タイトル: | 特許公報(B2)_第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の安定化方法 |
出願番号: | 2002017515 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 209/90,C07C 211/63 |
青木 雅裕 原 靖 JP 3966000 特許公報(B2) 20070608 2002017515 20020125 第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の安定化方法 東ソー株式会社 000003300 青木 雅裕 原 靖 20070829 C07C 209/90 20060101AFI20070809BHJP C07C 211/63 20060101ALI20070809BHJP JPC07C209/90C07C211/63 C07C 209/90 C07C 211/63 特開平08−325212(JP,A) 特開昭59−134752(JP,A) 特表平04−503941(JP,A) 2 2003221367 20030805 5 20041202 山田 泰之 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物の安定化方法に関する。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物は、チタン酸化物を剥離する有用な物質である。【0002】【従来の技術】過酸化水素は、様々な化合物に配位して過酸化水素化物を形成する。過酸化水素化物とは、結晶水における水のように過酸化水素が化合物に配位したものを言う。過酸化水素化物として、フッ化カリウム、炭酸ルビジウム、尿素の過酸化水素化物が知られている。【0003】一方、第四級アンモニウム塩にも過酸化水素が配位し、過酸化水素化物を形成する。【0004】第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物は、白金などの金属と接触しても分解しない、アミン類と反応しないなど過酸化水素とは化学的性質が全く異なっている。第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物は、チタン酸化物を水に可溶化する有用な物質である。チタン酸化物は、チタン金属の表面、半導体製造工程又はLCDモジュール製造工程における不純物、シリカ、アルミナ、セリアなどの金属酸化物の不純物として存在しているが、これらを除去する際、チタン酸化物、特に二酸化チタンが水に難溶なため除去する事が困難である。第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物はこの難溶なチタン酸化物を溶解除去するのに用いられる。【0005】この第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物は安定な化合物であるが、加熱によって分解し、室温でも除々に配位した過酸化水素が脱離するなどして分解する。【0006】これまで、過酸化水素の安定剤としては、リン酸、サリチル酸、アセトアニリド、1,10−フェナントロリン、尿酸など多くの安定剤が知られている。しかし、過酸化水素の安定剤であるサリチル酸や尿酸を第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の安定剤として使用すると、第四級アンモニウム塩に配位した過酸化水素化物から過酸化水素が脱離するのを抑制できず、逆に脱離を促進し、分解してしまう。このように、第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の分解は過酸化水素の分解と全く異なるため、従来知られている過酸化水素の安定剤は、第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の分解を促進してしまう。そのため、第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の安定化方法が求められていた。【0007】【発明が解決しようとする課題】上述したように、有用な化合物である第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の安定化の方法は全く知られていない。【0008】 そのため、本発明の目的は、第四級アンモニウム塩であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物を安定化する方法を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、第四級アンモニウム塩であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物の安定化方法について鋭意検討した結果、過酸化水素の安定剤として知られている、1,10−フェナントロリンを添加する事により、従来知られている、過酸化水素の安定剤が過酸化水素化物の分解を促進するのとは逆に、第四級アンモニウム塩であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物を安定化できることを見出し、本発明を完成させるに至った。【0010】 すなわち、本発明は1,10−フェナントロリンを添加することを特徴とする第四級アンモニウム塩であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物の安定化方法である。【0011】以下に本発明をさらに詳細に説明する。【0012】 本発明の方法において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに対し、結晶水における水のように過酸化水素が配位したものを言う。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物は、結晶の形で、空気中、室温で存在することも可能である。【0014】 過酸化水素化物はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドと過酸化水素を混合し、加熱するか、もしくは触媒を加えて混合することで得られる。【0015】 本発明の方法において、1,10−フェナントロリンの有効添加量はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物及び/又はその溶液への溶解性等を考慮して当事者が任意に添加する事ができるが、添加量としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物に対して、0.001〜1モル%の範囲で添加する事が好ましい。添加量がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物に対して0.001モル%未満の場合、安定化の効果が工業的に実用的でないほど低下し、1モル%を超えて添加しても1,10−フェナントロリンが溶解しない時があるため、安定剤を増やした効果が小さい場合がある。【0016】【実施例】本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0017】 製造例(テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物の製造)15%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下表現を簡略化するためにTMAHと略す)水溶液590g(0.97mol)を80℃に加熱し、これに35%過酸化水素水150g(1.54mol)を滴下した。過剰の過酸化水素の分解による発泡がなくなるまで加熱し、その後、減圧下、水を留去し、TMAHの過酸化水素化物を得た。このTMAHの過酸化水素化物に水を加え、25%水溶液にした。【0018】(分析方法)充填剤にビニルポリマーを基剤とした極性有機溶媒系ゲルろ過用充填剤(東ソー(株)製、商品名TSKgelα2500)を充填したカラムを2本直列に接続し、溶離液にアセトニトリル+40%水+0.5%アンモニアを用いた。この溶離液を流速0.8ml/minで流しながら試料を20μl注入し、RIおよびUV検出器を用いて分析を行った。なお、分析方法は、特願2001−336140号に記載の方法に従った。【0019】実施例1製造例1で製造した25%TMAHの過酸化水素化物水溶液120.5g(TMAHの過酸化水素化物0.24mol含有)に1,10−フェナントロリン43.4mg(0.24mmol)を添加し、攪拌下、室温で3週間保存した。3週間後のTMAHの過酸化水素化物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により上記分析方法にて分析したところ、TMAHの過酸化水素化物は全く分解していなかった。【0020】実施例2製造例1で製造した25%TMAHの過酸化水素化物水溶液51.4g(TMAHの過酸化水素化物0.1mol含有)に1,10−フェナントロリン17.2mg(0.1mmol)を添加し、攪拌下、65℃で24時間加熱した。24時間後のTMAHの過酸化水素化物を上記と同様にHPLCにより分析したところ、TMAHの過酸化水素化物の17%が分解していた。【0021】比較例1製造例1で製造した25%TMAHの過酸化水素化物を攪拌下、室温で2週間保存した。2週間保存後のTMAHの過酸化水素化物水溶液を上記と同様にHPLCで分析したところ、TMAHの過酸化水素化物の70%が分解していた。【0022】比較例2製造例1で製造した25%TMAHの過酸化水素化物を攪拌下、65℃で3時間加熱した。3時間後のTMAHの過酸化水素化物水溶液を上記と同様にHPLCで分析したところ、TMAHの過酸化水素化物は全て分解していた。【0023】【発明の効果】 本発明の安定化方法はチタン酸化物剥離剤として有用なテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物の分解を抑制する方法であり、その工業的価値は高い。 テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物に、1,10−フェナントロリンを添加する事を特徴とする第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の安定化方法。 テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物に対して、1,10−フェナントロリンを0.001〜1モル%添加する事を特徴とする請求項1記載のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの過酸化水素化物の安定化方法。