タイトル: | 特許公報(B2)_ヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン |
出願番号: | 2001294473 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 48/00,A61K 39/205,A61P 31/12,C12N 15/09 |
青木 宙 廣野 育生 JP 4863341 特許公報(B2) 20111118 2001294473 20010926 ヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン Meiji Seikaファルマ株式会社 000006091 青木 宙 501353100 青木 宙 廣野 育生 JP 2001271068 20010906 JP 2001274202 20010910 20120125 A61K 48/00 20060101AFI20120105BHJP A61K 39/205 20060101ALI20120105BHJP A61P 31/12 20060101ALI20120105BHJP C12N 15/09 20060101ALN20120105BHJP JPA61K48/00A61K39/205A61P31/12 171C12N15/00 A A61K 48/00 A61K 39/205 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平09−285291(JP,A) 米国特許出願公開第2001/0006953(US,A1) EOU, J-I. et al.,Fish Pathology,2001年 6月,Vol.36(2),pp.67-72 TUCKER, C. et al.,Vaccine,2000年11月,Vol.19,pp.801-809 Bjorklund, H.V. et al.,Virus Research,1996年,Vol.42,pp.65-80 7 IPOD FERM P-18504 2003155254 20030527 21 20080808 安居 拓哉 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はヒラメラブドウイルス(Hirame Rhabdovirus)の魚類への感染症に対する防御免疫を刺激するためのDNAワクチンに関するものである。【0002】【従来の技術】魚介類を代表とする多くの水生生物の養殖産業において、閉鎖系である養殖領域でのウイルス性疾患及び細菌性疾患は、個体が高密度に存在していることから、それらの感染の影響は大きく、養殖産業において深刻な問題となっている。1984年、養殖ヒラメにおいてヒラメラブドウイルス(以下、「HIRRV」と略記することもある)感染が確認されて以来、HIRRVはヒラメのみならず、アユ及びクロダイなどの養殖魚種にも該ウイルス感染症を発生する。特に、養殖ヒラメに対して強い病原性を示し、水温15℃以下の1月から4月に多発している。HIRRVに感染したヒラメは、体色の黒化、異常遊泳、腹部の貯留、筋肉中及び鰓基部の出血などの症状を示し、死亡に至るケースが多い。特に、養殖ヒラメではその死亡率も高く、ヒラメ養殖業において経済的損失が大きく、重要なウイルス感染症である。ほとんどの魚介類用ワクチンが細菌に対して開発されているが、ウイルス性疾患又は寄生性疾患に効果のあるワクチンは、ほとんど開発されていない。【0003】ウイルス感染症の予防又は治療には、一般的にワクチンが使用されている。ワクチンには不活化ワクチン(日本脳炎、ワイル病など)、トキソイド(破傷風、ジフテリアなど)、弱毒ワクチン(BCG、ポリオなど)、遺伝子組換えワクチン(B型肝炎ウイルスなど)などがある。不活化ワクチン及び外毒素を無毒化したトキソイドは、これらに対する抗体を誘導する比較的安全なワクチンである。遺伝子組換えワクチンは、不活化ワクチンと比較すると、不純物を含まないので、さらに安全なワクチンと考えられている。【0004】しかしながら、これらのワクチンは抗体産生は誘導できるが、細胞性免疫は誘導されにくい。また、不活化ワクチン及び弱毒ワクチンは、抗原となるウイルスを産業的には大量に得るため、適当な細胞の確保が必須である。さらに、弱毒ワクチンで獲得した免疫は、長期維持される場合が多いが、一方で副作用、危険性が指摘されている。不活化ワクチン及び遺伝子組換えワクチンは、抗原の持続性が短いと考えられ、アジュバントなどを必要とする。従来型のワクチンは製造から被検体に接種するまでの間、冷蔵保存する必要があるため、コストの増加と効力の低下が生じる問題点があった。【0005】ワクチン分野での最近の研究の発展により、免疫原性タンパク質をコードするプラスミドDNAの投与による免疫の誘発に基づく新しいワクチン種が開発され、次に述べるような従来型ワクチンの不利益が改善されてきている。すなわち、DNAワクチンは、体液性免疫応答のみならず、細胞性免疫を強力に誘導できるので、病気に対する防御が可能となること、DNAワクチンは高度に純化できること、室温又は高温下でも安定であり、冷蔵保存は必須でなく長期間の貯蔵が可能であること、遺伝子工学的手法によりDNAワクチンの迅速な改良がし易いこと、ワクチン開発に費やす時間の短縮、などの利点がある。【0006】ラブドウイルス(Rhabdovirus)は、5つの蛋白質で構成されている。すなわち、グリコプロテイン、ヌクレオキャプシドプロテイン、RNA依存的RNA合成酵素並びにマトリックスプロテインM1及びM2(室賀清邦、江草周三編集、魚病学概論、T. Nishizawa等、Dis. Aquat. Org., 10, 167-172 ,1991 )である。これらの内のグリコプロテインは、ワクチン効果があることが報告されている(P.Boudinot, et al., VIROLOGY 249, 297−306, 1998、N. Lorenzen, et al.,Aquaculture 172, 41-61, 1999、S. Corbeil, et al., Vaccine, 18,2817−2824, 2000)。また、グリコプロテイン以外にもVHSV(viral hemorrhagic septicemia virus)などで、ヌクレオキャプシドプロテインについてもDNAワクチン効果が研究されている。【0007】また、HIRRVの病原性に関するグリコプロテインのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列が報告されている(H.A.Bjorklun, et al., Virus Research,, 42, 65-80,1996)。しかし、ヒラメにおけるHIRRV感染症に対する防御免疫を刺激するためのワクチンの報告はない。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は、HIRRV感染症に対する防御免疫を刺激するためのHIRRV感染魚類用DNAワクチンを提供することを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、HIRRV感染症に対する有効なワクチンを鋭意研究した結果、HIRRVのグリコプロテインをコードする遺伝子を有するプラスミドDNAをヒラメに接種したところ、HIRRV感染に対する免疫効果を有すること及び免疫関連遺伝子の発現量が増加されることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、1.ヒラメラブドウイルスに対する免疫能を付与するためのDNA構築物が、ヒラメラブドウイルスの免疫原性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列及び該ヌクレオチド配列に操作可能に結合した転写調節配列がサイトメガロウイルス即時型プロモーターを含むことを特徴とするヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン、2.ヒラメラブドウイルスの免疫原性ポリペプチドが、グリコプロテインであることを特徴とする上記1に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン、3.グリコプロテインが配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列との相同性が80%以上であることを特徴とする上記2に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン、4.グリコプロテインが配列番号2で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする上記2に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン、5.ヌクレオチド配列が、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を有する、又は配列番号1に記載のヌクレオチド配列との相同性が80%以上であることを特徴とする上記1に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン、6.ヌクレオチド配列が、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を有することを特徴とする上記1に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン、7.独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、FERM P-18504の受託番号のもと寄託されているpCMV−HRVgであることを特徴とする上記1に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン、8.上記1〜7のいずれか一項に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチンを魚類に投与する方法、9.遺伝子銃を用いることを特徴とする上記8に記載の方法、10.魚類がカレイ科又はヒラメ科に属する魚種であることを特徴とする上記8又は上記9に記載の方法、11.ヒラメラブドウイルスに対する免疫応答の誘発に用いられる上記1〜7のいずれか一項に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチンの使用に関するものである。【0010】【発明の実施の形態】本発明は、HIRRV感染症に対する免疫応答の誘発に用いるDNAワクチンを製造するためのDNA構築物の使用が提供され、該DNA構築物は魚類の細胞内で発現可能な発現ベクター、HIRRV免疫原性ポリペプチドをコードする1つ以上の単離されたヌクレオチド配列、該配列に操作可能に結合した転写調節配列などを含む。【0011】免疫原性タンパク質をコードするヌクレオチド配列としては、ラブドウイルス科の構造タンパク質である5つのタンパク質(室賀清邦、江草周三編集、魚病学概論)、すなわち、グリコプロテイン、ヌクレオキャプシドプロテイン、RNA依存的RNA合成酵素並びにマトリックスプロテインM1及びM2((室賀清邦、江草周三編集、魚病学概論、T. Nishizawa等、Dis. Aquat. Org., 10, 167-172 ,1991 )をコードするヌクレオチド配列の一部又は全部が挙げられる。好ましくは、HIRRV由来のグリコプロテインをコードするヌクレオチド配列の一部又は全部であり、さらに好ましくは配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の一部又は全部であり、最も好ましくは配列番号1に記載のヌクレオチド配列の一部又は全部である。また、ここでいうヌクレオチド配列の一部とは、グリコプロテインをコードするヌクレオチドと相同性(例えば80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95以上、最も好ましくては98%以上の相同性)を有するものであり、かつ本発明が適用される魚類に対して免疫を付与することのできるヌクレオチド配列が好ましい。【0012】さらに、本発明にはグリコプロテインの改変タンパク質が含まれる。本発明において、改変タンパク質とは、上記のアミノ酸配列において、1以上、好ましくは1〜数個のアミノ酸の付加、挿入、削除、欠失又は置換などの改変が生じたタンパク質であって、依然として本発明が適用される魚類に対して免疫を付与することのできるものを意味する。また、本発明によるヌクレオチド配列は、天然由来のものであっても、全合成したものであっても良く、また、天然由来のものの一部を利用して合成を行ったものでもよい。【0013】本発明に用いるグリコプロテインをコードするヌクレオチド配列は、ラブドウイルス科に属するウイルス、具体的にはHIRRVから得ることができる。本発明による該ヌクレオチド配列の典型的な取得方法としては、遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば、部分アミノ酸配列の情報を基にして作製した適当なDNAプローブを用いて、スクリーニングを行う方法などが挙げられる。【0014】本発現ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の独立体として存在し、その複製が染色体の複製に依存しない、例えばプラスミドを基本に構築することができる。また、本発現ベクターは、宿主に導入されたとき、その宿主のゲノム中に取り込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであったもよい。本発明によるベクターの構築の手順及び方法は、遺伝子工学の分野で慣用されているのものを用いることができる。【0015】単離された該配列に操作可能に結合した転写調節配列は、構成プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター又は発現されている抗原の遺伝子由来のプロモーターなどが挙げられるが、特にそれらに限定されない。構成プロモーターは、例えばサイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーター配列、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、シミアンウイルス−40(SV-40)又は単純ヘルペスウイルス(HSV)などの強力プロモーターなどが挙げられる。組織特異的プロモーターは、筋βアクチンプロモーター又はチミヂンキナーゼプロモーターなどが挙げられる。誘導性あるいは調節性プロモーターは成長ホルモン調節性プロモーター、lacオペロン配列の制御下にあるプロモーター又は亜鉛誘導性メタロチオネインプロモーターを含み得る。【0016】該調節配列はプロモーター(例えば、上記の誘導性又は構成性プロモーター)DNA配列を含む発現制御配列を含み、そしてエンハンサー要素、転写又はポリアデニル化シグナル(例えば、シミアンウイルス−40(SV−40)又はウシ成長ホルモン由来)のスプライシングのためのイントロン配列、又はCpGモチーフとして知られている免疫刺激DNA配列のうち1つ若しくはそれ以上のコピーを含み得る。【0017】また、発現ベクターは、細菌複製起点配列、選別させるための抗生物質耐性(例えばアンピシリンなど)遺伝子又は非抗生物質耐性遺伝子(例えばβ−ガラクトシダーゼ遺伝子など)に用いられ得る選択性マーカーを有する。【0018】非メチル化CpGヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドは、免疫系を活性化する事が知られている(A. Kriegら、Nature, 1995, 374, 546-549)。フランキング配列に依存して、あるCpGモチーフはB細胞又はT細胞応答に対してより免疫刺激的であり、優先的にある種を刺激する。DNA発現ベクターにおけるCpGモチーフのコピ−は、発現タンパク質に対する免疫応答を誘発するアジュバントとして作用する。CpGモチーフ、すなわち特異化された配列内のCpGジヌクレオチドを含むDNA伸長部は、長さが5〜40塩基対程度から選ばれる。複数のCpGモチーフが、発現ベクターの非コード領域に挿入されれもよい。体液性応答が所望であるとき、好ましいCpGモチーフはCD8+T細胞応答を刺激することが知られているサイトカインの分泌を刺激するCpGモチーフである。【0019】他のCpGモチーフは、免疫応答を阻害することが見出された。本発明の好ましい実施態様において、これらの免疫阻害性CpGモチーフは、そこからポリペプチドの発現を中断させることなく、本発明の方法によって用いられる発現ベクターにおいて除去又は変異される。【0020】本発明が適応できる魚類としては、カレイ科、ヒラメ科に属する魚種(例えばカレイ、ヒラメなどが挙げられる)又はアユ、クロダイなどが挙げられる。【0021】DNAワクチンの接種法は、例えば経口投与、筋肉内注射、腹腔内注射、遺伝子銃を用いた投与及び液浸が挙げられるが、好ましくは筋肉内注射、遺伝子銃を用いた投与である。遺伝子銃を用いた投与とは、プラスミドを1μm程の大きさの金粒子にコーティングし、高圧ヘリウムガスを用い、専用の器具で被検体の皮膚、細胞又は組織に空気銃の要領で撃ち込む方法である。この遺伝子銃による投与は、筋肉内注射と比較し、100〜1000分の1のDNA量で、同等の免疫効果を挙げることができる点、筋肉内注射と比較し再現性に優れている点などの優れた特徴を有している。【0022】本発明のDNAワクチンは、トランスフェクション試薬としてリポソーム、フルオロカーボン乳剤、リン脂質カルシウム沈澱剤、筒状剤、金粒子、生分解性マイクロスフェア及びカチオン性ポリマーを共に処方し得る。リン脂質カルシウム沈澱剤は、ホスファチジルセリン、コレステロール及びカルシウムからなる。また、筒状剤はらせん状に巻かれた二層の脂質からなり、その縁が合わされてパックされている脂質ベースの微小筒として知られている。【0023】また、アジュバントは、免疫系を刺激して抗原に対する免疫反応を高めるものであり、主にワクチンに補助剤として添加される。代表的なアジュバントとしては、アルミニウム化合物、ポリヌクレオチド又は細菌の菌体成分などが知られているが、これらの中には本発明に適用するには十分な効果が得られないものも多い。特に、アジュバントの作用は抗原物質に広く有効であるため、抗原に含まれる不純物の抗原刺激性を増強したり、有害な副作用を生ずる危険もあり、使用する抗原の純度に十分な配慮をする必要があるなどの問題がある。そのような中で、例えばIL-1βはアジュバントとして有効であることが報告されている(J. Y. Scheerlinck, Genetic adjuvants for DNA Vaccine, 19, 2647-2656, 2001)。本発明においては、魚類(例えばヒラメなど)の体内で発現可能なようにIL-1β遺伝子を挿入したプラスミドを作製し、本発明のワクチンとともに魚類に接種することができる。【0024】免疫機構は、様々な役割を担った細胞が相互に機能調節を行いながら、多様な生理機能を発揮している。生体防御に重要な役割を担っている因子であるT細胞及びB細胞の細胞表面上に存在しているT細胞抗原レセプター(TCR)、主要組織適合性複合体(MHC)、又は免疫グロブリン(Ig)の発現量を指標に、免疫システムの活性化を調べることが可能である。本発明においては、例えばHIRRV感染症に対するDNAワクチンをヒラメに接種後、魚体内における生体防御機構の活性化について解析するため、TCR、MHC及びIgの発現量の変化についてリアルタイムPCRを行い定量的に確認し、免疫システムの活性化を調べることができる。【0025】リアルタイムPCRとは、PCRによる遺伝子の増幅の過程を蛍光検知装置により、リアルタイムで追跡し、そのPCR反応曲線をプロファイリングする検出技術である。検査対象の検体がPCRにより増幅された場合、指数増加カーブに到達するPCRサイクル数を検査すれば、正確なDNA量を計算する事が可能となる。リアルタイムPCRには、Perkin-Elmer社製のTaqMan、BioRad社製のiCyclerを用い行うことができる。【0026】リアルタイムPCRでは、リアルタイムPCR用(SG)及び標準DNA用(SG200)の二種類のプライマーを用いる。リアルタイムPCR用(SG)は、アンプリコンは短め(60〜100 bp)でGC含量が少なくなるよう設計する。3' UTR部分にプライマーを作製すると、比較的容易で、かつ正確に遺伝子特異的プライマーを設計することができる。また、primer expressのソフトを使ってコンピュータ上でも設計する方法もある。リアルタイムPCRで設計したプライマーの外側に標準DNA用プライマー(SG200)を設計する。遺伝子同士を比較したい場合、アンプリコンは揃えるのが望ましい。【0027】標準DNAの調製は、まず測定したい遺伝子それぞれに対し特異的なプライマー(SG200)を用い、全量 50μlのPCRをプラトーに達するまで反応させる(PCRは95℃で2分間処理後、次いで95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間を1サイクルとする処理を30回行う。その後、PCR産物をMicrocon-PCR Centrifugal Filter Devices (MILLIPORE社製)などのカラムを用い余分なプライマーを除去し、濃度を測る。アボガドロ定数(1mol=6.022×1023molecules)よりコピー数を算出する。次いで、PCR産物は21段階の希釈系列(コピー数1013〜10‐7)を作り、内側に設計したプライマー(SG)を用いて再度PCRを行う。この際、増幅が指数関数的に起こる様、サイクル数は14サイクルで行う。このようにして得たPCR産物をアガロースゲル電気泳動し、バンドが全く見えなくなってからの5段階が指数関数的に増幅しているためこの5段階を標準DNAとして実際のリアルタイムPCRに用いる。【0028】【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0029】実施例1 HIRRV由来グリコプロテイン遺伝子の単離(1)PCRプライマーの作製H.A.Bjorklund等によって報告されている(Virus Research,42, 65-80, 1996)グリコプロテイン遺伝子(GenBank=AAB39502,1)のアミノ酸配列を元に、対応するDNAの塩基配列から下記のPCRプライマーを、常法に従い、作製した。HRV-glys:5-GAGAATTCGTCATGGACCCTCGAATAAT-3(配列番号3)HRV-glya:5-GAGTCGACTTACCCTCGACTGGCGAGGT-3 (配列番号4)第1図にHIRRV8601株由来グリコプロテイン遺伝子を増幅するために作製したPCRプライマーのDNA塩基配列及びグリコプロテイン遺伝子(GenBank=AAB39502,1)のDNA塩基配列を示す。【0030】(2)cDNAの単離HINAE細胞(Hirame natural embryo cell;北海道大学水産学部 海洋生物資源科学科で分譲可能な状態で保管中である)を市販のL-15 培地に、20%となるようにFBSを加えペニシリン及びストレプトマイシンの終濃度がそれぞれ100units/ml と100μg/mlとなるように調整後、20℃にて培養した。コンフルエントとなるまで培養したHINAE細胞に−80℃で保管しておいたHIRRV 8601株(Kimura, T., et al., Diseases of Aquatic Organisms 1, 209−217, 1986)を感染させた。HIRRV 8601株がHINAE細胞に感染後、2〜5日でCPE(Cytopathic Effect)が観察できる。【0031】HIRRV 8601株の培養液(1.0x108TCID50/ml)150μl及びTRIzol(GIBCO社製) 1mlを混和し、5分間室温に静置した。次に200μlのクロロホルムを加えよく混和し、室温で5分間静置した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、5分間)を行い、上層を新しい遠心管に移した。上層に対して等量のイソプロピルアルコールを加え、10分間室温に放置した。遠心分離後(15,000rpm、10分間)、上層を捨てペレット状態となったゲノミックRNAを乾燥させ、10μlのDEPC処理水に溶解した。【0032】このように抽出したゲノミックRNAから、cDNA SYNTHESIS KIT 1st STRAND with AMV Reverse Transcriptase (宝酒造社製)により、添付の操作方法に従ってcDNAを合成した。このcDNAを鋳型に、実施例1(1)で作製したPCRプライマーを用いて、常法に従いPCRを行なった。PCRは、添付の10xbuffer 5μl、dNTP 4μl、HRV-glys 1μl(25pmol/μl)、HRV-glya 1μl(25pmol/μl)、DNA polymerase 0.5μl(5units/μl)、cDNA 3μl(10ng)、滅菌水35.5μlで50μlに調製後、95℃で5分間処理後、次いで95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間を1サイクルとする処理を30回施した後、2℃で2分間処理するという反応条件で行った。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動した結果、約1.5kbp程のDNA断片が増幅されていたことを目視にて確認した。【0033】(3)DNA塩基配列の解析その増幅されたDNA断片をpGEM-T Eazy vector (プロメガ社製)へと挿入し、蛍光標識されたM13primer(日清紡績社製)及びThermo Sequence Fluorescent Labeled Primer Cycle Sequencing Kit with 7-deaza-dGTP(amersham pharmacia bitech社製) を用いてダイデオキシ法(Dideoxy method)でサンプルを作成した後、DNA sequencer model 4000(LI-COR社製)を用いて塩基配列を決定した。この配列を解析したところ、PCRで増幅されたDNA断片は、1527bpからなるオープンリーディングフレーム(ORF)が存在した(配列番号1)。このORFから予測されるタンパク質は、508アミノ酸残基であり、相同性検索(FASTA)を行なった結果、H.A.Bjorklund等によって報告されている(Virus Research,1996, 42, 65-80)グリコプロテイン遺伝子(GenBank=AAB39502,1)のDNA塩基配列との相同性は99.9%であり、アミノ酸配列との相同性は99.8%であった。【0034】実施例2 pCMV−HRVgの作製実施例1(3)のDNA塩基配列の解析で用いたプラスミドをEcoRI及びSalIで処理した。そしてpGEM-T Easy vectorから切り出された実施例1(2)で得られたHIRRV 8601株由来のグリコプロテイン遺伝子を、pCI-neo(5474bp、プロメガ社製)のヒトサイトメガロウイルス由来のプロモーター領域がコードされている配列の下流に位置するマルチクローニングサイトのEcoRI及びSalIへ挿入し、pCMV−HRVg(第2図)を作製した。尚、pCMV−HRVgは、2001年9月5日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、FERM P-18504の受託番号のもと寄託されている。【0035】実施例3 グリコプロテイン遺伝子の発現確認HINAE細胞 にpCMV−HRVgをEffecteneTM Transfection Reagent (QIAGEN社製) を用いてトランスフェクションした後、一ヶ月間経代培養した。次に、培養した細胞を遠心管に集め遠心分離(3,000rpm、5分間)し培地のみを捨て、実施例1(2)と同様の方法で培養細胞のtotal RNAを抽出しRT-PCRを行った。その結果、グリコプロテイン遺伝子が発現していることを確認した。【0036】実施例4 pCMV−HRVgのヒラメへの導入方法遺伝子銃(HeliosTM Gene Gun、BIO-RAD社製)を用いて、添付の操作方法に従い、稚魚のヒラメ一尾当りpCMV−HRVg 1μg を1ショットでヒラメ驅幹部へ接種した。遺伝子銃における1ショットの条件は、金粒子サイズは0.6μm、1ショット当りの金粒子の量は0.5mg、ヘリウムガスの圧力は200psiである。【0037】実施例5 ヒラメに対する感染防御試験各試験区には、ヒラメ稚魚(全長約4〜5cm、平均魚体重1.66g)50尾を用いた。試験魚は、60Lの水槽で、ろ過処理した天然海水を注水(0.5L/min)し、平均水温13.0℃(12℃〜14.5℃)で飼育した。まず、実施例4の方法に準じて、pCMV−HRVg、コントロールとしてpCI-neo(プロメガ社製)をそれぞれヒラメへ接種した。その接種の4週間後に、実施例1(2)の条件のようにHINAE細胞で培養したHIRRV 8601株培養上澄(1.0×108TCID50/ml)を5×102TCID50まで希釈した濃度で、ヒラメ1尾当り50μlを筋肉注射により接種した。感染防御試験を行なった区画は、次の通りである。試験区1:pCMV−HRVg+5×102TCID50HIRRV 8601株/ヒラメ1尾試験区2:pCI-neo+5×102TCID50HIRRV 8601株/ヒラメ1尾【0038】HIRRV 8601株感染後、ヒラメを2週間観察し続け、試験区1及び試験区2とのヒラメの累積死亡率(死亡個体数/試験個体数)×100(%)を算出し、その結果を第3図に示す。ワクチンの効果は、その比較によって判定した。その結果、試験区2は約66%累積死亡率であるのに対して、試験区1のそれは約30%であったことから、HIRRV 8601株感染に対するpCMV−HRVgの感染防御の有効性、すなわちワクチン効果が明らかとなった。【0039】実施例6 免疫関連遺伝子の発現量解析(1)リアルタイムPCR測定対象の遺伝子と標準DNAは、全量 50μl (1×SYBR Green Buffer 5μl、25mM MgCl2 6μl、dNTP Blend 4μl、AmpliTaq Gold (5U/μl) 0.25μl、AmpErase UNG (1U/μl) 0.5μl、primer-F (3μM) 5μl、primer-R (3μM) 5μl、鋳型cDNA5μl)で行う。この時用いる鋳型cDNAは1000μg/mlの濃度に調製する。PCRは、50℃で2分間、次いで95℃で10分間処理後に、95℃で15秒間、58℃で60秒間を1サイクルとする処理を40回行った。これらリアルタイムPCR用の試薬及び機械はGeneAmp 5700 Sequence Detection System(PE Applied Biosystems社製)を用い、添付の操作方法に従い行った。また、primer-F、primer-Rに対応する各遺伝子のリアルタイムPCR用プライマー(SG)、標準DNA用プライマー(SG200)を第4図に示す。【0040】(2)mRNAの発現量の解析ヒラメ(平均体重1.66g)の筋肉に各1μgのプラスミドDNA(pCMV-HRVg、pCMV-HRVg + pCMV-IL-1β、pCI-neo)を実施例4の方法に準じてそれぞれ接種し、1日、3日及び7日後の筋肉組織より常法に従い、mRNAを抽出し、cDNAを合成した。次いで、IgD、IgM、MHCクラス1α、MHCクラス2α、MHCクラス2β、TCRα、TCRβC1、TCRβC2、TCRδの発現量の変化についてリアルタイムPCRを用い定量的に解析した。解析した結果を第5図から第7図に示す。尚、定量した各々の遺伝子は、β-actinで統一化した。また、pCMV-IL-1βは、常法に従い、pCI-neoのEcoRIとXbaIの間にヒラメIL-1β遺伝子(DDBJ=AB070835)を挿入し作製したものであり、アジュバントとして使用した。【0041】解析を行った遺伝子の発現量は、コントロールであるベクター(pCI-neo)のみの筋肉組織と比べ接種区の方が、IgDでは57倍、IgMでは2倍、MHCクラス1αでは15倍、MHCクラス2αでは7倍、MHCクラス2βでは3倍、TCRαでは3倍、TCRβC1では10倍、TCRβC2では5倍及びTCRδでは4倍のmRNAコピー数の増加が認められた。【0042】【発明の効果】本発明のpCMV−HRVgは、ヒラメでのHIRRV感染防御試験及び免疫関連の遺伝子の発現量の大幅な増加を確認した結果から、DNAワクチンとして有効であり、HIRRVの感染の予防に期待ができる。【0043】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】グリコプロテイン遺伝子を増幅するために設計したPCRプライマーの位置を示す図である。【図2】pCMV-HRVgの構成図である。【図3】DNAワクチン処理によるヒラメの累積死亡率の経時的変化を示す図である。【図4】リアルタイムPCRに用いたプライマーを示す図である。【図5】各遺伝子の発現量の変化についてリアルタイムPCRを用い定量的に解析した結果の図である。G-proteinとはpCMV-HRVgで、G-protein+IL-1βとはpCMV-HRVg + pCMV-IL-1βで、 VectorとはpCI-neoを意味し、その順に左から接種1、3、7日後(図の横軸)における発現量を各遺伝子毎にまとめて表示した。【図6】各遺伝子の発現量の変化についてリアルタイムPCRを用い定量的に解析した結果の図である。G-proteinとはpCMV-HRVgで、G-protein+IL-1βとはpCMV-HRVg + pCMV-IL-1βで、 VectorとはpCI-neoを意味し、その順に左から接種1、3、7日後(図の横軸)における発現量を各遺伝子毎にまとめて表示した。【図7】各遺伝子の発現量の変化についてリアルタイムPCRを用い定量的に解析した結果の図である。G-proteinとはpCMV-HRVgで、G-protein+IL-1βとはpCMV-HRVg + pCMV-IL-1βで、 VectorとはpCI-neoを意味し、その順に左から接種1、3、7日後(図の横軸)における発現量を各遺伝子毎にまとめて表示した。 ヒラメラブドウイルスに対する免疫能を付与するためのDNA構築物が、配列番号2で示されるアミノ酸配列のグリコプロテイン、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列との相同性が80%以上のグリコプロテインであるヒラメラブドウイルスの免疫原性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列及び該ヌクレオチド配列に操作可能に結合した転写調節配列がサイトメガロウイルス即時型プロモーターを含むことを特徴とするヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン。 ヌクレオチド配列が、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を有する、又は配列番号1に記載のヌクレオチド配列との相同性が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン。 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、FERM P-18504の受託番号のもと寄託されているpCMV−HRVgであることを特徴とする請求項1に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチン。 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチンを魚類に投与する方法。 遺伝子銃を用いることを特徴とする請求項4に記載の方法。 魚類がカレイ科又はヒラメ科に属する魚種であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の方法。 ヒラメラブドウイルスに対する免疫応答の誘発に用いられる請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のヒラメラブドウイルス感染魚類用DNAワクチンの使用。