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タイトル:特許公報(B2)_水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態の評価方法
出願番号:2001281121
年次:2011
IPC分類:G01N 33/00,C09K 21/02


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松井 誠二 田里 伊佐雄 JP 4634671 特許公報(B2) 20101126 2001281121 20010917 水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態の評価方法 神島化学工業株式会社 390036722 塩入 明 100086830 塩入 みか 100096046 松井 誠二 田里 伊佐雄 20110216 G01N 33/00 20060101AFI20110127BHJP C09K 21/02 20060101ALI20110127BHJP JPG01N33/00 DC09K21/02 G01N 33/00 C09K 21/02 C08K 03/00 JSTPlus(JDreamII) CiNii 特開平01−141929(JP,A) 特開平01−172312(JP,A) 特開平06−345899(JP,A) 松井誠二、木下智仁、松本靖弘、山崎仲道、田里伊佐雄,電位差滴定による水酸化マグネシウムの表面評価,日本化学会講演予稿集,日本,2000年,Vol.78,No.1,Page.41 田里伊佐雄,電位差滴定法による粉体の特性評価,Readout HORIBA Technical Reports,日本,1994年,No.8,Pages.4-9 3 2003083950 20030319 6 20080125 草川 貴史 【0001】【発明の技術分野】本発明は、ノンハロゲンの難燃材料として使用される、水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態の評価に関する。水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態を評価すると、難燃剤の樹脂への分散性等を評価できるので、本発明は水酸化マグネシウム系難燃剤の品質管理や製造管理などに用いることができる。【0002】【従来の技術】水酸化マグネシウムは、特開平1-141929号等に示されるように、オレフィン樹脂等の難燃化に用いられる。水酸化マグネシウムは、樹脂への分散性を改良し、耐水性や耐酸性を向上させ、また高温高湿中での樹脂の電気抵抗の低下を防止する等のため、種々の表面処理剤で被覆されている。このような表面処理剤には、高級脂肪酸や、高級脂肪酸アルカリ金属塩、高級脂肪酸アンモニウム塩、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤、アルコールリン酸エステルなどが知られている。また水酸化マグネシウムには、海水等から合成した合成水酸化マグネシウムや、水酸化マグネシウムの天然鉱物であるブルーサイトを粉砕した天産品水酸化マグネシウムなどが用いられる。そしてこのような表面処理剤は、水酸化マグネシウム粒子の表面を被覆して、樹脂への分散性を向上する、耐酸性,耐水性,耐湿性を向上する等の効果をもたらす。表面処理剤の水酸化マグネシウムに対する割合は、両者の重量比で、例えば0.1〜10%程度で、1〜5%程度の割合が多用される。【0003】水酸化マグネシウム系難燃剤は、オレフィン系樹脂100重量部に対して、例えば50〜100重量部添加され、高い難燃性を必要とする場合、100重量部以上添加される。しかしながら水酸化マグネシウム系難燃剤は樹脂中に均一に分散させることは困難で、例えば2軸押出機でコンパウンディングする際に、肌荒れする、ブツブツが残る、等の外観不良が生じる。これを防止する目的で、押出機出口にストレーナーを介在させているが、凝集した水酸化マグネシウムがメッシュ詰まりの原因となり、押出時の生産性が低下する。更にひどい場合は、樹脂圧でメッシュがやぶれることがある。【0004】分散不良の原因について、表面処理剤による被覆が不均一で、水酸化マグネシウム自体の表面が露出することが、容易に推測される。水酸化マグネシウムの親水性表面と疎水性のオレフィン系樹脂とはなじみ難いからである。しかしながら水酸化マグネシウム系難燃剤の化学分析値や粒度分布等の一般的物性と、樹脂中での分散性とには、相関が得られていないのが現状である。また水酸化マグネシウムの表面被覆状態を正確に評価する方法も、知られていない。【0005】【発明の課題】本発明の目的は、水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態の評価方法を提供し、水酸化マグネシウム系難燃剤の樹脂への分散性等の評価を容易にすることにある(請求項1〜3)。【0006】【課題を解決するための手段】 本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態の評価方法では、表面処理剤で表面被覆した水酸化マグネシウム系難燃剤と、その分散剤とを含む水性懸濁液に、所定の速度で酸を滴下しながら、該水性懸濁液のpHを測定して、pHの低下が大きい際に、難燃剤が均一に表面処理され、水酸化マグネシウムの露出表面が少ないものと、難燃剤の表面被覆状態を評価ないしは測定する。pHの低下の程度は、例えば所定量の酸を滴下した時点でのpHの値、滴下開始時からのpHの変化、あるいは酸の滴下に伴うpHの低下のスロープ(勾配)等とする。酸の滴下速度は一定とすると簡単であるが、所定のパターンで滴下速度を変化させても良い。水性懸濁液の分散媒は例えば水とするが、水−エタノールなどでも良い。【0007】好ましくは懸濁液での前記分散剤の濃度を0.01〜1wt%、水酸化マグネシウム系難燃剤の濃度を0.1〜5wt%とし、前記酸を強酸として、その滴下速度を、難燃剤中の水酸化マグネシウム1molに対して、水素イオンとして0.1〜5mmol/minとする(請求項2)。強酸には例えば濃度0.01〜1mol/Lの硝酸や塩酸、あるいは濃度0.005〜0.5mol/Lの硫酸等を用いる。なお酸の種類を酢酸等の弱酸としても、表面被覆状態の評価は可能であるが、pHの低下が遅く、かつ表面被覆が均一なものと不均一なものとのpH低下の差が小さい。難燃剤の表面被覆状態を正確に評価するには、酸を、水素イオン換算で水酸化マグネシウム1mol当たり、2.5mmol以上滴下した際のpHを用いるのが好ましい。pHの測定は例えばガラス電極で行えばよい。【0008】このようにして、水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態を評価ないしは測定すると、難燃剤の樹脂への分散性や、耐水性、耐酸性等を評価でき、水酸化マグネシウム系難燃剤の品質管理や難燃剤の製造での工程管理に適している(請求項3)。【0009】【発明の作用と効果】本発明では、表面処理剤で被覆されていない水酸化マグネシウム表面の水酸基と酸との反応速度をpHの変化から評価でき、表面処理が均一で水酸化マグネシウムの露出表面が少ないほどpHは急激に低下するので、水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態を正確に評価できる(請求項1)。【0010】ここで、懸濁液での前記分散剤の濃度を0.01〜1wt%とすると、水酸化マグネシウム系難燃剤を水等の分散媒中に均一に分散でき、しかも過剰の分散剤が水酸化マグネシウムの表面に付着して、酸との反応を妨げることがない。これに対して、分散剤の濃度が0.01wt%よりも低いと、水酸化マグネシウム系難燃剤が分散媒中に均一に分散せず、滴定曲線がばらつく。また濃度が1wt%よりも高いと、水酸化マグネシウムの露出表面に分散剤が吸着し、妥当な滴定曲線が得られない。水酸化マグネシウム系難燃剤の懸濁液中での濃度は0.1〜5wt%が好ましく、濃度が5wt%を超えると、懸濁液に均一に分散させることが難しく、滴定曲線がばらつきやすい。また濃度が0.1wt%未満でも滴定曲線がばらつきやすい。強酸からなる滴定剤の滴下速度は、水酸化マグネシウム1molに対して、水素イオンとして0.1〜5mmol/minが好ましい。滴下速度が0.1mmol/minよりも遅いと表面被覆の程度によるpHの変化の差が小さくなり、5mmol/minよりも速いと滴定データの再現性が減少する(請求項2)。【0011】本発明では、水酸化マグネシウム系難燃剤の表面の被覆状態を評価できるので、樹脂への分散性等を予測でき、難燃剤の品質管理や製造管理などに便利である(請求項3)。【0012】なお分散剤としては、例えばポリエチレングリコール-モノ-メチルエーテル、ポリエチレングリコール-モノ-ブチルエーテル、ポリエチレングリコール-モノ-ラウリルエーテル、ポリエチレングリコール-モノ-ステアリルエーテル、ポリエチレングリコール-モノ-P-ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-オクチル-フェニルエーテル、ポリエチレングリコール-脂肪酸エステル等が挙げられ、そのエチレンオキサイドの付加モル数(n)としては、n=10〜25のものが好ましい。【0013】分散懸濁液の調整方法としては、例えば分散剤の溶液中に水酸化マグネシウム系難燃剤を添加し、スターラー、攪拌機、ディスパー等で攪拌、もしくは、超音波でシェアをかけて、難燃剤を分散させることが好ましい。【0014】【発明の実施の形態】以下のようにして試料1〜6を調製し、硝酸を用いて電位差滴定を行い、樹脂への配合テストの結果と比較して、表面被覆状態の評価ができることを確認した。【0015】【試料】平均粒子径が1.0μmの合成水酸化マグネシウムの水懸濁液(濃度200g/L、温度80℃)に対し、攪拌下に、濃度5wt%、温度80℃のステアリン酸ナトリウム水溶液を、ステアリン酸ナトリウムの表面処理量が水酸化マグネシウム100wt%に対して2.5wt%となるように添加した。添加後3時間攪拌し、ろ過し、100℃で24時間乾燥後、粉砕して表面処理サンプルを得た(試料1)。また平均粒子径が0.5μmの合成水酸化マグネシウムを使用し、表面処理量を5.0wt%とした以外は試料1と同様にして、試料2を得た。平均粒子径が6.3μmの天然ブルーサイト粗粉砕品100kgとステアリン酸2.5kgを、予めヘンシェルミキサー(攪拌型でメディアを用いないミキサー)で混合した。この混合品を、内容積100リットルのジャケット加熱の連続式メディア攪拌型ミルに1.0kg/minの速度で供給しながら、ミル内部の温度が100℃になるようにして、粉砕と表面処理とを同時に行った。ミルのメディアには径5mmのアルミナボールを使用した。表面処理した粉末の排出量及び内部の温度が安定した後のサンプルを、試料3とした。【0016】乾燥温度を50℃とした以外は、試料1と同様にして試料4を得た。表面処理量を0.5wt%とした以外は、試料1と同様にして試料5を得た。攪拌処理時にミルを加熱しない以外は、試料3と同様にして試料6を得た。【0017】試料1〜6の粉末各1.0gを、0.1wt%濃度のポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(n=25)を純水に配合した水溶液100ml中に添加し、スターラーで5分間攪拌後、超音波で10分間分散処理して懸濁液を調整した。この懸濁液を恒温槽で25℃に保持し、N2ガスでバブリングしながら、自動滴定装置(京都電子工業株式会社製AT-400)を用いて0.1mol/Lの希硝酸水溶液を0.1ml/min(水酸化マグネシウム1molに対して、水素イオンとして0.6mmol/min)の速度で滴下し、ガラス電極を用いて滴定溶液中のpHを測定することにより、滴定曲線を得た。得られた滴定曲線を図1に示す。【0018】水酸化マグネシウム分散懸濁液のpHの初期値は10.5〜11で、水酸化マグネシウム1molに対する硝酸滴下量が2.4mmol(0.4mL滴下)程度から、試料間のpHの差が明瞭となり、4.2mmol滴下では試料間の差は明らかで、6mmol滴下ではpHの差は極めて明瞭である。また試料1と試料2の差は、平均粒径を1/2にすると、表面処理剤の量を2倍にしても、水酸化マグネシウム表面と酸との反応がより著しくなることを示している。試料3と試料1との差は、天産品の水酸化マグネシウムを乾式で処理すると、合成水酸化マグネシウムを湿式で処理した場合よりも、表面処理が不均一になることを示している。【0019】試料4と試料1との差は、乾燥温度を100℃から50℃に低下させると、水酸化マグネシウムの表面被覆が不均一になることを示している。また試料5,6は、表面処理量が0.5wt%では水酸化マグネシウムの露出表面が極めて多く、メディア攪拌型ミルを加熱しないと表面処理が不均一になることを示している。【0020】試料1〜6のオレフィン樹脂への分散性を評価した。エチレン/エチルアクリレート共重合体(日本ポリオレフィン株式会社製、商品名:A-1150、エチルアクリレート含有量:15 wt%、MFR(メルトフローレート):0.8)10kgに、試料1〜6を各15kgを配合して混合した。その後、2軸押出機を用いて200℃で溶融混練した。押出コンパウンドの表面外観(分散性)を、良好:○、やや劣る:△、不良:×に従って評価した。結果を表1に示す。【0021】【表1】【0022】押出コンパウンドの表面外観評価の結果は、図1での滴定曲線でのpHの低下の程度と一致し、水酸化マグネシウム1molに対し硝酸を6mmol滴下した際のpHが9以下であることが、良い分散性が得られる条件である。このようにpHの低下の程度と樹脂への分散性の良否が良く相関することが確認できた。【0023】実施例では表面処理剤として高級脂肪酸系のものを用いたが、表面処理剤の種類を変更しても、同様に表面被覆の状態を測定ないしは評価できる。また水酸化マグネシウム表面の被覆状況を評価できると、樹脂への分散性のみでなく、耐水性や耐酸性等も予測できる。【図面の簡単な説明】【図1】 試料1〜6の水酸化マグネシウム系難燃剤の水懸濁液を、希硝酸で滴定した時の滴定曲線を示す特性図 表面処理剤で表面被覆した水酸化マグネシウム系難燃剤と、その分散剤とを含む水性懸濁液に、所定の速度で酸を滴下しながら、該水性懸濁液のpHを測定して、pHの低下が大きい際に、難燃剤が均一に表面処理され、水酸化マグネシウムの露出表面が少ないものと、難燃剤の表面被覆状態を評価する、水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態の評価方法。 懸濁液での前記分散剤の濃度を0.01〜1wt%、水酸化マグネシウム系難燃剤の濃度を0.1〜5wt%とし、前記酸を強酸として、その滴下速度を、難燃剤中の水酸化マグネシウム1molに対して、水素イオンとして0.1〜5mmol/minとすることを特徴とする、請求項1の水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態の評価方法。 表面被覆状態の評価を、水酸化マグネシウム系難燃剤の品質管理または工程管理の一部として行うことを特徴とする、請求項1または2の水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態の評価方法。


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