タイトル: | 特許公報(B2)_抗骨粗鬆症作用を発揮する骨形成増進組成物 |
出願番号: | 2001246819 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 36/02,A23L 1/30,A61P 19/10 |
山口 正義 鈴木 敏博 JP 3749978 特許公報(B2) 20051216 2001246819 20010711 抗骨粗鬆症作用を発揮する骨形成増進組成物 静岡県 590002389 山口 正義 鈴木 敏博 20060301 A61K 36/02 20060101AFI20060209BHJP A23L 1/30 20060101ALI20060209BHJP A61P 19/10 20060101ALI20060209BHJP JPA61K35/80 ZA23L1/30A61P19/10 A61K 35/80 A23L 1/30 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) JICSTファイル(JOIS) MEDLINE(STN) 宮原龍郎 他,食用藻類由来新規硫酸化多糖の骨吸収抑制作用,日本糖質学会年会要旨集,2000年,Vol21st,p.105 2 2003026597 20030129 7 20010711 鶴見 秀紀 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、アカモク(ホンダワラ属)の乾燥物あるいは水抽出成分を有効成分とし、抗骨粗鬆症作用を発揮する骨形成増進組成物に関する。【0002】【従来の技術】骨粗鬆症は、骨量が減少することによって起こる、骨がもろくなる病態である。骨粗鬆症になると、骨折したり、激しい痛みなどを伴うだけでなく、特に老人の寝たきりの原因ともなるため、高齢化社会に於ける生活の質の向上という観点からも、有効な治療法が求められている。骨粗鬆症の治療薬としては活性型ビタミンD3、女性ホルモン(エストロゲン)、カルシトニン、イプリフラボン、ビスホスフォネート類が臨床に用いられ、最近になって、ビタミンK2に代表されるポリイソプレノイド誘導体の破骨細胞形成抑制作用に基づく抗骨粗鬆症剤(特開平7−215849号公報)も開発されている。【0003】一方、最近では、骨粗鬆症は発症してから治療するのは困難であることから、予防に努めることが重要視されている。そのために、若年期から骨量を増やすことが不可欠で、日常的に骨形成に必要な栄養成分や、骨形成を促進する食品を積極的に摂取するようにしなければならないことが深く認識されるようになった。骨を強化する食品としては、現在、主にカルシウムやマグネシウム、ビタミンDが利用されている。また、カルシウムの腸管からの吸収を促進するカゼインホスホペプチドなども利用されている。さらには、側鎖長の違いによりメナキノン(MK)−1〜14として知られている食品のビタミンK2を利用することも考えられている。【0004】【発明が解決しようとする課題】ところが、骨粗鬆症の治療薬として使用されている活性型ビタミンD3、女性ホルモン(エストロゲン)、カルシトニンは副作用や過剰症があることが判り、問題となっている。最近になって、安全性の高い骨粗鬆症治療薬としてビタミンK2が利用されるようになったが、治療に使うビタミンK2量は一日に45mgと多くの量を摂取しなければならず、この場合軽微ながら、時に腹痛、悪心、嘔吐、発疹、頭痛などの副作用が現れることがある。また、イプリフラボンやビスホスフォネートは長期間に渡って使用した場合の有効性、安全性が不明確である。このように種々の骨粗鬆症治療薬が開発されているにもかかわらず、長期間にわたって投薬が行われるために副作用等による患者の負担が大きく、必ずしも満足のいく治療効果が発揮されていない。【0005】一方、カルシウム等の食品によって骨組成を補強する方法も、骨量増加効果あるいは骨強度を高める効果は十分なものとはいえない。また、ビタミンK2についてもビタミンK2を1ppm以上含む食品は存外少なく、身近な食品ではわずかに納豆(ビタミンK2濃度、数〜数十ppm)にその例を見いだすのみである。その納豆によっても骨粗鬆症治療に有効なビタミンK2を摂取しようとした場合、納豆を一日に数百g以上を食べなければならず、嗜好上問題がある。そこで、ビタミンK2を強化した食品の開発が試みられている。しかし、治療薬のように一日45mg摂取させると、上述したように腹痛、発疹などの副作用が現れることがあるため、これより少ない量しか使用することができないが、量を減らすと効果が減弱してしまう。【0006】栄養指導以外に骨に荷重をかけて、骨形成を促進するために運動が推奨されているが、現実には、高齢になると体力の低下や気力の低下により運動不足になりやすい傾向がみられる。また、当然ながら、運動だけでは骨量、骨強度を十分に維持、増加させることはできない。このように、骨粗鬆症の予防、あるいは治療効果が優れた安全な機能性食品の開発が望まれているにもかかわらず、現状では有効性と安全性をともに解決した製品が開発されていない。【0007】【課題を解決するための手段】本発明の目的は、上記課題を解決しうる有効な骨量増進組成物を提供することにある。本発明者らは、上記の目的を解決するために鋭意研究してきた。その結果、有効成分として海藻であるアカモク(ホンダワラ属)あるいはその水抽出物を与えることにより、ラット大腿骨に対して、優れた骨量増進作用が発揮されることを発見し、骨粗鬆症の予防と治療のための機能性食品あるいは組成物を作る場合に、有効な抗骨粗鬆症作用を発揮する骨量増進組成物を提供できることを見いだした。すなわち、本発明は、アカモク乾燥物あるいはその水抽出物を有効成分とし、抗骨粗鬆症作用を発揮する骨量増進組成物を提供するものである。アカモク乾燥物及びその水抽出物が骨組織に対してどの様な機構で作用するのかは定かでないが、おそらくアカモク乾燥物あるいはその水抽出物が骨形成促進作用を有するものと考えられる。これまでに、アカモク乾燥物あるいはその水抽出物に関して、骨増強作用について全く知られていない。【0008】【発明の実施の形態】本発明に使用されるアカモク乾燥物は、アカモク(Sargassum horneri)の全体を凍結真空乾燥した後、粉末化することにより得ることができる。また、アカモク(Sargassum horneri)水抽出物は、アカモクに蒸留水を加えて粉砕した後、その水溶性成分を分取することにより得ることができる。【0009】アカモクの好ましい乾燥法の具体例としては、アカモクを蒸留水で洗浄後、凍結真空乾燥し、ミキサーで粉末化して、乾燥粉末を得る。また、アカモクからの好ましい水抽出法の具体例としては、アカモクに3倍量の蒸留水を加えて磨砕し抽出を行う。これを遠心分離して抽出物を得る。上記抽出物は、そのままで骨増強剤の有効成分として用いることができるが、当該抽出物を更に、適当な手段、例えばシリカゲルカラムクロマト法、逆相カラムクロマト法、ゲルろ過クロマトグラフ法などにより活性の高い画分を分画して用いることもできる。かくして得られるアカモク乾燥物及びアカモタ水抽出物は、骨量増進作用を有する。したがって、アカモク乾燥物あるいはアカモク抽出物を有効成分として含有する製剤は、骨量の増進に有用である。本発明によって作られた組成物を摂取する場合、症状、年齢などにより摂取量は異なるが、特に限定されない。通常は、アカモク乾燥物は1日あたり1〜5g/Kg体重、好ましくは10〜1000mg/Kg体重の範囲で利用されることが推奨される。また、アカモク水抽出物(乾燥重量)は1日あたり、0.1〜1000mg/Kg体重、好ましくは1〜100mg/Kg体重の範囲で利用されることが推奨される。【0010】本発明による組成物は、有効成分としてアカモク乾燥物あるいはアカモク水抽出物が含まれていることが重要であって、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、銅などのミネラルや、ビタミンD、ビタミンE、ユビキノンなどのビタミン類、さらにポリフェノール類、イソフラボノイド類やフラボノイド類、カゼインカルシウムホスホネートなどのペプチド類、その他、タンパク質や脂質など通常の食品成分や食品添加物が含まれていてもなんら構わない。このほか、製剤にあたっては製薬上許容される担体、助剤等を用いて、粉剤、粒剤、錠剤、散剤等とすることができる。次に、本発明を具体的に説明するため、以下に実施例を掲げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。【0011】【実施例】実施例1 粉末素材[処方]原料 配合量1)アカモク乾燥物 15g2)トウモロコシデンプン 500g上記原料を高速ミキサーにて混合し均一な粉末が得られた。この粉末は様々な食品に混合可能である。【0012】実施例2 飲料牛乳1リットルに対して、0.2gのアカモク水抽出物、ココアバウダー0.5g、砂糖30g、ショ糖脂肪酸エステル0.5gを加えて激しく撹拌してココア味の乳飲料が得られた。得られた飲料は、味が良く飲みやすいため、日常的に飲食できる。【0013】実施例3 錠剤[処方]原料 配合量アカモク水抽出物 80mg飲用牛骨粉 100mg乳糖 150mgパラチノース 30mg還元麦芽糖 10mgトウモロコシデンプン 10mgセルロース粉末 10mgビタミンD3 201U(国際単位)以上の配合比率で、各原料を混合し打錠して錠剤を得た。得られた錠剤は、味が良く、携帯性に優れており、容易に持ち運んで摂取することが可能である。【0014】【発明の性能試験】試験例 骨量増進効果試験[A.アカモク乾燥物の性能試験]アカモク乾燥物の骨量増進効果について検討するために、アカモクの凍結真空乾燥粉末をラットに経口投与して、骨カルシウム量及び骨アルカリファスファターゼ活性を測定した。【0015】[A.1 実験方法の説明]アカモク(Sargassum horneri)を蒸留水で洗浄後、凍結乾燥し、これをミキサーで粉砕することにより、アカモクの乾燥物(試料1)を得た。【0016】試料1の骨量増進効果試験は、幼若雄性ラット(4週齢)に経口投与して7日間飼育し、最後の投与から24時間後に、大腿骨を摘出し、骨組織中のカルシウム量及び骨組織のアルカリフォスファターゼ活性を測定することにより行った。骨アルカリフォスファターゼは、造骨細胞(骨芽細胞)に存在し、骨形成に深く関与している。このように、飼育ラットの大腿骨中の骨カルシウム量を測定する方法及び骨アルカリフォスファターゼ活性を測定する方法は、骨粗鬆症の改善効果の評価法の一つとして研究されている。飼育は、ラットに固形飼料(1.1%カルシウム、1.1%リン、0.012%亜鉛含有)及び蒸留精製水を自由に摂取させ、7日間、1日1回試料1を経口投与して行った。【0017】3gの試料1を1日当たり1回幼若ラットに経口投与し、7日間飼育後、大腿骨の骨カルシウム量及び骨アルカリフォスファターゼ活性を対照(コントロール)と比較した。カルシウム量は、大腿骨乾燥重量あたりのカルシウム量で表した。カルシウム量は、乾燥した大腿骨を120℃、5時間、2mlの硝酸溶液で分解し、カルシウムCテスト(和光純薬社製)で測定した。骨アルカリフォスファターゼ活性は、大腿骨を破砕し遠心分離した上清を酵素液とし、p−ニトロフェノールリン酸2ナトリウムを基質として測定した。酵素反応は、酵素液と基質を加えた反応液を30℃で30分間保温して行い、0.05N水酸化ナトリウム10ml加えて反応を停止させた。骨アルカリフォスファターゼ活性は、1分間の酵素反応によって遊離したp−ニトロフェノール(n mol)量を1mgの骨タンパク質あたりで表した。【0018】[実験結果の説明]幼若ラットを用いて、アカモク乾燥物を7日間経口投与して飼育し、摘出した大腿骨の骨カルシウム量を測定した結果を図1に示し、骨アルカリフォスファターゼ活性を図2に示す。図1に示したように、アカモク、ワカメ、アラメ、オオバキントキに骨カルシウム増加効果(統計的に有意差あり、危険率1%以下;p<0.01)が認められた。図2に示したように、アカモクとマクサに骨アルカリフォスファターゼ活性の増加効果(p<0.01)が認められた。試験した海藻の中で、アカモク乾燥粉末だけに、骨カルシウム増加効果と骨アルカリフォスファターゼ活性増加効果の両方が認められた。【0019】[B.アカモク水抽出物の性能試験]アカモク(Sargassum horneri)水抽出物の骨量増進効果について検討するために、アカモクの水抽出物を培地に加え、ラットの大腿骨を培養して、培養後の大腿骨の骨カルシウム量及び骨アルカリファスファターゼ活性を測定した。【0020】[B.1 実験方法の説明]アカモクに3倍量の精製蒸留水を加えてホモジネートした後、これを遠心分離(8000/rpmで20分間)し、上清と沈澱に分けた。この上清を凍結真空乾燥することにより、アカモク水抽出物の凍結真空乾燥試料(試料2)を得た。【0021】試料2の骨量増進効果試験は、雄性ラット(4週齢)の大腿骨を切り出して、培地の入った35mm培養皿に移し培養後、骨組織中のカルシウム量を測定することにより行った。このように、ラット大腿骨の培養組織中のカルシウム量及び骨組織アルカリフォスファターゼ活性を測定する方法は、骨粗鬆症の改善効果の評価試験法の一つとして研究されている。培地は、0.25%の牛血清アルブミンと抗生物質(100単位ペニシリンと100μgストレプトマイシン/ml培地)を含む2.0mlのダルベッコ改変イーグル培地(グルコース濃度4.5g/dl)を使用した。組織培養は、炭酸ガスインキュベーターを用いて、37℃、水飽和雰囲気下で5%炭酸ガスおよび95%空気の条件で48時間行った。【0022】培地に、アカモク水抽出物の凍結乾燥試料を加え、培養後の骨組織中のカルシウム量及び骨アルカリフォスファターゼ活性を対照(コントロール)と比較した。カルシウム量は、骨組織乾燥重量あたりのカルシウム量で表した。乾燥重量は、骨組織を100℃にて5時間乾燥し、測定した。カルシウム量は、乾燥した骨組織を120℃にて5時間、2ml硝酸溶液により分解し、カルシウムCテスト(和光純薬社製)で測定した。骨アルカリフォスファターゼ活性は、大腿骨組織を破砕し遠心分離した上清を酵素液とし、p−ニトロフェノールリン酸2ナトリウムを基質として行った。酵素反応は、酵素液と基質を加えた反応液を30℃で30分間保温して行い、0.05N水酸化をナトリウム10ml加えて反応を停止させた。骨アルカリフォスファターゼ活性は、1分間の酵素反応によって遊離したp−ニトロフェノール(n mol)を骨タンパク質量(mg)あたりで表した。【0023】[B.2 実験結果の説明]幼若雄性ラットの大腿骨組織を用いて、培養液にアカモク水抽出物を添加し、48時間後のカルシウム量を測定した結果を図3に示し、骨アルカリフォスファターゼ活性を測定した結果を図4に示す。図3に示すように、対照と比較して、アカモク水抽出物を25μg/ml及び50μg/mlとなるように培地に加えることにより有意(p<0.01)に骨組織中カルシウム量が増加した。図4に示すように、骨アルカリフォスファターゼ活性も、25μg/ml及び50μg/mlとなるように培地に加えることにより有意(p<0.01)に増加した。このように、アカモク水抽出物は、ラット大腿骨の組織培養系において、骨カルシウム増加効果と骨アルカリフォスファターゼ活性増加効果を示した。【0024】【発明の効果】以上記述したように、本発明の抗骨粗鬆症組成物は、食経歴の長い海藻であるアカモクから調整した乾燥物及び水抽出物であるため安全であり、若い時期から日常的に予防目的で摂取することができるので、個人の老後の生活の質を守るだけでなく、高齢化社会の医療費削減への貢献が期待できる。【0025】【図面の簡単な説明】【図1】図1は、幼若ラットの大腿骨中のカルシウム量に対するアカモク乾燥物の経口投与の効果を示す図である。【図2】図2は、幼若ラットの大腿骨中の骨アルカリフォスファターゼ活性に対するアカモク乾燥物の経口投与の効果を示す図である。【図3】図3は、ラット大腿骨中カルシウム量に対するアカモク水抽出物の添加効果を示す図である。【図4】図4は、ラット大腿骨中の骨アルカリフォスファターゼ活性に対するアカモク水抽出物の添加効果を示す図である。 アカモク(ホンダワラ属)の乾燥物を有効成分とし、抗骨粗鬆症作用を発揮する骨形成増進組成物 アカモク(ホンダワラ属)の水抽出成分を有効成分とし、抗骨粗鬆症作用を発揮する骨形成増進組成物