生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_リン酸エステルの製造法
出願番号:2001291848
年次:2010
IPC分類:C07F 9/09,C07F 9/11,A61K 8/00,A61K 8/55,C11D 1/34


特許情報キャッシュ

柴田 賢吾 坂田 勝 JP 4497503 特許公報(B2) 20100423 2001291848 20010925 リン酸エステルの製造法 花王株式会社 000000918 細田 芳徳 100095832 柴田 賢吾 坂田 勝 20100707 C07F 9/09 20060101AFI20100617BHJP C07F 9/11 20060101ALI20100617BHJP A61K 8/00 20060101ALN20100617BHJP A61K 8/55 20060101ALN20100617BHJP C11D 1/34 20060101ALN20100617BHJP JPC07F9/09 KC07F9/11A61K8/00A61K8/55C11D1/34 C07F 9/09 C07F 9/11 特開昭62−149691(JP,A) 特開平08−193089(JP,A) 特公昭52−039013(JP,B1) 4 2003096088 20030403 12 20070612 関 美祝 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、リン酸エステルの製造法に関する。更に詳しくは、シャンプー、洗顔剤、固型洗浄剤等の原料として有用なリン酸エステルの製造法に関する。【0002】【従来の技術】リン酸エステルは、洗浄剤、乳化剤、繊維処理剤、防錆剤、医療品等の分野で使用されている。リン酸エステルの中でも特に長鎖アルキル基を有するモノアルキルリン酸エステルのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やトリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩は、水溶性で起泡力や洗浄力に優れ、しかも毒性や皮膚刺激性が低いことから、シャンプーや洗顔剤等の人体に直接使用する商品に有用である。このような人体に直接使用する商品にリン酸エステルを配合する場合、そのリン酸エステルに基づく臭いが低減されていることが品質として重要となる。【0003】リン酸エステルは、通常、有機ヒドロキシ化合物と、五酸化リン、ポリリン酸、オキシ塩化リン等のリン酸化剤とを反応させることによって製造されている。【0004】しかしながら、このリン酸エステル中には、未反応の有機ヒドロキシ化合物や、有機ヒドロキシ化合物に由来の化合物、更にはリン酸化反応中に生成する副生成物等が不純物として存在する。これらの不純物は、有臭成分として臭いに悪影響を及ぼすことがあるため、リン酸化反応後に有臭成分を除去するための煩雑な脱臭工程が必要とされている。【0005】リン酸化反応後に有臭成分を除去するための簡便な脱臭方法としては、攪拌膜型蒸発機、濡壁塔等を用いてリン酸エステルの液膜を形成し、このリン酸エステルの液膜と不活性ガスとを接触させる方法(特開昭57-35595号公報)、充填塔を用いてリン酸エステルの液膜を形成し、このリン酸エステルの液膜と不活性ガスとを接触させる方法等が知られている。【0006】しかしながら、かかる方法において、有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤との反応によって得られたリン酸エステルを用いた場合には、そのリン酸エステルには、アルキルピロリン酸、ピロリン酸等のピロリン酸結合(P−O−P結合)を有する化合物(以下、「ピロリン酸化合物」という)が存在している。【0007】したがって、このリン酸エステルを洗浄剤等に用いると、その粘度が上昇するため、配合安定性が劣り、また副生するオルトリン酸を抽出分離により除去する際の分層性に悪影響を及ぼすという欠点がある。【0008】 そこで、これらの欠点を解消する方法として、リン酸エステルに水を添加することにより、リン酸エステルに含まれているピロリン酸化合物を加水分解させる方法が提案されている(特開昭62-149691号公報)。【0009】しかしながら、かかる方法で用いられている水の量は、加水分解反応を迅速に進行させるために、リン酸エステル中に存在しているピロリン酸化合物のピロリン酸結合に対して過剰量であるので、この方法で得られた加水分解物に前述の脱臭方法を適用すると、水分量が多く、しかも有臭成分の種類にもよるが、操作温度が比較的高くなるため、脱臭装置の腐食が起こるおそれがある。かかる腐食を防止せんとすれば、脱臭装置には耐酸性の高価な材料を使用しなければならないという欠点がある。【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明は、効率よく有臭成分を除去し、配合安定性に優れたリン酸エステルを収率よく製造することができ、また製造の際には、その製造に使用される装置を腐食させがたいリン酸エステルの製造法を提供することを課題とする。【0011】【課題を解決するための手段】本発明は、I.(1)有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させ、リン酸エステルを得るリン酸化反応工程、(2)工程(1)で得られたリン酸エステル中のピロリン酸化合物を加水分解させる加水分解工程、(3)工程(2)で得られたリン酸エステルの加水分解物を水分含量が3重量%以下となるまで脱水し、リン酸エステルの脱水物を得る脱水工程、及び(4)工程(3)で得られたリン酸エステルの脱水物中の有臭成分を除去し、リン酸エステルの脱臭物を得る脱臭工程を有するリン酸エステルの製造法〔以下、製法Iという〕、並びにII. (1)有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させ、リン酸エステルを得るリン酸化反応工程、(2)工程(1)で得られたリン酸エステルであって、水分含有率が3重量%以下であるリン酸エステルを用い、リン酸エステル中の有臭成分を除去し、リン酸エステルの脱臭物を得る脱臭工程、及び(3)工程(2)で得られたリン酸エステルの脱臭物中のピロリン酸化合物を加水分解させる加水分解工程を有するリン酸エステルの製造法〔以下、製法IIという〕に関する。【0012】【発明の実施の形態】製法I及びIIのいずれにおいても、まず、有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させる。【0013】有機ヒドロキシ化合物は、水酸基をもつ有機化合物、例えば、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のアルコール、これらのアルキレンオキサイド付加物(アルキレンオキサイドの炭素数:2〜4)等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、炭素数6〜30のアルコール及びこのアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数1〜10モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、炭素数8〜14のアルコール及びこのアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数2〜4モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルがより好ましい。【0014】有機ヒドロキシ化合物の具体例としては、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、エチレンオキサイド1〜10モル付加ウンデシルアルコール等が挙げられる。【0015】リン酸化剤としては、例えば、五酸化リン、ポリリン酸、オキシ塩化リン等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、塩酸ガス等の副生がなく、設備的に負荷がかかり難い点から、五酸化リン及びポリリン酸が好ましい。【0016】リン酸化剤の量は、目的とするリン酸エステルの組成に応じて調整すればよい。【0017】五酸化リン及び/又はポリリン酸をリン酸化剤として使用する場合には、通常、リン酸エステルが原料に用いられた洗浄剤等の製品の安定性等に悪影響を及ぼすオルトリン酸の副生を低減する観点及び洗浄性に悪影響を及ぼすリン酸ジエステルの副生を低減する観点から、五酸化リン(オルトリン酸換算で138 重量%とした値、ポリリン酸の場合はポリリン酸濃度を138 で除した値を五酸化リン相当重量比とする。以下同じ)1モルに対して、水の量が0.5 〜1.5 モルであり、有機ヒドロキシ化合物の量が1〜3モルであることが好ましい。【0018】かくして有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させることにより、リン酸エステルが得られる。このようにして得られたリン酸エステル中にはピロリン酸化合物が存在しており、前記したような配合安定性等の欠点がある。【0019】そこで、製法Iにおいては、リン酸エステル中のピロリン酸化合物を加水分解させ、ピロリン酸化合物の量を低減させるが、そのピロリン酸化合物の量を3重量%以下に低減することが好ましい。加水分解させる際の水の量は、リン酸エステル中に存在するピロリン酸化合物の加水分解を速やかに行う観点から、ピロリン酸化合物と等モル以上であることが好ましい。【0020】水の量は、加水分解工程に供するリン酸エステル100 重量部に対して、好ましくは1〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部である。加水分解工程に供するリン酸エステル中の水分含量もこの水の量に含める。【0021】リン酸化剤が五酸化リン及び/又はポリリン酸である場合には、有機ヒドロキシ化合物よりも水のほうが優先的に反応する。五酸化リン1モルに対する水の量が3モル以下である場合には、得られるリン酸エステル中の水分含量は0重量%となる。この場合には、加水分解に用いる水の全量を添加する必要がある。五酸化リン1モルに対する水の量が3モルを超える場合には、得られたリン酸エステルに含まれる水分含量は0重量%を超える。この場合には、加水分解に用いる水の量と該水分含量との差の分の水を添加すればよい。【0022】加水分解の温度は、加水分解を速やかに行う観点及びリン酸エステルの熱分解を抑制する観点から、好ましくは50〜100 ℃、より好ましくは70〜90℃である。【0023】加水分解の時間は、五酸化リン、水及び有機ヒドロキシ化合物の仕込みモル比、反応時間に起因するリン酸エステル中のピロリン酸化合物の濃度、加水分解のために添加される水の量や温度によって異なるので、一概には決定することができない。通常、加水分解は、ピロリン酸化合物が低減するように行うことが好ましく、ピロリン酸化合物の含有量が3重量%以下となるまで行うことがより好ましく、1重量%以下となるまで行うことが更に好ましく、検出下限値未満となるまで行うのがもっとも好ましい。例えば、有機ヒドロキシ化合物としてラウリルアルコール2.2 モル、水0.8 モル及びリン酸化剤として五酸化リン1モルを用いて、有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させた場合、加水分解温度が80〜100 ℃で添加水分量がリン酸エステルに対して5重量%であるときには1〜3時間で、ピロリン酸化合物の含有量が検出下限値未満となる。【0024】本発明において、ピロリン酸化合物の存在の有無は、NMR(核磁気共鳴装置)等により確認することができる。【0025】なお、前述の温度及び時間の条件下での加水分解反応時には、ピロリン酸化合物と水との反応が優先的に進行し、リン酸エステルの加水分解が殆ど進行せず、また装置の腐食もない。【0026】リン酸エステルには、通常、有臭成分として、未反応の有機ヒドロキシ化合物や有機ヒドロキシ化合物に由来の化合物、更にはリン酸化反応工程中に生成する副生成物等が不純物として含まれている。【0027】次に、製法Iにおいては、得られたリン酸エステルの加水分解物中の水分含量が3重量%以下となるまで、脱水される。【0028】有臭成分の除去操作に供されるリン酸エステルの脱水物中の水分含量は、有臭成分の除去操作に供されるリン酸エステルの脱水物中の水分含量が、蒸留装置及び/又は接触装置の材質に腐食の影響を及ぼさない観点及び材質の腐食を回避するために耐酸性の高級材質を用いることを避ける観点から、3重量%以下、好ましくは1重量%以下とされる。【0029】次に、製法Iにおいて、得られたリン酸エステルの脱水物から、有臭成分を除去する。【0030】有臭成分の除去は、リン酸エステルの脱水物の蒸留及び/又はリン酸エステルの脱水物と不活性ガスとの接触によって行うことができるが、不活性ガスとの接触のほうが除去の効率の観点から好ましい。【0031】蒸留としては、蒸留装置中での単蒸留、共沸蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留、平衡フラッシュ蒸留等が挙げられる。これらの中では、単蒸留と比べて操作温度を低くすることができる水蒸気蒸留が好ましい。【0032】不活性ガスとの接触は、例えば、接触装置中で不活性ガスをリン酸エステルの脱水物中に吹き込んだり、リン酸エステルの脱水物の表面に流すこと等によって行うことができる。【0033】蒸留装置としては、棚段式、充填塔式、回分式、攪拌膜型、流下薄膜式、上昇薄膜式蒸留装置等が挙げられ、これらの装置を使用方法を変えて接触装置として用いることもできる。これらの中では、比較的高粘度のリン酸エステルを用いた場合であっても効率よく不活性ガスと接触させることができる攪拌膜型蒸留装置、及びコンパクトな装置で不活性ガスとリン酸エステルの接触面積を大きすることができるため含有されている有臭成分量を効率的に低減させることができる充填塔式蒸留装置が好ましく、充填塔式蒸留装置がより好ましい。【0034】本明細書にいう不活性ガスとは、リン酸エステルの品質や有臭成分量が低減されたリン酸エステルの収量に悪影響を与えないガスを意味する。不活性ガスの例としては、水蒸気、窒素、空気、炭酸ガス等が挙げられる。これらの中では、凝縮させやすいので、凝縮器への熱エネルギー的負荷が小さく、また排気系への負荷も小さいことから、水蒸気が好ましい。従って、水蒸気蒸留は、単なる蒸留であるだけではなく、不活性ガスとの接触でもある。【0035】リン酸エステルの脱水物を不活性ガスと接触させる際のリン酸エステルの脱水物の温度は、不活性ガス量を低減させるための高真空を必要としない観点、及びリン酸エステルの熱分解を回避し、それによる有臭成分量の増大や色相の悪化を回避する観点から、好ましくは100 〜160 ℃、より好ましくは120 〜140 ℃である。【0036】リン酸エステルの脱水物と不活性ガスとの接触時間は、リン酸エステルの脱水物と不活性ガスとの接触条件等によって異なるので一概には決定することができない。通常、リン酸エステルの熱分解を抑制するとともに、残存有臭成分を低減させるための不活性ガス量が多くならないようにする観点から、リン酸エステルの脱水物と不活性ガスとの接触時間は、1〜30分間程度である。【0037】リン酸エステルの脱水物と不活性ガスとを接触させる際の圧力は、熱履歴、不活性ガス量及び装置の大きさを考慮して、20kPa 以下が好ましく、14kPa 以下がより好ましく、7kPa 以下が更に好ましい。【0038】不活性ガスの流量とリン酸エステルの脱水物の流量との比〔不活性ガスの流量(m3/h)/リン酸エステルの流量(kg/h)〕の値は、高真空が必要となるのを回避し、同時に不活性ガスの使用量を低減させる観点から、0.1 〜3が好ましく、0.2 〜1.5 がより好ましい。なお、本明細書にいう「不活性ガスの流量(m3/h)」は、標準状態、すなわち、温度が0℃、圧力が101.3 kPa であるときの値である。【0039】かくして、製法Iによれば、有臭成分が低減されたリン酸エステルを得ることができる。なお、得られたリン酸エステルに含まれる有臭成分の量は、リン酸エステルが用いられた洗浄剤等に含まれる有臭成分に基づく臭いを低減する観点から、好ましくは0.5 重量%以下、より好ましくは0.2 重量%以下である。【0040】一方、製法IIにおいては、有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させて得られたリン酸エステルから、有臭成分を除去する。【0041】リン酸エステルからの有臭成分の除去は、製法IIの工程(2)では、工程(1)で得られたリン酸エステルに含まれる水分含量が3重量%以下のものを用い、それ以外は前記製法Iと同様に行えばよい。【0042】有臭成分の除去操作に供されるリン酸エステルの脱水物中の水分含量は、有臭成分の除去操作に供されるリン酸エステルの脱水物中の水分含量が蒸留装置及び/又は接触装置の材質に腐食の影響を及ぼさない観点及び材質の腐食を回避するために耐酸性の高級材質を用いることを避ける観点から、3重量%以下、好ましくは1重量%以下とされる。【0043】リン酸化剤が五酸化リン及び/又はポリリン酸である場合に、有機ヒドロキシ化合物よりも水のほうが優先的に反応する。五酸化リン1モルに対して水が3モル以下である場合には、得られたリン酸エステルに含まれる水分含量は0重量%となる。五酸化リン1モルに対する水の量が3モルを超える場合には、得られたリン酸エステルに含まれる水分含量は0重量%を超える。【0044】より具体的には、有臭成分の除去は、製法Iと同様にして、リン酸エステルの蒸留及び/又はリン酸エステルと不活性ガスとの接触によって行うことができる。かくして得られるリン酸エステルの脱臭物に含まれる有臭成分の量は、リン酸エステルが用いられた洗浄剤等に含まれる有臭成分に基づく臭いを低減する観点から、好ましくは0.5 重量%以下、より好ましくは0.2 重量%以下である。【0045】次に、得られたリン酸エステルの脱臭物中のピロリン酸化合物を加水分解させる。水の量は、リン酸エステルの脱臭物100 重量部に対して、好ましくは1〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部である。リン酸エステルの脱臭物中の水分含量には、この水の量を含める。加水分解の条件は、製法Iと同様である。【0046】かくして、製法IIによれば、有臭成分量が低減されたリン酸エステルを得ることができる。得られたリン酸エステルに含まれる有臭成分の量は、製法Iと同様である。【0047】【実施例】実施例1エチレンオキサイドが3モル付加されたウンデシルアルコール(シェル社製、商品名:ネオドール1−3)287.5 g(0.95モル)と、85%リン酸水溶液22.2g(五酸化リン0.096 モル、水0.474 モル相当)とを混合し、温度を40〜50℃に保ちながら五酸化リン54.3g(0.377 モル)を徐々に添加した後、80℃に昇温して12時間リン酸化反応させた。その後、イオン交換水18.2gを添加し、80℃で3時間加水分解を行った後、80℃で減圧下に脱水を行った。【0048】得られたリン酸エステルの脱水物の物性を以下の方法に従って調べた。その結果を表1に示す。【0049】リン酸エステルを熱交換器に30g/min で通して80℃から130 ℃まで昇温させた。このリン酸エステルの脱水物を連続的に圧力が4kPa に制御された充填塔〔内径50mm、高さ22cm、充填材:住友重機械工業(株)製、商品名:スルザーラボパッキング〕の塔頂から供給し、塔底から水蒸気を15g/min で供給して向流接触させ、3分間の接触時間を経て塔底からリン酸エステルを取り出すことによって脱臭を行い、有臭成分が低減されたリン酸エステルを得た。その物性を以下の方法に従って調べた。その結果を表1に示す。【0050】〔水分含量〕脱臭工程前のリン酸エステルの脱水物の水分含量をカールフィッシャー電量滴定装置〔平沼産業(株)製:AQUACOUNTER AQ-7〕を用いて測定した。【0051】〔耐食性〕平板テストピースを400 番のサンドペーパーで研磨し、エタノールに30分間浸漬した後、105 ℃で1時間乾燥する。その後、その平板テストピースをデシケーターに入れ、吸湿を抑制しながら25℃まで徐冷し、0.1 mg単位まで精秤する(W1 、単位:mg)。これを、評価温度に制御されたリン酸エステル中に100 時間浸漬する。【0052】100 時間経過後、平板テストピースを水洗し、エタノールに30分間浸漬した後、105 ℃で1時間乾燥する。その後、その平板テストピースをデシケーターに入れ吸湿を抑制しながら、25℃まで徐冷し、0.1mg 単位まで精秤する(W2 、単位:mg)。下記計算式に基づいて腐食度を算出し、以下の評価基準に基づいて評価した。【0053】腐食度〔mm/y〕=(W1 −W2 )8760/テストピース全表面積〔mm2 〕・浸漬時間〔h〕・テストピース比重〔mg/mm3〕【0054】〔評価基準〕A(耐食材料):腐食度0.127 未満B(使用可能):腐食度0.127 以上、1.27未満C(不適材料):腐食度1.27以上【0055】〔臭い評価〕容量が110mL のガラス製広口規格ビンに、リン酸エステル50mLを入れ、専門パネラー1名が直接ビン口の臭いを嗅ぐ。臭いの強さを0〜6(0を無臭とし、6を最も臭いが強いとする)の7段階で、その臭いの強さに応じて感覚的にその評価を決定する。【0056】〔ピロリン酸化合物含有量〕製法I又はIIで最終的に得られたリン酸エステルを重クロロホルムで15重量%に希釈し、核磁気共鳴装置〔VARIAN社製, Mercury-400MHz〕で測定した〔検出下限値:0.1 重量%〕。【0057】〔配合安定性〕次の組成の配合直後の配合物を用いて、以下の評価基準に基づき、B型粘度計〔東京計器(株)製:DVB-B 〕にて粘度を測定することにより、評価した。〔評価基準〕合格:1万mPa ・S 以上、50万mPa ・S 以下不合格:1万mPa ・S 未満、50万mPa ・S 超【0058】〔配合物の組成〕 (重量%)リン酸エステル 25.2水酸化ナトリウム 3.5ミリスチン酸ナトリウム 5.0塩化ナトリウム 5.0ポリエチレングリコール 6.0ポリオキシエチレンモノステアレート 1.0ソルビトール 8.0香料、色素、防腐剤 適量水 バランス【0059】実施例2実施例1において、リン酸化反応後に加水分解及び脱水を行わずに脱臭を行い、脱臭後に実施例1と同様に加水分解を行った以外は、実施例1と同様にしてリン酸エステルを得た。製造の途中及び最後に得られたリン酸エステルの物性を前記の方法に従って調べた。その結果を表1に示す。【0060】実施例3実施例1において、充填塔の代わりに攪拌膜型蒸発機〔神鋼パンテック(株)製、型番:2-03型、伝熱面積:0.03m2、ガラス製〕を用い、圧力を2.67kPa 、水蒸気量を30g/min にした以外は、実施例1と同様にしてリン酸エステルを得た。製造の途中及び最後に得られたリン酸エステルの物性を前記の方法に従って調べた。その結果を表1に示す。【0061】実施例4実施例2において、エチレンオキサイドが3モル付加されたウンデシルアルコールの代わりにドデシルアルコール262.5g(1.411モル)を用い、85%リン酸水溶液の量を24.1g(五酸化リン0.105 モル、水0.514 モル相当)に変更し、五酸化リンの量を77.4g(0.545 モル)に変更した以外は、実施例2と同様にしてリン酸化反応を行った。【0062】このリン酸エステルを実施例2と同様にしてリン酸エステルを得た。製造の途中及び最後に得られたリン酸エステルの物性を前記の方法に従って調べた。その結果を表1に示す。【0063】実施例5実施例4において、この実施例4でリン酸化反応を行って得られたリン酸エステルを用い、充填塔の代わりに攪拌膜型蒸発機〔神鋼パンテック(株)製、型番:2-03型、伝熱面積:0.03m2、ガラス製〕を用い、水蒸気量を24g/min 、圧力を2.67kPa とした以外は、実施例4と同様にしてリン酸エステルを得た。製造の途中及び最後に得られたリン酸エステルの物性を前記の方法に従って調べた。その結果を表1に示す。【0064】比較例1実施例1において、加水分解後に脱水を行わなかった以外は、実施例1と同様にして有臭成分量が低減されたリン酸エステルを得た。製造の途中及び最後に得られたリン酸エステルの物性を前記の方法に従って調べた。その結果を表1に示す。【0065】比較例2実施例2において、脱臭後に加水分解を行わなかった以外は、実施例2と同様にして有臭成分量が低減されたリン酸エステルを得た。製造の途中及び最後に得られたリン酸エステルの物性を前記の方法に従って調べた。その結果を表1に示す。【0066】【表1】【0067】以上の結果から、実施例1〜5及び比較例2に示されるように、水分含量が2重量%以下である場合には耐食性はAであるが、比較例1に示されるように、水分含量が5重量%である場合には耐食性はCであることがわかる。また、実施例1〜5及び比較例1に示されるように、ピロリン酸化合物の含有量が0.1%以下である場合には配合安定性は合格であるが、比較例2に示されるように、ピロリン酸化合物の含有量が5.2重量%である場合には配合安定性は不合格であることがわかる。【0068】【発明の効果】本発明の製造法によれば、洗浄剤としての性能を損なうことなく、脱臭工程における設備面での経済的負荷が極めて小さく、経済的に有利に、配合安定性に優れたリン酸エステルを簡便に製造することができる。 (1)有機ヒドロキシ化合物と五酸化リン、ポリリン酸、オキシ塩化リン及びリン酸からなる群より選択される1種以上のリン酸化剤とを反応させ、リン酸エステルを得るリン酸化反応工程、(2)工程(1)で得られたリン酸エステル中のピロリン酸化合物を70〜90℃の温度で加水分解させる加水分解工程、(3)工程(2)で得られたリン酸エステルの加水分解物を水分含量が3重量%以下となるまで減圧脱水し、リン酸エステルの脱水物を得る脱水工程、及び(4)工程(3)で得られたリン酸エステルの脱水物中の有臭成分を温度が100〜160℃のリン酸エステルの脱水物と水蒸気とを20kPa以下の圧力で接触させることによって除去し、リン酸エステルの脱臭物を得る脱臭工程を有するリン酸エステルの製造法。 リン酸エステルの脱水物と水蒸気との接触時間が1〜30分間である、請求項1に記載の製造法。 (1)有機ヒドロキシ化合物と、五酸化リン、ポリリン酸及びリン酸からなる群より選択される1種以上のリン酸化剤とを、五酸化リン換算で五酸化リン1モルに対して水が3モル以下で反応させ、水分含量が0重量%のリン酸エステルを得るリン酸化反応工程、(2)工程(1)で得られたリン酸エステルを用い、リン酸エステル中の有臭成分を温度が100〜160℃のリン酸エステルと水蒸気とを20kPa以下の圧力で接触させることによって除去し、リン酸エステルの脱臭物を得る脱臭工程、及び(3)工程(2)で得られたリン酸エステルの脱臭物中のピロリン酸化合物を70〜90℃の温度で加水分解させる加水分解工程を有するリン酸エステルの製造法。 リン酸エステルと水蒸気との接触時間が1〜30分間である、請求項3に記載の製造法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る