タイトル: | 特許公報(B2)_変異体APREプロモーター |
出願番号: | 2001551217 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 1/21,C12N 9/10,C12N 9/12,C12N 9/14,C12N 9/16,C12N 9/20,C12N 9/26,C12N 9/42,C12N 9/56,C12N 9/90,C12R 1/07,C12R 1/10,C12R 1/08,C12R 1/09,C12R 1/125 |
フェラーリ,ユージーニョ ヴェール,フェルナンド JP 4870306 特許公報(B2) 20111125 2001551217 20001221 変異体APREプロモーター ダニスコ・ユーエス・インコーポレーテッド 398056506 社本 一夫 100089705 増井 忠弐 100076691 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 フェラーリ,ユージーニョ ヴェール,フェルナンド US 09/479,494 20000107 20120208 C12N 15/09 20060101AFI20120119BHJP C12N 1/21 20060101ALI20120119BHJP C12N 9/10 20060101ALI20120119BHJP C12N 9/12 20060101ALI20120119BHJP C12N 9/14 20060101ALI20120119BHJP C12N 9/16 20060101ALI20120119BHJP C12N 9/20 20060101ALI20120119BHJP C12N 9/26 20060101ALI20120119BHJP C12N 9/42 20060101ALI20120119BHJP C12N 9/56 20060101ALI20120119BHJP C12N 9/90 20060101ALI20120119BHJP C12R 1/07 20060101ALN20120119BHJP C12R 1/10 20060101ALN20120119BHJP C12R 1/08 20060101ALN20120119BHJP C12R 1/09 20060101ALN20120119BHJP C12R 1/125 20060101ALN20120119BHJP JPC12N15/00 AC12N1/21C12N9/10C12N9/12C12N9/14C12N9/16 BC12N9/20C12N9/26 AC12N9/42C12N9/56C12N9/90C12N1/21C12R1:07C12R1:10C12R1:08C12R1:09C12R1:125 C12N 15/00 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed REGISTRY(STN) J. Bacteriol. (1989), Vol. 171, No. 5, p. 2657-2665 J. Bacteriol. (1986), Vol. 166, No. 3, p. 722-727 22 US2000035312 20001221 WO2001051643 20010719 2003519492 20030624 13 20071211 濱田 光浩 【0001】発明の分野本発明は、分子生物学の分野であって、Bacillus種の蛋白質の生産に関する。特定すれば、本発明は、変異体aprEプロモーター及び蛋白質生産におけるその使用に関する。発明の背景遺伝子工学は、工業バイオリアクター、細胞製造工場及び食物の発酵として使用される微生物の改良を可能にしてきた。Bacillus属は、多数の有用な蛋白質及び代謝物を生産及び分泌する(Zukowski,1992 Zukowski MM (1992) Production of commercially valuable products.In: Doi RH,McGlouglin M(eds)Biology of bacilli: applications to industry.Butterworth-Heinemann,Stoneham.Mass pp 311-337)。産業上もっとも一般的に用いられるバチルス(bacilli)はB.licheniformis,B.amyloliquefaciens及びB.subtilisである。さらに、そのGRAS(一般的に安全と認められている)状態ゆえに、B.subtilisは食物及び薬品工業において利用される蛋白質の生産の自然な候補である。【0002】B.subtilisのaprE遺伝子は細胞外プロテアーゼズブチリシンをコードし、生物工学の工業により製造される貴重な酵素である(Debadov VG (1982) The Industrial Use of Bacilli.In: Dubnau DA (ed)The Molecular Biology of the Bacilli.Academic Press: New York/London,vol 1,pp 331-370)。B.subtilisを宿主生物として用いる組換え蛋白質生産系、特にズブチリシンプロモーターによりドライブされる系の開発は、このエリアの研究及び商業生産のための重要な手段を提供する(Oyama et al. (1989) Secretion of Escherichia coli Aminopeptidase P in Bacillus subtilis using the Prepro-Structure Coding Region of Subtilisin Amylosacchariticus.J.Ferment.Bioeng.68: 289-292)。ズブチリシン合成は胞子形成に必要ではないが(Stahl and Ferrari (1984) Replacement of the Bacillus subtililis Subtilisin Structural Gene With an In Vitro-Derived Deletion Mutation,J Bacteriol.158: 411-418)、その生産は胞子形成の開始に必須の事象に共通の機構により引金を引かれ、よって、発生学上関連した遺伝子発現のモデルとして役立ってきた(Sonenshein AL (1989) Metabolic Regulation of Sporulation and Other stationary-Phase Phenomenon.In: Smith I,Slepecky RA,Setlow P (eds) Regulation of Procaryotic Development.American Society for Microbiology,Washington,DC pp 109-130)。aprE遺伝子はシグマA(σA)により転写され、そしてその発現はいくつかの制御因子、例えば:DegU/DegS,AbrB,Hpr及びSinRにより高度に制御される(Valle and Ferrari (1989) In: Smith I,Slepecky RA,Setlow P (eds) Regulation of Procaryotic Development.American Society for Microbiology,Washington,DC pp 131-146)。コンセンサスシグマAプロモーターが同定された(Helman et al.,1995,Nucleic Acid Research,Vol.23,pp.2351-2360)。宿主細胞における蛋白質生産の理解における進歩にも拘わらず、宿主細胞、例えばBacillus宿主細胞における蛋白質の発現を増加させるための方法に関する要求は残されたままである。発明の概要本発明は、蛋白質の生産における変異体aprEプロモーターの使用に関する。本発明は、所望の蛋白質の生産における数百倍の増加が変異体aprEプロモーターを含んだ宿主細胞において生じたとの、予測されなかった発見に基づく。本発明は、配列番号1に示されたヌクレオチド配列を有する変異体aprEプロモーターが異種蛋白質及び同種蛋白質の両方の転写を増強することができ、そして蛋白質の生産の間制御可能のままであったとの、予測されなかった発見にも基づく。従って、本発明は、単離された変異体aprEプロモーター及び別の態様においては配列番号1として提供されたヌクレオチド配列を有する単離された変異体aprEプロモーターを提供する。本発明は、単離されたaprEプロモーターを含む宿主細胞及びそのような宿主細胞を用いて所望の蛋白質を生成する方法も提供する。一つの態様において、上記宿主細胞はBacillus種であり、そして別の態様において、上記Bacillus種はB.licheniformis,B.lentus,B.brevis,B.stearothermophilus,B.alkalophilus,B.amyloliquefaciens,B.coagulans,B.circulans,B.lautus及びBacillus thuringienesisを含む。別の態様において、所望の蛋白質はズブチリシンである。【0003】さらに別の態様において、宿主細胞は単離されたaprEプロモーターを含み、そして特に、配列番号1の単離されたaprEプロモーターはさらに宿主細胞にとって同種又は異種であってよい所望の蛋白質をコードする核酸を含む。核酸は、治療上重要な蛋白質又はペプチド、例えば成長因子、サイトカイン、リガンド、受容体及び阻害剤、並びにワクチン及び抗体をコードしてよい。核酸は、天然に生じる遺伝子、変異した遺伝子又は合成遺伝子であってよい。産業上利用可能な蛋白質の例は、酵素、例えばプロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、及びリパーゼを含む加水分解酵素;ラセマーゼ、エピメラーゼ、タウトメラーゼ、又はムターゼを含むイソメラーゼ;トランスフェラーゼ、キナーゼ及びホスファターゼを含む。一つの態様において、上記蛋白質は細胞にとって異種であり、そして別の態様においてそれは細胞にとって同種である。本明細書において開示された一つの例示の態様において、蛋白質はβ-ガラクトシダーゼであり、そして本明細書において開示された別の例示の態様において、蛋白質はズブチリシンである。【0004】本発明は、Bacillus種において所望の蛋白質を生産する方法を提供するが、単離されたaprEプロモーターを含むBacillusを培養し、その際上記Bacillusはさらに所望の蛋白質をコードする核酸を含み、そして任意に上記所望の蛋白質を回収することからなる。一つの態様において、単離された変異aprEプロモーターは配列番号1に示す配列を有する。上記方法の一つの態様において、所望の蛋白質をコードする核酸はBacillusゲノムに組み込まれて、別の態様においては、所望の蛋白質をコードする核酸は複製するプラスミド上に存在する。本発明は、単離された変異aprEプロモーターを含む宿主細胞を製造する方法も提供する。詳細な説明定義野生型の形態のaprEプロモーターは、RNAポリメラーゼが認識するエリアを意味し、そして転写を開始するために使用し、そして図1に示した−35及び−10の2つのボックスを含む。−35及び−10ボックス付近に示した他の因子、例えば−35と−10ボックスの間のスペーサー、−10ボックスの下流(3')、+40までは、プロモーターの長さにおいて重要な役割を担う。本明細書において使用される用語「変異aprEプロモーター」は、−35ボックス内に修飾を有するaprEプロモーターを意味し、そしてスペーサー領域、−35ボックスの上流領域、−10ボックス内及び−10ボックスの下流領域に追加の修飾を有してよい。好ましい態様において、変異aprEプロモーターは、配列番号1に示される配列TGGGTC TTGACA AATATTATTCCATCTAT TACAATAAATTCACAGAを有する。変異aprEプロモーターは単位時間あたり生産されたmRNA分子の数により測定された転写頻度を増強するものである。【0005】本明細書にて使用されるBacillus属は、当業者に知られている全てのメンバーを含み、限定ではないが、B.subtilis,B.licheniformis,B.lentus,B.brevis,B.stearothermophilus,B.alkalophilus,B.amyloliquefaciens,B.coagulans,B.circulans,B.lautus及びBacillus thuringienesisを含む。【0006】本明細書にて使用される「核酸」は、ヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列、及びその断片又は一部、及び二本鎖又は一本鎖であるゲノミック又は合成起源のDNA又はRNAを意味し、センス又はアンチセンス鎖である。本明細書にて使用される「アミノ酸」は、ペプチド又は蛋白質配列又はその一部を意味する。【0007】本明細書にて使用される用語「単離された」又は「精製された」は、天然において結合する少なくとも一つの成分から取り出された核酸又はアミノ酸を意味する。【0008】本明細書にて使用される用語「異種蛋白質」は、グラム陽性宿主細胞において天然に生じない蛋白質又はポリペプチドを意味する。異種蛋白質の例は、酵素、例えばプロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、及びリパーゼを含む加水分解酵素;ラセマーゼ、エピメラーゼ、タウトメラーゼ、又はムターゼを含むイソメラーゼ;トランスフェラーゼ、キナーゼ及びホスファターゼを含む。上記蛋白質は、治療上重要な蛋白質又はペプチド、例えば成長因子、サイトカイン、リガンド、受容体及び阻害剤、並びにワクチン及び抗体であってよい。上記蛋白質は、商業上重要な産業上の蛋白質又はペプチド、例えばプロテアーゼ、カルボヒドラーゼ、例えばアミラーゼ及びグルコアミラーゼ、セルラーゼ及びリパーゼであってよい。上記蛋白質をコードする遺伝子は、天然に生じる遺伝子、変異遺伝子又は合成遺伝子であってよい。【0009】用語「同種蛋白質」は、自然又はグラム陽性宿主細胞中に天然に生じる蛋白質又はポリペプチドを意味する。発明は、組換えDNA技術を通して同種蛋白質を生産する宿主細胞を包含する。本発明は、同種蛋白質、例えばプロテアーゼをコードする天然に生じる核酸の欠失又は中断を有し、そして組換え形態にて再導入された同種蛋白質又はその変更物を有するBacillus宿主細胞を包含する。別の態様において、上記宿主細胞は同種蛋白質を生産する。好ましい態様の詳細な説明本発明は、蛋白質の生産のための方法における変異aprEプロモーターの使用に関する。最大のバイオマスを達成し、変異及びプラスミドの脱落の可能性を最少にするときに、対数成長の最後に自然な様式にてaprEが誘導される。自然な誘導は、化学物質、例えばIPTG、酸素に基づくシステムのような人工誘導物質(Walsh K, Koshland DE Jr. (1985))又は熱による物理的誘導(Bujard et al. 1983)の必要性を回避する。このaprE遺伝子の自然な誘導は、発酵プロセスにおける使用の単純さ故に、大規模な興業スケールにおいては特に経済上の重要な利点を表す。【0010】aprEプロモーター配列は−10ボックスと−35ボックスの間に17bpを有し、そしてその−10ボックスは転写開始部位から6bp離れて位置する。i)aprE'-lacZのmRNAの転写開始速度、及び、ii)aprE'-ズブチリシンのmRNA転写開始速度に影響する特定の変異を有する株を構築した。さらに、hpr2及びdegU32バックグラウンドの効果も分析した。これらの変異の個々の効果を試験し、並びにそれらの組み合わせを選択した。【0011】aprEプロモーター中の天然の−35ボックスの配列をTTGACA配列に変更することにより、β-ガラクトシダーゼ活性における100倍を越える増加が得られ、そしてズブチリシン活性における30倍を越える増加が得られた。理論に拘束されることなく、この修飾はRNAPによるプロモーター領域の初期の認識を好むらしく、即ちオープンコンプレックスの形成を促進し、そしてその形成速度を増加させる。【0012】好ましい態様において、Bacillus種は、配列番号1に示す配列を有する変異aprEプロモーター及び所望の蛋白質又はポリペプチド、例えばプロテアーゼ又は他の酵素をコードする核酸を含むように、遺伝子操作されているBacillus subtilisである。他の態様において、Bacillus宿主細胞はさらに内因性のプロテアーゼ、例えばApr,Npr,Epr,Mpr、又は当業者に知られている他の酵素の変異又は欠失を有する。【0013】本発明は、Bacillus種における所望の異種又は同種蛋白質の増強された生産及び分泌のための宿主細胞、発現方法及び発現系を提供する。一つの態様において、宿主細胞は、変異aprEプロモーター、特に配列番号1に示す配列を有する変異aprEプロモーターを含むように、そしてさらに所望の蛋白質又はポリペプチドをコードする核酸を含むように遺伝子操作される。所望の蛋白質をコードする核酸は、宿主細胞ゲノムに組み込まれるか又は複製するプラスミド中に供給されてよい。Bacillusのための適切な複製プラスミドは、Molecular Biological Methods for Bacillus,Ed.Harwood and Cutting,John Wiley & Sons,1990に記載されており、引用により本明細書に特別に編入し、プラスミドに関しては第3章を参照されたい。【0014】BacillusのDNAの直接のクローン化に関する刊行物にはいくつかの戦略が記載された。プラスミドマーカーレスキュー形質転換は、部分的に同種の内在プラスミドを有するコンピテント細胞によるドナープラスミドの取り込みを含む(Contente et al.,Plasmid 2: 555-571 (1979); Haima et al.,Mol. Gen. Genet. 223: 185-191 (1990); Weinrauch et al.,J.Bacteriol.154 (3): 1077-1087 (1983); 及びWeinrauch et al.,J.Bacteriol.169 (3): 1205-1211 (1987))。侵入するドナープラスミドは、染色体形質転換を模倣するプロセスにおいて内在の「ヘルパー」プラスミドの相同領域と組換わる。【0015】プロトプラストによる形質転換は、B.subtilisに関してはChang and Cohen,(1979) Mol. Gen. Genet 168: 111-115に;B.megateriumに関してはVorobjeva et al.,(1980) FEMS Microbiol.Letters 7: 261-263に;B.amyloliquefaciensに関してはSmith et al.,(1986) Appl.And Env.Microbiol.51: 634に;B.thuringensisに関してはFisher et al.,(1981) Arch.Microbiol.139: 213-217に;B.sphaericusに関してはMcDonald (1984) J.Gen.Microbiol.130: 203に;そしてB.larvaeに関してはBakhiet et al.,(1985) 49: 755に記載される。Mannら(1986,Current Microbiol.13: 131-135)は、Bacillusプロトプラストの形質転換を報告し、そしてHolubova((1985)Folia Microbiol.30: 97)はリポソームを含むDNAを使用してプロトプラストへDNAを導入する方法を開示する。【0016】本発明を実施する様式及び方法は以下の実施例を参照することにより当業者によってより完全に理解されるが、実施例は本発明又はそれに向けられた特許請求の範囲の範囲を制限するようには如何なる様式においても意図されない。実施例I材料と方法aprE遺伝子の転写制御領域の部位特異的変異導入。【0017】aprEプロモーターと構造遺伝子の最初の8つのコドンを含むプラスミドpSG35.1(Ferrari E,Henner DJ,Perego M,Hoch JA (1988) Transcription of Bacillus subtilis subtilisin and expression of subtilisin in sporulation mutants.J.Bacteriol.170: 289-295)由来の509塩基対(bp)のEcoRI-BamHI断片をプラスミドpT7(Novagen)にクローン化することにより、プラスミドpT7-aprEを構築した。この新しいプラスミドをMerinoら(1992)(A general PCR-based method for single or combinatorial oligonucleotide-directed mutagenesis on pUC/M13 vectors.Biotechniques 12: 509-510)に記載されたプロトコルに従い、単一又は組み合わせのオリゴヌクレオチド指向性PCR変異導入のための鋳型として用いた。PCRは、Taq DNAポリメラーゼ(プロメガ社)を用いてパーキンエルマーPCRシステム中で実施した。5'aprE制御領域に導入されたヌクレオチド置換は以下のとおりであった:A-34→T,C-33→G,T-32→A,A-31→C,A-12→G,G+1→A。PCR変異導入の最終生成物は、Sangerら(1977)により記載されたジデオキシ鎖停止方法を用いたヌクレオチド配列決定により評価した。これらのDNAはEcoRIとBamHIで消化して、組み込み型プラスミドpSG-PLKの同じ制限部位にクローン化した。プラスミドpSG-PLKは、EcoRI-BamHI領域がpUC19由来のポリリンカーにより置換されたpSG35.1誘導体であり、プロモーターを持たないlacZ遺伝子にする。PSG-PLK内のこの変化は形質転換体の容易な選択を提供するが、それがaprEプロモーターを持っている場合には、X-Gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド)上でプレートされたコロニーが青くなるからである。表1は、構築されたB.subtilis株に対するインデックスである。【0018】【表1】【0019】実施例II転写開始野生型aprE制御領域(rraprE-WT)の特徴は、その−10ボックス中のほとんど完璧なσAコンセンサス配列(TAcAAT)であり;−35領域が上記コンセンサス配列に位置する6ヌクレオチドを2つのみ有し(TactaA);−10領域と−35領域の間の17bpの存在であり;そして−35ボックス上流のATリッチ配列の存在であり、即ち、RNAポリメラーゼ(RNAP)のαサブユニットの認識に重要である(Ross et al.1993 A third recognition element in bacterial promoters: DNA binding by the alpha subunit of RNA polymerase.Science 262: 1407-1413)。これらの特徴に基づき、上記プロモーター配列の−35領域における部位特異的変異導入を実施して、B.subtilisのσA因子により認識される遺伝子のための−35コンセンサス領域を得た。aprE制御領域の−35領域がコンセンサス配列中に存在する6ヌクレオチドをたった2つしか有さないことを考慮して、4ヌクレオチドの変化(ACTA-34から-31→TGCAへ)を導入した。この修飾された制御領域は本明細書中でrraprE-TTGACAと呼ぶ。この変異は、lacZリポーター遺伝子の上流にクローン化し、そしてB.subtilis染色体のamy座に組み込まれて、株JJ1を生じた。この株のβ-ガラクトシダーゼ活性をアッセイし;−35プロモーターボックスの修飾がaprE野生型プロモーターを有する親BSR6株に関してそのβ-ガラクトシダーゼ活性における106倍の増加を生じた(表2及び図2参照)。【0020】【表2】【0021】実施例IIIhpr2とdegU32バックグラウンドのaprE'-lacZ発現に対する効果hpr2変異がズブチリシンの発現レベルを増加させることが報告された。この変異は上記構造遺伝子の359bpのDNAセグメントの欠失であり、その活性を65%低下させる(Perego and Hoch 1988 Sequence Analysis and Regulation of the hpr locus,a Regulatory Gene for Protease Production and Sporulation in Bacillus subtilis.J.Bacteriol.170: 2560-2567)。degU32は上記蛋白質の12番目のアミノ酸のヒスチジン残基をロイシン残基に変化させる置換A2006→Tからなる変異である(Henner et al.1988 Localization of Bacillus subtilis sacU(Hy) mutations to tw-component signaling systems.J.Bacteriol.170: 5102-9)。この変異はDegU-PO4状態を増加させ、よって、長時間のその活性化効果を遂行する。【0022】過剰生産株の構築の目的により、hpr2及びdegU32遺伝子型をBSR6(BSR1 amyE::pSG35.1)及びJJ1(BSR1 amyE::pTTGACA)株に、個々に且つ組み合わせの様式において移した(表1参照)。これらの株のβ-ガラクトシダーゼ活性に関するデータを表2に示す。hpr2変異を用いると、JJ3株は3.3倍の増加を生じさせたが、一方JJ2株は1.8倍の増加を有した。株JJ4及びJJ5はdegU32の遺伝的バックグラウンドを有し、それぞれ、36.3倍及び1.3倍の増加を有した。degU32及びhpr2の両方の遺伝的バックグラウンドを有する株JJ7及びJJ6から得られた活性レベルは、それらの親株と比較した場合にそれぞれ66倍及び2.7倍であった。【0023】同様な結果は、Bolanos(2.8倍)及びOlmos(4.6倍)により相同な株JJ3において得られた(Bolanos 1994 In master thesis: Sorbreproduction de la enzime β?galactosidasa de Escherichia coli en Bacillus subtilis.Instituto de Biotechnologia,Universidad Nacional Autonoma de Mexico.Cuermavaca,Mor.Mexico.;Olmos et al.1996,A functional Spo0A is required for maximal aprE expression in Bacillus subtilis.FEBS Lett.381: 29-31)。hpr2変異は野生型プロモーターを用いた場合のみならず修飾されたプロモーターを用いた場合にも、株JJ2内でその作用を遂行する。【0024】理論に束縛される必要なしに、変異degU32と−35コンセンサスに対する変化はRNAPによるプロモーター配列の認識を同様な様式にて好み、そしてDNA-RNAPオープンコンプレックスの形成を補助して安定化するらしい。【0025】要約すると、いくつかの要素を過剰生産性B.subtilis株を構築するためのプロセスにおいて分析した。もっとも顕著な変化は、図1に示す変異体プロモーター配列をaprE遺伝子の制御領域に挿入して株JJ1を生じさせた場合に起こった。この変化はこの研究において野生型と考えられる株(BSR6)に関して100倍を超える増加を可能にした。株JJ6はもっとも高いレベルのβ-ガラクトシダーゼ活性を達成したが、JJ1株とは対照的にいくつかの多面発現姓の効果を有する。実施例IVβ-ガラクトシダーゼ合成の測定この実施例は、異種蛋白質β-ガラクトシダーゼの生産を例示する。【0026】我々の過剰生産株において見いだされた活性レベルとの直接の関係性を確立するためのβ-ガラクトシダーゼ蛋白質の合成の直接の評価を示すため、我々は、もっとも高いレベルのβ-ガラクトシダーゼ活性を有する株であるJJ6株(BSR1 amyE::pTTGACA hpr2 degU32)のSDS-PAGEによる全蛋白質プロフィールを分析した。株JJ6はShaeffer培地中で成育させ、そしてサンプルを一定の間隔で取り出した。音波処理により得られた細胞を含まない抽出物をSDS-PAGEにより分析して、クマジーブリリアントブルーにて染色した(図2)。β-ガラクトシダーゼ蛋白質は分子量116kDaのバンドとして観察された。胞子形成プロセスは接種から5時間後に開始した。この時に、組換え蛋白質の発現が開始し、そして2時間後に最大に達したが、全細胞内蛋白質のおおよそ10%に相当する。実施例Vこの実施例は変異体aprEプロモーターを含むBacillus subtilis宿主細胞の構築を記載する。aprEプロモーターを修飾した後に生産された細胞外プロテアーゼAprEのレベルを、株OS4を用いて定量した。比較のため、野生型aprE遺伝子を有する他の数株を同じ条件下で分析した。これらの株の間の違いは、それらがaprE発現を増強することが知られた変異を含むこである(Valle and Ferrari,前記)。この分析の結果を表3に示す。観察できるとおり、野生型株と比較すると、OS4株は32.7倍のAprEを生産した。他方、野生型aprEとdegU32,scoC変異を有する株と比較すると、株OS4は50%未満のズブチリシンしか生産しなかった。表に提示したlacZの発現により得られた結果を考えると、hpr2及び/又はdegU変異を用いてズブチリシンの生産をさらに増加させ得るかもしれない。株OS4を用いて得られた結果は、修飾されたaprEプロモーターを使用することにより、培地へ分泌される同種蛋白質を過剰生産することも可能なことを示す。本明細書中でOS4と呼ぶPCR融合配列の構築OS4 PCR融合を3工程にて構築した:1)Bacillus subtilis168染色体DNAからのPCRによる2つの別々の断片の増幅;2)プライマーを用いないPCRタイプのプロセスにおける2つの精製されたPCR断片のアッセンブリー;及び3)OSBS-1及びOSBS-8エンドプライマーを用いたPCRによる上記アッセンブル生産物の増幅。【0027】1)Bacillus subtilis168の染色体DNAを2セットのプライマーを用いたaprE遺伝子座の増幅のための鋳型として用いた。プライマーの第1の対は、Bacillus染色体上の1101.821kbから1101.851kbに位置するOSBS-1(5'-ATATGTGGTGCCGAAACGCTCTGGGGTAAC-3')配列番号2及び1105.149kbから1105.098kbに位置するStu-1(5'-CTCAAAAAAATGGGTCTACTAAAATATTATTCCATCTATTACAATAAATTCA-3')配列番号3からなった。増幅された断片は3.327kbであって、以下の遺伝子を含んだ:末端削除されたyhfL',yhfM,yhfN及びaprEプロモーターエリア、B.subtilisゲノムの記載に関してはKunst et a.,1997,Nature,vol 390,p249-256ページを参照。【0028】プライマーの第2の対は、染色体上の1105.098kbから1105.149kbに位置するStu-2(5'-TGAATTTATTGTAATAGATGGAATAATATTTTAGTAGACCCATTTTTTTGAG-3')配列番号4及び1107.733kbから1107.704kbに位置するOSBS-8(5'-CTTTTCTTCATGCGCCGTCAGCTTTTTCTC-3')配列番号5からなった。増幅された断片は2.635kbであって、以下を含んだ:aprEのプロモーターエリア、yHfO,yhfP及び末端削除されたyhfQ'。両方のPCR生産物はプロモーターエリアにおいて重複した。Stu-1及びStu-2相補プライマーをaprEプロモーターの−35エリアの4つの変異の導入のために使用したが、TACTAAをTTGACA配列で置き換えた。パーキンエルマーのrTthポリメラーゼを含むGeneAmp XL PCRキットを全てのPCRに関して製造者の指示書に従い使用した。PCR反応は1000ul容量にて実施した。【0029】DNA − 2-5 ul3.3x XLバッファーII − 3 ul10 mM dNTPブレンド − 3 ul25 mM Mg(Oac)2 − 4 ul25 uM OSBS-1プライマー(又はOSBS-8) − 2 ul25 uM Stu-1プライマー(又はStu-2) − 2 ul2U/ul rThポリメラーゼ − 2 ul水 − 100 ulに合わせるPCR条件は、95℃30秒、54℃30秒、68℃30秒を30サイクルであった。得られたPCR断片、3.327kb及び2.635kbは、製造者の指示書に従いQIAGEN PCR精製キットにより精製して、PCRアッセンブリーに使用した。【0030】2)精製されたPCR断片の5 ulアリコートを共に混合して、プライマーを含まなかった新鮮なPCR混合物に加えた。PCR混合物の全容量は上記のとおり成分を含めて100 ulであった。PCRアッセンブリー条件は:95℃−30秒、52℃−30秒、68℃−2分を10サイクルであった。【0031】3)10サイクルのPCR後に、上記アッセンブリー混合物にOSBS-1プライマー及びOSBS-8プライマーを追加し、そしてPCR増幅をさらに15サイクル行った。このときのPCR条件は:95℃−30秒、52℃−30秒、68℃−5分であった。所望の5.962bpの精製物を得て、OS4-Pcons-aprEと命名し、そしてOS1コンピテント細胞の形質転換に使用して、OS4株を生成した。【0032】【化1】【0033】OS1コンピテント細胞の形質転換カナマイシン遺伝子でaprE遺伝子を置き換えることにより、BG2822と命名したBacillus subtilis株からOS1株を生成した。カナマイシン遺伝子はBacillus染色体上の1103.484kbから1105.663kbの位置に挿入した。よって、上記株はLB + 1.6%スキムミルクプレート上で何のハローも形成しなかった。BG2822は、中性プロテアーゼをコードする遺伝子内の欠損であるnpr欠損を有するBacillus subtilisの誘導体である(J.Bacteriol.1984,vol.160,pg.15-21)。【0034】OS4-Pcons-aprE PCR融合は抗生物質マーカーを何も持たなかったので、生殖(congression)により上記融合を細胞に導入した。20 ulのPCR生産物を1 ul(〜10nM)のpBS19プラスミドと混合して、OS1の形質転換に使用した。上記形質転換混合物をLB + 1.6%スキムミルク + 5ug/ml cmpプレート上にプレートした。翌日、ハロー形成コロニーを拾い上げ、そして単一コロニーに関してプレートした。コロニーの精製は2回実施した。5つの個々のコロニーをaprEプロモーター領域の配列決定により分析した。それら全てはaprEプロモーターの−35領域のコンセンサス配列を有した。【0035】【表3】【0036】実施例XI実施例XIは修飾されたB.subtilisの培養成長及びプロテアーゼ検出のプロトコルを提供する。培養成長株の前培養を2mlのLB(ルリア−ベルターニ培地)中でA620nmにおけるODが〜0.35になるまで成育させた。次に、上記前培養を96ウエルマイクロタイタープレート(Costar、カタログ番号3598)に分注した。200 ulの2XSMB成育培地を含む96ウエルのフィルター底のプレート(Millipore,MAGVN2250)を滅菌96ウエルスタンプを用いて前培養プレートから接種した。上記プレートを37Cにおいて、280RPMにて加湿シェーカーボックス中で成育させ、そして成育20時間及び48時間後のプロテアーゼ活性をアッセイした。【0037】950mlの脱イオン水に加えた:Bacto-tryptone 10gBacto-yeast extract 5gNaCl 10g上記の溶質は溶解するまで撹拌した。5N NaOH(0.2ml)を用いてpHを7.4に調節した。溶液の容量を脱イオン水により1リットルに合わせ、そして液体サイクルにおいて15 lb/sqにて20分間オートクレーブにより滅菌した。プロテアーゼアッセイ成育プレートからアリコートを取り出し、そしてTrisバッファー(100m pH8.6,0.005% Tween80)中へ96ウエルマイクロタイタープレート中で(MultispenceAsys-Hitech)を用いて希釈した。このプレートのプロテアーゼ活性は、希釈されたプレートからTrisバッファー及び基質(1mg/ml Suc AAPF pNA-Bachemカタログ番号L-1400)を含む96ウエルプレートへアリコートを分配することにより測定された。次に、上記反応を96ウエルプレートリーダー(Molecular Devices,SpectraMax 250)上で読んだ。各ウエルのプロテアーゼ濃度は、基質加水分解速度、0.02mg/Uの変換因子及び希釈因子に基づいて測定した。【図面の簡単な説明】【図1】 図1は、野生型(配列番号6)及び変異aprEプロモーターのDNA配列の比較であり、変異した塩基を点線矢印にて示す(aprE制御領域の関連する配列のみを描写する)。−35と−10ボックスの仕切りは2つの頭を有する矢印により示す。形成されたmRNAの第1塩基も示す。【図2】 図2は、SDS-PAGEにより検出された株JJ6中のβ-ガラクトシダーゼ合成である。各レーンの上の数字は、特定の発現時間に応じた(明細書を参照)、特定の間隔(時間)に採られたサンプルを表す。LacZ蛋白質(116kDa)を分子量マーカーとして用いた。 配列番号1に記載されたヌクレオチド配列:TGGGTCTTGA CAAATATTAT TCCATCTATT ACAATAAATT CACAGAを含む単離された変異aprEプロモーター。 請求項1記載の単離された変異aprEプロモーターを含む発現ベクター。 所望の蛋白質をコードする核酸をさらに含む、請求項2記載の発現ベクター。 所望の蛋白質が、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、キナーゼ及びホスファターゼからなる群から選択される、請求項3記載の発現ベクター。 プロテアーゼがズブチリシンである、請求項3記載の発現ベクター。 請求項5記載の発現ベクターを含む宿主細胞。 請求項1記載の単離された変異aprEプロモーターを含む宿主細胞。 Bacillus種由来の、請求項7記載の宿主細胞。 Bacillus subtilis宿主細胞である、請求項8記載の宿主細胞。 B.licheniformis,B.lentus,B.brevis,B.stearothermophilus,B.alkalophilus,B.amyloliquefaciens,B.coagulans,B.circulans,B.lautus,Bacillus thuringienesis及びBacillus subtilisからなる群から選択されるBacillus種である、請求項7記載の宿主細胞。 変異aprEプロモーターに結合した所望の蛋白質をコードする核酸配列をさらに含む、請求項8記載の宿主細胞。 所望の蛋白質が宿主細胞にとって同種である、請求項11記載の宿主細胞。 所望の蛋白質が宿主細胞にとって異種である、請求項11記載の宿主細胞。 所望の蛋白質が、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、キナーゼ及びホスファターゼからなる群から選択される、請求項11記載の宿主細胞。 Bacillus種が、B.licheniformis,B.lentus,B.brevis,B.stearothermophilus,B.alkalophilus,B.amyloliquefaciens,B.coagulans,B.circulans,B.lautus及びBacillus thuringienesisからなる群から選択される、請求項8記載の宿主細胞。 所望の蛋白質をコードする核酸を含み、さらに請求項1記載の単離された変異aprEプロモーターを含むBacillusを培養し、そして任意に蛋白質を回収することを含む、Bacillusにおいて所望の蛋白質を生産する方法。 Bacillus種が、B.licheniformis,B.lentus,B.brevis,B.stearothermophilus,B.alkalophilus,B.amyloliquefaciens,B.coagulans,B.circulans,B.lautus及びBacillus thuringienesisからなる群から選択される、請求項16記載の方法。 所望の蛋白質が、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、キナーゼ及びホスファターゼからなる群から選択される、請求項16記載の方法。 核酸がBacillusゲノムに組み込まれている、請求項17記載の方法。 核酸が複製するプラスミド上にある、請求項17記載の方法。 Bacillus種がBacillus subtilisであり、そして所望の蛋白質がプロテアーゼである、請求項16記載の方法。 プロテアーゼがズブチリシンである、請求項21記載の方法。