タイトル: | 特許公報(B2)_カロチノイドの製造方法 |
出願番号: | 2001386330 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12P 5/02,C12R 1/89 |
林 勝彦 JP 3978582 特許公報(B2) 20070706 2001386330 20011219 カロチノイドの製造方法 株式会社日健総本社 399127603 辻本 一義 100072213 林 勝彦 20070919 C12P 5/02 20060101AFI20070830BHJP C12R 1/89 20060101ALN20070830BHJP JPC12P5/02C12P5/02C12R1:89 C12P 1/00-41/00 BIOSIS/WPIDS(STN) CA(STN) JSTPlus(JDream2) Plant Cell Pysiol,1990,Vol.31,No.5,p.689-696 J.Pyhcol.,1996,Vol.32,No.2,p.272-275 1 2003180387 20030702 8 20031110 田中 晴絵 【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、ドナリエラ藻体を特定の培地で培養することによる非環式カロチノイドであるフィトエンを含有するカロチノイドの製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来から存在するカロチノイドの製造方法は、Ami Ben-Amotz が報告している文献 [EFFECT OF LOW TEMPERATURE ON THE STEREOISOMER COMPOSITION OFβ-CAROTENE IN THE HALOTOLERANT ALGA DUNALIELLA BARDAWIL / J.phycol.32,272-275(1996)] 等に記載されているように、1.5Mの塩化ナトリウム、50mMの炭酸水素ナトリウム、5mMの硫酸マグネシウム、2mMの硝酸カリウム、0.3mMの塩化カルシウム、0.2mMのリン酸二水素カリウム、1.5μMの塩化第二鉄、6μMのEDTA、7μMの塩化マンガン、1μMの塩化第二銅、1μMの塩化亜鉛、1μMの塩化コバルト、1μMのモリブデン酸アンモニウムを含有しpH8に調製した培地で、光を照射しながらドナリエラ藻体を培養するものとしている。【0003】この従来の製造方法より得られるカロチノイドは、主としてオールトランス型β−カロチン、9−シス型β−カロチンであり、オールトランス型α−カロチン、オールトランス型γ−カロチン、β−クリプトキサンチン、エチネノン、ルテイン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチンなども含有することが知られている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記ドナリエラ藻体の培養では、癌や生活習慣病の予防などに特に有用な非環式カロチノイドであるフィトエンを含有するカロチノイドを製造することができなかった。【0005】そこで、この発明は、ドナリエラ藻体を特定の培地で培養することにより、従来のドナリエラ藻体の培養により製造されるカロチノイド以外の非環式カロチノイドであるフィトエンを含有するカロチノイドを簡単に製造することを目的としてなされたものである。【0006】【課題を解決するための手段】そのため、この発明のカロチノイドの製造方法は、産生能調節剤としてニコチンを添加し、pH調整を行った培地で、光照射の環境下、ドナリエラ藻体を培養することにより、非環式カロチノイドであるフィトエンを含有するカロチノイドを得るものとしている。【0007】この発明で用いられるドナリエラ藻体は、ドナリエラ・サリーナ種(Dunaliella salina) 、ドナリエラ・バーダウィル種(Dunaliella bardawil) などのすべてのドナリエラ属に属する種を含むものとする。【0008】この発明において、前記産生能調節剤の添加量は、1μM〜1Mが好ましい。1μM未満であったり1Mを越えると、フィトエンの産生能が低下したり、産生能がなくなる。【0009】この発明において、ドナリエラ藻体を培養する培地は、ドナリエラ藻体が培養できればどのような培地でもよいが、例えば、前記Ami Ben-Amotz が報告している文献に記載されたような、1.5Mの塩化ナトリウム、50mMの炭酸水素ナトリウム、5mMの硫酸マグネシウム、2mMの硝酸カリウム、0.3mMの塩化カルシウム、0.2mMのリン酸二水素カリウム、1.5μMの塩化第二鉄、6μMのEDTA、7μMの塩化マンガン、1μMの塩化第二銅、1μMの塩化亜鉛、1μMの塩化コバルト、1μMのモリブデン酸アンモニウムを含有する培地とすることができる。【0010】この発明において、ドナリエラ藻体を培養する環境として、培養温度は約25〜35℃の範囲が好ましく、培地のpHは約7〜8が好ましく、約2,000〜40,000Luxの光照射の環境の下が好ましい。【0011】 この発明でいうフィトエンとは、オールトランス型フィトエン、および/または9−シス型フィトエンであり、何れも癌の予防や、糖尿病、肝疾患、癌、その他の生活習慣病の予防、改善などに有用な非環式カロチノイドであり、オールトランス型フィトエンは下記の化3の構造式を有しており、9−シス型フィトエンは下記の化4の構造式を有している。【0012】【化3】【0013】【化4】【0014】【実施例】次に、この発明のカロチノイドの製造方法の好ましい実施例を挙げる。なお、従来のカロチノイドの製造方法(前記Ami Ben-Amotz が報告している文献に記載されたカロチノイドの製造方法)を比較例として挙げる。【0015】(実施例1)ドナリエラ藻体2gを、表1に示す組成の培地2.0リットルが入ったフラスコに入れ、ニコチン0.32mgを添加し、培養温度約25℃、培地pH7、2,000Luxの光照射の環境の下で、1%の二酸化炭素を含む空気を通気しながら約200時間培養した。【0017】 (実施例2) ドナリエラ藻体2kgを、表1に示す組成の培地2,000リットルが入ったレースウエイ水槽(横10m、縦2m、深さ1m)に入れ、ニコチン0.324gを添加し、培養温度約25℃、培地pH8、太陽光照射の環境の下、屋外で約200時間培養した。【0019】(比較例)ドナリエラ藻体1gを、表1に示す組成の培地0.5リットルが入ったフラスコに入れ、そのまま培養温度約35℃、培地pH8、40,000Luxの光照射の環境の下で約150時間培養した。【0020】【表1】【0021】次に、実施例1で培養したドナリエラ藻体から抽出したカロチノイドを高速液体クロマトグラフにより三次元データ解析した結果を図1に示す。図1中のaは、オールトランス型フィトエン標準物質の極大吸収波長と一致し、bは、9−シス型フィトエン標準物質の極大吸収波長と一致したので、この発明の製造方法によりこれらのカロチノイドの存在が確認された。なお、図1中のcは、オールトランス型β−カロチンの極大吸収波長であり、図1中のdは、9−シス型β−カロチンの極大吸収波長であり、主要なカロチノイドの極大吸収波長が確認でき、これらのカロチノイドの存在も確認できた。【0022】また、比較例で培養したドナリエラ藻体から抽出したカロチノイドを高速液体クロマトグラフにより三次元データ解析した結果を図2に示す。図2からは、cおよびdに示すように、オールトランス型β−カロチン、9−シス型β−カロチンに対応する極大吸収波長が確認できたが、オールトランス型フィトエンおよび9−シス型フィトエンに対応する極大吸収波長は確認することができなかった。【0023】さらに、実施例1で培養したドナリエラ藻体と比較例で培養したドナリエラ藻体を用いて、血糖値低下作用についての実験を行った。【0024】(実験方法)4週齢ddy系マウス30匹を、1週間馴化飼育した。5週齢となった前記マウスに、生理食塩水に溶かしたストレプトゾトシン(STZ)を腹腔中投与(100mg/kg)を3回行い、血糖値が200mg/dl以上のマウスを選択した。これらマウスを2群に分け、実施例1で培養したドナリエラ藻体をコーンオイルに溶解した投与群I(投与量60mg/kg)とし、比較例で培養したドナリエラ藻体をコーンオイルに溶解した投与群II(投与量60mg/kg)として、 それぞれ飼料を2週間投与し、経時的に血糖値をオルト−トルイジン−ホウ酸法(OTB法)で測定した。なお、前記STZを投与しないマウスを対照群とし、この対照群にも飼料を2週間投与し、経時的に血糖値をOTB法で測定した。測定結果を表2に示す。【0025】【表2】【0026】表2より、この発明の製造方法で得られるカロチノイドは、従来の製造方法で得られるカロチノイドより、血糖値を有意に低下させることが明らかとなった。【0027】次に、実施例1で培養したドナリエラ藻体と比較例で培養したドナリエラ藻体を用いて、抗腫瘍作用についての実験を行った。【0028】(実験方法)6週齢のSprague−Dawley系雄ラット(SD系雄ラット)120匹を30匹ずつ4群に分け、第1群〜第3群には、蒸留水に10mg/kgの割合で溶解した1,2−ジメチルヒドラジン(DMH)を週1回、10週間に渡って背部皮下に投与した。DMHを投与後、第1群には、実施例1で培養したドナリエラ藻体を0.05%の割合で添加した基礎飼料を、実験終了まで自由摂取させた。第2群には、比較例で培養したドナリエラ藻体を0.05%の割合で添加した基礎飼料を、実験終了まで自由摂取させた。第3群には、カロチノイド無添加の基礎飼料を、実験終了まで自由摂取させた。第4群はDMH無処置の対照群とし、カロチノイド無添加の基礎飼料を、実験終了まで自由摂取させた。実験は40週で終了し、大腸腫瘍の発生について病理組織学的に観察した。観察結果を表3に示す。【0029】【表3】【0030】表3より、大腸腫瘍の発生率は、カロチノイド無添加の基礎飼料を摂取させたSD系雄ラットが79.3%であり、従来の製造方法で得られるカロチノイドを添加した基礎飼料を摂取させたSD系雄ラットが48.3%であった。しかし、この発明の製造方法で得られるカロチノイドを添加した基礎飼料を摂取させたSD系雄ラットは20.0%であり、大腸腫瘍の発生を大きく抑制しており、この発明の製造方法で得られるカロチノイドは、従来の製造方法で得られるカロチノイドより、顕著な抗腫瘍作用が認められた。【0031】【発明の効果】この発明は、以上に述べたように構成されており、ドナリエラ藻体を特定の培地で培養することにより、従来のドナリエラ藻体の培養により製造されるカロチノイド以外の非環式カロチノイドであるフィトエンを含有するカロチノイドを簡単に製造することできた。【図面の簡単な説明】【図1】この発明の製造方法により得たカロチノイドの高速液体クロマトグラフによる三次元データ解析図である。【図2】従来の製造方法により得たカロチノイドの高速液体クロマトグラフによる三次元データ解析図である。 産生能調節剤としてニコチン1μMを添加し、培養温度を25℃とし、pHを7〜8に調整し、1.5Mの塩化ナトリウム、50mMの炭酸水素ナトリウム、5mMの硫酸マグネシウム、2mMの硝酸カリウム、0.3mMの塩化カルシウム、0.2mMのリン酸二水素カリウム、1.5μMの塩化第二鉄、6μMのEDTA、7μMの塩化マンガン、1μMの塩化第二銅、1μMの塩化亜鉛、1μMの塩化コバルト、1μMのモリブデン酸アンモニウムを含有する培地で、光照射の環境下、ドナリエラ藻体を培養することにより、下記の化1で表される構造式を有するオールトランス型フィトエン、および/または下記の化2で表される構造式を有する9−シス型フィトエンを含有するカロチノイドを得ることを特徴とするカロチノイドの製造方法。