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タイトル:特許公報(B2)_アスピリン含有経皮吸収貼付剤
出願番号:2001269720
年次:2012
IPC分類:A61K 9/70,A61K 31/60,A61K 47/14,A61K 47/30


特許情報キャッシュ

川原 康慈 新籾 康彦 JP 4965778 特許公報(B2) 20120406 2001269720 20010906 アスピリン含有経皮吸収貼付剤 ニチバン株式会社 000004020 野田 直人 100146282 野村 康秀 100162569 川原 康慈 新籾 康彦 20120704 A61K 9/70 20060101AFI20120614BHJP A61K 31/60 20060101ALI20120614BHJP A61K 47/14 20060101ALI20120614BHJP A61K 47/30 20060101ALI20120614BHJP JPA61K9/70 401A61K31/60A61K47/14A61K47/30 A61K 9/70 A61K 31/60 A61K 47/14 A61K 47/30 特開平07−157432(JP,A) 特開平11−189546(JP,A) 1 2003081816 20030319 11 20080826 山村 祥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、粘着基剤層中に薬効成分としてアスピリンを含有する経皮吸収貼付剤に関し、さらに詳しくは、アスピリンの保存安定性と経皮吸収性に優れた経皮吸収貼付剤に関する。本発明のアスピリン含有経皮吸収貼付剤は、粘着基剤層中のアスピリンの分解が抑制されているため、長期間にわたって安定的に保存することができる。【0002】【従来の技術】アスピリン(即ち、アセチルサリチル酸)は、代表的な非ステロイド系消炎鎮痛薬の一つであり、解熱、消炎、鎮痛などの他、近年、脳卒中、心筋梗塞、末梢循環不全の再発予防のための抗血小板剤として、一般家庭や医療機関等で広く用いられている。アスピリンは、一般に、内服剤として経口投与されているが、副作用として消化管障害や耳鳴りが現われることがある。【0003】アスピリンの経口投与に伴う副作用を緩和するために、アスピリンの坐剤が用いられている。しかし、坐剤は、適用部位が直腸に限定されており、投与がわずらわしい。また、アスピリンの内服剤や坐剤は、全身性の鎮痛解熱剤として作用する反面、投与後には短時間で薬効が失われてしまうため、薬効の持続性を確保するには、頻繁に投与を行う必要がある。また、腸溶錠も開発されているが、消化管障害を完全に防ぐには到っていない。【0004】アスピリン製剤の副作用を抑制し、薬効を持続させるために、アスピリンの外用製剤化の検討がなされている。アスピリンを外用製剤化して経粘膜投与または経皮投与することができれば、経口投与による胃腸障害などの副作用を緩和もしくは抑制することが期待できる。また、外用製剤の剤型によっては、適用が簡単かつ容易になる。特に、外用製剤の経皮投与により、アスピリンを徐々に経皮吸収させることができれば、薬効を長時間にわたって持続させることが可能となり、薬物投与量を精密に制御することもできる。【0005】しかし、アスピリンの外用製剤化には、克服すべき諸問題がある。最も重要な問題点は、アスピリンが加水分解を受け易いことである。アスピリンは、水と加熱するか、あるいはアルカリ性水溶液に溶解させると、加水分解されてサリチル酸と酢酸になることが知られているが、湿った空気中でも徐々に加水分解されてしまう。このように、アスピリンは、僅かな水分の存在下でも徐々に加水分解を受けて、薬効を喪失してしまう。【0006】アスピリンの外用製剤は、アスピリンの少なくとも一部を溶解状態で含有するため、アスピリンを結晶状態で含有している内服薬に比べて、水分の影響を受け易く、保存安定性に劣る。そのため、アスピリンの外用製剤は、適用時に薬効を喪失していたり、所定量を投与することができなくなるといった問題があった。【0007】また、アスピリンの外用製剤化は、アスピリンを安定して含有することに加えて、適用が簡単かつ容易であること、さらには、投与量を精密に制御できることが求められている。しかし、これまでに提案されているアスピリン含有外用製剤は、これらの要求に充分に応えることができていない。【0008】具体的に、アスピリン含有外用製剤として、例えば、アスピリンを薬効成分とする水溶液、懸濁液、ゲル、軟膏、パップ剤、貼付剤(テープ剤)などが提案されている。しかし、これらの中で、水溶液、懸濁液、ゲル、軟膏などの製剤は、主として鼻粘膜投与されており、経皮投与には不向きである。外用製剤の鼻粘膜投与は、必ずしも適用が容易ではなく、不快感を与えることもある。一方、これらの製剤を経皮投与すると、経皮吸収性が不充分であったり、皮膚面に塗布した製剤が衣服に付着したり、ベトツキ感がして不快であったり、投与量を精密に制御することができないなどの問題が生じる。【0009】しかも、アスピリンは、水溶液や懸濁液などの剤型にすると、製剤中の水分と接触して加水分解を受けるため、早期に薬効を喪失してしまう。ゲルや軟膏などの製剤は、アスピリンの水溶液や懸濁液などに比較すれば、保存安定性が比較的良好である。しかし、これらの製剤中においても、アスピリンは、その一部または全部が溶解状態で存在しているため、水分の影響を受け易く、保存安定性が充分ではない。ハイドロゲル剤であるパップ剤は、アスピリンの保存安定性が不充分であり、皮膚面への接着性にも劣っている。【0010】外用製剤の中でも、薬物を含有する粘着基剤層が支持体上に形成された形態の貼付剤は、一般に、皮膚への適用が簡単かつ容易であり、薬物投与量の制御や薬効の持続性の点でも優れている。そのため、アスピリンを含有する貼付剤について、幾つかの提案がなされている。【0011】例えば、特開平6−72879号公報には、支持体上に、アスピリンを含有する粘着基剤層が設けられている経皮吸収製剤において、粘着基剤として特定のアクリル系共重合体を使用することが提案されている。このアスピリン含有経皮吸収製剤は、アスピリンの経皮吸収性が良好であり、保存安定性も改善されている。しかし、アクリル系粘着剤を粘着基剤とするアスピリン含有経皮吸収製剤は、比較的短期間の保存安定性は良好であるものの、保存期間が長くなると、アスピリンの加水分解が急速に進行する。【0012】そこで、特開平6−183980号公報には、アクリル系粘着剤を粘着基剤とするアスピリン含有貼付剤を袋体に収納するとともに、袋体を真空乾燥機により真空乾燥し、次いで、袋体内部を乾燥空気で置換し、しかる後、ホットメルト粘着剤層を形成した袋体の開封部を熱圧着して密封することにより、アスピリン含有貼付剤の保存安定性を改善する方法が提案されている。【0013】上記公報には、真空乾燥により粘着基剤層中の含水率を0.15重量%以下とするために、アスピリン含有貼付剤を袋体に収納した後、真空乾燥機に入れて、常温で24時間真空乾燥を行ったことが記載されている。しかし、この方法は、貼付剤の含水率を低下させるために、長時間の真空乾燥を行わなければならず、処理が煩雑で生産性に劣る。しかも、この方法を採用しても、長期間にわたって充分な保存安定性を得ることが困難である。【0014】また、貼付剤における薬物の経皮吸収性は、薬物の種類、粘着剤の組成などによって大きく影響されるため、アスピリンを単に粘着基剤層に含有させただけでは、経皮吸収性に優れた貼付剤を得ることはできない。実際、粘着基剤として、アクリル系粘着剤に代えて、汎用のゴム系粘着剤を用いても、アスピリンの経皮吸収性が良好な貼付剤を得ることができない。したがって、アスピリンの経皮吸収性と保存安定性とを共に満足するアスピリン含有経皮吸収貼付剤を得ることは、従来技術水準からみて、極めて困難な課題であった。【0015】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、粘着基剤層中に薬効成分としてアスピリンを含有する経皮吸収貼付剤であって、アスピリンの保存安定性と経皮吸収性が共に優れた経皮吸収貼付剤を提供することにある。【0016】本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、支持体上に、アスピリンを含有するシリコーン系粘着基剤層を設けることにより、アスピリンの経皮吸収性が良好であり、かつ、アスピリンの加水分解が高度に抑制されて、長期間にわたって安定的に保存することができるアスピリン含有経皮吸収貼付剤の得られることを見いだした。また、特定の化合物を経皮吸収促進剤として使用することにより、貼付剤の保存安定性を損なうことなく、アスピリンの経皮吸収性を顕著に高めることができることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。【0017】【課題を解決するための手段】 かくして、本発明によれば、支支持体上に、アスピリンを含有するシリコーン系粘着基剤層を設けたことを特徴とするアスピリン含有経皮吸収貼付剤であって、(i)シリコーン系粘着基剤層が、経皮吸収促進剤としてプロピレングリコール脂肪酸エステルのみをさらに含有し、かつ、(ii)アスピリン含有経皮吸収貼付剤をアルミニウム包材に封入し、40℃、75%RHの恒温槽で保存し、経時的に取り出して、粘着基剤中のアスピリン含有量を定量し、そして、アスピリン含有経皮吸収貼付剤の粘着基剤中のアスピリン初期含有量に対するアスピリン残存率(重量%)を求める測定方法で測定し、恒温槽に6ヶ月以上保存しても、初期値に対するアスピリンの残存率が90重量%以上であるアスピリン含有経皮吸収貼付剤が提供される。【0018】【発明の実施の形態】本発明では、粘着基剤として、シリコーン系粘着剤を使用する。シリコーン系粘着剤としては、特に限定されず、粘着剤の技術分野において使用されているものであれば使用することができる。シリコーン系粘着剤は、一般に、シリコーンゴムとシリコーンレジンからなるシリコーン組成物を溶剤に溶解させた粘着剤溶液として使用される。シリコーン系粘着剤溶液を支持体などの表面に塗布し、乾燥することによって、粘着基剤層を形成することができる。粘着基剤層は、乾燥時または乾燥後に、必要に応じて加熱キュアすることができる。粘着剤溶液には、必要に応じて、縮合触媒、充填剤、可塑剤、その他の添加剤などを含有させることができる。【0019】シリコーンゴムとしては、ビニルシリコーンゴム、フェニルメチルシリコーンゴム、フェニルビニルシリコーンゴムなどが代表的なものである。粘着剤用のシリコーンゴムの平均分子量は、通常、15,000〜500,000程度である。シリコーンゴムは、必要に応じて加熱キュアすることにより、凝集力を付与することができる。加熱キュアする場合には、所望により、有機過酸化物などの縮合触媒を存在させることができる。【0020】シリコーンレジンは、一般に、数種のオルガノクロルシランの混合物を加水分解し、次いで、脱水縮合反応させることにより得られる複雑な三次元構造を有する樹脂である。シリコーンレジンは、シラノール基(SiOH)が粘着剤としての濡れ、粘着性など特性に関与する。【0021】シリコーン系粘着剤溶液の代表的な組成は、シリコーンゴム100重量部に対して、シリコーンレジン70〜150重量部、好ましくは80〜120重量部、縮合触媒0〜1重量部、好ましくは0〜0.5重量部、及び溶剤100〜150重量部である。溶剤としては、ヘプタン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。シリコーン系粘着剤の凝集力が不足する場合には、軽質無水珪酸、酸化チタンなどの充填剤を加えることにより、それを補うことができる。これらの充填剤は、シリコーンゴム100重量部に対して、通常、0〜150重量部、好ましくは0〜100重量部の割合で使用される。【0022】アスピリンは、メタノール、エタノール、アセトンなどの良溶剤に溶解させる。得られたアスピリン溶液は、シリコーン系粘着剤溶液に添加する。アスピリンは、粘着基剤層を構成する全固形分基準で、通常1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%の割合で使用する。アスピリンの含有量が少なすぎると、薬効及び薬効の持続性が低下する。アスピリンの含有量が多すぎると、シリコーン系粘着剤の中に均一に溶解もしくは分散させることが困難になる。粘着基剤層を形成する全固形分基準とは、溶剤以外の全成分の重量を基準とすることを意味するものとする。【0023】 アスピリンの経皮吸収性を高めるために、粘着基剤層に経皮吸収促進剤を含有させることができる。経皮吸収促進剤としては、例えば、プロピレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルスルホキシド、エタノール、リモネンなどが挙げられる。【0024】 これらの経皮吸収促進剤の中でも、シリコーン系粘着剤からなる粘着基剤中でのアスピリンの経皮吸収性を顕著に高める観点から、プロピレングリコール脂肪酸エステルが好ましい。本発明では、プロピレングリコール脂肪酸エステルのみを用いる。プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレートなどが好ましい。【0025】経皮吸収促進剤は、シリコーン系粘着剤溶液に添加して使用する。経皮吸収促進剤は、粘着基剤層を構成する全固形分基準で、通常0〜30重量%の割合で使用される。経皮吸収促進剤を添加する場合には、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%の割合で添加する。経皮吸収促進剤の使用量が少なすぎると、アスピリンの経皮吸収性を高める作用が低下する。経皮吸収促進剤の使用量が多すぎると、貼付剤の粘着性が低下したり、アスピリンの安定性が損なわれるおそれが生じる。【0026】本発明では、一般に、溶液塗工法により、粘着基剤層を形成する。シリコーン系粘着剤、アスピリン、必要に応じて、経皮吸収促進剤、充填剤などを含有する粘着剤溶液を支持体上及び/または剥離紙上に塗工し、乾燥して、粘着基剤層を形成する。支持体及び剥離紙のそれぞれの面上に粘着基剤層を形成し、両層を粘着面同士で貼り合わせてもよい。【0027】より具体的に、粘着剤溶液を、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター等の塗工機を用いて、例えば、シリコーン処理したPETフィルムなどの剥離紙上に均一に塗布する。塗布後、40〜120℃程度の温度に保持した乾熱雰囲気下に1〜10分間程度の時間置き、有機溶剤を揮散させる。その際、使用する有機溶剤の種類及び塗布する粘着基剤層の厚さにより、適切な乾燥条件を設定する。粘着剤溶液を塗布後、乾燥時にシリコーン系粘着剤を加熱キュアしてもよい。【0028】支持体としては、フィルム(シートを含む)、不織布、織布、和紙などの柔軟性を有するものが使用される。支持体は、それぞれ単層で用いることができるが、所望により、不織布とフィルムのラミネート複合体などのように積層体として使用することもできる。【0029】フィルム(シート)の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;セロハン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリロニトリル、フッ素系樹脂、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリスルホンなどが挙げられる。【0030】不織布の材質としては、レーヨン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステルエーテル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体などが挙げられる。編布の材質としては、コットン、レーヨン、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。【0031】支持体の材質としては、アスピリンに対する親和性がないものが、粘着基剤中のアスピリンを吸収もしくは放出し難いので好ましい。支持体と粘着基剤層との接着性を高めるために、その表面にコロナ放電処理、プラズマ処理を施したり、下塗り剤を塗布してもよい。支持体の厚みは、通常10〜200μm、好ましくは15〜100μmである。【0032】貼付剤を使用するまでの間に、粘着基剤層の表面を保護するために、粘着基剤層の表面に剥離紙を配置する。剥離紙としては、剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、剥離処理したポリエチレンラミネート上質紙、剥離処理したグラシン紙などが挙げられる。剥離紙としては、アスピリンを吸収・吸着しにくい材質からなるものであることが好ましい。剥離紙の厚みは、通常500μm以下、好ましくは15〜200μmである。【0033】本発明のアスピリン含有経皮吸収貼付剤は、図1に断面図を示すように、支持体1上に、アスピリンを含有するシリコーン粘着基剤層2が設けられ、該粘着基剤層の表面は、剥離紙3により保護されている。このアスピリン含有経皮吸収貼付剤は、袋体などに密封して保存することが好ましい。【0034】本発明のアスピリン含有経皮吸収貼付剤は、従来のアクリル系粘着剤を用いたアスピリン含有経皮吸収貼付剤に比べて、保存安定性が顕著に改善されており、40℃、相対湿度(RH)75%の恒温槽に6ヶ月以上保存しても、初期値に対するアスピリンの残存率が約90重量%またはそれを超える高い値を示す。【0035】従来のアクリル系粘着剤を用いたアスピリン含有経皮吸収貼付剤は、経皮吸収促進剤を加えると、保存安定性が著しく損なわれる。これに対して、本発明のアスピリン含有経皮吸収貼付剤は、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの経皮吸収促進剤を含有させることにより、保存安定性を実質的に損なうことなく、アスピリンの経皮吸収性を顕著に高めることができる。【0036】【実施例】 以下に、実施例、参考例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。【0037】[参考例1]1.粘着剤溶液の調製工程 シリコーン系粘着剤(ダウコーニング社製、商品名Q7−4501)のヘプタン溶液(固形分濃度70重量%)32.5gを攪拌しながら、アスピリンのメタノール溶液(濃度33.3重量%)を加え、均一に溶解して、全固形分基準で10重量%のアスピリンを含有する粘着剤溶液を調製した。【0038】2.経皮吸収貼付剤の製造工程上記で調製した粘着剤溶液を厚さ25μmのPETフィルム上に塗工し、次いで、90℃の恒温槽にて3分間乾燥して、厚さ50μmの粘着基剤層を形成した。同様に、上記で調製した粘着剤溶液を厚さ50μmのPETフィルムを剥離処理してなる剥離紙上に塗工し、乾燥して、厚さ50μmの粘着基剤層を形成した。これら両者を粘着基剤面同士で貼り合わせて、合計厚さ100μmの粘着基剤層を有するアスピリン含有経皮吸収貼付剤を作製した。【0039】[実施例1] 参考例1の工程1において、粘着剤溶液中に、経皮吸収促進剤としてプロピレングリコールモノカプリレートを全固形分基準で10重量%となる割合で添加したこと以外は、参考例1と同様にして、アスピリン含有経皮吸収貼付剤を作製した。【0040】[比較例1] アクリル系粘着剤(アクリル酸イソノニル96重量%とアクリル酸4重量%の共重合体)の酢酸エチル溶液(濃度35.7重量%)に、アスピリンを全固形分基準で10重量%になるように溶解させて、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を用いたこと以外は、参考例1と同様にしてアスピリン含有経皮吸収貼付剤を作製した。【0041】[比較例2]比較例1において、粘着剤溶液中に、経皮吸収促進剤としてプロピレングリコールモノカプリレートを全固形分基準で10重量%となる割合で添加して、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を用いたこと以外は、比較例1と同様にしてアスピリン含有経皮吸収貼付剤を作製した。【0042】[比較例3] スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)16重量部、粘着付与剤(荒川化学社製、商品名アルコンP−100)24重量部、及びトルエン60重量部を含有するゴム系粘着剤溶液に、アスピリンのメタノール溶液(濃度33.3重量%)を加え、均一に溶解して、全固形分基準で10重量%のアスピリンを含有する粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を用いたこと以外は、参考例1と同様にしてアスピリン含有経皮吸収貼付剤を作製した。【0043】[比較例4]比較例3において、粘着剤溶液中に、経皮吸収促進剤としてプロピレングリコールモノカプリレートを全固形分基準で10重量%となる割合で添加して、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を用いたこと以外は、比較例3と同様にしてアスピリン含有経皮吸収貼付剤を作製した。【0044】 上記の各実施例、参考例及び比較例で作製した各貼付剤について、粘着基剤中の各成分の種類と含有量を表1に示す。【0045】【表1】【0046】<貼付剤の特性評価>(1)粘着基剤中の薬物の定量:15×15mmの方形の経皮吸収貼付剤から剥離紙を除去した後、10mlのアセトン中に浸漬し、30分振盪した後、メタノールを10ml加えて粘着基剤を沈殿させた。この液の上清を採取し、高速液体クロマトグラフィにてアスピリンを定量した。このアスピリン量を粘着基剤中のアスピリン含有量とした。【0047】(2)経皮吸収貼付剤の保存安定性:各経皮吸収貼付剤をアルミニウム包材に封入し、40℃、75%RHの恒温槽で保存した。経時的に取り出して、粘着基剤中のアスピリン含有量を定量し、そして、経皮吸収貼付剤の粘着基剤中のアスピリン初期含有量に対するアスピリン残存率(重量%)を求めた。結果を表2に示す。【0048】【表2】【0049】(3)ラットの皮膚透過性:ペントバルビタール麻酔下、ヘアレスラットの腹部皮膚を剥離し、皮下脂肪を除去して約3cm×3cmの摘出皮膚片を得た。図2に示すように、この皮膚片5に、15mmφの経皮吸収貼付剤4を貼付し、直ちに、容量8〜10mlの横型拡散セル10に皮膚5を貼りつけた。レシーバー槽9にレシーバー液7として食塩水を満たし、マグネット攪拌装置8により、レシーバー液7の攪拌を行った。試験開始から2時間毎に採取口6からレシーバー液7の一部を採取して、高速液体クロマトグラフィにより、アスピリンを定量した。この方法により、アスピリンの皮膚透過量を測定した。アスピリンの累積透過量と時間との関係をプロットして、図3に示した。【0050】<考察> 表2に示す実験結果から明らかなように、アスピリンを含有するシリコーン系粘着基剤層を設けた本発明のアスピリン含有経皮吸収貼付剤(参考例1及び実施例1)は、40℃で6ケ月経過後でも、初期値に対するアスピリン残存率が90重量%を超えており、優れた保存安定性を示す。また、本発明のアスピリン含有経皮吸収貼付剤は、経皮吸収促進剤としてプロピレングリコールモノカプリレートを含有させたもの(実施例1)であっても、高いアスピリン残存率を示し、保存安定性が実質的に損なわれていないことが分かる【0051】これに対して、アスピリンを含有するアクリル系粘着基剤層を設けた経皮吸収貼付剤(比較例1及び2)は、初期段階での保存安定性は良好であるけれども、6ケ月経過後には、アスピリンの加水分解が急速に進んでいる。特に、経皮吸収促進剤としてプロピレングリコールモノカプリレートを含有させたもの(比較例2)は、6ケ月経過後のアスピリン残存率が約30重量%にまで低下しており、保存安定性が著しく劣るものである。【0052】アスピリンを含有するSIS系粘着基剤層を設けた経皮吸収貼付剤(比較例3及び4)は、図3に示すように、アスピリンの皮膚透過性(経皮吸収性)が不充分であり、経皮吸収促進剤としてプロピレングリコールモノカプリレートを含有させたもの(比較例4)でも、経皮吸収性は改善されていない。【0053】 また、図3に示すように、本発明のアスピリン含有経皮吸収貼付剤(参考例1及び実施例1)は、アスピリンの経皮吸収性が良好であり、経皮吸収促進剤としてプロピレングリコールモノカプリレートを含有させたもの(実施例1)は、アスピリンの経皮吸収性が顕著に向上していることが分かる。【0054】一方、図3に示すように、アクリル系粘着基剤を用いた場合(比較例1及び2)は、アスピリンの経皮吸収性に優れるものの、表2に示すように、保存安定性が不充分であるか、著しく劣っている。【0055】【発明の効果】本発明によれば、粘着基剤層中に薬効成分としてアスピリンを含有する経皮吸収貼付剤であって、アスピリンの保存安定性と経皮吸収性が共に優れた経皮吸収貼付剤が提供される。本発明の貼付剤は、アスピリンを経皮吸収させるため、経口投与に伴う消化管障害などの副作用が抑制される。また、本発明の貼付剤は、皮膚に貼付するだけでアスピリンを投与することができるため、適用が簡単かつ容易である。【0056】さらに、本発明の貼付剤は、アスピリンを持続的に経皮吸収させることができるため、薬効の持続性に優れている。しかも、本発明の貼付剤は、保存安定性に優れているため、アスピリンの含有量の変動が少なく、投与量を精密に制御することができる。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、本発明のアスピリン含有経皮吸収貼付剤の構造を示す断面略図である。【図2】図2は、ラットの皮膚に対するアスピリン透過性を測定するのに使用した横型拡散セルの断面略図である。【図3】図3は、実施例及び比較例で作製した経皮吸収貼付剤のラットの皮膚に対するアスピリンの経皮吸収性を示すグラフである。【符号の説明】1:支持体2:アスピリン含有シリコーン粘着基剤層3:剥離紙4:経皮吸収貼付剤5:ラットの皮膚6:採取口7:レシーバー液8:マグネット攪拌装置9:レシーバー槽10:横型拡散セル 支持体上に、アスピリンを含有するシリコーン系粘着基剤層を設けたことを特徴とするアスピリン含有経皮吸収貼付剤であって、(i)シリコーン系粘着基剤層が、経皮吸収促進剤としてプロピレングリコール脂肪酸エステルのみをさらに含有し、かつ、(ii)アスピリン含有経皮吸収貼付剤をアルミニウム包材に封入し、40℃、75%RHの恒温槽で保存し、経時的に取り出して、粘着基剤中のアスピリン含有量を定量し、そして、アスピリン含有経皮吸収貼付剤の粘着基剤中のアスピリン初期含有量に対するアスピリン残存率(重量%)を求める測定方法で測定し、恒温槽に6ヶ月以上保存しても、初期値に対するアスピリンの残存率が90重量%以上であるアスピリン含有経皮吸収貼付剤。


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