生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_水中エステル化反応方法
出願番号:2001245982
年次:2006
IPC分類:C07C 67/08,C07B 61/00,C07C 69/003,C07C 69/24,C07C 69/58,C07C 69/612,C07C 69/618,C07C 69/75


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小林 修 眞鍋 敬 JP 3746694 特許公報(B2) 20051202 2001245982 20010814 水中エステル化反応方法 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 西澤 利夫 100093230 小林 修 眞鍋 敬 20060215 C07C 67/08 20060101AFI20060126BHJP C07B 61/00 20060101ALI20060126BHJP C07C 69/003 20060101ALI20060126BHJP C07C 69/24 20060101ALI20060126BHJP C07C 69/58 20060101ALI20060126BHJP C07C 69/612 20060101ALI20060126BHJP C07C 69/618 20060101ALI20060126BHJP C07C 69/75 20060101ALI20060126BHJP JPC07C67/08C07B61/00 300C07C69/003 EC07C69/24C07C69/58C07C69/612C07C69/618C07C69/75 Z C07C 67/08 C07C 69/24-C07C 69/612 特開平11−244705(JP,A) Synlett,1999年,No.9,1401−1402 2 2003055302 20030226 10 20010814 柿澤 恵子 【0001】【発明の属する技術分野】 この出願の発明は、水中でエステル化反応を行う方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、界面活性剤構造を有する触媒と反応基質を水中で混合し、高い収率でエステル化反応を行う方法に関するものである。【0002】【従来の技術とその課題】近年、環境や人体への配慮から、安価で安全な媒体として水が注目されている。しかし、有機溶媒を用いることなしに、水媒体中で有機反応を行うことには様々な問題があり、困難と考えられてきた。主な問題点としては、多くの有機化合物が水に溶解しないこと、触媒等の試薬や反応中間体の多くが微量の水によっても劣化・分解されてしまうことが挙げられた。【0003】発明者らはこれまでに、水媒体中でのアルドール反応、アリル化反応、マンニッヒ反応、マイケル反応等の様々な有機合成法を可能とする界面活性ルイス酸触媒(LASC:例えば特開平11−244705)を報告している。また、発明者らは、ホウ素酸、界面活性剤、およびブレーンステッド酸の存在下、水媒体中で高収率かつ選択的にアルドール反応を行う方法をも見出し、報告している(例えば特願2001−075091)。これらの界面活性ルイス酸触媒や界面活性剤/ブレーンステッド酸触媒系は、いずれも、高い収率と選択性で生成物を与える点で重要である。【0004】一方、有機酸とアルコールのエステル化反応に代表されるような脱水反応は、一般に可逆的であり、生成する水を脱水剤により除去する、大過剰の反応基質を用いるなどの方法により反応平衡を脱水反応進行方向に傾けることが必要とされており、有機溶媒中で行われる。したがって、これまで脱水反応については、水媒体中で行うことは困難と考えられていたのが実情である。【0005】脱水反応を、収率高くかつ選択的に水中で行う方法が提供されれば、環境負荷が小さく、安価な方法として有用となると期待される。【0006】 そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解決し、水中において高い収率と選択性で生成物を与える水中でのエステル化反応方法を提供することを課題としている。【0007】【課題を解決するための手段】 この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、水中でエステル化反応を行う方法であって、少なくとも、界面活性剤構造を有するブレーンステッド酸と有機酸とアルコールを水中で混合することを特徴とする水中エステル化反応方法を提供する。【0008】 この出願の発明は、第2には、上記第1の水中エステル化反応方法において、疎水性のカルボン酸と親水性のカルボン酸との有機酸の混合物のうち疎水性のカルボン酸のエステルを選択的に合成することを特徴とする水中エステル化反応方法を提供する。【0010】【発明の実施の形態】発明者らは、これまで界面活性剤構造を有するルイス酸触媒やブレーンステッド酸触媒を用いた水中での炭素−炭素結合形成反応について報告している(例えばTetrahedron Lett. 1997, 38, 4559; Tetrahedron Lett. 1998, 39, 5389; J.Am.Chem.Soc. 2000, 122, 7202; Synlett 1999, 1401; Org. Lett. 1999, 1, 1965; Tetrahedron 2001, 57, 2537他)。そして、このような反応条件下では、これらの触媒と反応基質によりエマルジョン小滴が形成されていることが明らかにされている(例えばTetrahedron Lett. 1999, 40, 7831他)。発明者らは、このようなエマルジョン小滴中では、水媒体中においても疎水性場が形成されており、シリルエノレート等の水中で不安定な基質もが安定に存在しうることに着目し、さらなる鋭意研究を進めた結果、本願発明の水中脱水反応方法に至ったのである。【0011】図1にこの出願の発明の水中脱水反応方法の概念図を示した。この水中脱水反応方法では、まず、媒体である水(10)に少なくとも界面活性剤構造を有する触媒(1)と反応基質(2a、2b)を添加し、脱水反応を行う。このとき、反応基質(2a、2b)は、界面活性剤構造を有する触媒(1)によって形成されるミセル(11)内に取り込まれ、この疎水性反応場(12)において脱水反応が起こる。また、生成した水分子(3b)は、ミセル(11)内が疎水性であるために、この疎水性反応場(12)から除外され、ミセル(11)の外、すなわち水(10)媒体中に放出される。したがって、ミセル(11)内の疎水性反応場(12)における反応平衡は常に右方向となるのである。このとき、反応生成物(3a)は、食塩水等で洗浄し、界面活性剤構造を有する触媒(1)を除去すれば容易に精製、単離できる。【0012】図1に示されるようなミセル(11)構造は、界面活性剤構造を有する触媒(1)と反応基質(2a、2b)を水に添加し、混合することによって得られるものであるが、これらを混合する際に攪拌することにより懸濁したエマルジョンが得られ、内部に疎水性反応場(12)を有するエマルジョン小滴(11)が得られ、より好ましい。【0013】 この出願の発明の水中エステル化反応方法では、界面活性剤構造を有する触媒(1)としては、界面活性剤構造を付与した界面活性ブレーンステッド酸が考慮される。界面活性ブレーンステッド酸は、長鎖アルキル基を有するもの、例えばドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)が挙げられる。反応基質(2a、2b)としては、該触媒存在下でエステル化反応を起こす有機酸とアルコールであればよく、とくに限定されない。【0014】 この出願の発明の水中エステル化反応では、添加する界面活性剤構造を有する触媒(1)や反応基質(2a、2b)の濃度や添加量はとくに限定されない。反応基質(2a、2b)をそれぞれ等モル量添加し、それらに対し10モル%程度の界面活性剤構造を有する触媒(1)を用いれば、80%以上の収率が得られる。例えば、前記のとおりの水中エステル化反応では、反応基質(2a、2b)中のアルコールの量を有機酸の2倍モルとすることにより90%以上の高い収率が実現できる。【0015】 さらに、この出願の発明の水中エステル化反応では、反応温度や反応時間もとくに限定されない。この出願の発明の水中エステル化反応方法で用いられる触媒系は、室温〜60℃程度の低い反応温度でも高い反応性を示す点でも特徴的である。水中エステル化反応の反応時間は、反応温度に応じて変化できるが、48時間程度で十分に高い反応収率が得られる。【0016】以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。【0017】【実施例】<実施例1>ラウリル酸(0.25 mmol)を3−フェニル−1−プロパノール(0.50 mmol)とp−ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA、0.025 mmol, 10 mol%)の水溶液(1.5 mL)に添加し、40℃で48時間攪拌した。反応溶液は、白色に濁ったエマルジョンとなった。このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、粒径2〜8μmのミセルの形成が確認された。【0018】48時間経過後、NaHCO3を加えて反応を停止した。粗生成物を酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗浄してNa2SO4上で乾燥させた後、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製したところ、3−フェニルプロピルラウレート(化合物i)を収率89%で得た。【0019】化合物(i)の同定結果を表1に示した。【0020】【表1】【0021】また、同様の反応を、反応温度を30℃、および60℃として行ったところ、いずれの場合も80%以上の高い収率が得られることが確認された。<実施例2>実施例1と同様の方法で、表2に示した種々の反応基質を用いて次の化学式(I)の水中エステル化反応を行った。表2に生成物の収率を示した。【0022】【化1】【0023】【表2】【0024】また、各生成物を同定した結果を表3〜7に示した。【0025】【表3】【0026】【表4】【0027】【表5】【0028】【表6】【0029】【表7】【0030】<実施例3> 水中での選択的エステル化反応次の化学式(II)に従ってDBSAの存在下、ラウリル酸と酢酸の混合物を3−フェニル−1−プロパノールと水中で反応させたところ、3−フェニルプロピルラウレート(反応a)が選択的に得られた。【0031】【化2】【0032】さらに、種々の基質について同様に選択的エステル化反応を確認した(反応b、c)。また、非共役カルボキシル酸と芳香族または共役カルボキシル酸では、非共役カルボキシル酸が選択的にエステル化されることが確認された(反応dおよびe)。【0033】【表8】【0034】化合物(vii)および(viii)の同定結果を表9および10に示した。【0035】【表9】【0036】【表10】【0037】このような選択的エステル化反応は、これまで知られておらず、本願発明の方法に特有のものであった。<比較例1>p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをDBSAの替わりに用いて実施例1と同様の反応を行ったところ、ラウリル酸のエステル化は1%の収率しか得られなかった。【0038】これより、水中でのエステル化反応では、界面活性剤構造を有する触媒は、プロトンを有するブレンステッド酸であることが必要であることが示唆された。【0039】【発明の効果】 以上詳しく説明したとおり、この発明によって、水を媒体として高い収率と選択性でエステル化反応を行うことができる水中エステル化反応方法が提供される。このような水中エステル化反応方法は、従来の有機溶媒を大量に用いる方法に比べ、環境や人体への安全性が高く、安価であり、有用性が高く、様々なエステル化反応への適用も期待される。【図面の簡単な説明】【図1】この発明の水中脱水反応の概念を説明するための概略模式図である。【符号の説明】1 界面活性剤構造を有する触媒10 水11 ミセル12 疎水性反応場2a 反応基質2b 反応基質3a 反応生成物3b 生成水 少なくとも、界面活性剤構造を有する触媒と反応基質を水中で混合する、水中でエステル化反応を行う方法であって、界面活性剤構造を有する触媒はブレーンステッド酸であり、反応基質は有機酸とアルコールであることを特徴とする水中エステル化反応方法。 疎水性のカルボン酸と親水性のカルボン酸との有機酸の混合物のうち疎水性のカルボン酸のエステルを選択的に合成することを特徴とする請求項1の水中エステル化反応方法。


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