生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_血糖値低下剤
出願番号:2001361062
年次:2008
IPC分類:A61K 31/047,A61P 3/10


特許情報キャッシュ

神辺 健司 島田 康 佐藤 聖 友田 明宏 後藤 恭子 高橋 篤 黒崎 研一 田中 正二 JP 4115122 特許公報(B2) 20080425 2001361062 20011127 血糖値低下剤 北興化学工業株式会社 000242002 神辺 健司 島田 康 佐藤 聖 友田 明宏 後藤 恭子 高橋 篤 黒崎 研一 田中 正二 20080709 A61K 31/047 20060101AFI20080619BHJP A61P 3/10 20060101ALI20080619BHJP JPA61K31/047A61P3/10 A61K31/00 A61P3/10 CAPLUS(STN) REGISTRY(STN) MEDLINE(STN) BIOSIS(STN) EMBASE(STN) 特表平05−502864(JP,A) 特開平07−223939(JP,A) 2 2003160478 20030603 8 20040527 伊藤 幸司 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、シロ−イノシトール(scyllo−Inositol)を含有する血糖値低下剤およびこれを含有する糖尿病予防・治療剤に関する。【0002】【従来の技術】シロ−イノシトールは9種あるイノシトール立体異性体の一つで、人体を含め動植物体内に存在する天然物として知られている。その生理作用については近年いくつかの報告がある。【0003】例えば細胞を用いた試験で、アルツハイマー病発症に関与するアミロイドβ蛋白の凝集を抑制する活性が報告されており、アルツハイマー病の治療薬として期待されている[The Journal of Biological Chemistry 第275巻 第24号 第18495〜18502頁(2000)]。また、脳肝症患者の脳中での減少が報告されており、発症との相関が注目されている。[Life Sciences 第54巻 第1507〜1512頁(1994)]。【0004】さらに、ストレプトゾトシン誘導性糖尿病ラットの腎糸球体中において、シロ−イノシトール濃度の減少が観られ、インスリン添加区においては逆に増加するという、生体内シグナル因子としての重要性が示唆されている[日本腎臓学会誌第32巻 第4号 第401〜408頁(1990)]。【0005】一方、シロ−イノシトールの異性体及びその誘導体であるD−キロ−イノシトール、ミオ−イノシトール、ピニトール(3−O−methyl−D−chiro−inositol)は糖尿病の治療効果を有することが知られている[Endocrinology 第132巻 第646〜651頁(1993)、特開平7−223939号公報、Current Science 第56巻 第3号 第139〜141頁(1987)]。【0006】【発明が解決しようとする課題】上記したシロ−イノシトール異性体及びその誘導体は、血糖値低下作用が必ずしも十分とはいえない。また、これまで糖尿病の治療法としては、インスリン、スルホニル尿素系血糖低下剤、ビグアナイド系血糖値低下剤、チアゾリジン誘導体などの投与が有効な治療薬とされていたが、これらは過度の投与により、肥満やインスリン抵抗性の増悪、血糖値コントロールの不全などをもたらすことがある。【0007】したがって、これらに代り優れた血糖値低下作用を有し、かつ副作用のない新規な血糖値低下剤の開発が望まれている。【0008】本発明は、このような要望に合致した新規な血糖値低下剤を開発することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した。その結果、シロ−イノシトールを有効成分としてII型糖尿病モデルマウスの飼料に混入して投与すると、マウスの血糖値が有意に低下することを知見した。また、これらのマウスに対し、糖負荷試験を実施すると、耐糖機能障害が有意に改善されることも知見した。すなわちこれらの試験結果から、シロ−イノシトールの適当量を経口投与すると糖尿病の予防と治療に有効であることが判明し、本発明に至った。【0010】本発明で用いるシロ−イノシトールは、前述のとおり人体をはじめとして動植物体内に存在する天然物であり、人畜に対する安全性は高いことが知られている。さらに、前述のシロ−イノシトールの投与試験において、副作用的な知見は全く得られなかった。【0011】すなわち、シロ−イノシトールを約250mg/kg体重/日の量でII型糖尿病モデルマウスに35日間飼料に混入して与えると、マウスの体重は正常なレベルで増加した。また、解剖した際の病理的検査においても異常は全く観察されず、安全性の高い物質であることが立証された。【0012】こうしたことから、シロ−イノシトールは優れた血糖値低下作用を有するとともに、医薬、食品として重要な要素である安全性も兼ね備えていることが判明した。【0013】【発明の実施の形態】本発明に係る血糖値低下剤および糖尿病予防・治療剤を実施する方法について具体的に示す。【0014】まず、本発明の血糖値低下剤の投与方法としては経口がよい。好ましい投与量は、マウスに対しては1mg〜500mg/体重kg/日であり、ヒトに対してはマウスとの相関性を考慮して、あるいはヒトの糖尿病の程度を考慮して決められる。【0015】また、本発明の血糖値低下剤および糖尿病予防・治療剤の剤型としては、アンプル、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、ドリンク剤等が挙げられるが、特定の剤型のものに限定されるものではない。【0016】また、製剤中のシロ−イノシトールの好ましい含有量は、製剤全量に対して1〜80重量%であり、より好ましくは5〜60重量%である。【0017】これらの剤型には、通常製剤化に用いられる各種の成分が任意に使用されるが、その例としては、例えばデンプン、デキストリン、乳糖、コーンスターチ、無機塩類などが挙げられる。【0018】本発明のシロ−イノシトールを入手するには、市販品を購入して使用すればよいが、次の方法によっても入手できる。【0019】すなわち、市販されているミオ−イノシトールを原料として、微生物変換反応により、シロ−イノシトールを製造することができ、安価に入手することができる(特開平9−140388号公報、特願2001−191161号明細書)。【0020】また、本発明の血糖値低下剤は、他の血糖値低下剤の有効成分、例えば、インスリン、スルホニル尿素系血糖値低下剤、ビグマナイド系血糖値低下剤、チアゾリジン誘導体、α−グルコシダーゼ阻害剤等を配合あるいは併用してもよい。【0021】また、本発明の血糖値低下剤は、上記したごとくの各種の製剤、例えば、アンプル、錠剤、細粒剤などとすることにより、医薬として用いられるとともに、食品として一般に用いられる原料、例えば、蛋白質、脂質、炭水化物、ビタミン類などを添加して食事用補添物、栄養組成物などとして用いられる各種の食品として用いることができ、この場合、血糖値低下をもたらすに十分な量のシロ−イノシトールを添加しておくことにより、血糖値低下効果を得ることができる。【0022】【実施例】次に、本発明の血糖値低下剤についての有効性について試験例を挙げて具体的に示す。【0023】試験例1 II型遺伝性糖尿病マウスにおける血糖値低下作用確認試験非糖尿病動物としてC57BL/6J Jclマウス(6週齢)をそしてII型遺伝性糖尿病モデルとしてKKAy/Ta Jclマウス(6週齢)をそれぞれ日本クレア株式会社より購入し、まず環境に馴らすため基本食として用いたMF粉末飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)を自由に与えて1週間飼育(馴化期間)した。その後、これらの動物を次の3群(1群5匹)に分けた。すなわち、第1群(C57BLマウス対照群)及び第2群(KKAyマウス対照群)には基本食を引き続き自由に与え、第3群(シロ−イノシトール投与KKAyマウス群)には基本食にシロ−イノシトールを0.2%混入した飼料を自由に与え(シロ−イノシトールとして平均250mg/kg体重/日 相当を投与)、各群ともに35日間飼育を続けた。35日間の飼育後、エーテル麻酔下で後大静脈より採血を行い、血糖値をグルコーステストワコー(和光純薬工業株式会社製)にて測定した。結果を表1と図1に示す。【0024】その結果、第2群では、第1群に比較して明らかに高い血糖値を示し、KKAyマウスが糖尿病を発症していることを確認した。第3群では、第1群との比較では同等から僅かに高い血糖値を示し、第2群との比較では明らかに低い血糖値を示した。したがって、シロ−イノシトールの添加が血糖値低下に有効であること、糖尿病の予防、改善に有効であることが確認された。【0025】【表1】【0026】試験例2 II型遺伝性糖尿病マウスを用いた糖負荷試験における耐糖能障害改善作用確認試験II型遺伝性糖尿病モデルとしてKKAy/Ta Jclマウス(6週齢)を日本クレア株式会社より購入し、まず環境に馴らすため基本食として用いたMF粉末飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)を自由に与えて1週間飼育(馴化期間)した。その後、これらの動物を2群(1群5匹)に分け、第1群(対照群)には基本食を引き続き自由に与え、第2群(シロ−イノシトール投与群)には基本食にシロ−イノシトールを0.2%混入した飼料を自由に与え(シロ−イノシトールとして平均250mg/kg体重/日 相当を投与)、各群ともに28日間飼育を続けた後、マウスを20時間絶食し、糖負荷試験として、グルコースを1g/kg体重 腹腔内に投与することにより糖負荷を行った。糖負荷直前(0分)、負荷後30分、60分、90分、120分にマウスの尾静脈より採血し、血糖値をグルコーステストワコー(和光純薬工業株式会社製)にて測定した。結果を表2と図2に示す。【0027】第2群では、第1群に比較して、糖負荷後60分以降に、明らかに低い血糖値を示した。シロ−イノシトールが耐糖能障害改善に有効であること、糖尿病の予防、改善に有効であることが確認された。【0028】【表2】【0029】試験例3 II型遺伝性糖尿病マウスにおける体重変化II型遺伝性糖尿病モデルとしてKKAy/Ta Jclマウス(6週齢)を日本クレア株式会社より購入し、まず環境に馴らすため基本食として用いたMF粉末飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)を自由に与えて1週間飼育(馴化期間)した。その後、これらの動物を3群(1群5匹)に分け、第1群(対照群)には基本食を引き続き自由に与え、第2群(ピオグリタゾン投与群)には基本食にピオグリタゾンを0.02%(ピオグリタゾンとして平均23mg/kg体重/日 相当を投与)、第3群(シロ−イノシトール投与群)には基本食にシロ−イノシトールを0.2%(シロ−イノシトールとして平均250mg/kg体重/日 相当を投与)混入した飼料を自由に与え、各群ともに35日間飼育を続けた。35日後の体重を測定し、対照群との比較を行った。結果を表3と図3に示す。【0030】第2群のピオグリタゾン投与区は、平均体重が第1群の127%となり、ピオグリタゾンが体重増加の副作用を有していることが確認された。第3群のシロ−イノシトール投与区では、体重増加は第1群の未投与区との比較ではほとんど同等であり、体重変化は正常であると考えられた。したがって、シロ−イノシトール投与により体重に異常をきたす副作用は確認されなかった。【0031】【表3】【0032】【発明の効果】本発明によれば、シロ−イノシトールを投与することにより、糖尿病の主症状である平常時の異常な高血糖状態の血糖値を低下させ、適正なレベルにコントロールすることが可能である。また同時に、耐糖能障害を改善することができる。したがって、糖尿病の予防、治療剤として有用である。また、食品や栄養剤等として用いることによっても血糖値を低下させることができる。さらに、シロ−イノシトールを投与しても、体重の異常増加等の副作用はみられず、動植物体内にも存在する天然物であることもあわせて、安全性の面でも問題がない。【図面の簡単な説明】【図1】シロ−イノシトールの血糖値低下作用を表1のデータから作成した図。【図2】糖負荷試験におけるシロ−イノシトールの耐糖能障害改善作用を表2のデータから作成した図。【図3】シロ−イノシトール投与後の体重変化の結果を示した図。 シロ−イノシトールを有効成分として含有することを特徴とする、血糖値低下剤。 シロ−イノシトールを有効成分として含有することを特徴とする、糖尿病予防・治療剤。


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