タイトル: | 特許公報(B2)_厚膜胞子及びその製造方法 |
出願番号: | 2001571883 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 1/14,C12R 1/885 |
佐々木 康晴 JP 3809634 特許公報(B2) 20060602 2001571883 20010330 厚膜胞子及びその製造方法 佐々木 康晴 398023782 株式会社北海道グリーン興産 392001461 鈴木 正次 100059281 涌井 謙一 100108947 佐々木 康晴 JP 2000098293 20000331 20060816 C12N 1/14 20060101AFI20060727BHJP C12R 1/885 20060101ALN20060727BHJP JPC12N1/14 AC12N1/14 AC12R1:885 C12N 1/00-7/08 特開平11−341981(JP,A) 特開平06−192028(JP,A) 特開平11−279015(JP,A) 特開平07−303481(JP,A) 特開平07−147977(JP,A) 4 FERM BP-4346 JP2001002772 20010330 WO2001072968 20011004 9 20021029 六笠 紀子 技術分野この発明は、トリコデルマ ハルジアナム SK−55の厚膜胞子又は菌糸体、分生子及び厚膜胞子の混合物を多量生産することを目的とした厚膜胞子及びその製造方法に関する。なお、この発明で用いるトリコデルマ ハルジアナム SK−55菌は、日本国経済産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)(生命研)に受託番号「微工研菌寄第13327号」として寄託されている(受託の日:1992年12月9日、受託者:株式会社北海道グリーン興産)。当該原寄託からのブダペスト条約に基づく寄託への移管請求は、1992年12月9日付で行なわれ、受託番号BP−4346が付与されている。背景技術従来菌糸体微生物には、微量の厚膜胞子が含まれていることが知られていた。前記厚膜胞子は、環境対応性が高く、低温はもとより、高温においても死滅しないことが知られていた。またニンビア スシルピコラK−004(FERM Bp−4448)の厚膜胞子及びその誘導培地に関する発明の提案がある(特開平7−303481号)。前記に示した天然に存在する厚膜胞子は、極めて微量である為に、これを集めて使用することは困難である。また前記公知発明に示された培地では、一般的菌糸体微生物の厚膜胞子を効率よく多量生産することはむつかしい問題点があった。発明の開示この発明は、トリコデルマ ハルジアナム SK−55(Trichoderma harzianum SK−55)を通気培養により培養させると共に、厚膜胞子生成条件を付与することにより、多量の厚膜胞子の生成に成功したのである。具体的には、SK−55の菌糸体を椎茸等の培地と近似した培地に接種し、通気撹拌して培養すると共に、栄養分消費時に外部刺激を強くして厚膜胞子化を促進させた後、遠心分離法その他の手段によって培地と、菌糸体、分生子及び厚膜胞子とを分離することを特徴とした厚膜胞子及びその製造方法である。前記椎茸等の培地と近似した培地とは、グルコース、酵母エキス及びポリペプトンを主材料とし、これに必要な微量成分(例えば硫酸マグネシウム、塩化カルシウムなど)を加えたものであって、この場合にpHは無調整としている。また、前記培養において、温度は27℃〜29℃、通気量は0.3vvm、接種後の撹拌数は100〜200rpm、接種種量は0.5〜0.8%であって、pH調整は行っていない。即ちトリコデルマ ハルジアナム SK−55の菌糸体を、グルコース、酵母エキス及びポリペプトンを含む培養培地に接種し、培養し、分生子入りの厚膜胞子を得たことを特徴とする厚膜胞子であり、培養培地は、グルコース2.0%〜3.5%(質量)、酵母エキス0.3%(質量)、ポリペプトン0.3%(質量)、硫酸マグネシウム0.05%(質量)、塩化カルシウム0.05%(質量)及び消泡剤0.001%(質量)としたものである。次に方法の発明は、トリコデルマ ハルジアナム SK−55の菌糸体を、グルコース、酵母エキス及びポリペプトンを含む培養培地に接種し、適温に保ちつつ通気と撹拌を継続して菌糸体の増殖を図り、ついで撹拌強度を高めて胞子形成を促進させつつ、通気培養を継続させた後、前記培養液と生成した菌糸体、分生子及び厚膜胞子とを分離することを特徴とした厚膜胞子の製造方法である。また適温は27℃〜29℃とし、通気量は0.3vvmとし、撹拌数は100〜200rpmとし、接種種量は0.7%とするものであり、培地内のグルコース消費後、撹拌数を15〜30%増加すると共に通気培養を継続するものである。前記発明における培地はpH調整していなくても、菌糸体の増殖に支障はない。前記発明において、培養温度を27℃〜29℃にしたのは、トリコデルマ ハルジアナム SK−55の菌糸体(以下SK−55という)の増殖適温だからである。前記発明において培地から菌糸体及び厚膜胞子を回収するには、通常菌糸体の分離に使用されている遠心分離機又は圧搾濾過法を使用する。この発明において、培養後2日後位から撹拌数(振盪数)を早くするのは、菌糸体の増殖について困難性を増し、厚膜胞子の生成を促進させる為である。主としてグルコースを消費尽した頃(2日後)撹拌数を増加させれば、SK−55の菌糸体が自衛上厚膜胞子化すると判断した為であるが、実際上もそのようになって厚膜胞子の生成が促進された。前記発明における培地容量は100ml、通気量は0.3vvmであって、容量が多くなれば、当然通気量も大きくなる。この発明によれば、熱耐性が優れかつ均質のSK−55の厚膜胞子を多量に得ることができる。この発明の方法によれば、SK−55の厚膜胞子を多量生産できる効果がある。発明を実施するための最良の形態【実施例1】この発明の実施例を説明する。(1)種培養(培地組成)グルコース 22.0(g/L)酵母エキス 3.0(g/L)ポリペプトン 3.0(g/L)MgSO4 0.5(g/L)CaCl2 0.5(g/L)pH 無調整前記成分100mlを容量200mlの三角フラスコに入れ、SK−55を3g/Lの割合で接種し、28℃で7日間、通気量0.3vvm、100rpmの振盪培養した。(2)主培養(培地組成)グルコース 33.0(g/L)酵母エキス 3.0(g/L)ポリペプトン 3.0(g/L)MgSO4 0.5(g/L)CaCl2 0.5(g/L)消泡剤 0.1(g/L)pH 無調整前記成分15リットルを、容量30リットルのジャーに入れた培地内へ、前記(1)で得た種培養液100mlを収容し、温度28℃、通気量0.3vvm、200rpmの振盪培養した。前記培地内のグルコース消費後(培養2日後)、240rpm振盪して胞子形成を促進させ、更に5日間通気培養を継続した。前記のようにして、7日間培養後、培養液を遠心分離機で菌糸体、分生子及び厚膜胞子を分離した。前記分離物に乾燥助材(珪藻土、ゼオライトなど)を20〜30%添加し、30〜40℃の減圧乾燥機に入れて撹拌しつつ水分6〜12%に乾燥して菌糸体、分生子及び厚膜胞子の混合製品を得た。前記混合物をホモゲナイザーで無菌的に、菌糸体を破砕処理し、50〜60℃で風乾すれば乾燥製剤ができる。前記の他、混合物から遠心分離その他の方法により厚膜胞子を分離し、別製の分生子を任意の割合で加入すれば、厚膜胞子と、分生子の割合を使用目的別に規制し、植物別、使用場所別の製剤とすることができる。前記分離した分生子は1.7×107(CFU/ml)であり、厚膜胞子は1.2×107(CFU/ml)であった。前記実施例におけるグルコースの消費状態は図1の通りである。前記で得た製品中の厚膜胞子は熱耐性が大きく、例えば−5℃〜+70℃位までは保存中に破壊されるおそれがない。また分生子と、厚膜胞子とを混合して包装すれば、分生子の熱耐性を向上し得ると共に、厚膜胞子の発芽率を向上することが認められた。(試験例) SK−55の土壌病害に対する評価試験供試菌 ダイコンバーディシリウム黒后病 verticillium dahliae供試植物 20日大根供試薬剤 SK−55分生子製剤、同厚膜胞子製剤、同分生子原末対照剤 ベンレート(住友化学工業株式会社製)病原土壌 北海道の汚染土壌(北海道グリーン興産提供)接種発病方法250mlカップ(アンミツカップ)に滅菌土150ml入れ、その上に病原土壌50mlを詰め、試験薬剤を夫々所定量を均一にばらまき(対照剤は所定量を潅注処理した)、3日後、種子を1カップ当り10粒播種した。その後8メッシュでふるった滅菌土で覆土し、普通潅水し栽培した。調査方法調査は、覆土に近い位置でダイコンの葉茎を切り取り、繊管束部分の褐変−黒変化を調査して発病苗率を調べた。試験は3区反復して実施した。その結果は表1の通りである。【表1】試験日:菌接種、薬剤処理1999年11月19日、播種1999年11月22日、調査2000年1月11日結 果:無処理区の発病は高かった。分生子製剤、厚膜胞子製剤では、使用量10g/m2と、30g/m2での効果は確認できなかったが、100g/m2では対照剤ベンレートと同等の活性が認められた。更に分生子原末では、菌量が多いので30g/m2、100g/m2で顕著な防除効果が認められた。【実施例2】この発明の他の実施例について説明する。(1)ジャー培養(培地組成)グルコース 3.3%ポリペプトン 0.3%硫酸マグネシウム 0.05%塩化カルシウム 0.05%消泡剤 0.01%PH 無調整シード量 0.7%条件:温度28℃撹拌200rpm通気量0.3vvm上記培地で液体通気(撹拌)状態で3日間通気培養し、3日経過後1リットルサンプリングして、容量500mlの三角フラスコに100ml添加し、下記条件で7日間培養(全部で10日間培養)し、前記ジャーで継続培養したものと比較した所、表2の結果を得た。【表2】トーマ血球計により厚膜胞子のみを計測(イ)胞子化の温度条件は、培養温度(28℃)が最適と思われる。(ロ)最近の胞子形成と異なり、カルシウムの添加効果はない。(ハ)厚膜胞子の形成は、菌体の自己消化酵素との関係が推定され、アルカリ側で若干の増加傾向が見られた。(ニ)培養液のpHを5に調整した区で極端に胞子化が悪く、自己消化酵素との関係を裏付けられている。(ホ)ジャー培養の胞子濃度5×107/mlで再現性があり、糖切れ後のpH調整で胞子率は促進されるが、1×108/mlが液体培養の限界の可能性がある。(2)培養は28℃、200rpm、0.3vvm、0.2kg/cm2で行い、9日以降20℃、60rpmで行った所、表3の結果を得た。【表3】前記実施例によれば、厚膜胞子数は、培養7日目でピーク(4×107/ml)で以降増加は見られなかった(図2)。2回目のサンプルは490mlをホモゲナイズ処理(10000rpm、10分間)による死細胞(厚膜胞子)は、1.0%で安定していたので、ホモゲナイズ処理について死細胞を考慮に入れなくても良いと思われる。前記ホモゲナイズ処理後490mlをとって厚膜胞子数を調査した所、5.5×108/mlであった。前記厚膜胞子の使用時の濃度は、5×106/mlで効果を発揮することが認められるので、使用時に約100倍に薄めると良いと思われる。(3)培養は28℃、200rpm、0.3vvm、0.2kg/cm2で行い、10日以降15℃、60rpmで行った所、表4の結果を得た(図3)。【表4】前記実施例によれば、厚膜胞子数は、培養9日目でピーク(5×107/ml)で、以降増加は見られない(図3)。2回目のサンプル490mlをホモゲナイズ処理(10000rpm、10分間)による死細胞(厚膜胞子)は1.5%で安定していたので、ホモゲナイズ処理について、死細胞を考慮に入れなくても良いと思われる。但しホモゲナイズ処理後490mlをとって厚膜胞子数を調査した所、5.5×108/mlであった。前記厚膜胞子の使用時の濃度は5×106個/mlで効果を発揮することが認められるので、使用時に約100倍に薄めると良いと思われる。(使用例)トリコデルマ ハルジアナム SK−55の厚膜胞子、5.5×108/mlを200倍に希釈し、切断した種いも1ケ当たり20ml平均で噴霧又は浸漬し、乾燥後植え付けた。収穫時に、慣行区と厚膜胞子区夫々10株を無作為に採取し、計量した所、表5の結果を得た。【表5】前記のように、増収率は124%であった。前記においては、処理後の乾燥不十分であること、枯衰剤の処理を7日〜10日遅らせることにより更なる増収が見込まれた。これは当初の発育が遅れたが、同日収穫した為であった。【図面の簡単な説明】第1図は、この発明の実施例の培養時におけるグルコースと日数のグラフである。第2図は、同じく培養日数と、厚膜胞子数などのグラフである。第3図は、同じく他の実施例の培養日数と、厚膜胞子数などのグラフである。 トリコデルマ ハルジアナム SK−55(FERM BP‐4346)の菌糸体を、グルコース、酵母エキス及びポリペプトンを含む培養培地に接種し、適温に保ちつつ通気と撹拌を継続して菌糸体の増殖を図り、ついで撹拌強度を高めて胞子形成を促進させつつ、通気培養を継続させた後、前記培養液と生成した菌糸体、分生子及び厚膜胞子とを分離することを特徴とした厚膜胞子の製造方法。 培養培地は、グルコース2.0%〜3.5%(質量)、酵母エキス0.3%(質量)、ポリペプトン0.3%(質量)、硫酸マグネシウム0.05%(質量)、塩化カルシウム0.05%(質量)及び消泡剤0.001%(質量)としたことを特徴とする請求項1記載の厚膜胞子の製造方法。 適温は27℃〜29℃とし、通気量は0.3vvmとし、接種後の撹拌数は100〜200rpmとし、接種種量は0.7%とすることを特徴とした請求項1記載の厚膜胞子の製造方法。 培地内のグルコース消費後、撹拌数を15〜30%増加すると共に通気培養を継続することを特徴とした請求項1又は3記載の厚膜胞子の製造方法。