タイトル: | 再公表特許(A1)_Mdm2により触媒されるRBのポリユビキチン化反応 |
出願番号: | 2002005354 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N33/50,A61K38/53,A61P35/00,C12N9/99,C12Q1/02,C12Q1/25,G01N33/15,G01N33/53,G01N33/566 |
北川 雅敏 安田 秀世 JP WO2003102576 20031211 JP2002005354 20020531 Mdm2により触媒されるRBのポリユビキチン化反応 北川 雅敏 504439746 安田 秀世 504439850 株式会社アクシアバイオサイエンス 502229129 津国 肇 100078662 篠田 文雄 100075225 北川 雅敏 安田 秀世 7 G01N33/50 A61K38/53 A61P35/00 C12N9/99 C12Q1/02 C12Q1/25 G01N33/15 G01N33/53 G01N33/566 JP G01N33/50 Z A61P35/00 C12N9/99 C12Q1/02 C12Q1/25 G01N33/15 Z G01N33/53 D G01N33/566 A61K37/60 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,CH,CY,DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AU,BA,BB,BG,BR,BZ,CA,CN,CO,CR,CU,CZ,DM,DZ,EC,EE,GD,GE,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KR,LC,LK,LR,LT,LV,MA,MG,MK,MN,MX,NO,NZ,OM,PH,PL,RO,SG,SI,SK,TN,TT,UA,US,UZ,VN,YU,ZA 再公表特許(A1) 20050929 2004509411 20 技術分野本発明は、RB(網膜芽細胞腫タンパク質)及びMdm2(murine double minute 2タンパク質)を含む、RBのポリユビキチン化を測定するための組成物及び該組成物を用いるRBのユビキチン化阻害剤をスクリーニングする方法に関する。Mdm2は本特許発明者の安田等が癌抑制遺伝子産物であるp53のポリユビキチン化を触媒するユビキチンリガーゼであることを発見した(R.Honda,H.Tanaka,H.Yasuda:Oncoprotein MDM2 is a ubiquitin ligase E3 for tumor suppressor p53,FEBS Lett.,420,25−27,1997)。p53は非常に不安定なタンパク質で、細胞がDNA損傷等の影響を受けた時にp53のタンパク質レベルが上昇し、その結果、細胞をG1期に止め、DNA複製を行うS期への侵入を阻止し、この間にDNAの修復を行わせるか、あるいは修復が不可能と判断された場合には細胞をアポトーシスに導き、癌化した細胞の出現を未然に防ぐと考えられる。RBは928アミノ酸残基(分子量:約110kD)からなり、主に転写因子E2Fと結合してその活性を抑え、細胞周期をG1期に停止することにより細胞増殖を抑制する。また、サイクリン依存性キナーゼ(サイクリンD/サイクリン依存キナーゼ4)の作用によりRBがリン酸化されることにより、RBはE2Fから解離し、サイクリンE、ジヒドロフォレートリダクターゼ遺伝子等のG1→S期の進行に必要な遺伝子群を活性化する。その結果、細胞周期が進行し、細胞増殖が再開される(図4C)。一方、RBは、癌抑制遺伝子としても知られており、RB遺伝子の変異(活性の欠失)は網膜芽細胞腫、肺小細胞癌、乳癌、膀胱癌等においてしばしば検出される。これは、RBによる細胞増殖抑制活性の消失がその一因となっている。p53遺伝子及びRB遺伝子の変異による同時不活化が、多くの癌で見出されている。その典型例として、ハイリスク型であるヒトパピローマウイルスの16型及び18型によるヒト子宮頸癌が、挙げられる。このウイルスは、癌化に必要なE6及びE7遺伝子を有し、E6タンパク質は、E6AP(E6−associated protein)と結合し、p53をポリユビキチン化するE3酵素として作用する。ポリユビキチン化されたp53は、プロテアソームにより急速な分解を受ける。E7は、RBをプロテアソームに動員して、RBの分解を促進する。このように、2種類の癌抑制遺伝子産物であるp53とRBの分解が、ヒト子宮頸癌の発症の重要な原因となっている。従来、RBをターゲットにしたドラッグディスカバリーは、サイクリン依存性キナーゼの特異的阻害剤の探索により行われてきた。RBのリン酸化を阻害すると、RBがE2Fと結合し、その転写活性を抑制する。その結果、その阻害剤は、G1期からS期への細胞周期の進行を阻止することができる。しかし、実際には、サイクリン依存性キナーゼだけに特異的に作用し、他のタイプのキナーゼには作用しない薬剤を見出すことは非常に困難であり、RBリン酸化の阻害剤は、その特異性に難点があった。本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、RBがポリユビキチン化されること、さらに、Mdm2がRBのポリユビキチン化を触媒することを見出し、本発明を完成させた。発明の開示本発明は、癌化学療法の分野において、Mdm2によるp53とRBのポリユビキチン化の阻害剤を発見することができるという新たな知見をもたらす。また、Mdm2によるRBのポリユビキチン化阻害剤、及び、Mdm2によるp53とRBのポリユビキチン化の両者の阻害剤は、癌細胞の増殖を阻害し、アポトーシスに導くことができ、さらに、Mdm2は、基質特異性が高いことから、特異性の高い阻害剤を得ることができる。また、本発明は、RB及びMdm2を含むRBのポリユビキチン化を測定するための組成物及び該組成物を用いるRBのポリユビキチン化阻害剤をスクリーニングする方法を提供する。本発明の組成物及びスクリーニング方法を用いることによって、RBポリユビキチン化の特異的阻害剤を探索することができる。また、本発明にしたがって得られた阻害剤は、Mdm2によるp53のポリユビキチン化も阻害する可能性がある。RB及びp53の両者のポリユビキチン化を阻害し、そしてIC50が著しく低い阻害剤は、優れた制癌剤であると考えられる。さらに、本発明で開示したインビボのアッセイ系を用いることによってスクリーニングされた阻害剤を評価することができ、新規制癌剤を開発することができる。発明を実施するための最良の形態本発明のMdm2及びRBは、大腸菌等の原核微生物の系、酵母の系、バキュロウイルスを感染させた昆虫細胞あるいは蚕の系、動物細胞を用いた系において組換型タンパク質として生産させ、その抽出液を使用することができる。さらに、抽出液から部分精製を行い調製したタンパク質がより好ましい。この場合に、予め遺伝子に、ヘキサヒスチジン又はGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)遺伝子を組み込み、それらのペプチド又はタンパク質との融合型として産生したタンパク質を用いることもできる。この手法をタグを付けるというが、これら以外にXpressタグ、HAタグ、mycタグ、マルトース結合タンパク質タグ等種々のタグを使用することができる。Mdm2及びRB遺伝子は、ヒト由来のものが好ましい。ヒト以外にもマウス等の動物由来の遺伝子、酵母由来の遺伝子、植物由来の遺伝子等を使用することができる。ポリユビキチン化RBを、SDS−PAGE及びイムノブロット法を用いて検出することができる。ポリユビキチン化RBを検出するための抗体としてビオチン化ユビキチンを用いた場合にはアビジン−西洋ワサビパーオキシダーゼを、HAタグユビキチンを用いた場合には抗HA抗体を、Xpressタグの結合したユビキチンあるいはRBを用いた場合には抗Xpress抗体を用いることができる。特異的に結合した抗体を検出するために、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(Amersham Bioscience社)、AP発色キット(BioRad社)、HRP発色キット(BioRad社)等を使用することができる。また、その他の免疫化学的手法も用いることができる。Mdm2によるRBのポリユビキチン化の特異的阻害剤をスクリーニングするために、ハイスループットアッセイシステム、例えば、シンチレーション近接アッセイ(Scintillation Proximity Assay:SPA)、時間分解蛍光法(Time−Resolved Fluorescence:TRF)及び均質時間分解蛍光法(Homogeneous Time−Resolved Fluorescence:HTRF)を使用することができる(N.Yabuki,S.Watanabe,T.Kudoh,S.Nihira,C.Miyamoto:Application of Homogeneous Time−Resolved Fluorescence(HTRFTM)to Monitor Poly−ubiquitination of Wild−type p53,Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening,2,279−287,1999)。この他にも、蛍光標識又は放射性同位元素標識を用いる系を使用することができる。SPA法では、125I−ユビキチン又は3H−ユビキチンとビオチン化したRBとを反応系に加えてポリユビキチン化反応を行う。ポリユビキチン化RBをストレプトアビジン標識のSPAビーズを用いてトラップすると、125I−又は3H−標識ポリユビキチンのβ線がSPAビーズに照射されることによりSPAビーズから光が放出される。この光量を30秒間MicroBeta(Wallac社)等の測定装置を用いて測定する。HTRF法では、ユーロピウムクリプテートで標識したユビキチン及びビオチン化したRBを反応系に加え、ポリユビキチン化RBを生成させ、その後、ストレプトアビジン標識XL665を添加する。ビオチン−アビジン結合によりXL665とポリユビキチン化RBとが複合体を形成する。この複合体に、Discovery(Packard Instrument Company)等の測定装置を使用して337nmの光を照射すると、ポリユビキチン鎖中のユーロピウムクリプテートが励起され、励起されたエネルギーがXL665に転移する。その結果、XL665は、665nmの光を放出する。この光の強度を測定し、この測定値をポリユビキチン化RBの量に換算する。このようなハイスループットスクリーニングを行うことにより、Mdm2によるRBのポリユビキチン化の阻害剤を同定することができる。スクリーニングのためには、化合物のライブラリー、合成ペプチドライブラリー、ペプチド発現ファージライブラリー、微生物抽出液・培養濾液、生薬抽出物等のライブラリーを使用することができる。一方、Mdm2とRBの三次元構造からコンピューター上で阻害剤をデザインすることもできる。これをインシリコドラッグデザイン(in silico drug design)という。デザインされた化合物のIC50を上記アッセイ法を用いて算出することができる。本発明は、さらに、インビトロで同定された阻害剤の細胞レベル(インビボ)での評価系も提供する。すなわち、阻害剤の細胞レベル(インビボ)での効果は、タグ付きのRB、Mdm2及びユビキチン発現プラスミドを細胞にトランスフェクションし、細胞内で生成したポリユビキチン化RB及びRBのレベルをSDS−PAGE、イムノブロット法を用いて検出することによって評価することができる(図2A、B及びD)。また、癌細胞のフラット化の誘導を測定することによって、RBポリユビキチン化阻害剤のRBの安定化に対する寄与を解析することも可能である(図4A、B)。阻害剤の多種類の誘導体を合成し、細胞レベルでの評価を行うことにより、候補化合物を同定することができる。さらに、この化合物を用いて担癌マウスモデルでの評価、マウス及び犬等の動物を用いる薬理試験、急性及び慢性毒性試験等の安全性試験、安定性試験等を経て、臨床試験に進むことができる。ヒトMdm2(EMBL:Z12020)は、491アミノ酸残基からなり、ユビキチンリガーゼの活性に必要な触媒部位(リングフィンガードメイン)を438残基から478残基の間に有する。この領域のコンセンサス配列にある6つのシステイン残基のいずれか1つ以上を他のアミノ酸に置換するか又は欠失させるとユビキチンリガーゼの活性が消失する。このMdm2変異体は、ドミナントネガティブな作用を有し、RBのポリユビキチン化を阻害する(図2Aレーン1と3、図2B右図と左図レーン3と5)。したがって、RBと結合する部位を保持し、ユビキチンリガーゼの活性を失ったドミナントネガティブなMdm2変異体をプラスミド又はウイルスベクターを用いて発現させることにより、野生型Mdm2の過剰発現が原因である悪性腫瘍を治療することができる。実施例本発明を下記の実施例においてさらに具体的に説明するが、これに限定されるものではない。実施例1 Mdm2は、RBのポリユビキチン化を促進する。(1)インビトロでRBは、Mdm2によってポリユビキチン化されるユビキチン活性化酵素(E1酵素)、His6−UbcH5(E2酵素)、野生型GST−Mdm2(野生型GST−Mdm2を発現しているSf9細胞抽出液)、全配列を有する精製された組換型RB、ユビキチン、バッファーA(50mM Tris−HCl pH8.3、2mM ジチオトレイオール、5mM MgCl2、10mM ATP、1mM ホスホクレアチニン、500U/ml ホスホクレアチニンキナーゼ、4mM LLnL、25μg/ml ユビキチンアルデヒド、10μg/ml プロテアーゼ阻害剤)を30℃で30分間インキュベーションした。反応終了後、抗RB抗体(C−15)を添加し、遠心分離により抗体がトラップしたRB及びポリユビキチン化したRBを回収した(免疫沈降法)。このサンプルにSDSサンプルバッファーを加え、100℃で10分間加熱することにより変性させ、それをSDSポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動した。次に、ポリアクリルアミドゲルで分画されたタンパク質をPVDF(ポリビニリデンジフルオリド)膜に移し、ECL(化学発光)キットを用いて、RB及びポリユビキチン化したRBを抗RB抗体(C−15)を用いて検出した(イムノブロッティング法)。173kDaの位置にポリユビキチン化RBのスメアバンドが検出された(図1A、レーン2)。反応液にRBを添加しない場合、また、変異型Mdm2(Mdm2のリングフィンガー領域のコンセンサス配列の6つのシステイン残基のいずれか1つ以上がアラニンに変異しており、ユビキチンリガーゼの活性を失っている)を用いた場合には、ポリユビキチン化されたRBは、検出されなかった(図1A、レーン1と3)。したがって、Ubn−RBのスメアバンドがポリユビキチン化されたRBであることは明らかである。(2)精製されたタンパク質を用いたRBのポリユビキチン化系の再構成。精製されたGST−Mdm2によるRBのポリユビキチン化を検討した。ユビキチン活性化酵素、His6−UbcH5、精製されたGST−Mdm2、精製された全配列を有する組換型RB、ビオチン化ユビキチン及びバッファーAを30℃で30分間インキュベーションした。反応終了後、反応液にSDSサンプルバッファーを加え、100℃で10分間加熱することにより変性させ、抗RB抗体3H9(MBL社)を用いた免疫沈降法によりRBを分離した。得られたサンプルをSDS−6%PAGEに供し、次にPVDF膜に移した。これにアビジン−西洋ワサビパーオキシダーゼを加え、ECL検出試薬により発色させ、ポリユビキチン化RB中のビオチン化ユビキチンを検出した。この結果、ビオチン化ユビキチンが1個、2個又は3個以上結合したRBが、検出された(図1B、レーン2)。一方、E2共役酵素であるUbcH5を加えていない場合、さらに、変異型Mdm2を用いた場合には、RBのポリユビキチン化は、起こらなかった(図1Bレーン1と3)。したがって、図1Bのレーン2で検出されたスメアバンドは、ポリユビキチン化されたRBと判定される。(3)Mdm2と結合したRBがポリユビキチン化される。Mdm2と結合したRBがポリユビキチン化されることを証明するために、ポリユビキチン化反応の後にプルダウン法によりMdm2と結合したRBを回収し、RBのポリユビキチン化を解析した。野生型GST−Mdm2を発現しているSf9細胞抽出液を全配列を有する組換型RB又はHis6−p53と4℃で30分間インキュベーションした。次に、グルタチオンビーズ(Amersham Bioscience社)を用いて、GSTMdm2−RB複合体をSf9細胞抽出液から回収した(プルダウン法)。回収されたタンパク質にユビキチン活性化酵素、His6−UbcH5、ユビキチン及びバッファーAを加え、30℃で30分間インキュベーションした。次に、上記(1)と同様に免疫沈降、SDS−PAGE、イムノブロットの一連の操作を行った。抗RB抗体C15を用いてRBを検出したところ、RBモノマーに加えてポリユビキチン化したRBが、検出された(図1C上図レーン2)。また、抗p53抗体Pab240(Santa Cruz社)を用いてRBを検出したところ、p53モノマーに加えてモノ、ジ、トリユビキチン化されたp53が、検出された(図1C下図レーン4)。RBを加えない場合(図1C上図レーン1)及び変異型GST−Mdm2を発現しているSf9細胞抽出液を用いた場合(図1C上図レーン3)では、ポリユビキチン化されたRBは、検出されなかった。(4)細胞内でMdm2はRBと結合している大腸癌細胞抽出液を用いて、Mdm2がRBと結合しているかどうか解析した。細胞内では、ポリユビキチン化したRBは直ちにプロテアソームにより分解を受ける。この分解を防ぐために、20μM MG115(プロテアソーム阻害剤)存在下で8時間培養した大腸癌細胞HCT116からセルライセートを調製し、得られたセルライセート中でMdm2とRBが結合しているかどうかを検討した。セルライセートに抗Mdm2抗体SMP14を加え、免疫沈降させ、Mdm2複合体を回収した。次に、得られたMdm2複合体をSDS−PAGEに供した後、抗RB抗体を用いるイムノブロット法によりRBを検出した。その結果、大腸癌細胞HCT116中でMdm2と結合しているHCT116細胞に由来するRBが検出された(図1Dレーン4)。また、抗Mdm2抗体を用いる免疫沈降では、HCT116細胞に含まれる約80kDaのMdm2が検出された(図1Dレーン2)。コントロールであるマウスIgGを用いた免疫沈降では、Mdm2及びRBは検出されなかった。以上の結果より、Mdm2は、RBと結合し、かつ、RBのポリユビキチン化反応を触媒するE3酵素であることが証明された。実施例2 細胞内のMdm2によるRBのポリユビキチン化は、癌抑制遺伝子産物であるARFにより阻害を受ける。(1)細胞内でRBは、Mdm2によりポリユビキチン化される。細胞にRB、Mdm2及びユビキチン発現プラスミドをコトランスフェクションし、この細胞を、ポリユビキチン化RBの分解を防ぐためにプロテアソーム阻害剤の存在下で培養し、効率良くポリユビキチン化RBを細胞内で生成させ、それを検出した。ヒトRB発現プラスミド(pcDNA4−HisMax−hRB−RI*:**Xpress−タグ付きRBを発現)、Mdm2発現プラスミド(pcDNA4−Mdm2)及びユビキチン発現プラスミド(pcDNA3−HA−ユビキチン:HA***−タグ付きユビキチンを発現)を、大腸癌細胞HCT116及び腎癌細胞HEK293にそれぞれコトランスフェクションした。40時間後、細胞を10μM MG115存在下で8時間インキュベーションし、その細胞抽出液を抗RB抗体C−15を用いて免疫沈降した。得られたサンプルをSDSサンプルバッファー中で変性させ、RBと結合しているタンパク質を解離させた。この工程は、RB以外のポリユビキチン化タンパク質を除くために重要である。それを1ml IPバッファーで希釈後、抗RB抗体C−15を用いて免疫沈降させた。免疫沈降により精製されたRBをSDS−7%PAGEを用いて分画した後、ポリユビキチンを検出するために抗HA抗体(Sigma社)を、RBを検出するために抗Xpress抗体(Invitrogen社)を用いてイムノブロット法により検出した。大腸癌細胞HCT116細胞を用い、抗HA抗体によりイムノブロットを行った場合には、ポリユビキチン化されたRBと推定されるタンパク質が検出された(図2Aレーン2)。Mdm2発現プラスミドをトランスフェクションしない場合には、ポリユビキチン化RBの検出レベルは、低かった(図2Aレーン1)。Mdm2発現プラスミドをトランスフェクションすることによって、RBのポリユビキチン化が、顕著に増大した。一方、変異型Mdm2発現プラスミドをトランスフェクションした場合には、ポリユビキチン化RBは、ほとんど検出されなかった(図2Aレーン3)。したがって、変異型Mdm2は、ドミナントネガティブに作用する、即ち、変異型Mdm2は、RBのポリユビキチン化を阻害すると判断される。ユビキチン発現プラスミドをトランスフェクションしない場合には、レーン2で検出されたスメアバンドは、検出されなかった(図2Aレーン4)。次に、ヒトRB発現プラスミドのトランスフェクションを効率良く行うために、腎癌細胞HEK293を用いて同様の実験を行った。その結果、抗Xpress抗体を用いてRBの検出を行ったところ、大腸癌細胞HCT116ではポリユビキチン化RBは検出されなかったが(データは示さず)、腎癌細胞HEK293では高レベルでポリユビキチン化RBが検出された(図2B右図レーン4)。したがって、ポリユビキチン化RBの生成量は腎癌細胞においてより高いと判断される。また、プロテアソーム阻害剤MG115添加により、ポリユビキチン化RBの分解が抑制されたため、その検出量が増大した(図2B右図と左図レーン1と4)。また、大腸癌細胞HCT116を用いた図2Aの結果を、腎癌細胞HEK293を用いて再確認した。即ち、Mdm2発現プラスミドのトランスフェクションによって、RBのポリユビキチン化が顕著に増加した(図2B右図と左図レーン3と4)。また、変異型Mdm2は、明らかにドミナントネガティブに作用した(図2B右図と左図レーン3と5)。また、ヒトRB発現プラスミドをトランスフェクションしない場合には、RBとポリユビキチン化RBの両者は、ともに検出されなかった(図2B右図と左図レーン2)。さらに、腎癌細胞HEK293ではアデノウイルスのE1Aタンパク質が発現しているが、E1AはRBのポリユビキチン化に全く影響しないと判定される。*RB−RIは、RBのN末端がトランケートされており、301残基〜928残基までの全長のC末端側配列を有するRBを生成する。**XpressとはAsp−Leu−Tyr−Asp−Asp−Asp−Asp−Lysのアミノ酸配列を意味し、RBと融合して発現する。***HAタグとはTyr−Pro−Tyr−Asp−Val−Pro−Asp−Tyr−Ala−Leuのアミノ酸配列を意味し、ユビキチンと融合して発現する。(2)Mdm2により触媒されるp53のポリユビキチン化は、ARFによって抑制される。ARFは、Mdm2によるp53のユビキチン化を阻害する(Honda R.,Yasuda,H.:Association of p19ARF with Mdm2 inhibits ubiquitin ligase activity of Mdm2 for tumor suppressor p53,EMBO Journal,18,22−27,1999)。ここで、ARFが、p53に対するのと同様に、Mdm2によるRBのユビキチン化を阻害するかどうか検討した。ヒトp53発現プラスミド、Mdm2発現プラスミド(pcDNA4−Mdm2)及びユビキチン発現プラスミド(pcDNA3−HA−ユビキチン:HAタグ付きユビキチンを発現)及びARF発現プラスミドを、腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。40時間後、細胞を10μM MG115と8時間インキュベーションを行い、その細胞抽出液を抗p53抗体Pab1801(Santa Cruz)を用いて免疫沈降させた。得られたサンプルをSDSサンプルバッファー中で変性させ、p53と結合しているタンパク質を解離させた。そのサンプルをSDS−7%PAGEにアプライし、その後イムノブロット法により、抗HA抗体を用いてポリユビキチン化されたp53を検出した。プロテアソーム阻害剤MG115の存在下でポリユビキチン化p53が検出された(図2Cレーン5〜8)。ARF発現プラスミドをコトランスフェクションした場合には、p53のポリユビキチン化が低下しており、ARFはp53のポリユビキチン化を抑制していると判定される(図2Cレーン6と7)。次に、p53発現プラスミドをヒトRB発現プラスミド(pcDNA4−HisMax−hRB:全配列のRBを発現)に換えて、同様の実験を行った。さらに、癌抑制遺伝子BRCA1は、リングフィンガードメインを有しているので、RBのポリユビキチン化を触媒するかどうかの検討を行うために、BRCA1発現プラスミドのトランスフェクションを行った。前記(2)と同様な方法で実験した。抗RB抗体C−15を用いて免疫沈降を行い、抗RB抗体及び抗Mdm2抗体を用いたイムノブロット法により、検出を行った。その結果、ARFタンパク質は、Mdm2の自己ユビキチン化及びRBのポリユビキチン化を明らかに阻害した(図2Dレーン3と4、レーン8と9)。一方、BRCA1は、RBのポリユビキチン化を触媒しなかった(図2Dレーン1と2、レーン6と7)。(3)Mdm2は、RBファミリーの中でRBのみをポリユビキチン化する。RBファミリーには、RB、p107及びp130がある。Mdm2によるポリユビキチン化は、RBに特異的かどうかを検討した。実施例2(2)と同様な方法で腎癌細胞HEK293にRB、p107、p130のいずれかの発現プラスミドを、Mdm2発現プラスミド(pcDNA4−Mdm2)及びユビキチン発現プラスミド(pcDNA3−HA−ユビキチン:HA−タグ付きユビキチンを発現)と共にコトランスフェクションした。その後、実施例2(2)と同様な操作を行った。抗RB抗体C−15、抗p107抗体又は抗p130抗体のいずれかを用いて免疫沈降を行った。それをSDS−PAGEに供し、各々のRBファミリータンパク質に対する抗体及び抗Mdm2抗体を用いてイムノブロット法を用いて解析した。その結果、Mdm2は、図2Dの結果と同様にRBをポリユビキチン化したが(図2E左上)、RBファミリーのp107及びp130はポリユビキチン化しなかった(図2E中央上、右上)。実施例3 Mdm2は、細胞内でRBのレベルをダウンレギュレーションする。(1)Mdm2存在下では、細胞内RBのレベルが低下する。hRB−RI、Mdm2、LacZ(大腸菌のβガラクトシダーゼ)を発現するプラスミド(pcDNA4−HisMaxに左記cDNAを挿入し、Xpress配列をタグとした融合タンパク質を発現する)を大腸癌細胞HCT116にトランスフェクションした。実施例2(2)と同様な操作を行った後、細胞抽出液をSDS−7%PAGEに供し、抗Xpress抗体又は抗Mdm2抗体SMP14を用いたイムノブロット法でRB、Mdm2及びLacZタンパク質を検出した。その結果、Mdm2の発現により、RB量が顕著に低下した(図3Aレーン2と3)。コントロールとして使用したLacZのレベルに変化はなかった(図3Aレーン1〜3)。次に、6μgのhRB−RI発現プラスミドと3〜12μgのMdm2発現プラスミドとを腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。RBの発現レベルに対するMdm2トランスフェクション量の用量依存性を検討したところ、野生型Mdm2発現プラスミドのトランスフェクション量の増加に依存してRBのレベルは顕著に低下し、用量12μgにおいては、RBはほとんど検出されなかった(図3Bレーン1〜4)。これに対して、変異型Mdm2発現プラスミドをトランスフェクションした場合には、その量に関係なくRBは、高レベルで検出された(図3Bレーン5〜7)。(2)Mdm2によるRBのダウンレギュレーションには、RBのC末端領域が必要である。pcDNA4−HisMax−hRB−RI(RBのN末端300アミノ酸残基を欠失)、pcDNA4−HisMax−hRB−RI−Xmn(RBのC末端領域を欠失)、pcDNA4−HisMax−hRB−Xmn−Not(RBのC末端領域を有する)、をpcDNA4−Mdm2と共に腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。実施例2(2)と同様な操作を行った後、細胞抽出液をSDS−7%PAGEに供し、抗Xpress抗体を用いたイムノブロット法でそれぞれのRBを検出した。その結果、RBのC末端を含有するRB−RI及びRB−Xmn−Notでは、Mdm2存在下でRBのレベルが、顕著に低下した(図3Cレーン1と2、5と6)。しかし、RBのC末端を欠失したRB−RI−Xmnでは、Mdm2存在下でもRBのレベルは、一定であった(図3Bレーン3と4)。この結果は、Mdm2によるRBのポリユビキチン化及びプロテアソームによる分解にRBのC末領域が関与していることを示す。(3)パルスチェイス実験において、Mdm2は、RBの分解を促進する。7μgのRB−RI発現プラスミド、14μgのエンプテイベクター、及び野生型Mdm2発現プラスミド又は変異型Mdm2発現プラスミドを腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。42時間後、87.5μCiのTrans35S(ICN Pharmaceuticals Inc.)を用いて細胞を1時間標識した。その後、Trans35Sを除いてパルスチェイスを行った。0分、5分、10分、15分、20分後に細胞をハーベストした。その細胞抽出液を抗RB抗体C−15を用いて免疫沈降させ、次にプロテインG−セファロースCL−4Bを用いて抗体と結合したRBを精製した。その試料をSDS−PAGEを用いる電気泳動を行い、得られたゲルを乾燥し、イメージングプレート(Fuji Film社)に適用した。得られた結果をBAS−1000(Fuji Film社)を用いて解析し、RBに取り込まれた35Sを定量した。図3Dにはイメージングプレート上の結果を、図3Eにはパルスチェイス0時間におけるRBの35S強度を100%とした相対的比率で表したグラフを示した。その結果、Mdm2は、細胞内でRBの分解を促進していることが明らかとなった(図3E、vectorとwt−Mdm2)。さらに、プロテアソーム阻害剤MG115存在下では、Mdm2によるRB分解促進は、完全に抑制された(図3E vector、wt−Mdm2、wt−Mdm2+MG115)。これは、ポリユビキチン化されたRBのプロテアソームによる分解がMG115で抑制されたことを示す。一方、変異型Mdm2をトランスフェクションした場合には、細胞内のRBはより安定化すると判断された(図3E、vectorとmt−Mdm2)。この点について再確認するために、ヒトグリオブラストーマT98G細胞(野性型p53を欠失している)に変異型Mdm2発現プラスミド(pcDNA4−HisMax−mt−Mdm2)とRB発現プラスミド(pcDNA4−HisMax−hRB−RI)をコトランスフェクションし、48時間後に抗Xpress抗体を用いて変異型Mdm2を、抗RB抗体C15を用いてRBを免疫染色した。その結果、変異型Mdm2は、明らかにRBを集積した(図3F矢印)。したがって、変異型Mdm2は、ドミナントネガティブに作用すると結論された。実施例4 Mdm2は細胞のフラット化を抑制する骨肉腫細胞(RB遺伝子を欠失している)を用いてRB遺伝子を発現させると、細胞のフラット化が誘導されることが知られている(S.Ashizawa,H.Nishizawa,M.Yamada,H.Higashi,T.Kondo,H.Ozawa,A.Kakita,M.Hatakeyama:Collective inhibition of pRB family proteins by phosphorylation in cells with p16INK4a loss or cyclin E overexpression,J.Biol.Chem,276,11362−11370,2001)。そこで、RBにより誘導される細胞のフラット化に対するMdm2の影響を検討した。2種類のプラスミドを骨肉腫細胞にコトランスフェクションした。1種類は、テトラサイクリン不在下でRBを発現するSRB−1プラスミドであり、もう1種類は、pIRES2−EGFPプラスミド(EGFP:Enhanced Green Fluorescent Protein);CLONTECH社;図4A、Bで「vector」と表示)、pIRES2−EGFP−wtMdm2プラスミド(同一のmRNAからEGFPとwtMdm2を翻訳するシステムを有する;図4A、Bで「wt−Mdm2」と表示)、及びpIRES2−EGFP−mtMdm2プラスミド(EGFPと変異型Mdm2を同時発現する;図4A、Bで「mt−Mdm2」と表示)のいずれかであった。培地は、10%FBS、0.5mg/ml G418(ネオマイシン)、0.3mg/ml ハイグロマイシン、1μg/mlテトラサイクリンを含有するDMEMを使用した。6穴プレートでのトランスフェクション後、骨肉腫細胞を7〜8日培養した。一定の視野におけるGFP陽性細胞数を蛍光顕微鏡を用いて計数し(倍率:200倍)、GFP陽性細胞中のフラット化した細胞数を位相差顕微鏡を用いて計数した。テトラサイクリン存在下では、RBは骨肉腫細胞内で発現していないためにフラット型細胞の占める%は、非常に低かった(図4Bテトラサイクリン(+))。しかし、テトラサイクリン不在下では、RBが発現するために、約64%がフラット型であった(図4Bテトラサイクリン(−)/Vector)。また、野性型Mdm2の発現下では、フラット型細胞の割合は、約26%に減少した(図4Bテトラサイクリン(−)/wt−Mdm2)。これは、野性型Mdm2がRBのポリユビキチン化を触媒し、RBのレベルが低下したためである。変異型Mdm2は、RBのユビキチン化を触媒しないことから、そのフラット化に対する影響は、ほとんど認められなかった(図4Bテトラサイクリン(−)/mt−Mdm2)。産業上の利用可能性本発明の組成物は、RBのポリユビキチン化の阻害剤及びそれを含有する医薬品の開発に有用である。Mdm2のリングフィンガー領域のコンセンサス配列であるシステインを他のアミノ酸に変えた変異型Mdm2は、ドミナントネガティブな作用を有する。ドミナントネガティブMdm2を発現するプラスミド及びウイルスベクターは、癌の遺伝子治療に有用である。【図面の簡単な説明】図1Aは、インビトロでのRBのポリユビキチン化反応を示す。RBのポリユビキチン化反応後、抗RB抗体を用いてRBを免疫沈降させた。SDS−PAGE(polyacrylamide gel electrophoresis)後、抗RB抗体を用いたイムノブロット法でRB及びそのポリユビキチン化されたタンパク質を検出した(IB:αRBで表示)。full−RBは全配列を有するRBを表し、その添加の有無を+又は−で表した。「Mdm2の欄の+」は、野性型Mdm2の添加、「Mdm2の欄のmt」は、変異型Mdm2の添加を意味する。111kDaの位置にRBが、そして173kDaの位置にポリユビキチン化RB(Ubn−RB)が、検出された(レーン2)。図1Bは、RBのポリユビキチン化系の再構成を示す。ビオチン化ユビキチン(ビオチン−Ub)、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン共役酵素UbcH5(E2)及び全配列を有するRB(full−RB)の反応系への添加の有無を+又は−で表示した。「Mdm2の欄の+」は、野性型Mdm2の添加、そして「Mdm2の欄のmt」は、変異型Mdm2の添加を意味する。SDS−PAGE後、アビジン−西洋ワサビパーオキシダーゼを用いてRBに結合したビオチン化Ubを検出した(アビジン−HRPによる検出)。Ub1−RBはモノユビキチン化RBを、Ub2−RBは、ジユビキチン化RBを、UbnRBは、ポリユビキチン化RBを意味する。レーン2において、Ub1−RB、Ub2−RB及びUbn−RBが検出された。図1Cは、Mdm2と結合したRB及びp53がポリユビキチン化されることを示す。反応系にGST−Mdm2の野性型(+)又は変異型(mt)を用いた。全配列を有するRB(full−RB)及びp53の添加の有無を+又は−で表示した。グルタチオンビーズを用いるプルダウンによって、GST−Mdm2と結合したタンパク質を分離した(GST−プルダウン)。SDS−PAGE後、抗RB抗体(IB:αRB)又は抗p53抗体(IB:αp53)を用いてイムノブロット法で検出を行った。図1C上図レーン2ではUbn−RBが、図1C下図レーン4ではモノユビキチン化p53(Ub1−p53)、ジユビキチン化p53(Ub2−p53)及びトリユビキチン化p53(Ub3−p53)が検出された。図1Dは、RBが細胞内でMdm2と結合していることを示す。大腸癌細胞抽出液をマウスIgG(IgG)及び抗Mdm2抗体(αMdm)を用いて免疫沈降(IP)させた。SDS−PAGE後、抗Mdm2抗体を用いたイムノブロット(IB:αMdm)又は抗RB抗体を用いたイムノブロット(IB:αRB)により、Mdm2(レーン2)及びRB(レーン4)が検出された。endo−Mdm2は、内在性Mdm2を、endo−RBは、内在性RBを意味する。図2Aは、大腸癌細胞におけるMdm2によるRBのポリユビキチン化を示す。トランスフェクションに使用したプラスミド名をその発現タンパク質名で表示した。N末端をトランケートしたRB(RB−RI)及びHAタグ付きユビキチン(HA−Ub)発現プラスミドのトランスフェクションの有無を+又は−で表示した。野性型Mdm2発現プラスミドをトランスフェクトした場合を+、変異型Mdm2発現プラスミドをトランスフェクトした場合を「mt」、Mdm2発現プラスミドをトランスフェクトしない場合を−で表示した。細胞の培養時にプロテアソーム阻害剤を添加した場合を「MG115の欄の+」と表示した。矢印はRBモノマーの位置を示す。最初に細胞抽出液を抗RB抗体を用いて免疫沈降し(1st IP:αRB(C15))、次に、挟雑物を除くために抗RB抗体を用いてさらに免疫沈降した(2nd IP:αRB(C15))。SDS−PAGE後、抗HA抗体を用いてHAタグ付きポリユビキチン化RB(Ubn−RB)を検出した(IB:αHA)。レーン2では、Ubn−RBが高レベルで検出された。図2Bは、腎癌細胞におけるMdm2によるRBのポリユビキチン化を示す。右側の図では、抗Xpress抗体を用いたイムノブロット法でRBの検出を行った(αXpress)こと、及び比較例としてMG115を添加しない群(MG115の欄の−)を設けたことを除き、図2Aと同様な条件で実験を行った。図2Cは、ARFタンパク質によるp53のポリユビキチン化の抑制を示す。図2Aに記載したRB−RI発現プラスミドの代りにp53発現プラスミドを使用し、さらに、ARF発現プラスミドのトランスフェクション(ARFの欄の+又は−)を加えた群を設けた。抗p53抗体を用いて細胞抽出液を免疫沈降した(IP:αp53)。抗HA抗体を用いるイムノブロット法によって免疫グロブリンIgG重鎖(IgG−H)、モノユビキチン化p53(Ub1−p53)、ジユビキチン化p53(Ub2−p53)及びポリユビキチン化p53(Ubn−p53)が、検出された。図2Dは、ARFタンパク質によるRBのポリユビキチン化の抑制を示す。図2Aの実験で行ったRB−RI(N末端トランケートRB)発現プラスミドの代りにfull−RB(全配列を有するRB)発現プラスミドを用いた。レーン1と6では、BRCA1発現プラスミドをコトランスフェクションした(BRCA1の欄の+)。レーン4と9では、ARF発現プラスミドをコトランスフェクションした(ARFの欄の+)。細胞培養を、10μM MG115添加及び無添加(MG115の溶媒であるDMSOのみを添加した:DMSO)の2種類の条件で行った。イムノブロット法では、抗RB抗体を用いたポリユビキチン化RBの検出(上図、IB:αRB)、抗Mdm2抗体を用いたポリユビキチン化Mdm2の検出(中図、IB:αMdm2)、及び抗ARF抗体を用いたARFの検出(下図、Input:ポリアクリルアミドゲル上の試料中に含まれるARF)を行った。図2Eは、Mdm2は、RBファミリーの中でRBのみをポリユビキチン化することを示す。左図:細胞抽出液の免疫沈降は抗RB抗体を用いた(IP:αRB)。イムノブロットは上図では抗RB抗体(IB:αRB)を用いて、下図では抗Mdm2抗体(IB:αMdm2)を用いた。それぞれポリユビキチン化RB(左上図)及びポリユビキチン化Mdm2(左下図)を検出した。中央図:細胞抽出液の免疫沈降は抗p107抗体を用いた(IP:αp107)。イムノブロットでは、上図では抗p107抗体(IB:αp107)を、下図では抗Mdm2抗体(IB:αMdm2)を用いた。ポリユビキチン化p107は、検出されなかった。右図:細胞抽出液の免疫沈降は抗p130抗体を用いた(IP:αp130)。イムノブロットは、上図では抗p130抗体(IB:αp130)を用いて、下図では抗Mdm2抗体(IB:αMdm2)を用いて行った。p130のポリユビキチン化は検出されなかった。図3Aは、Mdm2が、細胞内での、RBレベルを低下させることを示す。RB−RI、Mdm2、LacZ発現プラスミドを大腸癌細胞HCT116にトランスフェクションした。細胞抽出液をSDS−PAGEに供した後、抗Xpress抗体を用いてRB−RIを、抗Mdm2抗体を用いて導入したプラスミドよって発現されたMdm2(exo*−Mdm2)及び細胞内に予め存在するMdm2(endo**−Mdm2)を、抗Xpress抗体を用いてLacZ(β−ガラクトシダーゼ)を検出した。*外来性の略、**内在性の略図3Bは、Mdm2発現プラスミドの量に依存したRBのレベルの低下を示す。Xpressタグ付きRB−RI発現プラスミド(RB−RI)、及びXpressタグ付き野性型(Mdm2−wt)又は変異型Mdm2発現プラスミド(Mdm2−mt)を腎癌細胞HEK293にコトランスフェクションした。トランスフェクションに用いたRB−RI発現プラスミド量は6μgであり、Mdm2発現プラスミドは無添加(レーン1)、3μg(レーン2と5)、6μg(レーン3と6)、12μg(レーン4と7)であった。Mdm2及びRB−RIタンパク質を抗Xpress抗体を用いたイムノブロットにより検出した。レーン1〜4で、野性型Mdm2発現プラスミドの量に依存したRB−RIタンパク質の低下が認められる。図3Cは、Mdm2によるRBレベルの低下にRBのC末領域が必要であることを示す。RB−RIはRBのN末端の300アミノ酸残基を欠失、RB−RI−XmnはRBのC末端領域を欠失、RB−Xmn−NotはRBのC末端領域を有している。各々のRB発現プラスミドをRI、RI−Xmn、Xmn−Notと表示した。腎癌細胞HEK293をトランスフェクションに使用した。Mdm2発現プラスミドのトランスフェクションの有無を+又は−で表示した。抗Xpress抗体を用いたイムノブロットによって異なるサイズのトランケートRBを検出した。C末領域を有するRBレベルは、Mdm2存在下で減少した(レーン2、6)。図3Dは、パルスチェイス法におけるRBの分解を示す。腎癌細胞HEK293をエンプティベクター(vector)、野性型Mdm2発現プラスミド(wt−Mdm2)及び変異型Mdm2発現プラスミド(mt−Mdm2)を用いてコトランスフェクトした。wt−Mdm2をトランスフェクション後にMG115存在下で培養した細胞をwt−Mdm2+MG115と表記した。細胞をTrans35Sで標識した後、細胞を洗浄しTrans35Sを除去し、細胞の培養を継続した。0、5、10、20時間後のRBに取り込まれたTrans35SをSDS−PAGE後にBAS−1000を用いて解析した(パルスチェイス法)。図3Eは、パルスチェイス法におけるRB分解のグラフを示す。図3Dの結果を数値化し、グラフで表示した。0時間のRBレベルを100%とした相対的%で示した(RBタンパク質(%))。図3Fは、変異型Mdm2によるRBレベルの上昇を示す。ヒトグリオブラストーマT98G細胞に変異型Mdm2発現プラスミド及びRB発現プラスミドをコトランスフェクションし、48時間後に抗Xpress抗体を用いて変異型Mdm2(αXpress)を、抗RB抗体C15を用いてRB(αRB(C15))を免疫染色した。矢印は変異型Mdm2の検出された位置でのRBの蛍光を示している。図4Aは、Mdm2が細胞のフラット化を抑制することを示す。GFPを発現(矢印で表示)している骨肉腫細胞におけるフラット化した細胞の割合を計測した。エンプティベクター(vector)、wt−Mdm2発現ベクター(wt−Mdm2)、mt−Mdm2発現ベクター(mt−Mdm2)の各々を、RB発現プラスミド(テトラサイクリンにより制御される)とコトランスフェクションした。テトラサイクリンの有無を+又は−で示した。位相差顕微鏡(a、b、e、f、i、j)及び蛍光顕微鏡(c、d、g、h、k、l)を用いてフラット化した細胞の割合を計測した。図4Bは、図4Aで得られた結果を棒グラフで表示した。GFP発現細胞中のフラット化した細胞数の割合を%で表示した。*はp<0.001である。図4Cは、Mdm2がp53経路及びRB経路に関与するモデルを示す。p53経路:DNA損傷、ストレス条件下でATMキナーゼ等が誘導され、p53がリン酸化を受ける。その結果、細胞周期の停止又はアポトーシスが誘導される。RB経路:RBはサイクリンD/Cdk4によりリン酸化される。その結果、RBは、転写因子E2Fから遊離し、細胞周期が、G1期からS期に進行する。染色体のINK4/ARF領域からp16INK4aとARFタンパク質が、転写、翻訳される。p16INK4aは、サイクリンD/Cdk4と結合し、キナーゼ活性を阻害する。その結果、RBがE2Fと結合し、細胞周期をG1期で停止させる。Mdm2は、p53及びRBのポリユビキチン化を媒介し、それらのタンパク質はプロテアソームにより分解される。この経路が促進されると癌抑制遺伝子産物のp53及びRBの両者のレベルが低下し、癌化の一因となる。ARFタンパク質は、Mdm2によるp53及びRBのポリユビキチン化を抑制する。このように、p16INK4aとARFタンパク質は、細胞周期をG1期でアレストする作用を有し、癌抑制因子として作用する。 RB及びMdm2を含む、RBのポリユビキチン化を測定するための組成物。 下記工程:試験化合物を請求の範囲第1項の組成物と接触させる工程、試験化合物が、RBのポリユビキチン化を阻害するか否かを測定する工程を含むRBのユビキチン化阻害剤をスクリーニングする方法。 試験化合物を請求の範囲第1項の組成物と接触させる工程を細胞中で行うことを特徴とする、請求の範囲第2項記載の方法。 Mdm2変異体を含有する、RBポリユビキチン化阻害剤。 本発明は、RB及びMdm2を含む、RBのポリユビキチン化を測定するための組成物及び該組成物を用いるRBのユビキチン化阻害剤をスクリーニングする方法に関する。さらに、ドミナントネガティブな作用を有する変異型Mdm2を含むRBのポリユビキン化阻害剤に関する。