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タイトル:特許公報(B2)_多孔性膜処理によるウイルスの除去された血漿蛋白組成物の製造方法、ウイルスの除去された血漿蛋白組成物およびウイルス除去方法
出願番号:2001546658
年次:2012
IPC分類:A61K 35/16,A61J 3/00,A61M 1/34


特許情報キャッシュ

高橋 剛 古島 浩二 森田 将典 辻川 宗男 浦山 健 濱戸 宣昭 JP 5080713 特許公報(B2) 20120907 2001546658 20001220 多孔性膜処理によるウイルスの除去された血漿蛋白組成物の製造方法、ウイルスの除去された血漿蛋白組成物およびウイルス除去方法 田辺三菱製薬株式会社 000002956 高島 一 100080791 高橋 剛 古島 浩二 森田 将典 辻川 宗男 浦山 健 濱戸 宣昭 JP 1999360950 19991220 20121121 A61K 35/16 20060101AFI20121101BHJP A61J 3/00 20060101ALI20121101BHJP A61M 1/34 20060101ALI20121101BHJP JPA61K35/16A61J3/00 300ZA61M1/34 A61K 35/14-35/18 国際公開第98/030230(WO,A1) 特開平01−192368(JP,A) 特開平01−254205(JP,A) 特開昭61−087626(JP,A) 特表平10−506607(JP,A) 13 JP2000009057 20001220 WO2001045719 20010628 12 20070920 田村 聖子 技術分野本発明は、血漿蛋白組成物中のウイルス、特に感染性ウイルスが除去された血漿蛋白組成物の製造法、当該方法により得られるウイルス、特に感染性ウイルスを実質的に含まない血漿蛋白組成物、非エンベロープウイルスとりわけ、パルボウイルスおよび/またはA型肝炎ウイルスを実質的に含まないフィブリノゲン組成物および血漿蛋白組成物中のウイルスを除去する方法に関する。背景技術蛋白製剤、特にヒト血漿を原料とする血漿分画製剤には、ヒトに感染し得る病原因子が混入しているおそれがあり、特にウイルス感染に対する問題は重要である。これまで輸血後にヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)などのウイルスの感染事故が発生している。このような事故は過去のものではなく、数々の技術の導入によって事故の発生率は指数的な数値をもって劇的に少なくなっているものの、現在もその発生を完全に否定することはできない。これらのウイルス伝播を防ぐために、夾雑の可能性のあるウイルスを不活化または除去する方法が種々知られている。例えば、蛋白含有組成物を液状で加熱する方法(特開昭55−145615号公報、特開昭56−139422号公報、特開昭56−106594号公報など)、乾燥状態で加熱する方法(特表昭58−500548号公報、特開昭58−213721号公報など)、トリアルキルホスフェートおよび/または界面活性剤などと接触させる方法(特開昭60−51116号公報など)、紫外線照射による方法(特開平7−196531号公報など)、ウイルス除去膜による方法(特開平9−100239号公報など)が知られている。しかし、加熱処理では熱に強いウイルスが残存し、界面活性剤処理では非エンベロープウイルスが残存し、紫外線照射の単独処理では蛋白が失活する可能性があるなど、ウイルスを不活化又は除去する方法において単一の処理では、蛋白の活性を失うことなく、かつ、完全に夾雑ウイルスを不活化又は除去することは困難であった。そこで、現在、夾雑ウイルスを不活化又は除去する上記方法を適当に組み合わせて使用しているのが現状である。一方、フィブリノゲンはアルコール血漿分画製造過程において最初に沈殿してくる分画から得られる蛋白質であるために、万一血漿にウイルスが混入した場合にその汚染の影響を受けやすい蛋白質である。特に現在話題の多いウイルスとしてパルボウイルスB19(以下、B19という)があるが、このウイルスはエンベロープが無く、熱に強く、その単粒子径は18〜25nm程度と非常に小さいために、血漿分画製剤の分野で特に、その不活化/除去対策に注力され研究が進められているものである。ウイルス除去膜による方法では、当然に、孔径に比しより大きな分子径のウイルスを濾過により除去することができるが、孔径より小さなウイルスを除去することはできず、また、あまり孔径の小さな除去膜を使用するとサンプルが目詰まりするなど濾過自体が困難であったり、また、サンプル量に比例して膜処理時の流速が低下し、サンプル処理量の制限及び処理時間の増大といった多くの問題を有していた。特に、フィブリノゲンの精製工程においてその分子量等の関係から、現在市販されている多孔性膜の膜孔径が35nm未満のものを使用した場合には、上記の目詰まり、サンプル処理量の制限及び処理時間の増大といった問題が実際に生じており、膜孔径が35nm以上の多孔径膜の使用しかできないという問題があった。しかし、パルボウイルス(B19)の単粒子径は上述の通り18〜25nm程度であるので、現在市販されている膜孔径35nmや75nmのプラノバ35N、プラノバ75N(いずれも商品名、旭化成社製)単独、さらにはこれらのウイルス除去膜を多段に用いる方法においても除去できないという問題があった。したがって、今日、簡便な処理方法により少しでもウイルス感染性の少ない、安全な蛋白製剤を提供する方法が望まれていた。発明の開示本発明者らは、これらの課題を解決するために鋭意研究した結果、多孔性膜処理により、蛋白の活性を殆ど失うことなく、効率よく夾雑ウイルスを除去することができることを見出して本発明を完成するに至った。また、本発明者らは多孔性膜処理により非エンベロープウイルス、とりわけパルボウイルスおよび/またはA型肝炎ウイルスを実質的に含まないフィブリノゲン組成物を得ることができることを見出して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の通りのものである。(1) 血漿蛋白組成物をウイルス単粒子径より孔径の大きな多孔性膜処理に付す工程を有することを特徴とするウイルスの除去された血漿蛋白組成物の製造法。(2) 多孔性膜が多孔性中空糸膜である前記1記載の製造法。(3) 多孔性膜処理前に血漿蛋白組成物を沈殿法分画処理に付すことを特徴とする前記1または2記載の製造法。(4) 多孔性膜処理に付す前に、血漿蛋白組成物を沈殿法分画処理に付し、得られた沈殿を水抽出する工程を有することを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の製造法。(5) 血漿蛋白組成物がフィブロネクチン、フィブリノゲン、凝固V因子、凝固VIII因子、フォンビルブランド因子、凝固XIII因子、レチノール結合蛋白質、αグロブリン、βグロブリンおよびγグロブリンから選ばれる少なくとも一種の蛋白質を含有するものである前記1〜4のいずれかに記載の製造法。(6) 血漿蛋白組成物が少なくともフィブリノゲンを含有するものである前記5に記載の製造法。(7) ウイルスが非エンベロープウイルスである前記1〜6のいずれかに記載の製造法。(8) 非エンベロープウイルスがパルボウイルスおよび/またはA型肝炎ウイルスである前記7記載の製造法。(9) ウイルス単粒子径より孔径の大きな多孔性膜処理に付すことにより当該ウイルスが実質的に除去された血漿蛋白組成物。(10) 多孔性膜が多孔性中空糸膜である前記9記載の血漿蛋白組成物。(11) 多孔性膜処理前に血漿蛋白組成物を沈殿法分画処理に付することを特徴とする前記9または10に記載の血漿蛋白組成物。(12) 多孔性膜処理前に血漿蛋白組成物を沈殿法にて分画処理し、得られた沈殿を水抽出することを特徴とする前記9〜11のいずれかに記載の血漿蛋白組成物。(13) 血漿蛋白組成物がフィブロネクチン、フィブリノゲン、凝固V因子、凝固VIII因子、フォンビルブランド因子、凝固XIII因子、レチノール結合蛋白質、αグロブリン、βグロブリンおよびγグロブリンから選ばれる少なくとも1種の蛋白質を含有するものである前記9〜12のいずれかに記載の血漿蛋白組成物。(14) 血漿蛋白組成物が少なくともフィブリノゲンを含有するものである前記13に記載の血漿蛋白組成物。(15) ウイルスが非エンベロープウイルスである前記9〜14のいずれかに記載の血漿蛋白組成物。(16) 非エンベロープウイルスがパルボウイルスおよび/またはA型肝炎ウイルスである前記15に記載の血漿蛋白組成物。(17) パルボウイルスを実質的に含まないフィブリノゲン組成物。(18) 血漿蛋白組成物をウイルス単粒子径より孔径の大きな多孔性膜処理に付すことを特徴とする血漿蛋白組成物中のウイルスの除去方法。(19) 多孔性膜が多孔性中空糸膜である前記18記載の方法。(20) 多孔性膜処理前に血漿蛋白組成物を沈殿法分画処理に付すことを特徴とする前記18または19記載の方法。(21) 多孔性膜処理に付す前に、血漿蛋白組成物を沈殿法にて分画処理し、得られた沈殿を水抽出する工程を有することを特徴とする前記18〜20のいずれかに記載の方法。本発明において、血漿蛋白組成物における血漿蛋白は特に限定されるものではなく、血液中に含まれるものであれば如何なるものも含まれる。たとえば、本願発明の方法により特に所期の効果を達成することができる血漿蛋白としては、分子量が大きく、ウイルスの混入のおそれが高い血漿蛋白質であって、たとえば、フィブロネクチン、フィブリノゲン、凝固V因子、凝固VIII因子、フォンビルブランド因子、凝固XIII因子、レチノール結合蛋白質、αグロブリン、βグロブリンおよびγグロブリンなどが挙げられる。特に、フィブリノゲンはアルコール血漿分画製造過程において最初に沈殿してくる分画から得られる蛋白質であるために、万一血漿にウイルスが混入した場合にその汚染の影響を受けやすい蛋白質であり、本発明の簡便な方法により非エンベロープウイルスを除去できることは有用である。本発明の方法が適応される血漿蛋白組成物は、ウイルス、特に感染性ウイルスの夾雑が危惧され、多孔性膜処理に付することのできる形態のものであれば特に限定されるものではなく、通常は液状であり、例えば、血漿または組織抽出液を各種分画法により処理して得た分画からなる溶液、遺伝子組み換え宿主または組織培養により得られる培養液、市販の蛋白製剤としたものなどが挙げられる。また、その精製度は特に制限されるものではなく、任意の精製度のものが適応可能である。その精製度は一般的な方法、例えば、PEG(ポリエチレングリコール)分画、アルコール分画、グリシン分画、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー等の方法を適宜選択し利用することによって精製された如何なる精製段階のものも含まれる。本発明で使用される沈殿法としては自体既知の蛋白分画法として使用される方法が含まれる。たとえば、中性塩類(これを使用する沈殿法は、いわゆる塩析法と呼ばれるもので、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、アルカリ金属塩、アンモニア、マグネシウム、ハロゲン化合物等が挙げられる)、水溶性有機溶媒(たとえば、エタノール、メタノール、エチルエーテル、アセトン等)、水溶性非イオン化高分子化合物(たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ノニルフェノールエトキシレート等)、金属イオン(硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等)、有機陽イオン(リバノール、プロタミン、その他陽イオン性界面活性剤等)、陰イオン(たとえば、ピクリン酸、三塩化酢酸、スルフォサリチル酸、過塩素酸等の低分子陰イオン、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルフォン酸、ポリリン酸塩等のポリアニオン)等を使用する沈殿法、脱塩による沈殿法(透析法、希釈法等)、グリシン沈殿法(グリシン−塩化ナトリウム沈殿法)等が挙げられる。本発明において使用される沈殿法は通常の蛋白質分画処理時に用いられると同様の方法、条件にて行なうことができる。すなわち、本発明において沈殿法に使用される各物質は分離しようとする目的蛋白質の溶解性に応じて適宜選択することが出来、例えば、当該蛋白質分子の表面電荷や親水性等を変化させ目的の蛋白質を沈殿として得ることができるもの、または不要な蛋白質を沈殿させ目的の蛋白質を上清に得ることが出来るものを使用すればよく、その沈殿処理における条件は、それぞれの蛋白質に応じて選択すればよい。したがって、水素イオン濃度またはpH、イオン強度、誘電率、温度、蛋白濃度およびその他のイオン等、沈殿法に影響を及ぼす種々の因子も目的の蛋白質に応じたものを選択することが出来る。また、それらの使用条件も蛋白質に応じて選択すればよい。特に、蛋白質がフィブリノゲンである場合、グリシン沈殿法が好ましく、更に好ましくはグリシン−塩化ナトリウム沈殿法である。またその濃度はグリシンが50g/L以上、塩化ナトリウムが10g/L以上、好ましくはグリシンが75g/L以上、塩化ナトリウム30g/L以上である。また、その上限は、グリシンが250g/L以下、好ましくは225g/L以下であり、塩化ナトリウムが175g/L以下、好ましくは150g/L以下である。上記沈殿法により分離された各蛋白質は通常の遠心処理、各種濾過工程に付すことにより必要な画分として得られる。目的蛋白質が沈殿として得られる場合にはその後の精製のため適当な溶媒で抽出、溶解して溶液とする必要があるが、溶媒には特に限定はなく、蛋白質の精製過程で通常使用される溶媒、緩衝液等が使用されるが、蛋白質がフィブリノゲンである場合、抽出、溶解には通常クエン酸緩衝液や水が使用され、特に水抽出した後通常の遠心または清澄濾過工程を経ることにより本発明の効果を高めることができる。本発明において、多孔性膜処理とは、ウイルスの夾雑が危惧される血漿蛋白を多孔性膜によって濾過することを意味する。本発明に使用される多孔性膜の素材は特に制限されず、再生セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート等の合成高分子化合物が使用されるが、好ましくは再生セルロースである。また、その形状は中空糸状、シート状等が挙げられるが、好ましくは中空糸状である。たとえば、該再生セルロースの多孔性中空糸膜はセルロース銅アンモニア溶液からミクロ相分離法[Am.Chem.Soc.,9,197−228(1985)]によって調製される。使用する多孔性膜の平均孔径は蛋白質の種類、除去しようとするウイルスの種類により異なるが、一般に1〜100nm、好ましくは10〜100nmであり、特に、フィブリノゲン等の分子量の大きな蛋白質においてパルボウイルス、HAV等を濾過除去する場合には35〜100nm、好ましくは35〜75nmの孔径である。多孔性膜が中空糸状である場合には、好ましくはモジュールの態様で使用される。たとえば、多孔性中空糸膜を多数平行に束ねてカートリッジに充填し、接着剤を用いて一本化したものが挙げられる。市販のものとしては、膜となる周壁が100層以上の多重層構造であるプラノバシリーズ(商品名、旭化成社製)、ウイルス除去膜として知られているバイアソルブシリーズ(商品名、ミリポア社製)、オメガVRシリーズ(商品名、ポール社製)、ウルチポアシリーズ(商品名、ポール社製)等を使用することができる。特に好ましくは、プラノバシリーズである。血漿蛋白組成物を多孔性膜にて処理、即ち濾過する際の温度は、4〜50℃であり、好ましくは4〜37℃である。濾過圧力は10〜100kpa、好ましくは10〜90kpaである。濾過の方法としては、溶液にひずみ速度を与えながら濾過するクロスフロー濾過法(循環式)と溶液にひずみ速度を与えずに濾過するデットエンド濾過法(非循環式)がある。好ましくは、加圧空気等によるデットエンド濾過法によって行われる。また、多孔性膜にて濾過する際に、試料にカオトロピックイオンまたはアミノ酸を添加することによって、多孔性膜処理により、蛋白の活性を殆ど失うことなく、効率よく夾雑ウイルスを除去するという本発明の効果をより一層発揮させることができる。この場合のカオトロピックイオンまたはアミノ酸の種類は特に限定されず、通常蛋白質の精製過程で使用されるものを使用することができるが、特に、塩素イオン、アルギニンなどが好ましい。また、このような濾過処理は単回又は複数回行うこともできる。複数回行なうことにより、濾過による更に優れたウイルス除去効果を得ることができる。特に、本発明は、血漿蛋白組成物をウイルス単粒子径より孔径の大きな多孔性膜を使用して処理することによって、多孔性膜の孔径より小さな単粒子径のウイルスを除去することができ、このようにして得られた血漿蛋白組成物は、実質的に当該ウイルスを含まないものとすることが可能となる。「ウイルス単粒子径より孔径の大きな多孔性膜」とは、当該ウイルスが単粒子である場合には、当該多孔性膜を通過しうる多孔性膜を意味する。したがって、本発明によれば、蛋白の活性を殆ど失うことなく、効率よく夾雑ウイルスを除去することができ、より安全な血漿蛋白製剤の原料としての血漿蛋白組成物を得ることができる。本発明の方法により除去されるウイルスの具体例として、ワクシニアウイルス、ムンプスウイルス、単純庖疹ウイルス、エコーウイルス、パルボウイルス、HIV、HAV、HBV、HCV、TTVなどが挙げられる。特に、夾雑が危惧される非エンベロープウイルスとしてパルボウイルス、HAV等が挙げられる。このようにして得られた血漿蛋白組成物はそのまま、またはさらに一般的な蛋白質の精製方法、たとえばPEG(ポリエチレングリコール)分画、アルコール分画、グリシン分画、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー等の方法により精製することによって、血漿蛋白製剤とすることができる。血漿蛋白製剤は、慣用の方法により液状製剤または乾燥製剤とされ、通常医薬として薬理的に許容される添加剤、たとえば、防腐剤、殺菌剤、キレート剤、粘稠剤、等張化剤など、または製薬上必要な成分が適宜配合されてもよい。本発明の製造法によって、実質的にウイルスの除去された血漿蛋白組成物が製造されるが、血漿蛋白組成物は本発明の方法の前後において、一般的に使用されるウイルス不活化または除去方法、たとえば、乾燥加熱、液状加熱、界面活性剤処理、紫外線照射処理、ウイルス除去膜処理などを適宜組み合わせることによって、ウイルスの不活化または除去をより完全なものとすることができる。本発明において「実質的にウイルスの除去された」とは既知のウイルス量の測定方法において検出限界以下であることを意味する。実施例以下、実験例、参考例等により本発明を説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例1正常ヒト血漿由来のコーンのFr.I画分100gを1.5Lのクエン酸緩衝液で溶解し、トリ−(n−ブチル)ホスフェート(TNBP)を0.3w/v%及びTween80を1w/v%になるように添加し、30℃にて6時間の界面活性剤処理を行なった。界面活性剤処理後の試料にモニターウイルスとしてパルボウイルスを102.7コピー/ml添加した。その後、この試料を15%グリシン−1M塩化ナトリウムによる沈殿分画処理にて、フィブリノゲンを遠心(4,000rpm、20分間)により沈殿させて回収した。次いで回収されたフィブリノゲンを1.0Lのクエン酸緩衝液に溶解し、1.0%溶液を調製した。この溶液を濾過前のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。この溶液をプラノバ75N(平均孔径72±4nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供しウイルス除去を行なった。この濾液を濾過後のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。実施例2正常ヒト血漿由来のコーンのFr.I画分100gを1.5Lのクエン酸緩衝液で溶解し、トリ−(n−ブチル)ホスフェート(TNBP)を0.3w/v%及びTween80を1w/v%になるように添加し、30℃にて6時間の界面活性剤処理を行なった。その後、この試料を15%グリシン−1M塩化ナトリウムによる沈殿分画処理に供し、フィブリノゲンを遠心(4,000rpm、20分間)により沈殿させて回収した。次いで回収されたフィブリノゲンを1.0Lのクエン酸緩衝液に溶解し、1.0%溶液を調製した。この溶液にモニターウイルスとしてパルボウイルスを105.7コピー/ml添加した。その後、この試料を15%グリシン−1M塩化ナトリウム分画に供し、フィブリノゲンを遠心(4,000rpm、20分間)により沈殿させて回収した。次いで回収されたフィブリノゲンを1.0Lのクエン酸緩衝液に溶解し、1.0%溶液を調製した。この溶液を濾過前のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。得られた溶液をプラノバ75N(平均孔径72±4nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供しウイルス除去を行なった。この濾液を濾過後のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。実施例3正常ヒト血漿由来のコーンのFr.I画分100gを1.5Lの生理食塩水で溶解し、トリ−(n−ブチル)ホスフェート(TNBP)を0.3w/v%及びTween80を1w/v%になるように添加し、30℃にて6時間の界面活性剤処理を行なった。界面活性剤処理後の試料にモニターウイルスとしてパルボウイルスを添加した。その後、この試料を15%グリシン−1M塩化ナトリウムによる沈殿分画処理にて、フィブリノゲンを遠心(4,000rpm、20分間)により沈殿させて回収した。次いで回収されたフィブリノゲンを1.0Lのクエン酸緩衝液に溶解し、1.0%溶液を調製した。この溶液を濾過前のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。また、同時にこの溶液を濾過前のサンプルとしてその蛋白質量を測定するため280nmにおける吸光度を測定した。この溶液をプラノバ75N(平均孔径72±4nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供しウイルス除去を行なった。この濾液を濾過後のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。また、同時にこの濾液の蛋白質量を280nmにおける吸光度として測定した。次に、この濾液を更にプラノバ35N(平均孔径35±2nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供しウイルス除去を行なった。この濾液を濾過後のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。また、同時にこの濾液の蛋白質量を280nmにおける吸光度として測定した。この場合、プラノバ75Nとプラノバ35Nを組み合わせた濾過によりその前後で106コピー/ml以上のウイルス除去効果を示した。実施例4正常ヒト血漿由来のコーンのFr.I画分100gを1.5Lの生理食塩水で溶解し、トリ−(n−ブチル)ホスフェート(TNBP)を0.3w/v%及びTween80を1w/v%になるように添加し、30℃にて6時間の界面活性剤処理を行なった。界面活性剤処理後の試料にモニターウイルスとしてパルボウイルスを1010.1コピー/ml添加した。その後、この試料を8%グリシン−1M塩化ナトリウムによる沈殿分画処理にて、フィブリノゲンを遠心(4,000rpm、20分間)により沈殿させて回収した。次いで回収されたフィブリノゲンを1.5Lの注射用水で溶解し、フィブリノゲン溶液を調製した。この溶液中の不溶物を遠心処理にて除去した後、0.9g/Lの塩化ナトリウムを添加して濾過前のサンプルとした。この溶液をプラノバ35N(平均孔径35±2nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供した。この濾液を濾過後のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。この場合、グリシン−塩化ナトリウム分画、沈殿の水抽出、遠心除去およびプラノバ35Nを組み合わせた処理によりその前後で106コピー/ml以上のウイルス除去効果を示した。実施例5正常ヒト血漿由来のコーンのFr.I画分100gを1.5Lの生理食塩水で溶解し、トリ−(n−ブチル)ホスフェート(TNBP)を0.3w/v%及びTween80を1w/v%になるように添加し、30℃にて6時間の界面活性剤処理を行なった。界面活性剤処理後の試料にモニターウイルスとしてEMCを108.4TCID50/ml添加した。その後、この試料を8%グリシン−1M塩化ナトリウムによる沈殿分画処理にて、フィブリノゲンを遠心(4,000rpm、20分間)により沈殿させて回収した。次いで回収されたフィブリノゲンを1.5Lの注射用水で溶解し、フィブリノゲン溶液を調製した。この溶液中の不溶物を遠心処理にて除去した後、0.9g/Lの塩化ナトリウムを添加して濾過前のサンプルとした。この溶液をプラノバ35N(平均孔径35±2nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供した。この濾液を濾過後のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。この場合、グリシン−塩化ナトリウムによる沈殿分画処理、沈殿の水抽出、遠心除去およびプラノバ35Nを組み合わせた処理によりその前後で104TCID50/ml以上のウイルス除去効果を示した。参考例1正常ヒト血漿由来のコーンのFr.I画分100gを1.5Lの生理食塩水で溶解し、TNBPを0.3w/v%及びTween80を1w/v%になるように添加し、30℃にて6時間の界面活性剤処理を行なった。その後、この試料を15%グリシン−1M塩化ナトリウムによる沈殿分画処理にて、フィブリノゲンを沈殿させて回収した。次いで回収されたフィブリノゲンを1.0Lのクエン酸緩衝液に溶解し、1.0%溶液を調製した。この溶液にモニターウイルスとしてパルボウイルスを1010.7コピー/ml添加した。また、この溶液を濾過前のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。この溶液をプラノバ75N(平均孔径72±4nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供しウイルス除去を行なった。この濾液を濾過後のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。参考例2参考例1の方法中、モニターウイルスとしてパルボウイルスを1011.7コピー/ml添加し、その後この溶液をプラノバ35N(平均孔径35±2nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供した以外、参考例1と同様に処理を行ない各試料のウイルス量を測定した。参考例3正常ヒト血漿由来のコーンのFr.I画分100gを1.5Lの生理食塩水で溶解し、トリ−(n−ブチル)ホスフェート(TNBP)を0.3w/v%及びTween80を1w/v%になるように添加し、30℃にて6時間の界面活性剤処理を行なった。その後、この試料を15%グリシン−1M塩化ナトリウムによる沈殿分画処理にて、フィブリノゲンを沈殿させて回収した。次いで回収されたフィブリノゲンを1.0Lのクエン酸緩衝液に溶解し、1.0%溶液を調製した。この溶液にモニターウイルスとしてパルボウイルスを105.7コピー/ml添加した。この溶液をプラノバ75N(平均孔径72±4nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供しウイルス除去を行なった。この濾液を濾過後のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。次に、この濾液を更にプラノバ35N(平均孔径35±2nm)を用いた温度23℃、濾過圧10kpa、デットエンド濾過法に供しウイルス除去を行なった。この濾液を濾過後のサンプルとしてそのウイルス量を測定した。ウイルス量の測定方法:(1)パルボウイルスのウイルス量の測定は各試料についてウイルス核酸の残存量をポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)測定法(Transfusion Vol.32,p.824−828(1992))によって測定した。パルボウイルスの核酸量は102コピー/mlで検出限界以下となる。(2)EMCウイルス(encephalomyocarditis virus:脳心筋炎ウイルス)はVero細胞を使用した感染価(TCID50)を測定することにより評価した。EMCウイルスのVero細胞に対する感染価は、101.5TCID50/mlで検出限界以下となる。上記の実施例1〜2、4〜5および参考例1〜3の結果を表1に示す。蛋白質量の測定方法各試料を生理食塩液で適当に希釈し、280nmにおける吸光度を測定した。上記の実施例3の結果を表2に示す。産業上の利用分野本発明により血漿蛋白組成物を多孔性膜処理することによって、蛋白の活性を殆ど失うことなく、効率よく血漿蛋白中の夾雑ウイルスを除去することができる。従って、本発明によってウイルス感染性の危惧のない血漿蛋白を提供することができる。特に、本発明の多孔性膜処理により非エンベロープウイルス、とりわけパルボウイルスおよび/またはA型肝炎ウイルスを実質的に含まないフィブリノゲン組成物を提供することができる。本出願は、日本で出願された平成11年特許願第360950号を基礎としており、それらの内容は本明細書に全て包含されるものである。 多孔性膜処理前に血漿蛋白組成物をグリシン沈殿法分画処理に付す工程、次いでグリシン沈殿法分画処理された血漿蛋白組成物を非エンベロープウイルス単粒子径より孔径の大きな、かつ平均孔径100nm以下の多孔性膜処理に付す工程を有することを特徴とする非エンベロープウイルスの除去された血漿蛋白組成物の製造法であって、血漿蛋白組成物がフィブロネクチン、フィブリノゲン、凝固V因子、凝固VIII因子、フォンビルブランド因子、凝固XIII因子、レチノール結合蛋白質、αグロブリン、βグロブリンおよびγグロブリンから選ばれる少なくとも一種の蛋白質を含有するものである、製造法。 多孔性膜が多孔性中空糸膜である請求項1記載の製造法。 多孔性膜処理に付す前に、血漿蛋白組成物をグリシン沈殿法分画処理に付し、得られた沈殿を適当な溶媒で抽出および/または溶解する工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の製造法。 グリシン沈殿法分画処理がグリシン−塩化ナトリウム沈殿分画処理である請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。 血漿蛋白組成物が少なくともフィブリノゲンを含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の製造法。 非エンベロープウイルスがパルボウイルスおよび/またはA型肝炎ウイルスである請求項1〜5のいずれかに記載の製造法。 多孔性膜処理前に血漿蛋白組成物をグリシン沈殿法分画処理に付すこと、次いでグリシン沈殿法分画処理された血漿蛋白組成物を非エンベロープウイルス単粒子径より孔径の大きな、かつ平均孔径100nm以下の多孔性膜処理に付すことを特徴とする血漿蛋白組成物中の非エンベロープウイルスの除去方法。 多孔性膜が多孔性中空糸膜である請求項7記載の方法。 多孔性膜処理に付す前に、血漿蛋白組成物をグリシン沈殿法にて分画処理し、得られた沈殿を適当な溶媒で抽出および/または溶解する工程を有することを特徴とする請求項7または8に記載の方法。 グリシン沈殿法分画処理がグリシン−塩化ナトリウム沈殿分画処理である請求項7〜9のいずれかに記載の方法。 血漿蛋白組成物がフィブロネクチン、フィブリノゲン、凝固V因子、凝固VIII因子、フォンビルブランド因子、凝固XIII因子、レチノール結合蛋白質、αグロブリン、βグロブリンおよびγグロブリンから選ばれる少なくとも一種の蛋白質を含有するものである、請求項7〜10のいずれかに記載の方法。 血漿蛋白組成物が少なくともフィブリノゲンを含有するものである請求項7〜11のいずれかに記載の方法。 非エンベロープウイルスがパルボウイルスおよび/またはA型肝炎ウイルスである請求項7〜12のいずれかに記載の方法。


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