターの下流に連結した発現ベクターを作製する。例えばpTARGET ベクター(Promega社) 、pBK-CMV ベクター・pBK-RSVベクター(Stratagene 社) など市販の動物細胞用発現ベクターまたは魚類で恒常的にまたは誘導的に発現する性質をもつβアクチンプロモーター、EF1 αプロモーター、メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーターなど(山下倫明:比較内分泌ニュース、No. 88, p.22-29, 1998 、木下政人・田中実・山下倫明:蛋白質・核酸・酵素、第45巻17号、p.2954〜2961、2001) を遺伝子発現系に利用することができる。ただし、魚類で機能することが知られている限り、上記プロモーターに限定されるものではない。なお、これらのプロモーターは、当該プロモーターを含むDNA の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いて、ゲノムDNA を鋳型として、PCR による増幅反応によって得ることができる。【0009】(3) トランスジェニック魚の作製上記の転写因子遺伝子発現系の発現ベクターを魚類に導入することにより、ストレス耐性を強化したトランスジェニック魚を作製することができる。魚類への遺伝子導入法は、卵母細胞または受精卵へのマイクロインジェクション法、ウイルスベクター感染法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法などが挙げられる(山下倫明:比較内分泌ニュース、No. 88, p. 22-29, 1998) 。マイクロインジェクション法を用いる場合、山下の方法(山下倫明:比較内分泌ニュース、No.88 、p.22-29, 1998)に従ってトランスジェニック魚類を作製することができる。【0010】また、必要に応じて転写終結を指令するターミネーターを転写因子遺伝子の下流に連結することもできる。ターミネーターとしては、SV40ウイルス由来や人工合成の遺伝子ターミネーターなどが用いられる。魚類で機能することが知られているターミネーターであればこれに限定されるものではない。また、必要に応じてプロモーター配列と転写因子遺伝子の間に、遺伝子の発現を増強させる機能を持つイントロン配列やエンハンサー配列を導入することができる。【0011】さらに、効率的に目的のトランスジェニック魚を選別するために、有効な選択マーカー遺伝子を転写因子遺伝子と併用することが好ましい。その際に使用する選択マーカーとしては、抗生物質ネオマイシンに対する抵抗性を魚類細胞に付与するネオマイシン耐性遺伝子および胚・魚体に緑色蛍光をもたらす緑色蛍光タンパク質GFP遺伝子などから選ばれる1つ以上の遺伝子を使用することができる。転写因子遺伝子および選択マーカー遺伝子は、単一のベクターに一緒に組み込んでも良いし、それぞれ別個のベクターに組み込んだ2種類の組換えDNAを用いてもよい。【0012】一般に、魚類に導入した外来遺伝子は、宿主魚類のゲノム中に組み込まれるが、その場合、導入されるゲノム上での位置が異なることにより導入遺伝子の発現が異なる現象が見られる。導入遺伝子がより強く発現しているトランスジェニック魚は、導入遺伝子に特異的なPCRプライマーを用いる逆転写PCR法、導入遺伝子のDNA断片をプローブとして用いるノーザン法などにより宿主魚体中に発現しているmRNAレベルを検定する方法または遺伝子産物に対する特異抗体を用いるウエスタンブロット法、免疫組織化学染色法などによって宿主魚体中で発現するタンパク質を検出する方法などによって、選抜することができる。【0013】このようにして作製されたトランスジェニック魚のストレス耐性は次の方法で試験される。(3) ストレス耐性試験作出したトランスジェニック魚のストレス耐性は、野生型魚を対照として、トランスジェニック魚を致死的なストレス条件、たとえば紫外線、放射線、高温ストレス、塩分、病原微生物感染などに in vivoで暴露したのち、生残率を経時的に測定することによって、トランスジェニック魚がストレス耐性をもつことを調べることができる。【0014】さらに本発明は、これらの魚類に由来する組織断片または培養細胞に関する。この培養細胞組織は、次の方法で作製され、ストレス応答に関するバイオアッセイに利用される。【0015】(4) 培養細胞組織の作製トランスジェニック魚の胚および生体各組織から調製した培養細胞および組織断片をin vitroで培養することは、すでに確立されている魚類の組織細胞培養手法を用いることにより可能である(動物細胞工学ハンドブック、日本細胞工学会編、p. 1-342、2000年、朝倉書店)。このようなトランスジェニック魚由来の培養細胞および組織断片は、転写因子およびストレス応答性タンパク質を過剰に発現していることから、in vitroでの培養条件でのストレス応答性が、野生型魚由来の培養細胞・組織断片と異なっている。ストレス応答性の異なるトランスジェニック魚由来の培養細胞および組織断片は、温度耐性、紫外線・放射線耐性、薬剤耐性、感染防御などのストレス応答に関するバイオアッセイに幅広く利用できる。【0016】次に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるべきではない。【実施例】(1) トランスジェニック魚類作製用組換え遺伝子の調製山下によって単離され、DDBJ/GenBank/EMBL データベースにAccession No. AB062117として登録されているゼブラフィッシュHSF 遺伝子を利用した。まず、ゼブラフィッシュ1日胚から全RNA をTRIZOL試薬(GibcoBRL社)を用いて、抽出した。このRNA を鋳型に用いて、cDNA合成キット(アマシャムファルマシア社)でcDNAを合成した。このcDNAをPCR 反応の鋳型DNA として、センスプライマー(5'-TCTAGAATTCCATATGGAGTATCACAGTGTGGGGCCCGGA-3' 、配列表配列番号1、下線部は制限酵素切断部位を示す) およびアンチセンスプライマー (5'-TTAGTGGTGGTGGTGGTGGTGTGATAGTTTGGGGTCTTCGGGAAC-3' 、配列表配列番号2) を用いる PCR法(ExTaq-PCR キット、宝酒造株式会社製)によってゼブラフィッシュHSFcDNA (1.6kbp)を得た。このPCR 産物を1 %アガロースゲルを用いる電気泳動によって分離したのち、DNA 断片を調製して、pTARGET Mammalian Expression Vector System(Promega 社)を用いてpTARGET ベクター(Promega 社)に連結し、大腸菌DH5 α株(GibcoBRL社)に形質転換したのち、スーパーブロス培地で大量培養し、塩化セシウム密度勾配超遠心法(Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) によって精製した。このプラスミドDNA の塩基配列をDNA シークエンサー(ABI373型、パーキンエルマー社)によって分析することによって、pTARGET ベクターのヒトサイトメガロウイルスCMV プロモーターの下流にゼブラフィッシュHSFcDNA が連結されていること、HSFcDNA のC 末端に6 残基のヒスチジンから構成されるHis タグが挿入されていることを確認した。【0017】また、このベクターを鋳型として、ゼブラフィッシュHSF のアミノ酸配列のうち熱感受性ドメインを欠失させた変異体分子遺伝子Del 1(Gln-351 からAla-402 までを欠失したHSF 遺伝子)およびDel 2 (Ser-236からAla-402 までを欠失したHSF 遺伝子)を作製し、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター(CMV promoter)の下流に連結した。【0018】その具体的方法を以下に説明する。センスプライマー(配列表配列番号1)とDel 1 用のアンチセンスプライマー(5'-GGACTAGTTCGCTGGGAGGCGGAGTCAGGGCGGA-3' 、配列表配列番号3、下線部はSpe I 切断部位) またはDel 2 用の(5'-GGACTAGTTCCAGCGAGTACTGACGAGAGAATTT-3' 、配列表配列番号4、下線部はSpe I 切断部位) との間でHSFcDNA の前半部分をExTaq-PCR キットを用いて増幅したのち、制限酵素Spe I で切断した。これらのDNA を1%アガロースゲルを用いる電気泳動によって分離してDNA 断片を精製した。次に、センスプライマー(5'-GGACTAGTGGCGTCTGATGTGGATCTGGAC-3' 、配列表配列番号4、下線部はSpe I 切断部位) とM13 リバースプライマー(5'-AGCGGATAACAATTTCACACAGGAAAC-3'、配列表配列番号5) との間でHSFcDNA の後半部分をExTaq-PCR キットを用いて増幅したのち、制限酵素SpeIで切断し、このDNA を1 %アガロースゲルを用いる電気泳動によって分離して、DNA 断片を精製した。【0019】以上の方法で調製した、SpeI部位もつHSFcDNA の前半部および後半部をDNA Ligation Kit(宝酒造株式会社)を用いて連結した。さらに、上述のセンスプライマー(配列表配列番号1) およびプライマー(配列表配列番号5) を用いるPCR 法(ExTaq-PCR キット、宝酒造株式会社製)によってHSFcDNA 変異体遺伝子Del 1 およびDel 2 を増幅した。このPCR 産物を制限酵素EcoRI およびNotIで切断してから、1 %アガロースゲルを用いる電気泳動によって分離してDNA 断片を精製した。これをEcoRI およびNotIで切断したpBK-CMV (Stratagene社)にDNA ライゲーションキット(宝酒造株式会社)を使って連結した。これらHSF 変異体をコードする発現ベクターは、pHSFDel1およびpHSFDel2と名付けた (図1) 。これらの塩基配列はDNA シークエンサー(ABI 373 型、パーキンエルマー社)によって分析することによって確認した。ゼブラフィッシュHSFcDNA 変異体Del 1 およびDel 2 の塩基配列は、それぞれAccession number AB062120 およびAB062119 としてDDBJ/GenBank/EMBL データベースに登録されている。【0020】(2) トランスジェニック魚類の作製トランスジェニック魚類の作製は、山下の方法( 山下倫明:比較内分泌ニュース、No. 88, p. 22-29, 1998)に従って行った。マイクロインジェクション用のDNA 溶液には、精製したpHSFDel1およびpHSFDel2の各ベクターを40マイクロg/mlになるように滅菌蒸留水で希釈した。ゼブラフィッシュの受精卵1細胞期の細胞質にベクターのDNA 溶液をマイクロインジェクション法により注入した。DNA を導入した受精卵は滅菌水中で28.5℃で培養した。孵化した仔魚には培養したゾウリムシ、アルテミア幼生および市販配合餌料(テトラミンTM、テトラ社)を与えて成魚まで飼育した。成熟した遺伝子導入魚と野生型魚を交配して、F1世代の受精卵を得た。この受精卵からDNA をDNA 精製キット(Promega 社)を用いて調製し、センスプライマー(配列表配列番号1) およびアンチセンスプライマー(配列表配列番号2) を用いるPCR 法により、PCR 産物のDNA 断片の鎖長がDel 1 の場合1.4 kbp 、Del 2 の場合1.0 kbp であることを1 %アガロースゲル電気泳動法によって同定し、導入遺伝子が次世代へ伝達されていることを確認した。【0021】さらに、導入したHSF 遺伝子にコードされるタンパク質のC 末端にはHis タグ配列が導入されているので、His タグに対する特異抗体を用いて、この遺伝子産物を特異的に検出することができる。F1世代の受精卵20個を試料としてSDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動でタンパク質を分離したのち、ニトロセルロース膜(アドバンテック東洋株式会社)に転写し、この膜を抗 Hisタグ抗体(ロッシュ社)を用いるウエスタンブロット法(ECL ウエスタンブロッティング検出システム、アマシャムファルマシアバイオテク株式会社製)によって、His タグを有するタンパク質を特異的に検出することによって、導入遺伝子から発現したHSF タンパク質のバンドを確認した( 図2) 。このようにして、導入遺伝子が次世代(F1世代)に伝達され、高レベルに発現しているトランスジェニックゼブラフィッシュの系統を選別した。【0022】(3) ストレス耐性試験トランスジェニック魚のF2世代の胚を用いてストレス耐性試験を行った。通常の胚発生の適温28.5℃で培養した受精後24時間胚を実験に用いた。オートクレーブで滅菌した水道水を培養に用いた。直径10cmの細胞培養シャーレに受精24時間後の受精卵30個と 4mlの滅菌水を入れ、ふたをはずして紫外線照射装置(波長254 nm、UVクロスリンカーCL-1000 型、フナコシ株式会社)で、60 mJ/cm2 の条件下で胚に紫外線を照射したのち、6穴細胞培養プレート(Corning 社)で1穴当たり30個の受精卵と2mlの滅菌水を入れて、28.5℃で培養した。紫外線照射後1日毎に生残率を測定した。同条件で3回実験を繰り返し、その平均値を図に示した。pHSFDel1またはpHSFDel2を導入したトランスジェニック魚では、照射後3日後でも80%以上の胚が生き残った (図3) 。一方、野生型魚での紫外線照射3日後の生残率は33%であった。このことから、HSF を発現するトランスジェニック魚はストレス耐性を有することが明らかとなった。【0023】【発明の効果】本発明により、ストレス応答性エレメントに結合し該エレメント下流の遺伝子の転写を制御するタンパク質を過剰に発現させることにより、環境ストレス(高温、紫外線、放射線、浸透圧、環境汚染物質、感染など)に対する耐性が向上したトランスジェニック魚類が提供される。【0024】【配列表】【0025】【0026】【0027】【0028】【0029】【図面の簡単な説明】【図1】トランスジェニック魚の作製に用いられる遺伝子発現系の模式図を示す。【図2】 HSF遺伝子を導入したトランスジェニックゼブラフィッシュにおける導入遺伝子の発現を示す。下段:抗His-Tag抗体を用いるウエスタンブロットによってゼブラフィッシュ胚においてヒスチジンタグを有するHSFタンパク質の発現を示す。上段:HSFの過剰発現によって誘導されたストレスタンパク質HSP70の発現を示す。【符号の説明】レーン1および2:HSF遺伝子発現系pHSFDel1を導入したゼブラフィッシュ系統F1世代の胚。レーン3および4:HSF遺伝子発現系pHSFDel2を導入したゼブラフィッシュ系統F1世代の胚。レーン5:野生型魚。【図3】 HSF遺伝子を導入したトランスジェニックゼブラフィッシュにおけるストレス耐性の測定結果を示す。【符号の説明】(Wild-type): 野生型魚、(Del 1) : HSF遺伝子発現系pHSFDel 1 を導入したゼブラフィッシュ系統F1世代の胚、(Del 2) : HSF遺伝子発現系pHSFDel 2 を導入したゼブラフィッシュ系統F1世代の胚。 ゼブラフィッシュ由来の熱ショック転写因子のアミノ酸配列のうち熱感受性ドメインを欠失した変異体遺伝子をプロモーターの下流に連結した発現ベクターを組み込むことによって得られる環境ストレスに対する耐性が向上したトランスジェニック魚類。 変異体遺伝子が、ゼブラフィッシュの熱ショック転写因子のアミノ酸配列のうち熱感受性ドメインのGln-351からAla-402までのDNAを欠失した変異体遺伝子またはSer-236からAla-402のDNAを欠失した変異体遺伝子である請求項1に記載のトランスジェニック魚類。 請求項1または2に記載のトランスジェニック魚類に由来する組織断片または培養細胞。 請求項1または2に記載のトランスジェニック魚類を用いて、in vivoで環境応答またはストレス耐性を解析する方法。 請求項3記載の組織断片または培養細胞を用いて、in vitroで環境応答またはストレス耐性を解析する方法。


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