タイトル: | 特許公報(B2)_脳、脊髄および神経損傷の治療 |
出願番号: | 2001552892 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/405,A61K 33/06,A61P 25/00,A61P 43/00 |
ヴィンク,ロバート ニムモ,アラン・ジョン JP 4794794 特許公報(B2) 20110805 2001552892 20010118 脳、脊髄および神経損傷の治療 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー 591003013 F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT 津国 肇 100078662 篠田 文雄 100075225 ヴィンク,ロバート ニムモ,アラン・ジョン AU PQ 5146 20000118 20111019 A61K 31/405 20060101AFI20110929BHJP A61K 33/06 20060101ALI20110929BHJP A61P 25/00 20060101ALI20110929BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110929BHJP JPA61K31/405A61K33/06A61P25/00A61P43/00 111 A61K 31/405 A61K 33/06 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 国際公開第99/064009(WO,A1) 国際公開第96/024353(WO,A1) Journal of Neurosurgery,1999年,Vol.90,No.3,p504−509 Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,1999年,Vol.288,No.3,p1311−1316 Journal of Neurotrauma,1998年,Vol.15,No.3,p183−189 British Journal of Pharmacology,1992年,Vol.105,No.4,p875−880 British Journal of Pharmacology,1993年,Vol.108,No.1,p146−149 European Journal of Pharmacology,1994年,Vol.263,No.1−2,p193−198 Journal of Biological Chemistry,1994年,Vol.269,No.9,p6587−6591 Journal of Neurotrauma,1992年,Vol.9,No.1,p21−32 Journal of Neurotrauma,1995年,Vol.12,No.3,p315−324 Brain Research,1985年,Vol.337,No.1,p81−90 20 AU2001000046 20010118 WO2001052844 20010726 2003520232 20030702 14 20080117 小森 潔 【0001】(発明の分野)本発明は、脳、脊髄および神経損傷の処置の方法に関する。該方法に特に役立つ処方物も提供される。【0002】脳に対する損傷は、運動および認識の欠損の発生を招き、それは、脳損傷の生存者が経験する有意な病的状態に寄与する。その上、社会の若い成員に最高の発生率を有する。したがって、脳に対する損傷は、他のいかなる疾病過程に比較しても、生産生活の最大の損失の原因となる。にもかかわらず、脳損傷後の結果を改善するのに効果的な治療法は、皆無である。本発明者らは、脳損傷の治療のための力強い薬理学的介入としての治療法の用途を開示する。この治療法を用いることは、軽度ないし重度の実験的脳損傷における運動と認識との双方の結果を有意に改善し、また脊髄および神経損傷の治療にも有益な効果を有することが見出された。【0003】(発明の背景)脳損傷は、二つの機序を通じて神経学的欠損の発生を招くことが周知である。これらの第一は、一次機序として知られている。これらは、損傷の事象の時点で発生し、神経繊維の断裂、裂傷、伸張および圧縮のような、機械的過程を包含する。一旦発生したときのこの種の損傷に対しては、僅かなことがなし得るにすぎない。第二の機序は、二次損傷であって、一次損傷によって開始される、生化学的および生理学的過程を包含するが、損傷後の時間とともに現れる。脳損傷後の罹患率の多くは、この二次損傷の発生に関連することが立証されている。二次損傷は、一次的事象の数分ないし数日後に発生するとすれば、この種の損傷を薬理学的に防止し、結果として生じる結果を有意に改善する好機が存在する。しかし、初めに、二次損傷を構成する因子を特定し、次いで、損傷過程を阻害する「抗因子」を開発しなければならない。【0004】本発明者らの研究は、脳損傷後の二次損傷因子を特定し、介入する治療法を開発することに集中した。損傷後の結果を決定するのに決定的に重要であるとして、本発明者らが以前に特定した因子の一つは1-4、脳のマグネシウムイオン濃度であった。このイオンは、脳損傷後に活性化される、数多くの生化学的および生理学的過程の調節因子である。実際、マグネシウムイオン濃度の低下は、損傷過程を増悪させることが観察されたが、マグネシウムイオン濃度の上昇は、損傷過程を減衰させ、改善された結果を招くことが注目された5。それ以来、マグネシウムによる脳損傷の治療は、一次事象の24時間後までに投与されたときでさえ、効果的であることが示されており1,6-10、実験動物の研究における治療の成功は、その後、ヒトの脳損傷における臨床試験へと導いた。【0005】マグネシウム投与による脳損傷後の欠損の減衰にもかかわらず、治療後に持続する運動および認識欠損が依然として存在することが、明らかであった。本発明者らの注意は、特に、より若い動物では、脳内の水の蓄積(すなわち脳浮腫または脳腫脹)が依然として存在し、これが有意な危険因子を与え得ることに引き付けられた。実際、最近の臨床研究では11、遅延性脳腫脹は、脳損傷の若い犠牲者で記録されたすべての死の50%の原因であった。【0006】(発明の開示)したがって、本発明の目的は、脳損傷に関連する処置の方法、およびこの方法に用いるための処方物を提供することである。【0007】本発明の一態様における処方物は、サブスタンスP受容体拮抗物質およびマグネシウム化合物を含んでいて、マグネシウム化合物およびサブスタンスP受容体拮抗物質の併用は、損傷に対して、単独で用いたマグネシウム化合物またはサブスタンスP受容体拮抗物質のいずれより多大な防護を招く。【0008】本発明の方法は、脳損傷に罹患している患者に該処方物を投与する段階を包含する。あるいは、上述のとおり、該処方物の成分を、それぞれ、別個にか、または治療法の効果に影響しない時間的遅延、たとえば1〜30分か24時間まで、によって分離する。【0009】サブスタンスPは、興奮性神経伝達物質であり、疼痛の伝達に役割を有し、構造RPKPEEFFGLM−NH2を有するペプチドである。それは、視床下部、CNSおよび腸に由来し、G1路の平滑筋収縮を増大させる。【0010】サブスタンスPは、NK1受容体(すなわち、ニューロキニン1受容体)、NK2受容体およびNK3受容体を包含する数多くの受容体と結合することが公知である。これらの受容体は、脳への血液の巡回に役割を有すると考えられる。【0011】したがって、サブスタンスP拮抗物質は、上に参照された受容体のいずれか一つとのサブスタンスPの結合を阻害する物質である。適するサブスタンスP拮抗物質のリストを、本明細書に添付の第1、2および3表に参照する。【0012】本発明の方法の処方物に用いてよいサブスタンスP拮抗物質を構成するとして、米国特許第5,990,125号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたとおりのNK1受容体拮抗物質も、参照され得る。これには、構造Ia、Ib、Ic、Id、Ie、X、XVI、XVII、XVIII、XIX、XXおよびXXIを有する化合物はもとより、米国特許第5,990,125号明細書の第33欄に記載されたとおりの、キヌクリジン、ピペリジン、エチレンジアミン、ピロリジンおよびアザボルナン誘導体を含むその他の拮抗物質、ならびにサブスタンスP受容体拮抗物質としての活性を示す関連化合物が具体的に参照される。【0013】そのような受容体拮抗物質は、米国特許第4,990,125号明細書の第34欄に参照された投与量を考慮して、かつ米国特許第5,990,125号明細書の第34欄に参照されたとおりの、様々な投与形態で、すなわち、単独でか、または製薬上許容され得る担体もしくは希釈剤とともに、経口投与または非経口投与によって用いてよい。【0014】本発明に用いるためのサブスタンスP受容体拮抗物質としての、様々な物質の活性も、米国特許第5,990,125号明細書の第35〜36欄に参照されたアッセーによって決定してよい。【0015】米国特許第5,977,104号明細書(これも、参照によって本明細書に全体的に組み込まれる)に記載されたサブスタンスP受容体拮抗物質も、この引用文献中に参照された、様々な投与形態および投与量を含めて参照され得る。【0016】様々なペプチド拮抗物質を記載する米国特許第4,481,139号明細書も参照されてよく、これも、参照によって本明細書に全体的に組み込まれる。【0017】本明細書に用いられる限りでの用語「サブスタンスP」は、米国特許第4,481,139号明細書(参照によって本明細書に全体的に組み込まれる)に記載されたとおりの、断端された様々な形態または類似体も、その対象範囲内に包含し得ることも理解されると思われる。【0018】本発明に用いるためのサブスタンスP拮抗物質として用いるための、様々なピペリジンおよびモルホリン誘導体を参照する米国特許第4,985,896号明細書、または米国特許第5,981,520号明細書に記載されたとおりのピペラジノ誘導体も参照され得る。これらの引用文献は、それぞれ、参照によって本明細書に全体的に組み込まれる。【0019】本明細書に用いるためのNK1またはNK2拮抗物質として、米国特許第5,998,444号明細書(これも、参照によって本明細書に全体的に組み込まれる)に参照されたピペリジニル化合物も、参照され得る。【0020】米国特許第4,981,744号明細書に参照されたタキキニン拮抗物質も、サブスタンスP拮抗物質として本発明に用いてよいことも認識されると思われ、したがって、この引用文献も、本明細書に全体的に組み込まれる。【0021】N−ベンジル−4−トリルニコチンアミドおよび関連化合物を、本発明に用いるためのNK1受容体拮抗物質として参照するEP-A-1035115も参照されてよく、参照によって本明細書に全体的に組み込まれる。【0022】様々なフェニルおよびピリジニル誘導体を、本明細書に用いるためのNK1受容体拮抗物質として参照する、国際刊行物のWO 0050398(参照によって本明細書に全体的に組み込まれる)が参照され得る。【0023】それぞれ、3−フェニルピリジン、ビフェニル誘導体、5−フェニルピリミジン誘導体および4−フェニルピリミジン誘導体を参照する、国際刊行物のWO 0050401、WO 0053572、WO 0073278およびWO 0073279も参照されてよく、これらの明細書も、参照によって本明細書に全体的に組み込まれる。これらの明細書は、本明細書に用いるためのNK1受容体拮抗物質を参照している。【0024】本明細書に用いるための、サブスタンスP拮抗物質として用い得る、サブスタンスP拮抗物質の修飾、またはサブスタンスPフラグメントを記載する、1998 Sigma Catalogue、より詳しくはその1,194〜1,997ページも参照され得る。この刊行物も、参照によって本明細書に全体的に組み込まれる。【0025】マグネシウム化合物に関しては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム及びその他の無害なマグネシウム塩のような、適するいかなるマグネシウムイオン源を含んでもよい。【0026】加えて、本発明による製剤調製品は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香味料、浸透圧を変えるための塩、緩衝剤、遮蔽剤または抗酸化剤も含有することができる。それらは、治療上価値あるさらに別の物質も含有することができる。したがって、本明細書に用いられる用語「含む」は、この文脈中で解釈しなければならない。投与量は、広い限度内で変化することができ、当然、それぞれの特定の事例における個別的要件に合わせることができる。一般的には、患者あたり1〜20,000mg、好ましくは10〜5,000mg、より好ましくは50〜2,000mgのサブスタンスP受容体拮抗物質が適切なはずであると思われる。【0027】本発明の概念の発生に関しては、本発明者らによって、損傷後の脳内の急性水蓄積の一つの理由は、血管原性浮腫形成の結果であることが確立された。これは、血液脳関門の透過性が増大し、そのため、血管性のタンパク質および水が脳内の細胞外空間に進入し、腫脹を生じるのを許すことによって生じる。この血液脳関門の透過性増大が、損傷後の神経学的欠損の発生にいかに寄与するかを検証した研究は、僅かであるにすぎず、脳腫脹の阻害が、結果を改善するか否かを調査した研究は、皆無である。偏頭痛の研究は12,13、脳硬膜(外側の髄膜層)の脈管系が、サブスタンスP放出の結果として、血管成分に対して、より透過性になることを示唆している。そのため、本発明者らは、サブスタンスPは、脳の脈管系に対して同様の効果を有する可能性があって、そのような効果が、血液脳関門透過性の上昇、および血管原性脳浮腫へと導き得るとの仮説を立てた。さらに、本発明者らは、サブスタンスP受容体拮抗物質の投与は、損傷後の脳腫脹と、遅延性神経学的欠損の発生とを妨げ得るとの仮説を立てた。この仮説は、上記に参照した、水は、血管原性浮腫形成の結果として脳内に蓄積するとの本発明者らの発見の結果であった。【0028】したがって、本発明のもう一つの態様では、脳障壁透過性および/または血管原性脳浮腫を低減するための、サブスタンスP受容体拮抗物質の用途が提供される。【0029】(実験)表1、2および3から明らかなとおり、現在、数多くの商業的に合成されたサブスタンスP受容体拮抗物質が、標準的な学術的化学品供給者から入手可能である。本発明者らは、自然に血液脳関門を横断できるその可能性を限定する、その低い脂溶性と、それが比較的廉価であることとに基づいて、化合物N−アセチル−L−トリプトファンを用いることを選んだ。脳損傷の30分後に与えた、246mg/kg(生理食塩水の担体)という静脈内用量でのN−アセチル−L−トリプトファンの投与は、バーンズ環状迷路によって査定された限りで、損傷した動物の脳内での認識結果の有意な改善を招いた。同様に、オータロッド試験によって査定された限りで、動物の運動結果の有意な改善があった。結果のこれらの改善は、脳損傷の24時間後に明白であり、14日の査定期間にわたって持続した。対照(担体で試験した)動物は、試験されたすべての時点で、治療された動物より有意に劣る神経学的結果を有する。【0030】N−アセチル−L−トリプトファンを投与された動物は、担体投与された対照と比較した限りで、損傷の24時間後の脳の水蓄積(すなわち脳浮腫)の有意な減少があった。これは、N−アセチル−L−トリプトファンが、損傷の5時間後、すなわち脳損傷後の最高の血液脳関門透過性に関連する時間に、エヴァンスブルーの脳浸透を低下させたという観察と一致した。こうして、脳損傷の30分後に投与されたN−アセチル−L−トリプトファンは、血液脳関門透過性を低下させ、血管原性浮腫形成を低下させた。これらの効果が、NK1拮抗物質の非透過性処方物によって注目されたことは、該効果が、主として、血管性受容体によって仲介され、中枢性受容体に依存しなかったことを示唆する。【0031】24.6mg/kgでのN−アセチル−L−トリプトファンの投与は、脳損傷動物の認識結果も有意に改善した。しかし、この薬物は、運動結果に対しては、より少ない有益な効果を有した。その上、投与されたすべての動物で、何らかの残留性の認識および運動欠損が常に注目されたため、NK1拮抗物質の投与の有益な効果は、重い性質の損傷ではなく、軽い重篤度の損傷が誘導されたときには、より不明確であった。これは、軽い頭部損傷が脳損傷患者において最高の発生率を有するとすれば、主要な限定である。【0032】(マグネシウムおよびN−アセチル−L−トリプトファンの併用)脳損傷の最も一般的な形態は、軽度の頭部損傷である。世界神経外科医連盟World Federation of Neurological Surgeonsが来年(2000年)導入しようとする指針は、嘔吐、悪心、意識喪失または健忘症のようないかなる併発症もともなう、軽度の頭部損傷のすべての症例を、病院に提示しなければならないことを勧告すると思われる。これは、保健系統に対して、これらの個人を、二次損傷がそれ以上発生しないよう、適切に治療するための顕著な圧力を加えると思われる。現在、そのような治療法は皆無である。【0033】N−アセチル−L−トリプトファンによる本発明者らの結果は、この化合物が、頭部損傷後に血液脳関門を閉鎖し、脳腫脹または脳浮腫を低減することを示唆する。これは、遅延性脳腫脹を特に発症しやすい、頭部損傷の若い犠牲者には極めて重要である。さらに、マグネシウム療法による本発明者らの結果は、マグネシウム投与が、血液脳透過性の増大に必ずしも付随しない、神経学的欠損を軽減するのに効果的であることを示唆する。したがって、本発明者らは、サブスタンスP拮抗物質とマグネシウム化合物または塩との併用が、重篤度に関わりなく、脳損傷の治療のための特に効果的な処置法であることを提唱する。【0034】246mg/kgのN−アセチル−L−トリプトファンと30mg/kgの硫酸マグネシウムとの組合せ投与(静脈内)は、運動および認識双方の欠損の、単独でのいずれの薬物で得られたそれより有意に多大な、傑出した減衰を招いた(図1および図2)。【0035】組合せ処方物中の化合物は、それぞれ、脳損傷に用いるのに特に魅力的にさせる、数多くの特性を有する。【0036】サブスタンスP(SP)拮抗物質は、サブスタンスPで誘導された不安を打ち消すことによって、気分を急速に改善することが示された。したがって、損傷後の抑うつを治療するのに効果的である。上記の研究から、SP拮抗物質は、血液脳関門透過性を低下させ、血管原性浮腫の形成、および損傷後の脳腫脹または脳浮腫を阻害することが明白である。該拮抗物質は、疼痛を抑えることも示された。海馬および線条体、すなわち、脳の、学習および記憶に関連することが公知である部分には、極めて多くのサブスタンスP受容体が存在する。このため、SP拮抗物質による結合の阻害は、学習および記憶におけるサブスタンスP誘導性欠損を防止し得る。上に提示された本発明者らの証拠は、これが該当し得ることを示唆する。これは、以前には決して示されたことがなかった。実際、脳損傷におけるサブスタンスP、またはいかなる神経ペプチドの役割に関する文献も、皆無であった。【0037】マグネシウムは、300を越える細胞性酵素に影響する。したがって、マグネシウムが、結果を改善し得る数多くの標的を有することは、驚くにあたらない。これらは、とりわけ、グルタミン酸で誘導される興奮性毒性の遮断、反応性酸素種の膜安定性の改善および産生低減、エネルギー状態の改善、カルシウムチャンネルの阻害、神経伝達物質の放出低減、ミトコンドリア移行孔の開口阻害、ならびにアポトーシスの阻害を包含する。注目すべきことに、それは、サブスタンスPのグルタミン酸誘導性放出も阻害する。生理学的には、マグネシウムは、脳の血流を改善し、脳の血管痙攣を軽減し、血管性セラミドおよびプロスタグランジンの産生を低下させることが示されている14-17。【0038】マグネシウムおよびサブスタンスP拮抗物質の併用は、神経損傷に対して、単独で用いたいずれの薬物より多大な防護を招く。【0039】本発明者らは、以前に、マグネシウムが、16〜60mg/kgの範囲の静脈内用量で投与したとき、外傷に有益な効果を有することを示した。筋内注射として投与したときは、有効用量は、45〜90mg/kgで変動する。標的は、血中の遊離マグネシウム濃度を約1.0mMまで上昇させることであって、これは、正常な血中遊離マグネシウム濃度の二倍である。用いたマグネシウム塩に関わりなく、有益な結果が観察される。【0040】サブスタンスP拮抗物質による本発明者らの研究は、効果的な静脈内用量は、24.6〜240.6mg/kgまたはそれ以上で変動して、用量が多ければそれだけ、運動結果に対する有益な効果が多大であることを立証した。その上、これらの用量は、低い脂溶性を有し、そのため限定された血液脳関門透過性を有する拮抗物質に適合する。高度に脂溶性である処方物は、同じ有益な作用を強いるはずであると思われるが、不適切となり得る中枢介在性の副作用があり得る。【0041】併用したとき、該処方物は、個別成分について記載された範囲で変動し得る。本発明者らは、個別成分について記載された最大静脈内用量を用いて、優れた結果を達成した。【0042】マグネシウム/SP拮抗物質の併用は、下記の状態で役立つことが期待される:【0043】・外傷性脳損傷後の「救急」予防処置として、・脳振盪を包含する、軽い頭部損傷後の「救急」予防処置として、・発作、低酸素症、および浮腫が関連するいかなる形態の脳損傷も包含する、非外傷性脳損傷後の治療法として、・脳損傷後の維持療法として。【0044】【表1】【0045】【表2】【0046】【表3】【図面の簡単な説明】【図1】 損傷後の時間(日)とロータロッド評点の関係を示す図である。【図2】 損傷後の時間(日)とバーンズ迷路評点の関係を示す図である。 サブスタンスP受容体拮抗物質をマグネシウム化合物と組合せて含む脳、脊髄および神経損傷の処置のための注射用処方物であって、 前記サブスタンスP受容体拮抗物質が、N−アセチル−L−トリプトファンである注射用処方物。 サブスタンスP受容体拮抗物質およびマグネシウム化合物の併用使用が、単独で用いたサブスタンスP受容体拮抗物質およびマグネシウム化合物のいずれより損傷に対してより大きな防護を生じる、請求項1記載の注射用処方物。 マグネシウム化合物の投与量が、血中の遊離マグネシウム濃度を1.0mMまで上昇させるのに充分であることを特徴とする、請求項1または2記載の処方物。 マグネシウム化合物の投与量が、正常な血中遊離マグネシウム濃度を2倍にするのに充分であることを特徴とする、請求項1または2記載の処方物。 サブスタンスP受容体拮抗物質およびマグネシウム化合物の分離投与のための、請求項1〜4のいずれか一項記載の処方物。 マグネシウム化合物が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム又はその他の無害なマグネシウム塩よりなる群から選ばれる、請求項1〜5のいずれか一項記載の処方物。 サブスタンスP受容体拮抗物質の投与量が、患者あたり1〜20,000mgである、請求項1〜6のいずれか一項記載の処方物。 サブスタンスP受容体拮抗物質の投与量が、患者あたり10〜5,000mgである、請求項1〜6のいずれか一項記載の処方物。 サブスタンスP受容体拮抗物質の投与量が、患者あたり50〜2,000mgである、請求項1〜6のいずれか一項記載の処方物。 脳、脊髄および神経損傷の処置のための医薬を製造するためのN−アセチル−L−トリプトファンの使用。 損傷が、神経繊維の断裂、裂傷、伸張または圧縮によって生じる、請求項10記載の使用。 血液脳関門透過性の低下のための医薬を製造するためのN−アセチル−L−トリプトファンの使用。 血管原性脳浮腫形成の低減のための医薬を製造するためのN−アセチル−L−トリプトファンの使用。 損傷後の脳内の急性水蓄積の防止のための医薬を製造するためのN−アセチル−L−トリプトファンの使用。 脳損傷後の認識結果の改善のための医薬を製造するためのN−アセチル−L−トリプトファンの使用。 脳損傷後の学習および記憶におけるサブスタンスP誘導性欠損の防止のための医薬を製造するためのN−アセチル−L−トリプトファンの使用。 軽度ないし重度の脳損傷における運動および認識結果の改善のための医薬を製造するためのN−アセチル−L−トリプトファンの使用。 N−アセチル−L−トリプトファンをマグネシウム化合物とともに投与する、請求項10〜17のいずれか一項記載の使用。 投与されるマグネシウム化合物が、正常な血中遊離マグネシウム濃度を2倍にするのに充分である、請求項18記載の使用。 投与されるマグネシウム化合物が、血中の遊離マグネシウム濃度を1.0mMまで上昇させるのに充分である、請求項18記載の使用。