タイトル: | 特許公報(B2)_精神障害の治療方法 |
出願番号: | 2001508974 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/343,A61P 25/22,C07D 307/87 |
サンチェツ・コニー ホッグ・サンドラ JP 4773011 特許公報(B2) 20110701 2001508974 20000707 精神障害の治療方法 ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット 591143065 小林 浩 100092783 片山 英二 100095360 大森 規雄 100120134 鈴木 康仁 100104282 サンチェツ・コニー ホッグ・サンドラ DK PA 1999 00991 19990708 20110914 A61K 31/343 20060101AFI20110825BHJP A61P 25/22 20060101ALI20110825BHJP C07D 307/87 20060101ALN20110825BHJP JPA61K31/343A61P25/22C07D307/87 C07D 307/ A61K 31/ CA/REGISTRY(STN) 国際公開第2000/015220(WO,A1) 特表2002−524510(JP,A) 特開平02−036177(JP,A) 特表2002−531556(JP,A) 特開平04−244024(JP,A) Joubert, A. F., et al.,"Citalopram and Anxiety Disorders",Reviews in Contemporay Pharmacotherapy,1999年,Vol.10, No.2,pp.79-131 Koponen, H., et al.,"Citalopram in the treatment of obsessive-compulsive disorder: an open pilot study",Acta Psychiatrica Scandinavica,1997年,Vol.96, No.5,pp.343-346 Dan J. Stein MB, et al.,"Use of the serotonin selective reuptake inhibitor cotalopram in obsessive-compulsive disorder",Journal of Serotonin Research,1996年,Vol.1,pp.29-33 Lepola, U. M., et al.,"A Controlled, Prospective, 1-Year Trial of Citalopram in the Treatment of Panic Disorder",The Journal of Clinical Psychiatry,1998年,Vol.59, No.10,pp.528-534 Lepola, U., et al.,"Citalopram in the Treatment of Social Phobia: A Report of Three Cases",Pharmacopsychiat.,1994年,Vol.27,p.186-188 Bouwer, C., et al.,"Use of the selective serotonin reuptake inhibitor citalopram in the treatment of generalized social phobia",Journal of Affective Disorders,1998年,Vol.49, No.1,pp.79-82 Lepola, U., et al.,"Citalopram in the Treatment of Early-onset Panic Disorder and Social Phobia",Pharmacopsychiat.,1996年,Vol.29,pp.30-32 Lepola, U., et al.,"The effect of citlopram in panic disorder and agoraphobia",Nordic Journal of Psychiatry,1994年,Vol.48, No.1,pp.13-17 Hytttel, J., et al.,"The pharmacological effect of citalopram resides in the (S)-(+)-enantiomer",Journal of Neural Transmission,1992年,Vol.88, No.2,pp.157-160 5 DK2000000377 20000707 WO2001003694 20010118 2003504332 20030204 7 20070621 井上 典之 【0001】本発明は、よく知られた抗うつ薬シタロプラムのS−対掌体、即ち(S)-1-〔3-( ジメチルアミノ) プロピル〕-1-(4-フルオロフエニル)-1,3-ジヒドロ-5- イソベンゾフランカルボニトリルである化合物エスシタロプラム(INN−名称)又はその薬学的に容認された塩を不安状態及びパニック発作を含む精神障害の治療用薬剤の製造に使用する方法に関する。発明の背景シタロプラムは周知の抗うつ薬であって、数年来市場で入手されてきており、次式Iの構造を有する:【0002】【化1】これは抗うつ活性を有する選択性の、中枢活性なセロトニン (5-ヒドロキシトリプタミン; 5-HT) 再取り込み阻害剤である。この化合物の抗うつ活性は、いくつかの文献、たとえば J. Hyttel, Prog. Neuro-Psychopharmacol. &Biol. Psychiat., 1982, 6, 277-295 及び A. Gravem, Acta Psychiatr. Scand.,1987,75, 478-486 に報告され、そして鬱病及びパニック発作の治療のために現在市場で売買されている。更にこの化合物は、痴呆症及び脳血管障害の治療に効果を示すことがヨーロッパ特許公開(EP-A)第474,580 号公報に開示されている。【0003】エスシタロプラム及びその製造方法は米国特許第4,943,590号明細書に記載されている。シタロプラムの立体選択性、すなわちS−対掌体での5−HT−再取り込み阻害及び該対掌体の抗うつ作用もまた開示されている。S−シタロプラムは現在抗うつ薬として開発されている。【0004】 さまざまな研究では、不安障害、特に全般性不安、及びパニック発作、特に広場恐怖症に関連する障害を含む精神障害を患う患者がアルコール依存症、精神分裂症又は人格障害の患者に見られる身体障害と同等の又はこれよりも大きく損なわれた生活環境基準を有すると示されてきた。更に現在の治療は必ずしも有効でないか又は受け入れられない副作用を引き起こす。【0005】その結果として、精神障害の治療に有用な代替治療が必要である。【0006】本発明者は、エスシタロプラムが精神障害のモデルで強力な効果、たとえば抗不安作用を、並びにパニック発作及び強迫性障害の治療において顕著な効果を示すことを見出した。【0007】発明の説明本発明によれば、エスシタロプラムの新規の使用方法、すなわち精神障害の治療に有用な薬剤の製造にエスシクロプラムを使用する方法を提供する。【0008】 本明細書及び特許請求の範囲を通して、“精神障害”なる用語は不安状態、特に全般性不安障害及び社会不安障害、外傷後のストレス障害、強迫性障害及びパニック発作のグル−プを示すために使用される。【0009】 全般性不安障害及び社会不安障害、外傷後のストレス障害及び強迫性障害”なる用語“はDSMIVで定義されている。【0010】“パニック発作”なる表現は、パニック発作が生じるパニック障害、特異恐怖症、社会恐怖症及び広場恐怖症を含むパニックに関連するすべての疾患の治療を考慮する。更にこれらの障害はDSMIVで定義されている。パニック発作は、しばしば切迫した破滅の感情に関連する極度の不安、心配又は恐怖の突然の襲来がある明確に区別される過程である。この発作の間、動悸、発汗、震え、息の切れる感覚、息苦しい気分、胸の痛み又は不快、吐き気、めまいの感じ、無能力の気分、コントロールを失う又は狂気になる不安、死への恐怖、感覚異常及び悪寒又は顔面潮紅が存在する。【0011】パニック障害は繰り返し懸念される頻発する予期されないパニック発作によって特徴づけられる。広場恐怖症は場所又は状況からの逃避が困難であるかもしれないこと又はその場所又は状況でパニック発作の際に助けが得られないかもしれないことへの不安又は回避である。特異恐怖症及び社会恐怖症(以前の単純恐怖症と共に)は、特異物体又は状態(飛ぶ、高さ、動物、血を見る等々)又は社会的行為条件の存在又は予感によって助長される、過度の又は不当な顕著な、永続的な恐れによって特徴づけられる。【0012】パニック発作が生じる疾患は、発作の発生の予測度によって相互に区別され、たとえばパニック障害において発作は予想することができなず、何らの特別な出来事が関連しない。ところが特異恐怖症で発作は特異的刺激によって誘発される。【0013】 “パニック障害の治療”なる表現は、発作の数の減少又は発作の防止及び(又は)発作の過酷さの緩和を意味する。同様に、全般性不安障害、社会不安障害、外傷後のストレス障害又は強迫性障害の治療は、これらの疾患の治療又は予防、あるいはその症状の緩和を含む。【0014】本発明によれば、エスシタロプラムはその化合物の塩基として又はその薬学的に容認された酸付加塩又はこのような塩の無水物又は水和物として使用することができる。本発明に使用される化合物の塩は非毒性有機酸又は無機酸と共に形成される塩、特にシュウ酸塩である。【0015】エスシタロプラムは“成熟ラットにおけるフットショック誘発された超音波発声の阻害”−テスト、“マウスブラックアンドホワイトテスト”法及び多渇症テストでラセミ化合物の効果と異なる顕著な効果を示すことが分かった。これらの実験は、抗不安作用及びパニック発作に影響を及ぼす作用及び強迫性障害そらぞれに関する標準動物実験である。【0016】本発明によれば、エスシタロプラム又はその薬学的に容認された塩は、すべての適する方法で、たとえば経口又は腸管外で投与することができ、すべての適する形で、たとえば錠剤、カプセル、粉末、シロップ又は通常の注射用溶液又は分散液の形で存在することができる。好ましくは、そして本発明の目的によれば、本発明の化合物を固形薬学的形態で、好ましくは錠剤又はカプセルとしてあるいは注射用懸濁液、溶液又は分散液の形で投与する。【0017】固形薬学的調製物の製造法は、当該技術においてよく知られている。錠剤を有効物質と通常の佐剤(adjuvants) 及び(又は)希釈剤とを混合し、次いでこの混合物を慣用の打錠機で圧縮することによって製造することができる。佐剤又は希釈剤の例として次のものがあげられる:コーンスターチ、ジャガイモデンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、乳糖、ゴム等々。他のすべての佐剤又は添加物、たとえば着色料、芳香剤、保存剤等々をこれらが有効成分と相容であるならば使用してもよい。【0018】本発明の化合物は、有効物質を1つの投薬形中に1日あたり約1.0mg〜50mg、好ましくは5mg〜40mg、最も好ましくは10mg〜20mg含有する単位投薬形、たとえば錠剤又はカプセルで経口的に投与するのが最も好ましい。【0019】エスシタロプラムのシュウ酸塩を米国特許第4,943,590号明細書に記載されているように製造することができ、塩基及びその他の薬学的に容認された塩をこれから標準操作によって得ることができる。【0020】したがって本発明の酸付加塩は不活性溶剤中で酸をエスシタロプラムを処理し、ついで沈殿させ、単離し、場合により公知方法によって再結晶させ、所望ならば湿式又は乾式粉砕又は別の有利な法によって結晶性生成物を微粒子化するかあるいは溶剤−乳化法によって粒子を製造することによって得ることができる。【0021】薬理試験エスシタロプラムを良好に確認されかつ信頼のあるテストモデルで、精神障害への効果に関して試験する。シタロプラム−ラセミ化合物を比較として含む。【0022】成熟ラットにおけるフットショック誘発された発声テスト成熟ラットにおけるフットショック誘発された発声テスト(S nchez C., Effect of serotonergic drugs on footshock-induced ultrasonic vocalization in adult male rats, Behav. Pharmacol. 1993; 4:267-277に詳細に記載されている) は抗不安作用及び抗パニック作用のためのテストである。【0023】実験操作実験の初めに体重150−175gの雄性ラット(Wister WU, Charles River, ドイツ)を使用する。【0024】要約すると、グレーパースペックス(Prespex )で作られ、金属格子床を備えたテストケージ(22cm×22cm×22cm)を使用する。フットショックを2つのポールショッカーから発し、20〜30kHzの範囲で超音波に敏感なマイクロフォンをテストケージの蓋の中央に置く。超音波をマイクロフォンからプリアンプに送り、シグナル整流器でACシグナルからDCシグナルへ変換する。整流されたシグナルの電圧が予め測定された閾値レベルの電圧よりも大きい蓄積時間を記録する。【0025】第一テストセッションの24時間前に、動物を準備する。ラットをそれぞれのテストケージに入れ、その直後にそれぞれ10秒間及び5秒のショック間隔で、4回の1.0mAの逃れられないフットショックを受ける。動物を最後のショック後6分間テストケージ中に放置する。テストの間、薬剤又はサリン(塩類溶液)をテスト30分前に与える。ラットはそれぞれ10秒間、4回の1.0mAの逃れられないフットショックを受ける。ショック間隔は5秒である。最後のショック後に超音波発声が開始し、5分間続くのを記録する。発声に費やされる時間全体を記録する。1週間の中止期間後、ラットを新しいテストセッションに使用する。ラットを全部で7〜8週間使用する。それぞれのテストセッションで、動物のグループを無作為にサリン又はテスト薬剤の処理に配分する。それぞれの処理グループは8匹の動物からなり、サリン処理されたグループ1つ及び薬剤処理されたグループ2〜4つをそれぞれのセッションに含める。それぞれの薬剤を重複する薬用量を用いて2つの別個の実験で少なくともテストする。【0026】結果上記実験によれば、最大効果がシタロプラム−ラセミ化合物では60−70%阻害であり、一方エスシタロプラムでは完全に発声を阻止することができたことが分かる。【0027】ブラックアンドホワイトボックステストこれは抗不安作用のためのテストである。テストモデルは更にS nchez C.,(1995) Pharmacol. Toxicol.77, 71-78 に記載されている。【0028】実験操作体重30−35gの雄性マウス(Lundbeck strain, Charles River, ドイツ)を12時間の逆昼夜サイクル(消灯午後7時)下にマクロロン(macrolon)ケージタイプII中に4つのグループに分けて収容する。マウスをテスト前少なくとも3週間12時間の逆昼夜サイクルに適応させる。室温(21±2℃)、相対湿度(55±5%)及び空気交換(1時間あたり16回)を自動的に調節する。動物は市販の餌ペレット及び水に自由に接近できる。【0029】使用されるテストボックスは、S nchez (1995)(supara)によって記載されているように設計されている。要約すると、テストボックス(45cm×27cm×27cm)は上部が開放され、黒の小部屋側は黒色であり、白の小部屋側は白い色である仕切りによって2つの小部屋に分けられている。より小さい部屋を黒色のパースペックスで作る。より大きい部屋を最低7.5cm以外は白色のパースペックスで作る。この部分を透明なパースペックス(外壁)及び黒色パースペックス(仕切り)で作る。白の小部屋を仕切りの開口部7.5cm×7.5cmによって黒の小部屋につながる。白の小部屋の床を9つの区画に分け、黒の小部屋の床を6つの区画に分ける。白の小部屋を光強度560ルックスに相当するコールドライトを放つSchott KL 1500電灯によって照らす。マウステストのシステムを、横方向に11個の赤外光源及び光電池からなる2列及び長手方向に16個の赤外光源及び光電池からなる1列(下方の列)によって完全にオートメ化する。光電池の下方の列(ケージ床上2cm)は、水平に移動運動(それぞれの小部屋で横切る、進入及び時間)を調べ、一方光電池の上方の列(ケージ床上5cm)は立ち上がるのを調べる。閉じ込めると同時に4つテストから1分間隔で集められたデータを4つテストから記録し、パラドックスデータベースに保存する。【0030】テストボックスを暗く、静かな部屋に置く。マウスをテスト約2時間前に暗くされたコンテナー中のテスト部屋に移す。テスト部屋を黒のカーテンで2つのパートに分ける。薬剤処理を最小の赤い光線が使用された部屋の1つのパートで行う。投与後、マウスをテストまでマクロロンタイプIIケージ中に別々に入れる。前処理時間は30分である。テストボックスを部屋の他のパートに置く。黒の小部屋への開口部側で明るく照らされた白の小部屋の中央にマウスを置くことによってテストを開始する。テストの持続期間は5分、立ち上がる回数、黒及び白の小部屋両方の四角形の間の境を横切る回数及び白の小部屋で過ごす時間を評価する。【0031】結果エスシタロプラムはこのモデルで顕著な効果を示す。【0032】計画的に誘発される多渇症周期的に餌が提供される処理にさらされた、食物を与えなかったラットはもしこのような機会を与えられれば、多量の水を飲むことになる。このような行動現象は計画的に誘発される多渇症と呼ばれ、正常の行動の過度の表現として考えることができる。計画的に誘発される多渇症は強迫性障害のモデルとみなされる(Woods 等、1993)。【0033】テスト操作雄性ウスターラット(Mollegard)をペアーで収容し、テストの前及びテストの持続期間を通して2週間餌が制限されたダイエットを続ける(正常体重あたり80%)。多渇症を誘発するために、ラットをテスト部屋に入れ、そこでペレットディスペンサーが60秒毎に60mg餌ペレット1個を自動的に分け与える。水はテスト部屋でいつでも得ることができる。ラットを1週間あたり4〜5回試験する。3〜4週間訓練後、ラットの70%が30分のテストセッション1回あたり>10mlを飲む。【0034】ラットが一定の飲用レベルを達成するやいなや、化合物をテストすることができる。シタロプラム(40mg/kg)又はLu26−054(20mg/kg)をテスト60分前に及び非テスト日の10:00に経口投与させる。水摂取量を前薬用量(ベースライン)レベルの百分率として示す。【0035】結果エスシタロプラムは水摂取で顕著な減少を生じ、一方シタロプラムは効果がない。【0036】これらのすべての実験から、エスシタロプラムが強力な抗精神疾患効果、特に抗不安作用を有し、そしてパニック発作及び強迫性障害に影響を及ぼすことが分かる。 エスシタロプラム又はその薬学的に容認された塩を含む、全般性不安障害の治療のための薬剤(但し、遊離の塩基または製薬上許容しうる塩および/またはその溶媒和物の形態の(R)−5−カルバモイル−8−フルオロ−3−N,N−ジシクロブチルアミノ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン、および遊離の塩基または製薬上許容しうる塩および/またはその溶媒和物の形態のエスシタロプラムを含有する組成物を除く)。 単位薬用量として投与される、請求項1記載の薬剤。 単位薬用量が有効物質を1日あたり1.0mg〜50mgの量で含有する、請求項1又は2記載の薬剤。 単位薬用量が有効物質を1日あたり5mg〜40mgの量で含有する、請求項1又は2記載の薬剤。 単位薬用量が有効物質を1日あたり10mg〜20mgの量で含有する、請求項1又は2記載の薬剤。