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タイトル:特許公報(B2)_固相化免疫試薬の安定化方法およびこれに用いる安定化溶液
出願番号:2002018245
年次:2007
IPC分類:G01N 33/531,A61J 3/00,G01N 33/543


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渡辺 誠 宮野 昭弘 佐々木 泰治 JP 3914442 特許公報(B2) 20070209 2002018245 20020128 固相化免疫試薬の安定化方法およびこれに用いる安定化溶液 栄研化学株式会社 000120456 渡辺 誠 宮野 昭弘 佐々木 泰治 20070516 G01N 33/531 20060101AFI20070419BHJP A61J 3/00 20060101ALI20070419BHJP G01N 33/543 20060101ALI20070419BHJP JPG01N33/531 BA61J3/00 300CA61J3/00 300ZG01N33/543 501K G01N 33/531 G01N 33/543 A61J 3/00 特開平07−198721(JP,A) 特表平07−500417(JP,A) 特開昭55−098359(JP,A) 10 2003215127 20030730 6 20050121 白形 由美子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、固相化免疫試薬の安定化方法に関し、特に固相化した抗原または抗体を乾燥状態で長期間免疫活性を低下させることなく安定に保存することができる固相化免疫試薬の安定化方法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来から、抗原や抗体を不溶性担体に結合させた固相化免疫試薬が多くの免疫学的測定用試薬として利用されている。例えば、抗体をポリスチレンのような不溶性担体に結合させた固相化免疫試薬は、サンドイッチ酵素免疫測定に有効である。【0003】このような固相化免疫試薬は、例えば牛血清アルブミンなどの血清蛋白質を含む水溶液中に浸漬されていたが、活性が低下したり、沈殿を生成したりすることが知られている。また、この固相化免疫試薬は、取り扱い上凍結乾燥できれば有利であるが、凍結乾燥させると活性を保持できないことも知られている。【0004】このような状況下にあって、凍結乾燥による安定化方法においては、牛血清アルブミンなどの蛋白質を安定化剤として含むリン酸緩衝液等と共に固相化免疫試薬を凍結乾燥する方法もまた知られている(特開昭59−206761号公報)。【0005】また、固相上に固定保持された抗体を糖類、牛血清アルブミンおよび低級多価アルコールを含有させた溶液中に浸漬した後、乾燥した固相化免疫試薬が提案されている(特開昭60−35263号公報)。【0006】しかしながら、これらの方法においては、牛血清アルブミンなどの蛋白質に由来する白色の粉体が共存するため、その粉体が溶解し難く、また乾燥状態にされた蛋白質等が飛散し易い等の問題があった。【0007】この問題を解決するため、糖類、キレート剤等を含有する安定化溶液で処理することにより、安定化された固相化免疫試薬が提案されている(特開昭61−241665号公報)。更に、デキストラン、ピロリドンカルボン酸およびポリビニルアルコールを含有させた安定化溶液で処理したものなどが提案されている(特開昭62−34509号公報)。【0008】しかしながら、上記の安定化溶液では、固相化免疫試薬を乾燥状態で長期間に亘って安定に維持できないという問題があった。このため、カゼイン、ホエイ蛋白、カゼイン分解物を含有する固相化免疫試薬の安定化溶液が提案されている(特開平9−80051号公報)。【0009】【発明が解決すべき課題】しかしながら、上記固相化免疫試薬をもってしても、未だ満足できる安定化された固相化免疫試薬は得られておらず、更に高い安定性を維持できる固相化免疫試薬の出現が強く望まれていた。【0010】従って本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであって、乾燥状態で長期間に亘って高い安定性を維持できる固相化免疫試薬の安定化方法およびこれに用いる安定化溶液を提供することを目的とする。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定濃度の糖類と特定濃度の緩衝液とを組み合わせることによって、乾燥状態で長期間に亘って高い安定性を維持できる固相化免疫試薬が得られることを見出し、本発明を完成した。【0012】本発明の固相化免疫試薬の安定化方法は、固相上に固定保持された抗原または抗体を20〜80%の範囲にある糖類および0.5〜2mol/L(以下、単にMと略す)の範囲にある緩衝液に浸漬した後、乾燥することを特徴とする。以下、本発明について更に詳細に説明する。【0013】本発明に使用する糖類としては、グルコース、ガラクトース、キシロース、フラクトースなどの単糖類、トレハロース、シュークロース、ラクトース、マルトースなどの二糖類、ラフィノースなどの三糖類(オリゴ糖)、デキストラン、デキストリン、グルコン酸などの多糖類が挙げられる。これらの糖類は単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。これらの糖類の中でも、特にトレハロース、シュークロースなどの二糖類が好ましい。【0014】この糖類の濃度は、20〜80%、好ましくは30〜60%、特に45%が最も好ましい。その濃度が20%未満になると、十分な安定化効果が得られず、その一方で80%を超えると粘度が高くなり好ましくない。。【0015】本発明に用いる緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液など生化学で一般的に使用できる緩衝液の中から適宜選択することができるが、特にリン酸緩衝液が好ましい。【0016】この緩衝液の濃度は、0.5〜2M、好ましくは0.8〜1.5M、特に1Mが最も好ましい。その濃度が0.5M未満になると、安定化効果が著しく低下し、逆に2Mを超えてもこれ以上安定化効果を向上させることはできない。この緩衝液のpHは4.0〜10、好ましくは6.0〜8.0である。【0017】固相化免疫試薬に用いられる不溶性担体としては、免疫測定用として用いられているものの中から適宜選択すれば良い。不溶性担体の具体例としては、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成高分子化合物、多孔性ガラス、ガラスビーズ、磁性粒子などの無機物質が挙げられる。また、不溶性担体の形態としては、チューブ、プレート、マイクロタイタープレート、微粒子などが挙げられる。【0018】これら不溶性担体粒子への抗原または抗体の結合は、公知の方法に従って行うことができる。その具体例としては、例えば、グルタルアルデヒド、ビスジアゾベンジジン、トリレンジイソシアネート、ジフロロニトロベンゼン、カルボジイミド類、キノン類、塩化クロム、タンニン酸等のいわゆるカップリング剤を用いた化学的結合法、抗原または抗体と担体を水溶性溶媒中(例えば、水、生理食塩水、各種緩衝液など)で接触させる物理的吸着法等が挙げられる。【0019】抗原または抗体を結合した固相化免疫試薬の安定化溶液中での浸漬処理時間は、10分から10時間程度で良いが、好ましくは30分から2時間程度である。また、固相化免疫試薬を浸漬した後の乾燥は、自然乾燥、通気乾燥、真空乾燥、凍結乾燥のいずれの方法でも良い。【0020】本発明は、20〜80%の範囲にある糖類および0.5〜2Mの範囲にある緩衝液を含有することを特徴とする固相化免疫試薬の安定化溶液を提供することができる。この場合、糖類や緩衝剤は、上述したものの中から適宜選択すれば良い。【0021】本発明により、前記固相化免疫試薬の安定化技術を応用した免疫学的測定方法を提供することができる。この免疫学的測定方法としては、例えばラテックス凝集反応法、金コロイド凝集反応法、イムノクロマトグラフ法、またはELISA法等を挙げることができる。いずれの測定方法においても、固相化免疫試薬の安定化溶液に特定濃度の糖類および特定濃度の緩衝液を含有させることによって、固相化免疫試薬を高度に安定化し、測定値の低下が抑制される。【0022】【発明の効果】本発明は、特定濃度の糖類と特定濃度の緩衝液とを組み合わせることによって、乾燥状態でも長期間に亘って高い安定性を維持できる固相化免疫試薬を提供することができる。従って、本発明によれば、乾燥状態で使用が可能となるため、免疫測定法における操作性を向上させることができる。【0023】【実施例】以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。【0024】実施例 固相化免疫試薬の安定化効果(1)固相用抗体の作製前立腺特異抗原(PSA)に対するマウスモノクローナル抗体を含む腹水を40%の飽和硫安で3回分画し、10mMのリン酸緩衝液(PBS:pH7.2)で一晩透析し、10,000rpmで10分間遠心して沈殿物を除き、0.45μmのフィルターでろ過した後、1%のIgG濃度に調整し、−80℃で保存した。【0025】(2)抗体の固相化10mMのPBS(pH7.2)を用いて、5μg/mLのIgG濃度の抗体溶液を、ポリスチレンビーズ固相1個当たり、0.2mL用意し、ビーズと抗体溶液とを混合した。37℃で4時間静置で加温した後、10mMのPBS(pH7.2)で5回洗浄した。抗体固相化ビーズとブロック液(1%のカゼインナトリウム-100mMのPB pH7.2)とを混合し、4℃で一晩静置した。【0026】(3)固相の乾燥ブロック液を全量捨て、乾燥Buffer(1Mの PB−45%のトレハロース)を添加し、室温で30分以上放置した。固相が浮いてくるので、10分ごとに攪拌し、乾燥Bufferを全量捨て、ろ紙で吸水した後、凍結乾燥機にて一晩乾燥した。【0027】(4)残存活性測定法上記で得られた固相化免疫試薬を温度30℃、湿度90%に設定した恒温恒湿器内に保存し、1週間後に取り出した。次に、加湿試験前と加湿試験後の固相を用いて、化学発光酵素免疫測定法により既知濃度の抗原物質と反応させた。得られた測定値(発光値)を基に、加湿試験前の発光値に対する加湿後の発光値の比率を求め、これを残存活性とした。その結果を図1に示す。図1に示すように、残存活性が98%と著しく高く、長期間に亘って安定性を維持できることが判る。【0028】比較例実施例で用いた乾燥Buffer(1Mの PB−45%のトレハロース)に代えて、乾燥Bufferとしてそれぞれ1MのPB−10%のトレハロース、0.1MのPB−45%のトレハロース、0.1MのPB−10%のトレハロース、0.01MのPB−45%のトレハロース、0.01MのPB−10%のトレハロースを用いた以外は、実施例と全く同様な方法で残存活性を測定した。その結果を図1に示す。図1に示すように、比較例では、実施例と比べて著しく安定性が低下することが判る。【図面の簡単な説明】【図1】乾燥Bufferの組成による安定性の変化を示すグラフである。 固相上に固定保持された抗原または抗体を30〜60%の範囲にある糖類および0.8〜1.5mol/Lの範囲にある緩衝液に浸漬した後、乾燥することを特徴とする固定化免疫試薬の安定化方法。 糖類が単糖類、二糖類、三糖類および多糖類から成る群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の固定化免疫試薬の安定化方法。 二糖類がトレハロース、シュークロース、ラクトースおよびマルトースから成る群から選択される少なくとも1種である請求項2記載の固定化免疫試薬の安定化方法。 緩衝液がリン酸緩衝液、トリス緩衝液、およびグッド緩衝液から成る群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の固定化免疫試薬の安定化方法。 固相が不溶性担体である請求項1記載の固定化免疫試薬の安定化方法。 不溶性担体がポリスチレン、ポリエチレン、多孔性ガラス、ガラスビーズ、磁性粒子である請求項5記載の固定化免疫試薬の安定化方法。 30〜60%の範囲にある糖類および0.8〜1.5mol/Lの範囲にある緩衝液を含有することを特徴とする固定化免疫試薬の安定化溶液。 糖類が単糖類、二糖類、三糖類および多糖類から成る群から選択される少なくとも1種である請求項7記載の固定化免疫試薬の安定化溶液。 二糖類がトレハロース、シュークロース、ラクトースおよびマルトースから成る群から選択される少なくとも1種である請求項8記載の固定化免疫試薬の安定化溶液。 緩衝液がリン酸緩衝液、トリス緩衝液、およびグッド緩衝液から成る群から選択される少なくとも1種である請求項7記載の固定化免疫試薬の安定化溶液。


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