生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ルシフェラーゼ発光反応の増強法
出願番号:2001315397
年次:2007
IPC分類:C12Q 1/66,G01N 21/76,G01N 33/58


特許情報キャッシュ

黒澤 恵子 梶山 直樹 JP 3983023 特許公報(B2) 20070713 2001315397 20011012 ルシフェラーゼ発光反応の増強法 キッコーマン株式会社 000004477 鈴木 英之 100125542 黒澤 恵子 梶山 直樹 JP 2000320921 20001020 20070926 C12Q 1/66 20060101AFI20070906BHJP G01N 21/76 20060101ALI20070906BHJP G01N 33/58 20060101ALN20070906BHJP JPC12Q1/66G01N21/76G01N33/58 A C12Q 1/00-70 C12N 1/00ー9/99 C12P 1/00-41/00 G01N 33/50ー98 PubMed、MEDLINE(STN) BIOSIS/WPI(DIALOG) 特開平10−114794(JP,A) 特開平11−169194(JP,A) 特開平11−332593(JP,A) 特表平06−500921(JP,A) Biochim. Biopys. Acta,1958年,Vol.27,p.519-532 9 2002191396 20020709 13 20040915 斎藤 真由美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、主として甲虫類由来のルシフェラーゼおよびルシフェリンが関与する生物発光の増強法およびそのための試薬キットに関する。【0002】【従来の技術】ホタル由来のルシフェラーゼが触媒する発光反応については、長年に渡って仔細な研究がなされており、その反応機構は以下の通りである。ホタルルシフェリン+ATP+O2+H2O→ オキシルシフェリン+AMP+PPi+CO2+光この反応には、2価金属イオン、例えばMg2+、Mn2+が必要である。以下、本発明では、2価金属イオンの存在下でATPおよびホタルルシフェリンに作用して発光反応を生じさせる活性のことを、「ルシフェラーゼ活性」という。【0003】上記発光(以下、「ルシフェラーゼ発光」という)反応における発光量はATP量に比例することから、ルシフェラーゼは試料中のATP量測定に利用されている。現在、ルシフェラーゼを用いたATP検出法は、微生物や食品残さ由来のATP量を測定する清浄度検査や、微生物由来のATP量を測定する菌数検査等の衛生検査分野で利用されている。また、修飾ルシフェラーゼ、例えば、化学修飾法(特開昭60-138463)や組換法(特開平8-308578)によりビオチン化されたビオチン化ルシフェラーゼも種々の測定系にて使用されている。ビオチン化ルシフェラーゼは、そのビオチンを介してルシフェラーゼとアビジンまたはストレプトアビジンとの複合体を作製することにより、例えば、現在多用されている酵素免疫測定法、DNAプローブ法、免疫染色法、in situハイブリダイゼーション法等のビオチン・アビシンを利用した検出系に応用されている。(北川常廣編、酵素免疫測定法(蛋白質核酸酵素別冊NO.31)(1997)、共立出版、P. Tijssen著、石川栄治監訳、エンザイムイムノアッセイ(1989)、東京化学同人、高橋豊三著、DNAプローブ(1988)、シーエムシー)。【0004】このように、ルシフェラーゼ発光を用いた測定法は、臨床検査、衛生検査等に広く利用されている。また、近年では、ルシフェラーゼ発光は、玩具、遊具、照明、演出装置あるいは結婚式等のイベントにも利用されている。一方、ルシフェラーゼ発光のパターンが、研究試薬や産業上の利用に際し問題になっていた。すなわち、ルシフェラーゼ発光は、短時間に急激にピークに達し、以後急激に減衰し、定常状態となりさらにゆっくりと減衰していく。このため、ルシフェラーゼ発光の減衰を抑制すること、および/または発光量を増加させること、すなわち発光を増強させることが、ルシフェラーゼ発光を利用する産業分野において求められている。すなわち、ルシフェラーゼ発光の増強により、発光測定系の高感度化が可能となり、また玩具、遊具、照明や結婚式等のイベントの分野においては、利用者が発光を長時間楽しむことができるようになる。ルシフェラーゼ発光を増強させる方法として、発光反応系に、CoAやDTT等のチオール試薬を添加する方法(特表平6-500921、US5283179、US5650189、US5641641)、ピロリン酸を添加する方法(US4246340、Arch. Biochem. Biophys.46、399〜416、1953)、ルシフェラーゼ阻害剤を添加する方法(US5814471)、チオール試薬とBSAを共存させる方法(特表平6-500921)が開発されている。【0005】ルシフェラーゼ発光の減衰の原因のひとつに、反応産物であるオキシルシフェリンによるルシフェラーゼ活性阻害があげられる(Arch. Biochem. Biophys.169、616〜621、1975)。ホタル体内において、オキシルシフェリンはニトリル体を経てホタルルシフェリンに再生されうることが以前より知られていた(Tetrahedron Letters 32、2771〜2774、1974)。また、オキシルシフェリンからホタルルシフェリンを再生する反応に関与するタンパク質(ルシフェリン再生酵素)がホタル発光器から発見され(特開平10-114794)、さらに該タンパク質の遺伝子がクローニングされた(特願平11-285258、特願2000-228226、特願2000-228227)。【0006】ATP,ホタルルシフェリン、ルシフェラーゼ、2価金属イオンを反応させる従来の生物発光反応系に、D-システインおよびルシフェリン再生酵素を添加すると発光量が増大することは知られている(特開平10-114794)。図1に示す通り、従来の生物発光反応系にD-システインおよびルシフェリン再生酵素を共存させると、発光の結果生成するオキシルシフェリンがD-システイン存在下でホタルルシフェリンに再生され、再び発光反応に関与するので、発光量が増大すると考えられる。そしてルシフェリン再生酵素を用いる発光反応系においても、さらに発光を増強する方法が求められている。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、ルシフェリン再生酵素を用いるルシフェラーゼ発光反応系において、その発光を増強させる方法、ルシフェラーゼ活性またはホタルルシフェリンの検出法、およびそのための試薬を提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題について種々検討した結果、ATP,ホタルルシフェリン、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素が関与する発光反応系に、CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上を添加することにより発光の増強が可能となることを見出し、本発明を完成した。【0009】即ち、本発明は、下記の方法および試薬キットを提供するものである。1.ATP、ホタルルシフェリン、ルシフェラーゼ、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素が関与する発光反応系に、CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上を添加することを特徴とする、発光反応の増強方法。【0010】2.ATP,ホタルルシフェリン、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素が関与する発光反応に基づく発光測定法において、発光反応系に、CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上を添加することを特徴とする、発光測定法。【0011】3.CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上、ATP,ホタルルシフェリン、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素を試料に添加し、生じる発光を測定することを特徴とする、試料中のルシフェラーゼ活性の検出法。【0012】4.ルシフェラーゼとして、試料中の被検物質と結合可能である修飾ルシフェラーゼを使用することを特徴とする、上記3記載の方法。【0013】5.修飾ルシフェラーゼが、ビオチン、抗体、ハプテン、酵素、核酸または補酵素とルシフェラーゼが結合したものである、上記4記載の方法。【0014】6.CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上、ルシフェラーゼ、ATP、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素を試料に添加し、生じる発光を測定することを特徴とする、試料中のホタルルシフェリンの検出法。【0015】7.ホタルルシフェリンがルシフェリン誘導体から遊離したルシフェリンである、上記6記載の方法。8.ルシフェリン誘導体がルシフェリンガラクトシドまたはオキシルシフェリンである上記7記載の方法9.以下の(1)〜(3)記載の成分を含む試薬キット(1)CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上、(2)D-システイン、(3)ルシフェリン再生酵素【0016】【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。〔発光反応の増強方法〕本発明における発光反応の増強方法は、ATP、ホタルルシフェリン(以下、単に「ルシフェリン」と記載することもある)、ルシフェラーゼ、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素が関与する発光反応系に、CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上を添加することを特徴とする。ホタルルシフェリンは、下記一般式に示す化合物である。【0017】【化1】【0018】また、ホタルルシフェリンは発光反応に関与できるものであれば、上記一般式に示す化合物の誘導体、例えばホタルルシフェリンの塩、エステル、配糖体であってもよい。なお、ホタルルシフェリンは、反応に直接関与しない誘導体、例えばルシフェリンガラクトシド、オキシルシフェリンなどから、酵素的あるいは非酵素的反応により生成したものであってもよい。ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼ活性を有するものであればよく、好適なものとしては、甲虫、例えばゲンジボタル、ヘイケボタル、アメリカボタル等を由来とするルシフェラーゼが挙げられる。ルシフェラーゼとしては、上記の昆虫の発光器から精製されたもの、クローニングされたルシフェラーゼ遺伝子を含有する組換え体微生物により生産されたものが挙げられる。また、ルシフェラーゼは、天然型ルシフェラーゼに限定されず、変異型ルシフェラーゼや修飾ルシフェラーゼであってもよい。修飾ルシフェラーゼとは、例えば生理活性物質、具体的には、ビオチン、ホルモン、レセプター、抗体、ハプテン、酵素、核酸、補酵素等と結合したルシフェラーゼである。また、ATPはATP産生酵素によって試料中の他の化合物から生成されたものでもよい。ATP産生酵素としてはアセテートカイネース、ピルベートオルソフォスフェートジキナーゼ(PPDK)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。2価金属イオンは、好ましくは、Mg2+、Mn2+等であるが、特にこれらに限定されない。【0019】本発明でいうルシフェリン再生酵素とは、オキシルシフェリンをD-システイン存在下でホタルルシフェリンに変換させる能力をもつ酵素のことであり、その由来は限定されない。ルシフェリン再生酵素をコードする遺伝子はすでに得られているので、該遺伝子を含有する組換体微生物を培養することにより、培養物からルシフェリン再生酵素を精製することができる。例えば、アメリカホタル由来のルシフェリン再生酵素は、組換え体大腸菌であるE.coliJM109(pLRE)(FERM BP-6908)より精製可能である。この場合、まず、該組換え体をTY培地で37℃一昼夜培養し、集菌後、リゾチームにより溶菌させる。溶菌液の遠心上清を30%〜65%飽和硫安分画し、得られた硫安沈殿物を少量のバッファーに溶解させ、ゲル濾過カラムで分画する。活性画分をセントリプレップ10(アミコン社製)で濃縮し、QセファロースFFカラムにかける。吸着画分の溶出は1〜200mM NaCl直線濃度勾配で行う。活性画分をSDS-PAGEで解析し、シグルバンドであることを確認した後、セントリプレップ10で濃縮し、ルシフェリン再生酵素標品とする。【0020】ルシフェリン再生酵素を含むと思われる画分の活性測定は、以下の方法により行なう。まず、活性測定用緩衝液(25mMグリシルグリシン+5.4mM硫酸マグネシウム、(pH7.8))8.5ml に0.01mM D-システイン1mlおよび1mMオキシルシフェリン0.5mlを添加し、基質混合液を作製する。この混合液100μlに、測定サンプル10μlを加え、37℃で一定時間反応させる。この反応液10μlを活性測定用緩衝液100μlに添加した後、ATP、ルシフェラーゼ混合液(10mMATP溶液に、ルシフェラーゼを0.5mg/mlとなるよう添加した溶液)を100μl注入し、発光量を5秒間積算する。ルシフェリン再生酵素を含む画分は、他の画分よりも発光量が多い。本発明の発光の増強法において反応系に添加されるのは、CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種である。CoAや、ピロリン酸はルシフェラーゼに結合したオキシルシフェリンを放出すると考えられている(Biochim. Biophys. Acta 27、519〜532、1958、Arch. Biochem. Biophys.46、399〜416、1953)。CoAやピロリン酸によりルシフェラーゼから引き離されたオキシルシフェリンは、ルシフェリン再生酵素の作用を受けやすくなり、D-システイン存在下で効率よくホタルルシフェリンに再生される。再生されたホタルルシフェリンは、ルシフェラーゼの基質として再度使われる。また、オキシルシフェリンがホタルルシフェリンに再生されるため、ルシフェラーゼへの再結合が防止され、オキシルシフェリンによるルシフェラーゼの阻害も緩和される。【0021】ピリドキサールリン酸とはビタミンB6リン酸化合物である。ピリドキサールリン酸がルシフェラーゼ発光に関与するという報告は今までになく、本発明で初めて明らかになったものである。添加されたCoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸は、図2に示すような状態でルシフェラーゼ発光反応に関与していると考えられる。CoA、ピロリン酸またはピリドキサールリン酸の誘導体とは、これらの化合物の基本的な構造を有しかつルシフェラーゼ発光を増強できる物質であれば限定されない。誘導体とは例えば、CoA等の塩、エステル化物、アセチル化物、脱リン酸物などである。具体的には、CoA誘導体とは、例えばデホスホCoA、アセチルCoA等である。また、ピロリン酸誘導体とは、例えば、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等である。またピリドキサールリン酸誘導体とは、例えば その塩である。本発明の発光の増強法において、CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体を反応系に添加する場合、その添加量は特に限定されない。これらの試薬は、例えば、終濃度0.1〜2mMとなるように反応系に添加することができる。【0022】本発明において、ATP、ホタルルシフェリン、ルシフェラーゼ、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素が関与する発光反応系とは、どのような産業分野に利用されるものであってもよい。該産業分野としては、例えば、医療分野、学術研究分野が挙げられる。また玩具、遊具、照明、演出装置あるいは結婚式等のイベントに関する分野も挙げられる。上記発光反応系としては、ルシフェリンおよびルシフェラーゼが関与する発光測定法が例示される。発光測定法とは例えば、以下の測定法である。(1)試料にルシフェリン、ルシフェラーゼおよびMg2+を添加して生じる発光を測定する、試料中のATP量の測定法(2)試料中のAMPをホスホエノールピルビン酸存在下でPPDKによりATPに変換させ、さらにルシフェリン、ルシフェラーゼおよびMg2+を添加して生じる発光を測定する、試料中のAMP量の測定法【0023】〔試料中のルシフェラーゼ活性の検出法〕別の態様では、本発明は試料中のルシフェラーゼ活性の検出法であって、CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上、ATP,ホタルルシフェリン、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素を試料に添加し、生じる発光を測定することを特徴とする。試料中にルシフェラーゼが存在する場合、上記の試薬を試料に添加することによりルシフェラーゼ発光が生じ、さらにCoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上とルシフェリン再生酵素、D-システインの作用により発光が増強される。このため、試料中のルシフェラーゼが高感度に検出される。本発明においてルシフェラーゼ発光は、市販のルミノメーター、シンチレーションカウンター、光度計、フォトエマルジョンフィルム等を利用して測定することができる。ルシフェラーゼが修飾ルシフェラーゼ、特に試料中の被検物質と結合可能なものである場合は、上記方法により生じたルシフェラーゼ発光を測定することにより試料中の被検物質を高感度に測定することができる。そのような修飾ルシフェラーゼとしては、ビオチン、抗体、ハプテン、酵素、核酸または補酵素等とルシフェラーゼが結合したものが挙げられる。ビオチン等とルシフェラーゼの結合は、直接的であってもよく、また適当な化合物を介して間接的に結合していてもよい。ルシフェラーゼと他のタンパク質を結合する場合は遺伝子工学的手法により融合タンパク質とすることもできる。【0024】ルシフェラーゼがビオチン化ルシフェラーゼである場合、本発明の検出法は以下のように実施できる。まず、抗原等の被検物質をイムノプレート等に固定化した抗体に結合させる。さらに抗原に対するビオチン化抗体を結合させる。これにビオチン化ルシフェラーゼをアビジンまたはストレプトビジンを介して結合させる。ビオチン化ルシフェラーゼはアビジンまたはストレプトアビジンを介してビオチン化抗体と複合体を形成することができる。ビオチン化ルシフェラーゼを発光により検出すると、ビオチン化ルシフェラーゼと複合体を形成している測定する被検物質を検出できる。この方法により、試料中の被検物質、例えば、黄色ブドウ球菌の産生するプロテインAが高感度に測定できる。ルシフェラーゼと結合している物質が、抗体である場合は抗原が、ハプテンである場合は抗体が高感度に測定できる。また、ルシフェラーゼと結合している物質が、核酸である場合はそれにハイブリダイズ可能な核酸が、補酵素である場合はそれに結合可能な酵素が高感度に測定できる。【0025】〔試料中のルシフェリンの検出法〕別の態様では、本発明は試料中のルシフェリンの検出法であって、CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上、ルシフェラーゼ、ATP、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素を試料に添加し、生じる発光を測定することを特徴とする。試料中にルシフェリンが存在する場合、上記の試薬を添加することによりルシフェラーゼ発光が生じ、さらにCoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上とルシフェリン再生酵素、D-システインの作用により発光が増強される。このため、試料中のルシフェリンが高感度に検出される。ルシフェリンが、ルシフェリン誘導体、特に試料中の被検物質の作用によりルシフェリンを遊離するような物質から生成したものである場合は、試料中の被検物質を高感度に測定することができる。そのようなルシフェリン誘導体としては、例えばルシフェリン-O-ガラクトシドがあげられる(特開平11-332593)。ルシフェリン-O-ガラクトシドは、βガラクトシダーゼによりルシフェリンに変換される。このため、βガラクトシダーゼ活性をもつ大腸菌群が試料中に存在すると、ルシフェリン-O-ガラクトシドから遊離したルシフェリンをルシフェラーゼ発光で検出できる。このため、本発明の方法は、試料中の大腸菌群の高感度な検出法として使用できる。また、本発明の方法は、試料中のオキシルシフェリンの検出方法としても有用である。この場合、オキシルシフェリンを含む試料に、ルシフェリン再生酵素、D-システインを作用させホタルルシフェリンに変換させる。変換されたホタルルシフェリンをルシフェラーゼ発光で検出する。すなわち、発光量を測定することで試料中のオキシルシフェリンを検出することができる。この発光反応系にCoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上を添加することにより発光が増強される。【0026】〔試薬キット〕別の態様では、本発明は以下の(1)〜(3)記載の成分を含む試薬キットである。(1)CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上、(2)D-システイン、(3)ルシフェリン再生酵素本発明の試薬キットは、ルシフェラーゼ発光に関与する他の成分と組み合わせて、発光を増強するために使用することができる。該試薬キットが試料中のルシフェラーゼ活性を検出するために使用される場合、ルシフェラーゼ発光に関与する他の成分とは、好ましくはATP、ホタルルシフェリン、2価金属イオンである。また、該試薬キットが試料中のルシフェリンを検出するために使用される場合、ルシフェラーゼ発光に関与する他の成分とは、好ましくはATP、ルシフェラーゼ、2価金属イオンである。さらに、該試薬キットが玩具、遊具、照明、演出装置あるいは結婚式等のイベント用品として発光を楽しむために使用される場合は、ルシフェラーゼ発光に関与する成分とは、好ましくはATP、ルシフェラーゼ、ホタルルシフェリン、2価金属イオンである。【0027】【実施例】〔実施例1〕ルシフェリン再生酵素の精製アメリカホタル由来のルシフェリン再生酵素を組換え体E.coliJM109(pLRE)(FERM BP-6908)より精製した。すなわち、該組換体を2LのTY培地で37℃一昼夜培養し、集菌後、リゾチームにより溶菌させた。溶菌液の遠心上清を30%〜65%飽和硫安分画し、得られた硫安沈殿物は少量のバッファーA(50 mMトリス(pH7)、100mM NaCl、1mM DTT、1mM EDTA、5% グリセロール)に溶解させ、ゲル濾過カラム(UltrogelAcA34、径2.5cm×65cm、溶離液は上記バッファーA)で分画した。活性画分はセントリプレップ10(アミコン社製)で濃縮し、QセファロースFFカラムにかけた。溶出はバッファーB(10 mMトリス(pH8)、1mM DTT、1mM EDTA、5% グリセロール)中1〜200mM NaCl直線濃度勾配で行った。活性画分はSDS-PAGEで解析したところ、シングルバンドであったため、これらをセントリプレップ10で濃縮し、ルシフェリン再生酵素標品(0.93mg/ml)とした。【0028】〔実施例2〕CoA及びピロリン酸の添加効果以下の試薬を調製した。試薬1;10mM D-システイン、5mM 硫酸マグネシウム、ホタルルシフェラーゼ(キッコーマン製)1μg/ml、50mMグリシルグリシン(pH7.8)試薬2;0.5mMルシフェリン-10mM ATP-5mM 硫酸マグネシウム(pH7.8)試薬3として組成A;50mMグリシルグリシン(pH7.8)組成B;ルシフェリン再生酵素9.3 μg組成C;5mM CoA組成D;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、5mM CoA組成E;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、5mMデホスホCoA組成F;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、5mMアセチルCoA組成G;5mMピロリン酸組成H;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、0.5mMピロリン酸組成I;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、5mMピロリン酸組成J;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、5mMピロリン酸カリウム組成K;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、5mMピロリン酸ナトリウム次いで、80μlの試薬1と20μlの試薬3を混合し、100μlの試薬2を添加することで発光をスタートさせ、アロカ社製ルミノメーターで発光を200秒間モニターした。試薬3が組成Aであるときの発光量を1とした場合の結果を表1に示す。【0029】【表1】【0030】ルシフェリン再生酵素と、CoAまたはピロリン酸あるいはこれらの誘導体を組み合わせてルシフェリン-ルシフェラーゼ反応に添加することでより、発光量が増加し、より高感度にルシフェラーゼ活性を検出できるようになった。【0031】〔実施例3〕ピリドキサールリン酸の添加効果以下の試薬を調製した。試薬1;10μMオキシルシフェリン、50mMグリシルグリシン(pH7.8)試薬2として組成A;50mMグリシルグリシン(pH7.8)組成B;ルシフェリン再生酵素9.3μg組成C;10mMピリドキサールリン酸組成D;ルシフェリン再生酵素9.3μg、10mMピリドキサールリン酸試薬3;10mM D-システイン試薬4;ホタルルシフェラーゼ(キッコーマン社製) 0.5mg/ml、10mM ATP、5mM硫酸マグネシウム(pH7.8)【0032】次いで、50μlの試薬1と50μlの試薬2を混合し、37℃、30分インキュベートした。この反応液10μlに、100μlの試薬3を添加し、さらに5分後100μlの試薬4を添加し、アロカ社製ルミノメーターで発光量を5秒間測定し、再生されたルシフェリン量を比較した。試薬2の組成Cであるときの発光量を1とした場合の結果を表2に示す。【0033】【表2】【0034】ピリドキサールリン酸が存在するとオキシルシフェリンが効率よくルシフェリンに再生された。また、ピリドキサールリン酸、ルシフェリン再生酵素が共存すると、さらに効率よくルシフェリンが再生された。ピリドキサールリン酸とルシフェリン再生酵素によりルシフェリン再生が促進されることが示された。本発明の方法により、ルシフェラーゼ発光を増強することが可能となる。【0035】〔実施例4〕組み合わせて添加した場合の効果CoA、ピロリン酸、ピリドキサールリン酸、ルシフェリン再生酵素を組み合わせてルシフェラーゼ発光測定に添加した。まず、以下の試薬を調製した。試薬1;10mM D-システイン、5mM 硫酸マグネシウム、ホタルルシフェラーゼ(キッコーマン製)1μg/ml、50mMグリシルグリシン(pH7.8)試薬2;0.5mMルシフェリン-10mM ATP-5mM 硫酸マグネシウム(pH7.8)試薬3として組成A;50mMグリシルグリシン(pH7.8)組成B;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、5mM CoA、5mMピリドキサールリン酸組成C;ルシフェリン再生酵素9.3μg、0.5mMピロリン酸、0.5mMピリドキサールリン酸組成D;ルシフェリン再生酵素9.3μg、0.5mMピロリン酸、5mMピリドキサールリン酸組成E;ルシフェリン再生酵素9.3μg、5mMピロリン酸、0.5mMピリドキサールリン酸組成F;ルシフェリン再生酵素9.3μg、5mMピロリン酸、5mMピリドキサールリン酸組成G;ルシフェリン再生酵素9.3μg、0.5mM CoA、0.5mM ピロリン酸組成H;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、5mMピリドキサールリン酸次いで、80μlの試薬1と20μlの試薬3を混合し、100μlの試薬2を添加することで発光をスタートさせ、アロカ社製ルミノメーターで発光を100秒間モニターした。試薬3が組成Aであるときの発光量を1とした場合の結果を表3に示す。【0036】【表3】【0037】CoA、ピロリン酸、ピリドキサールリン酸、ルシフェリン再生酵素が同一液体内で共に働きうることが示された。【0038】〔実施例5〕ルシフェラーゼがビオチン化ルシフェラーゼである場合以下の試薬を調製した。試薬1;0.5mM ルシフェリン、0.8mM ATP、10mM 酢酸マグネシウム、50mM トリシン、6mM D-システイン、4mM チオグリセロール、1mM EDTA、0.1mM ピロリン酸カリウム、0.2% BSA、0.5mM CoA、pH 7.8試薬2として組成A;50mMグリシルグリシン(pH7.8)組成B;ルシフェリン再生酵素(0.93mg/ml)試薬3;23 ng/mlビオチン化ルシフェラーゼ(キッコーマン製)次いで、110μlの試薬1に3μlの試薬2を添加し、試薬3を5μl添加後、ルミテスターK210(キッコーマン製)で発光量を測定した。添加直後の発光量はほぼ同じであるが、15分後の発光量を比較すると、組成Bは組成Aの1.3倍であり、発光持続効果が認められた。ビオチン化ルシフェラーゼは、酵素免疫測定法、DNAプローブ法、免疫染色法、in situハイブリダイゼーション法等で利用されていることから、本発明がこれらの測定系に応用可能であることが示された。【0039】〔実施例6〕ルシフェリン誘導体がルシフェリンガラクトシドである場合まず、以下の試薬を調製した。試薬1; 5μMルシフェリン-O-ガラクトシド(キッコーマン製)、10mMトリスバッファー(pH7.3)を含む溶液に、βガラクトシダーゼ(シグマ製)1ユニットを添加し、ルシフェリンを遊離させ、ルシフェリン溶液とした。試薬2;10mM D-システイン、5mM 硫酸マグネシウム、ルシフェラーゼ(キッコーマン製)1×10-1 mg/ml、50mMグリシルグリシン(pH7.8)試薬3;10mM ATP-5mM 硫酸マグネシウム(pH7.8)試薬4として組成A;50mMグリシルグリシン(pH7.8)組成B;ルシフェリン再生酵素9.3μg組成C;ルシフェリン再生酵素9.3 μg、5mM CoA組成D;ルシフェリン再生酵素9.3μg、5mMピロリン酸組成E;ルシフェリン再生酵素9.3μg、5mM CoA、5mMピリドキサールリン酸組成F;ルシフェリン再生酵素9.3μg、5mMピロリン酸、5mMピリドキサールリン酸次いで、10μlの試薬1、80μlの試薬2および20μlの試薬4を混合し、100μlの試薬3を添加することで発光をスタートさせ、アロカ社製ルミノメーターで発光を150秒間モニターした。試薬3が組成Aであるときの発光量を1とした場合の結果を表4に示す。【0040】【表4】【0041】ルシフェリンガラクトシドは、βガラクトシダーゼ活性をもつ大腸菌群の検出法に利用されていることから、本発明がその測定系に応用可能であることが示された。【0042】【発明の効果】本発明により、ルシフェラーゼ発光の増強法およびそのための試薬キットが提供された。本発明は、臨床検査、衛生検査等における発光測定法、玩具、遊具、照明、演出装置あるいは結婚式等のイベント等に利用できることから、産業上有用である。【図面の簡単な説明】【図1】ATP、ホタルルシフェリン、ルシフェラーゼ、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素が関与する発光反応を示す模式図。【図2】ATP、ホタルルシフェリン、ルシフェラーゼ、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素が関与する発光反応系に、CoA,ピロリン酸またはピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上が添加された場合を示す模式図。 ATP、ホタルルシフェリン、ルシフェラーゼ、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素が関与する発光反応系に、ピリドキサールリン酸を添加することを特徴とする、発光反応の増強方法。 ATP、ホタルルシフェリン、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素が関与する発光反応に基づく発光測定法において、発光反応系に、ピリドキサールリン酸を添加することを特徴とする、発光測定法。 ピリドキサールリン酸、ATP、ホタルルシフェリン、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素を試料に添加し、生じる発光を測定することを特徴とする、試料中のルシフェラーゼ活性の検出法。 ルシフェラーゼとして、試料中の被検物質と結合可能である修飾ルシフェラーゼを使用することを特徴とする、請求項3記載の方法。 修飾ルシフェラーゼが、ビオチン、抗体、ハプテン、酵素、核酸または補酵素とルシフェラーゼが結合したものである、請求項4記載の方法。 ピリドキサールリン酸、ルシフェラーゼ、ATP、D-システイン、2価金属イオンおよびルシフェリン再生酵素を試料に添加し、生じる発光を測定することを特徴とする、試料中のホタルルシフェリンの検出法。 ホタルルシフェリンがルシフェリン誘導体から遊離したルシフェリンである、請求項6記載の方法。 ルシフェリン誘導体がルシフェリンガラクトシドまたはオキシルシフェリンである請求項7記載の方法。 以下の(1)〜(3)記載の成分を含む試薬キット。(1)ピリドキサールリン酸、(2)D-システイン、(3)ルシフェリン再生酵素


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る