タイトル: | 特許公報(B2)_血漿プロテアーゼからのフィブリノゲンの分離 |
出願番号: | 2001548556 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07K 14/75,C07K 1/14,C07K 1/18 |
ジェリー・カネロス マイケル・クリーニグ テレサ・マルチネリ JP 4660048 特許公報(B2) 20110107 2001548556 20001221 血漿プロテアーゼからのフィブリノゲンの分離 シーエスエル、リミテッド 500021413 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 実広 信哉 100110364 ジェリー・カネロス マイケル・クリーニグ テレサ・マルチネリ AU PQ 4842 19991223 AU PQ 4841 19991223 20110330 C07K 14/75 20060101AFI20110310BHJP C07K 1/14 20060101ALI20110310BHJP C07K 1/18 20060101ALI20110310BHJP JPC07K14/75C07K1/14C07K1/18 C07K 14/75 C07K 1/14 C07K 1/18 C07K 1/30 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed WPI 国際公開第99/037680(WO,A1) 特表平10−506607(JP,A) 国際公開第99/023111(WO,A1) 国際公開第92/013495(WO,A1) Thromb. Haemost.,1990年,Vol.63, No.3,P.392-402 18 AU2000001585 20001221 WO2001048016 20010705 2003518513 20030610 42 20070808 鈴木 崇之 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、フィブリノゲンの精製方法に関する。ある態様では、本発明は、血漿画分I沈降物(plasma fraction I precipitate)からのフィブリノゲンの分離方法に関する。別の態様では、本発明は、イオン交換クロマトグラフィーを用いたフィブリノゲンの精製に関する。【0002】【従来の技術】ヒトフィブリノゲンの単離は、古典的な血漿分画方法によって行われてきた。フィブリノゲンは、エタノール(BlombackとBlomback, 1956)、硫酸アンモニウム(Takeda, 1996)、βアラニン/グリシン(JakobsenとKieruif, 1976)、ポリマー(ポリエチレングリコール)、および低イオン強度溶液(Holm,1985)を用いて、比較的高収量かつ均質に、血漿から沈降されている。【0003】フィブリノゲン沈降物のさらなる精製は、イオン交換クロマトグラフィー条件(Stathakisら,1978)およびアフィニティークロマトグラフィー(Kuyasら,1990)により行うことができる。特定の不純物、例えば、フィブロネクチンは固定されたゼラチンで、プラスミノゲンは固定されたリシンで吸着排除することができる(Vuentoら,1979)。【0004】沈降方法は、商用フィブリノゲンの製造に広く用いられている。クロマトグラフィー方法は、現在、代替法として、また、フィブリノゲン濃縮物の純度改善のために研究されている。【0005】WO99/37680は、ヒト血液血漿中の別の血液タンパクからフィブリノゲンを大規模に分離する方法を記載している。この方法は、フィブリノゲン精製の出発物質としてヘパリン沈降ペーストの使用を含む。ヘパリン沈降ペーストは、第VIII因子(抗血友病因子、AHF)の製造方法の副生成物である。【0006】プラスミノゲンを含まないフィブリノゲンを製造する試み、または、プラスミノゲンそのものを精製する試みが、刊行物に広く公表されている。最も一般的な方法は、リシンが、プラスミノゲン分子の二つの“クリングル”の一方に結合するという能力を利用するものである。アフィニティークロマトグラフィー工程の利用は、1970年にDeutschとMertzにより公表された論文に最初に開示された。Baxter International Inc.は、この技術を利用している。この技術は、不安定化レベルのプラスミノゲン産物を含まないフィブリノゲン濃縮物の大規模製造に関する特許WO95/25748に開示されているように、フィブリノゲンからプラスミノゲンを除去する工程にリシン−セファロース物質を使用することを含む。科学文献に公表された他の技術は、リシンまたはε-アミノカプロン酸の結合を利用する。しかしながら、これらは、プラスミノゲン分子の可溶性を変更するために用いられる。希釈フィブリノゲン溶液にリシンを添加した後に、得られた溶液を7%エタノールの存在下で沈降させる。プラスミノゲンの除去は、この工程を繰り返して、90%より高く、不純物の全体的除去をもたらす(Mosesson, 1962)。沈降方法は、商用フィブリノゲンの製造に広く用いられているが、Mosesson(1962)により公表された研究は、製造規模での実施にとって実際的なプロセスとは言えない、フィブリノゲンの希釈溶液を利用する。【0007】イオン交換クロマトグラフィーとε-アミノカプロン酸を使用してpHまたはイオン強度に関わりなくプラスミノゲンを結合および溶出することは、クリングル含有タンパクの精製について記載したNovo Nordisk A/Sにより1994年に出願された特許(WO94/00483)に開示されている。この方法は、樹脂の選択としてS-セファロースを選択する。また、ゲル濾過とイオン交換クロマトグラフィーとの組合せも、プラスミノゲンを精製するために利用されている(Robbinsら,1965)。【0008】【発明が解決しようとする課題】本願発明者らは、フィブリノゲンが、画分Iペースト(Fraction I paste)からなる出発物質から精製された形態で回収されうることを見出した。この方法で回収されたフィブリノゲンは、不安定化レベルのプラスミノゲンおよびその他のプロテアーゼを含んでいない。また、この方法で回収されたフィブリノゲンは、フィブリングルー(glue)の形成におけるフィブリンポリマーの架橋を増強するために必要とされる第XIII因子も含む。さらに、この方法で得られたフィブリノゲンの収量は、ヘパリン沈降ペーストのような他の出発物質を用いる方法で得られる量よりも予想外に高い。【0009】また本発明者等は、イオン交換カラムからフィブリノゲンを回収するための改善された方法を開発した。これは、少なくとも一つのω-アミノ酸を、カラムに添加されたフィブリノゲン含有物質に、あるいは、フィブリノゲンを溶出する前にカラムを洗浄するために用いる溶液に、添加することを含む。【0010】ここで、用語「画分I沈降物(Fraction I precipitate)」とは、解凍されており、かつ、寒冷沈降物が遠心により除かれた凍結血漿を指す。次いで、得られた寒冷上清(cryosupernatant)をエタノールと混合して、画分Iを沈降させる。【0011】【課題を解決するための手段】従って、第一の態様では、本発明は、フィブリノゲンを精製する方法を提供し、この方法は、フィブリノゲンが抽出バッファーに可溶化されるように、画分I沈降物と抽出バッファーとを混合することにより、画分I沈降物からフィブリノゲンを抽出することを含む。ここで前記抽出バッファーは、少なくとも0.1Mの濃度で塩を、そして少なくとも10IU/mlの濃度でヘパリンを含む。【0012】第一の態様の好ましい実施態様では、塩の濃度が、少なくとも0.2M、より好ましくは少なくとも0.4M、さらに好ましくは約0.8Mである。【0013】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、抽出バッファーは、塩化物、リン酸塩および酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの塩を含み、より好ましくはNaClを含む。【0014】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、抽出バッファーが、約20mMの濃度でクエン酸三ナトリウム(Tri-sodium citrate)も含む。【0015】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、抽出バッファーが、少なくとも一つのω-アミノ酸をさらに含む。好ましくは、少なくとも一つのω-アミノ酸が、少なくとも5mMの濃度で抽出バッファーに存在する。【0016】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、抽出バッファーが、少なくとも約1IU/mlの濃度でアンチトロンビンIII(ATIII)を含む。【0017】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、抽出バッファーが、約20mMの濃度でクエン酸三ナトリウム、約0.8Mの濃度でNaCl、約60IU/mlの濃度でヘパリン、そして、約5mMの濃度で少なくとも一つのω-アミノ酸を含む。好ましくは、抽出バッファーは、約7.3のpHを有する。【0018】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、フィブリノゲンの抽出は約37℃で行われる。好ましくは、抽出は、少なくとも60分間、さらに好ましくは少なくとも90分間行われる。【0019】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、抽出されたフィブリノゲン溶液を水酸化アルミニウムとインキュベートし、遠心して沈降物を取り除く工程をさらに含む。【0020】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、グリシン塩水(Gly/NaCl)バッファーの添加により、抽出されたフィブリノゲン溶液からフィブリノゲンを沈降させる工程をさらに含む。好ましくは、Gly/NaClバッファーは、約2.1Mの濃度でグリシン、約20mMの濃度でクエン酸Na、約3.6Mの濃度で塩化ナトリウム、および約2.4mMの濃度でCaCl2を含む。【0021】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、約100mMの濃度のNaCl、約1.1Mの濃度のCaCl2、約10mMの濃度のクエン酸Na、約10mMの濃度のトリス、および約45mMの濃度のスクロースを含み、好ましくは約6.9のpHのバッファーに、フィブリノゲン沈降物を可溶化する工程をさらに含む。【0022】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、以下の工程:−イオン交換マトリックスに、抽出したフィブリノゲン溶液を、フィブリノゲンがイオン交換マトリックスに結合するような条件下で添加する工程、−マトリックスからフィブリノゲンを溶出する工程;および−任意に溶出物からフィブリノゲンを回収する工程をさらに含む。【0023】第一の態様のさらに好ましい実施態様では、マトリックスからフィブリノゲンを溶出する前に、少なくとも一つのω-アミノ酸を含むバッファーでイオン交換マトリックスを洗浄することをさらに含む。好ましくは、洗浄バッファーは、少なくとも5mMの濃度で少なくとも一つのω-アミノ酸を含む。【0024】さらに好ましい実施態様では、洗浄バッファーは、(i)約50mMの濃度のトリス、(ii)約20mMの濃度の少なくとも一つのω-アミノ酸、および約90mMの濃度のNaClを含む。好ましくは、バッファーは、約8.0のpHを有する。好ましくは、バッファーは、約11.1mS/cmの伝導度を有する。【0025】第二の態様では、本発明は、以下の工程(a)フィブリノゲンが、少なくとも0.1Mの濃度の塩を含む抽出バッファーに可溶化されるように、画分I沈降物を抽出バッファーと混合して、画分I沈降物からフィブリノゲンを抽出する工程;(b)フィブリノゲンを沈降させる工程;および(c)少なくとも100mMの濃度で少なくとも一つのω-アミノ酸を含む溶液にフィブリノゲンを可溶化させる工程を含む、フィブリノゲンを精製する方法を提供する。【0026】第二の態様の好ましい態様では、抽出バッファーの塩の濃度は、少なくとも0.2M、さらに好ましくは少なくとも0.4M、さらに好ましくは0.8Mである。【0027】第二の態様のさらに好ましい実施態様では、抽出バッファーは、塩化物、リン酸塩および酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの塩を含み、より好ましくはNaClを含む。【0028】好ましくは、抽出バッファーは、約20mMの濃度でクエン酸三ナトリウムも含む。【0029】第二の態様の好ましい実施態様では、抽出バッファーは、さらに少なくとも10IU/ml、さらに好ましくは約60IU/mlの濃度でヘパリンをさらに含む。【0030】第二の態様のさらに好ましい実施態様では、抽出バッファーは、少なくとも一つのω-アミノ酸をさらに含む。好ましくは、少なくとも一つのω-アミノ酸は、少なくとも5mMの濃度で抽出バッファーに存在する。【0031】第二の態様のさらに好ましい実施態様では、抽出バッファーは、約20mMの濃度のクエン酸Na、約0.8Mの濃度のNaCl、および約60IU/mlの濃度のヘパリンを含む。好ましくは、抽出バッファーは、約7.3のpHを有する。【0032】第二の態様のさらに好ましい実施態様では、フィブリノゲンを、グリシン塩水(Gly/NaCl)バッファーの添加により、工程(b)で沈降させる。好ましくは、Gly/NaClバッファーは、約2.1Mの濃度でグリシン、約20mMの濃度でクエン酸Na、約3.6Mの濃度で塩化ナトリウム、および約2.4mMの濃度でCaCl2を含む。【0033】第二の態様のさらに好ましい実施態様では、フィブリノゲン沈降物を、約100mMの濃度のNaCl、約1.1Mの濃度のCaCl2、約10mMの濃度のクエン酸Na、約10mMの濃度のトリス、および約45mMの濃度のスクロースを含むバッファーを用いて、工程(c)で可溶化させる。好ましくは、このバッファーは、約6.9のpHを有する。【0034】第二の態様のさらに好ましい実施態様では、以下の工程:(d)イオン交換マトリックスに、工程(c)のフィブリノゲン溶液を、フィブリノゲンが前記マトリックスに結合するような条件下で添加する工程、(e)マトリックスからフィブリノゲンを溶出する工程;および(f)任意に溶出物からフィブリノゲンを回収する工程をさらに含む。【0035】第二の態様の好ましい実施態様では、マトリックスからフィブリノゲンを溶出する前に、少なくとも一つのω-アミノ酸を含むバッファーでイオン交換マトリックスを洗浄することをさらに含む。好ましくは、洗浄バッファーは、少なくとも5mMの濃度で少なくとも一つのω-アミノ酸を含む。【0036】第二の態様のさらに好ましい実施態様では、洗浄バッファーは、(i)約50mMの濃度のトリス、(ii)約20mMの濃度の少なくとも一つのω-アミノ酸、および約90mMの濃度のNaClを含む。好ましくは、バッファーは、約8.0のpHを有する。好ましくは、バッファーは、約11.1mS/cmの伝導度を有する。【0037】第二の態様のさらに好ましい実施態様では、フィブリノゲン含有溶液(好ましくはω-アミノ酸を含む)は、イオン交換マトリックスに添加される前に、伝導度が10.5mS/cm以下となるように希釈する。【0038】第二の態様のさらに好ましい実施態様では、フィブリノゲンを、約10mMのトリス、10mMのクエン酸塩、45mMのスクロース;および200mMから1.0M、好ましくは約400mMの濃度のNaClを含むバッファーに、マトリックスから溶出する。好ましくはバッファーは、約7.0のpHを有する。【0039】第三の態様では、本発明は、以下の工程(a)少なくとも5mMの濃度の少なくとも一つのω-アミノ酸を含む抽出バッファーにフィブリノゲンが溶解されるように、フィブリノゲン含有物質を抽出バッファーと混合することにより前記物質からフィブリノゲンを抽出する工程;(b)イオン交換マトリックスに、工程(a)で得られた抽出バッファーを、フィブリノゲンが前記マトリックスに結合するような条件下で添加する工程;(c)前記マトリックスからフィブリノゲンを溶出する工程;および(d)任意にフィブリノゲンを溶出物から回収する工程を含む、フィブリノゲンを精製する方法を提供する。【0040】第三の態様の好ましい実施態様では、工程(b)の後に、少なくとも一つのω-アミノ酸を含む溶液で、イオン交換マトリックスを洗浄することをさらに含む。【0041】第四の態様では、本発明は、フィブリノゲン含有溶液からフィブリノゲンを精製する方法を提供するものであって、この方法は、以下の工程:(a)前記溶液をイオン交換マトリックスに、フィブリノゲンがマトリックスに結合するような条件下で適用する工程;(b)イオン交換マトリックスを、少なくとも一つのω-アミノ酸を含む溶液で洗浄する工程;(c)マトリックスからフィブリノゲンを溶出する工程;および(d)任意に溶出物からフィブリノゲンを回収する工程を含む。【0042】第四の態様の好ましい実施態様では、イオン交換マトリックスに添加する前に、溶液に少なくとも一つのω-アミノ酸を添加することをさらに含む。【0043】本発明の第三および第四の態様では、フィブリノゲン含有物質は、フィブリノゲンを含む血漿から誘導されたあらゆる物質とすることができる。かかる溶液の例は、これらに限定されるわけではないが、血漿(抗凝固化血漿を含む)、または血漿画分を含む。好ましい実施態様では、ヘパリン沈降ペーストであり、これは第VIII因子の製造方法の副生成物である。ヘパリン沈降ペーストを塩溶液で可溶化して、高い比活性のフィブリノゲン調製物を得てもよい。ヘパリンを用いて寒冷沈降物抽出物からフィブリノゲンを沈降させる方法は、Winkelmanら,1989に記載されており、この全内容を参照としてここに含める。また、フィブリノゲン含有物質は、好ましくは本発明の第一または第二の態様の方法に従って、画分1沈降物から抽出される。【0044】第三または第四の態様のさらに好ましい実施態様では、ω-アミノ酸は、5−500mM、好ましくは50−500mM、さらに好ましくは約100mMの濃度で抽出バッファー中に存在する。【0045】第三または第四の態様のさらに好ましい実施態様では、フィブリノゲン含有溶液(好ましくはω-アミノ酸を含む)は、イオン交換マトリックスに適用する前に、伝導度が10.5mS/cm以下となるように希釈される。【0046】第三または第四の態様のさらに好ましい実施態様では、イオン交換マトリックスを洗浄するために用いられるバッファーは、(i)約50mMの濃度のトリス、(ii)約20mMの濃度のω-アミノ酸、および約90mMの濃度のNaClを含む。好ましくはバッファーは、約8.0のpHを有する。好ましくは、バッファーは、約11.1mS/cmの伝導度を有する。【0047】第三または第四の態様のさらに好ましい実施態様では、フィブリノゲンを、約10mMのトリス、10mMのクエン酸塩、45mMのスクロース;および200mMから1.0M、好ましくは約400−500mMの濃度のNaClを含むバッファーにマトリックスから溶出させる。好ましくは、バッファーは約7.0のpHを有する。【0048】本発明の第一、第二、第三または第四の態様の好ましい実施態様では、ω-アミノ酸は、カルボン酸とω-アミノ基との間の炭素鎖に少なくとも4つの炭素原子を含む。適切な直鎖ω-アミノ酸の例は、4-アミノ酪酸、5-アミノペントイン酸、6-アミノヘキサン酸(ε-アミノカプロン酸(EACA))、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、およびアルギニンである。環状ω-アミノ酸の例は、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(トラネザミン酸)およびパラ-アミノメチル安息香酸である。特に好ましい実施態様では、ω-アミノ酸は、EACAである。【0049】イオン交換マトリックスは、当該技術分野で公知であり、あらゆる適切なマトリックスを本発明において用いることができる。好ましいマトリックスは、MacroPrep HQ樹脂(BioRad, カタログ番号156−0041)である。さらに好ましい実施態様では、イオン交換マトリックスはカラムに充填される。【0050】当業者であれば、第三および第四の態様の方法は、不安定化レベルのプラスミノゲンとその他のプロテアーゼを含まないフィブリノゲンの大規模な製造のためのアフィニティークロマトグラフィーに代わる方法を提供する可能性を有することを理解できるであろう。かかる態様の方法は、高い回収量(約75%)で、生物学的流体から、不安定化レベルのプラスミノゲンおよびその他のプロテアーゼを含まないフィブリノゲンを単離するための、イオン交換クロマトグラフィーを用いる唯一の処理工程のみを必要とする。血液タンパクからフィブリノゲンを精製するこの新規方法の使用は、純度と安定性の両方に優れた産物をもたらす、より簡単な製造方法を実現する可能性を有する。【0051】本発明の技術は、フィブリノゲンの製造と、フィブリンシーラント製品におけるフィブリノゲンの使用の両方に関して、多くの利点を与える。フィブリノゲン成分からプラスミノゲンを除去することは、フィブリノゲン成分とフィブリングルーの所望の安定性を得るために、ヒト、動物、または合成由来の阻害剤を添加する必要がないという自由度を製造者に与える。阻害剤の添加は、別の問題を生じることがあり、これは、最終的産物からプラスミノゲンを除去することによって妨げられる。【0052】最後に、イオン交換樹脂の製造コストは、アフィニティークロマトグラフィー法で用いられるリシン-セファロースまたは固定化リシン樹脂のコストよりもはるかに経済的である。【0053】本明細書を通して、用語“含む”、またはその変形は、記載された要素(element)、全体(integer)または工程(step)、あるいは要素、全体または工程の群を含むが、他の要素、全体または工程、あるいは要素、全体または工程の群を排除しないことを意味するものと解する。【0054】ここで使用する略号:TP 全タンパクCP 凝固可能タンパクFXIII 第XIII因子FII 第II因子Plasm. プラスミノゲンFN フィブロネクチンATIII アンチトロンビンIIIF1P 画分1ペーストSFP 可溶化画分1ペーストASFP アルヒドロゲル(Alhydrogel)吸収可溶化画分1ペーストGASFP 溶解Gly/NaCl沈降可溶化画分1ペーストSDS-PAGE ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動Gly/NaCl グリシン/塩SD 溶媒/界面活性剤εACA エプシロンアミノカプロン酸TNBP トリ-N-ブチルホスファートAl(OH)3 水酸化アルミニウムRT 室温PET 血漿処理技術IEX イオン交換SHP 可溶化ヘパリンペースト上清【0055】【実施例】実施例1:画分I沈降物からのフィブリノゲンの抽出1.1 物質と方法1.1.1 ヘパリンペースト抽出方法画分Iペーストを、特に言及しない限り、1g:8.33gのヘパリンペースト抽出バッファーの比率で抽出した。この抽出は、室温で2時間行った。1.1.2 ヘパリンペースト抽出バッファー0.4M NaCl5mM εACA20mM クエン酸NapH7.3【0056】1.1.3 アルヒドロゲル(Alhydrogel)吸着アルヒドロゲルとしても知られる、2%水酸化アルミニウムAl(OH)3溶液を、10.8%の濃度で、可溶化したヘパリンペースト上清(SHP)に加えた。この混合物を、室温で15分間攪拌しながらインキュベートし、10分間遠心し、ペレットを捨てた。1.1.4 Gly/NaCl沈降アルヒドロゲル上清(ASFP)およびGly/NaClバッファーを30℃±3℃まで熱した。次いで、この上清を、4.5分間にわたって、1:2.05の比率でGly/NaClバッファーに加えた。次いで、上清を攪拌しながら20分間30℃でインキュベートした後に、10分間5010gで遠心した。この上清を捨て、沈降物を、画分Iペーストからのフィブリノゲンの抽出後に得られた上清の量の1/3に相当する量のバッファーDを用いて可溶化した。この沈降物を、可溶化の間、室温で攪拌してもよい。【0057】1.1.5 Gly/NaClバッファー2.1M グリシン20mM クエン酸Na3.6M NaCl2.4mM CaCl2【0058】1.1.6 バッファーD100mM NaCl1.1mM CaCl210mM クエン酸Na10mM トリス45mM スクロースpH6.9【0059】1.1.7 溶媒界面活性剤処理溶媒界面活性剤処理を、可溶化したGly/NaCl沈降物(GASFP)に、1%のポリソルバート80および0.3%のTNBPを加えることによって実施した。1.1.8 湿熱処理溶媒界面活性剤処理したフィブリノゲンを、濃縮スクロース/グリシンバッファーを用いて1/15に希釈して、約1mg/mLのタンパク、60%スクロース、および1Mグリシンの終濃度とした。得られた産物を60℃まで熱し、10時間9インキュベートした。1.1.9 イオン交換クロマトグラフィー湿熱処理したフィブリノゲンを、平衡化したアニオン交換樹脂に添加した。樹脂を洗浄した後に、産物を、塩含有バッファーを用いて溶出した。1.1.10 37℃での安定性処理過程において、サンプルをウォーターバスにて37℃でインキュベートし、サンプルを取り出し、規則的な時間間隔で凍結した。サンプルの安定性を、還元条件下で、SDS−PAGEにより分析した。安定性は、フィブリノゲンのαサブユニットの分解をゲル上に肉眼で観察できない最後の時点として定量的に評価した。【0060】1.1.11 抽出1工程画分1ペーストを、産物から新たに得た。6gを、ヘパリンペースト抽出バッファーを用いて直ちに抽出した。可溶化した画分1ペーストを分注し、アッセイまで−80℃で凍結貯蔵した。1.1.12 抽出2工程画分1ペーストを、産物から新たに得た。12gを、ヘパリンペースト抽出バッファーを用いて直ちに抽出した。このペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。沈降物を、バッファーDに可溶化した。サンプルを各段階で得て、アッセイまで−80℃で凍結した。残りの画分1ペーストを、−80℃で貯蔵した。1.1.13 抽出3(凍結ペースト)工程画分1ペースト(30g)を37℃で解凍し、ヘパリンペースト抽出バッファーを用いて抽出した。可溶化画分1ペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。このGly/NaCl沈降物をバッファーDを用いて可溶化した。εACAを、0mM、20mM、100mM、200mMおよび500mMの濃度で、可溶化したGly/NaCl沈降物のサンプルに添加した。このサンプルを37℃で安定性について評価した。可溶化したGly/NaCl沈降物を、SDで処理し、MacroPrep HQイオン交換カラムに添加した。画分を回収し、37℃で安定性について評価した。【0061】1.1.14 抽出4工程画分1ペーストを、産物から新たに得た。40gを、ヘパリンペースト抽出バッファーを用いて直ちに抽出した。抽出から2時間後に、画分1ペーストは完全には可溶化されなかった。この物質を遠心*し、この上清(可溶化した画分1ペースト#1)をAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。このGly/NaCl沈降物を、バッファーDを用いて可溶化した。εACAを、0mM、20mM、125mM、250mMおよび500mMの濃度で、可溶化したGly/NaCl沈降物の2セットのサンプルに添加した。一方のグループのサンプルは、37℃で直ちにインキュベートし、経時的に安定性についてアッセイした。他方のグループのサンプルを、−80℃で60時間凍結貯蔵し、解凍し、次いで、安定性に関して37℃でインキュベートした。残りの可溶化したGly/NaCl沈降物をSD処理し、イオン交換カラムに添加した。*非可溶化画分1物質(14.13g)を、0.8MのNaClを含有するヘパリンペースト抽出バッファーに再抽出した。可溶化画分1物質(#2)を分注し、−80℃で凍結貯蔵した。【0062】1.1.15 抽出バッファーに対するATIIIの添加画分1ペーストを、産物から得て、半分を4℃で、そして他方の半分を−80℃で、4.5日間貯蔵した。この実験では、抽出を、1IU/mLのATIIIを含むまたは含まないバッファーに、4℃(新鮮ペースト)および−80℃(凍結ペースト)を用いて行った。標準抽出バッファーに対するさらなる変化は、0.8Mへの塩濃度の増加であった。画分1ペースト(6g)を、以下の各条件の下に抽出した:(1)新鮮なペーストを、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、pH7.3に抽出。(2)新鮮なペーストを、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、1IU/mL ATIII、pH7.3に抽出。(3)凍結ペーストを37℃で解凍し、次いで、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、pH7.3に抽出。(4)凍結ペーストを37℃で解凍し、次いで、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、1IU/mL ATIII、pH7.3に抽出、可溶化した画分1ペーストを、アルヒドロゲル吸着させ、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。沈降物を半分に分けた。半分の沈降物を−80℃に貯蔵し、他の半分をバッファーDを用いて可溶化した。可溶化沈降物を再び半分に分け、0 εACAまたは250mMのεACAを添加した。このサンプルを37℃で安定性について評価した。凍結Gly/NaCl pptを、37℃で解凍し、バッファーD+100mM εACAを用いて可溶化した(30℃まで温めた)。可溶化を30℃で行った。サンプルを37℃で、安定性について評価した。【0063】1.1.16 抽出バッファーへのヘパリンの添加画分1ペーストを、4℃で3日間貯蔵した後に産物から得た。この実験では、4つの抽出を、20IU/mLまたは60IU/mLのヘパリンの存在下で1IU/mLのATIIIを含むおよび含まないバッファーを用いて実施した。画分1ペースト(6g)を、以下の各条件下で抽出した。(1)新鮮なペーストを、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.4M NaCl、20IU/mL ヘパリン、pH7.3に抽出。(2)新鮮なペーストを、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.4M NaCl、60IU/mL ヘパリン、pH7.3に抽出。(3)新鮮なペーストを、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.4M NaCl、20IU/mL ヘパリン、1IU/mL ATIII、pH7.3に抽出。(4)新鮮なペーストを、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、60IU/mL ヘパリン、1IU/mL ATIII、pH7.3に抽出。可溶化画分1ペーストを、Al(OH)3を用いて処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。沈降物を半分に分けた。半分の沈降物を−80℃に貯蔵し、他の半分をバッファーDを用いて可溶化した。可溶化沈降物を再び半分に分け、0 εACAまたは250mMのεACAを添加した。このサンプルを37℃で安定性について評価した。凍結ペレットの可溶化を、凍結Gly/NaCl沈降物中に、バッファーD+100mM εACA(30℃に温めた)を添加することによって実施した。可溶化を30℃で行った。サンプルを、37℃で安定性について評価した。【0064】1.1.17 ペースト:バッファー比調査調査I:画分1ペーストを産物から新たに得た。1.5g、3g、4.5g、6g、7.5g、および9gを、0.8MのNaClを含む50gの抽出バッファーに可溶化した。サンプルを、全タンパクおよび凝固可能なタンパク用に取りわけた。残りの物質を捨てた。調査II:画分1ペースト(Batch #3715001253)を、産物から新たに得た。4.5g、9g、13.5g、18g、22.5gおよび27gを、0.8M NaCl、60IU/mLのヘパリンを含有する150mLの抽出バッファーに、37℃で90分間可溶化した。サンプルを、全タンパクおよび凝固可能なタンパク用に取りわけた。【0065】1.1.18 抽出温度調査画分1ペーストを、産物から新たに得た。18gを、室温で2時間、150mLの20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、pH7.3に抽出した。別の18gを、37℃で2時間、150mLの20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、pH7.3に抽出した。サンプルを、全タンパクおよび凝固可能なタンパクの抽出の間、30分、60分、90分、および120分の時点で採取した。可溶化されたペーストを遠心し、別のサンプルを取り分けた。【0066】1.1.19 製造規模抽出の調査製造規模抽出I:画分1ペーストを、産物から新たに得た。20.0kgを1gペースト:8.33gバッファーの比率で、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、60IU/mLヘパリン、pH7.3に、PETグループにより抽出した。抽出を、37℃で90分間実施した。可溶化画分1ペーストを、アルヒドロゲル吸着処理し、Gly/NaCl沈降を実施した。沈降物を二つに分け、半分の沈降物を、100mM εACAを含有するバッファーDに可溶化し、他の半分を−80℃で凍結させた。可溶化したGly/NaCl沈降物をSDで処理し、湿熱処理し、イオン交換カラムに添加した。溶出物を回収し、サンプル化し、−80℃で凍結させた。凍結ペレットの可溶化を、凍結させたGly/NaCl沈降物にバッファーD+100mM εACA(30℃に温めた)を添加することにより実施した。可溶化を30℃で行った。このサンプルを、37℃での安定性について評価した。製造規模抽出II:画分1ペーストを、産物から新たに得た。30.0kgを1gペースト:8.33gバッファーの比率で、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、60IU/mLヘパリン、pH7.3に、PETグループにより抽出した。抽出を、37℃で90分間実施した。サンプルを、全タンパクおよび凝固可能なタンパクのために取り分けた。【0067】1.2 結果1.2.1 抽出1工程画分1ペースト(6g)を50mLの抽出バッファーに可溶化した。遠心後、52.47gの上清を回収し、ペレットを捨てた。タンパクの特徴決定可溶化画分1ペーストを、全タンパク、凝固可能なタンパク、第XIII因子、プラスミノゲンおよびフィブロネクチンについて、表1に記載したようにアッセイした。血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を表2に算出した。サイズ排除分析を、スーパーローズ6(Superose 6)を用いて実施し、その結果を表3に記載した。【0068】表1可溶化画分1ペーストのタンパクの特徴決定【表1】【0069】可溶化画分1ペーストの特徴決定は、その約65%が凝固可能なタンパクまたはフィブリノゲンである高レベルのタンパクが抽出されたことを示している。また、可溶化画分1ペーストは、高レベルの第XIII因子とプラスミノゲンを含有するが、低レベルのフィブロネクチンを含有していた。【0070】表2可溶化画分1ペーストからのフィブリノゲンの収量【表2】【0071】可溶化画分1ペーストからのフィブリノゲンの収量は、可溶化ヘパリンペーストと比較して高く、血漿のキログラム当たり1.22gのフィブリノゲンが抽出された。【0072】表3可溶化画分1ペーストのスーパーローズ6解析【表3】【0073】可溶化画分1ペーストのスーパーローズ6解析は、低レベルの凝集を含むが、低分子量タンパクが存在する約65%のフィブリノゲンモノマーを示した。SDS−PAGE解析SDS−PAGE解析の結果は、非還元条件下で高分子量タンパクの存在を示し、かつ、還元条件下で約40−60kDaの間の三つの主なバンドを示した。このプロフィールは、フィブリノゲンに富んだ物質に特有である。37℃における安定性可溶化画分1ペーストの安定性は、約24時間であった。可溶化画分1ペーストサンプルは、37℃で24時間から32時間の間のインキュベーションで凝固した。【0074】1.2.2 抽出2工程画分1ペースト(12.06g)を、100.5mLの抽出バッファーに抽出し、遠心し、Al(OH)3吸着し、Gly/NaClで沈降させた。タンパクの特徴決定全てのサンプルを、全タンパク、凝固可能なタンパク、第XIII因子、第II因子、プラスミノゲンおよびフィブロネクチンについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表4)。サイズ排除解析を、スーパーローズ6を用いて実施し、この結果を表5に記載した。【0075】表4特徴決定一覧【表4】【0076】可溶化画分1ペーストの特徴決定は、その約73%が凝固可能タンパクである高レベルのタンパクの抽出を示した。この結果は、抽出Iから得られたものと一致する。また、高レベルの第XIII因子とプラスミノゲン、並びに低レベルのフィブロネクチンも抽出された。血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量も、1.83g/kgと高かった。Al(OH)3吸着後には、可溶化画分1ペースト中に0.53IU/mLであることが観察された第II因子が検出されなかった。凝固可能タンパクは、77%であることが観察され、FXIII、ブラスミノゲンおよびフィブロネクチンの濃度は比較的変化しなかった。血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量は、約22%低減したが、これは、この段階で予想された結果である。Gly/NaCl沈降は、フィブリノゲンの純度を92%の凝固可能物まで増加させ、かつフィブロネクチンを無視できるレベルまで除いた。【0077】表5スーパーローズ6解析【表5】【0078】サンプル処理におけるスーパーローズ解析は、Gly/NaCl沈降工程で、全領域の59%から74%へとフィブリノゲンピークの増大を伴うフィブリノゲンの精製を示した。SDS−PAGE解析可溶化画分1ペーストのSDS−PAGE解析は、抽出1で生成されたものと非常に類似したタンパク組成を示した。また、処理サンプルのSDS−PAGE解析も、Gly/NaCl工程でフィブリノゲンの精製を示した。可溶化Gly/NaCl沈降サンプルは、還元条件下で分析した場合に、より少ない高分子量タンパクバンドを含み、非還元条件下で分析した場合に、200kDa、150kDaおよび55kDaのバンドの欠失を示した。【0079】1.2.3 抽出3(凍結ペースト)工程画分1ペースト(21.13g)を176mLの抽出バッファーで抽出し、遠心し、Al(OH)3吸着し、かつGly/NaCl沈降させた。Gly/NaClバッファーに産物を加えた際に、一部の産物が凝固した。可溶化Gly/NaCl沈降物をSD処理し、イオン交換カラムに添加し、フィブリノゲンを塩含有バッファーに溶出した。タンパク特徴決定全てのサンプルを、全タンパク、凝固可能なタンパク、第XIII因子、第II因子、についてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表6)。サイズ排除解析を、スーパーローズ6を用いて実施し、この結果を表7に記載した。【0080】表6特徴決定一覧【表6】【0081】可溶化画分1ペーストの特徴決定は、サンプルが解凍時に凝固したので実施しなかった。可溶化Gly/NaCl沈降物の一つのサンプルも解凍時に凝固し、結果として、この段階で第XIII因子レベルについて全くデータを入手できなかった。分析されたサンプルは、先の抽出実験と類似のプロフィールを示した。凝固可能タンパクは、Al(OH)3吸着後約60%であり、Gly/NaCl沈降後、80%よりも高く増大した。第XIII因子は、Al(OH)3吸着後7IU/mLで存在し、第II因子は、検出不可能であった。血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量は、Gly/NaCl沈降後、僅かに0.4g/kgと検出される低いものであった。GASFPイオン交換カラムに添加して、プラスミノゲンからフィブリノゲンを精製した。【0082】表7スーパーローズ6解析【表7】【0083】スーパーローズ6解析は、Al(OH)3段階で非常に高レベルの低分子量タンパクを示した。ここでも、Gly/NaCl沈降後に、全エリアの40%から60%へとフィブリノゲン含量の増大を伴ってフィブリノゲンの精製が見られた。SDS−PAGE解析可溶化画分1ペーストの第一サンプルは、サンプルが解凍時に凝固したのでSDS−PAGEで解析しなかった。還元および非還元条件下における、Al(OH)3およびGly/NaCl段階後のサンプルのSDS−PAGE解析は、フィブリノゲンの精製を示す。イオン交換カラム溶出の分析は、主なタンパク成分がフィブリノゲンであることを示した。【0084】37℃での安定性可溶化画分1ペーストの第一のサンプル(24時間)は、サンプルが解凍時に凝固したのでSDS−PAGEで分析しなかった。可溶化画分1ペースト安定性サンプルの残りは、37℃で放置後24時間から32時間の間のいずれかで凝固した。Al(OH)3サンプルの解析は、24時間の時点でフィブリノゲン分解の証拠を示した。Gly/NaCl沈降後、フィブリノゲンは44時間の時点で安定であったが、分解は144時間の時点で明らかだった(72時間サンプルは見られなかった)。200または500mMのεACAを、可溶化Gly/NaCl沈降物に添加したときに、フィブリノゲンは240時間よりも安定であった。イオン交換カラムからの溶出後、フィブリノゲンは、εACAを全く添加せずに、少なくとも208時間(試験した最終時点)安定であった。【0085】1.2.4 抽出4工程新鮮な画分1ペースト(40.0g)を、333mLの抽出バッファーで抽出し、遠心し、Al(OH)3吸着し、かつGly/NaCl沈降させた。εACAを、0mM、20mM、125mM、250mMおよび500mMの濃度で可溶化Gly/NaCl沈降物の2セットのサンプルに添加した。一方のグループのサンプルを、37℃で直ちにインキュベートし、経時的に安定性を評価した。他方のグループのサンプルを−80℃で60時間凍結貯蔵し、解凍し、安定性について37℃でインキュベートした。可溶化Gly/NaCl沈降物をSD処理し、イオン交換カラムに添加し、フィブリノゲンを塩含有バッファーに溶出した。タンパク特徴決定全てのサンプルを、全タンパク、凝固可能なタンパク、第XIII因子、第II因子、およびフィブロネクチンについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を表8に算出した。第一の抽出後に残ったペレットを、0.8MのNaClを含有するバッファーで再抽出した。このサンプルのタンパク特徴決定および血漿kg当たりの収量を、表9に記載した。スーパーローズ6解析は行わなかった。【0086】表8特徴決定一覧【表8】【0087】処理サンプルの特徴決定は、新鮮な画分1ペーストの先の抽出と一致する結果を示した。約68%の凝固可能なタンパクを、画分1ペーストから抽出した。Al(OH)3処理は、第II因子を検出できないレベルまで低減し、Gly/NaCl沈降は凝固可能なタンパクを89%まで増大させ、フィブロネクチンを無視できるレベルまで低減させた。可溶化画分1ペースト段階での血漿のkg当たりのフィブリノゲンの収量は1.85であったが、Al(OH)3処理およびGly/NaCl沈降後には1.35に落ち、これはこれらの工程で予想されるものであった。イオン交換クロマトグラフィー工程での回収量は約76%であった。凍結GASFPを解凍し、イオン交換カラムに添加した。溶出は凝固可能タンパクが高レベルであることを示し、低レベルのプラスミノゲンを含んでいた。GASFPのプラスミノゲンのレベルは、試験しなかった。それゆえイオン交換段階でのプラスミノゲンの回収量は算出できなかった。しかしながら、溶出物中の8mg/mLのフィブリノゲンと<0.2μg/mLのプラスミノゲンは、60mg/mLの濃縮産物中において1.6μg/mL未満に匹敵する。この結果は、イオン交換カラムが産物からプラスミノゲンを除くのに効率的に作用していることを示唆する。14.13gの画分1ペースト(抽出#1後に残ったもの)を、117.7mLのフィブリノゲン抽出バッファー(0.8M NaCl、pH7.3)に可溶化した。【0088】表9可溶化画分1ペースト#2の特徴決定一覧【表9】【0089】それゆえ、血漿kg当たりのフィブリノゲンの全収量は、可溶化画分1ペースト段階における血漿kg当たり1.85+0.7g=2.5gのフィブリノゲンとして算出できた。SDS−PAGE解析SDS−PAGE解析は、全ての画分にフィブリノゲンの存在を示した。Gly/NaCl処理後には、いくつかのタンパクのバンドが、還元条件下で観察され、タンパクの特徴決定により見られたフィブリノゲン分子の精製を示している。【0090】37℃での安定性可溶化Gly/NaCl沈降物は、ゼロおよび20mMのεACAをサンプルに添加した場合に64時間安定であった。64時間後、サンプルは凝固した。125mMのεACAの添加により、サンプルは72時間安定であったが、分子の分解は100時間の時点で明らかであった。250mMおよび500mMのεACAの添加は、可溶化Gly/NaCl沈降物の安定性を124時間より増大させ、最終的なサンプルをとった。ゼロまたは20mMのεACAを添加し、安定化試験を開始する前に−80℃で60時間凍結させた可溶化Gly/NaClサンプルは、可溶化非凍結沈降物よりも安定性が低いことが観察された。ゼロまたは20mMのεACAを添加すると、非凍結サンプルの64時間と比べて、サンプルは24時間安定であったが、その後、凝固した。しかしながら、125mM、250mM、および500mMのεACAの添加は、>96時間、最終時点までフィブリノゲンの安定性を増大させ、非凍結サンプルで見られた124時間から顕著に異なるものではなかった。かくして、フィブリノゲンは、少なくとも125mMのεACAの添加だけで−80℃で安定であった。イオン交換溶出の安定性の解析は、εACAを添加することなく>170時間であることを示した。【0091】1.2.5 抽出バッファーへのATIIIの添加新鮮かつ凍結された画分1ペースト(6g)を、50mLの抽出バッファー(±1IU/mL ATIII)で抽出し、遠心し、Al(OH)3吸着させ、Gly/NaCl沈降させた。この沈降物を半分に分けた。半分の沈降物を−80℃に貯蔵し、他の半分をバッファーDを用いて可溶化した。可溶化沈降物を再び半分に分け、0 εACAまたは250mM εACAを加えた。このサンプルを、37℃で安定性について評価した。【0092】タンパク特徴決定抽出1新鮮な画分1ペースト(6.04g)を、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、pH7.3を含む50.34gのバッファーに抽出した。可溶化画分1ペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表10)。【0093】表10特徴決定一覧【表10】【0094】全タンパクおよび凝固可能タンパクに関する処理サンプルの特徴決定は、先の結果と一致した。約60%の凝固可能なタンパクが画分1ペーストから抽出され、これはGly/NaCl沈降段階後に85%の凝固可能タンパクとなるまでに増大した。収量は、先の抽出よりも低く、血漿のキログラム当たりに0.85gのフィブリノゲンが抽出された。【0095】抽出2新鮮な画分1ペースト(5.98g)を、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、1IU/ml ATIII、pH7.3を含む49.84gのバッファーに抽出した。可溶化画分1ペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表11)。【0096】表11可溶化画分1ペーストの特徴決定一覧【表11】【0097】1IU/mL ATIIIを含有する抽出バッファーを用いて生成した処理サンプルの特徴決定は、ATIIIを含まない抽出バッファーと非常に類似していた。約65%の凝固可能なタンパクが画分1ペーストから抽出され、これはGly/NaCl沈降段階後に85%の凝固可能タンパクとなるまでに増大した。収量は、先の抽出よりも低く、血漿のキログラム当たり0.74gのフィブリノゲンが抽出された。【0098】抽出3凍結画分1ペースト(6.06g)を、解凍し、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、pH7.3を含む50.5gのバッファーに抽出した。可溶化画分1ペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表12)。【0099】表12可溶化画分1ペーストの特徴決定一覧【表12】【0100】凍結画分1ペーストの抽出後に生成された処理サンプルの特徴決定は、67%の凝固可能なタンパクの抽出を示し、これは、Gly/NaCl沈降後に84%にまで増大した。これらの凝固可能なタンパクの結果は、新鮮な、および凍結した、ペースト出発物質の間で一致していた。血漿のキログラム当たりの収量は、新鮮なペーストから抽出されるものよりも低く、血漿のキログラム当たりに0.6g未満のフィブリノゲンが抽出された。【0101】抽出4凍結画分1ペースト(6.07g)を、解凍し、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、1IU/mL ATIII、pH7.3を含む50.59gのバッファーに抽出した。可溶化画分1ペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表13)。【0102】表13可溶化画分1ペーストの特徴決定一覧【表13】【0103】1IU/mL ATIIIを含有するバッファー中の凍結画分1ペーストの抽出後に生成された処理サンプルの特徴決定は、先の抽出物±ATIIIから得られた結果と、凝固可能タンパクおよび収量に関して非常に類似した結果を示した。37℃での安定性各抽出実験からの処理安定性サンプルのSDS−PAGE解析を実施した。新鮮(4℃)および凍結(−80℃)ペーストからの、ATIIIを含む(+)および含まない(−)バッファーに抽出した、可溶化画分1ペースト、Al(OH)3吸着、およびGly/NaCl沈降サンプルの安定性(時間)を以下の表14に記載した。【0104】表14フィブリノゲンの安定性(時間)【表14】【0105】凍結/解凍/可溶化GASFPの分析凍結Gly/NaCl沈降物を37℃で解凍し、30℃でバッファーD+100mM εACAを用いて可溶化した。この沈降物を、30分以内に可溶化した。次いで、サンプルを、以下の表15において全タンパクおよび凝固可能なタンパクについてアッセイし、および37℃での安定性についてアッセイした。【0106】表15解凍および可溶化Gly/NaCl沈降物【表15】【0107】タンパク特徴決定は、沈降物の凍結が、可溶化Gly/NaCl沈降物におけるフィブリノゲン/kg血漿の収量または凝固可能なタンパクのレベルに影響しないことを示した。解凍した可溶化Gly/NaCl沈降物の安定性分析は、全ての抽出条件からのフィブリノゲンが120時間安定であることを示した。この結果は、非凍結Gly/NaCl沈降物安定性の結果と一致する。【0108】1.2.6 抽出バッファーへのヘパリンの添加新鮮な画分1ペースト(6g)を50gの適切な抽出バッファーに抽出し、Al(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。この沈降物を半分に分けた。半分の沈降物を−80℃に貯蔵し、他の半分をバッファーDを用いて可溶化した。可溶化沈降物を再び半分に分け、250mM εACAを一方の半分に加え、もう一方の半分にはεACAを全く加えなかった。このサンプルを、37℃で安定性について評価した。タンパク特徴決定抽出1新鮮な画分1ペースト(6.0g)を、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.4M NaCl、20IU/mL ヘパリン、pH7.3を含む50.0gの抽出バッファーに抽出した。可溶化画分1ペーストを、Al(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表16)。【0109】表16特徴決定一覧【表16】【0110】20IU/mLのヘパリンを含有するバッファーを用いた抽出から得られた処理サンプルの特徴決定は、元の抽出バッファーを用いて得られたものと非常に類似していた。凝固可能なタンパクは抽出後67%であり、Gly/NaCl沈降後は88%までに増加した。収量は高く、1.67gのフィブリノゲンが血漿のキログラム当たりに抽出された。【0111】抽出2新鮮な画分1ペースト(6.02g)を、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.4M NaCl、60IU/mL ヘパリン、pH7.3を含む50.17gのバッファーに抽出した。可溶化画分1ペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表17)。【0112】表17特徴決定一覧【表17】【0113】60IU/mL ヘパリンを含有するバッファーを用いて抽出した画分1ペーストからの処理サンプルの特徴決定は、全タンパクおよび凝固可能タンパク、並びにフィブリノゲン収量に関して、元の抽出バッファーと非常に類似した結果を示した。【0114】抽出3新鮮な画分1ペースト(6.03g)を、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.4M NaCl、20IU/mL ヘパリン、1IU/mL ATIII、pH7.3を含む50.25gのバッファーに抽出した。可溶化画分1ペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表18)。【0115】表18特徴決定一覧【表18】【0116】20IU/mL ヘパリンおよびATIIIを含有するバッファーに抽出した画分1ペーストからの処理サンプルの特徴決定は、元の抽出バッファーを用いて得られたものと非常に類似した結果を示した。収量は低く、血漿のキログラム当たり1gのフィブリノゲンが抽出された。【0117】抽出4新鮮な画分1ペースト(6.01g)を、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.4M NaCl、60IU/mL ヘパリン、1IU/mL ATIII、pH7.3を含む50.09gのバッファーに抽出した。可溶化画分1ペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaClバッファーを用いて沈降させた。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表19)。【0118】表19特徴決定一覧【表19】【0119】再び、可溶化画分1ペーストからGly/NaCl沈降物までの全タンパクおよび凝固可能タンパクの特徴決定の結果は一致した。Gly/NaCl沈降段階での顕著な損失に注目すべきである。しかしながら、先の結果に基づけば、ヘパリンとATIIIの存在は、この工程での損失に寄与しないと考えられる。【0120】37℃での安定性新鮮ペーストからの、20IU/mLまたは60IU/mLのヘパリンを含み、かつATIIIを含む(+)および含まない(−)バッファーに抽出した、可溶化画分1ペースト、Al(OH)3吸着、およびGly/NaCl沈降サンプルの安定性を以下の表20に記載した。【0121】表20フィブリノゲンの安定性【表20】【0122】抽出バッファーにおけるATIIIの存在は、37℃において、サンプルの安定性を増大するように見えた。60IU/mLのヘパリンの存在は、この安定性を、250mMのεACAを添加した後に得られるレベルにまでさらに増大させるように見えた。【0123】凍結/解凍/可溶化GASFPの分析凍結Gly/NaCl沈降物を37℃で解凍し、30℃でバッファーD+100mM εACAを用いて可溶化した。この沈降物を、30分以内に可溶化した。次いで、サンプルを、以下の表21において全タンパクおよび凝固可能なタンパクについてアッセイし、および37℃での安定性についてアッセイした。【0124】表21解凍および可溶化Gly/NaCl沈降物【表21】【0125】タンパク特徴決定は、沈降物の凍結が、可溶化Gly/NaCl沈降物における収量または凝固可能なタンパクのレベルに影響しないことを示した。抽出4のGly/NaCl沈降からの収量は低いが、これは、非凍結GASFPに観察された低い収量と関連するものであった。解凍した可溶化Gly/NaCl沈降物の安定性分析は、抽出1からのフィブリノゲンが少なくとも36時間(最終時点)安定であり、抽出2が少なくとも72時間(最終時点)安定であり、抽出3が少なくとも72時間(最終時点)安定であり、そして抽出4が96時間安定であることを示した。この結果は、非凍結Gly/NaCl沈降物安定性の結果と一致する。【0126】1.2.7 濃度調査濃度調査11.5g、3g、4.5g、6g、7.5g、および9gの新鮮な画分1ペーストを、0.8M NaClを含有する抽出バッファー50gに可溶化した。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表22)。【0127】表22可溶化画分1ペーストの特徴決定一覧【表22】【0128】画分1ペーストとバッファーとの比率に関わらず、抽出した凝固可能タンパクのレベルは類似していた(図1参照)。しかしながら、血漿のキログラム当たりに抽出されたフィブリノゲンの収量は、一致しなかった(図2参照)。この実験における最大収量は、ペースト:バッファー比が1:11.1の場合に得られた。2時間の抽出後には、1.5g、3gおよび4.5gの画分1ペーストの抽出物が完全に可溶化されたが、6g、7.5gおよび9gの画分1ペーストの抽出物は可溶化されなかったことに注意すべきである。これは、50mLバッファーにおける4.5gの画分1ペースト(1:11.1)が、完全に抽出される場合に、最大レベルのフィブリノゲンが抽出されることを示唆し得る。ペーストと抽出バッファーとの比率が増すと、存在する全てのフィブリノゲンが抽出されるわけではない。あるいは、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量の差異は、出発物質の不均一性によるものかもしれない。【0129】濃度調査24.5g、9g、13.5g、18g、22.5gおよび27gを、0.8M NaCl、60IU/mL ヘパリンを含有する150mLの抽出バッファーに、37℃で90分間可溶化した。全てのサンプルを、全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表23)。【0130】表23可溶化画分1ペースト#2の特徴決定一覧【表23】【0131】この実験では、90分の抽出時間の後に、全ての画分1ペーストサンプルが、完全に可溶化されたことに注意すべきである。画分1ペーストとバッファーとの比率に関わらず、抽出した凝固可能タンパクのレベルは類似していた(表23参照)。血漿のキログラム当たりに抽出されたフィブリノゲンの収量も、ペーストとバッファーとの比率の範囲にわたって変化しなかった(図3)。これは、先の実験の一致した結果(図2)が、ヘパリンペーストの不均一な性質によるものであることを示唆する。さらに、このデータは、より高いペースト:バッファー比を最初の抽出に用いることができ、これはより少ない可溶化画分1ペースト量をもたらすことを示唆している。【0132】1.2.8 抽出温度の調査新鮮な画分1ペースト(18g)を、150mLのバッファー(20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、pH7.3)に、1g:8.33gバッファーの比率で、2時間、室温および37℃で抽出した。抽出の間、サンプルを、30分、60分、90分、および120分の時点で得た。可溶化ペーストを遠心し、別のサンプルを得た(125分)。全てのサンプルを全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表24)。【0133】表24可溶化画分1ペーストの特徴決定一覧【表24】【0134】RTおよび37℃で抽出した全タンパクおよび凝固可能タンパクは経時的に変化しなかった(図4参照)。しかしながら、収量の算出は、37℃で抽出した画分1ペーストから抽出されたフィブリノゲンレベルが、室温であらゆる時点で抽出されたものよりも高いことを示した。また、画分1ペーストは、室温で2時間抽出した後では完全には可溶化されなかったが、37℃で2時間抽出した後には完全に可溶化されていたことにも注意すべきである(図5参照)。【0135】1.2.9 製造規模の抽出抽出1新鮮な画分1ペースト(20.0kg)を、37℃で、90分間、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、60IU/mL ヘパリン、pH7.3のバッファーに、1gペースト:8.33gバッファーの比率で抽出した。可溶化画分1ペーストをAl(OH)3で処理し、Gly/NaCl沈降を行った。この沈降物を二つに分け、半分の沈降物を100mMのεACAを含有するバッファーDに可溶化し、他の半分を−80℃で凍結させた。この可溶化したGly/NaCl沈降物の半分を、次いでSDで処理し、MacroPrepカラムに添加した。この溶出物を回収し、サンプル化し、−80℃で凍結させた。他の半分をSDで処理し、湿熱処理し、MacroPrepカラムに添加した。溶出物を回収し、サンプル化し、−80℃で凍結させた。この凍結させたGly/NaClペレットを解凍し、可溶化し(FTR)、全タンパクおよび凝固可能タンパク用のサンプルとした。全てのサンプルを全タンパクおよび凝固可能タンパクについてアッセイし、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を算出した(表25)。【0136】表25特徴決定一覧【表25】【0137】製造規模で抽出された画分1ペーストの特徴決定は、小さい実験規模で以前に抽出されたものと非常に類似した結果を示した。約62%の凝固可能なタンパクが、この段階で、血漿のキログラム当たり1.78gのフィブリノゲンの収量で抽出された。Gly/NaCl沈降後、凝固可能なタンパクは、予想通り85%より多く増大した。(解凍および可溶化後の凍結Gly/NaCl沈降物の分析は、全タンパク、凝固可能タンパクまたは血漿のkg当たりのフィブリノゲンの収量に全く損失を示さなかった。)カラムを溶出した物質も、凝固可能タンパクと収量において高かった。この溶出物のプラスミノゲンレベルは、0.66μg/mLで非常に低く、これはこの工程を経てプラスミノゲンレベルの160倍の低減に匹敵する。湿熱処理し、イオン交換カラムに添加した可溶化Gly/NaCl沈降物は、湿熱処理の前後で凝固可能タンパクにおいて高かった。フィブリノゲンの損失は、湿熱処理工程で全く見られなかった。湿熱処理した物質は、イオン交換カラムからの溶出後、凝固可能タンパクにおいて高かったが、僅かに30%だけのフィブリノゲンしか回収されなかった。プラスミノゲンレベルも、0.42μg/mLで低かった。GASFPのイオン交換クロマトグラフィーおよび湿熱処理したGASFPの結果は、産物からプラスミノゲンを除去するのに有効に作用していることを示している。【0138】SDS−PAGE分析全てのサンプルが、還元条件下で45から66kDaの間の主な3つのバンドにより見られるようなフィブリノゲンに富んでいた。37℃での安定性サンプルの安定性は、先の知見と類似していた(安定性ゲルに関する補足を参照)。可溶化画分1ペーストは約15時間安定であった。このサンプルは37℃で39時間以前に凝固した。Al(OH)3吸着後、フィブリノゲン分子は48時間安定であった、そしてGly/NaCl沈降後は>70時間安定であった。イオン交換カラムから溶出後、湿熱処理および非湿熱処理のフィブリノゲンは、少なくとも113時間安定であった。【0139】抽出2新鮮な画分1ペースト(30.0kg)を、37℃で、90分間、20mM クエン酸Na、5mM εACA、0.8M NaCl、60IU/mL ヘパリン、pH7.3のバッファーに、1gペースト:8.33gバッファーの比率で抽出した。全タンパクおよび凝固可能タンパクを調べ、血漿のキログラム当たりの収量を以下の表26に算出した。【0140】表26可溶化画分1ペーストの特徴決定一覧【表26】【0141】この実験で抽出した画分1ペーストは、上記“濃度調査2”と題した箇所で用いたものと同じバッチのものである。小規模では、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの平均収量は1.16であった。この実験規模の1000倍以上の規模では、収量は1.49g/kg血漿であることが示された。これはさらに、画分1ペーストの不均一性の結果として、製造規模で期待される収量を象徴しないことを示唆する。これら二つの製造規模の抽出の結果は、血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの予期される収量が1.5−1.8g/kgであることを示す。【0142】1.2.10 フィブリノゲン精製のための出発物質としての画分1ペーストおよびヘパリンペーストの比較この報告で説明した実験から得られたデータを、以下の表27にまとめる。【0143】表2750mLのバッファーに対して6gのペーストの比率で抽出した新鮮な画分1ペーストおよびヘパリンペーストからの収量の比較【表27】【0144】画分1ペーストとヘパリンペーストの比較は、血漿のkg当たりに生成されたフィブリノゲンの収量に顕著な増大を示した。安定性に関する画分1ペーストとヘパリンペーストの比較は、両方の処理を介してフィブリノゲンの安定性が増すことを示した。最終的なフィブリノゲン濃度は、出発物質に関わりなく同様に安定であった。【0145】1.3 論評フィブリノゲンを、小規模で画分1ペーストから最初に抽出した。ATIIIとヘパリンをバッファーに加える効果を評価し、かつ、抽出処理の温度の影響を評価するために実験した。結果は、抽出バッファーにおけるヘパリンの存在が、処理のこの段階およびその後の段階でフィブリノゲン分子の安定性を増加することを示した。同じ安定性は、可溶化Gly/NaCl段階で、少なくとも125mMのεACAを添加することによっても得られた。37℃で抽出を行うことにより、フィブリノゲンの抽出率、および血漿のキログラム当たりのフィブリノゲンの収量を増加することが示された。かくして、画分1ペーストについて推奨される抽出条件は、20mM クエン酸三ナトリウム(Tri-sodium citrate)、0.8M NaCl、5mM εACA、60IU/mL ヘパリン、pH7.3、37℃で90分間の抽出である。【0146】製造規模では、画分1ペーストの抽出は、研究規模の750倍より大きな規模で行った。これらの大規模な実験では、画分1ペーストは、最適化バッファー(ヘパリンを含有し、37℃で実施)で抽出され、結果的な収量は1.78g/kg血漿および1.49g/kg血漿であった。同じバッチの画分1ペーストを、同一の抽出条件下で実験規模および製造規模の両方で抽出したところ、得られた収量はそれぞれ、1.15g/kgおよび1.49g/kgであった。可溶化画分1ペースト段階では血漿のキログラム当たり1.5gのフィブリノゲンという予想収量であったが、画分1ペーストからの収量は、ヘパリンペーストから抽出されたもの(0.42g/kg血漿)よりも顕著に高かった。種々の画分1ペースト:抽出バッファー比は、4.5g:50mLバッファー(1:11.1の比)が最も高い収量/kg血漿を得るのに最適であるということを、最初の小規模の実験で示唆した。しかしながら、この規模の三倍で、改善された抽出バッファーを用いて行ったその後の実験では、最も高いペースト:バッファー比(1:5.5)であっても、全てのフィブリノゲンが抽出された。この結果は、ヘパリンペースト(1:8.33)と比較して、より多くの量の画分1ペーストが、抽出バッファーに可溶化されうることを示唆しており、これはより小さい全抽出量とする。【0147】可溶化画分1ペーストのタンパク特徴決定は、可溶化ヘパリンペーストとの類似性と差異を示した。各出発物質から得られた凝固可能なタンパクの量は、約65%で類似している。プラスミノゲンおよび第XIII因子のレベルは、ヘパリンペーストから抽出されたものよりも可溶化画分1ペーストでより高かったが、フィブロネクチンのレベルは顕著に低かった。可溶化画分1ペーストがヘパリンペースト法を用いてさらに処理される場合には、この物質は、後の精製工程で、ヘパリンペースト物質と同様に挙動した。アルヒドロゲル吸着は、第II因子を検出不能なレベルにまで低減し、これは37℃でのフィブリノゲンの安定性の増大に関連する。Gly/NaCl沈降は、80%より高い凝固可能タンパクまでにフィブリノゲンの精製をもたらし、かつフィブロネクチンの減少を無視できるレベルとした。イオン交換クロマトグラフィーは、溶出物中においてプラスミノゲンを無視できるレベルにまで低減し、かつ、フィブリノゲンの安定性を、ヘパリンペースト溶出物の安定性と同等な約120時間までに増大させることが示された。画分1ペーストは別の産生処理の副生成物であるので、フィブリノゲン製造処理を開始する前の段階で産物を保持することが有利である。ヘパリンペースト、第VIII因子濃縮物の副生成物は、かつて抽出された凝固可能なタンパクの結果的なレベルに影響を与えることなく、−80℃で13ヶ月までの間凍結貯蔵することができる。【0148】出発物質としての凍結画分1ペーストの安定性は有望である。イオン交換カラムに関して処理した後では、産物は優れた安定性を示した(>208時間)。後の実験では(セクション4.5)、凍結画分1ペーストを、ATIIIの存在下および不在下で抽出した。いずれのバッファーにおいても、凍結画分1ペーストの抽出後には操作上の問題はなく、SFPとASFPの安定性は、先のまたは後の実験について観察されたものよりもはるかに高かった。また、可溶化の前にGly/NaCl沈降段階でこの処理を用いる可能性を評価するために実験を行った。−80℃で凍結され、その後解凍され、可溶化されたGly/NaClペレットの結果は、この実施時点が、凝固可能タンパクに関する品質、安定性、または収量を落とさないことを示した。ここに示した結果は、画分Iペーストがフィブリノゲンの精製に適した出発物質であり、最終産物の収量をヘパリンペーストと比較して3倍に増加する可能性を有することを示す。【0149】実施例2:イオン交換クロマトグラフィーを用いたプラスミノゲンからのフィブリノゲンの分離2.1 物質と方法2.1.1 サンプル調製Gly/NaCl沈降物を、Winklemanら,1989に記載された方法の修正を用いて寒冷沈降物から得た。最初に、凍結した可溶化Gly/NaCl沈降物(−80℃)をウォーターバスで30℃で解凍した。40gの可溶化Gly/NaCl沈降物に、2.19gのストック界面活性剤溶液と132mgのTNBPとを加えた。このサンプルを、伝導度が10.5mS/cm以下となるまで、サンプル希釈バッファー(25mM Tris、pH8.0)を用いて希釈した。最後に、このサンプルを、0.8μmの膜フィルターを通して濾過した。各サンプルを、それぞれを流し始める直前に調製した。サンプルを希釈しないと、多くの場合、大量の未結合ピークをもたらし、すなわち一部のフィブリノゲンが未結合物中に溶出されてしまう。【0150】2.1.2 MacroPrep HQ精製以下のクロマトグラフィー条件を用いて、可溶化gly/NaClペーストを精製した:ベッド高さ−約20cmカラム量−約100ml流速−10ml/分(〜113cm/時間)検出−UV@280nmクロマトグラフィー方法平衡化:≧1.5CVのMQバッファーおよび伝導度(カラム後)が90−110%の場合調製したバッファー充填サンプル洗浄:6CVのMQバッファー溶出:MEバッファー−バッファーD&200mM NaCl、pH7.0再生:2CVの1M NaCl【0151】2.2 結果2.2.1 洗浄バッファー(MQ-25mM トリス、100mM NaCl、pH8.0)を用いた精製洗浄(MQ)バッファーとして、25mMトリス、100mM NaCl、pH8.0を用いて二重に流した。サンプルをMacroPrepカラムに充填し、回収した画分を分析した。結果は表28に記載されている。【0152】表28MQ-25mM トリス、100mM NaCl、pH8.0【表28】【0153】フィブリノゲンの平均回収率は82%であり、プラスミノゲンは10%であった。これらの数値は、この方法に対するさらなる修正の成功を評価するベンチマークとして用いた。【0154】2.2.2 サンプルを充填するためのEACAの添加大規模製造では、全てのサンプルを、一回のイオン交換で処理できる訳ではなく、かくして、一部の希釈されたサンプルが室温で放置され、その他のサンプルが精製される。この間にサンプルが破壊されることが見出された。100mMのεアミノカプロン酸、EACA(未希釈の可溶化Gly/NaClペーストの量に対して)を、サンプルに添加することにより、0−15時間から15−23時間へとサンプルの安定性が増加する。クロマトグラフィープロフィールに顕著な変化はなく、フィブリノゲンの回収率は93%であった。【0155】2.2.3 洗浄(MQ)バッファーへのEACAおよびリシンの添加以下の洗浄バッファーを精製プロトコルに用いた:(i)50mM トリス、20mM リシン、100mM NaCl、pH8.0および(ii)50mM トリス、20mM EACA、100mM NaCl、pH8.0。サンプルを、Macroprepカラムを用いて精製し、回収した画分を比較した。結果は、以下の表29に示されている。【0156】表29MQバッファーへのEACAおよびLysの添加【表29】【0157】20mM EACAと25mM トリスのMQバッファーへの添加により、回収された画分の安定性は71−91時間に増加し、凝固可能タンパクの回収率は71.3%であった。より長い安定性は、おそらくは、プラスミノゲンの除去によるものであろう。クロマトグラムの未結合領域は、低いUV吸収を示した。平均の凝固可能タンパク回収率は、20mMのリシンおよび25mMのトリスをMQバッファーに加えた場合に、51.3%に減少した。クロマトグラフィープロフィールでは、洗浄工程中の吸収は、MQを用いて得られるものよりも大きかった。かくして、MQへのリシンとトリスの添加は、フィブリノゲンを未結合ピークに溶出させると仮定できる。回収された画分の安定性は、48−71時間の間であった。これらの結果は、EACAの添加およびMQにおけるトリス濃度の増加が、凝固可能タンパクの回収率とカラム溶出物の安定性を増加したことを示す。【0158】2.2.4 MQバッファー組成の変更この実験の目的は、MQバッファーへのリシンおよびEACAの添加の有効性を調べ、かつ、サンプルへのEACAの添加の効果を評価することである。表30は、画分1の結果をまとめたものである。【0159】表30洗浄バッファー組成の変更の結果【表30】【0160】これらの結果は、EACAをサンプルに添加せず、かつ、MQ(25mM トリス、100mM NaCl、pH8.0)を洗浄バッファーとして用いた場合に、HPPC04およびHPPC06に関する画分1の平均タンパク回収率がそれぞれ77%および78%であったことを示している。安定性は、HPPC04について約24時間であり、HPPC06について<47時間であった。【0161】25mM トリスをMQバッファーに添加した場合、タンパク回収率はMQを用いて得られたものと類似していたが、回収した画分の安定性は66時間まで増加した。MQバッファー(50mM トリス、20mM リシン、100mM NaCl、pH8.0)に対するリシンの添加では、HPPC06に関する画分1の平均タンパク回収率は48%であり、安定性は<47時間であった。プラスミノゲン回収率は、10.2%から0.5%未満に劇的に低下した。【0162】Macroprepカラムに充填する前にサンプルにEACAを添加し、かつ、洗浄バッファーがリシンを含むMQである場合、タンパクおよびプラスミノゲンの回収率は、EACAをサンプルに添加しない場合に得られたものとほぼ同じであった。しかしながら、溶出物の安定性は、HPPC06について、<47時間から68−93時間に増加し、HPPC04については41時間に増加した。EACAをサンプルに加え、洗浄バッファーが50mM トリス、20mM EACA、100mM NaCl、pH8.0である場合には、タンパク回収率は、MQを用いた場合と類似していた。すなわち、HPPC04では68%であり、HPPC06では79%であった。顕著な差異は、回収された画分の安定性であった。安定性は、MQバッファーを用いた場合の約24時間と比較して113時間多かった。これらの結果は、50mM トリス、20mM EACA、100mM NaCl、pH8.0を含む洗浄バッファーが、良好な結果を与えたことを示す。特に、これらの回収された画分は、高いタンパク回収率、低いプラスミノゲン回収率、および長い安定性を有していた。【0163】2.2.5 個々におよびプールしたMacroPrep画分の安定性予め、4つの画分をMacroPrep溶出物から回収した。回収率を増加させるために画分をプールできるか否かを調べるべく、以下の実験を設計した。回収した画分を、個別に、およびまるで一つの画分が回収されたかのような比率でプールして、安定性について調べた。精製方法は、洗浄バッファーとして、50mM Tris、20mM EACA、100mM NaClの使用を含み、そして、EACAをMacroPrepカラムに充填する前にサンプルに加えた。結果を表31に示す。一般に、表31は、最初の画分が後の画分よりも安定であることを示している。これは、恐らくは、後者の画分が、画分1よりも顕著に低く濃縮されているからであり、画分の組成によるものではない。これは、さらに、カラムから溶出されるのと同じ比率で画分をプーリングすることによって調べられた。4つの画分がプールされた場合、安定性は画分1と同じであった。全部で4つの画分をプーリングすることにより、タンパクの回収率は、約25%増加した。【0164】表31−画分プーリングの結果【表31】サンプルF17 11a&F17 11bは可溶化Gly/NaCl沈降物バッチNo.HPPC04を使用し、F19 11a&F19 11bは可溶化Gly/NaCl沈降物バッチNo.HPPC06を使用した。【0165】2.2.6 溶出バッファーの変更上記2.2.5に記載された結果は、MacroPrepカラムからの画分溶出をプールできることを示している。結合画分のプロフィールは、テーリングを伴う大きなピークを示し、次いで、カラムを1M NaClで洗浄した場合に第二のピークを示した。第二のピークは、1M NaClの高いイオン強度によるテーリングの圧縮である。単一のピークとしてフィブリノゲンを溶出するために、溶出バッファーのイオン強度を増加することが決められた。それゆえ、MEバッファーにおけるNaClの濃度を、300mMから500mM、750mMおよび1Mまで増加した。結果を表32に示す。【0166】表32MEバッファーにおけるNaCl濃度の増加【表32】【0167】溶出バッファーMEへの余分の200mM NaClの添加は、ほとんどテーリングを伴わずに、単一のピークにフィブリノゲンを溶出するのに十分であった。回収された画分の特徴決定の結果には顕著な差異がなかった。750mMおよび1M NaClを含むMEバッファーも作用するが、精製処理に以後の工程を必要とするため500mMを含むMEを用いるのが好ましい。【0168】2.2.7 カラム溶出物の安定性および回収率に対するサンプル中のEACAの効果この実験の目的は、100または200mMのEACAを含むサンプル(可溶化Gly/NaCl沈降物)からMacroPrepカラムを溶出した結合画分を比較することである。結果は、タンパク回収率(93.7%、95.4%)、凝固可能タンパク(96.0%、99.2%)、プラスミノゲン(両方とも<0.2μg/ml)、および安定性の結果(両方とも>1日)が、両方のサンプルから回収された画分について同等であることを示した。言い換えると、同様の結果が、100または200mMεACAを含む可溶化Gly/NaClサンプルについて得られた。上記イオン交換クロマトグラフィー法を含む好ましいフィブリノゲン精製処理を図6に示した。【0169】当業者であれば、広く記載された本発明の精神または範囲から離れることなく、特定の実施態様に示された発明に対して、多くの変更および/または修正をなすことができることを理解するであろう。それゆえ、本発明の実施態様は、例示的であって制限的でないと考えるべきである。【0170】「参考文献」【図面の簡単な説明】【図1】 ペースト-バッファー比研究(I)で得られた凝固可能なフィブリノゲンの収量【図2】 ペースト-バッファー比研究(1)で得られた全フィブリノゲンの収量【図3】 ペースト-バッファー比研究(2)で得られた全フィブリノゲンの収量【図4】 画分Iペーストの抽出中に経時的に得られた凝固可能なフィブリノゲンの収量【図5】 画分Iペーストからのフィブリノゲンの抽出に対する温度の効果【図6】 本発明の方法のイオン交換クロマトグラフィーを含む好ましいフィブリノゲン精製方法を図示するフローチャート フィブリノゲン含有溶液からフィブリノゲンを精製する方法であって、以下の工程:(a)前記溶液をイオン交換マトリックスに、フィブリノゲンがマトリックスに結合するような条件下で適用する工程;(b)イオン交換マトリックスを、少なくとも一つのω-アミノ酸を含むバッファー溶液で洗浄する工程;および(c)マトリックスからフィブリノゲンを溶出する工程を含む方法。 (d)溶出物からフィブリノゲンを回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。 イオン交換カラムに適用する前に、フィブリノゲン含有溶液に少なくとも1つのω−アミノ酸を添加する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。 ω−アミノ酸が、カルボン酸とω−アミノ基との間の炭素鎖に少なくとも4つの炭素原子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。 前記鎖が直鎖または環状である、請求項4に記載の方法。 ω−アミノ酸が、4-アミノ酪酸、5-アミノペントイン酸、6-アミノヘキサン酸(ε-アミノカプロン酸(EACA))、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、およびアルギニンから選択される直鎖ω−アミノ酸である、請求項5に記載の方法。 ω−アミノ酸が、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(トラネザミン酸)およびパラ-アミノメチル安息香酸から選択される環状ω−アミノ酸である、請求項5に記載の方法。 ω-アミノ酸がε-アミノカプロン酸(EACA)である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。 ω-アミノ酸が、5−500mMの濃度で抽出バッファー又はフィブリノゲン含有溶液中に存在する、請求項3ないし8のいずれか一項に記載の方法。 ω-アミノ酸が、50−500mMの濃度でフィブリノゲン含有溶液中に存在する、請求項9記載の方法。 ω-アミノ酸が、100mMの濃度でフィブリノゲン含有溶液中に存在する、請求項10記載の方法。 フィブリノゲン含有溶液が、イオン交換マトリックスに適用する前に、伝導度が10.5mS/cm以下となるように希釈される、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の方法。 イオン交換マトリックスを洗浄するために用いられるバッファーが、(i)50mMの濃度のトリス、(ii)20mMの濃度のω-アミノ酸、および90mMの濃度のNaClを含む、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の方法。 イオン交換マトリックスを洗浄するために用いられるバッファーが、8.0のpHを有する、請求項13記載の方法。 イオン交換マトリックスを洗浄するために用いられるバッファーが、11.1mS/cmの伝導度を有する、請求項12または13記載の方法。 フィブリノゲンを、10mMのトリス、10mMのクエン酸塩、45mMのスクロース;および200mMから1.0Mの間の濃度のNaClを含む溶出バッファーにおいてマトリックスから溶出させる、請求項1ないし15のいずれか一項に記載の方法。 NaClが、400−500mMの濃度である、請求項16記載の方法。 溶出バッファーが7.0のpHを有する、請求項16または17記載の方法。