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タイトル:特許公報(B2)_ナイアシンの経皮送達用局所製剤および高脂血症の処置方法
出願番号:2001576027
年次:2008
IPC分類:A61K 31/455,A61K 9/70,A61P 3/06,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

ジェイコブソン、マイロン、ケイ. キム、ユンタエ キム、ムーンスン ジェイコブソン、イレイン、エル. クアセム、ジェイバー JP 4156841 特許公報(B2) 20080718 2001576027 20010416 ナイアシンの経皮送達用局所製剤および高脂血症の処置方法 ナイアダイン コーポレーション 502371923 ユニバーシティ オブ ケンタッキー リサーチ ファウンデイション 502371130 北村 修一郎 100107308 ジェイコブソン、マイロン、ケイ. キム、ユンタエ キム、ムーンスン ジェイコブソン、イレイン、エル. クアセム、ジェイバー US 60/197,621 20000414 20080924 A61K 31/455 20060101AFI20080904BHJP A61K 9/70 20060101ALI20080904BHJP A61P 3/06 20060101ALI20080904BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080904BHJP JPA61K31/455A61K9/70 401A61P3/06A61P43/00 123 A61K 31/455 A61K 9/70 A61P 3/06 A61P 43/00 WPI CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開昭62−126138(JP,A) 特開昭61−122225(JP,A) 英国特許出願公開第02210789(GB,A) 特開昭63−310827(JP,A) 米国特許第05981555(US,A) 特表2000−513719(JP,A) 特表平11−504339(JP,A) 米国特許出願公開第2004/0102358(US,A1) 8 US2001012356 20010416 WO2001078727 20011025 2004500428 20040108 14 20040618 榎本 佳予子 【0001】(発明の分野)本発明は、ナイアシンおよびナイアシンエステルならびに本明細書に記載のアルコール脂肪酸エステル、その誘導体の経皮送達用局所製剤に関する。また本発明は、これらの薬剤による高脂血症および高コレステロール血症の経皮処置に関する。本システムの治療用途も説明する。本局所製剤は、例えば哺乳動物における高脂血症の処置などに有用である。【0002】高脂血症および高コレステロール血症は他の状態、例えば心臓発作、アテローム性動脈硬化および他の有害な疾患のリスクの増加と相関関係にあることが確立されている。コレステロールレベルおよび脂質レベルを低下させるには、ゲムフィブリゾル(gemfibrizol )、プロブコール、さらに最近になって「スタチン類」、例えばロバスタチンなど、数多くの薬剤を利用することができる。【0003】水溶性B 複合体ビタミンであるナイアシン(ニコチン酸)は高脂血症の処置に経口使用され、II、III 、IVおよびV 型高リポタンパク血症患者における総血漿コレステロール(C )、低密度リポタンパク質LDL-C および超低密度リポタンパク質トリグリセリド(VLDL- トリグリセリド)(これらは全て健康リスクに関係する)を低下させ、同時に「健全な」リポタンパク質とみなされる高密度リポタンパク質(HDL-C )の血清レベルを上昇させるのに有効であることが示されている。【0004】ナイアシンが脂質プロファイルを変化させる機序はまだ明確にはなっていないが、その作用機序には脂肪組織からの遊離脂肪酸放出の阻害(Carlson,L.A.、Froberg,S.O.およびNye,E.R.「ラットにおけるニコチン酸11.血漿、肝、心および筋脂質に対するニコチン酸の急性効果」Acta Med Scand 180:571-579,1966 参照)およびリポタンパク質リパーゼ活性の増加(Priego,J.G. 、Pina,M. 、Armijo,M. 、Sunkel,C. およびMaroto,M.L. 「正常脂血性ラットにおける脂質代謝に対するエトフィブラート(etofibrate)、クロフィブラートおよびニコチン酸の作用.短期効果および作用方法」Arch Farmacol Toxicol 5:29-42,1979参照)が含まれることが示されている。1400万人を越えるアメリカ人が基準値より高い血中LDL-C レベルを示す。HMG-CoA レダクターゼ阻害剤(スタチン類)はLDL-C レベルが高い患者の処置に最も広く使用されている種類の薬物である。しかしナイアシンは、LDL-C の低下に加えて心血管疾患の一次予防としてのHDL 改善に、米国心臓病協会(American Heart Association)が唯一推奨している薬物である。ナイアシン療法は単剤療法として対費用効果が極めて高いだけでなく、ナイアシンによって他の種類の脂質低下薬の効果が補完されるので、併用療法としても有益である。経口ナイアシン療法は副作用の発生率が高いので、単独高コレステロール血症の場合、ナイアシンは第二または第三選択薬である。しかし、重症複合型高脂血症患者の場合のように、LDL-C およびトリグリセリドをどちらも低下させることが望ましい場合、ナイアシンは単剤療法として治療上有利である。ナイアシンは脂質低下活性を最大にするために「スタチン類」などの他のコレステロール低下剤と併用することもできる。ある研究では、ナイアシン/ ロバスタチン併用が、LDL-C 、トリグリセリドおよびリポタンパク質 a[Lp(a) ]の低下に極めて有効であり、しかも、HDL-C を上昇させるというナイアシンの効力は失われないことが示されている(Kashyap,M.L.、Evans R.、Simmons,P.D.、Kohler,R.M. およびMcGoven,M.E.「新しいナイアシン/ スタチン複合製剤は主要リポタンパク質に対して顕著な効果を示し忍容性が高い」J Am Coll Card Suppl.A 35:326,2000)。【0005】ナイアシンは、対費用効果の高い治療法であるとみなされているので、血清コレステロールレベルの低下に広く使用されてきた。ヒトでは、1 日あたり2 〜3gの経口用量で、総コレステロールレベルおよびLDL-C レベルを平均20%〜30%低下させ、トリグリセリドレベルを35%〜55%低下させ、HDL-C を20%〜35%増加させ、Lp(a) を低下させる。ナイアシンは総死亡率および冠動脈疾患による死亡率も低下させ(The Coronary Drug Project Research Group,JAMA 231:360-381,1975ならびにCanner,P.L. 、Berge,K.G.、Wenger,N.K. 、Stamler,J.、Friedman,L. 、Prineas,R.J.およびFriedewald,W. 「コロナリードラッグプロジェクト患者の15年死亡率:ナイアシンによる長期利益」J Am Coll Cardiol 8:1245-1255,1986参照)、アテローム性動脈硬化の進行を遅らせるか逆転させるのに役立つ(Blankenhorn,D.H.、Nessim,S.A. 、Johnson,R.L.、Samnarco,M.E. 、Azen,S.P. およびCashin-Hemphill,L.「冠動脈アテローム硬化および冠静脈バイパス移植に対するコレスチポール- ナイアシン併用療法の薬効」JAMA 257:3233-3240,1987 ならびにCashin-Hemphill L.、Mack,W.J. 、Pogoda,J.M. 、Samnarco,M.E. 、Azen,S.P. およびBlankenhorn,D.H.「冠動脈アテローム硬化に対するコレスチポール- ナイアシンの薬効.4 年追跡調査」JAMA 264:3013-3017,1990 参照)。【0006】経口ナイアシン療法には副作用があり、それがその有用性を制限している。ナイアシンはビタミンであるが、コレステロールを低下させるには治療量で使用しなければならない。これらの用量では即放性ナイアシンでも徐放性ナイアシンでも重篤な副作用が起こりうる。最もよくあるナイアシンの副作用は潮紅、すなわち一般に発赤を伴い、そう痒を伴うこともある皮膚の熱感である。潮紅は危険ではないがほとんどの患者は強い不快感をおぼえるので、患者の服薬率が著しく制限される。ナイアシンが誘発する紅潮はシクロオキシゲナーゼ阻害剤を使った前処置によってかなり軽減することができるので、血管拡張はプロスタグランジンが媒介する機構によって起こっていることが示唆される(Carlson,L.A.「ニコチン酸および脂肪動員リポリシスの阻害.脂質代謝に対する効果の現状」Adv Exp Med Biol 109:225-238,1978 参照)。【0007】血清トランスアミナーゼレベルの上昇がナイアシン処置と関連づけられており、また徐放性ナイアシン製剤はさらに重篤な肝臓障害と関連づけられているので、ナイアシンを服薬している患者では、常に肝機能検査の監視が行われる(McKenney,J.M. 、Proctor,J.D.、Harris,S. およびChinchili,V.M.「高コレステロール血症患者における徐放性および即放性ナイアシンの効力および毒作用の比較」JAMA 271:672-777,1994 ならびにStafford,R.S. 、Blumenthal,D. およびPasternak,R.C.「米国医師のコレステロール管理実務のばらつき」J Am Coll Cardiol 29:139-146,1997 参照)。他に考えられる経口ナイアシン療法の副作用には、消化性潰瘍、痛風および糖尿病の管理状態の悪化などがある。副作用の可能性を考えると、経口ナイアシン療法には注意深い臨床監視が必要である。【0008】経口摂取されたナイアシンの薬物動態プロファイルは、経口摂取されたナイアシンが迅速かつ大規模な初回通過代謝を受けてナイアシン用量との関係が非線形になるため複雑であり、したがって脂質パラメーターと血漿ナイアシンレベルとの間に相関関係はない。例えば用量1,000mg のNiaspan (登録商標)は脂質プロファイルの改善をもたらすが、血漿ナイアシンの増加はほとんど検出されないことを示すデータがある(「Physicians Desk Reference 」第53版(1999)の1505〜1506頁参照)。Niaspan (登録商標)は高コレステロール血症および高トリグリセリド血症の処置用としてFDA によって承認された持続放出ナイアシン製剤である(Capuzzi,D.M.、Guyton,J.R. 、Morgan,J.M. 、Goldberg,A.C. 、Kriesberg,R.A.、Brusco,O.A. およびBrody,J.「持続放出ナイアシン(Niaspan )の効力および安全性:長期調査」Am J Cardiol 82:74u-8Iu,1998ならびにMorgan,J.M. 、Capuzzi,D.M.およびGuyton,J.R. 「新しい持続放出ナイアシン(Niaspan ):高コレステロール血症患者における効力、忍容性および安全性」Am J Cardiol 82:29u-34u,1998)。したがって、ナイアシンの経口投与後にニコチン酸血漿レベルの劇的な増加が起こらなくても、血清脂質プロファイルをかなり改善させることができる(Knopp,R.H.、Alagona,P.、Davidson,M. 、Goldberg,A.C. 、Kafonek,S.D.、Kashyap,M.、Sprecher,D. 、Superko,H.R.、Jenkins,S.、Marcovina,S.「高脂血症の管理における毎夜1 回服用される持続放出型ナイアシン(Niaspan )とそのままのナイアシンとの等価な効力」Metabolism 47:1097-104,1998 参照)。これは、血中ナイアシンレベルの持続的上昇は治療効果の達成には必要でないことを証明している。事実、ナイアシンによる組織飽和は治療上の利益を得る上で重要な要因であるらしいという主張を裏付けるデータがある。制御放出経口製剤による長期間にわたる低レベル曝露は、即放性製剤によって得られる高レベル短時間曝露よりも好ましい。なぜなら、これにより不便な用法が回避され、不快な副作用が軽減されるからである。しかし、ナイアシンの制御放出経口製剤は、まだかなりの潮紅および肝機能不全を示す。経口ナイアシンの薬物動態学的運命を考えると、理想的なナイアシン投与法はまだ実現されていない。【0009】経皮薬物送達は、薬剤の投入量が制御され肝初回通過効果が回避されることから、魅力的な経路である。しかしナイアシンなどの親水性化合物が皮膚を横切って容易に浸透するとは思われない。本発明者らは、脂肪アルコールで化学修飾することにより、ナイアシンは制御された形で皮膚を透過して全身送達され、動物モデルにおける血中脂質プロファイルに影響を及ぼすようになることを、この研究で証明する。ナイアシンのプロドラッグエステルの化学的加水分解および酵素的加水分解はどちらも、ヒトおよびラット血漿、ならびにWernly-Chung,G.N. 、Mayer,J.M.、Tsantili-Koulidou,A.およびTesta,B.「ニコチン酸のプロドラッグエステルの化学的加水分解における構造- 反応性相関」Int J Pharma 63:129-134,1990に記載されているブタ肝臓カルボキシルエステラーゼ調製品を使って、詳細に評価されている。これらの研究は、化学的に安定なナイアシンエステルがエステラーゼの優れた基質であることを示している。ある研究は、ナイアシンエステルの結合が主に親油性(至適logPoct/w =2.3 )と立体因子とに依存することを示している。ニコチン酸ヘキシルまでのナイアシンエステルは市販されている。【0010】経皮送達システムは、抗狭心症薬(ニトログリセリン)、ホルモン(エストロゲン)および抗高血圧薬(クロンシジン(cloncidine))を含む様々なタイプの医薬の投与に便利で有効な選択肢である。経皮送達は薬剤が血流に直接送達され、肝臓での初回通過代謝が回避されるので、薬物送達が連続的かつ持続的になる点で有益である。経皮送達では医薬が持続的かつ安定して送達され、経口剤形にしばしば付随し通常は望ましくない血中レベルの山や谷が回避される。したがって経皮送達を用いることにより、経口投与より少ない用量の投与で同じ治療効果を得ることができ、用量依存的な副作用を軽減または排除することができる。【0011】適切な医薬製剤を製造することは困難な作業であり、適切な局所剤形を得るには多くの障害を克服しなければならない。活性剤を所望の部位に適用して血流に吸収させるには、異物の透過を防止するように設計された保護層を持つ皮膚を、十分に透過しなければならない。皮膚は複数の層からなる複雑な器官系である。皮膚の最上層、すなわち「角質層」は、主に表皮ケラチノサイトの最終分化によって生じた非生物からなり、皮膚の下層成分にとって保護障壁になっている。表皮ではケラチノサイトが主要な細胞タイプであるものの、表皮には多数の細胞タイプが含まれている。皮膚線維芽細胞はコラーゲン、エラスチン、プロテオグリカンその他の細胞外マトリックス分子からなるマトリックスに埋め込まれている。真皮には毛細血管が認められるが、表皮は無血管である。【0012】さらに、薬物自体が投与に適してなければならない。薬物分子の大きさ、電荷および極性は、皮膚を透過して所望の部位に到達する薬剤の能力または血管に到達して全身分布する薬剤の能力に寄与する因子である。【0013】経皮送達の利点は、例えば高脂血症の処置またはビタミン療法などには、ナイアシンの経皮送達システムが望ましいことを示している。【0014】本発明の目的は、患者、例えばヒトなどの哺乳動物にナイアシンを全身送達するための経皮送達製剤および経皮送達システムであって、ナイアシンがナイアシンのプロドラッグとして、例えばニコチン酸エステルおよび対応するアルコールの脂肪酸エステルなどとして与えられるものを提供することである。本明細書ではこれらのプロドラッグを「プロナイアシン(pro-niacin)」という。【0015】プロナイアシンエステルを使ってナイアシンを経皮送達することにより、高脂血症および高コレステロール血症を処置することも、本発明の目的である。【0016】本発明のこれらの目的および他の目的は、以下に説明する本発明によって達成される。【0017】(好ましい態様の詳細な説明)経皮送達は、有毒な初回通過肝作用を回避する魅力的な代替的ナイアシン投与経路である。本発明の局所送達システムでは、図7 に示すようなナイアシンのエステル化または脂肪酸の付加によるニコチニル化合物の形成(これらを本発明のプロナイアシンと総称する)によって少なくとも部分的に制御される、角質層を通したナイアシンの分配を考慮する。プロナイアシンの代謝変換速度および代謝変換部位は、皮膚の透過および皮膚下層の血管への全身吸収に寄与する。ナイアシンなどの多くの親水性薬物の経皮送達でまず考慮すべきことは、無傷の角質層の高い拡散抵抗である。この問題はナイアシンの分子修飾、より一般的にはプロドラッグの形態をした薬物によって回避される。【0018】ナイアシンプロドラッグ、例えばニコチン酸エステルは、経皮送達に著しく望ましい製剤特性を持つプロドラッグになるので、ニコチン酸より好ましい。また、皮膚に存在するエステラーゼによるナイアシンへの変換は、活性成分の持続放出をもたらす。C1-C22ニコチン酸エステルでも適切な製剤を製造することはできるが、ナイアシンのC10-C18 エステルは特に好ましい。ナイアシンエステルおよびニコチニル化合物は、炭素の総数が本明細書に記載する基準を満たす限り、直鎖状でも分枝鎖状でもよく、置換されていても無置換でもよい。【0019】本組成物は1 〜30重量%、好ましくは1 〜20重量%、最も好ましくは1 〜10重量%のナイアシンンプロドラッグを含むことが好ましい。【0020】ナイアシンンまたはナイアシンンプロドラッグは、水/ オクタノール分配を使って測定した場合に、好ましくは0.5 〜約12、4.5 〜10、最も好ましくは4.8 〜9.7 のlogPを持つ。【0021】経皮送達の効力を評価するために、ヘアレスマウスモデルおよびアポB/CETP二重トランスジェニックマウスモデルを使用した。アポB/CETP二重トランスジェニックマウスは正常脂血性のヒトに最も近いリポタンパク質コレステロール分布を示すことが知られているので、アポB/CETPモデルはヒト脂質代謝の適切なモデルになる。特定のヒト遺伝子を発現させるトランスジェニックマウスは脂質代謝の研究および脂質低下薬の試験に広く使用され、ヒトでの応答のより良い予測を可能にしている。ヒトアポB100およびヒトCETPを両方とも発現させるトランスジェニックマウスは、ヒト様の血清HDL-C/LDL-C 分布を示し、市販されている。アポB100はVLDLおよびLDL のタンパク質成分であり、LDL レセプターへの結合を担うリガンドである。一方、CETPは様々な種類のリポタンパク質間での脂質の分布を媒介する。この二重トランスジェニックマウスのリポタンパク質コレステロールプロファイルは、コレステロールのほとんどがHDL フラクションに見いだされる非トランスジェニックマウス、ヒトアポB 単一トランスジェニックマウスおよびCETP単一トランスジェニックマウスのものとはかなり異なる。アポB100/CETP 二重トランスジェニックマウスは、Grass,D.S.、Sainai,U. 、Felkner,R.H.、Wallace,R.E.、Lago,W.J.P. 、Young,S.G.およびSwanson,M.E.「ヒトアポリポタンパク質B およびヒトCETPを両方とも発現させるトランスジェニックマウスは正常脂血性のヒトに似たリポタンパク質コレステロール分布を持つ」J Lipid Res 36:1082-1091,1995 )に記載の通常飼料を与えると、正常脂血性のヒトに最も近いリポタンパク質コレステロール分布を示す(すなわちLDL-C 対HDL-C の比は約2 :1 )。【0022】本発明の局所製剤は、血清コレステロールおよび/ またはLDL 、VLDLの脂質レベルを低下させるためまたは血清HDL レベルを上昇させるために、適切な局所用基剤に十分量すなわち治療有効量のナイアシンンプロドラッグを含んでいる十分量の経皮製剤を、対象の皮膚に適用することによって、その必要がある患者、哺乳動物およびヒトのコレステロールおよび/ または脂質を低下させるために使用することができる。したがって本製剤は高脂血症および高コレステロール血症の予防またはこれらの状態の処置に使用することができる。【0023】実施例1 および2 −ナイアシンンエステルの製造実施例1ニコチン酸エステルは塩化ニコチニルを窒素下にトリエチルアミン(TEA )、ジメチルアミノピリジン(DMAP)および種々のC1〜C18 アルコールで処理することによって製造した(化学物質は全てSigma Aldrich から入手した)。得られたエステルはシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、さらなる精製のためにそれぞれのHCl 塩に変換した。薄層クロマトグラフィー(TLC )および1H-NMRにより、下記表1 に挙げる最終生成物の純度および同定を確認した。TLC による検査はAnaltech Uniplate シリカゲルGFプレートで行った。カラムクロマトグラフィー精製はシリカゲル(Merck 、60A 、230 〜400 メッシュ、フラッシュクロマトグラフィー用)を使って行った。【0024】実施例2雌ヘアレスマウス(HRS-J 、6 〜8 週齢)を使用した。これらのマウスは平底ケージで飼育し、14:10の明- 暗周期で、滅菌飼料および水およびリチウムを与えた。実施例1 のニコチン酸エステルを0.5 〜2.0 %(w/w)の範囲の濃度で200mg のVanicream Lite(商標)スキンケアローション(Pharmaceutical Specialties,Inc. ;精製水、白色ワセリン、セテアレスアルコールおよびセテアレス-20 、プロピレングリコール、ソルビトール溶液、シメチコン、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ソルビン酸およびBHT を含む)に混合したものを、毎日、手袋をした指でヘアレスマウスの背部に1 週間にわたって適用した。対照マウスには200mg のローションのみを塗布した。マウスを、ペントバルビタールの心臓注射によって安楽死させてから皮膚を切除した。背側および腹側の皮膚検体を液体窒素で直ちに凍結し、-80 ℃で保存した。【0025】ナイアシンは組織中でNAD に変換されるので、NAD 含量をナイアシン飽和のマーカーとして使用した(Fu,C.S. 、Swenseid,M.E. 、Jacob,R.A.およびMcKee,R.W.「青年におけるナイアシン状態を評価するための生化学マーカー:赤血球ナイアシン補酵素および血漿トリプトファンのレベル」J Nutrition 119:1949-1955,1989)。局所適用部位から離れた位置にある皮膚部位のNAD 含量を決定することによって、ナイアシンの全身経皮送達を評価した。本発明の経皮送達システムを用いたナイアシンの組織飽和の実例を、ニコチン酸ミリスチルによる処置を表す図1 に示す。【0026】NAD 分析およびタンパク質分析のために、ポリトロンを使って1ml の氷冷0.5M HClO4中で組織をホモジナイズし、3000rpm で15分間遠心分離した。NAD 分析のために、上清を氷冷2M KOH/0.66M KH2PO4 で中和した。タンパク質分析のために、ペレットを1ml の0.1M NaOH に溶解した。NAD 含量は酵素サイクリング法の原理に基づいて評価した(Jacobson,E.L. およびJacobson,M.K. 「ヒトにおけるナイアシン状態の生化学的尺度としての組織NAD 」Methods Enzymol 280:221-230,1997)。タンパク質量の決定にはBCA 法(Pierce Chemical Co. )を使用した。P oct/w の決定は、Harnisch M. 、Mokel H.「n-アルキルベンゼンおよびいくつかのOECD標準物質に関するLogPow振とうフラスコ値と逆相高速液体クロマトグラフィーで得られるキャパシティーファクターとの関係」J.Chrom 282:315-332,1983)に報告されている逆相HPLC法を使って行った。結果を表1 に示す。【0027】【表1】【0028】上記表1 に要約した結果は、ナイアシンの経皮送達によって組織飽和を達成するには、約6.0 〜約8.0 のlogP値を持つニコチン酸エステルが好ましい化合物であることを示している。C1〜C8エステルを含む約6 未満のlogP値を持つエステルは紅斑反応を引き起し、6 より大きいlogP値を持つエステルは紅斑反応を引き起さないからである。C10 エステルはC8以下のエステルよりも弱い紅斑反応を示した。【0029】実施例3ナイアシンのエステルをOno,N.、Yamada,T. 、Saito,T.、Tanaka,K. およびKaji,A. 「カルボン酸の簡便なエステル化法」Bull.Chem.Soc.Jpn. 51:2401-2404,1978に記載の既知の方法でも合成した。ベンゼン中、窒素下で、ナイアシンを様々な臭化アルキルおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0] ウンデカ-7- エン(DBU )で処理することにより、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離することができるエステルを得た。最終生成物の純度および同定は、TLC 、1H-NMR分光法、逆相HPLCおよび元素分析によって確認した。ナイアシン、DBU および全ての臭化アルキルはSigma-Aldrich から購入した。TLC による検査はAnaltech Uniplate シリカゲルGFプレートで行った。カラムクロマトグラフィー精製はシリカゲル(Merck 、60A 、230 〜400 メッシュ、フラッシュクロマトグラフィー用)を使って行った。1H-NMRスペクトルは、テトラメチルシランを内部標準として、Varian Gemini-300NMRスペクトロメーターで記録した。【0030】実施例4実施例3 に従って製造したラウリルナイアシンエステルを、濃度1 〜10%(wt/wt )のラウリルナイアシンエステルを使用した点以外は実施例2 で説明した手法を用いて、ヘアレスマウスで評価した。NAD 量およびタンパク質量の決定は実施例2 で述べたように行った。結果を図4aおよび図4bに示す。【0031】さらに、ヘアレスマウスの空腹時(16時間)血液試料を開始時、30日後および60日後に後眼窩静脈叢から採取し、処置終了時に心臓穿刺によって採取することによって、血漿脂質分析も行った。血液収集に先立ってマウスをペントバルビタールの心臓注射によって安楽死させた。血液は10μl のヘパリンを含む微量遠心管に収集し、2,000 ×g で15分間の遠心分離によって血漿を分離し、1 週間以内に分析を行うまで−80℃で保存した。Beckman 製の臨床化学分析装置Syncrhon CX7を使って、総コレステロール、HDL-C およびトリグリセリドを酵素法で測定した。結果を図4aおよび図4bに示す。【0032】実施例5雌アポB/CETP二重トランスジェニックマウス(Taconic Biotechnology (ニューヨーク州ジャーマンタウン))を6 つの群に分け、6 匹を一組にして飼育した。ラウリルエステルを5 %ローション製剤として使用し、標準飼料を与えている試験動物の剃毛した背部に、毎週5 回、4 週間にわたって適用した。経口投与の場合は、ナイアシン(ナトリウム塩)を0.75%(遊離の酸として0.63%)の濃度で飲料水に溶解した。ナイアシンの摂取量は水の消費量から見積もった。1 日あたりの推定ナイアシン摂取量は約1,400mg/kgだった。【0033】使用した経口用量はナイアシンとして760mg/kg/ 日、局所用量は250mg/kg/ 日である。選択した経口ナイアシン用量は、Santos,K.F.R. 、Oliveira,T.T. 、Nagem,T.J.、Pinto,A.S.およびOliveira,M.G.A. 「ナリンゲニン、ルチン、ニコチン酸およびそれらの併用の脂質低下効果」Pharmacol Res 40,493-496,1999 に記載の前臨床齧歯類試験で通例使用される500 〜900mg/kg/ 日の範囲内である。体表面積に基づく経口用量は3.7g/ 日のヒト用量に相当し、局所用量は1.2g/ 日に相当する。【0034】局所投与の場合は、ナイアシンラウリルエステルを1 、2 、5 および10%(wt/wt )の濃度で200mg のローションに混合したものを、マウスの剃毛した背部に毎日、13週間にわたって適用した。25g のマウスにつき、1 日あたりの局所用量は、ナイアシンとして34〜340mg/kgの範囲になる。対照マウスには等量の賦形剤ローションだけを塗布した。脂質分析は実施例4 で述べたように行った。結果を図6a〜d に示す。【0035】ナイアシンプロドラッグで処置したアポB100/CETP トランスジェニックマウスの脂質プロファイルの改善アポB100/CETP 二重トランスジェニックマウスにおいて90日間にわたるラウリルナイアシンエステルの経皮送達が血漿脂質プロファイルに及ぼす効果を経口ナイアシンと比較。この研究にはそれぞれ6 匹のマウスからなる合計6 つの群を使用した。局所投与の場合はラウリルナイアシンエステルをマウスの剃毛した背部に毎日適用した。経口投与の場合は、ナイアシン(ナトリウム塩)を飲料水に溶解した。90日後に、局所処置では、経口処置の用量の1/4 量で、総コレステロール、トリグリセリドおよびLDL-C フラクションが15、33および38%低下し、同時にHDL-C は8 %上昇した。経口処置により、総コレステロール、トリグリセリド、LDL およびHDL-C フラクションは、それぞれ29、37、45および13%低下した。これらの結果は、血清脂質プロファイルを改善するための経皮治療薬として、ニコチン酸ラウリルが極めて有効でありうること示している。【0036】これらの結果は、局所処置が総血漿コレステロールレベルを52%低下させたのに対して、経口ナイアシンは総コレステロールを12%低下させたことを示している。【0037】これらの結果は、血中脂質不均衡を制御するために、潮紅および潜在的に有毒な初回通過肝作用を回避する経口ナイアシンの代替手段として、ナイアシンプロドラッグ、例えばナイアシンエステルを、プロドラッグとして皮膚に適用できることを示している。これらの結果は、局所処置が総血漿コレステロールレベルを52%低下させたのに対し、経口ナイアシンが総コレステロールを12%低下させたことを示している。【0038】ナイアシンのミリスチルエステルおよびラウリルエステルは皮膚血管拡張を示さないことから、そのような望ましくない作用を持たないナイアシンプロドラッグを製造できることがわかる。これらは、経皮送達にとって極めて望ましい製剤特性を持つプロドラッグとなり、皮膚に存在するエステラーゼによるナイアシンへの変換は、活性成分の持続放出をもたらし、血管拡張を伴わずに最適な全身送達が達成されるだろう。動物モデルでの結果から、ヒトまたは他の哺乳動物で、ナイアシン投与による脂質プロファイルの全体的改善に、この経皮アプローチをうまく応用できることが、強く示唆される。【0039】ナイアシンならびに本発明のニコチン酸エステルおよびニコチニル化合物は、対象に投与されると組織を透過し組織を飽和させる。そして上記のように、組織飽和は血清コレステロールおよび脂質レベルの低下に関係し、ナイアシン、特にエステル型ナイアシンの経皮送達が血清LDL 、VLDLレベルを効果的に低下させ、かつ/ または血清HDL レベルを効果的に上昇させることを示す。【0040】ニコチン酸エステル、特にC10 以上のエステル、例えばC10 〜C18 、最も好ましくはC12 〜C16 のエステルは、経皮送達に適している。しかし、C8以下のエステルを使って適切な製剤を製造することもでき、これらは本発明の範囲に包含される。対応するニコチニル化合物も有効である。【0041】クリームおよびローションの他に、シャンプー、点眼剤などの液体、リップクリームおよびデオドラントスティックなどの香膏およびスティック、セッケン、パッチ剤、包帯、縫合糸、被覆植込み型装置などの局所製剤、ならびに局所適用のために設計された他の任意のタイプのシステム。本発明の経皮製剤の製造にはワセリン、ウィテップゾール軟膏、種々のローション、エマルション基剤、クリームなどの適切な医薬賦形剤が使用されるだろう。【0042】最も好ましいのは経皮送達システムである。ニコチンの送達に適した経皮送達システム(パッチ剤)は、米国特許第4,839,174 号、第4,943,435 号および第5,016,652 号に記載されているものなど、当技術分野で知られている。このようなタイプの装置の例は、当技術分野では他にも数多く知られている。典型的な経皮システムは、薬物を含むレザバーまたはマトリックスと、活性剤(この場合はナイアシン、より好ましくはニコチン酸エステル)に対して透過性を持つ接着層とを含む。接着層は透過層と同じであってよく、対象の皮膚に接着して薬剤を皮膚に放出し吸収させ、続いて全身循環させて他の組織に分布させる。使用時には、この装置は、対象の組織をナイアシンで飽和させて総コレステロール、VLDLもしくはLDL レベルの低下および/ またはHDL レベルの上昇もしくは改善をもたらすのに十分な量のナイアシンが送達されるように、十分な量のナイアシンまたはニコチン酸エステルを経皮送達するだろう。総コレステロールの改善は、総コレステロール:HDL またはLDL :HDL の比の低下で表すと便利である。結果は、本明細書に記載の化合物の経皮送達が、経口ナイアシン療法で達成されることがわかっている改善と同様な、対象のコレステロールおよび脂質プロファイルの改善をもたらすことを示している。【0043】本発明の他の特徴は当業者には明らかであり、ここで説明する必要はないだろう。【0044】引用した文献は全て参照により完全な形で本明細書に組み込まれる。【図面の簡単な説明】【図1】 ニコチン酸ミリスチルで7 日間処置したマウス皮膚および無処置皮膚のNAD 含量を表す図【図2】 Niaspan (登録商標)に対する脂質応答を示す表【図3】 血漿ナイアシンに関する平均定常状態薬物動態パラメーターの表【図4】 ミリスタルナイアシン(myristal niacin )で7 日間処置したマウス皮膚(4a)および無処置皮膚(4b)のNAD 含量を示すグラフ【図5】 ヘアレスマウスにおける経皮ラウリルナイアシンエステルおよび経口ナイアシンの対照に対するコレステロール低下効果を示すグラフ【図6】 アポB/CETPトランスジェニックマウスの脂質プロファイルに対する経口ナイアシンおよび経皮ラウリルナイアシンの効果を示すグラフ【図7】 図6 に示す結果と比較したラウリン酸ニコチノイル(nicotinoyl laurate)の効果を示す図【図8】 本発明での使用に適したニコチン酸およびニコチニル化合物の一般化学構造を示す図 それを必要とする対象体における血清トリグリセリドを低下させるための局所投与用組成物であって、下記式(I)、又は式(II)で表される化合物を前記対象体における血清トリグリセリドを低下させるに十分な量を含む組成物。〔式中、Rが、C10〜C18アルキルである〕〔式中、Rが、C10〜C18アルキルである〕 前記化合物が、ニコチン酸ミリスチルである請求項1に記載の組成物。 前記化合物が、ニコチン酸ラウリルである請求項1に記載の組成物。 それを必要とする対象体における血清LDLを低下させるための局所投与用組成物であって、下記式(I)、又は式(II)で表される化合物を前記対象体における血清LDLを低下させるに十分な量を含む組成物。〔式中、Rが、C10〜C18アルキルである〕〔式中、Rが、C10〜C18アルキルである〕 前記化合物が、ニコチン酸ミリスチルである請求項4に記載の組成物。 前記化合物が、ニコチン酸ラウリルである請求項4に記載の組成物。 それを必要とする対象体における血清HDLレベルを上昇させるための局所投与用組成物であって、下記式(I)、又は式(II)で表される化合物を前記対象体における血清HDLレベルを上昇させるに十分な量を含む組成物。〔式中、Rが、C10〜C18アルキルである〕〔式中、Rが、C10〜C18アルキルである〕 それを必要とする対象体における総コレステロール:HDL比、及びLDL:HDL比の少なくとも一方を低下させるための局所投与用組成物であって、下記式(I)、又は式(II)で表される化合物を前記対象体における総コレステロール:HDL比、及びLDL:HDL比の少なくとも一方を低下させるに十分な量を含む組成物。〔式中、Rが、C10〜C18アルキルである〕〔式中、Rが、C10〜C18アルキルである〕


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