タイトル: | 特許公報(B2)_イオンセンサ及びそれを用いた生化学自動分析装置 |
出願番号: | 2002004035 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N27/333 |
山下 浩太郎 田山 孝一 吉岡 範子 柴田 康久 JP 3625448 特許公報(B2) 20041210 2002004035 20020111 イオンセンサ及びそれを用いた生化学自動分析装置 株式会社日立ハイテクノロジーズ 501387839 作田 康夫 100075096 山下 浩太郎 田山 孝一 吉岡 範子 柴田 康久 20050302 7 G01N27/333 JP G01N27/30 331E 7 G01N 27/333 特開2000−028568(JP,A) 特開平06−167475(JP,A) 特開2001−124735(JP,A) 3 2003207476 20030725 9 20030620 黒田 浩一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、生体液中のイオン分析に使用する上で好適なイオンセンサに関するものである。さらに詳しくは、イオンをポテンショメトリックに測定する分析に使用するに適したイオンセンサ及び生化学自動分析装置に関するものである。【0002】【従来の技術】イオンセンサは溶液中の特定のイオン濃度を選択的に定量できるという特徴があり、特定イオンの濃度モニタ,水質分析などの広い分野において使用されてきた。特に、医療分野では血液中や尿などの生体液に含まれるイオン、例えば塩素イオン,カリウムイオンなどの定量に応用されている。これは、生体液中の特定のイオン濃度が生体の代謝反応と密接な関係にあることに基づいており、該イオン濃度を測定することにより、高血圧症状,腎疾患,神経障症害などの種々の診断を行うものである。イオンセンサでは対象とするイオンの活量aとイオンセンサが示す電位Eとの間にE=E0+2.303(RT/ZF)logaで表される活量の対数と電位の変化とが比例する関係が成立し、電位の測定値から目的とするイオンの活量が簡単に計算できる。上式においてRは気体定数、Tは絶対温度、Zはイオン価、Fはファラデー定数、E0は系の標準電極電位である。このようにイオンセンサを用いれば、電位を測定するだけで広い濃度範囲でのイオンの定量が可能となる。【0003】塩素イオンセンサでは、イオン感応物質として主に第4級アンモニウム塩が用いられており、選択性の向上を目的として様々な研究がなされている(Mikrochimica Acta[Wien]1984 III,1−16)。特願昭64−23151号公報に記載されたように特にテトラオクタデシルアンモニウム塩をポリ塩化ビニルの如き高分子支持膜中に感応物質として担持させたセンサは選択性が優れている。この液膜型感応膜を用いたセンサは膜の主成分として親油性の高いエステル,アルコール及びポリ塩化ビニルなどを使用するため水分の透過性が低く内部溶液中の水分移動が起きにくく内部溶液組成は安定に保たれる。しかし感応物質や可塑材等の溶出のために電極のスロープ感度の安定性が低下する場合があるという課題が残されている。また、特開昭57−40642号公報や特公平2−13262号公報に記載されたように第4級アンモニウム塩を高分子マトリックスに固定したイオン交換膜を用いるセンサも知られている。感応物質が固定されているため溶出は極めて少なく電極のスロープ感度の安定性は高いと考えられる。しかしながらイオン交換膜は脱塩を目的として開発されたためイオン透過性が高く、従って水分の透過性も高い。イオン交換膜をイオンセンサの感応膜に用いた場合、内部溶液中の水分移動が起きやすく、内部溶液が枯渇しセンサとして動作しなくなりやすいという課題がある。このため特開2000−28568号公報に記載されたように水分の透過を抑制する部材をイオン交換膜に隣接して設ける手法が報告されている。水分透過抑制部材として、水分の透過性が低く、かつイオンの透過性が十分高いという性質を有する材料を用いている。具体的には、1.第4級アンモニウム塩及び可塑剤をポリ塩化ビニルに分散させた可塑化高分子膜、2.第4級アンモニウム塩,クラウンエーテル及び可塑剤をポリ塩化ビニルに分散させた可塑化高分子膜、3.ポリピロールフィルムにヨウ素イオンをドープした高分子膜であり、有機溶剤等を用いてイオン交換膜の試料と接する面の反対側の面に隣接して接着形成させている。これらの手法で形成した水分透過抑制部材と一体化したイオン交換膜を組み込んだセンサは3ヶ月間保管において、スロープ感度低下が抑えられている。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記特開2000−28568号公報の実施例に記載された水分透過抑制部材にポリ塩化ビニルを用いたセンサを検討したが、このセンサはセンサ重量の減少は抑制可能であるがスロープ感度の安定性は長期的に維持できないという課題があることを見出した。【0005】本発明の目的は、安定性の高いイオンセンサを提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】▲1▼試料が流れる流路と該試料流路の試料に接するように設けられたイオン交換膜と該イオン交換膜の試料と接触しない側に接するように設けられた内部溶液(内部ゲル)と該内部溶液に接するように設けられた内部電極を密閉容器内に配置したイオンセンサにおいて、上記イオン交換膜の試料と接触しない面を反応型接着剤を用いて被覆したイオンセンサ。【0007】▲2▼試料が流れる流路と該試料流路の試料に接するように設けられたイオン交換膜と該イオン交換膜の試料と接触しない側に接するように設けられた内部溶液(内部ゲル)と該内部溶液に接するように設けられた内部電極を密閉容器内に配置したイオンセンサにおいて、上記イオン交換膜の試料と接触しない面を二液混合系エポキシ樹脂で被覆したイオンセンサ。【0008】▲3▼試料が流れる流路と該試料流路の試料に接するように設けられた塩素イオン交換膜と該塩素イオン交換膜の試料と接触しない側に接するように設けられた内部溶液(内部ゲル)と該内部溶液に接するように設けられた内部電極を密閉容器内に配置した塩素イオンセンサにおいて、上記塩素イオン交換膜の試料と接触しない面を二液混合系エポキシ樹脂で被覆した塩素イオンセンサ。【0009】▲4▼上記▲1▼〜▲3▼のいずれかに記載のイオンセンサを用いた生化学自動分析装置。【0010】【発明の実施の形態】まず、本発明に至る前に特開2000−28568号公報の実施例に記載された水分透過抑制部材を用いたセンサのスロープ感度安定性について検討した結果を紹介する。膜材料には第4級アンモニウム塩を分散した可塑化高分子膜を用いた。第4級アンモニウム塩にはメチルトリデシルアンモニウムクロライドを30%、可塑剤としてセバシン酸ジオクチルを50%、高分子としてポリ塩化ビニルを20%、合計200mg秤量し、溶媒であるテトラヒドロフラン2ml中に溶解した。この溶液をシャーレ中に流延して溶媒が蒸発すると可塑化高分子膜が形成される。この膜を適当な形状に打ち抜きテトラヒドロフランを用いてイオン交換膜の内部溶液側に接着することでイオン交換膜と水分透過抑制部材を一体形成した。塩素イオンセンサ5個に調製した膜を組み込み水分抑制部材なしの電極をブランクとして37℃恒温槽中でのスロープ感度の安定性を調べた。表1及び表2に保存期間とスロープ感度及びセンサの重量変化を示すが、保存開始3ヶ月後においてセンサの重量は僅かしか減少しなかったがスロープ感度の低下がみられた。【0011】【表1】【0012】【表2】【0013】このように水分透過抑制材にポリ塩化ビニルを用いた場合、センサ重量の減少は抑制可能であるがスロープ感度の安定性は長期的に維持できないという課題があることが判明した。【0014】イオン交換膜をイオン感応膜に用いるイオンセンサにおいてセンサを長期的に使用する際、内部電極とイオン交換膜間に設けられた内部溶液中の水分が経時的にイオン交換膜を通して試料流路へ抜けるため、導電性が減少しセンサ性能の低下が生じる場合がある。この水分の減少を低減するためイオン交換膜の試料とは接触せず内部溶液と接触する面に高分子を用いて被覆処理することで内部溶液中の水の膜透過性を制御し高安定性を実現できる。用いる高分子はイオン交換膜に密着し、水が浸透可能な細孔を有している必要がある。水が全く浸透しないと導電性が生じずセンサとして機能しない。水が過度に浸透すると試料流路に抜けやすくなるためセンサの安定性は低下する。水分が浸透することで高分子とイオン交換膜の接着性が低下し高分子の一部もしくは全部が剥離状態になると導電性は低下する。よって本発明で最適な高分子は水が適度に透過し、イオン交換膜との剥離が生じない状態を長期的に維持できることが必要となる。【0015】種々の高分子を用いたセンサを作製し性能の検討を行った結果、上記条件を満たす高分子材料としてエポキシ樹脂が最適であることを見出した。明確な機構はわかっていないが、1.乾燥状態でのイオン交換膜との接着性が良い、2.水分に接した場合エポキシ樹脂中へ水分は浸透し適度な導電性を有する、3.水分が浸透した場合でもイオン交換膜との接着性が維持されるためと考えられる。上記課題で記述した性能の経時的な低下が生じたポリ塩化ビニルを高分子被覆材料に用いたセンサ全てに、ポリ塩化ビニル被膜とイオン交換膜との間に小さな隙間が見られた。これはポリ塩化ビニル被膜ではイオン交換膜との接着性を長期的に維持できないためと考えられる。【0016】A.イオン交換膜裏面の高分子被覆処理二液混合系エポキシ樹脂約50mgをイオン交換膜の試料と接触しない裏面へ塗布後40℃で24時間乾燥させることで高分子被膜処理を行った。【0017】B.イオンセンサ製作例図1,図2に、本発明による塩素イオンセンサの製作例を示す。図1は、本製作例のフローセル型塩素イオンセンサの斜視図である。直方体状のポリ塩化ビニル製のフローセル型センサ本体3の一対の面に直径1mmの流路4を形成し、試料液の流路とする。また、本センサを複数個重ねて使用する場合、センサの接合用に円柱状の凸部5を貫通孔が形成された面の一方に設けた。凸部5の上面には液洩れ防止用のOーリング6を設置した。【0018】図2は、図1のa−a′線で切った断面図である。フローセル型センサ本体3の内部の一部に空洞10が設けられている。空洞10の一方向に湾曲した内曲面11は流路4と交わっており、流路の側面に楕円形の小孔12が形成されている。この小孔12を塞ぐように、内曲面11に沿ってイオン交換膜9が流路側に凸になるように形成されている。【0019】選択化処理したイオン交換膜は内径4.6φ のコルクボ−ラで丸く打ち抜き、フローセル型電極ボディにTHFで接着後一時間乾燥させた。膜裏面への塗布は材料の高分子約50mgを膜の裏面に塗布することで行い、塗布後40℃で24時間乾燥させた。流路の反対側の空洞10には内部溶液を満たしてある。銀/ハロゲン化銀からなる内部電極7を内部溶液中に浸し、この内部電極7の金属部分に信号取り出し用のリード線8の一端を接続し、他端を外部測定回路に接続した。【0020】C.測定例1(初期性能試験)イオン交換膜を各種高分子で処理しフローセル型電極を作製し、日立7170形生化学自動分析装置により評価した。図5に生化学自動分析装置の構成図を示す。希釈槽130にサンプル用ポンプ107にて試薬を、サンプリングプローブ127で試料を注入し吸引用ポンプ126でイオンセンサ128へ測定試料を流し、発生した電位はAD変換器129にて信号処理する。結果を表に示す。【0021】【表3】【0022】本実験に用いたほとんどの高分子材料において電極の初期スロープ感度は−45mV以上を示した。イオン交換膜の内部溶液側を高分子により被覆した場合、高分子は完全な絶縁体ではなく導電性を示すことがわかった。スロープ感度に材料による差が見られるのは材料の導電性に差があるためと考えられる。【0023】D.測定例2(負荷試験)初期スロープ感度が−50mV以上であった高感度電極については負荷試験で耐久性を調べた。安定性を加速評価するために電極を60℃恒温槽中で保存しスロープ感度及び電極重量の経日変化を追った。結果を図3,図4に示す。【0024】約6ヶ月間の恒温槽保管中にスロープ感度及び電極重量の変化が見られた。高分子を塗布していないブランクでは3ヶ月目には重量が約3g減少しスロープ感度が出なくなった。用いた高分子材料のなかでエポキシ樹脂を塗布した電極のみスロープの低下が小さく良好な結果を示しており、イオン交換膜の試料接触面の裏面をこれらの高分子で被覆処理することで内部溶液中の水の膜透過性を制御し、高分子の剥離も生じず高安定性を実現できることがわかった。【0025】【発明の効果】イオン交換膜の試料接触面の裏面を高分子で被覆処理することで内部溶液中の水の膜透過性を制御し高安定性を実現できる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明による製作例での塩素イオンセンサの斜視図である。【図2】本発明による製作例での塩素イオンセンサの断面図である。【図3】本発明による測定例2でのスロープ感度の時間変化の結果である。【図4】本発明による測定例2での電極重量の時間変化の結果である。【図5】本発明が適用される生化学自動分析装置の構成図である。【符号の説明】1…分注機構、2…分注アーム、3…フローセル型センサ本体、4…流路、5…凸部、6…Oーリング、7…内部電極、8…リード線、9…イオン交換膜、10…空洞、11…内曲面、12…小孔、101…サンプル容器、102…サンプルディスク、103…コンピュータ、104…インターフェイス、105,110…分注プローブ、106…反応容器、107…サンプル用ポンプ、109…反応ディスク、111…試薬用ポンプ、112…試薬容器、113…攪拌機、114…光源、115…光度計、116,129…AD変換器、117…プリンタ、118…CRT、119…洗浄機構、120…洗浄ポンプ、121…入力装置、122…ハードディスク、125…試薬ディスク、126…吸引用ポンプ、127…サンプリングプローブ、128…イオンセンサ、130…希釈槽、150…容器種別検出装置、151…液面検出装置。 試料が流れる流路と該試料流路の試料に接するように設けられたイオン交換膜と該イオン交換膜の試料と接触しない側に接するように設けられた内部溶液と該内部溶液に接するように設けられた内部電極を密閉容器内に配置したイオンセンサにおいて、上記イオン交換膜の試料と接触しない面を二液混合系エポキシ樹脂で被覆処理したことを特徴とするイオンセンサ。 試料が流れる流路と該試料流路の試料に接するように設けられた塩素イオン交換膜と該塩素イオン交換膜の試料と接触しない側に接するように設けられた内部溶液と該内部溶液に接するように設けられた内部電極を密閉容器内に配置した塩素イオンセンサにおいて、上記塩素イオン交換膜の試料と接触しない面を二液混合系エポキシ樹脂で被覆処理したことを特徴とする塩素イオンセンサ。 請求項1または2に記載のイオンセンサを用いた生化学自動分析装置。