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タイトル:特許公報(B2)_磁性流体検出装置
出願番号:2001324788
年次:2008
IPC分類:A61K 49/00,A61B 5/05


特許情報キャッシュ

小川 純一 南谷 佳弘 片寄 喜久 斉藤 礼次郎 鎌田 収一 上田 智章 JP 4090722 特許公報(B2) 20080307 2001324788 20011023 磁性流体検出装置 小川 純一 501412027 南谷 佳弘 501412038 片寄 喜久 501412049 斉藤 礼次郎 501412050 鎌田 収一 501412061 オリンパス株式会社 000000376 伊藤 進 100076233 小川 純一 南谷 佳弘 片寄 喜久 斉藤 礼次郎 鎌田 収一 上田 智章 20080528 A61K 49/00 20060101AFI20080501BHJP A61B 5/05 20060101ALI20080501BHJP JPA61K49/00 CA61B5/05 A A61K 49/00 A61B 5/05 特開平08−098819(JP,A) 特開平06−142964(JP,A) 特開平09−164123(JP,A) 3 2003128590 20030508 11 20040820 谷垣 圭二 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、悪性腫瘍部位からリンパ液の通流方向の下流側に位置し、かつリンパ液の通流路であるリンパ管に沿って最も患部に近いリンパ節であるセンチネルリンパ節を同定する根拠として、悪性腫瘍近接部に注射した常磁性を有する磁性流体が一定時間経過後にどのように分布しているかを測定するための磁性流体検出装置に関する。さらに詳細に言えば、磁気マーカーとして超常磁性微粒子として知られる酸化鉄コロイドの一種であるフェリデックス、あるいはMnZnフェライト、Fe3O4マグネタイト等の常磁性を有する磁性流体を用い、内部で液体通流が可能である生体組織に外部から常磁性を有する磁性流体の注入を行い、測定対象となる組織に対して外部より直流あるいは交流の磁界を印加して磁性流体の励磁を行い、局所磁場勾配を計測することによって組織内に注入された常磁性を有する磁性流体の比透磁率が周囲物質に比して高いことによる局所磁界分布の歪みを測定することができ、外部磁気ノイズの影響を受けることなく、磁性流体が多く滞留している部位を非侵襲的に同定することができる磁性流体検出装置に関する。【0002】【従来の技術】従来、乳癌・肺癌・食道癌等の手術においては、悪性腫瘍部位を摘出するだけでなく、転移による癌再発防止の観点から悪性腫瘍部位周囲のリンパ節は全て切除、即ち郭清されてきた。この周囲リンパ節の郭清は、患部より剥離した癌細胞がリンパ管を通流するリンパ液の流れに沿って下流側に運ばれて癌の転移を引き起しているとする理由によるためである。【0003】しかし、周囲リンパ節の切除は予後の患者の免疫力低下を引き起こす恐れがあり、できれば切除を行わずに温存する方が望ましい。そこでセンチネルリンパ節生検という手法が考えられた。センチネルリンパ節とは、悪性腫瘍部位からリンパ液の通流方向の下流側に位置するリンパ節のうち通流路に沿って最も近いリンパ節のことである。センチネルリンパ節生検とは、センチネルリンパ節を切除してそのリンパ節内に癌細胞が存在するか否かを調べる生検のことである。センチネルリンパ節に癌細胞が到達していなければ、癌転移を発生する段階まで悪性腫瘍が進行しておらず、当然それよりリンパ液通流方向の下流に位置する他の全てのリンパ節にはまだ癌細胞は転移しておらず、リンパ節を郭清する必要はない。即ちセンチネルリンパ節以外の温存がはかれるのである。【0004】しかし、悪性腫瘍部位に距離的に最も近いリンパ節がセンチネルリンパ節かと言うと必ずしもそうではない。距離的に最も近いリンパ節はリンパ液の通流方向の上流に位置するリンパ節であってセンチネルリンパ節ではない場合があり、リンパ液の通流路であるリンパ管がどのような状態で接続しているかに大きく依存するためである。しかも、リンパ液は無色透明であり、リンパ管も非常に細いため、手術中の限られた時間内での目視検査ではリンパ液の通流方向やその位置的関係からセンチネルリンパ節の位置を同定することは到底不可能であった。【0005】近年、米国においてセンチネルリンパ節の位置同定のために放射性同位元素や色素を使用する方法が考案され、乳癌における生検方法として既に実用化している。これは悪性腫瘍近接部に放射性同位元素や色素をマーカーとして用い、これらを含んだ流体を注射し、一定時間後に放射性同位元素の位置や色素による着色部位を調べることによってセンチネルリンパ節を同定する方法である。マーカーの粒子径はリンパ管の中をリンパ液の流れによって容易に下流に押し流されることが可能な大きさである10nm程度以下であることが要求される。放射性同位元素の位置は小型ガイガーカウンターによって容易に調べることができ、放射線強度によって蓄積量もだいたい判別できるので、センチネルリンパ節に最も前記マーカーが滞留することを根拠に簡便な検査でセンチネルリンパ節を同定することが可能になった。【0006】しかし、日本では病院内で放射性同位元素を取り扱うことは法的規制の対象になっており、認可を受けている病院は非常に少数であり、マーカーに放射性同位元素を用いるセンチネルリンパ節生検方法を普及させることには困難がある。また、色素では生体組織の状態によっては判別困難である場合がある。例えば肺のリンパ節は炭粉沈着により黒色であることから色素では目視判別が非常に困難である。【0007】また、地磁気の10億分の1程度の磁束を高感度に検出することができる超電導量子干渉素子(Superconducting QUantum Interference Device:以下、SQUIDと略する)を用いたSQUID磁束計がさまざまな分野で応用されており、近年では液体窒素温度での冷却で利用できる高温超伝導SQUIDが実用化されている。磁気マーカーとして残留磁化特性がある磁性微粒子を含んだ磁性流体を利用して、外部より強力な磁界で磁性流体を一旦磁化し、その残留磁化による磁界が短時間なら保持されていることを利用して、センチネルリンパ節を同定する方法が西暦2000年1月25日に豊橋技術科学大学の田中三郎氏らにより提案されている。詳細については、日本学術振興会超伝導エレクトロニクス第146委員会第66回研究会資料「高温超伝導SQUID顕微鏡のバイオテクノロジーおよび医学分野への応用」に報告されている。財団法人中部科学技術センターのホームページ(http://www.shatchy.ne.jp/cstc/index/contents/chubukensaku/)によれば日本自転車振興会補助事業の一環として西暦2001年10月8日現在研究中である。しかし、この方法には多くの問題が存在している。【0008】磁性粒子の粒子径が小さくなるに従って残留磁化の大きさも小さくなる。リンパ管の中を通流しやすい直径10nm以下の粒子径では既知の殆どの磁性材料で残留磁化特性はほぼ失われるため、微弱な残留磁化を計測するために超高感度な磁気センサが必要となる。微弱な磁界を計測するため同時に磁気的環境ノイズの影響も受け易くなるため、高性能磁気シールドルーム内で計測を行う必要が生じる。磁気シールドルームは高価であるだけでなく、他の必要な医療機器が放射する磁気ノイズも邪魔になるため不都合が生じる。【0009】また、超高感度な磁気センサが高温超伝導SQUIDであってもその冷却は液体窒素温度で行わなければならず、液冷却式でも冷媒によるヒートサイクルを用いた冷凍機による冷却でもセンサ部は大型化し、重量もかなり重くなってしまうため、片手で持って操作するような利便性を有さない。【0010】さらに、磁性流体の磁化は残留磁化の方向をリンパ管の通流方向に揃えて行う必要がある。そうしなければ液体である性質上、分子運動によって磁気モーメントの方向はすぐにバラバラになり、全体としての磁気モーメントは低下し、計測不能になってしまうためである。磁性流体の磁化方向を長く維持するためにはリンパ管を取り巻くようにソレノイドコイルを巻いて励磁しなければならない。しかし、実際のリンパ管自体の目視識別自体が困難であり、仮に目視識別が可能であってもコイルを巻くために組織の切除や取り付け等の手間があり、大電流である励磁電流が人体に流れることを回避するための絶縁対策が困難であることを考えれば実用には適していない。【0011】一方、販売名フェルモキシデス、製剤名フェリデックスという酸化鉄コロイドの常磁性を有する超常磁性流体が、核磁気共鳴コンピューター断層撮影、MRIにおける造影効果を発揮し、その肝臓に集積しやすいという性質を応用して肝腫瘍の局在診断のための肝臓造影剤ということで、新医薬品第一調査会及び医薬品特別部会の審議を経て認可されている。磁性超微粒子としてはフェリデックスの他にはMnZnフェライト、Fe3O4マグネタイト等が知られているが、人体に対する副作用の有無が立証され、認可を受けているのはフェリデックスだけである。【0012】これら既存の磁性流体を悪性腫瘍近接部に注射し、MRIで一定時間後に撮像すればセンチネルリンパ節を3次元的に位置同定することは理論的には可能であると考えられる。しかし、悪性腫瘍近接部に磁性流体を注射するためには開胸手術が必要である場合が多く、リンパ液の通流速度から注射後数分以内にMRI撮影を行う必要がある。MRI装置はそれ自体が強力な磁場を発生するため、磁性を持った機器や器具から遠ざける必要があり、手術室内に設置することはできないこと、リンパ節は広範囲に点在しているので断層撮影の撮影範囲も広範囲となり、撮影時間が長時間化してしまうこと、注射から数分以内での撮影終了は不可能であることなどの理由によりセンチネルリンパ節の位置同定にはこの方法は利用されていない。【0013】【発明が解決しようとする課題】センチネルリンパ節生検を普及させるためには、放射性同位元素を用いることなく、磁性流体をマーカーとする非侵襲的計測方法によって、短時間での位置同定を可能にする必要がある。しかし、磁性流体の残留磁化を計測する方法では、理論上も実用上も制約が多い。粒子径が小さくなる程、残留磁化特性も小さくなり、測定する磁界信号強度も小さくなり、環境磁気ノイズの問題も大きくなるだけでなく、励磁用コイルの生体組織への取り付け方法にも物理的不都合がある。また、磁性流体が液体であることに起因して磁性微粒子の分子運動により磁化後すぐに磁気モーメントの方向が不揃いになり、磁界強度が減衰するためである。【0014】 本発明の目的は、磁性流体が注入された組織に対して外部より直流あるいは交流の磁界を印加することにより磁性流体の励磁を行い、励磁磁界に直交する磁界成分の局所磁場勾配を計測することによって、組織内に注入された常磁性を有する磁性流体の比透磁率が周囲物質に比して高いことによる局所磁界分布の歪みを測定し、外部磁気ノイズの影響を受けることなく、磁性流体が多く滞留している組織部位を非侵襲的に同定することができる磁性流体検出装置を提供することにある。【0015】【課題を解決するための手段】本発明による磁性流体検出方法によれば、内部で液体通流が可能である物質1に対して外部から常磁性を有する磁性流体2を注入する注入ステップS1と、前記磁性流体2を励磁するための直流あるいは交流の磁界を印加する励磁ステップS2と、印加磁界と直交する同一磁界方向成分の磁界強度を近接した少なくとも2ヶ所以上で測定する測定ステップS3と、前記測定ステップで測定された信号の差分を増幅する増幅ステップS4と、前記励磁ステップS2において直流磁界を印加した場合には前記増幅ステップS4で増幅された信号の絶対値を、あるいは交流磁界を印加された場合には前記増幅ステップS4で増幅された信号の振幅値を演算する演算ステップS5と、前記励磁ステップS2における励磁部位と前記測定ステップS3の測定部位を連動して移動させることにより前記演算ステップS5が最大値となる物質部位を捜す探索ステップS6を備える。前記磁性流体2の比透磁率が周囲物質に比して高いことにより局所磁界分布の歪みが発生することを利用して、磁性流体が多く滞留している部位ほど差信号の強度や振幅が大きくなるので、容易に磁性流体の最大滞留部位を同定することができる。【0016】好ましくは、印加磁界と直交する同一磁界方向成分の磁界強度を測定する部位の距離が検出対象であるリンパ節の大きさにほぼ等しいことである。これによって、リンパ節より十分に距離的に離れている磁気的環境ノイズ源からの磁界信号は少なくとも2ヶ所以上の印加磁界と直交する同一磁界方向成分の近接する磁界強度測定点では、磁気的環境ノイズの強度はほぼ同じであり、差分するとほぼキャンセルされてしまい、磁性流体による磁界分布の歪みのみを高感度に測定することができる。【0017】本発明の他の局面に従うと、内部で液体通流が可能である物質1に対して外部から常磁性を有する磁性流体2を注入した測定対象3に対して、前記磁性流体2の励磁を目的として直流あるいは交流の磁界を印加する励磁手段4と、前記励磁手段4が印加する磁界と直交する磁界成分を少なくとも2ヶ所以上で測定し、同一磁界方向成分の磁界強度を測定する計測手段5および計測手段6と、前記計測手段5および前記計測手段6から信号の供給を受け、その差分信号を増幅する差動増幅手段7と、前記差動増幅手段7からの信号の供給を受け、励磁磁界が直流の場合には信号強度の絶対値をあるいは励磁磁界が交流の場合には差分増幅信号の振幅値を演算する演算手段8と、前記演算手段8からの信号の供給を受けて数値または波形を表示する表示手段9を備えている。前記磁性流体2の比透磁率が周囲物質に比して高いことによる局所磁界分布の歪みを計測することにより、物質内部に最も多くの前記磁性流体2が滞留している部位10を同定することができる。検査対象が磁性流体2を注入された組織である場合には、組織内部に滞留する磁性流体の比透磁率が周囲物質に比して高いことにより局所磁界分布の歪みが発生することを利用して、磁性流体が最も多く滞留している組織部位を差信号の強度や振幅の大きさに基づいて容易に同定することができる。【0018】好ましくは、印加磁界と直交する同一磁界方向成分の磁界強度を測定する部位の距離が検出対象であるリンパ節の大きさにほぼ等しいことである。これによって、リンパ節より十分に距離的に離れている磁気的環境ノイズ源からの磁界信号は少なくとも2ヶ所以上の印加磁界と直交する同一磁界方向成分の近接する磁界強度測定点では、磁気的環境ノイズの強度はほぼ同じであり、差分するとほぼキャンセルされてしまい、磁性流体による磁界分布の歪みのみを高感度に測定することができる。【0019】好ましくは、少なくとも前記励磁手段4の磁界を発生する部分と、前記計測手段5および前記計測手段6が一体化収納され、片手で握り持つことができる歯ブラシ型あるいはペンシル型あるいはピストル型の形状であることである。これにより片手のみの使用で簡便にセンチネルリンパ節を同定することができる。【0020】さらに好ましくは、前記演算手段8からの信号の供給を受けて、励磁磁界が直流の場合には信号強度の絶対値、あるいは励磁磁界が交流の場合には差分増幅信号の振幅値に比例させて、音の周波数や強度、発音間隔を可変出力させる音響変換手段10を具備していることである。音響変換手段10の具備により、操作者は視覚を検査対象に集中することができ、聴覚のみを用いて音の変化だけを頼りに物質内部に最も多くの前記磁性流体2が滞留している部位の同定の判断が行える。このために操作性を著しく改善することができる。結果的にセンチネルリンパ節を同定時間を著しく短縮することができる。【0021】したがって、本発明によれば、マーカーとして放射性同位元素を用いることなく、センチネルリンパ節を手術室内の環境で、簡便に短時間で同定することが可能である。【0022】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。【0023】[実施の形態1]図3は、本発明の測定原理を説明する説明図である。【0024】図3を参照して、生体を構成する有機化合物の殆どや銅、アルミを始めとする非磁性金属は比透磁率がほぼ1であり、磁界を殆ど歪曲しない。これに対して、常磁性を有する磁性流体は、比透磁率が1より大きい磁性微粒子の存在のために図3に図示するように周囲磁界を自身の中に引き込み、歪曲する作用がある。図3では、水平外部磁場が物質1全体に印加されている場合に、物質1内に滞留する磁性流体の塊が存在している場合に、印加された磁界を歪曲している様子を示している。【0025】この磁界の歪曲現象は、外部から磁界を印加し、磁性流体に対して励磁を行っている間のみ発生する。磁性流体の中には、磁性微粒子の粒子径が10nm(ナノメートル)よりも大きい場合にはわずかに残留磁化特性を示すものがあるが、残留磁化の強さは励磁磁界の強度に比べれば弱く、残留磁界の検出にはSQUID(SuperConducting QUantum Interferrence Devices)のような超高感度な磁気センサが必要となる。これに対して、前述の常磁性体の磁気歪曲効果は比透磁率の大きさがμ=3〜5程度であれば、ホール素子や磁気抵抗素子のような感度が悪い、安価な磁気センサを用いても計測することができる。【0026】図1は、本発明の実施の形態による磁性流体検出方法の動作を説明するフロー図である。【0027】図1を参照して、まず、注入ステップS1において内部で液体通流が可能である物質1に対して外部から常磁性を有する磁性流体2の注入を行う。次に励磁ステップS2において、前記磁性流体2を励磁するための直流あるいは交流の磁界を印加する。さらに、測定ステップS3において、印加磁界と直交する同一磁界方向成分の磁界強度を近接した少なくとも2ヶ所以上で測定する。増幅ステップS4では前記測定ステップで測定された信号の差分を増幅する。そして、演算ステップS5では、前記励磁ステップS2において直流磁界を印加した場合には前記増幅ステップS4で増幅された信号の絶対値を、あるいは交流磁界を印加された場合には前記増幅ステップS4で増幅された信号の振幅値を演算する。探索ステップS6では、前記励磁ステップS2における励磁部位と前記測定ステップS3の測定部位を連動して移動させることにより前記演算ステップS5が最大値となる物質部位を繰り返し捜すのである。【0028】上記の実施例によれば、前記磁性流体2の比透磁率が周囲物質に比して高いことによる局所磁界分布の最も歪みの大きな部位を同定することができる。即ち、物質内部に最も多くの磁性流体が滞留している部位を同定することができる。探索ステップS6は具体的には数値化あるいはグラフ化による表示処理によって操作者がより容易に判断を行うことができる。また、信号の絶対値あるいは励磁磁界が交流の場合には差分増幅信号の振幅値に基づいて音の周波数や強度、発音間隔を可変出力させて、操作者の聴覚を用いて前記演算ステップS5が最大値となる物質部位を捜すことができる。【0029】更に詳細に述べれば、最も数値変化、あるいは波形変化を引き起こす部位を磁界印加並びに磁界強度測定の位置を変えて探索することにより、磁性流体を多く滞留させている組織部位を同定することができる。磁性流体を悪性腫瘍部位に注射して一定時間後に周囲リンパ節に対する本発明に基づく磁性流体検出方法を実施することにより、センチネルリンパ節の位置同定を行うことができる。例えば印加する磁束密度を800ガウス〜1300ガウス程度(0.08テスラ〜0.13テスラ程度)にし、印加する磁界に対して直交する磁界成分を5mm離れた位置でホール素子や磁気抵抗素子のような計測手段を用いて計測する場合には2つの磁気センサ出力の差分を増幅率1000倍から1万倍程度の増幅率で増幅することにより、磁気的環境ノイズに影響を受けずに磁性流体の存在部位を測定することができる。2つのセンサの距離は検査対象をリンパ節とする場合には5mmから10mm程度にすることで最も磁気的環境ノイズの影響を小さくすることができる。【0030】図2は、本発明の実施の形態による磁性流体検出装置の構成をより具体化して示したブロック図である。【0031】図2を参照して、内部で液体通流が可能である物質1に対して外部から常磁性を有する磁性流体2を注入した測定対象領域3に対して、励磁手段4は直流あるいは交流の励磁用磁界を印加する機能ブロックである。前記磁性流体2の励磁を目的としている。さらに詳細に述べれば、直流磁界で印加する場合には励磁用磁界の印加にはネオジウム磁石を用いることができる。また比透磁率μ=1万〜十万程度の鉄損失が小さなアモルファスやナノ微粒子磁性材料で直径10mm程度の磁心を構成し、80ターン程度のソレノイドコイルに電流強度あるいは電流振幅が10mA程度の直流あるいは交流の電流を印加することにより1テスラ級の磁束密度を発生させることができる。【0032】計測手段5および計測手段6は近接する少なくとも2ヶ所以上で印加磁界と直交する同一磁界方向成分の磁界強度を測定する機能ブロックである。磁性流体がフェリデックス1000〜10000ppmの濃度の場合には数十マイクロガウスの磁束分解能を有する磁気センサとしてホール素子あるいは磁気抵抗素子を用いて構成することができる。【0033】差動増幅手段7は前記計測手段5および前記計測手段6から信号の供給を受け、その差分信号を増幅する機能ブロックである。磁性流体がフェリデックス1000〜10000ppmの濃度の場合には差動増幅器の増幅率は1000倍〜1万倍程度に設定することにより数Vレベルの出力信号を得ることができる。磁気抵抗素子間の距離を5mmから10mm程度にすれば殆ど磁気的環境ノイズである商用交流雑音は測定の障害とはならない。理由はノイズ源は測定対象に比して十分遠方にあり、計測手段5および計測手段6にはほぼ同じ強度の磁気ノイズが混入するために差分を取るとほぼキャンセルしてしまうのに対して、磁性流体2の塊が計測手段5または計測手段6のどちらか一方に十分近ければ、磁性流体2による印加磁界の歪曲効果により図3に示したように印加磁界に直交する磁界成分を生じ、空間磁気勾配が発生するので、差動増幅手段7により十分なS/N比で差信号を得ることができる。【0034】演算手段8は、前記差動増幅手段7からの信号の供給を受け、励磁磁界が直流の場合には信号強度の絶対値をあるいは励磁磁界が交流の場合には差分増幅信号の振幅値を演算する機能ブロックである。トランジスタやダイオードを用いた全波整流回路や同期検波回路で容易に実現することができる。【0035】表示手段9は、前記演算手段8からの信号の供給を受けて数値または波形を表示するための視覚化する機能ブロックである。【0036】また、音響変換手段10は、操作者が聴覚だけを頼りに最も磁性流体2が滞留している物質1の部位を探索することを可能にするために、前記演算手段8からの信号の供給を受けて、励磁磁界が直流の場合には信号強度の絶対値、あるいは励磁磁界が交流の場合には差分増幅信号の振幅値に比例させて、音の周波数や強度、発音間隔を可変出力させる機能ブロックである。これにより、物質内部に最も多くの前記磁性流体2が滞留している部位の同定のための操作性を著しく改善することができる。【0037】上記の構成を有する磁性流体検出装置により測定を行えば、磁性流体が高濃度で滞留している部位ほど検出信号に大きな変化が生じるので、悪性腫瘍近接部に対する磁性流体の注射後、適切な時間を設定して測定を行うことによりセンチネルリンパ節に最も磁性流体が滞留することから、迅速かつ安全、高精度にセンチネルリンパ節の同定を行うことが可能になる特有の効果を奏する。【0038】さらに図4に示すように、少なくとも上記、励磁手段1の磁界を発生する部分と計測手段5および計測手段6が一体化収納され、片手で握り持つことができる歯ブラシ型あるいはペンシル型、あるいはピストル型の形状を有する容器に収納されていることにより、操作者が片手で容易に持つことができるため、センチネルリンパ節生検の対象となるセンチネルリンパ節を同定する作業を迅速かつ安全に行うことができる。【0039】特に、磁界検出部分の形状が歯ブラシ型である場合には立位姿勢で楽な姿勢での測定が可能になり、医師の負担が低減する。【0040】また、図2に示される音響変換手段10は、差動増幅手段7からの信号の供給を受け信号強度の絶対値、あるいは励磁磁界が交流の場合には差分増幅信号の振幅値に比例して音の周波数や強度、発音間隔を可変出力させることを特徴とする機能ブロックである。この機能ブロックを具備していることにより、差分磁界強度や振幅が音に変換され、音の変化だけを聴いて測定結果を知ることができ、医師は測定部位の状態に専念することができ、安全性が向上するだけでなく、医師の負担が低減される。【0041】以上のように、本発明の実施の形態によれば、SQUIDに比べより感度が鈍い安価な磁界センサであるホール素子や磁気抵抗素子を用いて磁性流体の存在を測定することができる。SQUID磁束計のように冷却手段を要しないため、取り扱いは簡単で片手で持つことが容易な重量や形状にすることができる。システム全体の価格も安価であり、磁気的環境ノイズを低減するための磁気シールドルームも不必要になる。【0042】このため、マーカーとして放射性同位元素を用いなくても、検査するリンパ節がセンチネルリンパ節であるか否かを迅速かつ高精度に判定することが可能となる。また、リンパ節が黒色であり染色色素では判別し難い場合においても不都合を生じない。開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。【0043】【発明の効果】以上のように、本発明によれば、マーカーとして磁性流体を用い、磁性流体の比透磁率が周囲物質より高く、励磁のために印加した磁界分布が歪むことによる直交磁界成分の勾配の変化を捉えるので、印加磁界強度を上げればより低感度で安価な磁界センサを用いて、磁性流体の存在を検出することができ、放射線同位元素を用いることなく、簡便に短時間にセンチネルリンパ節の位置同定を行うことができ、センチネルリンパ節生検を普及させることができる。なお、リンパ節が黒色であり染色色素では判別し難い場合においても確実にセンチネルリンパ節であるか否かを不都合を生じないで判定することができる。【0044】また、磁界測定点の距離をほぼリンパ節の大きさにすることにより、磁気的環境ノイズをキャンセルしながら高感度に磁性流体の検出を行うことができる。【0045】したがって、放射性同位元素を取り扱わないために病院に対する法的規制の対象にならずに済むため、本磁性流体測定方法を利用するセンチネルリンパ節生検法を普及させることができ、廃棄物の処理方法についても考慮する必要がなくなる。【0046】さらに、施術者が片手で容易に持つことができるため、手術中に迅速かつ安全にセンチネルリンパ節生検の対象となるセンチネルリンパ節を同定することができる。【0047】特に、磁界検出部分の形状が歯ブラシ型である場合には立位姿勢で楽な姿勢での測定が可能になり、医師の負担が低減する。また、差分磁界強度や振幅が音に変換されることにより、医師は測定部位の状態に専念することができ、安全性が向上するだけでなく、医師の負担が低減される。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の一実施の形態による磁性流体検出方法の動作を説明するフロー図である。【図2】 本発明の一実施の形態による磁性流体検出装置の構成を示すブロック図である。【図3】 本発明の測定原理を説明する説明図である。【図4】 図2に示した磁性流体検出装置の磁界励磁手段4と計測手段5および計測手段6を収納するケースの3次元的概略構成を示す説明図である。【符号の説明】1 内部で液体通流が可能である物質 2 常磁性を有する磁性流体3 物質1に磁性流体2を注入した測定対象部分4 励磁手段 5 第1の計測手段 6 第2の計測手段7 差動増幅手段 8 演算手段 9 表示手段 10 音響変換手段 内部で液体通流が可能である物質1に対して外部から常磁性を有する磁性流体2を注入した測定対象3に対して、前記磁性流体2の励磁を目的として直流あるいは交流の磁界を印加する励磁手段4と、前記励磁手段4が印加する磁界と直交する磁界成分を少なくとも2ヶ所以上で測定し、同一磁界方向成分の磁界強度を測定する計測手段5および計測手段6と、前記計測手段5および前記計測手段6から信号の供給を受け、その差分信号を増幅する差動増幅手段7と、前記差動増幅手段7からの信号の供給を受け、励磁磁界が直流の場合には信号強度の絶対値をあるいは励磁磁界が交流の場合には差分増幅信号の振幅値を演算する演算手段8と、前記演算手段8からの信号の供給を受けて数値または波形を表示する表示手段9により構成され、前記磁性流体2の比透磁率が周囲物質に比して高いことによる局所磁界分布の歪みを計測することにより、物質内部に最も多くの前記磁性流体2が滞留している部位を同定し、 少なくとも前記励磁手段4の磁界を発生する部分と、前記計測手段5および前記計測手段6が一体化収納され、片手で握り持つことができる歯ブラシ型あるいはペンシル型あるいはピストル型の形状であることにより、物質内部に最も多くの前記磁性流体2が滞留している部位を同定をすることを特徴とする磁性流体検出装置。 内部で液体通流が可能である物質1に対して外部から常磁性を有する磁性流体2を注入した測定対象3に対して、前記磁性流体2の励磁を目的として直流あるいは交流の磁界を印加する励磁手段4と、前記励磁手段4が印加する磁界と直交する磁界成分を少なくとも2ヶ所以上で測定し、同一磁界方向成分の磁界強度を測定する計測手段5および計測手段6と、前記計測手段5および前記計測手段6から信号の供給を受け、その差分信号を増幅する差動増幅手段7と、前記差動増幅手段7からの信号の供給を受け、励磁磁界が直流の場合には信号強度の絶対値をあるいは励磁磁界が交流の場合には差分増幅信号の振幅値を演算する演算手段8と、前記演算手段8からの信号の供給を受けて数値または波形を表示する表示手段9により構成され、前記磁性流体2の比透磁率が周囲物質に比して高いことによる局所磁界分布の歪みを計測することにより、物質内部に最も多くの前記磁性流体2が滞留している部位を同定し、 前記演算手段8からの信号の供給を受けて、励磁磁界が直流の場合には信号強度の絶対値、あるいは励磁磁界が交流の場合には差分増幅信号の振幅値に比例させて、音の周波数や強度、発音間隔を可変出力させる音響変換手段10を具備することにより、物質内部に最も多くの前記磁性流体2が滞留している部位を同定することを特徴とする磁性流体検出装置。 前記計測手段5と前記計測手段6との距離が前記磁性流体2の滞留部位の大きさに等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の磁性流体検出装置。


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