生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_活性汚泥に含まれる硝化細菌の高濃度培養方法
出願番号:2001503616
年次:2010
IPC分類:C12N 1/20,C02F 3/34


特許情報キャッシュ

米田 哲 JP 4602615 特許公報(B2) 20101008 2001503616 20000605 活性汚泥に含まれる硝化細菌の高濃度培養方法 株式会社バイコム 500236257 蔦田 璋子 100059225 蔦田 正人 100076314 米田 哲 JP 1999163479 19990610 20101222 C12N 1/20 20060101AFI20101202BHJP C02F 3/34 20060101ALI20101202BHJP JPC12N1/20 AC12N1/20 DC12N1/20 FC02F3/34C02F3/34 101Z C12N 1/20 C02F 3/34 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平07−299495(JP,A) 特開平06−206093(JP,A) 特開平06−304593(JP,A) 特開平11−033577(JP,A) 米国特許第05705072(US,A) 独国特許発明第04216357(DE,C2) 特開2000−084596(JP,A) 6 JP2000003656 20000605 WO2000077171 20001221 12 20070402 飯室 里美 本発明は、活性汚泥を原料とした硝化細菌(海洋性硝化細菌、淡水性硝化細菌)または脱窒細菌(海洋性脱窒細菌、淡水性脱窒細菌)の高濃度培養方法、該方法に用いる培養促進剤、及び活性汚泥の減量加工処理方法に関する。 水系における窒素汚染、とりわけアンモニアを除去する方法には、物理化学的な方法と生物を活用する方法とがある。 物理化学的な方法としては、アンモニアストリッピング法、不連続点塩素注入法、ゼオライト法、イオン交換法等が挙げられる。 しかしながら、これらの方法には、副産物による二次公害や効率の面で問題が多かった。 一方、生物を活用する方法として、硝化細菌(アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌)と脱窒細菌(硝酸酸化細菌)による微生物処理法が最も有力であることはよく知られている(特許文献1〜7)。水系における有害な残留窒素は、好気的環境下で硝化細菌の働きによって硝酸イオンとなって蓄積し、嫌気的環境下で脱窒細菌によって安全な窒素ガスに還元され大気中に放出される。 しかしながら、硝化細菌は、増殖速度が遅く、コロニーを作って生活しないことに起因して、その存在が確認されて百年以上経た今日まで、工業的に大量に高濃度培養することに成功したという報告はない。 すなわち、従来の培養方法は、純粋培養を目指す試験管レベルの小規模のものであり、2ヶ月程ではフラスコ内の培地が懸濁しない程度であり、工業的に応用できる培養方法とは言えなかった。 説明を加えると、硝化細菌の培養において硝化が始まると、pHが低下するわけであるが、従来、このpHを効果的に上げる方法が分からなかった。一方、硝化に伴って炭素源が減少していくわけであるが、従来、炭素源の供給として二酸化炭素を使用していた。二酸化炭素の供給により確かに炭素源の枯渇を防ぐことができるが、前述したpHの低下がさらに進み、延いては硝化細菌の活動が停止し、これが細菌増殖の限界であった。特開平7−299495号公報特開平6−206093号公報特開平6−304593号公報特開平11−33577号公報米国特許第5705072号公報独国特許発明第4216357号明細書特開2000−84596号公報 本発明は上記に鑑みて、硝化細菌を大量に、かつ高濃度に培養する硝化細菌の高濃度培養方法を提供することを目的とする。 本発明は、下水汚泥やし尿汚泥等の活性汚泥にわずかに含まれる硝化細菌を高濃度に培養する方法であって、海水希釈活性汚泥を、培養槽中にて、溶存酸素2〜5mg/リットル、pH7.0〜9.0、温度20〜40℃の条件下において所定期間、NH4−N含有液により硝化馴養するとともに、馴養過程において酸性側に傾くpHを、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物よりなる培養促進剤の投入によって前記した範囲内に常時維持することにより、前記活性汚泥に含まれる硝化細菌を馴養集積せしめ、死滅した雑菌と硝化細菌とを含む硝化細菌フロックを形成させ、このフロックを上記培養槽内にて沈殿させることを特徴とする硝化細菌の高濃度培養方法である。 本発明により、硝化細菌を大量に、かつ高濃度に培養することができる。汚泥硝化馴養装置の一例を示した略示説明図である。汚泥の硝化馴養過程においてNH4−N濃度の変化を示したグラフ図であって、NH4−N(100mg/リットル)投入4時間後の残存NH4−N濃度を示す曲線図である。汚泥の硝化馴養過程においてMLSS濃度の経口的変化を示したグラフ図である。汚泥の大幅な減量(減容)性能を備えた高度水処理装置の略示説明図である。本実施例における曝気槽の形態の一例を示した略示説明図である。陸上における閉鎖養殖装置の一例を示した略示説明図である。[活性汚泥] 本発明に使用する活性汚泥は、下水汚泥やし尿汚泥が挙げられる。これらは、淡水希釈処理されたものであってもよく、あるいは海水希釈処理されたものであっても構わないが、海水希釈汚泥を原料として硝化細菌または脱窒細菌を培養すれば、希少価値とされる海洋性硝化細菌、海洋性脱窒細菌が大量に得られるので、海水希釈処理された活性汚泥を使用することが好適である。 説明を加えると、天然の海水中には淡水性硝化細菌よりも高い耐塩性を有すると考えられる海洋性の硝化細菌が存在するが、その存在量は非常に少なく、純粋分離が困難であるため、淡水性硝化細菌に比べてその研究は遅れている。しかしながら、本発明の培養方法であれば、前述したように海水希釈処理された活性汚泥を原料とすることにより、高い濃度の海洋性硝化細菌を得ることができる。海洋性硝化細菌は、多層の細胞壁を備え、処理水の浸透圧変化や生育を阻害する種々の化学物質に対して強力な耐性を持つ。[硝化細菌の培養(馴養)条件] 活性汚泥に含まれる硝化細菌の培養は、当該活性汚泥を、所定期間(例えば、1ヶ月、2ヶ月あるいは3ヶ月)、汚泥脱水濾液や(嫌気性)消化脱離液などの汚泥処理廃液により硝化馴養するわけであるが、この硝化馴養は好気的に行なう必要があるため、この際の溶存酸素(DO)を2mg/リットル以上とする必要がある。しかしながら、溶存酸素濃度を無闇に高くし過ぎると逆に増殖スピードが低下する傾向になることが今回の実験で初めて分かった。以下詳述する。 硝化細菌による硝化スピードは、溶存酸素が高ければ高いほど速くなるので、硝化馴養集積にあっても同様、高いほど速く進むであろうと考えられていたが、あにはからんや、活性汚泥を原料とした硝化細菌の馴養集積は、溶存酸素(DO)5mg/リットルを超えるところぐらいからそのスピードが低下することが分かった。なお、溶存酸素(DO)濃度2〜4mg/リットルが最も好ましい。 また、pHは7.0〜9.0である必要があり、(特に海水希釈の活性汚泥を使用する場合)7.5〜8.5が好ましく、7.5〜7.8が更に好ましい。 培養温度に関しては、20〜40℃の範囲であれば増殖スピードが速く、25〜35℃であればさらに好ましい。 なお、培養の過程において、pHが低下するとともに、アルカリ度が減少する。すなわち、アンモニア酸化細菌によるNH4+のNO2−への酸化、亜硝酸酸化細菌によるNO2−のNO3−への酸化は次の(A)(B)の2式で示される。なお、式(C)は、硝化細菌全体としての式である。(アンモニア酸化細菌) NH4+ + 1.5O2 → NO2− + H2O + 2H+ …(A)(亜硝酸酸化細菌) NO2− + 0.5O2 → NO3− …(B)(混合系) NH4+ + 2.0O2 → NO3− + H2O + 2H+ …(C) これらより、NH4−NをNO3−Nにまで酸化するのに4.57mgO2/mgNH4−Nの酸素を必要とし、硝化反応の進行に伴い水素イオンが放出されるため、培養系のpHが低下するとともにアルカリ度が減少することが分かる。pHの低下に伴い培養速度が減少するため、緩衝液などを使ってpHを所定値に保持しなければ、従来法と同様、微生物の活動が停止してしまう。 そこで本発明では、培養過程において酸性側に傾くpHを、非水素化物と水素化物とを混合物にして緩衝作用を備えたものが好適であると考え、具体的な化合物を見い出すべく、多数の化合物によるトライ・アンド・エラーを重ねた結果、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの組み合わせよりなる培養促進剤の投入によってpHを復帰させることが最も好適であることを見い出した。 一般に、細菌細胞の合成反応が次式で表現できることが知られている。 4CO2 + HCO3− + NH4+ + H2O → C5H7NO2 + 5O2 これを、上記した混合培養系(C)の生化学反応式に適用すると、およそ次のようになる。 NH4+ + 1.86O2 + 1.98HCO3−→ 0.021C5H7NO2 + 0.98NO3− + 1.04H2O + 1.88H2CO3 上式から明らかなように、硝化細菌の培養には、エネルギー基質のアンモニウムイオンと比較しても多量の炭素源が必要である。 前述したように、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの組み合わせよりなる培養促進剤を供給することにより、硝化細菌の炭酸同化のための炭素源を同時に供給することができる。以下、説明を加える。 炭酸ナトリウムのみを用いると、当該炭酸ナトリウムが強アルカリであることからしても、低下するpHを上げる効果は充分に認められるが、pH上昇の効果が大きいために多量には使用できず、充分な炭素源を供給するには不向きな点がある。他方、炭酸水素ナトリウムのみを用いる場合には、無機炭素源としての供給という点では問題がないものの、pHを保持するという点では大量の供給が必要となり好ましくない。 このような長短所に鑑み、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの混合物が好適に利用できる。当該混合物の水溶液を用いることによって、漸次低下していくpHを一定に保ちつつ、生体の炭酸同化のための無機炭素源を有効に供給することが可能となった。 前記混合物における炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの配合割合としては、炭酸ナトリウム:炭酸水素ナトリウムが、モル比で4〜7:4〜8であることが好適であり、具体的には、炭酸ナトリウム0.4〜0.7(mol/リットル)と炭酸水素ナトリウム0.4〜0.8(mol/リットル)の混合水溶液が効果的である。 なお、培養系のpHの監視は、連続的に行なってもよいし、所定時間ごとに行なってもよい。pHコントローラー等の連続pH監視装置を利用することが好ましいが、これに限らず、フェノールレッド等のpH指示薬を利用して手作業で行なうことも可能である。 NH4−N含有液におけるアンモニアの濃度は100mg/リットル以上であって300mg/リットル以下、さらには200mg/リットル以下に抑えることが好ましい。アンモニアは、化学独立栄養細菌であるアンモニア酸化細菌が炭酸同化を行って生育する際のエネルギー源であるが、過剰にあると、むしろ生育・増殖の阻害になる場合がある。また、アンモニア酸化細菌と同様に活性汚泥に含まれる亜硝酸酸化細菌は、アンモニア酸化細菌によって生成した亜硝酸を引き継いで酸化する細菌であるという割りには高い亜硝酸濃度に弱いため、アンモニアの初期濃度を無闇に高く設定することはできない。従って、アンモニアの濃度が300mg/リットルを超える場合には、適宜、海水あるいは淡水などで希釈することが好適である。 なお、NH4−N含有液として、水処理場内にて発生する汚泥脱水濾液や消化脱離液などの汚泥処理廃液を利用することが好ましい。 上記した培養条件で、活性汚泥を、汚泥脱水濾液や消化脱離液などの汚泥処理廃液により硝化馴養することにより当該活性汚泥にわずかに含まれる硝化細菌を高濃度に培養することができるわけであるが、これに加え、本発明によれば、活性汚泥を2ヶ月で1/3〜1/4に減容することができ、かつ比重の大きい硝化汚泥を得ることができる。 すなわち、そもそも活性汚泥中には硝化細菌が0.35%程度含有するといわれている。このような活性汚泥を原料としてNH4−N含有液により約2ヶ月間、活性汚泥を馴養集積することにより、当該活性汚泥中の硝化細菌の含有率が、約10倍(3.5%)に増加する。その過程において、他の雑菌は、外部から栄養源(エサ)が与えられないことから共食いし死滅していく。そしてこの結果として、活性汚泥が減量する(減容される)。 雑菌がほとんど死に絶えると、「グラニュー(粒)」と呼ばれる比重の大きい難分解性有機物となり、これを核として周囲に硝化細菌が取り付く。硝化細菌が取り付いた難分解性有機物は、比重の大きさから培養系において沈降する。硝化細菌を高濃度に培養するには、この沈降性の良さが必要となる。すなわち、一般的にいって硝化細菌は比重が軽く、純粋培養では浮遊してしまう。そのため、硝化細菌は培養系から流れ出てしまう可能性が高く、高濃度培養は期待できない。これにより、高濃度の培養には、上記したような核(難分解性有機物)の生成が必要になるわけであるが、核の生成は、硝化細菌の純粋培養では見られず、活性汚泥を原料としたときにのみ見られる。 以下、本発明の一実施例を挙げて説明するが、本発明はこれによって限定するものではない。[硝化細菌の高濃度培養(硝化活性汚泥の製造)] 第1図に示すfill and draw式培養槽(30リットル)で2日サイクルの回分培養を行った。すなわち、海水希釈し尿汚泥、及び嫌気性消化脱離液(NH4−Nの濃度が100mg/リットルとなるように海水希釈されている)を培養槽に入れ、培養槽内温度をサーモスタットとヒータで27℃となるように、またpHをpHコントローラーおよび培養促進剤(1NのNaHCO3および0.5NのNa2CO3からなる緩衝剤)により7.5〜8.5に保つように設定して培養を行った(初期のpHが8.5以上の時は、希硫酸を加えて8.5以下に調整する)。また、溶存酸素(DO)濃度が4mg/リットルになるように散気球で曝気量を調節した。 曝気開始1日後に終濃度が100mg/リットルとなるように再び消化脱離液を添加した。また、2日目には曝気を止め、1時間汚泥を沈殿させ上澄液を除去した後、消化脱離液を投入し、曝気を再開するという運転を繰り返した。 元の海水希釈し尿汚泥の塩分濃度が海水比80%にあたるため、馴養は海水比80%から開始し、100mg/リットルのNH4−Nが培養1日後に完全にNO3−Nに硝化されるようになった段階で海水比を100%に上げた。 曝気開始後の数時間はNH4−N濃度が直線的に減少するため、曝気開始から、0,1,2,3,4時間後の残存NH4−N濃度を測定し、NH4−N濃度が直線的に変化する区間の傾きから変化速度を求め、これをMLSS濃度で除した値を硝化速度とした(下記式参照)。 約60日間の海水馴養期間を経て馴養が完了した海水馴養硝化活性汚泥(AMNS)のSV30、SVIを測定し、沈降特性を調べるとともに、光学顕微鏡を用いてフロック形成状況を観察した。 第2図のグラフに、し尿汚泥の海水馴養過程を示す(図には、濃度100mg/リットルのNH4−Nの4時間後の濃度を示した)。 第2図のグラフから、馴養開始2ヶ月後には、海水比100%で100mg/リットルのNH4−Nを4時間でほぼ完全に硝化できるAMNSを調製することができることが分かる。無機炭素源の不足による硝化活性汚泥の損失を防ぐべく、NaHCO3とNa2CO3を組み合わせた無機炭素源によるpH調整を採用したが、これにより、馴養2ヶ月後には、第3図に示すように、AMNSのMLSS濃度を馴養前と比べ2倍に増やすことができた。 AMNSにおける硝化細菌の硝化速度を下記表1に示す。 活性汚泥中の硝化細菌の存在率は約0.35%であると報告されているが、これから計算すると、海水馴養硝化活性汚泥(AMNS)中の硝化細菌が高い濃度(約3.5%)で存在しているものと推測される。 培養槽を静置させると、細菌フロックが確認でき、比重が海水より重たいため大半の細菌フロックが沈澱する。これは、アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌の各菌それぞれの純粋培養では見られないが、活性汚泥を原料とした混合培養において現れるものである。AMNSのフロックを顕微鏡で観測した結果、汚泥は直径50〜100μmのフロックからなることが分かった。また、AMNSを走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した結果、汚泥フロック内部に20〜100μmの糸状菌や粘着質物からなるグラニュールが含まれていることが分かった。そして、AMNSのSV30、SVIを求めたところ、上記表1に併記した通り、9%、42.6となり、沈降性に優れていることが分かった。これにより、海水希釈のし尿処理場汚泥から、海水中で(もちろん、淡水中でも)高い活性を持つ硝化活性汚泥を極めて短期間で大量生産できることが明らかとなった。 アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌の個々の純粋培養と比較して、活性汚泥を原料とした混合培養の長所は次のとおりである。 純粋培養系では、エネルギー基質としてそれぞれアンモニア、亜硝酸が別個に必要であるが、混合培養系ではエネルギー基質としてアンモニアだけ供給すれば済む。 また、純粋培養系では、菌体を高濃度に増殖することが極めて困難であるが、混合培養系では培地を懸濁させる程度まで増殖することが容易である。これは、アンモニア酸化細菌や亜硝酸酸化細菌が同族内などではコロニーやフロックを形成しないで、浮遊生活を送る生態に起因すると推察される。 なお、このようにして得た海洋性硝化細菌は工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(寄託番号:FERM BP−7150,識別表示:BICOM Nitrifying Bacteria SWAQ SP−78)。[高度水処理装置(硝化脱窒装置)] 次に、硝化汚泥馴養槽と脱窒汚泥馴養槽を組み込んだ、馴養汚泥返送法による下水汚泥の減量化と高度水処理化システムについて、第4図に基づいて述べる。 水処理場において、被処理水である窒素化合物を含んだ下水(流入水)は最初沈殿池に送られ、上清み液が曝気槽に運ばれる。そしてここで、硝化活性汚泥および脱窒活性汚泥による微生物処理を受け、流入水に含まれる窒素化合物が窒素ガスに変換される。流入水は、このように脱窒されたのち、最終沈殿池に搬送され、その上清み液が処理水として排出される。 通常であれば、この最終沈殿池における沈殿物を、活性汚泥として曝気槽に返送するが、本実施例の硝化脱窒装置では、この活性汚泥を曝気槽に返送せず、硝化汚泥馴養槽(N/B Enricher)と脱窒汚泥馴養槽(D/B Enricher)にそれぞれ所定量を搬送する。また、残りの活性汚泥を濃縮槽に送る。 硝化汚泥馴養槽(N/B Enricher)に搬送された活性汚泥は、前項にて説明した如く、この馴養槽内において硝化馴養が行なわれ、硝化細菌を高濃度に含む硝化活性汚泥が生産(製造)される。なお、このときのNH4−N含有液としては、水処理場内に在るものが使用される。すなわち、消化槽からの消化脱離液および/または汚泥脱水槽からの脱水濾液が使用される(第4図参照)。 脱窒汚泥馴養槽(D/B Enricher)に搬送された活性汚泥は、この脱窒汚泥馴養槽内において脱窒馴養が行なわれ、脱窒細菌を高濃度に含む脱窒活性汚泥が生産(製造)される。なお、このときのNO3−N含有液としては、硝化汚泥馴養槽(N/B Enricher)により発生した硝化液が使用される。 前述したように、従来は、最終沈殿池における沈殿物を活性汚泥として曝気槽に返送していたが、本実施例の硝化脱窒装置では、この活性汚泥を曝気槽に返送せず、硝化汚泥馴養槽と脱窒汚泥馴養槽にそれぞれ搬送し、これら馴養槽において、硝化汚泥馴養槽ならば硝化細菌のみを、また脱窒汚泥馴養槽ならば脱窒細菌のみを集積培養するので、その他の細菌が死滅し(消滅し)、ほとんどを細菌で占める活性汚泥の容量(容積)が大幅に減少するといった作用効果を奏する。 このようにして製造した各々高濃度の硝化活性汚泥および脱窒活性汚泥を曝気槽に返送することにより、今までの水処理よりも高速で、しかも高能率な処理を行なうことができる。 曝気槽の形態としては、従来公知の形態を採ることができる。例えば、第5図に示すように、(a)硝化槽と脱窒槽よりなる形態、(b)第1脱窒槽と第1硝化槽と第2脱窒槽からなる形態、(c)硝化槽と脱窒槽を繰り返して設置した形態などが挙げられる。[陸上における閉鎖養殖装置] 本発明により得られた硝化活性汚泥と脱窒活性汚泥の利用例として、陸上における閉鎖養殖装置を第6図に基づいて説明する。 図に示すように、海水とともに魚介類、例えばヒラメ、オニオコゼ、クルマエビなどの稚魚の多数を入れた飼育槽から、一定量の海水が沈殿槽に排出される。この排出液にはアンモニア性窒素(NH4−N)が含まれる。沈殿槽において、固形分が沈殿し、上清み液がポンプによってオゾン反応槽に運ばれ、オゾンと接触することにより殺菌処理が施される。 殺菌処理された液はその後、物理濾過槽を介して生物濾過槽に搬送される。この生物濾過槽は、少なくとも1つの硝化槽と、少なくとも1つの脱窒槽とよりなる。前記硝化槽には、前述の硝化活性汚泥が充填されており、脱窒槽には、脱窒活性汚泥が充填されている。この生物濾過槽における硝化槽と脱窒槽の組み合わせ方としては、第5図に示したように、例えば(a)硝化槽と脱窒槽よりなる形態、(b)第1脱窒槽と第1硝化槽と第2脱窒槽からなる形態、(c)硝化槽と脱窒槽を繰り返して設置した形態などが挙げられる。生物濾過槽を通過することにより、アンモニア性窒素は、硝化活性汚泥に高濃度に含まれる硝化細菌によって酸化されて硝酸性窒素に代わり、硝酸性窒素は、脱窒活性汚泥に高濃度に含まれる脱窒細菌によってさらに酸化されて窒素ガスに代わる。 このように排水中の窒素化合物を窒素ガスに変換した後、再度、飼育槽に返送される。 本実施例における陸上閉鎖養殖装置にあっては、工場のような室内で、飼育水の温度、溶存酸素、pH、照度、水流など、あらゆる環境条件をコンピュータによって制御管理することができるので、人手がかからず、飼育費も安くなるため、生産コストを減少させることができる。また、それのみならず、ウイルス等の病原菌が侵入するといった心配が無く、さらには、海洋汚染をひき起こすといった心配が無い。すなわち、従来行なわれていた養殖は、海の水を連続的にあるいは断続的に汲み上げて飼育槽の中に投入しているので、常に養魚が海洋中のウイルスに感染するおそれがあった。しかしながら、本実施例の閉鎖養殖装置にあっては、飼育水を循環させて使っているので、ウイルスが侵入する心配はない。また、従来の養殖法では、養魚から排泄されるアンモニアを飼育槽から排除すべく、飼育水を薄めて海洋にタレ流していた。これにより、養殖排水による海水汚染が問題視されているが、本実施例では、海洋に排出する(流す)飼育水は、実質的にはゼロであるため、海洋汚染をひき起こす心配はない。 以上のように、本発明により、活性汚泥を原料とした硝化細菌(海洋性硝化細菌、淡水性硝化細菌)、該方法に用いる培養促進剤、及び活性汚泥の減量加工処理方法を提供することができ、従来は不可能とされてきた硝化細菌を大量に、かつ高濃度に培養することができる。また、汚泥を大幅に減容することができる。 寄託機関の名称:NITEバイオテクノロジー本部 特許微生物寄託センター あて名:郵便番号292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(TEL:0438−20−5580) 寄託日:2000年4月27日 受託番号:FERM BP−7150 下水汚泥やし尿汚泥などの活性汚泥にわずかに含まれる硝化細菌を高濃度に培養する方法であって、 海水希釈活性汚泥を、培養槽中にて、溶存酸素2〜5mg/リットル、pH7.0〜9.0、温度20〜40℃の条件下において所定期間、NH4−N含有液により硝化馴養するとともに、馴養過程において酸性側に傾くpHを、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物よりなる培養促進剤の投入によって前記した範囲内に常時維持することにより、前記活性汚泥に含まれる硝化細菌を馴養集積せしめ、死滅した雑菌と硝化細菌とを含む硝化細菌フロックを形成させ、このフロックを前記培養槽内にて沈殿させることを特徴とする硝化細菌の高濃度培養方法。 前記NH4−N含有液が、汚泥脱水濾液や消化脱離液等の汚泥処理廃液であることを特徴とする請求項1に記載の硝化細菌の高濃度培養方法。 前記溶存酸素が2〜4mg/リットル、pHが7.5〜8.5、温度が25〜35℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硝化細菌の高濃度培養方法。 前記した混合物における炭酸ナトリウム:炭酸水素ナトリウムの混合割合が、モル比で4〜7:4〜8であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硝化細菌の高濃度培養方法。 前記汚泥処理廃液におけるアンモニア濃度が、100〜300mg/リットルであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の硝化細菌の高濃度培養方法。 硝化細菌を高濃度に含む硝化活性汚泥の製造方法であって、 海水希釈活性汚泥を、培養槽中にて、溶存酸素2〜5mg/リットル、pH7.0〜9.0、温度20〜40℃の条件下において所定期間、NH4−N含有液により硝化馴養するとともに、馴養過程において酸性側に傾くpHを、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物よりなる培養促進剤の投入によって前記した範囲内に常時維持することにより、前記活性汚泥に含まれる硝化細菌を馴養集積せしめ、死滅した雑菌と硝化細菌とを含む硝化細菌フロックを形成させ、このフロックを前記培養槽内にて沈殿させることを特徴とする高濃度硝化細菌含有硝化活性汚泥の製造方法。


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