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タイトル:再公表特許(A1)_Mdm2により触媒されるRBのポリユビキチン化反応
出願番号:2002005354
年次:2005
IPC分類:7,G01N33/50,A61K38/53,A61P35/00,C12N9/99,C12Q1/02,C12Q1/25,G01N33/15,G01N33/53,G01N33/566


特許情報キャッシュ

北川 雅敏 安田 秀世 JP WO2003102576 20031211 JP2002005354 20020531 Mdm2により触媒されるRBのポリユビキチン化反応 北川 雅敏 504439746 安田 秀世 504439850 株式会社アクシアバイオサイエンス 502229129 津国 肇 100078662 篠田 文雄 100075225 北川 雅敏 安田 秀世 7 G01N33/50 A61K38/53 A61P35/00 C12N9/99 C12Q1/02 C12Q1/25 G01N33/15 G01N33/53 G01N33/566 JP G01N33/50 Z A61P35/00 C12N9/99 C12Q1/02 C12Q1/25 G01N33/15 Z G01N33/53 D G01N33/566 A61K37/60 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,CH,CY,DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AU,BA,BB,BG,BR,BZ,CA,CN,CO,CR,CU,CZ,DM,DZ,EC,EE,GD,GE,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KR,LC,LK,LR,LT,LV,MA,MG,MK,MN,MX,NO,NZ,OM,PH,PL,RO,SG,SI,SK,TN,TT,UA,US,UZ,VN,YU,ZA 再公表特許(A1) 20050929 2004509411 20 技術分野本発明は、RB(網膜芽細胞腫タンパク質)及びMdm2(murine double minute 2タンパク質)を含む、RBのポリユビキチン化を測定するための組成物及び該組成物を用いるRBのユビキチン化阻害剤をスクリーニングする方法に関する。Mdm2は本特許発明者の安田等が癌抑制遺伝子産物であるp53のポリユビキチン化を触媒するユビキチンリガーゼであることを発見した(R.Honda,H.Tanaka,H.Yasuda:Oncoprotein MDM2 is a ubiquitin ligase E3 for tumor suppressor p53,FEBS Lett.,420,25−27,1997)。p53は非常に不安定なタンパク質で、細胞がDNA損傷等の影響を受けた時にp53のタンパク質レベルが上昇し、その結果、細胞をG1期に止め、DNA複製を行うS期への侵入を阻止し、この間にDNAの修復を行わせるか、あるいは修復が不可能と判断された場合には細胞をアポトーシスに導き、癌化した細胞の出現を未然に防ぐと考えられる。RBは928アミノ酸残基(分子量:約110kD)からなり、主に転写因子E2Fと結合してその活性を抑え、細胞周期をG1期に停止することにより細胞増殖を抑制する。また、サイクリン依存性キナーゼ(サイクリンD/サイクリン依存キナーゼ4)の作用によりRBがリン酸化されることにより、RBはE2Fから解離し、サイクリンE、ジヒドロフォレートリダクターゼ遺伝子等のG1→S期の進行に必要な遺伝子群を活性化する。その結果、細胞周期が進行し、細胞増殖が再開される(図4C)。一方、RBは、癌抑制遺伝子としても知られており、RB遺伝子の変異(活性の欠失)は網膜芽細胞腫、肺小細胞癌、乳癌、膀胱癌等においてしばしば検出される。これは、RBによる細胞増殖抑制活性の消失がその一因となっている。p53遺伝子及びRB遺伝子の変異による同時不活化が、多くの癌で見出されている。その典型例として、ハイリスク型であるヒトパピローマウイルスの16型及び18型によるヒト子宮頸癌が、挙げられる。このウイルスは、癌化に必要なE6及びE7遺伝子を有し、E6タンパク質は、E6AP(E6−associated protein)と結合し、p53をポリユビキチン化するE3酵素として作用する。ポリユビキチン化されたp53は、プロテアソームにより急速な分解を受ける。E7は、RBをプロテアソームに動員して、RBの分解を促進する。このように、2種類の癌抑制遺伝子産物であるp53とRBの分解が、ヒト子宮頸癌の発症の重要な原因となっている。従来、RBをターゲットにしたドラッグディスカバリーは、サイクリン依存性キナーゼの特異的阻害剤の探索により行われてきた。RBのリン酸化を阻害すると、RBがE2Fと結合し、その転写活性を抑制する。その結果、その阻害剤は、G1期からS期への細胞周期の進行を阻止することができる。しかし、実際には、サイクリン依存性キナーゼだけに特異的に作用し、他のタイプのキナーゼには作用しない薬剤を見出すことは非常に困難であり、RBリン酸化の阻害剤は、その特異性に難点があった。本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、RBがポリユビキチン化されること、さらに、Mdm2がRBのポリユビキチン化を触媒することを見出し、本発明を完成させた。発明の開示本発明は、癌化学療法の分野において、Mdm2によるp53とRBのポリユビキチン化の阻害剤を発見することができるという新たな知見をもたらす。また、Mdm2によるRBのポリユビキチン化阻害剤、及び、Mdm2によるp53とRBのポリユビキチン化の両者の阻害剤は、癌細胞の増殖を阻害し、アポトーシスに導くことができ、さらに、Mdm2は、基質特異性が高いことから、特異性の高い阻害剤を得ることができる。また、本発明は、RB及びMdm2を含むRBのポリユビキチン化を測定するための組成物及び該組成物を用いるRBのポリユビキチン化阻害剤をスクリーニングする方法を提供する。本発明の組成物及びスクリーニング方法を用いることによって、RBポリユビキチン化の特異的阻害剤を探索することができる。また、本発明にしたがって得られた阻害剤は、Mdm2によるp53のポリユビキチン化も阻害する可能性がある。RB及びp53の両者のポリユビキチン化を阻害し、そしてIC50が著しく低い阻害剤は、優れた制癌剤であると考えられる。さらに、本発明で開示したインビボのアッセイ系を用いることによってスクリーニングされた阻害剤を評価することができ、新規制癌剤を開発することができる。発明を実施するための最良の形態本発明のMdm2及びRBは、大腸菌等の原核微生物の系、酵母の系、バキュロウイルスを感染させた昆虫細胞あるいは蚕の系、動物細胞を用いた系において組換型タンパク質として生産させ、その抽出液を使用することができる。さらに、抽出液から部分精製を行い調製したタンパク質がより好ましい。この場合に、予め遺伝子に、ヘキサヒスチジン又はGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)遺伝子を組み込み、それらのペプチド又はタンパク質との融合型として産生したタンパク質を用いることもできる。この手法をタグを付けるというが、これら以外にXpressタグ、HAタグ、mycタグ、マルトース結合タンパク質タグ等種々のタグを使用することができる。Mdm2及びRB遺伝子は、ヒト由来のものが好ましい。ヒト以外にもマウス等の動物由来の遺伝子、酵母由来の遺伝子、植物由来の遺伝子等を使用することができる。ポリユビキチン化RBを、SDS−PAGE及びイムノブロット法を用いて検出することができる。ポリユビキチン化RBを検出するための抗体としてビオチン化ユビキチンを用いた場合にはアビジン−西洋ワサビパーオキシダーゼを、HAタグユビキチンを用いた場合には抗HA抗体を、Xpressタグの結合したユビキチンあるいはRBを用いた場合には抗Xpress抗体を用いることができる。特異的に結合した抗体を検出するために、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(Amersham Bioscience社)、AP発色キット(BioRad社)、HRP発色キット(BioRad社)等を使用することができる。また、その他の免疫化学的手法も用いることができる。Mdm2によるRBのポリユビキチン化の特異的阻害剤をスクリーニングするために、ハイスループットアッセイシステム、例えば、シンチレーション近接アッセイ(Scintillation Proximity Assay:SPA)、時間分解蛍光法(Time−Resolved Fluorescence:TRF)及び均質時間分解蛍光法(Homogeneous Time−Resolved Fluorescence:HTRF)を使用することができる(N.Yabuki,S.Watanabe,T.Kudoh,S.Nihira,C.Miyamoto:Application of Homogeneous Time−Resolved Fluorescence(HTRFTM)to Monitor Poly−ubiquitination of Wild−type p53,Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening,2,279−287,1999)。この他にも、蛍光標識又は放射性同位元素標識を用いる系を使用することができる。SPA法では、125I−ユビキチン又は3H−ユビキチンとビオチン化したRBとを反応系に加えてポリユビキチン化反応を行う。ポリユビキチン化RBをストレプトアビジン標識のSPAビーズを用いてトラップすると、125I−又は3H−標識ポリユビキチンのβ線がSPAビーズに照射されることによりSPAビーズから光が放出される。この光量を30秒間MicroBeta(Wallac社)等の測定装置を用いて測定する。HTRF法では、ユーロピウムクリプテートで標識したユビキチン及びビオチン化したRBを反応系に加え、ポリユビキチン化RBを生成させ、その後、ストレプトアビジン標識XL665を添加する。ビオチン−アビジン結合によりXL665とポリユビキチン化RBとが複合体を形成する。この複合体に、Discovery(Packard Instrument Company)等の測定装置を使用して337nmの光を照射すると、ポリユビキチン鎖中のユーロピウムクリプテートが励起され、励起されたエネルギーがXL665に転移する。その結果、XL665は、665nmの光を放出する。この光の強度を測定し、この測定値をポリユビキチン化RBの量に換算する。このようなハイスループットスクリーニングを行うことにより、Mdm2によるRBのポリユビキチン化の阻害剤を同定することができる。スクリーニングのためには、化合物のライブラリー、合成ペプチドライブラリー、ペプチド発現ファージライブラリー、微生物抽出液・培養濾液、生薬抽出物等のライブラリーを使用することができる。一方、Mdm2とRBの三次元構造からコンピューター上で阻害剤をデザインすることもできる。これをインシリコドラッグデザイン(in silico drug design)という。デザインされた化合物のIC50を上記アッセイ法を用いて算出することができる。本発明は、さらに、インビトロで同定された阻害剤の細胞レベル(インビボ)での評価系も提供する。すなわち、阻害剤の細胞レベル(インビボ)での効果は、タグ付きのRB、Mdm2及びユビキチン発現プラスミドを細胞にトランスフェクションし、細胞内で生成したポリユビキチン化RB及びRBのレベルをSDS−PAGE、イムノブロット法を用いて検出することによって評価することができる(図2A、B及びD)。また、癌細胞のフラット化の誘導を測定することによって、RBポリユビキチン化阻害剤のRBの安定化に対する寄与を解析することも可能である(図4A、B)。阻害剤の多種類の誘導体を合成し、細胞レベルでの評価を行うことにより、候補化合物を同定することができる。さらに、この化合物を用いて担癌マウスモデルでの評価、マウス及び犬等の動物を用いる薬理試験、急性及び慢性毒性試験等の安全性試験、安定性試験等を経て、臨床試験に進むことができる。ヒトMdm2(EMBL:Z12020)は、491アミノ酸残基からなり、ユビキチンリガーゼの活性に必要な触媒部位(リングフィンガードメイン)を438残基から478残基の間に有する。この領域のコンセンサス配列にある6つのシステイン残基のいずれか1つ以上を他のアミノ酸に置換するか又は欠失させるとユビキチンリガーゼの活性が消失する。このMdm2変異体は、ドミナントネガティブな作用を有し、RBのポリユビキチン化を阻害する(図2Aレーン1と3、図2B右図と左図レーン3と5)。したがって、RBと結合する部位を保持し、ユビキチンリガーゼの活性を失ったドミナントネガティブなMdm2変異体をプラスミド又はウイルスベクターを用いて発現させることにより、野生型Mdm2の過剰発現が原因である悪性腫瘍を治療することができる。実施例本発明を下記の実施例においてさらに具体的に説明するが、これに限定されるものではない。実施例1 Mdm2は、RBのポリユビキチン化を促進する。(1)インビトロでRBは、Mdm2によってポリユビキチン化されるユビキチン活性化酵素(E1酵素)、His6−UbcH5(E2酵素)、野生型GST−Mdm2(野生型GST−Mdm2を発現しているSf9細胞抽出液)、全配列を有する精製された組換型RB、ユビキチン、バッファーA(50mM Tris−HCl pH8.3、2mM ジチオトレイオール、5mM MgCl2、10mM ATP、1mM ホスホクレアチニン、500U/ml ホスホクレアチニンキナーゼ、4mM LLnL、25μg/ml ユビキチンアルデヒド、10μg/ml プロテアーゼ阻害剤)を30℃で30分間インキュベーションした。反応終了後、抗RB抗体(C−15)を添加し、遠心分離により抗体がトラップしたRB及びポリユビキチン化したRBを回収した(免疫沈降法)。このサンプルにSDSサンプルバッファーを加え、100℃で10分間加熱することにより変性させ、それをSDSポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動した。次に、ポリアクリルアミドゲルで分画されたタンパク質をPVDF(ポリビニリデンジフルオリド)膜に移し、ECL(化学発光)キットを用いて、RB及びポリユビキチン化したRBを抗RB抗体(C−15)を用いて検出した(イムノブロッティング法)。173kDaの位置にポリユビキチン化RBのスメアバンドが検出された(図1A、レーン2)。反応液にRBを添加しない場合、また、変異型Mdm2(Mdm2のリングフィンガー領域のコンセンサス配列の6つのシステイン残基のいずれか1つ以上がアラニンに変異しており、ユビキチンリガーゼの活性を失っている)を用いた場合には、ポリユビキチン化されたRBは、検出されなかった(図1A、レーン1と3)。したがって、Ubn−RBのスメアバンドがポリユビキチン化されたRBであることは明らかである。(2)精製されたタンパク質を用いたRBのポリユビキチン化系の再構成。精製されたGST−Mdm2によるRBのポリユビキチン化を検討した。ユビキチン活性化酵素、His6−UbcH5、精製されたGST−Mdm2、精製された全配列を有する組換型RB、ビオチン化ユビキチン及びバッファーAを30℃で30分間インキュベーションした。反応終了後、反応液にSDSサンプルバッファーを加え、100℃で10分間加熱することにより変性させ、抗RB抗体3H9(MBL社)を用いた免疫沈降法によりRBを分離した。得られたサンプルをSDS−6%PAGEに供し、次にPVDF膜に移した。これにアビジン−西洋ワサビパーオキシダーゼを加え、ECL検出試薬により発色させ、ポリユビキチン化RB中のビオチン化ユビキチンを検出した。この結果、ビオチン化ユビキチンが1個、2個又は3個以上結合したRBが、検出された(図1B、レーン2)。一方、E2共役酵素であるUbcH5を加えていない場合、さらに、変異型Mdm2を用いた場合には、RBのポリユビキチン化は、起こらなかった(図1Bレーン1と3)。したがって、図1Bのレーン2で検出されたスメアバンドは、ポリユビキチン化されたRBと判定される。(3)Mdm2と結合したRBがポリユビキチン化される。Mdm2と結合したRBがポリユビキチン化されることを証明するために、ポリユビキチン化反応の後にプルダウン法によりMdm2と結合したRBを回収し、RBのポリユビキチン化を解析した。野生型GST−Mdm2を発現しているSf9細胞抽出液を全配列を有する組換型RB又はHis6−p53と4℃で30分間インキュベーションした。次に、グルタチオンビーズ(Amersham Bioscience社)を用いて、GSTMdm2−RB複合体をSf9細胞抽出液から回収した(プルダウン法)。回収されたタンパク質にユビキチン活性化酵素、His6−UbcH5、ユビキチン及びバッファーAを加え、30℃で30分間インキュベーションした。次に、上記(1)と同様に免疫沈降、SDS−PAGE、イムノブロットの一連の操作を行った。抗RB抗体C15を用いてRBを検出したところ、RBモノマーに加えてポリユビキチン化したRBが、検出された(図1C上図レーン2)。また、抗p53抗体Pab240(Santa Cruz社)を用いてRBを検出したところ、p53モノマーに加えてモノ、ジ、トリユビキチン化されたp53が、検出された(図1C下図レーン4)。RBを加えない場合(図1C上図レーン1)及び変異型GST−Mdm2を発現しているSf9細胞抽出液を用いた場合(図1C上図レーン3)では、ポリユビキチン化されたRBは、検出されなかった。(4)細胞内でMdm2はRBと結合している大腸癌細胞抽出液を用いて、Mdm2がRBと結合しているかどうか解析した。細胞内では、ポリユビキチン化したRBは直ちにプロテアソームにより分解を受ける。この分解を防ぐために、20μM MG115(プロテアソーム阻害剤)存在下で8時間培養した大腸癌細胞HCT116からセルライセートを調製し、得られたセルライセート中でMdm2とRBが結合しているかどうかを検討した。セルライセートに抗Mdm2抗体SMP14を加え、免疫沈降させ、Mdm2複合体を回収した。次に、得られたMdm2複合体をSDS−PAGEに供した後、抗RB抗体を用いるイムノブロット法によりRBを検出した。その結果、大腸癌細胞HCT116中でMdm2と結合しているHCT116細胞に由来するRBが検出された(図1Dレーン4)。また、抗Mdm2抗体を用いる免疫沈降では、HCT116細胞に含まれる約80kDaのMdm2が検出された(図1Dレーン2)。コントロールであるマウスIgGを用いた免疫沈降では、Mdm2及びRBは検出されなかった。以上の結果より、Mdm2は、RBと結合し、かつ、RBのポリユビキチン化反応を触媒するE3酵素であることが証明された。実施例2 細胞内のMdm2によるRBのポリユビキチン化は、癌抑制遺伝子産物であるARFにより阻害を受ける。(1)細胞内でRBは、Mdm2によりポリユビキチン化される。細胞にRB、Mdm2及びユビキチン発現プラスミドをコトランスフェクションし、この細胞を、ポリユビキチン化RBの分解を防ぐためにプロテアソーム阻害剤の存在下で培養し、効率良くポリユビキチン化RBを細胞内で生成させ、それを検出した。ヒトRB発現プラスミド(pcDNA4−HisMax−hRB−RI*:**Xpress−タグ付きRBを発現)、Mdm2発現プラスミド(pcDNA4−Mdm2)及びユビキチン発現プラスミド(pcDNA3−HA−ユビキチン:HA***−タグ付きユビキチンを発現)を、大腸癌細胞HCT116及び腎癌細胞HEK293にそれぞれコトランスフェクションした。40時間後、細胞を10μM MG115存在下で8時間インキュベーションし、その細胞抽出液を抗RB抗体C−15を用いて免疫沈降した。得られたサンプルをSDSサンプルバッファー中で変性させ、RBと結合しているタンパク質を解離させた。この工程は、RB以外のポリユビキチン化タンパク質を除くために重要である。それを1ml IPバッファーで希釈後、抗RB抗体C−15を用いて免疫沈降させた。免疫沈降により精製されたRBをSDS−7%PAGEを用いて分画した後、ポリユビキチンを検出するために抗HA抗体(Sigma社)を、RBを検出するために抗Xpress抗体(Invitrogen社)を用いてイムノブロット法により検出した。大腸癌細胞HCT116細胞を用い、抗HA抗体によりイムノブロットを行った場合には、ポリユビキチン化されたRBと推定されるタンパク質が検出された(図2Aレーン2)。Mdm2発現プラスミドをトランスフェクションしない場合には、ポリユビキチン化RBの検出レベルは、低かった(図2Aレーン1)。Mdm2発現プラスミドをトランスフェクションすることによって、RBのポリユビキチン化が、顕著に増大した。一方、変異型Mdm2発現プラスミドをトランスフェクションした場合には、ポリユビキチン化RBは、ほとんど検出されなかった(図2Aレーン3)。したがって、変異型Mdm2は、ドミナントネガティブに作用する、即ち、変異型Mdm2は、RBのポリユビキチン化を阻害すると判断される。ユビキチン発現プラスミドをトランスフェクションしない場合には、レーン2で検出されたスメアバンドは、検出されなかった(図2Aレーン4)。次に、ヒトRB発現プラスミドのトランスフェクションを効率良く行うために、腎癌細胞HEK293を用いて同様の実験を行った。その結果、抗Xpress抗体を用いてRBの検出を行ったところ、大腸癌細胞HCT116ではポリユビキチン化RBは検出されなかったが(データは示さず)、腎癌細胞HEK293では高レベルでポリユビキチン化RBが検出された(図2B右図レーン4)。したがって、ポリユビキチン化RBの生成量は腎癌細胞においてより高いと判断される。また、プロテアソーム阻害剤MG115添加により、ポリユビキチン化RBの分解が抑制されたため、その検出量が増大した(図2B右図と左図レーン1と4)。また、大腸癌細胞HCT116を用いた図2Aの結果を、腎癌細胞HEK293を用いて再確認した。即ち、Mdm2発現プラスミドのトランスフェクションによって、RBのポリユビキチン化が顕著に増加した(図2B右図と左図レーン3と4)。また、変異型Mdm2は、明らかにドミナントネガティブに作用した(図2B右図と左図レーン3と5)。また、ヒトRB発現プラスミドをトランスフェクションしない場合には、RBとポリユビキチン化RBの両者は、ともに検出されなかった(図2B右図と左図レーン2)。さらに、腎癌細胞HEK293ではアデノウイルスのE1Aタンパク質が発現しているが、E1AはRBのポリユビキチン化に全く影響しないと判定される。*RB−RIは、RBのN末端がトランケートされており、301残基〜928残基までの全長のC末端側配列を有するRBを生成する。**XpressとはAsp−Leu−Tyr−Asp−Asp−Asp−Asp−Lysのアミノ酸配列を意味し、RBと融合して発現する。***HAタグとはTyr−Pro−Tyr−Asp−Val−Pro−Asp−Tyr−Ala−Leuのアミノ酸配列を意味し、ユビキチンと融合して発現する。(2)Mdm2により触媒されるp53のポリユビキチン化は、ARFによって抑制される。ARFは、Mdm2によるp53のユビキチン化を阻害する(Honda R.,Yasuda,H.:Association of p19ARF with Mdm2 inhibits ubiquitin ligase activity of Mdm2 for tumor suppressor p53,EMBO Journal,18,22−27,1999)。ここで、ARFが、p53に対するのと同様に、Mdm2によるRBのユビキチン化を阻害するかどうか検討した。ヒトp53発現プラスミド、Mdm2発現プラスミド(pcDNA4−Mdm2)及びユビキチン発現プラスミド(pcDNA3−HA−ユビキチン:HAタグ付きユビキチンを発現)及びARF発現プラスミドを、腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。40時間後、細胞を10μM MG115と8時間インキュベーションを行い、その細胞抽出液を抗p53抗体Pab1801(Santa Cruz)を用いて免疫沈降させた。得られたサンプルをSDSサンプルバッファー中で変性させ、p53と結合しているタンパク質を解離させた。そのサンプルをSDS−7%PAGEにアプライし、その後イムノブロット法により、抗HA抗体を用いてポリユビキチン化されたp53を検出した。プロテアソーム阻害剤MG115の存在下でポリユビキチン化p53が検出された(図2Cレーン5〜8)。ARF発現プラスミドをコトランスフェクションした場合には、p53のポリユビキチン化が低下しており、ARFはp53のポリユビキチン化を抑制していると判定される(図2Cレーン6と7)。次に、p53発現プラスミドをヒトRB発現プラスミド(pcDNA4−HisMax−hRB:全配列のRBを発現)に換えて、同様の実験を行った。さらに、癌抑制遺伝子BRCA1は、リングフィンガードメインを有しているので、RBのポリユビキチン化を触媒するかどうかの検討を行うために、BRCA1発現プラスミドのトランスフェクションを行った。前記(2)と同様な方法で実験した。抗RB抗体C−15を用いて免疫沈降を行い、抗RB抗体及び抗Mdm2抗体を用いたイムノブロット法により、検出を行った。その結果、ARFタンパク質は、Mdm2の自己ユビキチン化及びRBのポリユビキチン化を明らかに阻害した(図2Dレーン3と4、レーン8と9)。一方、BRCA1は、RBのポリユビキチン化を触媒しなかった(図2Dレーン1と2、レーン6と7)。(3)Mdm2は、RBファミリーの中でRBのみをポリユビキチン化する。RBファミリーには、RB、p107及びp130がある。Mdm2によるポリユビキチン化は、RBに特異的かどうかを検討した。実施例2(2)と同様な方法で腎癌細胞HEK293にRB、p107、p130のいずれかの発現プラスミドを、Mdm2発現プラスミド(pcDNA4−Mdm2)及びユビキチン発現プラスミド(pcDNA3−HA−ユビキチン:HA−タグ付きユビキチンを発現)と共にコトランスフェクションした。その後、実施例2(2)と同様な操作を行った。抗RB抗体C−15、抗p107抗体又は抗p130抗体のいずれかを用いて免疫沈降を行った。それをSDS−PAGEに供し、各々のRBファミリータンパク質に対する抗体及び抗Mdm2抗体を用いてイムノブロット法を用いて解析した。その結果、Mdm2は、図2Dの結果と同様にRBをポリユビキチン化したが(図2E左上)、RBファミリーのp107及びp130はポリユビキチン化しなかった(図2E中央上、右上)。実施例3 Mdm2は、細胞内でRBのレベルをダウンレギュレーションする。(1)Mdm2存在下では、細胞内RBのレベルが低下する。hRB−RI、Mdm2、LacZ(大腸菌のβガラクトシダーゼ)を発現するプラスミド(pcDNA4−HisMaxに左記cDNAを挿入し、Xpress配列をタグとした融合タンパク質を発現する)を大腸癌細胞HCT116にトランスフェクションした。実施例2(2)と同様な操作を行った後、細胞抽出液をSDS−7%PAGEに供し、抗Xpress抗体又は抗Mdm2抗体SMP14を用いたイムノブロット法でRB、Mdm2及びLacZタンパク質を検出した。その結果、Mdm2の発現により、RB量が顕著に低下した(図3Aレーン2と3)。コントロールとして使用したLacZのレベルに変化はなかった(図3Aレーン1〜3)。次に、6μgのhRB−RI発現プラスミドと3〜12μgのMdm2発現プラスミドとを腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。RBの発現レベルに対するMdm2トランスフェクション量の用量依存性を検討したところ、野生型Mdm2発現プラスミドのトランスフェクション量の増加に依存してRBのレベルは顕著に低下し、用量12μgにおいては、RBはほとんど検出されなかった(図3Bレーン1〜4)。これに対して、変異型Mdm2発現プラスミドをトランスフェクションした場合には、その量に関係なくRBは、高レベルで検出された(図3Bレーン5〜7)。(2)Mdm2によるRBのダウンレギュレーションには、RBのC末端領域が必要である。pcDNA4−HisMax−hRB−RI(RBのN末端300アミノ酸残基を欠失)、pcDNA4−HisMax−hRB−RI−Xmn(RBのC末端領域を欠失)、pcDNA4−HisMax−hRB−Xmn−Not(RBのC末端領域を有する)、をpcDNA4−Mdm2と共に腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。実施例2(2)と同様な操作を行った後、細胞抽出液をSDS−7%PAGEに供し、抗Xpress抗体を用いたイムノブロット法でそれぞれのRBを検出した。その結果、RBのC末端を含有するRB−RI及びRB−Xmn−Notでは、Mdm2存在下でRBのレベルが、顕著に低下した(図3Cレーン1と2、5と6)。しかし、RBのC末端を欠失したRB−RI−Xmnでは、Mdm2存在下でもRBのレベルは、一定であった(図3Bレーン3と4)。この結果は、Mdm2によるRBのポリユビキチン化及びプロテアソームによる分解にRBのC末領域が関与していることを示す。(3)パルスチェイス実験において、Mdm2は、RBの分解を促進する。7μgのRB−RI発現プラスミド、14μgのエンプテイベクター、及び野生型Mdm2発現プラスミド又は変異型Mdm2発現プラスミドを腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。42時間後、87.5μCiのTrans35S(ICN Pharmaceuticals Inc.)を用いて細胞を1時間標識した。その後、Trans35Sを除いてパルスチェイスを行った。0分、5分、10分、15分、20分後に細胞をハーベストした。その細胞抽出液を抗RB抗体C−15を用いて免疫沈降させ、次にプロテインG−セファロースCL−4Bを用いて抗体と結合したRBを精製した。その試料をSDS−PAGEを用いる電気泳動を行い、得られたゲルを乾燥し、イメージングプレート(Fuji Film社)に適用した。得られた結果をBAS−1000(Fuji Film社)を用いて解析し、RBに取り込まれた35Sを定量した。図3Dにはイメージングプレート上の結果を、図3Eにはパルスチェイス0時間におけるRBの35S強度を100%とした相対的比率で表したグラフを示した。その結果、Mdm2は、細胞内でRBの分解を促進していることが明らかとなった(図3E、vectorとwt−Mdm2)。さらに、プロテアソーム阻害剤MG115存在下では、Mdm2によるRB分解促進は、完全に抑制された(図3E vector、wt−Mdm2、wt−Mdm2+MG115)。これは、ポリユビキチン化されたRBのプロテアソームによる分解がMG115で抑制されたことを示す。一方、変異型Mdm2をトランスフェクションした場合には、細胞内のRBはより安定化すると判断された(図3E、vectorとmt−Mdm2)。この点について再確認するために、ヒトグリオブラストーマT98G細胞(野性型p53を欠失している)に変異型Mdm2発現プラスミド(pcDNA4−HisMax−mt−Mdm2)とRB発現プラスミド(pcDNA4−HisMax−hRB−RI)をコトランスフェクションし、48時間後に抗Xpress抗体を用いて変異型Mdm2を、抗RB抗体C15を用いてRBを免疫染色した。その結果、変異型Mdm2は、明らかにRBを集積した(図3F矢印)。したがって、変異型Mdm2は、ドミナントネガティブに作用すると結論された。実施例4 Mdm2は細胞のフラット化を抑制する骨肉腫細胞(RB遺伝子を欠失している)を用いてRB遺伝子を発現させると、細胞のフラット化が誘導されることが知られている(S.Ashizawa,H.Nishizawa,M.Yamada,H.Higashi,T.Kondo,H.Ozawa,A.Kakita,M.Hatakeyama:Collective inhibition of pRB family proteins by phosphorylation in cells with p16INK4a loss or cyclin E overexpression,J.Biol.Chem,276,11362−11370,2001)。そこで、RBにより誘導される細胞のフラット化に対するMdm2の影響を検討した。2種類のプラスミドを骨肉腫細胞にコトランスフェクションした。1種類は、テトラサイクリン不在下でRBを発現するSRB−1プラスミドであり、もう1種類は、pIRES2−EGFPプラスミド(EGFP:Enhanced Green Fluorescent Protein);CLONTECH社;図4A、Bで「vector」と表示)、pIRES2−EGFP−wtMdm2プラスミド(同一のmRNAからEGFPとwtMdm2を翻訳するシステムを有する;図4A、Bで「wt−Mdm2」と表示)、及びpIRES2−EGFP−mtMdm2プラスミド(EGFPと変異型Mdm2を同時発現する;図4A、Bで「mt−Mdm2」と表示)のいずれかであった。培地は、10%FBS、0.5mg/ml G418(ネオマイシン)、0.3mg/ml ハイグロマイシン、1μg/mlテトラサイクリンを含有するDMEMを使用した。6穴プレートでのトランスフェクション後、骨肉腫細胞を7〜8日培養した。一定の視野におけるGFP陽性細胞数を蛍光顕微鏡を用いて計数し(倍率:200倍)、GFP陽性細胞中のフラット化した細胞数を位相差顕微鏡を用いて計数した。テトラサイクリン存在下では、RBは骨肉腫細胞内で発現していないためにフラット型細胞の占める%は、非常に低かった(図4Bテトラサイクリン(+))。しかし、テトラサイクリン不在下では、RBが発現するために、約64%がフラット型であった(図4Bテトラサイクリン(−)/Vector)。また、野性型Mdm2の発現下では、フラット型細胞の割合は、約26%に減少した(図4Bテトラサイクリン(−)/wt−Mdm2)。これは、野性型Mdm2がRBのポリユビキチン化を触媒し、RBのレベルが低下したためである。変異型Mdm2は、RBのユビキチン化を触媒しないことから、そのフラット化に対する影響は、ほとんど認められなかった(図4Bテトラサイクリン(−)/mt−Mdm2)。産業上の利用可能性本発明の組成物は、RBのポリユビキチン化の阻害剤及びそれを含有する医薬品の開発に有用である。Mdm2のリングフィンガー領域のコンセンサス配列であるシステインを他のアミノ酸に変えた変異型Mdm2は、ドミナントネガティブな作用を有する。ドミナントネガティブMdm2を発現するプラスミド及びウイルスベクターは、癌の遺伝子治療に有用である。【図面の簡単な説明】図1Aは、インビトロでのRBのポリユビキチン化反応を示す。RBのポリユビキチン化反応後、抗RB抗体を用いてRBを免疫沈降させた。SDS−PAGE(polyacrylamide gel electrophoresis)後、抗RB抗体を用いたイムノブロット法でRB及びそのポリユビキチン化されたタンパク質を検出した(IB:αRBで表示)。full−RBは全配列を有するRBを表し、その添加の有無を+又は−で表した。「Mdm2の欄の+」は、野性型Mdm2の添加、「Mdm2の欄のmt」は、変異型Mdm2の添加を意味する。111kDaの位置にRBが、そして173kDaの位置にポリユビキチン化RB(Ubn−RB)が、検出された(レーン2)。図1Bは、RBのポリユビキチン化系の再構成を示す。ビオチン化ユビキチン(ビオチン−Ub)、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン共役酵素UbcH5(E2)及び全配列を有するRB(full−RB)の反応系への添加の有無を+又は−で表示した。「Mdm2の欄の+」は、野性型Mdm2の添加、そして「Mdm2の欄のmt」は、変異型Mdm2の添加を意味する。SDS−PAGE後、アビジン−西洋ワサビパーオキシダーゼを用いてRBに結合したビオチン化Ubを検出した(アビジン−HRPによる検出)。Ub1−RBはモノユビキチン化RBを、Ub2−RBは、ジユビキチン化RBを、UbnRBは、ポリユビキチン化RBを意味する。レーン2において、Ub1−RB、Ub2−RB及びUbn−RBが検出された。図1Cは、Mdm2と結合したRB及びp53がポリユビキチン化されることを示す。反応系にGST−Mdm2の野性型(+)又は変異型(mt)を用いた。全配列を有するRB(full−RB)及びp53の添加の有無を+又は−で表示した。グルタチオンビーズを用いるプルダウンによって、GST−Mdm2と結合したタンパク質を分離した(GST−プルダウン)。SDS−PAGE後、抗RB抗体(IB:αRB)又は抗p53抗体(IB:αp53)を用いてイムノブロット法で検出を行った。図1C上図レーン2ではUbn−RBが、図1C下図レーン4ではモノユビキチン化p53(Ub1−p53)、ジユビキチン化p53(Ub2−p53)及びトリユビキチン化p53(Ub3−p53)が検出された。図1Dは、RBが細胞内でMdm2と結合していることを示す。大腸癌細胞抽出液をマウスIgG(IgG)及び抗Mdm2抗体(αMdm)を用いて免疫沈降(IP)させた。SDS−PAGE後、抗Mdm2抗体を用いたイムノブロット(IB:αMdm)又は抗RB抗体を用いたイムノブロット(IB:αRB)により、Mdm2(レーン2)及びRB(レーン4)が検出された。endo−Mdm2は、内在性Mdm2を、endo−RBは、内在性RBを意味する。図2Aは、大腸癌細胞におけるMdm2によるRBのポリユビキチン化を示す。トランスフェクションに使用したプラスミド名をその発現タンパク質名で表示した。N末端をトランケートしたRB(RB−RI)及びHAタグ付きユビキチン(HA−Ub)発現プラスミドのトランスフェクションの有無を+又は−で表示した。野性型Mdm2発現プラスミドをトランスフェクトした場合を+、変異型Mdm2発現プラスミドをトランスフェクトした場合を「mt」、Mdm2発現プラスミドをトランスフェクトしない場合を−で表示した。細胞の培養時にプロテアソーム阻害剤を添加した場合を「MG115の欄の+」と表示した。矢印はRBモノマーの位置を示す。最初に細胞抽出液を抗RB抗体を用いて免疫沈降し(1st IP:αRB(C15))、次に、挟雑物を除くために抗RB抗体を用いてさらに免疫沈降した(2nd IP:αRB(C15))。SDS−PAGE後、抗HA抗体を用いてHAタグ付きポリユビキチン化RB(Ubn−RB)を検出した(IB:αHA)。レーン2では、Ubn−RBが高レベルで検出された。図2Bは、腎癌細胞におけるMdm2によるRBのポリユビキチン化を示す。右側の図では、抗Xpress抗体を用いたイムノブロット法でRBの検出を行った(αXpress)こと、及び比較例としてMG115を添加しない群(MG115の欄の−)を設けたことを除き、図2Aと同様な条件で実験を行った。図2Cは、ARFタンパク質によるp53のポリユビキチン化の抑制を示す。図2Aに記載したRB−RI発現プラスミドの代りにp53発現プラスミドを使用し、さらに、ARF発現プラスミドのトランスフェクション(ARFの欄の+又は−)を加えた群を設けた。抗p53抗体を用いて細胞抽出液を免疫沈降した(IP:αp53)。抗HA抗体を用いるイムノブロット法によって免疫グロブリンIgG重鎖(IgG−H)、モノユビキチン化p53(Ub1−p53)、ジユビキチン化p53(Ub2−p53)及びポリユビキチン化p53(Ubn−p53)が、検出された。図2Dは、ARFタンパク質によるRBのポリユビキチン化の抑制を示す。図2Aの実験で行ったRB−RI(N末端トランケートRB)発現プラスミドの代りにfull−RB(全配列を有するRB)発現プラスミドを用いた。レーン1と6では、BRCA1発現プラスミドをコトランスフェクションした(BRCA1の欄の+)。レーン4と9では、ARF発現プラスミドをコトランスフェクションした(ARFの欄の+)。細胞培養を、10μM MG115添加及び無添加(MG115の溶媒であるDMSOのみを添加した:DMSO)の2種類の条件で行った。イムノブロット法では、抗RB抗体を用いたポリユビキチン化RBの検出(上図、IB:αRB)、抗Mdm2抗体を用いたポリユビキチン化Mdm2の検出(中図、IB:αMdm2)、及び抗ARF抗体を用いたARFの検出(下図、Input:ポリアクリルアミドゲル上の試料中に含まれるARF)を行った。図2Eは、Mdm2は、RBファミリーの中でRBのみをポリユビキチン化することを示す。左図:細胞抽出液の免疫沈降は抗RB抗体を用いた(IP:αRB)。イムノブロットは上図では抗RB抗体(IB:αRB)を用いて、下図では抗Mdm2抗体(IB:αMdm2)を用いた。それぞれポリユビキチン化RB(左上図)及びポリユビキチン化Mdm2(左下図)を検出した。中央図:細胞抽出液の免疫沈降は抗p107抗体を用いた(IP:αp107)。イムノブロットでは、上図では抗p107抗体(IB:αp107)を、下図では抗Mdm2抗体(IB:αMdm2)を用いた。ポリユビキチン化p107は、検出されなかった。右図:細胞抽出液の免疫沈降は抗p130抗体を用いた(IP:αp130)。イムノブロットは、上図では抗p130抗体(IB:αp130)を用いて、下図では抗Mdm2抗体(IB:αMdm2)を用いて行った。p130のポリユビキチン化は検出されなかった。図3Aは、Mdm2が、細胞内での、RBレベルを低下させることを示す。RB−RI、Mdm2、LacZ発現プラスミドを大腸癌細胞HCT116にトランスフェクションした。細胞抽出液をSDS−PAGEに供した後、抗Xpress抗体を用いてRB−RIを、抗Mdm2抗体を用いて導入したプラスミドよって発現されたMdm2(exo*−Mdm2)及び細胞内に予め存在するMdm2(endo**−Mdm2)を、抗Xpress抗体を用いてLacZ(β−ガラクトシダーゼ)を検出した。*外来性の略、**内在性の略図3Bは、Mdm2発現プラスミドの量に依存したRBのレベルの低下を示す。Xpressタグ付きRB−RI発現プラスミド(RB−RI)、及びXpressタグ付き野性型(Mdm2−wt)又は変異型Mdm2発現プラスミド(Mdm2−mt)を腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。トランスフェクションに用いたRB−RI発現プラスミド量は6μgであり、Mdm2発現プラスミドは無添加(レーン1)、3μg(レーン2と5)、6μg(レーン3と6)、12μg(レーン4と7)であった。Mdm2及びRB−RIタンパク質を抗Xpress抗体を用いたイムノブロットにより検出した。レーン1〜4で、野性型Mdm2発現プラスミドの量に依存したRB−RIタンパク質の低下が認められる。図3Cは、Mdm2によるRBレベルの低下にRBのC末領域が必要であることを示す。RB−RIはRBのN末端の300アミノ酸残基を欠失、RB−RI−XmnはRBのC末端領域を欠失、RB−Xmn−NotはRBのC末端領域を有している。各々のRB発現プラスミドをRI、RI−Xmn、Xmn−Notと表示した。腎癌細胞HEK293をトランスフェクションに使用した。Mdm2発現プラスミドのトランスフェクションの有無を+又は−で表示した。抗Xpress抗体を用いたイムノブロットによって異なるサイズのトランケートRBを検出した。C末領域を有するRBレベルは、Mdm2存在下で減少した(レーン2、6)。図3Dは、パルスチェイス法におけるRBの分解を示す。腎癌細胞HEK293をエンプティベクター(vector)、野性型Mdm2発現プラスミド(wt−Mdm2)及び変異型Mdm2発現プラスミド(mt−Mdm2)を用いてコトランスフェクトした。wt−Mdm2をトランスフェクション後にMG115存在下で培養した細胞をwt−Mdm2+MG115と表記した。細胞をTrans35Sで標識した後、細胞を洗浄しTrans35Sを除去し、細胞の培養を継続した。0、5、10、20時間後のRBに取り込まれたTrans35SをSDS−PAGE後にBAS−1000を用いて解析した(パルスチェイス法)。図3Eは、パルスチェイス法におけるRB分解のグラフを示す。図3Dの結果を数値化し、グラフで表示した。0時間のRBレベルを100%とした相対的%で示した(RBタンパク質(%))。図3Fは、変異型Mdm2によるRBレベルの上昇を示す。ヒトグリオブラストーマT98G細胞に変異型Mdm2発現プラスミド及びRB発現プラスミドをコトランスフェクションし、48時間後に抗Xpress抗体を用いて変異型Mdm2(αXpress)を、抗RB抗体C15を用いてRB(αRB(C15))を免疫染色した。矢印は変異型Mdm2の検出された位置でのRBの蛍光を示している。図4Aは、Mdm2が細胞のフラット化を抑制することを示す。GFPを発現(矢印で表示)している骨肉腫細胞におけるフラット化した細胞の割合を計測した。エンプティベクター(vector)、wt−Mdm2発現ベクター(wt−Mdm2)、mt−Mdm2発現ベクター(mt−Mdm2)の各々を、RB発現プラスミド(テトラサイクリンにより制御される)とコトランスフェクションした。テトラサイクリンの有無を+又は−で示した。位相差顕微鏡(a、b、e、f、i、j)及び蛍光顕微鏡(c、d、g、h、k、l)を用いてフラット化した細胞の割合を計測した。図4Bは、図4Aで得られた結果を棒グラフで表示した。GFP発現細胞中のフラット化した細胞数の割合を%で表示した。*はp<0.001である。図4Cは、Mdm2がp53経路及びRB経路に関与するモデルを示す。p53経路:DNA損傷、ストレス条件下でATMキナーゼ等が誘導され、p53がリン酸化を受ける。その結果、細胞周期の停止又はアポトーシスが誘導される。RB経路:RBはサイクリンD/Cdk4によりリン酸化される。その結果、RBは、転写因子E2Fから遊離し、細胞周期が、G1期からS期に進行する。染色体のINK4/ARF領域からp16INK4aとARFタンパク質が、転写、翻訳される。p16INK4aは、サイクリンD/Cdk4と結合し、キナーゼ活性を阻害する。その結果、RBがE2Fと結合し、細胞周期をG1期で停止させる。Mdm2は、p53及びRBのポリユビキチン化を媒介し、それらのタンパク質はプロテアソームにより分解される。この経路が促進されると癌抑制遺伝子産物のp53及びRBの両者のレベルが低下し、癌化の一因となる。ARFタンパク質は、Mdm2によるp53及びRBのポリユビキチン化を抑制する。このように、p16INK4aとARFタンパク質は、細胞周期をG1期でアレストする作用を有し、癌抑制因子として作用する。 RB及びMdm2を含む、RBのポリユビキチン化を測定するための組成物。 下記工程:試験化合物を請求の範囲第1項の組成物と接触させる工程、試験化合物が、RBのポリユビキチン化を阻害するか否かを測定する工程を含むRBのユビキチン化阻害剤をスクリーニングする方法。 試験化合物を請求の範囲第1項の組成物と接触させる工程を細胞中で行うことを特徴とする、請求の範囲第2項記載の方法。 Mdm2変異体を含有する、RBポリユビキチン化阻害剤。 本発明は、RB及びMdm2を含む、RBのポリユビキチン化を測定するための組成物及び該組成物を用いるRBのユビキチン化阻害剤をスクリーニングする方法に関する。さらに、ドミナントネガティブな作用を有する変異型Mdm2を含むRBのポリユビキン化阻害剤に関する。


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特許公報(B2)_電気絶縁紙の劣化度測定方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_電気絶縁紙の劣化度測定方法
出願番号:2002005354
年次:2007
IPC分類:G01N 17/00,G01N 33/26,H01F 27/00


特許情報キャッシュ

野田 隆昌 杉本 敏文 渡部 達也 石井 敏次 鈴木 敏夫 川田 千ひろ 後藤 勝彦 JP 3908540 特許公報(B2) 20070126 2002005354 20020111 電気絶縁紙の劣化度測定方法 中部電力株式会社 000213297 ユカインダストリーズ株式会社 596094577 久保田 耕平 100087918 野田 隆昌 杉本 敏文 渡部 達也 石井 敏次 鈴木 敏夫 川田 千ひろ 後藤 勝彦 20070425 G01N 17/00 20060101AFI20070405BHJP G01N 33/26 20060101ALI20070405BHJP H01F 27/00 20060101ALI20070405BHJP JPG01N17/00G01N33/26H01F27/00 H G01N 17/00 G01N 33/26 H01F 27/00 特開2002−005840(JP,A) 特開2001−210538(JP,A) 特開平09−210914(JP,A) 特開平07−159471(JP,A) 特開平06−207930(JP,A) 特開平06−120043(JP,A) 特開平06−082405(JP,A) 特開平06−020846(JP,A) 特開平05−055050(JP,A) 特開平05−019005(JP,A) 特開昭56−132562(JP,A) 10 2003207440 20030725 12 20050111 福田 裕司 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、油入電気機器絶縁紙の劣化度の測定方法に関するものであり、さらに詳しくは、巻線が絶縁紙で巻回され、該絶縁紙が充填された絶縁油と接触する構造の油入電気機器において、前記絶縁紙から微量剥離して前記絶縁油中に移行し、通常、浮遊している絶縁紙微細断片の物理的化学的性状を分析し、その分析結果に基づき前記絶縁紙の劣化度を測定する方法に関するものである。なお、本明細書において「絶縁紙微細断片」とは、絶縁紙から剥離したセルロース系繊維その他絶縁紙構成成分の微細物質等を含むものである。【0002】【従来の技術】油入変圧器、油入リアクトル等の油入電気機器の寿命は、巻線に巻かれた絶縁紙の劣化度に左右されるといわれている。一般に、使用されている絶縁紙の主要成分は、セルロース化合物であり、通常、下記の式[I]で表される。【0003】【式1】かかるセルロース化合物は、グルコース環が連結したものであり、分子中に水酸基を有することから、油入電気機器内での絶縁油との長期間の接触状態の使用条件下においては、熱分解、酸化および加水分解し、グルコース結合の切断、グルコース環の開環等によりセルロース化合物の分子鎖が切断し、重合度が低下して劣化する。この場合において、アルコール、アルデヒド、有機酸、二酸化炭素および一酸化炭素等の各種劣化物が生成する。【0004】重合度は前記式1のセルロース化合物の構成成分の繰り返し単位nで表されるが、重合度nには通常ばらつきが生ずるので平均値で表示した平均重合度が用いられている。絶縁紙の平均重合度は使用初期において約1,000の値であり、絶縁紙の劣化の指標とされている。【0005】一般に、稼動中の油入電気機器内の絶縁紙の劣化度は、絶縁油中に溶解している二酸化炭素+一酸化炭素、フルフラール、アセトン等の劣化生成物の含有量と関係があることがすでに見い出されていることから、かかる劣化生成物の含有量から絶縁紙の劣化度が推定されている。【0006】しかしながら、前記の如き劣化度を推定する方法では、種々の部分から発生した油中の劣化生成物の含有量を測定し、絶縁紙の平均重合度または平均重合度残率に換算する必要がある。この換算の過程で誤差が生ずる可能性があり、換算された絶縁紙平均重合度または平均重合度残率が精度の点から十分であることを確認する必要があったが、かかる要求に対応できる適切な方法が確立されていなかった。【0007】すなわち、前記方法は、化学的な手法で絶縁紙の劣化度を測定するものであるから、かかる方法で得られた結果についてはさらに絶縁紙に対して直接的で物理的な方法で確認する必要があり、煩雑な測定を要するものであった。長期間にわたり使用される油入電気機器にとって、その寿命を正確に推定するためには絶縁紙の劣化度の簡便、かつ正確な測定方法の開発が切望されてきた。【0008】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題は、前記の如き従来の絶縁紙の劣化度測定方法の開発状況に鑑み、物理的な方法であって、より直接的な方法により絶縁油と接触条件下にある絶縁紙の劣化度を測定する方法を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、前記の開発動向を勘案し、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、絶縁紙または絶縁紙を構成する材料の絶縁油との接触により、特に、巻線の最高温度下における絶縁油との接触により、絶縁紙セルロース繊維の如き絶縁紙微細断片が該絶縁紙より剥離し、該絶縁油中に浮遊することを発見し、かつ、浮遊絶縁紙微細断片の物理的化学的性状を分析することにより、絶縁紙の劣化度を判定できることに着目し、さらに、該浮遊絶縁紙微細断片の劣化が、巻線に巻回されている絶縁紙の劣化と同時に進行することを見い出し、これらの知見に基づいて本発明の完成に到達した。【0010】かくして、本発明によれば、巻線が絶縁紙で巻回され、該絶縁紙と充填された絶縁油とが接触している油入電気機器において、前記絶縁紙から剥離し、前記絶縁油中に浮遊する絶縁紙微細断片を採取し、該絶縁紙微細断片の物理的化学的性状を分析し、その分析結果に基づいて前記絶縁紙の平均重合度を求めることを特徴とする絶縁紙の劣化度測定方法が提供される。【0011】また、本発明によれば、絶縁油中に浮遊する絶縁紙微細断片を一種または二種以上の微細孔フィルターにより捕捉分別して採取するか、他の方法で絶縁油中に浮遊する絶縁紙微細断片を直接捕捉して採取するかまたは絶縁油中の絶縁紙から直接絶縁紙微細断面を採取し、その一本または二本以上の微細断片について、X線回折装置、熱分析装置、質量分析装置、赤外分光分析装置および走査型電子顕微鏡からなる群より選択されるいずれかの装置により、その物理的化学的性状を分析し、分析結果に基づいて前記絶縁紙の劣化度を測定する方法が提供される。【0012】本発明は、前記の如く、油入電気機器において使用される絶縁紙と絶縁油との接触条件下で、該絶縁紙から剥離した絶縁紙微細断片が浮遊する絶縁油を油入電気機器よりぬきとり、該絶縁油から該絶縁紙微細断片を分離し、採取し、該絶縁紙微細断片の物理的化学的性状を分析することにより、絶縁紙の平均重合度を測定する方法を提供するものであるが、さらに、好ましい具体的な実施の態様として、次の▲1▼〜▲7▼に挙げるものを包含する。【0013】▲1▼絶縁油油中に浮遊する絶縁紙セルロース繊維を少なくとも一種の微細孔フィルターを用いて捕捉分別することにより採取するか、他の方法で絶縁油中に浮遊する絶縁紙セルロース繊維を直接捕捉することにより採取するかまたは絶縁油中の絶縁紙から直接に絶縁紙セルロース繊維を採取し、該セルロース繊維の一本または二本以上について(i) X線回折装置により測定した半価幅、(ii) 熱分析装置により測定した加熱減量特性、(iii) 質量分析装置により測定した加熱によるガス発生量、(iv) 赤外分光分析装置により測定した吸収強度特性、または、(v) 走査型電子顕微鏡により測定した繊維表面上の付着生成物およびその形状に基づいて絶縁油中の絶縁紙の劣化度を測定する方法。【0014】▲2▼絶縁油から採取した絶縁紙セルロース繊維の全体またはこれらのうち一本または二本以上の繊維についてX線回折装置を用いて半価幅を測定し、その測定値に基づいて絶縁紙の劣化度を測定する方法。【0015】▲3▼劣化度既知の絶縁紙より直接セルロース繊維を採取し、採取繊維の一本または二本以上または全部についてX線回折装置により前記セルロース繊維結晶の半価幅を測定し、該半価幅と絶縁紙の劣化度との関係図を作成し、該関係図を用いて絶縁油中の絶縁紙の劣化度を測定する方法。【0016】▲4▼劣化度既知の絶縁紙より直接セルロース繊維を採取し、採取繊維について熱分解装置により加熱減量特性を測定し、該加熱減量特性と絶縁紙の劣化度との関係図を作成し、該関係図を用いて絶縁油中の絶縁紙の劣化度を測定する方法。【0017】▲5▼劣化度既知の絶縁紙より直接セルロース繊維を採取し、採取繊維について質量分析装置より加熱による発生ガス量を測定し、該発生ガス量と絶縁紙の劣化度との関係図を作成し、該関係図を用いて絶縁油中の絶縁紙の劣化度を測定する方法。【0018】▲6▼劣化度既知の絶縁紙より直接セルロース繊維を採取し、採取繊維について赤外分光分析装置により吸収強度特性を測定し、該吸収強度特性と絶縁紙の劣化度との関係図を作成し、該関係図を用いて絶縁油中の絶縁紙の劣化度を測定する方法。【0019】▲7▼劣化度既知の絶縁紙より直接セルロース繊維を採取し、採取繊維のうち一本または二本以上の繊維を走査型電子顕微鏡により該繊維に付着する生成物を測定し、該生成物の量と絶縁紙の劣化度との関係図を作成し、該関係図を用いて絶縁油中の絶縁紙の劣化度を測定する方法。【0020】【発明の実施の形態】以下、本発明についてさらに詳細に説明する。【0021】本発明は、本発明者らの広範な検討の結果見い出された次の(1)〜(4)に掲げる新規な特異点:(1)油入電気機器内において絶縁紙または絶縁紙を構成する材料から微細断片が微量剥離され絶縁油中に浮遊または沈降している点。(2)絶縁油中に浮遊している絶縁紙微細断片が、巻線に巻回された絶縁紙、特に高温部の絶縁紙の劣化と同期して劣化する点。(3)絶縁紙微細断片、特に、セルロース繊維の一部が結晶であり、その劣化は、X線回折図形で表される結晶の半価幅の変化に基づいて算出できる点。(4)絶縁紙セルロース繊維の半価幅とセルロース系絶縁紙の平均重合度とがよい相関関係にある点。に基づいて完成に到達したものである。【0022】本発明の絶縁紙の劣化度の測定方法を適用できる油入電気機器に充填される絶縁油としては鉱油系絶縁油または合成系絶縁油のいずれでもよく、特に限定されるものではないが、鉱油系絶縁油としては、沸点約250〜400℃の炭化水素油を挙げることができ、例えば具体的にはナフテン系炭化水素、パラフィン系炭化水素および芳香族炭化水素等から構成されたものである。炭化水素油としては、通常、水素化精製等の石油精製工程により硫黄化合物、窒素化合物、酸素化合物および不飽和成分等を除去されたものが用いられるが、電気的性質および熱・酸化安定性を保持するように各種の有効成分の含有量が制御されている。合成系絶縁油としてはアルキルベンゼン、シリコーン油等が挙げられる。【0023】さらに、これらの鉱油系および合成系絶縁油の混合物ならびにこれらを基油とするベンゾトリアゾール等の添加剤のほか酸化防止剤等を配合したものも使用することができる。【0024】次に、本発明の絶縁紙の劣化度測定方法が適用される油入電気機器に用いられる絶縁紙は、前記の式Iに示す如きセルロース化合物を構成成分とするものが好適であり、さらに、前記セルロース化合物に化学処理を加えたもの、例えばアミン添加紙等、また、芳香族ポリアミドを構成材料とする合成繊維紙等も使用することができる。アミン添加紙は、セルロース系絶縁紙に例えばジシアンジアミド等のアミン系化合物を添加したものであり耐熱性を改良したものである。セルロース系絶縁紙は、分子中に結晶部分と非結晶部分を有し、平均重合度としては特に限定されるものではないが、1,000前後のものであり、具体的には800〜1,000のもの、すなわち、前記式Iのセルロース化合物において構成成分の繰り返し単位nが800〜1,000のものである。絶縁紙は、長期間にわたって使用され、その長期間の使用により主成分のセルロース化合物が分解、酸化等により劣化し、平均重合度の低下に伴ない機械的強度が低下する。通常、平均重合度が450以下を絶縁紙の寿命に達したとされている。【0025】本発明の絶縁紙の劣化度の測定方法の操作およびその測定装置は、特に限定されるものではなく、絶縁紙微細断片の構成または組成成分等に着目して任意に選択することができる。セルロース繊維の結晶性を把握するためにはX線回折装置を用いることができ、X線照射によりセルロース系繊維の結晶の特定の回折角度において現われるX線スペクトルのピークの半価幅を測定対象とすることができる。X線回折装置を用いる場合は、採取試料が少量でもよく、セルロース繊維1本または数本でも半価幅の測定が可能である。また、採取試料の量が多い場合は、加熱減量特性、ガス発生量特性等を熱分析装置、質量分析装置、赤外吸収分析装置、走査型電子顕微鏡等を使用し測定することができる。【0026】セルロース繊維を加熱すると加熱分解により重量減少が生ずるが、絶縁紙の劣化度により熱重量減少特性(例えば減量開始温度)が異なる。これにより熱分析装置を用いて、加熱による試料の熱重量減少特性を測定し、別途作成した熱重量減少特性と絶縁紙劣化度との関係図から絶縁紙の平均重合度を求めることができる。【0027】また、セルロース繊維を加熱すると、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、炭化水素ガスが発生する。各ガスの発生量は絶縁紙の劣化度により異なる。これより質量分析装置により加熱により発生する各ガスの発生量を求め、別途作成した発生ガス成分比および生成量と絶縁紙の劣化度との関係図から絶縁紙の平均重合度を求めることができる。【0028】セルロース繊維に赤外線を照射するとセルロース特有の吸収(吸収スペクトルの波数;900〜1000cm-1に現われる特性吸収)が観測される。絶縁紙が劣化した場合にはさらに劣化に起因する吸収が観測され、この特性吸収の強度は絶縁紙の劣化度により異なる。これより赤外線吸収分析装置によりセルロース繊維の劣化に起因する特性吸収の強度を測定し、別途作成した絶縁紙の劣化度と当該特性吸収の強度との関係図から絶縁紙の平均重合度を求めることができる。【0029】さらに、セルロース繊維の束を走査形電子顕微鏡により観察すると幅数10μmのセルロース繊維が観察される。セルロース繊維の劣化が進んでいないときは繊維の表面には付着物はない。しかし油中で劣化が進んだ場合は、繊維表面に付着物が観察される。この現象に基づいて走査形電子顕微鏡によりセルロース繊維の付着物および変形などの特定の指標となる物理的化学的性状を測定し、別途作成した物理的化学的性状と絶縁紙の劣化度との関係より絶縁紙の平均重合度を求めることができる。【0030】前記各測定装置のうちでもX線回折装置は、絶縁紙セルロース繊維が結晶となっていることに着目して用いるものであり、セルロース繊維結晶の特定の回折角度において現われるX線スペクトルのピークについて測定された半価幅より平均重合度を求めるものであってセルロース繊維の結晶構造およびその変化を追跡することができるので特に好適である。【0031】一般に、X線を結晶に照射すると、結晶格子面で反射し、互いに干渉し合い、下記の式IIを満たす方向の回折線のみ強度が増大する。反射X線強度を反射角度との関係として表すと結晶に固有の角度でピークが現われる。図1に実施例1の方法に従って絶縁油から採取した絶縁紙セルロース繊維の結晶のX線回折図形の具体例を示す。同回折図形の回折角度2θ=22.6〜23.0°において現われるピークが絶縁紙セルロース繊維に特定のものであり、絶縁紙の劣化度を測定する上で、該回折角度において現われるピークの半価幅を用いることが有用である。なお、半価幅は、同角度におけるピーク高さの1/2の位置の幅として求められる。【0032】【式2】絶縁紙セルロース繊維の少なくとも一部を構成する結晶の状態は、絶縁紙の平均重合度と共に変化する。すなわち、X線回折装置により測定される絶縁紙セルロース繊維の結晶の回折角度2θ=22.6〜23.0°におけるX線スペクトルのピークの半価幅は、絶縁紙の平均重合度の低下と共に小さくなり、半価幅と平均重合度(劣化度)との間にはよい相関が存在することを本発明者らの検討の結果、見い出されたものである。【0033】従って、かかる知見に基づいて次の如きステップ(1)〜(5)により絶縁油中の絶縁紙の平均重合度、すなわち劣化度を求めることができる。(1)あらかじめ絶縁紙セルロース繊維の結晶の回折角度2θ=22.6〜23.0において現われるピークの半価幅と絶縁紙の平均重合度の相関関係図を検量線として用意する。(2)絶縁紙セルロース繊維が浮遊する絶縁油を油入電気機器から採取する。(3)前記ステップ(2)において絶縁油から絶縁紙セルロース繊維を分離する。(4)前記ステップ(3)にて得られた絶縁紙セルロース繊維から少なくとも1本の繊維を抜きとり、該繊維の結晶の前記半価幅をX線回折装置により求める。(5)前記ステップ(1)にて作成された検量線を使用してステップ(4)で求めた半価幅に対応する絶縁紙の平均重合度を求める。【0034】以下、前記各ステップについてさらに具体的に説明する。前記ステップ(1)は、絶縁紙セルロース繊維の結晶の半価幅と絶縁紙の平均重合度との相関関係図(検量線)の作成に関するものであるが、さらに具体的には次の工程(a)〜(f)を含む。【0035】(a)絶縁油中または空気中にて絶縁紙を一定温度で加熱して得られた平均重合度約200を最低とし約200毎に1200までの各絶縁紙をそれぞれ約1gずつ用意する。(b)それぞれの平均重合度の絶縁紙からピンセット、針等でセルロース繊維を採取する。個々の絶縁紙セルロース繊維のばらつきを考慮して、複数箇所から採取する。(c)前記絶縁紙セルロース繊維を採取した絶縁紙の平均重合度をJEM1455「変圧器用絶縁紙の平均重合度測定方法」により確認する。(d)前記工程(b)にて採取されたそれぞれの箇所の繊維から1本の繊維を取り出し、X線回折装置により次のようにして絶縁紙セルロース繊維結晶の半価幅を測定する。X線を絶縁紙セルロース繊維試料に直角方向に入射角度を変えながら連続的に照射し、反射X線の強度を連続的に測定し記録する。反射X線強度は、絶縁紙セルロース繊維の結晶に独得の角度でピーク(X線回折)を示す。記録紙上またはディスプレイ上には横軸が照射角度、縦軸が反射X線強度の山として記録される。このピークの高さの1/2に相当する山の幅が半価幅として記録される。(e)前記工程(a)〜(d)の操作を前記の用意した各平均重合度の絶縁紙について行なう。(f)以上の結果から図2に示す半価幅の比率と絶縁紙の平均重合度の相関関係図(検量線)が得られる。なお、図2では、縦軸の半価幅の比率は、平均重合度1000に対する半価幅1.879の比率として表している。この検量線が準備されていれば、絶縁紙の劣化度測定は前記ステップ(2)から開始すればよい。【0036】前記ステップ(2)は、絶縁油中の絶縁紙セルロース繊維の採取に関するものであり、劣化度の測定対象とされる絶縁紙が使用されている油入電気機器から絶縁紙セルロース繊維が浮遊する絶縁油を所定量採取する。【0037】採取された絶縁油を図3に示すプロセスでメッシュの異なる二種以上のメンブランフィルターで濾過し繊維を分別し採取するか、または絶縁紙から直接採取する。採取方法は、これらの方法に限定されるものではなく、絶縁油中から絶縁紙セルロース繊維を十分採取できる方法であれば、いずれの方法でも任意に採用することができる。フィルターとしてはPTFE(四フッ化エチレン樹脂)が有用であり、メンブランフィルターとして微多孔性のもので孔径が0.5〜1μmのものが好ましい。なお、絶縁油中に油中微粒子として金属微粒子、塵埃等が繊維と共存している場合は図3の分別方法により除外することができるが、分別された繊維についてさらに光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡により繊維の形状を確認し絶縁紙セルロース繊維のみを選択することが好ましく、これにより測定精度および再現性をさらに向上させることができる。【0038】次にステップ(3)は、採取されたセルロース繊維の結晶性等の物理的化学的性状の評価を行なうことを内容とするものであり、X線回折装置を用いる場合において具体的には結晶の半価幅の測定に関するものである。前記ステップ(2)にて採取された絶縁紙セルロース繊維のなかから1本または数本の繊維を取り出し、X線回折装置で回折角度2θ=22.6〜23.0°におけるピークの半価幅を測定する。半価幅の測定は、前記(1)(d)の方法と同一の方法により行なう。測定に際しては、誤差を抑制するために試料の絶縁紙セルロース繊維として数本の繊維を用いることが好ましい。【0039】ステップ(4)は、前記ステップ(3)にて得られた半価幅から絶縁紙の平均重合度を推定するものであり、前記ステップ(1)にて作成された検量線を使用してステップ(3)で得られた半価幅に対応する絶縁紙の平均重合度を求めるものである。【0040】以上述べた如く、本発明の絶縁紙の劣化度測定方法は、従来、採用されている化学的方法、例えば二酸化炭素+一酸化炭素量等の測定値を用いる間接的方法をとらず、絶縁紙セルロース繊維の物理的性状を直接測定することにより行なわれるものであり、精度および再現性も優れたものである。【0041】すなわち、X線回折装置のほか、熱分析装置ではセルロース繊維の熱重量減少、質量分析装置では加熱による生成ガス量、赤外分光分析装置では絶縁紙の劣化を表す特性吸収の強度、走査型電子顕微鏡では繊維の付着物および変形の測定等の物理的化学的性状を測定することにより、絶縁紙の平均重合度を求めることができる。【0042】【実施例】次に実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。もっとも本発明は、実施例等により何ら制限されるものではない。【0043】なお、実施例等にて用いたX線回折装置は、日本電子(株)製JDX−8030であり、測定条件は次の通りである。X線回折分析測定条件ターゲット: 銅管電圧 : 40kV管電流 : 30mA【0044】実施例1セルロース系絶縁紙が巻回され、絶縁油として鉱油(比重:0.88〜0.91)が充填された稼動中の送電用変圧器Aのドレイン部から絶縁紙セルロース繊維が浮遊した絶縁油5リットルを試料油として採取し、図3に示す分別方法に従い絶縁油に油中微粒子として混入されていた金属類、カーボンおよび塵埃等を除去し、絶縁紙セルロース繊維を分別した。【0045】試料油は、先ず、0.8μmメンブランフィルターを用いて濾過し、残渣(1)0.5mgを採取した。濾液はカーボン微粒子の回収のために0.025μmメンブランフィルターによる濾過に供した。残渣(1)に溶剤として石油エーテル100mlを添加し、超音波を用いて残渣を溶液中に分散させた。超音波による分散処理後、静置し上澄み液と残渣(2)を分離した。該上澄み液をさらに0.8μmのメンブランフィルターで濾過し残渣(3)として絶縁紙セルロース繊維を0.05mg得た。前記分別操作の結果、得られた絶縁紙セルロース繊維は、幅5〜50μm、長さ20μm〜2mmのものであった。【0046】ここで得られた細く短かい絶縁紙セルロース繊維数本を光学顕微鏡で観察した(図4参照。)。その形状を確認し、絶縁紙セルロース繊維のみをピンセットで選択した。図4には細長い絶縁紙セルロース繊維が示されている。また、黒い部分には繊維のかたまりが観察される。さらに、選択された絶縁紙セルロース繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し形状が偏平状であることからセルロース繊維であることを確認した(図5参照。)。これらの繊維を2本〜5本取り出し、平行に並べてX線照射に供した。【0047】X線照射において絶縁紙セルロース繊維3本に対しX線を直角方向に入射角度を変えながら連続的に照射し、反射X線の強度を連続的に測定し、図1に示すX線スペクトルを得た。回折角度2θ=22.6〜23.0°における半価幅が1.785°であり、半価幅の比が0.950であった。得られた半価幅の比から図2の検量線を用いて絶縁紙の平均重合度を算出したところ487の結果を得た。【0048】実施例2試料油として実施例1と同一の絶縁油を用いて同一の分別操作を繰り返し、採取した絶縁紙セルロース繊維について半価幅を測定した。分別および半価幅の測定操作を二回繰り返したところ変動係数1%以内の結果を得た。二つの測定結果には有意差は認められなかった。【0049】実施例3〜6油入変圧器B(実施例3)、油入変圧器C(実施例4)、油入変圧器D(実施例5)および油入変圧器E(実施例6)の各ドレイン部からそれぞれ絶縁油数リットルを試料油として採取し、実施例1の操作と同一の操作により絶縁紙セルロース繊維のみを分離し、これらのなかから2〜5本の絶縁紙セルロース繊維を選択し、X線回折装置により半価幅の測定に供した。結果を次に示す。【0050】また、各試料の半価幅の測定から図2の検量線を用いて絶縁紙の平均重合度を求めた。【0051】【発明の効果】本発明による絶縁油中の絶縁紙の劣化度測定方法によれば、従来方法による油中の劣化生成物量から絶縁紙の平均重合度への換算が必要でなく、絶縁紙を構成するセルロース繊維の物理的化学的性状の評価により絶縁紙の劣化度を短時間で、精度、再現性よく測定することができる。また、油中劣化生成物量の換算により求められた絶縁紙の劣化度を確認する手段としても有用である。さらに、本発明の測定方法によれば、試料として油入電気機器から絶縁紙セルロース繊維を採取し、X線回折装置を用いてセルロース繊維結晶の半価幅を測定するのに要する時間は、2〜3時間であり、絶縁紙の劣化生成物であるCO2 +CO、フルフラール、アセトン等の生成量から絶縁紙の平均重合度を求める化学的方法が約1.5日の測定時間を要するのに対し極めて短時間での測定が可能である。【図面の簡単な説明】【図1】 絶縁紙セルロース繊維のX線回折図形である。【図2】 絶縁紙の平均重合度と半価幅の比率との相関関係図(検量線)である。【図3】 絶縁紙セルロース繊維の分別方法である。【図4】 絶縁紙セルロース繊維の光学顕微鏡観察による写真(倍率;40)である。【図5】 絶縁紙セルロース繊維の走査型電子顕微鏡による写真(倍率;500)である。 巻線が絶縁紙で巻回され、該絶縁紙と充填された絶縁油とが接触している油入電気機器において、前記絶縁紙から剥離し、前記絶縁油中に浮遊する絶縁紙微細断片を採取し、該絶縁紙微細断片の物理的化学的性状を分析し、該分析結果に基づいて前記絶縁紙の平均重合度を求めることを特徴とする油入電気機器絶縁紙の劣化度測定方法。 絶縁油中に浮遊する絶縁紙微細断片を一種または二種以上の微細孔フィルターにより捕捉分別して採取するか、他の方法で絶縁油中に浮遊する絶縁紙微細断片を直接捕捉して採取するかまたは絶縁油中の絶縁紙から直接絶縁紙微細断片を採取し、その一本または二本以上の微細断片について、X線回折装置、熱分析装置、質量分析装置、赤外分光分析装置および走査型電子顕微鏡からなる群より選択される少なくとも一種の装置により、その物理的化学的性状を分析し、分析結果に基づいて前記絶縁紙の劣化度を測定する方法。 前記絶縁紙の主成分がセルロース化合物である請求項1または2に記載の油入電気機器絶縁紙の劣化度測定方法。 前記絶縁紙微細断片が、絶縁紙セルロース繊維である請求項1または2に記載の油入電気機器絶縁紙の劣化度測定方法。 前記絶縁紙微細断片の物理的化学的性状が、X線回折装置を用いて測定される絶縁紙セルロース繊維の結晶の回折角度2θ=22.6〜23.0°において現われるX線スペクトルのピークの半価幅である請求項1ないし4のいずれかの1項に記載の油入電気機器絶縁紙の劣化度測定方法。 前記絶縁紙微細断片の物理的化学的性状が、熱分析装置を用いて測定される絶縁紙セルロース繊維の加熱減量特性である請求項1ないし4のいずれかの1項に記載の油入電気機器絶縁紙の劣化度測定方法。 前記絶縁紙微細断片の物理的化学的性状が、質量分析装置を用いて測定される絶縁紙セルロース繊維の加熱による発生ガス量である請求項1ないし4のいずれかの1項に記載の油入電気機器絶縁紙の劣化度測定方法。 前記絶縁紙微細断片の物理的化学的性状が、赤外分光分析装置を用いて測定される絶縁紙セルロース繊維の特性吸収の強さである請求項1ないし4のいずれかの1項に記載の油入電気機器絶縁紙の劣化度測定方法。 前記絶縁紙微細断片の物理的化学的性状が、走査型電子顕微鏡を用いて測定される絶縁紙セルロース繊維に付着した生成物量である請求項1ないし4のいずれかの1項に記載の油入電気機器絶縁紙の劣化度測定方法。 前記絶縁油中の前記絶縁紙微細断片の採取の手段が、少なくとも一種のメンブランフィルターによる捕捉分別である請求項1または2に記載の油入電気機器絶縁紙の劣化度測定方法。


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