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タイトル:特許公報(B2)_水酸化脂肪酸およびδ−ラクトン類の製造方法
出願番号:2001509542
年次:2010
IPC分類:C07C 59/42,C12P 7/64,C12R 1/01


特許情報キャッシュ

斎藤 知明 舛田 幸子 屋代 敦 石黒 博樹 JP 4474082 特許公報(B2) 20100312 2001509542 20000707 水酸化脂肪酸およびδ−ラクトン類の製造方法 キリン協和フーズ株式会社 505144588 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 深見 伸子 100120905 斎藤 知明 舛田 幸子 屋代 敦 石黒 博樹 JP 1999192684 19990707 20100602 C07C 59/42 20060101AFI20100513BHJP C12P 7/64 20060101ALI20100513BHJP C12R 1/01 20060101ALN20100513BHJP JPC07C59/42C12P7/64C12P7/64C12R1:01 CA/REGISTRY(STN) BIOSIS/WPIDS(STN) 特開2002−000287(JP,A) FEMS Microbiol.Lett.,Vol.169,No.2(1998)p.277-282 J.Org.Chem.,Vol.57,No.7(1992)p.1954-1956 Crit.Rev.Biotechnol.,Vol.16,No.4(1996)p.301-329 Lipids,Vol.35,No.1(2000.Jan.)p.23-30 1 JP2000004535 20000707 WO2001004339 20010118 15 20070329 高堀 栄二 技術分野本発明は、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸から[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸の製造方法に関する。また、本発明は、該脂肪酸からδ−ラクトン類の製造方法およびδ−ラクトン類を含有する組成物の製造方法に関する。背景技術ラクトン類はフルーツ香やミルク香といった好ましい香気を付与するので多くの食品中に添加され使用されている重要な化合物である。しかし、ラクトン類は天然原料中には低濃度でしか存在しないことから、一般的には化学合成品が使用されている。ラクトン類の微生物による生産方法としては、乳酸菌およびビフィズス菌[ガストロエンテロジー(Gastroenterology),62,430(1972)]、コリネバクテリウム属細菌[アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry),45,2025(1981)]、シュードモナス属細菌[アチーブス・オブ・バイオケミストリィー・アンド・バイオフィジクス(Archives of Biochemistry and Biophysics),99,249(1962)]などの微生物がオレイン酸からγ−ドデカラクトン前駆体である10−ヒドロキシオクタデカン酸を生成させる方法が知られている。また、10−ヒドロキシオクタデカン酸、ひまし油中のリシノール酸などの水酸化された脂肪酸を酵母によってγ−ラクトン類に変換することが知られている(特開昭60−66991号公報、特開昭60−100508号公報)。ラクトン類を生産する酵母であるスポロボロマイセス・オドルス(Sporobolomyces odorus)がリノール酸からδ−デカラクトンを生産することが知られている。13−ヒドロキシ−9,11−オクタデセン酸(13−hydroxy−9Z,11E−octadecadienoic acid)[コリオール酸(coriolic acid)]からδ−デカラクトンが生産されることから、その中間体として酵母がコリオール酸を生産することが推測されている[エー・シー・エス・シンポジウム・シリーズ,フレバー・プレカーサーズ(ACS SYMPOSIUM SERIES,flavor Precursors),490,46(1992)]。リノール酸を光酸素化あるいはダイズ・リポキシゲナーゼ処理して得られるヒドロペルオキシドを還元処理して得られるコリオール酸を前駆体にして、クラドスポリウム属細菌や酵母によってδ−デカラクトンに変換する方法(特開平3−187387号公報)は知られている。また、コリアリア・ネパレンシスの種子油に含まれるコリオール酸やメキシカン・ヤラップの根から抽出した11−ヒドロキシパルミチン酸を前駆体にして、クラドスポリウム属細菌[ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry),54,4979(1989)]や酵母[ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry),57,1954(1992)、特開平3−219886号公報]によってδ−デカラクトンに変換する方法は知られている。しかしながら、微生物によってそれぞれリノール酸とα−リノレン酸から13−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸(13−hydroxy−9−octadecenoic acid)と13−ヒドロキシ−9,15−オクタデカジエン酸(13−hydroxy−9,15−octadecadienoic acid)を生成させそれぞれδ−デカラクトンとジャスミンラクトンを製造する方法は知られていない。発明の開示本発明の目的は、微生物によりn(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸から[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を製造する方法を提供することである。また本発明の目的は、微生物により該脂肪酸からδ−ラクトン類を製造する方法およびδ−ラクトン類を含有する組成物を提供することである。本発明は、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸の、[n−5]にヒドロキシを[n−6]位に水素を導入し[n−6]位を単結合とする活性を有する微生物(以下、第一の微生物という)の菌体、培養液またはそれらの処理物を、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸または該脂肪酸を含有する組成物に作用させ、[n−6]位が単結合の「n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を生成させ、生成した[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を採取することを特徴とする[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸の製造方法に関する。また、本発明は、式(I)で表される13−ヒドロキシ−6,9−オクタデカジエン酸(13−hydroxy−6,9−octadecadienoic acid)に関する。また、本発明は、第一の微生物の菌体、培養液またはそれらの処理物を、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸または該脂肪酸を含む組成物に作用させ[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸生成させ、次いで、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸をβ酸化する活性を有する微生物(以下、第二の微生物という)の菌体、培養液またはそれらの処理物を作用させ、生成するδ−ラクトン類を採取することを特徴とする、δ−ラクトン類の製造方法に関する。また、本発明は、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸を含有する組成物に、第一の微生物の菌体、培養液またはそれらの処理物を作用させ、該組成物中に[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を形成させ、次いで第二の微生物の菌体、培養液またはそれらの処理物を作用させることを特徴とするδ−ラクトン類を含有する組成物の製造方法に関する。さらに、本発明は、上記の製造方法で製造されるδ−ラクトン類またはδ−ラクトン類を含有する組成物を食品に添加することを特徴とする、δ−ラクトン類を含有する食品の製造方法に関する。本発明において[n−m]位が二重結合であるとは、[n−m]位と[n−(m−1)]位との間が二重結合であることを意味する。本発明の、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸としては、[n−6]位が二重結合、好ましくはシス体の二重結合である、モノエン脂肪酸、ジエン脂肪酸、トリエン脂肪酸等があげられる。ジエン脂肪酸、トリエン脂肪酸等のポリエン脂肪酸としては、非共役ポリエン脂肪酸であることが好ましく、[n−9]位が二重結合、特にシス体の二重結合を有していることが好ましい。また、nが12以上の場合、δ−ラクトン類を生成させるためには、[n−10]位以下は単結合の脂肪酸であることが好ましい。nは10以上の偶数であれば上限は特にないが、10以上32以下が好ましく、12以上26以下がより好ましく、16以上22以下が特に好ましい。モノエン脂肪酸としては、例えばデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデセン酸、イコセン酸、ドコセン酸、テトラコセン酸、ヘキサコセン酸、オクタコセン酸、トリアコンテン酸、ドトリアコンテン酸、テトラトリアコンテン酸等があげられる。ジエン脂肪酸としては、例えばデカジエン酸、ドデカジエン酸、テトラデカジエン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデカジエン酸、イコサジエン酸、ドコサジエン酸、テトラコサジエン酸、ヘキサコサジエン酸、オクタコサジエン酸、トリアコンタジエン酸、ドトリアコンタジエン酸、テトラトリアコンタジエン酸等があげられる。トリエン脂肪酸としては、例えば、デカトリエン酸、ドデカトリエン酸、テトラデカトリエン酸、ヘキサデカトリエン酸、オクタデカトリエン酸、イコサトリエン酸、ドコサトリエン酸、テトラコサトリエン酸、ヘキサコサトレエン酸、オクタコサトリエン酸、トリアコンタトリエン酸、ドトリアコタトリエン酸、テトラトリアコンタトリエン酸等があげられる。これら脂肪酸としては、例えば4−デセン酸、7,10−ヘキサデカジエン酸、6,10−ヘキサデカジエン酸、12−オクタデセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、11,14−イコサジエン酸、5,11,14−イコサトリエン酸、8,11,14−イコサトリエン酸、ビスホモ−γ−リノレン酸、11,14,17−イコサトリエン酸、6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸、13,16−ドコサジエン酸、7,10,13,16−ドコサンテトラエン酸およびアラキドン酸があげられるが、リノール酸、α−リノレン酸およびγ−リノレン酸が好ましく、リノール酸およびα−リノレン酸がより好ましい。本発明では、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸を含有する組成物も用いられる。該組成物としては、天然油脂、食品またはこれらの加水分解物等があげられる。天然油脂としては、例えば東柏油、月見草種子油、大豆油、コーン油、サフラワー油、小麦胚芽油、米油、ごま油、なたね油、オリーブ油、あまに油、乳脂、牛脂、豚油、卵黄油、魚油、海草、藻類、糸状菌類、シダ類、原生動物類等があげられる。食品としては、豆乳等、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸を含有する食品の他、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸を含有しない食品に、該脂肪酸を添加して得られる食品があげられる。天然油脂または食品の加水分解物は、天然油脂または食品に加水分解酵素等を処理することにより得られる。加水分解酵素としては、リパーゼ等があげられる。組成物中のn(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸の含量は、特に制限はないが、好ましくは0.01〜99重量%、より好ましくは0.1〜90重量%である。本発明におけるδ−ラクトン類としては、例えばδ−デカラクトンまたはジャスミンラクトン等、式(II)(式中、Rはn−ペンチルまたはn−ペンテニルを表す)で表されるδ−ラクトン類があげられる。本願発明で用いられる第一の微生物としては、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合、好ましくはシス体の二重結合である脂肪酸の、[n−5]位にヒドロキシを[n−6]位に水素を導入し[n−6]位を単結合とする活性を有する微生物であればいずれも用いられるが、リノール酸、α−リノレン酸またはγ−リノレン酸の13位にヒドロキシを12位に水素を導入し12位を単結合とする活性を有する微生物であることが好ましい。第一の微生物としては、例えば乳酸菌およびビフィズス菌があげられる。乳酸菌としては、例えばペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)等、ペディオコッカス属に属する微生物があげられる。ビフィズス菌としては、例えばビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)等、ビフィドバクテリウム属に属する微生物があげられる。第一の微生物としては、ペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891、ペディオコッカス・エスピー(Pediococcus sp.)IFO3778、ビフィドバクテリウム・ビフィダムJCM7002等が好適に用いられる。本願発明で用いられる第二の微生物としては、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸をβ酸化する活性を有する微生物であれば、酵母等、いかなる微生物でも用いられる。酵母としては、例えばクリベロマイセス属、ザイゴサッカロマイセス属、パフィア属またはサッカロマイセス属に属する微生物等があげられる。クリベロマイセス属に属する微生物としては、例えばクリベロマイセス・マキシアンス(Kluyveromyces marxianus)、クリベロマイセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)、クリベロマイセス・ウィッケラミイ(Kluyveromyces wickerhamii)等、ザイゴサッカロマイセス属に属する微生物としては、例えばザイゴサッカロマイセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii)、ザイゴサッカロマイセス・バイリー(Zygosaccharomyces bailii)、ザイゴサッカロマイセス・シードリ(Zygosaccharomyces cidri)等、パフィア属に属する微生物としては、例えばパフィア・ジャジニー(Pichia jadinii)等、サッカロマイセス属に属する微生物としては、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等があげられる。第二の微生物としては、例えば、クリベロマイセス・マキシアンスIFO1090、クリベロマイセス・サーモトレランスATCC24177、クリベロマイセス・ウィッケラミイ、ATCC24178、ザイゴサッカロマイセス・ルキシーNFR2007、ザイゴサッカロマイセス・バイリーATCC8766、ザイゴサッカロマイセス・シードリATCC46819、パフィア・ジャジニーIFO0987、サッカロマイセス・セレビシエ協会701号(清酒酵母)等が好適に用いられる。これら微生物は、いずれも単独でまたは混合して用いることができる。これらの微生物を人工的変異法、例えば紫外線照射、X線照射、変異誘起剤処理、遺伝子操作などで変異させて得られる変異株あるいは自然に変異した変異株でも、上述の活性を有する微生物であれば、本発明に用いることができる。これらの微生物の培養に用いられる培地としては、乳酸菌、ビフィズス菌または酵母等の培養に通常用いられる培地であれば、炭素源、窒素源、無機物、微量成分などを含有する合成培地、天然培地等、いずれも用いることができる。炭素源としては、澱粉、デキストリン、シュクロース、グルコース、マンノース、フルクトース、ラフィノース、ラムノース、イノシトール、ラクトース、キシロース、アラビノース、マンニトール、糖蜜、ピルビン酸などがあげられこれらを単独または組合せて用いることができる。使用量は1〜20g/Lが好ましい。窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、コーン・スティープ・リカー、カゼイン分解物、大豆粉、野菜ジュース、カザミノ酸、尿素、などの窒素含有有機物などがあげられ、これらを単独または組合せて用いることができる。使用量は1〜20g/Lが好ましい。無機物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅などがあげられ、これらを単独または組合せて用いることができる。使用量は0.1〜2g/Lが好ましい。微量成分としては、ビオチン、サイアミン、ニコチン酸等のビタミン類、β−アラニン、グルタミン酸等のアミノ酸類などがあげられ、これらを単独または組合せて用いることができる。使用量は0.0001〜2g/Lが好ましい。培養法としては、液体培養法、特に深部攪拌培養法が好ましい。培地は、pH2〜11、好ましくはpH3〜10、より好ましくはpH4〜8に調整し、10〜80℃、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは20〜40℃で、通常6時間〜7日間培養する。培地のpH調整にはアンモニア水や炭酸アンモニウム溶液などが用いられる。本発明に用いる培養液の処理物としては、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸の、[n−5]にヒドロキシを[n−6]位に水素を導入し[n−6]位を単結合とする活性を有する微生物の菌体、該微生物を含有する培養液またはそれらの処理物等があげられる。該微生物の菌体処理物としては、該微生物の菌体の乾燥物、冷凍物、冷蔵物、凍結乾燥物、加熱物、加圧物、超音波破砕物、界面活性剤または有機溶剤処理物、溶菌酵素処理物、固定化菌体あるいは菌体から抽出または精製して得られる酵素等があげられる。菌体から酵素を抽出または精製する方法としては、タンパク質の一般的な抽出、精製方法を用いることができる。酵素は、例えば菌体をホモジナイザー、ガラスビーズ、アンモニア溶解、酵素法などを用いて抽出し、ろ過、遠心分離、塩析、有機溶媒沈殿、免疫沈降などの方法を用いる他、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、電気泳動法、吸着剤、アフィニティー吸着体、分子篩などを用いたクロマトグラフィー法、液相分配法、イオン交換法、バッチ法、結晶化法などの手法を単独または組み合わせて用いて精製することができる。該微生物を含有する培養液としては、培養終了後に得られる培養液をそのまま用いてもよいが、濃縮、乾燥、冷凍、冷蔵、凍結乾燥、加熱、加圧、超音波破砕、界面活性剤もしくは有機溶媒処理、または溶菌酵素処理などの手法を単独または組合せて処理物を取得し、これを用いてもよい。次に、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸の製造方法およびδ−ラクトン類の製造方法について述べる。第一の微生物の菌体、培養液またはそれらの処理物を、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸または該脂肪酸を含む組成物に作用させ、生成する[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を採取することにより、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を製造することができる。具体的には、以下の様にして製造することができる。該微生物の菌体、培養液またはそれらの処理物と、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸または該脂肪酸を含む組成物とを、必要に応じて水等の水性媒体を加えた上で、10〜80℃、好ましくは20〜40℃、pH2〜11、好ましくはpH3〜10、より好ましくはpH5〜8で、6時間〜7日間、好ましくは1〜4日間反応させる。反応液中には、必要に応じて、緩衝液、界面活性剤、有機溶剤、抗酸化剤等を添加してもよい。緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液等をあげることができる。緩衝液の濃度は0.01〜1mol/Lが好ましい。界面活性剤としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等をあげることができる。界面活性剤の濃度としては、0.1〜5%が好ましい。有機溶剤としては、エタノール等をあげることができる。有機溶剤の濃度としては、1〜50g/Lが好ましい。抗酸化剤としては、食品に利用可能な抗酸化剤があげられ、例えばα−トコフェロール、ビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、脱脂粉乳等があげられる。抗酸化剤の濃度としては、0.01〜50g/Lが好ましい。微生物の菌体を用いる場合は、第一の微生物を炭素源、窒素源等を含有する5〜50mLの培地に1〜3白金耳植菌し、1〜5日間静置培養して得られる種培養液を、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸または該脂肪酸を含有する組成物に0.1〜5%植菌し、静置または低速で攪拌培養を行う。培養温度は、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸に変換可能な温度であれば、第一の微生物は増殖してもしなくてもよく、好ましくは、5〜40℃である。培養時間は条件により異なるが、通常1〜4日間程度である。反応液中または培養物中に含まれる、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸から変換される[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を抽出および検出する方法としては、通常の脂質の抽出方法および薄層クロマトグラフィー(TLC)による脂質の検出方法を用いることができる。すなわち、約0.2〜10mlの反応液に約30〜80重量%のクロロホルム/メタノール(2:1,v/v)などの溶媒を添加して10分間振とうした後、遠心分離を行って溶媒層を脂質抽出液として分取する。分取した脂質抽出液1〜20μlをシリカゲルプレコートTLCプレートにスポットして適当な溶媒系を用いて展開後、適当な発色剤により発色させる。プレート上の発色により、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を検出することができる。TLCプレートとしては、例えばTLCガラスプレート60(No.5721、メルク社製)等が用いられる。反応液または培養物から[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を単離、精製するには、脂質を単離、精製するための通常の方法が用いられる。すなわち、ろ過、遠心分離などによる菌体除去、ジエチルエーテル/トルエン(15:85〜60:40,v/v)などの溶媒による脂質抽出、吸着樹脂、シリカゲル、逆相シリカゲル、酸化アルミニウム、セルロース、ケイ藻土、ケイ酸マグネシウム、ゲル濾過剤、イオン交換樹脂などを用いるカラムクロマトグラフィーもしくは薄層クロマトグラフィーによる脂質の吸脱着処理、または適当な溶媒系による分配などを行うことによって、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を単離、精製することができ、純度が約90〜100%のものを得ることができる。[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸は、上述の方法で薄層クロマトグラフィーを行うことにより検出することができる。また、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸は、例えば以下の条件で高速液体クロマトグラフィーを行うことにより、定量することができる。装置:SPD−10A(島津製作所製)カラム:TSK−gel ODS−80Ts(東ソー製)、移動相:A液:アセトニトリル/水/酢酸(28:72:0.02,v/v/v)B液:アセトニトリル/水/酢酸(52:48:0.02,v/v/v)A液(10分)、A液→B液(60分 直線濃度勾配)、B液(30分)流量:2ml/分、温度:40℃、検出:UV−200nm[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸は、食品添加物等として有用なδ−ラクトン類の製造に用いることができる。以下に、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸からδ−ラクトン類の製造方法について述べる。第二の微生物の菌体、培養液またはそれらの処理物と、上述の方法により製造される[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を含有する反応液、該反応液処理物または該反応液から単離した[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸とを、必要に応じて水等の水性媒体を加えた上で、10〜80℃、好ましくは20〜50℃、pH2〜9、好ましくはpH3〜8、より好ましくはpH4〜7の条件下で12時間〜7日間、より好ましくは1〜4日間、特に好ましくは2〜3日間反応させる。[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を含有する反応液処理物とは、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を含有する反応液を単離、精製する過程で得られる[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を含有する処理物をいう。反応液には、必要に応じてさらに前述の緩衝液、界面活性剤、有機溶剤、抗酸化剤等を添加することができる。微生物の菌体を用いる場合は、第二の微生物を炭素源、窒素源等を含有する5〜50mLの培地に1〜3白金耳植菌し、1〜5日間静置培養して得られる種培養液、または100mL〜1Lの培地に該種培養液を1〜5%植菌して1〜5日間静置培養して得られる種培養液を、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を含有する反応液に0.1〜50%植菌し、通気攪拌等により好気的条件下で培養を行う。通気攪拌条件には特に限定はないが、通気は0.01〜3vvm、攪拌は200〜1200rpmであることが好ましい。培養温度は、[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸をδ−ラクトン類に変換可能な温度であれば微生物が成育しない温度でもよく、好ましくは5〜35℃である。培養時間は条件により異なるが、通常12時間〜7日間である。第二の微生物との反応または培養終了後、反応液または培養物をpH1〜6、好ましくはpH3〜5に調整し、さらに5〜80℃、好ましくは20〜35℃で30分以上反応させると、δ−ラクトン類の生成量を増大させることができる。該方法は、例えばサッカロマイセス・セレビシエやクリベロマイセス・マキシアンス等を第二の微生物とした場合に、好適に用いられる。反応液または培養物からδ−ラクトン類を単離、精製するには、通常の溶媒抽出法等を用いることができる。すなわち、約0.2〜10mlの反応液または培養液に約20〜60重量%のペンタン/エーテル混合溶媒(5:95〜80:20,v/v)と20〜60重量%の飽和食塩水を添加して10分間振とうした後、遠心分離して得られる上清を分取することにより、δ−ラクトン類を単離、精製することができる。δ−ラクトン類は、例えば以下の条件でガスクロマトグラフィーを行うことにより、定量することができる。装置:ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS−QP5000(島津製作所製)カラム:TC−WAX 60m 0.25mm×0.25μm、ヘリウム流量:0.5ml/分、カラム温度:40℃(0.5分)−5℃/分−240℃(69.5分)圧力:50Kpa(0分)−5Kpa/分−300Kpa(60分)δ−ラクトン類標準標品:δ−デカラクトン(アルドリッチ社製)、ジャスミンラクトン(日本ゼオン社製)上記方法によって得られる、δ−ラクトン類を含有する反応液または培養物は、そのまま、または必要により殺菌した後、もしくはろ過で固形物を除去した後、食品等に添加することができる。また、δ−ラクトン類を精製した後、これを食品等に添加することができる。δ−ラクトン類はいずれの食品に添加してもよいが、例えば乳飲料、乳加工品、畜産加工品、洋菓子、アイスクリーム、スナック等の菓子類、ホワイトソース、チーズソース、ドレッシング等の調味料類などに好適に添加される。δ−ラクトン類は、食品における濃度が、約0.1〜100ppm、好ましくは約0.25〜20ppmとなるように、通常配合される。以下に、本発明の実施例、比較例および試験例を示す。発明を実施するための最良の形態以下の実施例において、FABマススペクトル測定および高分解能FABマススペクトル測定は、JMS−HX/HX110A(日本電子社製)を、NMR測定はJNM−A400(日本電子社製)を用いて、常法に従い行った。実施例1 ヒドロキシ脂肪酸の生成リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、シス−11,シス−14−イコサジエン酸、シス−8,シス−11,シス−14−イコサトリエン酸、シス−11,シス−14,シス−17−イコサトリエン酸、シス−13,シス−16−ドコサジエン酸、シス−12−オクタデセン酸(以上、シグマ社製)を、各々0.5gずつ100mlの栄養培地(酵母エキス0.18g、ポリペプトン0.42g、60%液体グルコース0.62ml、pH6.5)に添加し、抗酸化剤としてイーミックス80(エーザイ製)を0.02ml、分散剤として脱脂粉乳を2g添加して、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)IFO3891の種培養液を3ml植菌し、25℃で2日間、80rpmで攪拌培養した。培養終了後、各々の培養液0.5mlに、等量のクロロホルム/メタノール(2:1,v/v)溶媒を加えて脂質を抽出し、得られた脂質抽出液を5μlずつTLCガラスプレート・シリカゲル60(No.5721、メルク社製)にスポットした。第1段回目の展開として、トルエン/ジエチルエーテル/エタノール/酢酸(50:40:2:0.2,v/v/v/v)を用いて20分間展開した後、プレートを乾燥させた。第2段回目の展開として、ヘキサン/ジエチルエーテル(94:6,v/v)を用いて35分間展開した後、プレートを乾燥させた。発色剤として、6g/100ml酢酸銅を含む8%(w/w)りん酸溶液を適量展開面に噴霧し、140℃で25分間加熱した。結果を第1表に示す。第1表に示されるとおり、いずれの脂肪酸を用いた場合でも、ヒドロキシ脂肪酸が、そのRf値として期待される位置であるRf値=0.13〜0.22の位置に、褐色のスポットとして検出された。実施例2 リノール酸の水酸化物の製造リノール酸5gを1000mlの栄養培地(酵母エキス1.8g、ポリペプトン4.2g、60%液体グルコース6.2mlを含む、pH6.5)に添加し、抗酸化剤としてイーミックス80を0.2ml、分散剤として脱脂粉乳を20g添加して、ペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を30ml植菌し、25℃で2日間、80rpmで攪拌培養した。得られた約1000mlの培養液に約120重量%のジエチルエーテル/トルエン(4:5,v/v)混合溶媒を添加して約20分間振とうした後、遠心分離して上清を分取し、これを脂質抽出液とした。脂質抽出液をロータリーエバポレーターで約50mlに濃縮した後、約80gのシリカゲル(Wako gel C−2000)の入った内径3.14cm×50cmのガラス管を用い、以下の方法により、カラムクロマトグラフィーを行った。カラムを上記の混合溶媒300mlで洗浄した後、濃縮した脂質抽出液を添加し、上記の混合溶媒500mlを3ml/分の速度で流し、5mlずつの画分に分けて溶出した。各溶出画分の脂質を、シリカゲルプレコートTLCプレート上で展開し、13−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸(13−hydroxy−9−octadecenoic acid)を検出、取得した。[13−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸の理化学的性質](1)分子式:C18H34O3(2)FABマススペクトル:m/z 299(M+H)+(3)高分解能FABマススペクトル:m/z 299.2592(M+H)+,C18H35O3としての計算値=299.2586(4)13C−NMRスペクトル(100MHz,CDCl3):δppm(多重度),179.2(s),130.5(d),129.3(d),71.9(d),37.4(t),37.3(t),34.0(t),31.9(t),29.7(t),28.9(t),28.9(t),28.9(t),27.1(t),25.3(t),24.7(t),23.6(t),22.6(t),14.0(q)(5)1H−NMRスペクトル(400MHz,CDCl3):δppm(積分、多重度、結合定数J(Hz)),5.38(1H,m),5.38(1H,m),3.63(1H,m),2.33(2H,t,7.4),2.12(2H,m),2.04(2H,q,6.5),1.63(2H,m),1.52(2H,m),1.52(2H,m),1.44(2H,m),1.31(2H,m),1.31(2H,m),1.31(2H,m),1.31(2H,m),1.31(2H,m),1.31(2H,m),0.89(3H,t,6.8)実施例3 α−リノレン酸の水酸化物(13−hydroxy−9,15−octadecadienoic acid)の製造リノール酸をα−リノレン酸に代える以外は実施例2と同様に行い、13−ヒドロキシ−9,15−オクタデカジエン酸(13−hydroxy−9,15−octadecadienoic acid)を取得した。[13−ヒドロキシ−9,15−オクタデカジエン酸の理化学的性質](1)分子式:C18H32O3(2)FABマススペクトル:m/z 297(M+H)+(3)高分解能FABマススペクトル:m/z 297.2421(M+H)+,C18H33O3としての計算値=297.2430(4)13C−NMRスペクトル(100MHz,CDCl3):δppm(多重度),178.3(s),135.2(d),130.6(d),129.2(d),124.4(d),71.3(d),36.7(t),35.3(t),33.9(t),29.5(t),28.9(t),28.9(t),28.9(t),27.1(t),24.7(t),23.7(t),20.7(t),14.3(q)(5)1H−NMRスペクトル(400MHz,CDCl3):δppm(積分、多重度、結合定数J(Hz)),5.56(1H,m),5.38(1H,m),5.37(1H,m),5.37(1H,m),3.65(1H,m),2.34(2H,t,7.4),2.23(2H,t,7.1),2.15(2H,m),2.07(2H,m),2.03(2H,m),1.64(2H,m,7.1),1.54(2H,m),1.32(2H,m),1.32(2H,m),1.32(2H,m),1.32(2H,m),0.97(3H,t,7.4)実施例4 γ−リノレン酸の水酸化物(13−hydroxy−6,9−octadecadienoic acid)の製造リノール酸をγ−リノレン酸に代える以外は実施例2と同様に行い、13−ヒドロキシ−6,9−オクタデカジエン酸(13−hydroxy−6,9−octadecadienoic acid)を得た。[13−ヒドロキシ−6,9−オクタデカジエン酸の理化学的性質](1)分子式:C18H32O3(2)FABマススペクトル:m/z 297(M+H)+(3)高分解能FABマススペクトル:m/z 297.2426(M+H)+,C18H33O3としての計算値=297.2430(4)13C−NMRスペクトル(100MHz,CDCl3):δppm(多重度),178.6(s),129.6(d),129.4(d),128.4(d),128.4(d),71.8(d),37.4(t),37.1(t),33.9(t),31.9(t),28.9(t),26.8(t),25.6(t),25.3(t),24.4(t),23.6(t),22,6(t),14.0(q)(5)1H−NMRスペクトル(400MHz,CDCl3):δppm(積分、多重度、結合定数J(Hz)),5.38(1H,m),5.38(1H,m),5.38(1H,m),5.38(1H,m),3.64(2H,m),2.80(2H,t,5.6),2.35(2H,t,7.3),2.18(2H,m),2.09(2H,q,7.5),1.67(2H,m),1.55(2H,m,),1.45(2H,m),1.45(2H,m),1.42(2H,m),1.31(2H,m),1.31(2H,m),0.89(3H,t,6.8)実施例5リノール酸を0.5gを100mlの栄養培地(酵母エキス0.18g、ポリペプトン0.42g、60%液体グルコース0.62ml、pH6.5)に添加し、抗酸化剤としてイーミックス80を0.02ml、分散剤として脱脂粉乳を2g添加して、第一の微生物としてペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を3ml植菌し、25℃で2日間、80rpmで攪拌培養した。培養終了後、培養液0.5mlに、等量のクロロホルム/メタノール(2:1,v/v)溶媒を加えて脂質を抽出し、得られた脂質抽出液を5μlずつTLCガラスプレート・シリカゲル60に5μlスポットした。第1段回目の展開として、トルエン/ジエチルエーテル/エタノール/酢酸(50:40:2:0.2,v/v/v/v)を用いて20分間展開した後、プレートを乾燥させた。第2段回目の展開溶媒として、ヘキサン/ジエチルエーテル(94:6,v/v)を用いて35分間展開した後、プレートを乾燥させた。発色剤として、6g/100ml酢酸銅を含む8%(w/w)りん酸溶液を適量展開面に噴霧し、140℃で25分間加熱した。その結果、リノール酸から変換されたヒドロキシ脂肪酸が、Rf値=0.19の位置に、褐色のスポットとして検出された。実施例6α−リノレン酸0.5gを100mlの栄養培地(酵母エキス0.18g、ポリペプトン0.42g、60%液体グルコース0.62ml、pH6.5)に添加し、抗酸化剤としてイーミックス80を0.02ml、分散剤として脱脂粉乳を2g添加して、第一の微生物としてペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を3ml植菌し、25℃で2日間80rpmで攪拌培養した。培養終了後、実施例1と同様にして培養液からの脂質抽出および薄層クロマトグラフィーを行い、α−リノレン酸から変換されたヒドロキシ脂肪酸の検出を行った。その結果、Rf値=0.16の位置に、ヒドロキシ脂肪酸が褐色のスポットとして検出された。実施例7γ−リノレン酸0.5gを100mlの栄養培地(酵母エキス0.18g、ポリペプトン0.42g、60%液体グルコース0.62ml、pH6.5)に添加し、抗酸化剤としてイーミックス80を0.02ml、分散剤として脱脂粉乳を2g添加して、第一の微生物としてペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を3ml植菌し、25℃で2日間80rpmで攪拌培養した。培養終了後、実施例1と同様にして培養液からの脂質抽出および薄層クロマトグラフィーを行い、γ−リノレン酸から変換されたヒドロキシ脂肪酸の検出を行った。その結果、Rf値=0.17の位置に、ヒドロキシ脂肪酸が褐色のスポットとして検出された。実施例8リノール酸5gを1Lの栄養培地(酵母エキス1.8g、ポリペプトン4.2g、60%液体グルコース6.2ml、pH6.5)に添加し、抗酸化剤としてイーミックス80を0.2ml、分散剤として脱脂粉乳を20g添加して、ペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を30ml植菌し、25℃で2日間、400rpmで攪拌培養した。培養終了後、得られた培養液にクリベロマイセス・マキシアンス(Kluyveromyces marxianus)IFO1090の種培養液を30ml植菌し、25℃で4日間、900rpm、1vvmで通気攪拌培養を行なった。その結果、培養物中に245ppmのδ−デカラクトンが得られた。実施例9α−リノレン酸5gを1Lの栄養培地(酵母エキス1.8g、ポリペプトン4.2g、60%液体グルコース6.2ml、pH6.5)に添加し、抗酸化剤としてイーミックス80を0.2ml、分散剤として脱脂粉乳を20g添加して、ペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を30ml植菌し、25℃で2日間、400rpmで攪拌培養した。培養終了後、得られた培養液にクリベロマイセス・マキシアンス(Kluyveromyces marxianus)IFO1090の種培養液を30ml植菌し、25℃で4日間、900rpm、1vvmで通気攪拌培養を行なった。その結果、培養物中に103ppmのジャスミンラクトンが得られた。実施例10930mlの水にコーン油(味の素社製)を40ml添加し、抗酸化剤としてイーミックス80を0.2ml、加水分解酵素リパーゼMY(名糖産業社製)を0.4g添加して、40℃で24時間加水分解処理をした。得られた加水分解コーン油に、脱脂粉乳20g、酵母エキス1.8g、ポリペプトン4.2g、60%液体グルコース6.2mlを添加した後、pHを6.5に調整し、ペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を30ml植菌し、25℃で2日間、400rpmで攪拌培養した。培養終了後、得られた培養液にクリベロマイセス・マキシアンス(Kluyveromyces marxianus)IFO1090の種培養液を30ml植菌し、25℃で4日間、900rpm、1vvmで通気攪拌培養を行なった。その結果、培養物中に392ppmのδ−デカラクトンが得られた。実施例11実施例10と同様にして調製された加水分解コーン油を含有する培地に、ペディオコッカス・エスピー(Pediococcus sp.)IFO3778の種培養液を30ml植菌し、25℃で2日間、400rpmで攪拌培養した。培養終了後、得られた培養液にクリベロマイセス・マキシアンスIFO1090の種培養液を30ml植菌し、25℃で4日間、900rpm、1vvmで通気攪拌培養を行なった。その結果、培養物中に173ppmのδ−デカラクトンが得られた。実施例12実施例10と同様にして調製された加水分解コーン油を含有する培地に、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)JCM7002の種培養液を30ml植菌し、25℃で2日間、400rpmで攪拌培養した。培養終了後、得られた培養液にクリベロマイセス・マキシアンスIFO1090の種培養液を30ml植菌し、25℃で4日間、900rpm、1vvmで通気攪拌培養を行なった。その結果、培養物中に115ppmのδ−デカラクトンが得られた。実施例13実施例10と同様にして調製された加水分解コーン油を含有する培地に、ペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を30ml植菌し、25℃で2日間400rpmで攪拌培養した。培養終了後、得られた培養液にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)協会701号の種培養液を30ml植菌し、25℃で4日間、900rpm、1vvmで通気攪拌培養を行った。その結果、培養液中に23ppmのδ−デカラクトンが得られた。さらに、培養液に90%乳酸((株)武蔵野化学研究所製)を添加してpH3に調整した後、25℃、30分間静置して反応させた。その結果、反応液中に197ppmのδ−デカラクトンが得られた。実施例14実施例10と同様にして調製された加水分解コーン油を含有する培地に、ペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を30ml植菌し、25℃で2日間、400rpmで攪拌培養した。培養終了後、得られた培養液にクリベロマイセス・マキシアンスIFO10900種培養液を30ml植菌し、25℃で4日間、900rpm、1vvmで通気攪拌培養を行った。その結果、培養液中に378ppmのδ−デカラクトンが得られた。さらに、培養液に90%乳酸を添加してpH3に調整した後、25℃、30分間静置して反応させた。その結果、反応液中に783ppmのδ−デカラクトンが得られた。実施例15465mlの水にコーン油(味の素社製)を20ml添加し、抗酸化剤としてイーミックス80を0.1ml、加水分解酵素リパーゼMY(名糖産業社製)を0.2g添加して40℃で24時間加水分解処理をした。得られた加水分解コーン油に、脱脂粉乳を10g、酵母エキス0.9g、ポリペプトン2.1g、60%液体グルコース3.1mlを添加し、pHを6.5に調整し、ペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891の種培養液を15ml植菌し、25℃で2日間、400rpmで攪拌培養した。培養終了後、得られた培養液に栄養培地で2日間培養したクリベロマイセス・マキシアンスIFO1090の種培養液500mlを混合し、25℃で2日間、900rpm、1vvmで通気攪拌培養を行なった。その結果、培養物中に502ppmのδ−デカラクトンが得られた。実施例16実施例10で得られた培養物を85℃、1分間の殺菌処理した後、0.6mlを市販のコーンクリームスープ200gに添加した。このスープ中のδ−デカラクトンの濃度は1.18ppmであった。δ−デカラクトンを含有させた結果、まろやかなミルク感のあるコーンクリームスープとなった。実施例17実施例10で得られた培養物を85℃、1分間の殺菌処理した後、0.3mlを市販の低脂肪乳200mlに添加した。低脂肪乳中のδ−デカラクトン濃度は0.59ppmであった。δ−デカラクトンを含有させた結果、粉乳臭がマスキングされ、ミルク香の改善された低脂肪乳となった。実施例18豆乳500mlに乳酸菌としてペディオコッカス・ペントサセウスIFO3891を15ml植菌し、25℃で1日間静置培養した。培養終了後、得られた培養液にクリベロマイセス・マキシアンスIFO1090を15ml植菌し、25℃で2日間、900rpm、1vvmで通気攪拌培養を行なった。その結果、培養物中に2.7ppmのδ−デカラクトンが得られた。また、該培養物は青臭がマスキングされ、風味の改善された発酵豆乳となった。産業上の利用可能性本発明により、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸から「n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸の製造方法が提供される。また、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸から[n−6]位が単結合の[n−5]−ヒドロキシ脂肪酸を経てδ−ラクトン類を製造する方法が提供される。さらに、n(nは10以上の偶数)個の炭素数よりなる直鎖脂肪酸であって、少なくとも該脂肪酸の[n−6]位が二重結合である脂肪酸を含有する組成物からδ−ラクトン類を含有する組成物の製造方法が提供される。本発明によれば、微生物の菌体、培養液またはこれらの処理物により安価な食品原料に由来するリノール酸、α−リノレン酸およびγ−リノレン酸等の脂肪酸から工業的に有用なδ−ラクトン類を大量かつ容易に製造することができる。 式(I)で表される13−ヒドロキシ−6,9−オクタデカジエン酸。


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