生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_鉛蓄電池用リグニンの分析方法
出願番号:2001286405
年次:2010
IPC分類:G01N 27/26,G01N 27/416,G01N 31/16,H01M 4/14,H01M 4/62


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柴原 敏夫 JP 4442069 特許公報(B2) 20100122 2001286405 20010920 鉛蓄電池用リグニンの分析方法 新神戸電機株式会社 000001203 柴原 敏夫 20100331 G01N 27/26 20060101AFI20100311BHJP G01N 27/416 20060101ALI20100311BHJP G01N 31/16 20060101ALI20100311BHJP H01M 4/14 20060101ALI20100311BHJP H01M 4/62 20060101ALI20100311BHJP JPG01N27/26 341AG01N27/46 353ZG01N31/16 ZH01M4/14 QH01M4/62 B G01N 27/26 G01N 27/416 G01N 31/16 H01M 4/14 H01M 4/62 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2001−202987(JP,A) 特開2001−155723(JP,A) 特開平11−273666(JP,A) 特開昭58−045545(JP,A) 特開昭57−023856(JP,A) 4 2003090814 20030328 7 20070322 大竹 秀紀 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、鉛蓄電池の負極にエキスパンダとして使用されている、リグニンの分析方法に関するものである。【0002】【従来の技術】鉛蓄電池は、コストや信頼性の面で優れていることから、無停電電源装置、自動車用バッテリ、電気自動車などの幅広い分野で使用されている。最近、これらに用いられる鉛蓄電池の長寿命化が強く望まれている。【0003】鉛蓄電池を長寿命化させるには、負極板の活物質を微細化したり多孔質化したりすることによって、電極反応面積を大きくし、その状態を長期間にわたって保持する必要がある。【0004】なお、負極活物質を微細化したり、多孔質化するための負極用のエキスパンダとして、従来からリグニンが使用されている。【0005】リグニンは、木材を構成している天然高分子である。なお、工業用のリグニンは、木材から製紙用として亜硫酸パルプの製造時に、副産物として生産される蒸解溶出液を原料としたリグニンスルホン酸塩が主に用いられている。【0006】これら工業用のリグニンは、鉛蓄電池用エキスパンダ以外にも、染料の分散剤や分散助剤、カーボンブラックの分散剤、メッキ浴助剤及び工業用洗浄剤など多くの用途に用いられている。【0007】このような用途にリグニンが利用される理由は、リグニンスルホン酸塩は、スルホン基、カルボキシル基、フェノール性水酸基などの多数の官能基を有しており、酸塩基反応を起こすことができる電解質であるため、種々の粒子に吸着して親水性を付与したり、負に帯電させることによって分散性の向上に寄与できるからである。【0008】【発明が解決しようとする課題】一方、リグニンは天然物である木材からの抽出物であるために、ばらつきがあり、その品質管理が難しいという問題点があった。そして、リグニンのロットごとに、それを用いて製造した鉛蓄電池の寿命等にも影響することが明らかになってきた。【0009】従来、リグニンの評価は、水分量(質量%)、5質量%水溶液のpH値、硫酸ナトリウム分(質量%)、カルシウム分(質量%)などで評価されていた。【0010】しかしながら、これらの物性値とそのリグニンを用いて製造した鉛蓄電池の寿命との定量的な対応関係が認められない状況にある。【0011】そこで、NMR等の分析機器を使用して、C6-C3の疎水性骨格に対するスルホン基・カルボキシル基・フェノール性水酸基などの官能基量を求めることも行われている。しかしながら、この方法でも組成面の情報にとどまることや、組成面の情報とそのリグニンを用いて製造した鉛蓄電池の寿命との定量的な対応関係が認められない状況にある。【0012】本発明の目的は、長寿命でバラツキの少ない鉛蓄電池を得ることができるリグニンの分析方法を提供することである。【0013】【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するために、本発明は、リグニンの水溶液を電位差滴定することによって、リグニンの酸塩基的な性質を分析する方法を提供するものである。【0014】すなわち、第一の発明は、リグニンの水溶液を酸性に調整した後、滴定剤としてアルカリ性水溶液を滴下し、試験電極を用いて電位差滴定することを特徴とし、第二の発明は、前記試験電極が、pH測定用の試験電極であることを特徴とし、第三の発明は、前記リグニンの水溶液を、硝酸水溶液を用いて酸性に調整することを特徴とし、第四の発明は、前記アルカリ性水溶液として、水酸化ナトリウム水溶液を用いることを特徴としている。【0015】【実施例】以下において、本発明による方法でロットの異なるリグニンを分析した後、これらのリグニンを実際に鉛蓄電池に使用した場合に、どのような寿命特性を示すかについて寿命試験をして評価した。以下に、それらの詳細について説明する。【0016】1.本発明によるリグニンの分析本発明によるリグニンの分析方法は、いわゆる、電位差滴定法を用いたものである。なお、以下の実施例において、電位差の変化を測定するに当って、試験電極の入手や操作が容易なpHの変化で評価することとした。したがって、以下の実験において、一般的な市販品であるpH測定用の試験電極として測定した結果を示している。【0017】リグニンのサンプルとして、バニレックスN(ただし、商品名。日本製紙製。)とし、異なる5種類のロット(ロット:A,B,C,D,E)を使用し、水酸化ナトリウムを滴定剤としてpHの変化を測定した。【0018】図1に示すように、滴定剤量とpH変化との関係は、市販の自動滴定装置(AUT-3000型。東亜電波工業製。)を用いて、以下の手順で測定した。【0019】測定セル3に蒸留水を100ml、上記したリグニンを0.1gずつ加えて、スターラ8で回転子7を回転させ、攪拌して前記リグニンを溶解する。【0020】そして、水溶液中の炭酸ガス濃度の影響を少なくするために、窒素ボンベ6から窒素ガス導入管4を通して窒素バブリングを行いながら、pHの変化が(±0.01/分)以内になるまで放置する。【0021】その後、スターラ8で回転子7を回転させながら、0.5Nの硝酸水溶液を0.01ml/分の速度で滴下し、滴下してから1分後の水溶液のpHが3.0に達するまで滴下した。【0022】次に、スターラ8で回転子7を回転させて前記リグニン水溶液を攪拌しながら、滴定剤として0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を0.01ml/分の速度で滴下し、滴下してから1分後の前記水溶液のpHが11.0に達するまで滴下を続けて、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量とpHとの関係を測定した。【0023】溶液中にリグニン無しの場合と、ロットA,B,C,D,Eのリグニンを使用した場合について、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量とpHの関係を図2に示す。リグニン無しの基準線と比較して、水溶液中にリグニンが存在すると、pH11.0に達するまでの水酸化ナトリウム水溶液量を多く必要とすることがわかる。【0024】上記した結果は、水溶液中においてリグニンは、いわゆる「酸」としての役割を果たしていることがわかる。リグニンは高分子であり、複雑な官能基を有しているため、これらの詳細な理由については不明であるが、これらの官能基の違いによって、酸塩基反応に差が生じたためと考えられる。【0025】図2の結果から、本実施例では水酸化ナトリウム水溶液滴下量とpHの関係からロットB,C,D,Eのリグニンは酸塩基的な性質が近いものであり、ロットAはこれらと大きく異なっていると判断できる。【0026】なお、上記した実験条件は一実施例であり、リグニンの違いが判別できる範囲で、適宜、滴定時に用いる酸やアルカリの種類や濃度、滴下速度、pHの上下限値、試験電極の種類等を調整・変更できることは言うまでもない。【0027】2.制御弁式鉛蓄電池の作製条件及び試験条件上記した、5種類のロットのリグニン(ロットA,B,C,D,E)を負極板の活物質に含む制御弁式鉛蓄電池の作製して寿命試験をした。【0028】(負極板の作製)一酸化鉛を70〜80質量%含む鉛粉1kgに、前記鉛粉質量に対して上述した5種類のリグニン粉末を0.2質量%、硫酸バリウム粉末を1.5質量%、炭素粉末を1質量%、比重が1.30の硫酸を70ccと適量の水を加えて混練し、従来の手法で5種類の負極用のペースト状活物質を作製した。【0029】作製した負極用ペースト状活物質を、w58mm × 1114mm × t1.0mmの鉛−カルシウム合金製の格子体に充填し、40℃、相対湿度95%の雰囲気中で40時間熟成・乾燥してリグニンのロットが異なる5種類の未化成のペースト式負極板を作製した。なお、上記した負極板の作製方法は、従来から使用されているものである。【0030】(制御弁式鉛蓄電池の作製)上記した5種類の未化成のペースト式負極板が4枚と、従来から使用している未化成のペースト式正極板が3枚とを、ガラス繊維製のリテーナを介して積層・溶接して極板群を組み立て、それをABS製の電槽に組み込み、比重が1.30(20℃)の希硫酸電解液を注入する。【0031】その後、充電量が250%、化成時間が48時間、周囲温度が40℃の条件で電槽化成して、13Ah−2Vの制御弁式鉛蓄電池を作製した。【0032】(充放電試験)作製した制御弁式鉛蓄電池は、0.1CA(1.3A)で放電(25℃、放電終止電圧:1.75V)して、初期の放電容量を測定して異常がないことを確認する。【0033】その後、作製した制御弁式鉛蓄電池を満充電状態にし、上記した5種類の制御弁式鉛蓄電池を直列に接続し、0.25CA(1.75A)で2.8時間放電した後、2.45V/セルの定電圧充電で前記放電量の102%を充電するサイクル寿命試験を実施した。【0034】そして、充放電サイクル数が2000サイクルに達した時点で、5セル直列で0.1CA(1.3A)で放電し、続いて2.45V/セルの定電圧充電で放電量の102%を充電する。そして、各セルごとに0.1CA(1.3A)で放電(25℃、放電終止電圧:1.75V)して放電容量を測定し、初期の放電容量との比率を算出した。【0035】表1に、各種の負極板を用いた制御弁式鉛蓄電池について、2000サイクル時点での放電容量と初期の放電容量との比率(%)を示す。【0036】表1よりロットAのリグニンを用いた制御弁式鉛蓄電池は寿命低下が大きく、ロットB,C,D,Eリグニンを用いた制御弁式鉛蓄電池は寿命低下が少ないことがわかる。【0037】すなわち、酸塩基的性質がロットB,C,D,Eに近いリグニンを選別し、鉛蓄電池用リグニンとして使用すれば、長寿命でバラツキの少ない制御弁式鉛蓄電池を提供することができる。なお、本実施例では制御弁式鉛蓄電池についてルグニンを使用した例を示したが、液式の鉛蓄電池に使用した場合でも、ほぼ同様の効果が得られた。【0038】【表1】【0039】【発明の効果】上述したように、本発明を用いて分析し、選別したリグニンを鉛蓄電池用として負極板に用いることによって、長寿命でバラツキの少ない鉛蓄電池を提供することができるため工業上優れたものである。【図面の簡単な説明】【図1】本発明に係わる分析装置の概略図である。【図2】本発明に係わる分析方法を用いて5種類のリグニンの滴定をした結果である。【符号の説明】1:pH測定用試験電極、2:マイクロビュレット、3:測定セル、4:窒素ガス導入管、5:窒素ガス排出管、6:窒素ガスボンベ、7:回転子、8:スターラ、9:硝酸水溶液、10:水酸化ナトリウム水溶液、11:自動滴定装置、12:蓋 リグニンの水溶液を酸性に調整した後、滴定剤としてアルカリ性水溶液を滴下し、試験電極を用いて電位差滴定することを特徴とする鉛蓄電池用リグニンの分析方法。 前記試験電極が、pH測定用の試験電極であることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池用リグニンの分析方法。 前記リグニンの水溶液を、硝酸水溶液を用いて酸性に調整することを特徴とする請求項1又は2記載の鉛蓄電池用リグニンの分析方法。 前記アルカリ性水溶液として、水酸化ナトリウム水溶液を用いることを特徴とする請求項1、2又は3記載の鉛蓄電池用リグニンの分析方法。


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