タイトル: | 特許公報(B2)_架橋シリコーンゴムの分解方法 |
出願番号: | 2001254221 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 33/44,C08J 11/10,C08L 81/00 |
鈴木 康弘 鈴木 京子 JP 4249917 特許公報(B2) 20090123 2001254221 20010824 架橋シリコーンゴムの分解方法 矢崎総業株式会社 000006895 瀧野 秀雄 100060690 松村 貞男 100108017 鈴木 康弘 鈴木 京子 20090408 G01N 33/44 20060101AFI20090318BHJP C08J 11/10 20060101ALI20090318BHJP C08L 81/00 20060101ALN20090318BHJP JPG01N33/44C08J11/10C08L81/00 G01N 33/00 C08J 11/10 JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) CAplus(STN) 特開2000−327832(JP,A) 特開2001−049026(JP,A) 特開平09−176364(JP,A) 特開昭59−179537(JP,A) 1 2003066032 20030305 10 20050915 海野 佳子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、架橋シリコーンゴムの再生方法に関し、具体的に架橋シリコーンゴムからなる製品を再利用するために分解する技術に関する。【0002】【従来の技術】架橋シリコーンゴムは耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れているため、耐熱パッキン、耐油パッキンなどの広い分野で用いられてきたが、最近のリサイクル、資源の有効利用の見地からこれら架橋シリコーンゴムの再生利用が試みられるようになってきた。【0003】再生利用の基本的な方法としては、架橋シリコーンゴムを水やアルコールなどの共存下で加熱・加圧下で比較的低分子量になるように分解し、得られた分解物を新しい加工シリコーンゴム製品製造工程で用いられる原料の一部として用いると云うものであり、従来の技術で、いかに効率的に分解するか、また、原料として未使用の原料と混合して用いたときの引張伸び、強さなどの性能低下をいかに防止するかについて様々な検討が行われてきた。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明者等もこのような課題を解決すべく、すでに特開2000−327832公報、特開2001−49026公報等で提案したように、水・アルコール混合溶媒を用いる系について検討を行ってきた。【0005】その過程で、ある条件で得た架橋シリコーンゴム分解物を添加した場合、未使用原料100%からなる製品よりもさらに機械的性能が向上すると云う知見が得られた。【0006】すなわち、水・アルコール混合溶媒を用いて加圧下で行う架橋シリコーンゴムの分解方法に関し、分解温度T(℃)及び分解時間t(分)との間の関係が次式(i)を満足するように行うことにより引張伸びが向上し、さらに、式(ii)を満足するように行うことにより引張伸びと引張強さとが向上することを見いだした。【0007】【数1】3×1049T-20.086 ≦ t ≦ 1040T-15.976 ……(i)(ただし Tは240℃以上260℃以下)【0008】【数2】3×1049T-20.086 ≦ t ≦ 3×1034T-13.722 ……(ii)(ただし Tは240℃以上260℃以下)【0009】なお、これら特定の条件で分解を行った架橋シリコーンゴム分解物を添加した場合、未使用原料100%からなる製品よりも機械的性能が向上する理由についての詳細は不明ではあるが現状下記のように考察されている。【0010】すなわち、水・アルコール混合溶媒中での本発明に係る特定条件による分解では、末端官能基として珪素元素にアルコキシ基が結合した構造となると考えられる。このように末端にアルコキシ基が結合した分子(本発明により得られた架橋シリコーンゴム分解物)は、上記のように水酸基が結合したものに比して反応性に富むため、未使用原料と混合し、架橋成形した場合に、未使用の原料由来の架橋以外にこの本発明により得られた架橋シリコーンゴム分解物に由来する架橋が生じ、物性の向上に寄与するものと考えられている。【0011】しかしながら、上記知見はビーカースケールの実験で得られた結果であり、かつ、分解条件はかなりの高温、高圧となるため実際の工業的実施ではいくつかの技術的ハードルが予想される。【0012】その最大のものはスケールアップ時の反応容器内の温度制御であると予想される。スケールアップでの条件出し及び工業的実施後の品質管理には、現状では、得られた分解物を用いてサンプルを成形し、そのサンプルの機械的性能を評価する必要がある。【0013】しかしながら、このような評価には時間がかかるため実用性に乏しく、迅速な分解物の評価方法が求められている。ここで、架橋シリコーンゴムの分解物の分子量を液クロマトグラフィーで調べることにより、評価が可能であると予想されたが、これら架橋シリコーンゴム製品は後述するように粉末シリカが混入しているために液クロマトグラフィーによる直接分析ができない。【0014】 すなわち、本発明は、上記した問題点を改善する、すなわち、水・アルコール混合溶媒を用いて加圧下で行う含シリカ架橋シリコーンゴムの分解方法において、分解反応容器内の温度制御が多少不完全な場合であっても、未使用の原料への添加により未使用原料からのみなる架橋シリコーンゴム製品よりも機械的性能の優れた製品を得ることができる架橋シリコーンゴム分解組成物を得ることができる含シリカ架橋シリコーンゴムの分解方法を提供することを目的とする。【0015】【課題を解決するための手段】 本発明の架橋シリコーンゴムの分解方法は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り水・アルコール混合溶媒を用いて加圧下で行う架橋シリコーンゴムの分解方法に関し、架橋シリコーンゴム分解組成物をノルマルヘキサンで抽出したときの抽出率が40%以上となるまで分解することを特徴とする架橋シリコーンゴムの分解方法である。このような構成により、分解反応容器内の温度制御が多少不完全な場合であっても、未使用の原料への添加により未使用原料からのみなる架橋シリコーンゴム製品よりも機械的性能の優れた製品を得ることができる架橋シリコーンゴム分解組成物を得ることができる。【0017】【発明の実施の形態】本発明の架橋シリコーンゴムの分解方法において、分解反応は水・アルコール混合溶媒存在下で行うことが必要であり、アルコールとしては反応性や水との相溶性が高く、沸点が低いためメタノールであることが望ましい。【0018】水・アルコール混合溶媒の混合比としてはアルコールの含有量が少なくとも20重量%以上であることが、迅速な分解を可能とするために望ましい。【0019】本発明の架橋シリコーンゴムの分解方法により得られた架橋シリコーンゴム分解物は残留溶媒がある場合には充分に除去した後、未使用のシリコーンゴム原料に対して通常、20重量%以下となるように添加される。20重量%超であると機械的性能の向上効果が得られにくくなる。【0020】本発明の架橋シリコーンゴムの分解方法により得られた架橋シリコーンゴム分解物は再生前の架橋シリコーンゴムには通常、粉末シリカ(Si02)が配合されており、このシリカは上記架橋シリコーンゴムの分解方法によっても変化しないため、架橋シリコーンゴム分解物中に混合しているので、特に必要ない限り、シリカをさらに配合する必要はない。【0021】これら方法で得た分解組成物は溶媒で抽出する。用いる溶媒としては、ポリジメチルシロキサンと比誘電率の値が近く、抽出後、除去が容易なものが望ましい。このようなものとして、ノルマルヘキサンやトルエンなどが挙げられるがこの限りではない。溶媒の使用量は充分な抽出ができる程度で、かつ、経済的な量となるよう予め予備検討するして定める。【0022】【実施例】以下に本発明の実施例について具体的に説明する。分解は撹拌装置を備えた容量500mlのオートクレーブに、ポリジメチルシロキサンからなる架橋シリコーンゴムシート(150mm×150mm×3mm)と、メタノール・水混合溶媒(メタノール160mlと蒸留水40mlとを混合して調製)とを仕込んで行った。【0023】分解後、得られた架橋シリコーンゴム分解物(粉末状シリカとの混合物)を未架橋の未使用シリコーンゴム(シリコーン油含有のもの、この未使用シリコーンゴム(100%)を架橋してなる製品の硬度はデューロメータA30±3程度となる)に対して重量比10:100となるように混合し、白金系触媒を必要量添加して170℃・5分間、7.8〜9.81MPa(80〜100kgf/cm2)の加圧プレス下で架橋を行い、シート状のサンプルを作製した。【0024】得られたシートを用いてJIS K6251に準拠して、引張伸び及び引張強さを調べた。これらを未使用原料からのみなるサンプルA(シート作製条件は同じ)における機械的性能測定結果とともに表1に示す。なお、評価結果のうち、コントロールであるサンプルAより高い性能を示した値には下線を付した。【0025】さらに、これら評価結果について、分解温度T(℃)と分解時間t(分)との関係を示すグラフである図1において、引張伸び及び引張強さがともにサンプルAの値より高くなったものを「◆」、引張伸びがサンプルAの値より高くなったものを「●」としてプロットした。【0026】【表1】【0027】【表2】【0028】表1に示すように、「◆」及び「●」の範囲、すなわち下記式(i)が満足される範囲で引張伸びがサンプルAの値より高くなり、「◆」の範囲、すなわち下記式(ii)が満足される範囲ではさらに引張強さもコントロールであるサンプルAの値より高くなることが判る。【0029】【数3】3×1049T-20.086 ≦ t ≦ 1040T-15.976 ……(i)(ただし Tは240℃以上260℃以下)【0030】【数4】3×1049T-20.086 ≦ t ≦ 3×1034T-13.722 ……(ii)(ただし Tは240℃以上260℃以下)【0031】なお、表1及び表2より理解できるようにいずれの温度の分解においても、分解の進行とともに伸び、強さともに向上し、コントロールでの値よりも高くなるが、さらに分解が進むと、強さが低下し、コントロールの強さよりも低くなる。【0032】また、上記分解組成物について抽出率を調べた。抽出溶媒としてはノルマルヘキサン300mlを分解組成物約6g(xg)とともに共栓付フラスコに入れて、消費電力120W、発信周波数38kHz、高周波電力80Wの器具を用いて3時間超音波振動を与えた。【0033】30分間静置し、不溶分を沈殿させた後、フラスコ内の上澄み100mlを円心沈殿管に分取し、上部が透明になるまで遠心分離処理を行った(最大遠心加速度2220G(21800m/s2)の遠心分離装置で30分程度の処理)。【0034】遠心分離処理後、試料の入った遠心分離管を振動を与えないようにしながら恒温槽(25℃)内に移して静置し、その上澄み50mlを注意深くフラスコに分取した。【0035】次いで、ロータリエバポレータを用いて減圧下で溶媒を除去し、さらに、真空ポンプを用いて残留溶媒を除去し、残留分からノルマルヘキサン抽出成分の重量(yg)を調べ、式(iii)より抽出率を計算した。【0036】【数5】抽出率(%)=y(抽出成分の重量)×6/x(分解組成物の重量)×100……(iii)【0037】これら方法で調べた抽出率を表1及び表2に併せて示す。ここで、各分解組成物を併用して作製した試験片の伸びと抽出率の関係を図2に示す。【0038】図2により抽出率が45%越となるように分解された分解組成物を併用して作製した架橋シリコーンゴム製品の引張伸びは未使用原料からなる架橋シリコーンゴム製品の引張伸び(788.7%)より高い値となること、また、高い引張伸びを与える分解組成物をその抽出率により評価することができることが判る。【0039】また、各分解組成物を併用して作製した試験片の強度と抽出率の関係を図3に示す。ただし、分解が進行して強さの向上があって、コントロール品より高い値が得られるまでの、240℃では分解では30〜60分、250℃での分解では5〜35分、及び260℃での分解では5〜20分での分解組成物を併用した架橋シリコーンゴム成形物での結果のみをプロットした。【0040】図3により抽出率が40%越となるように分解された分解組成物を併用して作製した架橋シリコーンゴム製品の引張強さは未使用原料からなる架橋シリコーンゴム製品の引張強さ(6.015MPa)より高い値となること、また、高い引張強さを与える分解組成物をその抽出率により評価することができることが判る。【0041】なお、上記分解組成物を併用して作製した架橋シリコーンゴム製品の引張強さが、分解がある程度以上進むと低下する理由の裏付けとして、上記で得たノルマルヘキサン抽出成分(粉末シリカが除去されている)についてそれらの平均分子量を高速液体クロマトグラフィーにより調べた。すなわち、表3に示す条件で、予め各種分子量のポリスチレンで作成した検量線を用いて調べた。【0042】【表3】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━溶媒 :トルエンカラム :ウォーターズ(Waters)社製トルエン用HR5Eカラム温度 :40℃流速 :0.5ml/min検出器 :示差屈折計サンプル前処理 :0.5μm径PTFEフイルターでの濾過━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【0043】これら分子量測定結果を表1及び表2に併せて示す。表1及び表2より、抽出率は平均分子量と相関していることが判る。【0044】なお、これらのことより、水・アルコール混合溶媒での加圧下で行う分解により、当初はアルコールとの反応により官能基が導入されてこれらを分解物を併用する製品の機械的性能を向上させるが、さらに分解が進むと分子量が低下して、物性低下が大きくなりこれら官能基の強度への寄与が少なくなる、すなわち、架橋ゴム内部では高分子鎖同士の接点の数が多いほど高い物性強度を保持することになるが、分解が進行するとゴム内部の主鎖が低分子量化してしまい、互いに絡み合う接点箇所が減少するために強度が低下してしまうと考えられる。【0045】【発明の効果】本発明の架橋シリコーンゴム分解組成物の評価方法により、分解組成物の迅速な評価が可能となり、工業規模の架橋シリコーンゴム分解にも、サンプルを作製する必要がなく、評価可能となる。また本発明の架橋シリコーンゴムの分解方法は、スケールアップジの架橋シリコーンゴム分解に対応できる優れた架橋シリコーンゴムの分解方法である。【図面の簡単な説明】【図1】分解温度T(℃)と分解時間t(分)との関係を示すグラフである。【図2】各分解組成物を併用して作製した試験片の伸びと抽出率の関係を示すグラフである。【図3】各分解組成物を併用して作製した試験片の強度と抽出率の関係を示すグラフである。 水・アルコール混合溶媒を用いて加圧下で行う架橋シリコーンゴムの分解方法に関し、架橋シリコーンゴム分解組成物をノルマルヘキサンで抽出したときの抽出率が40%以上となるまで分解することを特徴とする架橋シリコーンゴムの分解方法。