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タイトル:特許公報(B2)_長寿命励起型蛍光を用いる測定方法
出願番号:2001562182
年次:2010
IPC分類:G01N 21/78,G01N 31/00


特許情報キャッシュ

長野 哲雄 菊地 和也 是澤 光紀 小島 宏建 JP 4589588 特許公報(B2) 20100917 2001562182 20010228 長寿命励起型蛍光を用いる測定方法 長野 哲雄 595108044 積水メディカル株式会社 390037327 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 長野 哲雄 菊地 和也 是澤 光紀 小島 宏建 JP 2000050868 20000228 20101201 G01N 21/78 20060101AFI20101111BHJP G01N 31/00 20060101ALI20101111BHJP JPG01N21/78 CG01N31/00 HG01N31/00 V G01N 21/78 G01N 31/00 特開平 9−101262(JP,A) 特開平 5−180773(JP,A) 特開平10− 88124(JP,A) 特開2000−111480(JP,A) 国際公開第00/00819(WO,A1) 11 JP2001001502 20010228 WO2001063265 20010830 12 20070928 宮澤 浩 技術分野本発明は、蛍光を検知して試料中の測定対象物質を測定する方法に関する。より具体的には、本発明は、蛍光を検知して試料中の測定対象物質を測定する方法であって、特異性を得る手段としてタンパク質又は核酸等に蛍光物質を標識したプローブ類を使用することなく、バックグラウンド蛍光の影響を受けずに測定対象物質の測定を正確かつ高感度に行う方法に関するものである。背景技術蛍光を検知して試料中の測定対象物質を測定する方法(蛍光法)は、簡便かつ高感度な測定が可能であり、イムノプレートリーダなどの分析装置を使用して自動化が可能なことから、臨床検査をはじめ多くの分野で利用されている。特に、蛍光の持つ様々な特性(蛍光強度、異方性、励起エネルギー移動、蛍光寿命など)から、何千、何万という試料の中から薬物のリード化合物の候補を絞り込むスクリーニングであるHigh−throughput screening(HTS)における分析(assay)測定において蛍光法が利用されている。蛍光法は高効率、簡便さ等の点で極めてHTSへの利用に適しており、蛍光法は今後HTSにおけるassay測定の中心になるものと考えられている(Rogers,M.V.,Drug Discovery Today,Vol.2,pp.156−160,1997)。蛍光を検知して試料中の測定対象物質を測定する方法では、測定対象物質に起因しない、いわゆるバックグラウンド蛍光を生じることがある。バックグラウンド蛍光は、試料中の測定対象物質以外の内在性物質が自家蛍光を有するために生じる場合、試料中のタンパク質等に非特異的に付着した蛍光色素から生じる場合、あるいは測定対象物質が注入されている容器(プレートなど)から生じる場合などがある。いずれの場合も、感度、特異性に影響を与えるため、蛍光を検知して試料中の測定対象物質を測定する方法に共通した問題点であり、バックグラウンド蛍光の影響を受けずに測定する方法が要求されていた。バックグラウンド蛍光の影響回避に関しては、時間分解蛍光(Time Resolved Fluorescence:TRF)測定を使用する方法が検討されている。これは、ランタノイドイオン錯体の蛍光が数十マイクロ秒から数ミリ秒と非常に長寿命であるのに対して、バックグラウンド蛍光の原因となる通常の有機化合物から生じる蛍光の寿命は数ナノ秒から数十ナノ秒と短いことから、パルス励起光照射後、遅延時間(Delay Time)を設けて、夾雑するバックグラウンド蛍光が消失した後にランタノイドイオン錯体に由来する長寿命蛍光を測定すれば、バックグラウンド蛍光の妨害を受けることなく測定できることを利用したものである。しかしながら、ランタノイドイオン錯体自体は、測定対象物質に対して特異性を有していないため、特異性を得るために抗原・抗体反応(例えば、測定対象物質に対する特異抗体をランタノイドイオン錯体で標識して使用する)あるいは核酸塩基の相互作用(例えば、測定対象物質とハイブリダイズしうる一本鎖DNA断片をランタノイドイオン錯体で標識する)などを利用する必要があり、これらの反応、作用を利用することが困難な生理活性種や生体反応の測定には対応することができなかった。一方、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer:FRET)は一つの測定系に2種の蛍光性分子、供与体(ドナー)と受容体(アクセプター)が存在する時、供与体を励起したにも関わらず受容体の蛍光が観察される現象を言い、供与体の蛍光スペクトルと受容体の吸収(励起)スペクトルに重なりがあることによって生じる。 FRETは、供与体と受容体の相対的距離の変化あるいは相対的配置の変化を検出原理として、例えば、(1)特異的に結合するタンパク質またはリガンドをそれぞれ供与体、受容体で標識し、結合時に生じるFRETを検出することによる分子間相互作用の測定;(2)同一分子内の異なる特定の2ケ所をそれぞれ供与体と受容体で標識し、何らかの刺激に応答して生じるFRET効率の変化を検出することによる、特定の2ケ所の相対的配置の変化の測定;(3)目的の酵素が特異的に認識するペプチド配列あるいは特異的結合(エステル結合など)を含む基質アナログの両末端を供与体と受容体で標識し、切断前後のFRET効率の変化を検出することによる酵素活性の測定などに利用されており、特異性の高い方法である。しかしながら、測定時に供与体と受容体が特定の相対的距離あるいは相対的配置になるようにタンパク質あるいは核酸等を供与体、受容体で標識しておく必要があり、測定前の試薬の調製等が煩雑であり、高コストになるという問題があった。一つの測定系内でTRFとFRETとを組み合わせる方法は、Homogenuos Time Resolved Fluorometry(HTRF)として近年、いくつかの報告がある。供与体にユーロピウムイオン錯体を使用し、受容体にAPC(分子量104,000の蛍光性タンパク質)、またはCy5(シアニン系色素)を使用し、免疫測定や分子間相互作用の検出等において、検出限界を飛躍的に向上させたとの報告がある。この方法は、TRFを用いることによりバックグラウンド蛍光を低減させ、S/N比を大きく向上させた結果であると考えられる。しかしながら、測定時に供与体と受容体が特定の相対的距離あるいは相対的配置になるよう、タンパク質等を供与体又は受容体で標識しておく操作は不可避であった。発明の開示本発明の課題は、蛍光を検知して試料中の測定対象物質を測定する方法において、特異性を得る手段として、タンパク質あるいは核酸等に蛍光物質を標識したプローブ類を使用することなく、バックグラウンド蛍光の影響を受けずに測定対象物質の測定を行う簡便かつ高感度な測定方法を提供することにある。本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討していたところ、意外にも、それ自身が長寿命蛍光を有しFRETを起こし得る供与体と該供与対に対する受容体とを、極近距離になるように連結した場合にはFRETを生じず、前記供与体および前記受容体が連結されず自由に移動できる状態にある時にFRETが生じる場合があることを見出した。本発明者らはさらに検討を重ねた結果、試料中の測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブ、およびそれ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体にFRETを生じさせることが可能な供与体を共存させることにより、特異的蛍光プローブと測定対象物質との反応により生じる蛍光を供与体からのFRETにより長寿命励起型蛍光とし、その長寿命蛍光をTRF測定することにより、試料中の測定対象物質を極めて高感度に測定できることを見出した。また、本発明者らは、この方法によれば、試料中の測定対象物質以外の内在性物質に由来する自家蛍光や、測定対象物質が注入されている容器(プレートなど)から生じるバックグラウンド蛍光の影響を受けずに測定することができ、極めて正確な測定が可能になることを見出した。本発明はこれらの知見を基に完成されたものである。すなわち、本発明は、試料中の測定対象物質を蛍光により測定する方法であって、(1)測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブ、及び(2)それ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体(ただし該供与体は特異的蛍光プローブとは化学結合による結合を形成しない)の存在下で測定を行い、該受容体と測定対象物質との反応による蛍光を該受容体に惹起された蛍光共鳴エネルギー移動により長寿命励起型蛍光とする工程を含む方法を提供するものである。この方法の好ましい態様によれば、該長寿命励起型蛍光を時間分解蛍光測定により測定する工程を含む方法が提供される。本発明のさらに好ましい態様によれば、前記供与体がランタノイドイオン錯体である上記の方法;前記ランタノイドイオン錯体がユーロピウムイオン錯体またはテルビウムイオン錯体である上記の方法;前記受容体がキサンテン骨格を有する受容体である上記の方法;前記供与体がテルビウムイオン錯体であり、前記受容体がローダミン骨格を有する受容体である上記の方法;及び前記測定対象物質が一酸化窒素又はカスパーゼである上記の方法が提供される。別の観点からは、本発明により、試料中の測定対象物質を蛍光により測定するための試薬組成物であって、(1)測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブ、及び(2)それ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体(ただし該供与体は特異的蛍光プローブとは化学結合による結合を形成しない)を含む組成物が提供される。さらに別の観点からは、本発明により、試料中の測定対象物質を蛍光により測定するための試薬キットであって、(1)測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブ、及び(2)それ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体(ただし該供与体は特異的蛍光プローブとは化学結合による結合を形成しない)を含むキットが提供される。さらに別の観点からは、本発明により、試料中の測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブであって、上記の方法に用いるための蛍光プローブ;及びそれ自身が長寿命蛍光を有し、試料中の測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体であって(ただし該供与体は特異的蛍光プローブとは化学結合による結合を形成しない)、上記の方法に用いるための供与体が提供される。発明を実施するための最良の形態日本国特許出願第2000−50868号(2000年2月28日出願)の明細書の開示を全て参照として本明細書の開示に含める。本発明の方法は、試料中の測定対象物質を蛍光により測定する方法であって、(1)測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブ、及び(2)それ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体の存在下で測定を行い、該受容体と測定対象物質との反応による蛍光を該受容体に惹起された蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により長寿命励起型蛍光とし、好ましくは前記FRETより生じた受容体の長寿命励起型蛍光を時間分解蛍光測定(TRF)により測定することを特徴としている。該供与体と特異的蛍光プローブとは化学結合による結合を形成しておらず、測定系内で両者は独立に存在することが必要である。測定対象物質の種類は特に限定されないが、例えば、一酸化窒素、Ca2+、Zn2+などの生体内分子、カスパーゼなどの加水分解酵素などが挙げられる。測定対象物質と反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブの種類も特に限定されず、測定対象物質と特異的に反応でき、かつその反応により蛍光を生じるものであればいかなるものを用いてもよい。本明細書において「特異的に反応」という用語は、通常は、試料中に含まれる他の成分には実質的に反応せず、実質的に測定対象物質にのみ反応する性質を意味しているが、測定対象物質の測定が可能になる最低限度の特異的な反応性を有するプローブも利用可能であり、上記の用語はいかなる意味においても限定的に解釈してはならない。測定対象物質を含む試料の種類は特に限定されず、いかなるものを用いてもよい。例えば、生体試料などの天然由来の試料のほか、人工的な試料も包含される。生体試料としては、例えば、生体外に分離された生体試料、例えば、血液(血清、血漿)若しくは尿などの体液、組織、又は細胞などが挙げられる。人工的な試料としては、例えば、遺伝子組換えにより生産された動物や植物由来の組織や細胞などのほか、遺伝子組換えにより生産された非天然型タンパク質を含む細胞などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。また、本明細書において「測定」という用語は、検出、定量、定性など種々の目的の測定を含めて最も広義に解釈されるべきである。特異的蛍光プローブが測定対象物質と反応して蛍光を生じる機構についても特に制限はない。例えば、特異的蛍光プローブ自体が測定対象物質との反応前は実質的に無蛍光の化学構造を有しているが、測定対象物質と反応することによって蛍光を有する構造に変化する場合、あるいは特異的蛍光プローブの分子内で蛍光物質が消光を起こすような状態で連結されており、測定対象物質との反応によりその連結が切断される場合などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。特異的蛍光プローブ自体が測定対象物質との反応前は実質的に無蛍光の化学構造を有しているが、測定対象物質と反応することによって蛍光を有する構造に変化する場合の具体例としては、一酸化窒素と反応することにより蛍光を生じるジアミノフルオレセイン誘導体(特開平10−226688号明細書)、ジアミノローダミン誘導体(国際公開WO99/01447号明細書)、亜鉛蛍光プローブ(特願平11−040325号明細書)、一重項酸素測定用プローブ(国際公開WO99/51586号明細書)などが挙げられる。例えば、国際公開WO99/01447号明細書に記載されたジアミノローダミン誘導体は、一酸化窒素と特異的に反応してトリアゾール環を有する構造に変化し、この構造変化により蛍光を生じる。特異的蛍光プローブの分子内で蛍光物質が消光を起こすような状態で連結されており、測定対象物質との反応によりその連結が切断される場合の具体例としては、カスパーゼと反応し蛍光を生じるPhiPhiLux−G2D2(Onco Immuni社製)。(「新アポトーシス実験法」、第2版、羊土社、pp.201−204,1999)を挙げることができる。PhiPhiLux−G2D2は、カスパーゼ−3、−7などによって切断される特異的アミノ酸配列(GDEVDGID)の両端にそれぞれ1分子ずつローダミンが結合した構造を有しているが、両端のローダミン同士が二量体構造を形成するため、蛍光が消光した状態で存在している。カスパーゼとの反応により、GDEVDとGIDの間でローダミン2分子の連結が切断されると、消光作用が失われて蛍光を生じる。それ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体としては、例えば、Eu3+(ユーロピウムイオン)、Tb3+(テルビウムイオン)、Sm3+(サマリウムイオン)、Dy3+(ジスプロシウムイオン)などのランタノイドイオンが配位子とキレートを形成したランタノイドイオン錯体を挙げることができる。該ランタノイドイオン錯体は常法によって得ることが可能であり、例えば、ランタノイドイオンと錯体を形成する配位子として公知のDTPA(Diethylenetriaminepentaacetic Acid)類縁体の一つであるDTPA−cs124をセルビンら(Selvin P.R.et al,J.Am.Chem.Soc.,Vol.117,pp.8132−8138,1995)の方法で合成し、得られた配位子をランタノイドイオンと液中で混合することによってランタノイドイオン錯体を得ることができる。特異的蛍光プローブと上記供与体(例えばランタノイドイオン錯体)は、受容体である特異的蛍光プローブに最適な蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させ、かつ該受容体が時間分解蛍光測定により測定可能な長寿命励起型蛍光を発するように、最適な組み合わせを選択することが可能である。蛍光共鳴エネルギー移動については、Stryer L.,Ann.Rev.Biochem.,Vol.47,pp.819−846,1978などに記載されており、蛍光共鳴エネルギー移動が生じたか否かは上記文献に記載された方法に従って正確に判定可能であり、例えば、本明細書の実施例に具体的に記載された測定方法を参照しつつ、適宜実験的に確認を行うことができる。なお、長寿命蛍光とは、一般的には、その寿命が10−5秒から10−3秒程度の蛍光を意味しており、供与体の蛍光寿命は通常10−3秒程度、蛍光共鳴エネルギー移動により生じた長寿命励起型蛍光の寿命は通常10−4秒程度である。また、時間分解蛍光測定については、Hammila I.& Webb S.,Drug Discovery Today,Vol.2,pp.373−381,1997に詳細に記載されており、本明細書の実施例に具体的手法が示されているので、当業者は容易にこの測定方法を行うことが可能である。本発明の試薬組成物は、上記の(1)測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブ、及び(2)それ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体を含む組成物として提供される。組成物の調製には、必要に応じて試薬の調製に通常用いられる添加剤を用いてもよい。また、本発明のキットは、上記(1)及び(2)の成分をそれぞれ予め混合せず、独立させた状態で提供される。それぞれの成分は、必要に応じて試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として調製されていてもよい。組成物の調製に用いるための添加剤として、例えば、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を挙げることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供される。実施例以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。例1:特異的蛍光プローブ(DAR−M)の製造国際公開WO99/01447号明細書に記載の方法で製造したDAR−1[3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(3,4−ジアミノ−2−カルボキシフェニル)キサンチリウム・分子内塩]をエタノールに溶解し、ヨウ化メチルをDAR−1に対して1.7等量加え、80℃に昇温した。1時間毎に、原料の消失程度とジメチル体の生成程度をTLCで確認しながら、ヨウ化メチル1.7等量を追加し、所望の目的物が生成した時点で反応を終了した。生成物をシリカゲルクロマトグラフィー及びプレパラティブTLCで精製してDAR−M[3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−[3−アミノ−4(N−メチルアミノ)−2−カルボキシフェニル]キサンチリウム・分子内塩]を得た。m.p.150−154℃1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ1.13(12H,t,J=7.0),2.86(3H,s),3.33(8H,q,J=7.0),6.37−6.43(5H,m),6.75(1H,d,J=7.9),6.81(2H,d,J=9.0)FAB−MS 487(M++1)上記で得たDAR−Mをメタノールに溶解し、一酸化窒素ガスを吹き込んだ後に溶媒を留去した。プレパラティブTLCにより精製してDAR−MT[3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(4−カルボキシ−1−メチルベンゾトリアゾール−5−イル)キサンチリウム・分子内塩]を得た。m.p.155−160℃1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ1.12(12H,t,J=7.1),3.32(8H,q,J=7.1),4.37(3H,s),6.31(2H,dd,J=9.0,2.5),6.43(2H,d,J=2.5),6.58(2H,d,J=9.0),7.26(1H,d,J=8.6),7.83(1H,d,J=8.6)FAB−MS 498(M++1)例2(1)試料の調製DTPA(Diethylenetriaminepentaacetic Acid)類縁体の一つであるDTPA−cs124をセルビンら(Selvin P.R.et al,J.Am.Chem.Soc.,Vol.117,pp.8132−8138,1995)の方法で合成した。10mM DTPA−cs124のDMSO溶液および当量の10mM TbCl3水溶液を混合した後、終濃度10μMとなる様に0.1M Tris−HCl緩衝液(pH8.8)を用いて希釈し、30分以上放置してテルビウムイオン錯体(Tb3+錯体)を形成させた。前記Tb3+錯体の溶液に例1で得たDAR−M又はDAR−MTをそれぞれ終濃度1.0、2.0、3.0、5.0、10.0μMになるよう添加し、測定に用いた。DAR−M又はDAR−MTをTb3+錯体と共存させない単独の試料を調製して対照としての測定に用いた。(2)TRFスペクトルの測定以下の光度計設定条件で上記(1)で得た試料のスペクトルを測定した。Mode:Phosphate、Excitation:328nm、Delay Time:50μs、Flash Count:1、Gate Time:1.00ms、Cycle Time:20ms、Slit幅:2.5nm(Excitation、Emission共通)、Scan speed:900nm/min結果を第1図に示す。Tb3+錯体とDAR−Mが共存する系(第1A図)では、DAR−Mの濃度依存的にTb3+錯体に由来する545nmの蛍光強度の減少が観察された。一方、Tb3+錯体とDAR−MTが共存する系(第1B図)では、DAR−MTの濃度依存的にTb3+錯体に由来する545nmの蛍光強度の減少が観察されるとともに、Tb3+錯体由来の蛍光とは別の584nmにピーク頂を有する蛍光が出現した。DAR−M又はDAR−MTをTb3+錯体と共存させない系では、同様の条件でスペクトルを測定しても蛍光は観察されず、DAR−M及びDAR−MTはDelay Time 50μsを超える長寿命の蛍光を有していないと結論された。以上より、Tb3+錯体及びDAR−Mが共存する系では、Tb3+錯体からDAR−MへのFRETが生じたが、DAR−Mが蛍光を有さないためTb3+錯体の蛍光強度の減少のみが観察され、一方、Tb3+錯体及びDAR−MTが共存する系では、Tb3+錯体からDAR−MTへのFRETが生じ、このFRETによるDAR−MTの長寿命蛍光が生じたことがわかった。(3)蛍光寿命の測定以下の光度計設定条件で上記(1)の試料について50μs毎に蛍光強度を測定し、I=I0exp(−t/τ)の式にあてはめ蛍光の減衰曲線を求めた。求めた減衰曲線より、蛍光寿命(τ)を求めた。Mode:Short Phos.Decay、Excitation:328nm、Emission:545nmまたは584nm、Flash Count:1、Gate Time:0.01ms、Cycle Time:20ms、Slit幅:10nm、Integ.Time:1.0s結果を表1に示した。Tb3+錯体とDAR−Mが共存する系(表中のDAR−Mの列)では、DAR−Mの濃度依存的にTb3+錯体に由来する545nmの蛍光寿命が短縮した。一方、Tb3+錯体とDAR−MTが共存する系(表中のDAR−MTの列)では、DAR−MTの濃度依存的にTb3+錯体に由来する545nmの蛍光寿命と、Tb3+錯体由来の蛍光とは別の新たに出現した584nmの蛍光寿命とが、μsオーダーで一致しながらともに短縮した。 以上より、前記(2)の結果と同様に、Tb3+錯体由来の蛍光とは別の新たに出現した584nmの蛍光は、Tb3+錯体からDAR−MTへのFRETが起こった結果、このFRETにより生じたDAR−MTの長寿命蛍光であることがわかった。例3:一酸化窒素の測定(1)一酸化窒素測定試薬の調製10mM DTPA−cs124のDMSO溶液および当量の10mM TbCl3水溶液を混合した後、終濃度10μMとなる様に0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を用いて希釈し30分以上放置して得たTb3+錯体に、さらに10mM DAR−M DMSO溶液を終濃度3.0μMになるよう添加し、一酸化窒素測定試薬を調製した。(2)測定方法上記(1)で得られた一酸化窒素測定試薬を蛍光セルに入れ、攪拌しながら励起波長328nm、蛍光波長584nmの蛍光強度の変化を経時的に測定した。測定開始120秒後に緩衝液中で徐々に一酸化窒素を放出する一酸化窒素ドナーであるNOC13を終濃度10μMとなるように添加し、3600秒まで測定を継続した。一酸化窒素測定試薬とそれぞれ同濃度のTb3+錯体又はDAR−M溶液を調製して対照とした。機器:日立F−4500、Mode:蛍光時間変化測定、Excitation:328nm、Emission:584nm、Slit幅:2.5nm(Excitation、Emission共通)、ホトマル電圧:950V一酸化窒素測定試薬における蛍光強度の経時変化からDAR−Mのみの試薬の蛍光強度の経時変化を差し引いた、一酸化窒素検出に由来する正味の蛍光強度の経時変化を図2に示した。NOC13添加直後より経時的な584nmの蛍光強度の増大が認められた。例4(参考例)蛍光共鳴エネルギー移動を効率的に起こさせる物質(SNR3)を特異的蛍光プローブのモデルとして用い、供与体との組み合わせで蛍光共鳴エネルギー移動を惹起して、該物質から生じた長寿命励起型蛍光を測定した。(1)SNR3の製造(a)2−ヒドロキシ−4−テトラヒドロキノリジノ[1,9−hi](2’−カルボキシベンゾイル)ベンゼン無水フタル酸(2g,13.5mmol)、8−ヒドロキシキノリジン(1g,5.28mmol)をトルエン(30ml)中で混合して夜加熱還流した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/CH2Cl2=1/1)で精製して目的物を得た(収率40%)。1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ1.68−1.91(m,4H),2.32−2.46(t,2H,J=6.2Hz),2.55−2.63(t,2H,J=6.2Hz),3.15−3.30(m,4H),6.40(s,1H),7.32(d,1H,J=6.6Hz),7.55−7.68(m,2H),7.94(d,1H,J=7.5Hz),12.95(s,br 1H)(b)6−N,N−ジエチルアミノ−1−ナフトール6−アミノ−1−ナフトール(2g,12.6mmol)、ヨードエタン(10g,64mmol)、トリエチルアミン(1ml)を無水ジメチルホルムアミド(5ml)中で混合し,120℃で5時間撹拌した。反応混合物に200mlのジクロルメタンを加え水洗し、さらに飽和食塩水で洗浄した。有機相を乾燥後、溶媒を留去して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−hexane:CH2Cl2=1:9)で精製して目的物を得た(収率32%)。1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ1.20(t,6H,J=7.0Hz),3.44(q,4H),6.47(dd,1H,J=7.0,1.3Hz),6.84(d,1H,J=2.6Hz),7.07(dd,1H,J=9.3,2.6Hz),7.21(m,2H),8.00(d,1H,J=9.4Hz)(c)3−ジエチルアミノ−10−テトラヒドロキノリジノ[1,9−hi]−9−[2’−カルボキシフェニル]−ベンゾ[c]キサンチリウム(SNR3) 上記(a)で得られた2−ヒドロキシ−4−テトラヒドロキノリジノ[1,9−hi](2’−カルボキシベンゾイル)ベンゼン(60mg,0.18mmol)、上記(b)で得られた6−N,N−ジエチルアミノ−1−ナフトール(40mg,0.18mmol)をメタンスルホン酸(2ml)に溶解し,85℃で12時間撹拌した。反応混合物を冷却後、およそ500mlの氷水にあけ、混合液を氷水で冷却しながら2規定NaOH水溶液で中和し、さらに5ml濃塩酸を加えて酸性にした。生じた沈殿を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CH2Cl2)で精製して目的物を得た(収率20%)1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ1.23(t,6H,J=7.0Hz,a);2.12(m,8H,b);3.11(m,4H,c);4.13(q,4H,J=7.9Hz,d);6.24(s,1H,e);6.59(d,1H,J=8.8Hz,f);6.79(d,1H,J=2.6Hz,g);7.17(m,3H,h,i,j);7.62(m,2H,k,l);8.04(m,1H,m);8.35(d,1H,J=9.2Hz,n)FAB−MS:517(M+)(2)スペクトル測定紫外可視吸光スペクトル測定には島津UV−1600を用い、サンプリングピッチを0.2nm又は0.5nmとし、スキャンスピード6段階の中から低速を使用した。蛍光スペクトル測定にはパーキンエルマーLS50Bを用い、スキャンスピードを900nm/分とし、励起側スリット及び蛍光側スリットを共に2.5nmとして測定を行った。Eu3+錯体の蛍光スペクトルとSNR3の吸収スペクトルの重なり積分Jの算出は、以下の式を用いた。SNR3のDMSO溶液(10mM)をリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)で希釈して10μM溶液を調製し、この溶液をスペクトル測定に用いた。紫外可視吸光スペクトル及び蛍光スペクトルを測定し、Eu3+錯体の蛍光スペクトルとSNR3の吸収スペクトルの重なり積分Jを求めた。結果を図3に示す。SNR3及びEu3+錯体の蛍光強度の最大値をそれぞれ100にそろえ、10μMのSNR3溶液(0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.4)の吸収スペクトルと重ねて示した。SNR3はλex=615nm,λem=655nmの蛍光特性を有し、Eu3+錯体の蛍光スペクトルとの重なり積分は7.34×1015(nm4cm−1M−1)であった。この値は、長波長励起蛍光物質Cy5の吸収スペクトルとEu3+錯体の蛍光の重なり積分の大きさ(6.55×1015nm4cm−1M−1,Selvin,P.R.,et al.,J.Am.Chem.Soc.,116,6029−6030,1994)と比較してもFRETを引き起こすのに十分大きな値であると言える。産業上の利用可能性本発明の方法によれば、生体試料などに含まれる測定対象物質をバックグラウンド蛍光の影響を受けずに正確かつ高感度に測定できる。また、特異性を得る手段として、タンパク質や核酸等に蛍光物質を標識したプローブ類を使用する必要がないため、試薬の調製が簡単なだけでなく、抗原・抗体反応や核酸塩基の相互作用などを利用できない生理活性種や生体反応の測定に使用することが可能である。【図面の簡単な説明】第1図は、Tb3+錯体とDAR−Mとが共存する系及びTb3+錯体とDAR−MTとが共存する系において、Tb3+錯体からDAR−M又はDAR−MTへの蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じ、DAR−MTではFRETによるDAR−MT由来の長寿命蛍光が生じたことを示す。図中、(A)はTb3+錯体とDAR−Mが共存する系の結果を示し、(B)はTb3+錯体とDAR−MTが共存する系の結果を示す。第2図は、本発明の方法により特異的蛍光プローブとしてDAR−Mを用いて一酸化窒素を測定した結果を示す。第3図は、Eu3+錯体の蛍光スペクトルとSNR3の吸収スペクトルの重なり具合を示す。 試料中の測定対象物質を蛍光により測定する方法であって、(1)測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブ、及び(2)それ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体(ただし該供与体は特異的蛍光プローブとは化学結合による結合を形成しない)の存在下で測定を行い、該受容体と測定対象物質との反応による蛍光を該受容体に惹起された蛍光共鳴エネルギー移動により長寿命励起型蛍光とする工程を含む方法。 該長寿命励起型蛍光を時間分解蛍光測定により測定する工程を含む請求の範囲第1項に記載の方法。 前記供与体がランタノイドイオン錯体である請求の範囲第1項又は第2項に記載の方法。 前記ランタノイドイオン錯体がユーロピウムイオン錯体又はテルビウムイオン錯体である請求の範囲第3項に記載の方法。 前記受容体がキサンテン骨格を有する受容体である請求の範囲第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の方法。 前記供与体がテルビウムイオン錯体であり、前記受容体がローダミン骨格を有する受容体である請求の範囲第4項に記載の方法。 前記測定対象物質が一酸化窒素又はカスパーゼである請求の範囲第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の方法。 請求の範囲第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の方法に用いるための試薬組成物であって、(1)測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブ、及び(2)それ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体(ただし該供与体は特異的蛍光プローブとは化学結合による結合を形成しない)を含む組成物。 請求の範囲第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の方法に用いるための試薬キットであって、(1)測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブ、及び(2)それ自身が長寿命蛍光を有し、該特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体(ただし該供与体は特異的蛍光プローブとは化学結合による結合を形成しない)を含むキット。 試料中の測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブであって、請求の範囲第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の方法に用いるためのプローブ。 それ自身が長寿命蛍光を有し、試料中の測定対象物質に特異的に反応して蛍光を生じる特異的蛍光プローブを受容体として該受容体に蛍光共鳴エネルギー移動を惹起させることが可能な供与体であって(ただし該供与体は特異的蛍光プローブとは化学結合による結合を形成しない)、請求の範囲第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の方法に用いるための供与体。


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