タイトル: | 特許公報(B2)_遷移金属カルボニル錯体調製用の一酸化炭素供給源 |
出願番号: | 2001528187 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C01B 6/13,C07C 303/22,C07C 309/42,C07F 5/02 |
ロゲル・アリエル・アルベルト ロガー・シブリ JP 4778654 特許公報(B2) 20110708 2001528187 20001005 遷移金属カルボニル錯体調製用の一酸化炭素供給源 マリンクロッド・インコーポレイテッド 595181003 Mallinckrodt INC. 大塩 竹志 100107489 ロゲル・アリエル・アルベルト ロガー・シブリ EP 99203254.0 19991005 20110921 C01B 6/13 20060101AFI20110901BHJP C07C 303/22 20060101ALI20110901BHJP C07C 309/42 20060101ALI20110901BHJP C07F 5/02 20060101ALI20110901BHJP JPC01B6/13C07C303/22C07C309/42C07F5/02 A C01B3/00-6/34 C07C303/22 C07C309/42 C07F5/02 Science Direct JSTPlus(JDreamII) 特開昭57−145886(JP,A) 国際公開第98/048848(WO,A1) Bernard F. SPIELVOGEL, et al.,Predictive schemes for the reactivity of borane carbonyl and the stability of carbonyltrihydroborate anions, BH3C(O)X-,Polyhedron,1983, Vol.2, No.12,pp.1345-1352 Reynaldo G. MONTEMAYOR, et al.,Reaction of active nickel with PF3, H3BCO, H3BPF3, PH3, and PF2H. Preparation of complexes of the form M(L)4 and other processes,Inorganic Chemistry,1979, Vol.18, No.6,pp.1470-1473 Anne SKANCKE, et al.,Carbonyl compounds of boron and their isomers,Journal of Physical Chemistry,1994, Vol.98, No.50,pp.13215-13220 G.K. ANDERSON, et al.,Mass spectrometric and spectroscopic study of the reaction of H3BCO and B2H6 with oxygen and nitrogen atoms,Journal of Physical Chemistry,1977, Vol.81, No.12,pp.1146-1153 31 EP2000009856 20001005 WO2001025243 20010412 2003511334 20030325 10 20071002 横山 敏志 【0001】本発明は、遷移金属カルボニル錯体の調製において、一酸化炭素供給源としての、そして場合により還元剤としての、新しい用途を有する化合物に関するものである。【0002】カルボニル錯体は、配位結合したリガンドとして一酸化炭素を含有する化合物である。一酸化炭素は、その遷移金属への結合が相剰的である性質が一因で、遷移金属化学では一般的なリガンドである。【0003】金属へのCOの結合は、2つの成分からなる。第1の結合成分はσ−供与、即ち、炭素原子上のローンペアが、金属の空のd−軌道と重なること、に基づくものである。第2の成分は、金属の充満d−軌道から、COの炭素原子の空のπ*軌道へのπ逆供与にある。この第2成分は、パイ−バック結合またはパイ−バック供与と呼ばれる。【0004】 上記した、遷移金属とのカルボニル錯体形成は、それらの錯体化合物をタンパク質、ペプチド、およびその他各種の化合物の標識化に応用する場合に重要である。多くの応用では、これらの分子は、必要な試薬を含むいわゆる標識化キットを用いて標識化する。現在のキットは、還元剤としての水素化ホウ素をベースにしており、さらに酒石酸塩、乳糖およびホウ酸塩緩衝液(pH11.5)を含有し、CO供給源としての気体のCOで満たされている。これら既知の反応混合物の欠点は、反応溶媒中へのCOの溶解が遅いために、カルボニル錯体の収率が低いこと、大量のCO充満キットの工業的生産が不可能であること、並びに密封バイアルからでさえCOがゆっくりと拡散することである。さらに、pHが幾分高く、不都合である。【0005】本発明の目的は、上述の欠点がない、COと水素化ホウ素ナトリウムの代替物を提供することにある。【0006】即ち、式I【化2】式中、X1は−Hであり;X3およびX2は、−H、−NHXRY(X+Y=3)または−R(ただし、Rは炭素原子によってそれぞれ窒素かホウ素に結合した置換基、好ましくはアルキルまたはアリールである)からなる群から選択される同一かまたは異なる置換基であり;Yは−OH、−OH2、−ORまたは−NHR(ただし、Rは炭素原子によってそれぞれ窒素または酸素に結合した置換基、好ましくはアルキルまたはアリールである)である;の化合物、またはそれらの塩が、水性溶液中での金属カルボニル錯体の調製における一酸化炭素(CO)供給源として、そして場合により還元剤として、使用できることが判明した。Yが−OHまたは−OH2である場合、該化合物は脱プロトン化(すなわち、NaOHによって)できる酸である。その場合、単離される化合物は塩(ボラノカーボネート(boranocarbonate)陰イオンR3B−COO2−、プラス、対応する陽イオン、例えばLi+、Na+、Ca2+、Mg2+など)である。還元剤の機能は、X1、X2、およびX3の少なくとも1つが水素である場合にのみ存在する。安定性の理由で、X1、X2、およびX3の2つが−Hであることが好ましい。一酸化炭素は、該化合物の水性溶液を加熱すると放出される。【0007】上記化合物には、以下の利点がある。COを、制御可能な条件(pH、温度)下に、初めて水性媒質中で生成させたこと。求める金属のカルボニル錯体を、有機溶媒や高温高圧下ではなく、よく定めた条件の水中で調製できること。CO供給源と還元剤とが、単一化合物中に存在できること、このことは、還元がカルボニルの調製に実際上常に要求されるので好都合である。錯体化しようとする金属がTc−99mまたはRe−188/186である場合、有毒かつ揮発性のCOでバイアルを満たすことを必要とせずに、キットを作成できること。主な有利な実施態様は、異なる官能性を1つの化合物中で組合せた分子である。それらの化合物は、プロトン性溶媒(水など)またはルイス酸が存在する場合にのみCOを生成し、還元剤として、かつその場でのCO供給源として作用する。【0008】 異なる位置で置換基を変化させることにより、多様なタイプの化合物が得られる。これらは以下の群に細別される:1.X1、X2、およびX3が−Hであり、Yが−OH2である炭酸ボラン(borane carbonate)化合物および/またはモノ−もしくはジ脱プロトン化炭酸ボラン[H3BCO2]2−の対応する塩;2.X1がNH3であり、X2およびX3が−Hであり、Yが−OHであるアミノ酸ボラン(アンモニアカルボキシボラン)および/またはモノ脱プロトン化炭酸アミンボラン(amine borane carbonate)[(NH3)H2BCO2]−の対応する塩;;3.X1が−NHXRY(X+Y=3)、ただしRが炭素原子によって窒素に結合した置換基、好ましくはアルキルまたはアリールであり、X2およびX3が−Hであり、Yが−OHである、アルキル化アミノ酸ボラン類(alkylated borane amino acids)(トリアルキルアンモニアカルボキシボラン類)。4.X1が炭素原子によってホウ素に結合した有機置換基であり、X2およびX3が−Hであり、Yが−OH2である、式Iの化合物。5.X1およびX2が炭素原子によってホウ素に結合した有機置換基であり、X3が−Hであり、Yが−OH2である、式Iの化合物。6.X1、X2およびX3が上記1−5の定義の通りであり、YがOR'であり、R'が炭素原子によって酸素に結合した置換基(アルキルなど、より具体的にはメチルまたはエチル)である、ボランカルボン酸アルキルエステル化合物類。7.X1、X2およびX3が上記1−5の定義の通りであり、YがNH2、NHR''またはNR''2であり、R''が炭素原子によって窒素に結合した置換基(アルキルなど、より具体的にはメチルまたはエチル)である、カルバミン酸ボラン(borane carbamate)化合物類。【0009】これらの化合物の具体例は、ボラノカーボネート類:[H3B−COOH2]、[H3B−COOH]M、[H3B−COO]M2、Na[H3B−COOCH3]、ただしMはアルカリ陽イオンである;ボラノカルバメート(boranocarbamate)類:Na[H3BCONHCH3]、M[H3B−CONH2]、ただしMはアルカリ陽イオンである;アミン−ボラノカルボネート類:[H3N−BH2−COOH]、[H3N−BH2−COO]Li、[(CH3)3N−BH2−COOH]、[(CH3)H2N−BH2−COOH]、[(CH3)H2N−BH2−COO]Li、[(CH3)H2N−BH2−COOCH3];アミン−ボラノカルバメート類:[H3N−BH2−CONH2]、[(CH3)2HN−BH2−CONHC2H5]、である。【0010】本発明の化合物は、BH3COにはBurg et al., J. Am. Chem. Soc. 59, 780 (1936);M2[H3B−COO]およびM[H3B−COOC2H5]には Malone et al., Inorg. Chem. 6, 817 (1967);M[H3B−CONH2]には Howe et al., Inorg. Chem. 10, 930 (1971);[H3N−BH2−COOH]および[(CH3)3H−BH2−CONHC2H5]には Spielvogel et al., J. Am. Chem. Soc. 102, 6343 (1980);[(CH3)H2N−BH2−COOCH3]には Spielvogel et al., Inorg. Chem. 23, 4322 (1984);[H3N−BH2−CONH2]、[(CH3)2HN−BH2−CONHC2H5]には Spielvogel et al., Inorg. Chem. 23, 1776 (1984) および J. Am. Chem. Soc. 98, 5702 (1976)に記載の方法を用いるか、類似の方法で調製できる。【0011】本発明はさらに、遷移金属カルボニル錯体を調製する方法にも関連し、それには上記定義の化合物の1つまたはそれ以上をCO供給源として、そして場合により還元剤として用いる。要約すれば、この方法は、プロトリシスおよびそれに続く加水分解反応によって、本発明のあらゆる化合物群、特に1−7の化合物の1つまたはそれ以上からCOを水または緩衝液中で放出させることを含む。従って、それでカルボニルを形成させる金属は、ホウ素に結合している水素化置換基によって還元される。本発明の化合物、特に1−7の化合物を水または緩衝液に溶解し、そして金属を固体または溶液のどちらかとして加える。本発明の化合物、特に1−7の化合物のプロトン化および加水分解により、COが放出される。同時に、ホウ素に結合した水素化物(−H)が、金属中心を還元して、該金属が放出されたCOを配位できるような原子価にする。そのとき、カルボニル錯体が形成される。本発明に従うカルボニル錯体の形成方法は、従って、本発明のボラノ化合物を金属イオンまたは(過)メタレート((per)metallate)形態の金属の水性溶液と混合することを含む。本願で用いるとき、「金属」とは、全形態の金属を、すなわち金属イオンおよび(過)メタレートも、包含することを意図している。【0012】本発明の化合物および方法は、いかなるカルボニル錯体の形成にも適するが、特に遷移金属がV−B族ないしVIII−B族の金属から選択されるものである遷移金属カルボニル錯体に適している。より具体的には、該方法は以下の遷移金属のカルボニル錯体を調製するのに適している:バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru),オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)およびニッケル(Ni)、並びにそれらの放射性同位体。【0013】さらに、本発明は、本発明に従う化合物の水性溶液、酒石酸塩、グルコヘプトン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩のような安定剤、およびホウ酸塩またはリン酸塩のような緩衝液系を含む、遷移金属カルボニル錯体調製用のキットを提供する。その好ましい実施態様では、本発明のキットは、好ましくは窒素雰囲気下の酸素不存在環境内でホウ酸塩緩衝液(pH9.1)中に、少なくとも2mgの炭酸ボランを含有する。放射性金属溶液添加後の溶液の総容積が1mlを超えないことが好ましい。しかし、2または3mlのようなより大きい容積も、ある状況では有用である。適切なインキュベーション条件には、溶液を約20分間、75℃に加熱することが含まれる。【0014】さらに、本発明の化合物は、水中で使用して水素化ホウ素またはシアノ水素化ホウ素に匹敵する選択性と反応性をもって有機化合物を還元することができる。【0015】さらに、H3BCOをH3B−THFから継続的に調製し、その場で水酸化カリウムのアルコール性溶液と反応させてK2[H3BCO2]を得ることができるとも分かった。この調製のかぎは、H3BCOとH3B−THFとの間の平衡の制御である:一酸化炭素流に運ばれてH3BCO(沸点−64℃)は通過するが、THFは−50℃で気流から選択的に凝縮する。次いで、この気体混合物を−78℃でKOHのエタノール性溶液に直接通して泡通過させる。H3BCO中の高度に求電子的な炭素における[OH−]の求核攻撃によって、高収率のK2[H3BCO2]形成が導かれる。必要なら、−78℃の冷却トラップ中でH3BCOそのものを単離できる。このH3BCOの調製法は、高圧またはエーテル触媒操作法よりも簡単で便利であり、数グラムまたはより大きい量にスケールアップすることができる。【0016】従って、本発明は、a)THFまたはTHFと他の有機非プロトン性溶媒との混合物中で、BH3−THFまたは類似の付加物をCOと反応させてH3BCOを生成させ;b)このようにして生成させたH3BCOを、一価または二価陽イオン性の対イオンを有する水酸化物および脂肪族アルコールの冷溶液に通し;そしてc)適切な反応時間の後、このアルコール性溶液を加熱してボラノカルボネートを沈殿させる、各段階を含む、ボラノカルボネートの製法に関連する。該類似の付加物は、例えばH3B(Et2O)である。水酸化物は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、またはテトラアルキル水酸化アンモニウムからなる群から選択される。脂肪族アルコールは、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択され得る。【0017】化合物H3BCOもまた、本発明の一部である。それには還元する特性があり、例えば上記のように高圧のCOを用いない(ただし、非プロトン性またはほんの弱いプロトン性の溶媒中での)カルボニル錯体の調製において、還元の目的で使用できる。例えば[TcCl3(CO)3]2またはRe類似体の巨視的合成のために、「金属」のTHF溶液にCOの泡を通して、H3BCOを、その場で生成させている間に使用することも可能である。【0018】本発明に従う化合物の使用は、カルボニル錯体の製造用のみならず幅広く適用可能であるが、水溶液中のCO供給源が必要とされる他の状況でも適用できる。本発明はさらに、エステル類、イミン類、アルデヒド類などの有機基質用の還元剤としての、ボラノカーボネートまたはその誘導体の水中での使用に関連する。これらの化合物の還元力は、BH4−またはシアノ水素化ホウ素に匹敵し、従って、これらは、バルク工業プロセスにおけるシアノ水素化ホウ素などの代わりになり得る。【0019】本発明を、以下の実施例でさらに説明するが、それらは例示説明のみの目的で示す。【0020】実施例実施例1K2H3BCO2の調製1.BH3・COの合成4gのNaBH4を、15mlの濃縮したH3PO4(室温、高真空で一晩中乾燥させた)に、減圧下(1mbar)で、激しく撹拌しながら2時間にわたって注意深く加えた。放出されてきたBH3を、−78℃の冷却トラップを通して乾燥させ、70mlの乾燥DMEを含む−200℃の第2の冷却トラップで濃縮した。第2のトラップを、第1のトラップおよび真空ラインから切り離した。温度を−40℃に上げた。次いでトラップを乾燥COで1.3barの高圧にした。反応混合物を、CO1.3bar下で一晩中、−40℃の冷却槽(ドライアイスとアセトニトリル)中で撹拌した。【0021】2.K2H3BCO3の合成該トラップの気体流出口を、50mlの乾燥エタノールと3gのKOHの入った100mlの二口丸底フラスコ(気体流入口および還流冷却器付き)に連結した。トラップの冷却槽を除去し、放出されるBH3・COを0℃でゆっくりとKOHエタノール溶液に通して泡通過させた。該DME溶液をゆっくりと80℃に加熱し、次いで該トラップにCOを3回どっと流した。BH3・COの放出が終わった後、エタノール溶液を30分間還流した。該溶液を室温に冷やした後、K2H3BCO2が白色粉末として沈殿した。白色粉末を、焼結したガラスフィルターで濾過し、氷冷エタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させた。【0022】実施例2凍結乾燥キットを用いる標識実験0.1mlの0.1M PBS(pH7.5)中のK2[BH3COO]1mgを、N2をどっと流したバイアル中で凍結乾燥して標識キットを調製した。代わりに0.1M ホウ酸緩衝液(pH8.5)を用いることができる。【0023】標識化するために、ジェネレーターで抽出した[99mTcO4]−塩水1mlを加えた。収率は[99mTcO4]−の絶対量に依存しないことが判明した。こうして得られた溶液を20分間75℃に加熱した。【0024】収率は、pH7.5で80から100%の間であった(図1のトレース1);図1のトレース3はpH8.5である。【0025】化合物の同一性を確立するために、カルボニル錯体を調製した反応溶液にピコリン酸を直接加えた。HPLCで、該錯体[99mTc(OH2)(pic)(CO)3](図1、トレース2)を、「コールド」の物質、この場合は「コールド」レニウムで調製した同一の錯体、と比較することにより明らかにした。「ホット」の物質を放射能検出器を用いて見出し、一方「コールド」の物質をUV検出器で検出した。【0026】実施例3いわゆる「湿式キット」での標識実験ホウ酸緩衝液(pH9.1)中の2mgの炭酸ボランおよび過テクネチウム酸のジェネレーター抽出液が総容積1mlで入っているバイアルを、20分間75℃に加熱した。こうして得られた生成物[99mTc(OH2)(CO)3]−の標識収率は、97%より高かった。【0027】実施例4H3B・THFからの水素カリウム(カルボキシラト)−トリヒドロホウ酸の調製 ガラス管で冷却トラップに連結した250mlの3口丸底フラスコからなる装置を用いた。フラスコの他の2口は、ゴムの隔壁で塞いだ。気体導入用のPTEE管をフラスコに通した。冷却トラップの流出口から、PTFE管を400mlのシュレンク管に通した。シュレンク管の側腕から、装置を空気から隔離するシリコンオイルバブラーに、ポリテン管を渡した。【0028】冷却トラップとシュレンク管を、イソプロパノールを入れたジュワービンに沈めた。酸素を含まない乾燥窒素を30分間装置にどっと流し、同時に各ジュワービンにドライアイスを加えて、冷却トラップを−50℃に、シュレンク管を−78℃に冷却した。【0029】200ml無水エタノール中の5.0gの水酸化カリウム溶液をシュレンク管に入れて、−78℃に冷やした。装置に暫時一酸化炭素を流し、テトラヒドロフラン中の1moldm−3のボラン−テトラヒドロフラン錯体溶液30mlを丸底フラスコに導入した。1秒に約1個の泡がオイルバブラーを通して装置から出るように、一酸化炭素の泡を該溶液に通した。中間の冷却トラップの温度を、随時ドライアイスを添加することにより−45℃から−55℃の間に維持した。【0030】一酸化炭素を2時間通した後、20mlのジメトキシエタンを丸底フラスコに導入し、さらに20mlのジメトキシエタンを中間の冷却トラップに導入した。前のように一酸化炭素を装置に通した。1時間後、シュレンク管を装置の他の部分から切り離し、室温まで温めた。該アルコール溶液を、還流下で45分間加熱した。生じた白色の沈殿を濾過して分け、無水エタノール5mlで2回洗浄し、減圧下で乾燥し、白色粉末として1.26gの生成物を得た(BH3−THFに基づいて43%)。実測値K、38.85%(K2Na[Co(NO2)6]としての重量);CH4BKO2計算値K、39.9%。δH(200MHz、D2O、25℃)0.80(1:1:1:1四重線、1J(H−11B)=80Hz;1:1:1:1:1:1:1七重線、1J(H−10B)=27Hz)。【0031】実施例5ボラノカーボネートによる有機基質ベンズアルデヒド−2−スルホン酸ナトリウムの水中での還元カリウムボラノカーボネート(100mg)およびベンズアルデヒド−2−スルホン酸ナトリウム(40mg)を水(1ml)中で混合し、室温で30分間放置した。2−(ヒドロキシメチル)−ベンゼンスルホン酸ナトリウムの定量的な形成を、δ=10.77の開始物質の1H−NMRシグナルが消滅することと、δ=5.04の生成物のシグナルが出現することによって確認した。該反応混合物は実験の終わりには無臭であり、スルホン酸基が還元されなかったことを示している。 (I)式の化合物またはそれらの塩を含む水性溶液中での金属カルボニル錯体の調製における一酸化炭素(CO)供給源として使用するための組成物であって、式中、X1、X2、およびX3が、同一かまたは異なるルイス塩基または水素化物のどちらかであり、Yがシグマ供与基である、組成物。 請求項1に記載の組成物であって、ここで該組成物がさらに還元剤として使用される、組成物。 請求項1または2に記載の組成物であって、ここでX1が−Hであり;X3およびX2が、−H、−NHXRY(X+Y=3)または−R(ただし、Rは炭素原子によってそれぞれ窒素かホウ素に結合した置換基である)からなる群から選択される同一かまたは異なる置換基であり;そしてYが−OH、−OH2、−ORまたは−NHR(ただし、Rは炭素原子によって窒素または酸素にそれぞれ結合した置換基である)である、組成物。 請求項3に記載の組成物であって、ここでRはアルキルまたはアリールである、組成物。 該化合物が、X1、X2、およびX3が−Hであり、Yが−OH2である炭酸ボラン化合物および/またはモノ−もしくはジ脱プロトン化炭酸ボラン[H3BCO2]2−の対応する塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。 該化合物が、X1がNH3であり、X2およびX3が−Hであり、Yが−OHであるボランアミノ酸および/またはモノ脱プロトン化炭酸アミンボラン[(NH3)H2BCO2]−の対応する塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。 該化合物が、X1が−NHXRY(X+Y=3)であり、Rが炭素原子によって窒素に結合した置換基であり、X2およびX3が−Hであり、Yが−OHである、アルキル化ボランアミノ酸類である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。 請求項7に記載の組成物であって、ここで、Rはアルキルまたはアリールである、組成物。 X1が炭素原子によってホウ素に結合した有機置換基であり、X2およびX3が−Hであり、Yが−OH2である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。 X1、X2およびX3が請求項2ないし請求項9に記載の定義の通りであり、YがOR'である、ただしR'は炭素原子によって酸素に結合した置換基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。 請求項10の組成物であって、ここで、R'はアルキルである、組成物。 請求項10の組成物であって、ここで、R'はメチルまたはエチルである、組成物。 X1、X2およびX3が請求項2ないし請求項9に記載の定義の通りであり、YがNH2、NHR''またはNR''2である、ただしR''は炭素原子によって窒素に結合した置換基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。 請求項13の組成物であって、ここで、R''はアルキルである、組成物。 請求項13の組成物であって、ここで、R''はメチルまたはエチルである、組成物。 請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、ここで、該化合物が、ボラノカーボネート誘導体である[H3B−COOH2]、[H3B−COOH]M、[H3B−COO]M2、Na[H3B−COOCH3](ただしMはアルカリ陽イオンである);ボラノカルバメート類であるNa[H3BCONHCH3]、M[H3B−CONH2](ただしMはアルカリ陽イオンである);アミン−ボラノカーボネート類である[H3N−BH2−COOH]、[H3N−BH2−COO]Li、[(CH3)3N−BH2−COOH]、[(CH3)H2N−BH2−COOH]、[(CH3)H2N−BH2−COO]Li、[(CH3)H2N−BH2−COOCH3]、およびアミン−ボラノカルバメート類である[H3N−BH2−CONH2]、[(CH3)2HN−BH2−CONHC2H5]、からなる群から選択される、組成物。 請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の組成物の1種またはそれ以上を、CO供給源として使用する、遷移金属カルボニル錯体の調製方法。 請求項17に記載の方法であって、ここで、該組成物がさらに還元剤として使用される、方法。 該遷移金属カルボニル錯体中の遷移金属が、V−B族ないしVIII−B族の金属から選択される、請求項17または18に記載の方法。 該遷移金属カルボニル錯体中の遷移金属が、バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)およびニッケル(Ni)からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。 請求項1ないし請求項16に記載の組成物を水性溶液中に含む、水性溶液中での遷移金属カルボニル錯体調製用キット。 さらに1種またはそれ以上の安定剤を含む、請求項21に記載のキット。 さらに1種またはそれ以上の付加的な還元剤および緩衝液系を含む、請求項21または22に記載のキット。 該安定剤が、グルコヘプトン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩からなる群から選択される、請求項22または23に記載のキット。 該付加的な還元剤が、水素化ホウ素、亜ジチオン酸塩、SnCl2、亜硫酸塩からなる群から選択される、請求項23または請求項24に記載のキット。 ボラノカーボネートの調製方法であって、a)THFまたはTHFと他の有機非プロトン性溶媒との混合物中で、BH3−THFまたはH3B(Et2O)をCOと反応させてH3BCOを生成させ;b)こうして生成させたH3BCOを、一価または二価陽イオン性の対イオンを有する水酸化物および脂肪族アルコールの冷溶液に通し;そしてc)このアルコール性溶液を加熱してボラノカーボネートを沈殿させる、各段階を含む調製方法。 該水酸化物が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、またはテトラアルキル水酸化アンモニウムからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。 該脂肪族アルコールが、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。 水性溶液中の、金属カルボニル錯体の調製における還元剤としてのH3BCOの使用。 有機基質用の還元剤としての、ボラノカーボネートまたはその誘導体の水中での使用。 該有機基質がエステル類、イミン類またはアルデヒド類である、請求項30に記載の使用。