タイトル: | 特許公報(B2)_高生残性ラクトバチルス属細菌およびその利用 |
出願番号: | 2002016602 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 1/20,A23C 9/123 |
園池 耕一郎 栃谷 薫 JP 4076351 特許公報(B2) 20080208 2002016602 20020125 高生残性ラクトバチルス属細菌およびその利用 株式会社ヤクルト本社 000006884 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 小野 信夫 100086324 園池 耕一郎 栃谷 薫 20080416 C12N 1/20 20060101AFI20080327BHJP A23C 9/123 20060101ALI20080327BHJP JPC12N1/20 AA23C9/123 C12N 1/00- 1/38 A23C 9/123 JSTPlus(JDream2) AGRICOLA/BIOSIS/CABA(STN) CA/SCISEARCH/BIOENG(STN) CONFSCI/SCISEARCH(STN) WPIDS/CROPU/MEDLINE(STN) 特公昭47−029995(JP,B1) 特公昭61−049954(JP,B1) J. Dairy Sci.,1999年,Vol. 82,23-31 Microbiology,2001年,Vol. 147,1863-1873 J. Dairy Sci.,1999年,Vol. 83,1905-1911 日本乳酸菌学会誌,2001年,Vol. 12 No. 1,28-35 6 FERM BP-7707 FERM BP-1366 2003219861 20030805 12 20040813 中村 正展 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、培養終期における菌の死滅が少ない高生残性ラクトバチルス属細菌、当該細菌を利用した発酵乳の製造方法、当該方法で製造した発酵乳を含有する発酵乳製品および当該細菌の取得方法に関する。【0002】【従来の技術】乳酸菌の発酵により得られる発酵乳等の発酵乳製品は、整腸作用と様々な生理効果を有する食品である。これらは、乳酸菌で発酵させた乳を適宜シロップや水で希釈するなどして製造されるものであり、乳酸による爽やかさ、バランスのとれた甘さ等がおいしさの主要因となる。また、その両者の濃度を高めることでコクのある良好な風味が付与される。このため、乳酸菌の培養は乳酸酸度が可能な限り高まるまで行うことが望ましいが、一方、乳酸菌の長時間の培養は生菌数の低下を招くため、生菌数を重視する発酵乳等の製造において、この二律背反の問題を解決することが求められている。【0003】このため、乳酸菌の培養の際にクロレラエキス、酵母エキス等の増殖促進物質を培地に添加して、短時間に酸度を上昇させる試みがなされているが、このような場合には、培養初期の増殖性は良好となるものの、培養終期には、自ら産生した酸の影響により菌の死滅が却って促進されてしまい、結果的に生菌数の低下が生じてしまうことも多い。【0004】また、長時間培養によって得られた発酵乳に、各種糖質などの添加物を加え製品化した場合、製品保存後の菌の生残性が悪く、製品規格の維持や生理作用の発現のためには問題がある。【0005】このため、乳酸菌に変異処理を施すなどして酸耐性の高い乳酸菌等のスクリーニングが行われているが、従来の方法では、十分に生菌数を維持し、製品化後の生残性を高めることは困難であった。【0006】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、培養終期における高酸度状態でも高い生菌数を有し、製品化後の生残性の高い乳酸菌を得ること、すなわち、培養終期の低pH域での生残性が高く、長時間培養に適した高生残性乳酸菌を得ることをその課題とするものである。【0007】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を行ったところ、培養終期における死滅速度の低いラクトバチルス属細菌は長時間培養において、高い酸産生能および生菌数を維持できることを見出した。そして、このような性質を有するラクトバチルス属細菌は、至適培養温度より高い温度で培養することにより得られる耐性株から、死滅速度の低い変異株をスクリーニングすることにより得られることを見出した。【0008】また、このような培養後期における菌の死滅が少ない高生残性乳酸菌を用いて、乳を発酵させることにより得られる発酵乳は、高い生菌数を有するとともに、製品保存時の生残性の高いことを見出し本発明を完成した。【0009】すなわち、本発明は異性化糖を3質量%以上含み、無脂乳固形分濃度が16質量%である乳培地において培養したときに、酸度22.5における生菌数が1×109cfu/ml以上であることを特徴とする高生残性ラクトバチルス属細菌を提供するものである。【0010】また、本発明は上記の高生残性ラクトバチルス属細菌により乳を発酵することを特徴とする発酵乳の製造方法を提供するものである。【0011】更に、本発明は上記の方法により得られた発酵乳を含有することを特徴とする発酵乳製品を提供するものである。【0012】また更に、本発明はラクトバチルス属細菌を生育可能な温度範囲の限界に近い高温で継代培養して得られた菌株から、異性化糖を3質量%以上含み、無脂乳固形分濃度が16質量%である乳培地において培養した時に、酸度22.5における生菌数が1×109cfu/ml以上であり、酸度21における死滅速度が0.01以下である菌株を選抜することを特徴とする高生残性ラクトバチルス属細菌の取得方法を提供するものである。【0013】【発明の実施の形態】本明細書中において、死滅速度とは、乳酸菌をブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖を固形分換算で3質量%(以下、単に「%」ともいう)以上含み、無脂乳固形分濃度が16質量%である乳培地で培養した際に、培養時間、酸度および生菌数を経時的に測定し、この測定値より、横軸に培養時間および縦軸に酸度とする回帰式1を作成し、更に横軸に培養時間および縦軸に生菌数の対数とする回帰式2を作成し、この回帰式2の導関数に、回帰式1より算出された所望の酸度の培養時間を代入して得られる数値の絶対値を意味する。この死滅速度の数値が小さいとき、その酸度における菌の死滅する割合が少ないことを示す。【0014】また、本明細書中において酸度とは、培養液(被験サンプル)9gを中和する0.1mol/lの水酸化ナトリウム溶液の量(ml)のことである。上記無脂乳固形分16%の乳培地において酸度22.5は、ほぼpH3.65に対応し、酸度21はほぼpH3.7に対応する。【0015】更に、酸度22.5におけるラクトバチルス属の生菌数(酸度21における死滅速度)を測定する条件等を具体的に示すと、ブドウ糖果糖液糖(ブリックス75°)10%、無脂乳固形分濃度16%、遊離オレイン酸0.0023%、マンガン0.08ppmを含む乳培地に菌を接種し、接種した菌の至適温度近辺で培養を行い、菌数、酸度変化を経時的に測定し、酸度22.5に達した時点の生菌数を測定し、死滅速度を算出する。【0016】本発明の高生残性ラクトバチルス属細菌は、異性化糖を3質量%以上含み、無脂乳固形分濃度が16質量%以上である乳培地において培養したときに、酸度22.5における生菌数が1×109cfu/ml以上となる菌であるが、中でも培地中のオレイン酸含量が0.002%〜0.0025%、特に0.002%〜0.0023%であり、マンガン含量が0.05ppm〜0.4ppm、特に0.05ppm〜0.1ppmである場合の酸度22.5における生菌数が1×109cfu/ml以上となる菌が優れたものとして挙げられる。酸産生能、生残性等のラクトバチルス属の生育特性は、培地中の微量成分量、具体的にはオレイン酸およびマンガン含量に影響を受ける。すなわち、一般にオレイン酸含量が低いと菌の生残性は低下し、マンガン含量が低いと菌の増殖能は低下するが、前記条件下において高い生菌数および遅い死滅速度を有する株は、オレイン酸含量が低い等の比較的劣悪な培地条件で長時間培養した場合であっても優れた生菌数を有し、製品化後も高い生残性を維持するものとなる。このため、本発明の高生残性ラクトバチルス属細菌は、オレイン酸含量の低い培地において発酵される飲食品等への適用が好ましい。具体的には、オレイン酸含量の低い脱脂乳培地に対して本菌株を用いた場合に、特に優れた効果が発揮される。【0017】本発明の高生残性ラクトバチルス属細菌は、例えば、次のような方法によって得ることができる。まず、親株となるラクトバチルス属細菌をILS培地等の培地に接種し、これを菌の生育が可能な温度範囲の限界に近い高温で培養する。次いで、得られたコロニーを継代して同様の操作を繰り返し、高温培養に強い菌株を選択する。【0018】次いで、このようにして選択された菌株を、異性化糖を3質量%以上含み、無脂乳固形分濃度が16質量%である乳培地にて培養し、酸度22.5における生菌数が1×109cfu/ml以上であり、酸度21における死滅速度が0.01以下である菌株を選抜することにより、培養終期に菌の死滅が少ない菌株、すなわち高生残性ラクトバチルス属細菌が得られる。【0019】この取得方法において、親株となるラクトバチルス属細菌は特に限定されず、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ガセリ(L.gasseri)、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L.buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(L.casei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)、ラクトバチルス・ガリナラム(L.gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L.amylovorus)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L.rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L.kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L.crispatus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(L.bulgaricus)等が用いられるが、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノーザス、ラクトバチルス・パラカゼイ等酸耐性の高いものは、長時間培養された場合でも高い生菌数を維持できるため好ましく、特にラクトバチルス・カゼイは製品化後の菌の生残性改善の効果が高いため好ましい。【0020】また、この方法において使用されるILS培地等での培養温度は、ラクトバチルス属細菌の生育が可能な温度範囲の限界に近い高温、すなわち、至適温度よりも3℃〜6℃高い温度に設定すればよく、具体的にラクトバチルス・カゼイであれば40℃〜43℃、好ましくは42℃の培養温度であり、ラクトバチルス・アシドフィルスであれば44℃〜46℃、ラクトバチルス・ブルガリクスであれば46℃〜49℃である。【0021】更に、この方法において使用される乳培地は、異性化糖を3質量%以上、好ましくは3%〜7.5%含み、無脂乳固形分濃度が16質量%であるものが好ましい。また、本発明の高生残性ラクトバチルス属細菌を取得するに当たっては、この乳培地のオレイン酸濃度をオレイン酸及びその誘導体(以下、「オレイン酸等」という)で調整することが好ましい。オレイン酸等としては、特に限定されるものではなく、遊離のオレイン酸やオレイン酸の無機塩の他、一般的に乳化剤として用いられているシュガーエステル、グリセリド、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル等において、その脂肪酸部分がオレイン酸であるものを挙げることができる。具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、グリセリンオレイルエステル、ポリグリセリンオレイルエステル、ソルビタンオレイルエステル、プロピレングリコールオレイルエステルおよびショ糖オレイルエステル等が挙げられる。中でも、オレイン酸モノグリセリドや、ポリグリセリンモノオレイルエステルは、培養終了時菌数の増加効果、生残性改善効果が高いため好ましく、また、溶解性等の物性の面からはショ糖オレイルエステル等が好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用することができる。これらのオレイン酸等の添加量は特に限定されないが、菌の生残性を高めるためには、オレイン酸の終濃度として0.01%〜0.04%、特に0.015%〜0.025%が好ましい。【0022】更にまた、この乳培地のマンガン濃度をマンガンを含む塩類や各種植物等のエキス類、具体的には硫酸マンガン等のマンガン塩の1種以上や生姜エキス、茶類エキスまたはネギエキスから選ばれた1種以上(以下、「エキス類」という)により調整することもできる。茶類エキスとしては、例えば緑茶、紅茶、ウーロン茶、ジャスミン茶、グアバ茶等を水、酸性水等の水性溶媒もしくはエタノール、酢酸エチル、グリセリン、プロピレングリコールエステル等の有機溶媒またはこれらの混合溶媒で抽出した抽出物等が挙げられ、中でも水抽出物を用いれば、ラクトバチルス属細菌の増殖性が高まり、オレイン酸と組合わせて用いた場合の培養終期における死滅速度が低下するため好ましく、特にpH5.0以下の酸性水抽出物を用いることが好ましい。また、ネギエキスとしては、ネギをそのままあるいは細断あるいは破砕等の処理を施して、上記茶類エキスと同様の溶媒で抽出したものが、生姜エキスとしては、生姜をそのままあるいは脱皮、破砕等の処理を施して同様の溶媒で抽出したものが挙げられ、両者とも茶類エキスと同様に水性溶媒、特に酸性水を溶媒とした抽出物を用いることが好ましい。これらマンガン塩あるいはエキスの添加量は特に限定されないが、菌の増殖性を高めるためには、マンガンの終濃度として0.05ppm〜1ppm、特に0.08ppmとすることが好ましい。【0023】次に、本発明の方法を用い、親株としてラクトバチルス・カゼイ YIT9029(FERM BP−1366:以下、「YIT9029」という)から高生残性ラクトバチルス属細菌を取得する方法の具体例を示す。まず、親株であるYIT9029を下記組成のILS培地に10%接種し、42℃で7時間培養する。これを20代継代を繰り返し、最終段階で生じたコロニーからシングルコロニーを拾い、高温培養に強い菌株を選択する。次いでこれらを異性化糖を3質量%以上含み、無脂乳固形分濃度が16質量%である乳培地にて培養し、酸度22.5における生菌数が1×109cfu/ml以上であり、酸度21における死滅速度が0.01以下である菌株を選抜し、高生残性ラクトバチルス属細菌を得た。【0024】< ILS培地 >( 成 分 ) ( % )Trypticase 1Yeast抽出物 0.5Tryptose 0.3リン酸(I)カリウム 0.3リン酸(II)カリウム 0.3クエン酸(III)アンモニウム 0.2酢酸ナトリウム・3H2O 0.17L−システイン塩酸塩 0.2Tween80 0.1塩類溶液(下記塩類を100mlの水に溶解したもの) 0.5MgSO4・7H2O 11.5gFeSO4・7H2O 0.68gMnSO4・7H2O 2.4g【0025】このようにして得られた高生残性ラクトバチルス属細菌の菌株の一つをラクトバチルス・カゼイ YIT10003(以下、「YIT10003」という)と命名し、FERM BP−7707として、平成13年8月14日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(郵便番号305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託した。【0026】上記YIT10003の菌学的性質を下記表1に示す。なお、本発明のYIT10003は親株であるYIT9029と菌学的性質においてほぼ一致するが、上記したように、異性化糖を3質量%以上含み、無脂乳固形分濃度が16質量%である乳培地において培養したときに、酸度22.5における生菌数が1×109cfu/ml以上であり、更に、酸度21における死滅速度が0.01以下であるという特徴を有する。【0027】【表1】【0028】上記のようにして得られた高生残性ラクトバチルス属細菌により乳を発酵させて得られる発酵乳は、菌の生残性が高いものであり、例えば特段の工夫をしなくても従来以上の生菌数を保証できるものである。なお、ここで、乳とは、牛乳(全脂乳)およびその加工品である脱脂乳、その他の山羊乳、羊乳等の獣乳等、更には植物性の豆乳等であり、発酵乳とは、前記乳を上記ラクトバチルス属細菌を用いて発酵して得られる発酵物のことである。【0029】本発明の発酵乳の製造にあたっては、本発明の高生残性ラクトバチルス属細菌以外の微生物を併用することも可能である。このような微生物としては、例えば上記列挙したラクトバチルス属細菌のうち培養終期における死滅速度があまり低くないものやラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ダイアセチラクチス(Lactococcus lactis subsp. diacetilactis)等のラクトコッカス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptcoccus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium.breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium. bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium.longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium.infantis)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(Bifidobacterium.catenulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium.animaris)ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(Bifidobacterium. pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium.adolescentis)等のビフィドバクテリウム属細菌、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyses cerevisiae)、トルラスポラ・デルブルエッキー(Torulaspora delbrueckii)、キャンジダ・ケフィア等のサッカロマイセス属、トルラスポラ属、キャンジダ属等に属する酵母等が好ましいものとして挙げられる。中でも上記ラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス属細菌およびラクトコッカス属細菌から選ばれる乳酸菌のうち1種以上を併用して発酵乳製品を製造すれば、高い嗜好性を得られるため継続的な飲用が容易であり好ましい。【0030】この発酵乳の製造において、前記した高生残性ラクトバチルス属細菌の取得方法で用いられる乳培地と同様に、発酵時の発酵基質中のオレイン酸量を、オレイン酸等で調整することが好ましい。これらのオレイン酸等の添加量は特に限定されないが、菌の生残性をより高めるためには、オレイン酸の終濃度として0.01%〜0.04%、特に0.015%〜0.025%が好ましい。また、この発酵乳の製造において、前記したスクリーニングで用いられる乳培地と同様に、発酵基質中のマンガン量をエキス類等で調整することもできる。これらエキス等の添加量は特に限定されないが、菌の増殖性を高めるためには、マンガンの終濃度として0.05ppm〜0.4ppm、特に0.05ppm〜0.3ppmとすることが好ましい。【0031】また、上記発酵乳を使用し、発酵乳製品を製造することができる。この発酵乳製品とは、前記発酵乳をそのままあるいは適宜加工した後、容器に充填するなどした所謂市販製品を指す。その形態としては、プレーンタイプ、ソフトタイプ、フルーツフレーバータイプや、ハードタイプ等の固形状、ドリンクタイプの液状等いずれの形態であっても良く、豆乳を原料とする発酵豆乳であっても良い。の製品とすることも可能である。中でも、発酵乳製品であれば、菌の生残性が高いため好ましい。【0032】この発酵乳製品の製造に際しては、発酵乳以外の各種の食品素材、すなわち各種糖質や乳化剤、増粘剤、増粘剤、甘味料、酸味料、果汁等を適宜添加することができる。具体的には、蔗糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール類、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン、ローカストビーンガム等の増粘(安定)剤、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の酸味料、レモン果汁、オレンジ果汁、ベリー系果汁等の果汁類等が挙げられる。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類やカルシウム、鉄、マンガン、亜鉛等のミネラル類等を添加することが可能である。【0033】また、発酵乳製品の製造は常法に従えばよく、例えば、殺菌した乳培地に本発明のラクトバチルス属細菌を接種培養し、これを均質化処理して発酵乳を得、次いで、別途調製したシロップ溶液を添加混合し、ホモゲナイザー等で均質化し、更にフレーバーを添加して最終製品に仕上げればよい。【0034】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。【0035】実 施 例 1ラクトバチルス属細菌のスクリーニング:ILS培地に、ラクトバチルス・カゼイYIT9029(FERM BP−1366)を10%接種し、42℃で7時間培養した。これを更にILS培地で20代継代を繰り返し、最終段階で生じたコロニーからシングルコロニー20個(A〜T)を選抜した。これら20株および親株であるYIT9029株をそれぞれ単独で10%還元脱脂乳培地で3代継代し、スターターとした。これをそれぞれ10%ブドウ糖果糖液糖(ブリックス75°)を含み、無脂乳固形分濃度が16%である乳培地(遊離オレイン酸濃度0.0023%、マンガン濃度0.08ppm)で培養した。この培養中に酸度および生菌数を経時的に測定し、酸度22.5に達するまでの時間およびそのときの生菌数ならびに酸度21における死滅速度を算出した。その結果を表2に示す。【0036】【表2】【0037】表2に示す菌株のうち、酸度22.5における生菌数が1×109cfu/ml以上であり、酸度21における死滅速度が0.01以下である菌株が10株得られた。これらのうちL株をラクトバチルス・カゼイ YIT10003とした(以下、「YIT10003」という)。【0038】実 施 例 2発酵乳の製造:下記に示す3種類の組成の乳培地を98℃で90分間殺菌し、YIT9029およびYIT10003をそれぞれ単独で0.5%接種し、37℃で酸度22.5まで培養して経時的に酸度および生菌数を測定した。その結果を表3に示した。【0039】< 培 地 >A培地:10%ブドウ糖果糖液糖を含む無脂乳固形分濃度16%の脱脂粉乳(オレイン酸終濃度0.0023%、マンガン濃度0.08ppm)マンガン(Mn)添加A培地:ウーロン茶エキスでA培地のマンガン濃度を調整(オレイン酸終濃度0.0023%、マンガン濃度0.18ppm)B培地:10%ブドウ糖果糖液糖を含む無脂乳固形分濃度16%の脱脂粉乳(オレイン酸終濃度0.004%、マンガン濃度0.03ppm)【0040】【表3】【0041】表3からYIT10003を用いて酸度を22.5まで培養するのに要した時間は、親株であるYIT9029と比べて何れの培地でも短いことが示された。また、酸度22.5での生菌数も、親株より多いことが分かった。特に、マンガン添加A培地(オレイン酸含量が低く、マンガン含量が高い培地)を用いた場合の結果は良好であった。【0042】実 施 例 3発酵乳の保存試験:実施例2と同様のA培地を98℃で90分間殺菌し、YIT10003を0.5%接種し、37℃で6日間培養して発酵乳(生菌数2.6×109cfu/ml)を製造した。得られた発酵乳をブドウ糖果糖液糖(ブリックス75°)溶液で5倍希釈し(糖の終濃度15%)、ポリスチレン容器に充填、密封し、15℃で14日間静置保存した。この発酵乳(乳製品乳酸菌飲料)の製造直後および保存14日目に生菌数を測定したところ、14日間ほぼ一定の生菌数が維持された。【0043】【発明の効果】本発明のラクトバチルス属細菌は、培養終期における生菌数が多く、死滅速度が低い生残性の高いものである。【0044】従って本発明の高生残性ラクトバチルス属細菌で乳を発酵させた発酵乳およびその発酵乳を含有する発酵乳製品は、保存中の生菌数の低下や死滅速度の増加が抑制され、製品規格の維持や生理作用の発現に優れたものとなる。【0045】また、オレイン酸類等の特別の増殖因子を加えなくても高い生残性が保証できるので、発酵乳の製造面においても有利である。以 上 以下の菌学的性質を有し、かつ、異性化糖を3質量%以上含み、無脂乳固形分濃度が16質量%である乳培地においてラクトバチルス・カゼイの至適温度近辺で培養したときに、酸度22.5における生菌数が1×109cfu/ml以上であることを特徴とするラクトバチルス・カゼイYIT10003(FERM BP−7707)。 乳培地が、ブドウ糖果糖液糖(ブリックス75°)10%、無脂乳固形分濃度16%、遊離オレイン酸0.0023%、マンガン0.08ppmを含むものである請求項第1項記載のラクトバチルス・カゼイYIT10003(FERM BP−7707)。 請求項第1項または第2項記載のラクトバチルス・カゼイYIT10003(FERM BP−7707)を用いて乳を発酵することを特徴とする発酵乳の製造方法。 請求項第3項記載の方法により得られた発酵乳を含有することを特徴とする発酵乳製品。 ラクトバチルス・カゼイYIT9029(FERM BP−1366)を以下の工程(a)〜(c)、 (a):ラクトバチルス・カゼイYIT9029(FERM BP−1366)をIL S培地に10%接種し、これを42℃で7時間培養する。 (b):これを20代継代を繰り返し、最終段階で生じたコロニーからシングルコロニ ーを拾い、高温培養に強い菌株を選択する。 (c):次いでこれらを異性化糖を3質量%以上含み、無脂乳固形分濃度が16質量% である乳培地にてラクトバチルス・カゼイの至適温度近辺で培養し、酸度22 .5における生菌数が1×109cfu/ml以上である菌株を選抜する。で処理することを特徴とするラクトバチルス・カゼイYIT10003(FERM BP−7707)の取得方法。 工程(c)の乳培地が、ブドウ糖果糖液糖(ブリックス75°)10%、無脂乳固形分濃度16%、遊離オレイン酸0.0023%、マンガン0.08ppmを含むものである請求項第5項記載のラクトバチルス・カゼイYIT10003(FERM BP−7707)の取得方法。