タイトル: | 特許公報(B2)_ミトコンドリア機能賦活剤 |
出願番号: | 2001360376 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/381,A61P 25/16,A61P 25/28,A61P 43/00,C07D 333/56 |
馬場 明道 松田 敏夫 JP 4303435 特許公報(B2) 20090501 2001360376 20011127 ミトコンドリア機能賦活剤 富山化学工業株式会社 000003698 馬場 明道 松田 敏夫 JP 2001102082 20010226 20090729 A61K 31/381 20060101AFI20090709BHJP A61P 25/16 20060101ALI20090709BHJP A61P 25/28 20060101ALI20090709BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090709BHJP C07D 333/56 20060101ALN20090709BHJP JPA61K31/381A61P25/16A61P25/28A61P43/00 107C07D333/56 A61K 31/381 A61P 25/16 A61P 25/28 A61P 43/00 C07D 333/56 BIOSIS(STN) CA(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) 特開平04−095070(JP,A) 特開2001−048784(JP,A) 国際公開第97/030703(WO,A1) 国際公開第96/012717(WO,A1) 2 2002322058 20021108 8 20041122 渕野 留香 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、1,2−エタンジオール誘導体またはその塩を有効成分とするミトコンドリア機能賦活剤に関する。【0002】【従来の技術】ミトコンドリアは全ての動物細胞内に存在し、細胞の活動に必要なエネルギー生産を担っている。ミトコンドリアの機能が障害されると、特にエネルギー要求性の高い細胞、例えば、神経細胞、筋肉細胞、腎臓の細胞、肝臓の細胞などでは、その障害による影響が大きく、ミトコンドリア脳症あるいはミトコンドリア脳筋症と呼ばれる病状を呈する。ミトコンドリア脳筋症を治療するためには、ビタミン剤、チトクローム製剤、鉄剤といったミトコンドリアの機能を高める薬物が使用される。これら以外に、ミトコンドリアの機能賦活作用を有する化合物の研究が行われており、その化合物としては、例えば、イデベノン(特公平1-12727)、2環性キノン誘導体(特開平10-273469)などが知られている。一方、特開平3-232830、特開平4-95070に記載の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩は、脳機能改善剤として有用な化合物であり、特に、(R)−1−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール・塩酸塩(以下、T−588と称する。)は、好ましい化合物である。そして、T−588は、アミロイドβタンパク質による神経細胞死に対し保護作用[ソシエティ・フォー・ニューロサイエンス・アブストラクツ(SOCIETY FOR NEUROSCIENCE, Abstracts)、第24巻、パート1、第228頁(1998年)および神経成長因子の作用増強作用(国際公開WO96/12717)を有する。また、本発明者らは、グリア細胞の一つであるアストロサイトのCa2+パラドックス傷害に関する研究から、T−588がアストロサイトのアポトーシスを抑制する機序を明らかにしてきた[ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur. J. Pharm.)、第399巻、第1〜8頁、2000年;日薬理誌、第114巻、第281〜286頁、1999年]。【0003】【発明が解決しようとする課題】アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患の発症要因に一つとして、ミトコンドリア複合体の機能低下が挙げられており、これらの治療するためにミトコンドリア機能賦活能を有する新たな化合物が求められている。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、傷害を受けた中枢神経系でアストロサイトの増殖が認められることから、アストロサイトの傷害防御について研究を進めたところ、T−588がアストロサイトのミトコンドリアを活性化させることを見出した。そして、次の一般式[1]【化2】「式中、R1は、置換されていてもよい複素環式基を;R2は、水素原子またはヒドロキシル保護基を;R3は、水素原子または低級アルキル基を;n個のR4は、同一または異なって水素原子または低級アルキル基を;n個のR5は、同一または異なって水素原子または低級アルキル基を;R6は、置換されていてもよいアミノ基またはアンモニオ基を;およびnは、1〜6の整数を、それぞれ示す。」で表される1,2−エタンジオール誘導体またはその塩が、ミトコンドリア賦活化剤として有用であることから、本発明を完成させた。以下、本発明について詳述する。【0005】本明細書において、特に断らない限り、各用語は、次の意味を有する。ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を;低級アルキル基とは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチルおよびヘキシル基などのC1-6アルキル基を;低級アルケニル基とは、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニル基などのC2-6アルケニル基を;シクロアルキル基とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル基などのC3-6シクロアルキル基を;低級アルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシ基などのC1-6アルキルオキシ基を;低級アルケニルオキシ基とは、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、ブテニルオキシ、ペンテニルオキシおよびヘキセニルオキシ基などのC2-6アルケニルオキシ基を;低級アルキルチオ基とは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオおよびヘキシルチオなどのC1-6アルキルチオ基を;ハロ低級アルキル基とは、クロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、クロロエチルなどのハロゲン−C1-6アルキル基を;【0006】アリール基とは、フェニル、ナフチル、インダニルおよびインデニル基を;アリールオキシ基とは、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、インダニルオキシおよびインデニルオキシ基を;アル低級アルキル基とは、ベンジル、ジフェニルメチル、トリチルおよびフェネチル基などのアルC1-6アルキル基を;アル低級アルコキシ基とは、ベンジルオキシ、ジフェニルメチルオキシ、トリチルオキシなどのアルC1-6アルキル−O−基を;アル低級アルキルチオ基とは、ベンジルチオ、ジフェニルメチルチオなどのアルC1-6アルキル−S−基を;アル低級アルケニル基とは、スチリル、シンナミルなどのアルC1-6アルケニル基を;低級アルキレンジオキシ基とは、たとえば、メチレンジオキシおよびエチレンジオキシ基などのC1-4アルキレンジオキシ基を;【0007】低級アシル基とは、ホルミル、アセチル、ブチリルおよびエチルカルボニル基などのC1-6アシル基を;アロイル基とは、ベンゾイルおよびナフチルカルボニル基などのアリールカルボニル基を;低級アルキルスルホニル基とは、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、n-ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニルまたはペンチルスルホニルなどのC1-6アルキルスルホニル基を;アル低級アルキルスルホニル基とは、ベンジルスルホニルなどのアルC1-6アルキル−SO2−基を;アリールスルホニル基とは、フェニルスルホニル、p-トルエンスルホニル、ナフチルスルホニル基などのアリール−SO2−基を;アリールスルホニルアミノ基とは、フェニルスルホニルアミノ、ナフチルスルホニルアミノなどのアリール−SO2NH−基を;低級アルキルスルホニルアミノ基とは、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノなどのC1-6アルキル−SO2NH−基を;アンモニオ基とは、トリメチルアンモニオおよびトリエチルアンモニオ基などのトリ低級アルキルアンモニオ基を;【0008】複素環式基とは、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ホモピペリジニル、モルホリル、チオモルホリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリル、キヌクリジニル、イミダゾリニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジル、キノリル、キノリジニル、チアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピロリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、プリニル、フリル、チエニル、ベンゾチエニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノキサリル、ジヒドロキノキサリル、2,3−ジヒドロベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾピロリル、2,3−4H−1−チアナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾ[b]ジオキサニル、イミダゾ[2,3-a]ピリジル、ベンゾ[b]ピペラジニル、クロメニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ピリダジニル、イソインドリル、イソキノリル、1,3−ベンゾジオキソニルおよび1,4−ベンゾジオキサニル基などの該環を形成する異項原子として一つ以上の酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい、窒素、酸素もしくは硫黄原子から選ばれる少なくとも一つ以上の異項原子を含有する5員もしくは6員環、縮合環または架橋環の複素環式基を;そして複素環式カルボニル基とは、複素環式−CO−基を意味する。【0009】R1における複素環式基の置換基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよいアミノ、低級アルキル、アリール、アル低級アルキル、低級アルコキシ、アル低級アルコキシ、アリールオキシ、カルバモイルオキシ、低級アルキルチオ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、アル低級アルキルチオ、アル低級アルキルスルホニル、アリールスルホニル、低級アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノもしくは複素環式基または保護されているアミノ基、保護されていてもよいヒドロキシル基、ニトロ基、オキソ基および低級アルキレンジオキシ基などが挙げられる。【0010】R1の複素環式基の置換基における低級アルキル、アリール、アル低級アルキル、低級アルコキシ、アル低級アルコキシ、アリールオキシ、カルバモイルオキシ、低級アルキルチオ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、アル低級アルキルチオ、アル低級アルキルスルホニル、アリールスルホニル、低級アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノおよび複素環式基の置換基としては、ハロゲン原子、保護されていてもよいヒドロキシル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいヒドロキシル基で置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよいアリール基、ハロゲンで置換されていてもよいアロイル基、低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルコキシ基、ハロ低級アルキル基、低級アシル基、アル低級アルキル基、アル低級アルケニル基、複素環式基、複素環式カルボニル基、オキソ基、低級アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基が挙げられ、これら1種以上の置換基で置換されていてもよい。【0011】R1における置換基としてのアミノ基およびR6におけるアミノ基の置換基としては、保護されていてもよいヒドロキシル基、保護されていてもよいヒドロキシまたは保護されていてもよいカルボキシル基で置換されていてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、低級アシル基、アル低級アルキル基、複素環式基、オキソ基で置換されていてもよい複素環式カルボニル基、アダマンチル基、低級アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基が挙げられ、これら1種以上の置換基で置換されていてもよい。【0012】R2のヒドロキシル保護基および置換基中にあるヒドロキシル基、カルボキシル 基およびアミノ基の保護基としては、プロテクティブ・グル―プス・イン・オ―ガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、サードエディション(Third Edition)[セオドラ・ダブリュー・グリーン(Theodora W. Greene)(1999年)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons. Inc.)]に記載された通常のヒドロキシル基、カルボキシル基およびアミノ基の保護基が挙げられる。特に、ヒドロキシル基の保護基としては、低級アルキル、低級アシル、テトラヒドロピラニルおよびアル低級アルキル基が挙げられる。【0013】一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体の塩としては、医薬として許容される塩であればよく、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸およびアスパラギン酸などのカルボン酸との塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩並びにナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属との塩などが挙げられる。【0014】一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩において、異性体(たとえば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、本発明は、それらすべての異性体を包含し、また、水和物、溶媒和物およびすべての結晶形を包含するものである。【0015】本発明のミトコンドリア機能賦活剤として好ましい一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩は、R1が、置換されていてもよいベンゾチエニル基;R2が、水素原子;R3が、水素原子;n個のR4およびn個のR5が、水素原子;R6が、置換されていてもよいアミノ基である1,2−エタンジオール誘導体またはその塩である。さらに好ましいものは、R1がベンゾチエニル基;R2が、水素原子;R3が、水素原子;n個のR4およびn個のR5が、水素原子;R6が、低級アルキル基で置換されたアミノ基である1,2−エタンジオール誘導体またはその塩である。より具体的には、(R)−1−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール・塩酸塩(T−588)である。【0016】一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩は、特開平3-47158、特開平3-232830または特開平4-95070などに記載の方法で製造することができる。【0017】一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩をミトコンドリア機能賦活剤として製剤化する場合は、医薬上許容される賦形剤、担体、希釈剤および安定化剤などの製剤助剤を適宜用いて、常法により錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、注射剤または点眼剤などの製剤とすることができる。この製剤は、経口または非経口で投与することができる。また、投与方法、投与量および投与回数は、患者の年齢、体重および症状に応じて適宜選択できるが、経口投与の場合、通常成人に対して1日0.01〜500mgを1回から数回に分割して投与すればよい。【0018】【実施例】以下に、一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩が有するミトコンドリアの賦活化をアストロサイトのミトコンドリア脱水素酵素活性を指標とした実験で説明する。(アストロサイトの調製)生後0-1日齢のWistar/ST系ラットの脳より、アストロサイトを調製した。すなわち、実体顕微鏡下で髄膜を取り除いた後、切り出した大脳皮質を細かく切り刻み、10%牛胎仔血清[Sigma社]含有イーグル最小培地(EMEM)[日水製薬]中に分散させた。この細胞分散液を胎児一匹あたり1本の75cm2培養フラスコ(IWAKI旭テクノグラス;311-075)に播種し、恒温培養器中(37°C、5%CO2)で培養した(一次培養)。一次培養11-17日目に、培養フラスコ中のアストロサイトを振盪培養器で振盪(200rpm、37°C)した。翌日、培地を除去した後、モノレイヤー状のアストロサイトをJoklik EMEM [Sigma社]で溶解希釈した0.025%トリプシン[GibcoBRL社]溶液で細胞を処理し浮遊させた。トリプシンを除去し、アストロサイトをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、10%牛胎仔血清含有EMEMで分散・希釈し、24穴培養プレート(IWAKI旭テクノグラス;3820-024)に5×104cells/wellの密度で播種した(二次培養)。アストロサイト培養中は、3-4日毎に培地交換を行なった。【0019】実験1(実験方法)0%、1.25%、5%および10% FBS/EMEMに培地交換し、同時にT-588を添加した。MTTアッセイにより、ミトコンドリア脱水素酵素活性の指標としてMTT還元能を測定した。*MTT:3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide【0020】(実験結果)測定結果は、表1の通りである。【表1】【0021】T-588は、MTT還元能を増加した。また、T-588のMTT還元能増加作用は、血清の有無に関係なく認められ、アストロサイトのミトコンドリア脱水素酵素の活性を高めていた。【0022】実験2(実験方法)ソジウムニトロプルシッド(Sodium nitroprusside;SNP)によるミトコンドリア膜電位低下に対する抑制効果二次培養したアストロサイトを、血清を含まないEMEM中でSNP[Sigma社] 100μmol/Lおよび被検物質としてT-588 100μmol/Lを72時間作用させた。血清を含まないEMEMに培地交換後、ミトコンドリア膜電位を測定するために膜電位測定用色素(JC-1)1μg/mLを培地中に添加し、20分間37℃で培養した。PBSで2回洗浄した後、血清を含まないEMEMに培地交換し、励起波長530nmと測定波長590nmにおける蛍光強度を蛍光自動測定システム[日本パーセプティブ;CytoFluor II]で測定した。膜電位変化の指標として、励起波長と測定波長における蛍光強度の比率(Normalized fluorescence ratio:590/530nm)を用いた。【0023】(実験結果)測定結果は、表2の通りである。【表2】T-588は、SNPによるミトコンドリア膜電位の低下を抑制した。【0024】実験3(実験方法)3−モルフォリノシドニミン(3-morphorinosydnonimine;SIN-1)によるミトコンドリア膜電位低下に対する抑制効果二次培養したアストロサイトにT-588 100μmol/LおよびJC-1 1μg/mLを2時間および20分間それぞれ前処置し、37℃で保温した。PBSで2回洗浄した後、血清およびグルコースを含まないEMEM[日水製薬]に培地交換し、T-588 100μmol/LおよびSIN-1 200μmol/Lを添加し、励起波長530nmと測定波長590nmにおける蛍光強度を経時的に測定した。SNPの場合と同様に、膜電位変化の指標として蛍光強度の比率を用いた。【0025】(実験結果)測定結果は、表3の通りである。【表3】T-588は、SIN-1によって経時的に減少するミトコンドリア膜電位の低下を抑制した。【0026】次に製剤例を示す。製剤例1成分▲1▼[T−588 50mg、乳糖20mg、コリドンCL(バスフ社)15mg、とうもろこし澱粉25mg、アビセルPH101(旭化成)40mg]の混合物をポリビニルピロリドンK90の8%水溶液で練合し、60℃で乾燥した後、▲2▼成分[ポリビニルピロリドンK90 5mg、軽質無水ケイ酸18mg、ステアリン酸マグネシウム2mg]を混合し、1錠重量 175mg、直径8mmの円形錠に打錠し、T−588を50mg含有する錠剤を得る。【0027】製剤例2▲1▼成分[T−588 50mg、乳糖20mg、とうもろこし澱粉53mg、コリドンCL2mg]の混合物をポリビニルピロリドンK90の8%水溶液で練合し、60℃で乾燥した後、▲2▼成分[ポリビニルピロリドンK90 5mg、アビセルPH302 18mg、ステアリン酸マグネシウム2mg]を混合し、1カプセル当たり 150mgを3号ゼラチンカプセルに充填し、カプセル剤を得る。【0028】【発明の効果】一般式[1]の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩、特にT−588は、ミトコンドリアの活性を高めることから、ミトコンドリア機能賦活剤として、ミトコンドリアの機能低下が関与しているミトコンドリア病(例えば、慢性進行性外眼筋麻痺症候群、ケアンズ・セイヤー(Kearns-Sayre)症候群、MERRF(myoclonus epilepsy with ragged-red fibers)、MELAS(mitochondrialmyopathy, encephalopathy lactic acidosis and stroke-like episodes)、レイ(Leigh)脳症、アルパーズ(Alpers)病、レーバー(Leber)病、ペアソン(Pearson)病など)の治療および予防に有用である。さらに、発症原因が不明であり、ミトコンドリア機能低下が発症原因の一つとして考えられている各種疾患、例えば、神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病など)、その他の中枢神経系疾患(例えば、脳血管性痴呆、精神分裂病、うつ病など)、循環器系疾患(例えば、拡張型心筋症等の心筋症、動脈硬化症、心筋梗塞、末梢動脈閉塞症、狭心症、うつ血性心不全、高血圧、心源性ショック、急性・慢性腎不全など)、インシュリン非依存型糖尿病等、視力障害、老人性難聴、肝障害、癌などの治療および予防に有用である。 一般式「式中、R1は、置換されていてもよい複素環式基を;R2は、水素原子またはヒドロキシル保護基を;R3は、水素原子または低級アルキル基を;n個のR4は、同一または異なって水素原子または低級アルキル基を;n個のR5は、同一または異なって水素原子または低級アルキル基を;R6は、置換されていてもよいアミノ基またはアンモニオ基を;およびnは、1〜6の整数を、それぞれ示す。」で表される1,2−エタンジオール誘導体またはその塩を含有するミトコンドリア病治療剤。 R1が、置換されていてもよいベンゾチエニル基;R2が、水素原子;R3が、水素原子;n個のR4およびn個のR5が、水素原子;R6が、置換されていてもよいアミノ基である請求項1記載の1,2−エタンジオール誘導体またはその塩を含有するミトコンドリア病治療剤。