タイトル: | 特許公報(B2)_低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶及び低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶の製造方法、これらの製造方法で得られた低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶、並びにフッ化タンタル酸カリウム結晶及びフッ化ニオブ酸カリウム結晶の酸素分析方法 |
出願番号: | 2001296954 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C01G 35/00,C01G 33/00,G01N 1/28,G01N 31/00,G01N 31/12 |
内野 義嗣 木下 正典 JP 4094835 特許公報(B2) 20080314 2001296954 20010927 低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶及び低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶の製造方法、これらの製造方法で得られた低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶、並びにフッ化タンタル酸カリウム結晶及びフッ化ニオブ酸カリウム結晶の酸素分析方法 三井金属鉱業株式会社 000006183 田中 大輔 100111774 内野 義嗣 木下 正典 20080604 C01G 35/00 20060101AFI20080515BHJP C01G 33/00 20060101ALI20080515BHJP G01N 1/28 20060101ALI20080515BHJP G01N 31/00 20060101ALI20080515BHJP G01N 31/12 20060101ALI20080515BHJP JPC01G35/00C01G33/00G01N1/28 KG01N31/00 KG01N31/12 Z C01G35/00 C01G33/00 G01N1/28 G01N31/00 G01N31/12 WPI Science Direct 特開昭49−032897(JP,A) 特開2001−180935(JP,A) 特表平06−503795(JP,A) 特開平11−083841(JP,A) 特開2000−327330(JP,A) 特開2001−329321(JP,A) 6 2003095658 20030403 10 20040623 横山 敏志 【0001】【産業上の利用分野】 酸素含有量の低い低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶、低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶、これらの結晶の製造方法、及びこれらの結晶に含有する酸素量を分析するのに適した酸素分析方法に関する。【0002】【従来の技術】 近年、コンデンサー分野において、フッ化タンタル酸カリウム若しくはフッ化ニオブ酸カリウムを還元して得られるタンタルパウダー又はニオブパウダー(以下、これらを総称する場合には「メタルパウダー」と称する。)の使用量が急増している。このとき、より高い性能のコンデンサーを製造するためには、高いCV値を有するメタルパウダーであることが求められ、メタルパウダーに関する種々の研究開発が行われてきた。【0003】 フッ化タンタル酸カリウムやフッ化ニオブ酸カリウムは、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で、アルカリ金属やアルカリ土類金属等のヒュームと接触反応させることでメタルパウダーに還元し、焼結させることでコンデンサーの電極として使用されるものである。ところが、原料であるフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶に含有される酸素が多く含まれていると、還元時の還元剤であるアルカリ金属やアルカリ土類金属の消費量が増大することになり、しかも、均一な還元反応が起こらないため、CV値が向上できないと考えられてきた。【0004】 CV値とは、コンデンサーの電気容量に関する性能を表現するために用いる値であり、この値が高いほど、より小型で電気容量の大きなコンデンサーを製造することが可能となるのである。近年、このメタルパウダー重量当たりのCV値(CV/g)が数万〜数十万程度にまで高くなっており、更なる高CV値化が求められている。このCV値を高めるためには、メタルパウダーの粉粒の微細化とともに、漏れ電流を低減することが重要である。そのために、メタルパウダー中の金属イオン等の不純物を極力低減すること、及び、酸素を極力減らしたメタルパウダーが望まれてきた。【0005】【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、タンタル及びニオブは、そもそも酸素との親和性が非常に強い金属であり、フッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶に含まれる酸素含有量を低減させることは、非常に困難な技術とされてきた。特に、フッ化タンタル酸カリウム結晶は、酸素との親和性が特に高く、従来から市場に供給されてきたフッ化タンタル酸カリウム結晶の酸素含有量は3重量%、フッ化ニオブ酸カリウム結晶の酸素含有量は3.5重量%を越えるものであり、酸素含有量が2重量%以下のものを製造することは不可能とされてきた。【0006】 したがって、コンデンサー用のメタルパウダー原料として、還元前の原料に含まれる酸素をより低減した低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶又は低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶が望まれてきた。【0007】【課題を解決するための手段】 そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、再結晶化プロセスを経て得られる再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムの母液に工夫を加え、得られた再結晶を濾別採取し、最終製品とするための乾燥工程を工夫することにより、製品中の酸素含有量を、従来にないレベルに低減させることに想到したのである。【0008】 本願発明は、フッ酸を必須成分とする飽和フッ化タンタル酸カリウム溶液を制御冷却することで、これらの再結晶を生成し、生成した当該再結晶を濾別採取して、濾別採取した当該再結晶を乾燥装置内で乾燥して結晶を得る方法において、フッ酸を必須成分とする飽和フッ化タンタル酸カリウム溶液は、フッ酸濃度が0.5mol/l〜10mol/lの溶液とすることを特徴とする低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶の製造方法である。又、本願発明は、フッ酸を必須成分とする飽和フッ化ニオブ酸カリウム溶液を制御冷却することで、これらの再結晶を生成し、生成した当該再結晶を濾別採取して、濾別採取した当該再結晶を乾燥装置内で乾燥して結晶を得る方法において、フッ酸を必須成分とする飽和フッ化ニオブ酸カリウム溶液は、フッ酸濃度が10mol/l〜20mol/lの溶液とすることを特徴とする低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶の製造方法である。【0009】 まず、これらの製造方法に想到した背景から説明を行うこととする。再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムに含有する酸素とは、(1)再結晶化の段階で表面に吸着した水分及び結晶粒内に取り込まれた水分に起因するもの酸素(以上及び以下において、これらを「水分に起因する酸素」と称する。)、(2)当該再結晶粒の内部に結合して固定された酸素(以上及び以下において、「結合酸素」と称する。)の2つの酸素を言うものである。【0010】 この前者の水分は、主に、結晶の外表部に付着若しくは吸着した状態で存在するものであり、結晶の乾燥が不十分な場合や、乾燥後の吸湿が原因となると考えられる。これに対し、再結晶粒の内部に結合して固定された酸素としては、K2TaOF5やK3Nb2OFll等として存在するものである。従って、上述した2つの酸素を低減させることを考えなければならないことになる。【0011】 本願発明の製造方法は、結合酸素の量を低減させることを目的として行ったものである。この目的を達成するためには、再結晶を得る段階で、再結晶中に存在するK2TaOF5やK3Nb2OFll等の生成を可能な限り抑制する必要があることは明らかである。従って、本願発明者等は、これらの生成が最も抑制可能な条件として、前記飽和溶液中の、いかなる成分が影響を与えているのか研究した結果、前記飽和溶液中のフッ酸濃度が最も大きな影響を与えることが判明してきた。再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムを得るための飽和溶液を構成するに当たり、フッ酸は必須の成分である。【0012】 そこで、鋭意研究した結果、飽和フッ化タンタル酸カリウム溶液の場合には、フッ酸濃度を0.5mol/l〜10mol/l、又、飽和フッ化ニオブ酸カリウム溶液の場合には、フッ酸濃度を10mol/l〜20mol/lの範囲とすれば、最も結合酸素量を減らすことができ、結合酸素量を1重量%以下にすることができることが判明したのである。ここで示した最低限のフッ酸濃度は、工業的目的で再結晶を行わせる最低限の飽和濃度を達成するため必要なものであり、且つ、フッ酸濃度が最低限量未満となるとオキシフッ化物が生成し、結晶中に混入するようになる。そして、それぞれの上限値を超えたフッ酸濃度とすると、微細な結晶が多量に生成し、得られる再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムの付着水分量が急激に増加し始めるのである。【0013】 次に、本願発明は、乾燥装置内の雰囲気を50℃〜200℃の温度として乾燥処理し、乾燥処理の終了した再結晶フッ化タンタル酸カリウム結晶を、当該乾燥装置から外気中へ取り出す際の再結晶フッ化タンタル酸カリウム結晶の物質温度と外気温との温度差を50℃以下とすることで再結晶フッ化タンタル酸カリウム結晶の水分吸着を抑制することを特徴とする低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶の製造方法であり、又、乾燥装置内の雰囲気を50℃〜150℃の温度として乾燥処理し、乾燥処理の終了した再結晶フッ化ニオブ酸カリウム結晶を、当該乾燥装置から外気中へ取り出す際の再結晶フッ化ニオブ酸カリウム結晶の物質温度と外気温との温度差を50℃以下とすることで再結晶フッ化ニオブ酸カリウム結晶の水分吸着を抑制することを特徴とする低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶の製造方法である。【0014】 本願発明の製造方法は、上述したように母液のフッ酸濃度を調整することで再結晶中の結合酸素量を低減させ、且つ、水分に起因する酸素を低減させる方法である。水分に起因する酸素を低減させるには、まず乾燥工程に置いて、濾別採取した再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムを十分に乾燥させることが必要となる。当該再結晶粒の表面に吸着した水分の気散のみを考えれば、乾燥温度を可能な限り高くすれば、表面に吸着した水分は容易に除去可能である。【0015】 なお、表面に吸着した水分の量が問題となる限り、吸着する水分量は、吸着する結晶の粒径の影響を受けることは当然である。即ち、同一重量の結晶であれば、その結晶径が小さいほど、比表面積が大きくなり、水分の吸着サイトも広くなるため、吸着水分量が大きくなる。従って、水分に起因する酸素量の増減を対比して検討する場合には、ほぼ同一の粒度分布を持つ再結晶間での対比として考えなければならないことになる。【0016】 ところが、再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムの結晶粒の内部にも巻き込まれた水分が存在しており、その水分除去を考えれば、ゆっくりと時間をかけて水分除去を行うことを考えなければならない。極めて高い温度で乾燥しようとすると、再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムの内部の水分は除去できないまま、乾燥した表面の変質を引き起こす事になるからである。これらのことを考えた上で、本件発明者等は、再結晶を乾燥させる際に用いる乾燥雰囲気の温度を、再結晶フッ化タンタル酸カリウムの場合には200℃以下、再結晶フッ化ニオブ酸カリウムの場合には150℃以下とすべきとしたのである。【0017】 また、本願発明に置いて乾燥装置の雰囲気は、大気雰囲気での乾燥でも、真空雰囲気においての乾燥でも、アルゴンガス等の不活性ガス置換雰囲気等、再結晶粒に含まれた水分を効率よく除去できる雰囲気であれば、どのような雰囲気であっても構わない。これらのことから、大気雰囲気中では、一般的に水分を短時間で意図的に蒸発させるためには100℃以上の温度が必要と考えられるが、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気では、より低い温度を採用することができる。また、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気を採用する場合でも、高温乾燥を行うことも可能であるが、生産コストを大幅に引き上げるため経済性を追求する上では好ましくない。そこで、本件発明者等は、工業的生産性を考慮して大気雰囲気中での妥当な乾燥温度を研究した結果、乾燥温度の下限値として70℃を採用したのである。70℃以下の温度で乾燥を行う場合には、急激に乾燥時間が長くなり、生産性を著しく低下させることとなるのである。また、乾燥装置の構造は、再結晶から離脱した水分が、再吸着を可能な限り起こさず、効率よく乾燥装置外に排出できる機能を備えたものであれば、どのような構造のものであっても構わない。【0018】 乾燥時における問題点は、上述した乾燥温度のみではない。吸湿性を有する粉体の場合には、その比表面積が大きな事もあり、大気中で温度の高い状態から温度の低い状態に放冷すると、その吸湿現象が起こるのである。従って、乾燥処理後の再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウム自体の物質温度が高いまま、大気中に取り出すと、大気中の水分が再度、再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムの表面に吸着し易くなる。そこで、本願発明者等が研究した結果によれば、乾燥処理した再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムを乾燥装置から取り出す場合、大気温と50℃以内の温度差であれば、その表面への水分の深刻な再吸着を防止できることが判明したのである。以上のことを背景にして、本願発明に記載の製造方法に想到したのである。係る方法によれば、乾燥温度や冷却方法を最適化すれば、大気中で乾燥することが可能となり、コストアップせずに酸素含有量を低減した再結晶を得ることが可能となるのである。【0019】 上記したフッ酸濃度を調製する本願発明の製造方法を用いれば、従来の再結晶フッ化タンタル酸カリウム結合酸素量が1.2重量%以上、又、従来の再結晶フッ化ニオブ酸カリウム結合酸素量が2.0重量%以上であることを考えれば、結合酸素量を極めて低減させた再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムが得られるのである。従って、本願発明の製造方法によれば、フッ化タンタル酸カリウム結晶に含まれた酸素の内、当該結晶に固定された酸素が1重量%以下である低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶、又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶に含まれた酸素の内、当該結晶に固定された酸素が1重量%以下である低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶を製造できる。【0020】 更に、上記した乾燥雰囲気の温度を調製する本願発明の方法を用いれば、結合酸素量だけでなく、水分に起因した酸素量までをも低減させ、再結晶フッ化タンタル酸カリウム、又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムが含有したトータル酸素量を低減させることが可能となるのである。従来の再結晶フッ化タンタル酸カリウム及び再結晶フッ化ニオブ酸カリウム双方ともに、水分に起因した酸素量は1.5重量%程度であるものを、1.0重量%以下に低減することが出来るのである。その結果、本願発明によれば、酸素含有量が2重量%以下であるコンデンサー製造用の低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶及び酸素含有量が2重量%以下であるコンデンサー製造用の低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶を製造できる。【0021】 ここで言う酸素含有量のレベルの再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムは、従来から工業的レベルで製造できないものとされてきた。このような低酸素フッ化タンタル酸カリウム又は低酸素フッ化ニオブ酸カリウムを用いれば、メタルパウダーに還元する際のアルカリ金属等の消費量を減少させることが可能であり、しかも、均一な還元反応を起こすことが可能となり、CV値の著しい向上が期待できることとなるのである。【0022】 再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムが含有した酸素の定量方法について説明する。水分に起因する酸素と結合酸素とのそれぞれの場合に分けて説明する。再結晶に含まれる水は、主に再結晶粒の表面に付着又は吸着していると考えられる。従って、再結晶に含まれた水を、110℃程度に温度調整した乾燥機中で乾燥することによる減量値を求め、水分量を換算し、更に、その水分量をもって、水分に起因する酸素の量に換算することができる。【0023】 また、結合酸素を測定しようとする場合は、K2TaOF5やK3Nb2OFll等のX線回折法を用いて測定することが考えられるが、これらが結晶に数重量%以上含まれている場合でなければ検出不可能となり、定量精度が劣るため、再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムの品質管理に用いることのできるものではなかった。即ち、再結晶フッ化タンタル酸カリウム又は再結晶フッ化ニオブ酸カリウムに、X線回折法を適用しても、コンデンサーの性能向上のために寄与できる製品の分別は不可能であったのである。【0024】 そこで、本願発明者等は、水分に起因した酸素量と結合酸素量とを分別して測定可能な方法を発明するに到ったのである。本願発明は、フッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶をカーボンるつぼ内に入れ、当該カーボンるつぼに通電することによってカーボンるつぼ自体を抵抗発熱させ、当該カーボンるつぼ内のフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶を昇温加熱し、当該結晶中に含まれる酸素を一酸化炭素として抽出し、この一酸化炭素を定量し、得られた一酸化炭素量から酸素量を換算定量することを特徴とするフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶の酸素定量方法において、カーボンるつぼ内のフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶を加熱し、カーボンるつぼ温度が100℃〜200℃の温度範囲で、水分に起因した酸素に相当する第1検出ピークを測定し、カーボンるつぼ温度が100℃〜200℃の温度範囲で、水分に起因する酸素を1000℃に加熱した白金炭素触媒と接触させ、一酸化炭素に変換して検出する酸素が無くなった後、カーボンるつぼ温度を2000℃以上に加熱し、その温度にカーボンるつぼを維持することによって、結合酸素に相当する第2検出ピークを測定することを特徴とするフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶の酸素定量方法としている。【0025】図1を参照しつつ、この酸素定量方法を説明する。即ち、これらの酸素定量方法は、カーボンるつぼの中にフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶を入れ、これを酸素分析装置のチャンバー内に納め、当該チャンバー内にキャリアガスとなるヘリウムガスをスローリークし、雰囲気置換を行うのである。そして、カーボンるつぼに通電し、カーボンるつぼ自体を抵抗発熱させ、当該るつぼ内のフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶を加熱し、加熱により当該結晶を熱分解し、そこに含有した酸素を一酸化炭素として脱離させるのである。この一酸化炭素を検出器で定量し、得られた一酸化炭素量から酸素量を換算定量するのである。【0026】 本願発明は、このときのフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶を加熱しつつ、次のように水分に起因した酸素と結合酸素とを分別して定量するのである。まず、水分に起因した酸素のみを定量するため、フッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶をカーボンるつぼに入れ、カーボンるつぼ温度を抵抗加熱し、中に入れた結晶を加熱する。そして、カーボンるつぼの温度が150℃〜200℃の範囲で表れる酸素の第1検出ピークを測定するのである。この第1検出ピークとは、図1に示す最初に確認される酸素検出ピークのことである。この第1検出ピークは、低温領域で検出できるものであり、水分に起因した酸素に相当するものと考え得るのである。【0027】 第1検出ピークの検出が終了すると、次には、カーボンるつぼ温度を2000℃以上に急速加熱し、カーボンるつぼを当該温度に維持することによって、結合酸素に想到する第2検出ピークを検出するのである。この第2検出ピークは、水分に起因した酸素が予め取り去られており、しかも、試料であるフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶が完全に熱分解されているため、純粋な結合酸素に相当するものと言えるのである。以上のようにして、水分に起因した酸素と結合酸素の量を分別しての測定が可能となるのである。【0028】【発明の実施の形態】第1実施形態: 飽和フッ化タンタル酸カリウム溶液には、液温が70℃、タンタル濃度25g/l、カリウム濃度10g/l、フッ酸濃度60g/lのものを用いた。そして、この飽和フッ化タンタル酸カリウム溶液を、再結晶槽に入れた。【0029】 そして、前記飽和溶液の冷却速度を、10℃/時間として液温が10℃となるまで冷却して再結晶フッ化タンタル酸カリウムを得たのである。以上のようにして再結晶化の終了した溶液は、フィルタープレスを用いることにより、生成した再結晶フッ化タンタル酸カリウムを濾別採取したのである。濾別採取された再結晶フッ化タンタル酸カリウムは、次工程である乾燥工程で、大気雰囲気であって、雰囲気温度180℃の乾燥装置に入れ、12時間乾燥させ、加熱を止め、再結晶フッ化タンタル酸カリウム自体の温度が40℃の温度となるまで、炉冷して乾燥装置から取り出した。また、乾燥雰囲気を窒素ガスで置換して、同様の乾燥をも同時に行った。【0030】 このようにして得られた低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶の、粒度分布は0.05mm〜4.00mmの大きさの結晶が80重量%であった。この低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶の酸素含有量を測定したところ、大気雰囲気での乾燥の場合の、酸素含有量は0.271重量%(水分に起因する酸素は0.016重量%、結合酸素は0.255重量%)であり、窒素置換雰囲気での乾燥の場合の、酸素含有量は0.054重量%(水分に起因する酸素は0.009重量%、結合酸素は0.045重量%)であった。従来から市場に供給されていたフッ化タンタル酸カリウムの、酸素含有量が3重量%以上(水分に起因する酸素は1.5重量%以上、結合酸素は1.2重量%以上)であることを考えれば、極めて低い酸素含有量であることが明らかである。【0031】 酸素含有量の分析は、次のようにして行った。カーボンるつぼを、予め分析装置(酸素・窒素分析装置((株)堀場製作所 EMGA−620))内で2400℃で空焼を行った。このカーボンるつぼに、試料として低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶50mgを入れた。そして、カーボンるつぼの温度が、200℃になるまで加熱し、第1検出ピークを測定した。その後、カーボンるつぼ温度を2400℃となるまで加熱し、第2検出ピークを測定した。この間に、低酸素フッ化タンタル酸カリウムから脱離した酸素の内、水分に起因する酸素は、1000℃に加熱した白金炭素触媒と接触させ、一酸化炭素に変換した。そして、結合酸素は、加熱分解した低酸素フッ化タンタル酸カリウムから脱離した酸素を、カーボンるつぼを構成する炭素と反応させ一酸化炭素に転換させ、それぞれの一酸化炭素を赤外線検出器を用いて定量した。なお、装置の校正には、校正試料(JCRMRO21酸素含有率1.05重量%)を使用した。第2実施形態に述べる低酸素フッ化ニオブ酸カリウムの場合の酸素含有量の測定方法も同様である。【0032】第2実施形態: 飽和フッ化ニオブ酸カリウム溶液には、液温が70℃、ニオブ濃度40g/l、カリウム濃度50g/l、フッ酸濃度300g/lのものを用いた。そして、この飽和フッ化ニオブ酸カリウム溶液を、再結晶槽に入れた。【0033】 そして、前記飽和溶液の冷却速度を、10℃/時間として液温が10℃となるまで冷却して再結晶フッ化ニオブ酸カリウムを得たのである。以上のようにして再結晶化の終了した溶液は、フィルタープレスを用いることにより、生成した再結晶フッ化ニオブ酸カリウムを濾別採取したのである。濾別採取された再結晶フッ化ニオブ酸カリウムは、次工程である乾燥工程で、大気雰囲気であって、雰囲気温度120℃の乾燥装置に入れ、12時間乾燥させ、加熱を止め、再結晶フッ化ニオブ酸カリウム自体の温度が40℃の温度となるまで、炉冷して乾燥装置から取り出した。また、乾燥雰囲気を窒素ガスで置換して、同様の乾燥をも同時に行った。【0034】 このようにして得られた低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶の、粒度分布は0.05mm〜4.00mmの大きさの結晶が85重量%であった。この低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶の酸素含有量を測定したところ、大気雰囲気での乾燥の場合の、酸素含有量は0.583重量%(水分に起因する酸素は0.229重量%、結合酸素は0.354重量%)であり、窒素置換雰囲気での乾燥の場合の、酸素含有量は0.282重量%(水分に起因する酸素は0.111重量%、結合酸素は0.271重量%)であった。従来から市場に供給されていたフッ化ニオブ酸カリウムの、酸素含有量が3.5重量%以上(水分に起因する酸素は1.5重量%以上、結合酸素は2.0重量%以上)であることを考えれば、極めて低い酸素含有量であることが明らかである。【0035】【発明の効果】 本件発明に係る製造方法によれば、従来の製造方法に対し、特に新たな設備投資を行うことなく、従来に市場供給することの出来なかった低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶又は低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶を容易に得る事が出来る。そして、この低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶又は低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶をコンデンサーの電極形成に用いれば、漏れ電流の少ない電極を効率よく製造することが可能となり、コンデンサーの品質の安定化に大きく寄与するものとなる。また、本願発明に係る酸素分析方法を用いることで、低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶又は低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶に含まれる酸素を高精度に分析することが可能であり、低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶又は低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶を市場に供給する際の、品質保証を万全のものとすることが可能となるのである。【図面の簡単な説明】【図1】 本願発明に係る酸素分析方法により得られる酸素検出チャート。 フッ酸を必須成分とする飽和フッ化タンタル酸カリウム溶液を制御冷却することで、これらの再結晶を生成し、生成した当該再結晶を濾別採取して、濾別採取した当該再結晶を乾燥装置内で乾燥して結晶を得る方法において、 フッ酸を必須成分とする飽和フッ化タンタル酸カリウム溶液は、フッ酸濃度が0.5mol/l〜10mol/lの溶液とし、 乾燥装置内の雰囲気を50℃〜200℃の温度として乾燥処理し、 乾燥処理の終了した再結晶フッ化タンタル酸カリウム結晶を、当該乾燥装置から外気中へ取り出す際の再結晶フッ化タンタル酸カリウム結晶の物質温度と外気温との温度差を50℃以下とすることで再結晶フッ化タンタル酸カリウム結晶の水分吸着を抑制すること、を特徴とする低酸素フッ化タンタル酸カリウム結晶の製造方法。 フッ酸を必須成分とする飽和フッ化ニオブ酸カリウム溶液を制御冷却することで、これらの再結晶を生成し、生成した当該再結晶を濾別採取して、濾別採取した当該再結晶を乾燥装置内で乾燥して結晶を得る方法において、 フッ酸を必須成分とする飽和フッ化ニオブ酸カリウム溶液は、フッ酸濃度が10mol/l〜20mol/lの溶液とすることを特徴とする低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶の製造方法。 乾燥装置内の雰囲気を50℃〜150℃の温度として乾燥処理し、 乾燥処理の終了した再結晶フッ化ニオブ酸カリウム結晶を、当該乾燥装置から外気中へ取り出す際の再結晶フッ化ニオブ酸カリウム結晶の物質温度と外気温との温度差を50℃以下とすることで再結晶フッ化ニオブ酸カリウム結晶の水分吸着を抑制することを特徴とする請求項2に記載の低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶の製造方法。 フッ化ニオブ酸カリウム結晶に含まれた酸素の内、当該結晶に固定された酸素が1重量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法で得られた低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶。 酸素含有量が2重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法で得られる低酸素フッ化ニオブ酸カリウム結晶。 フッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶をカーボンるつぼ内に入れ、当該カーボンるつぼに通電することによってカーボンるつぼ自体を抵抗発熱させ、当該カーボンるつぼ内のフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶を昇温加熱し、当該結晶中に含まれる酸素を一酸化炭素として抽出し、この一酸化炭素を定量し、得られた一酸化炭素量から酸素量を換算定量することを特徴とするフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶の酸素定量方法において、 カーボンるつぼ内のフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶を加熱し、カーボンるつぼ温度が100℃〜200℃の温度範囲で、水分に起因した酸素に相当する第1検出ピークを測定し、 カーボンるつぼ温度が100℃〜200℃の温度範囲で酸素を検出しなくなった後、カーボンるつぼ温度を2000℃以上に加熱し、その温度にカーボンるつぼを維持することによって、結合酸素に相当する第2検出ピークを測定することを特徴とするフッ化タンタル酸カリウム結晶又はフッ化ニオブ酸カリウム結晶の酸素定量方法。