タイトル: | 特許公報(B2)_膜厚測定方法 |
出願番号: | 2001233728 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01B 11/06,G01N 21/45 |
中久木 秀樹 JP 3941432 特許公報(B2) 20070413 2001233728 20010801 膜厚測定方法 凸版印刷株式会社 000003193 中久木 秀樹 20070704 G01B 11/06 20060101AFI20070614BHJP G01N 21/45 20060101ALI20070614BHJP JPG01B11/06 GG01N21/45 A G01B11/00-11/30 G01N21/17-21/61 特開平8−338709(JP,A) 特開平4−320904(JP,A) 特開昭61−76905(JP,A) 1 2003042722 20030213 8 20050621 岡田 卓弥 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は分光干渉法により膜厚を非接触で測定する方法に関する。【0002】【従来の技術】分光干渉式による非接触膜厚測定が既に実用化され、各種薄膜の膜厚測定に使用されている。分光干渉式による非接触膜厚測定は膜に光を照射し、膜表面からの反射光と膜を透過して膜と基板境界面で反射して戻ってくる光を分光器で捕らえ、前者と後者の光の位相差により生ずる干渉を測定する。位相差は膜厚が変わって両者の光学距離が変わることで変化するので、膜の屈折率が分かれば膜厚が算出できる。しかし、これを例えば、液晶ディスプレイパネル部品であるカラーフィルタのカラーレジスト膜に適用しようとすると、以下の問題がある。分光干渉式による非接触膜厚測定に於いては、膜の屈折率を予め求めておいて膜厚測定装置にデータとして入力することが必要である。通常、フォトリソ工程で用いられるレジスト膜等は使用するレジストは固定されているので、予め何らかの方法で屈折率を求めておけば良い。【0003】しかし、カラーレジストの場合は、カラーフィルタが液晶ディスプレイパネルの色品質に決定的な影響を与える重要部品であるため、使用するカラーレジストの種類も多くなっている。従って、カラーレジストの場合、各カラーレジストの屈折率を容易に求められることが重要となる。エリプソメータ等の高価な装置を用いれば屈折率の算出が可能であるが、そのような装置で求めた屈折率を使用して膜厚測定装置にて膜厚測定を行っても実際の値とうまく一致しないという現象が見られる。これはエリプソメータと膜厚測定装置では光学系も異なり、屈折率の扱いも異なるからである。従って、膜厚測定装置自体が屈折率算出機能を持つのが望ましい。これまでそのような装置も存在したが、膜厚値が正しくなるように屈折率の設定値を調整する作業は煩雑で、カラーレジストのように多数の屈折率を求めることが必要な場合には適さない。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、その課題とするところは測定しようとする膜の屈折率を容易に求める機能を有する膜厚測定装置を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】分光反射率から干渉による極大、極小波長を全て求め、極大、極小値を与える波長に対応した仮の干渉次数を変えて膜厚を複数計算し、計算された複数の膜厚値のばらつきが一番小さい場合の干渉次数を真の干渉次数として、その干渉次数により算出された膜厚値の平均値を以って膜厚とすることを特徴とする膜厚測定方法であり、膜の屈折率を求める際に、膜厚既知のサンプルを測定し、仮の膜屈折率を使用して前記方法で干渉次数を算出し、得られた干渉次数と極大、極小波長値、膜厚値から極大、極小波長に於ける膜屈折率を複数ポイント算出し、それらを近似式で置き換えて膜の屈折率とすることを特徴とする膜厚測定方法を提供する。【0006】【発明の実施の形態】以下、本発明をカラーフィルタのカラーレジスト膜厚測定に適用した場合の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明の装置の概略構成を示している。本装置は光源部1、2分岐ファイバー2、対物レンズ3、分光器4、演算部5から成る。【0007】可視光域ではカラーレジスト中の顔料により光が吸収され、干渉が生じないので、光源には顔料による吸収の影響の少ない近赤外光を使用する。光源部1は電球10とカットフィルタ9を備える。電球10は近赤外域の光を効率よく放出するハロゲン電球を使用し、更に効率を高めるため、金コーティングリフレクタを使用するのが望ましい。カットフィルタ9は800nm以下の波長をカットし、感光性のあるカラーレジストに対してパターン露光前の膜厚測定を可能とすると同時に分光器の高次光が受光素子に入るのを防ぐ。【0008】2分岐ファイバー2は光源部1に接続している部分が投光用で分光器4に接続している部分が受光用である。それぞれ光ファイバー数100本を束ねたもので、途中でそれらが1本にまとめられている。この束の中で投光用と受光用の光ファイバー1本1本は入り交じって束ねられ、対物レンズ3に接続している面では均等に両方の光ファイバーが配置されるようになっている。また、光ファイバーは近赤外光を透過するようにGe(ゲルマニウム)ドープしたものなどを使用する。【0009】対物レンズ3により入射光が被測定物であるカラーレジストを塗布したガラス板8に集光される。対物レンズ3により、焦点深度以内のカラーレジストを塗布したガラス板8までの距離変動を吸収する。【0010】カラーレジストを塗布したガラス板8からの反射光は対物レンズ3、2分岐ファイバー2を経由して分光器4に入る。分光器4は回折格子、リニアアレイ等から成る分光器部6と分光器部6の制御と信号をデジタル変換する制御部7から成る。回折格子とリニアアレイ素子の組み合わせで使用する波長が決まるが、900〜1600nm程度の波長範囲を使用すれば、カラーレジストに含まれる顔料による吸収の影響を受けず、透明膜として扱えるので、一般的なカラーレジスト膜厚1〜3μm程度の測定には十分である。【0011】分光器4はパーソナルコンピュータ、キーボード、マウス、ディスプレイモニタ等から構成される演算部5に接続され、ここで、演算を行い膜厚値を算出する。また、分光器4の制御やユーザーインターフェイス処理を受け持つ。【0012】次に実際に膜厚を算出する手順を説明する。まず、分光反射率を計算する。反射率が既知の光学ガラスBK7等を予め本装置でリファレンスとして測定し、その分光反射強度を得る。続いて被測定物を測定しその分光反射強度から以下の(1)式で分光反射率Rsを計算する。Rs(λ)=(rs(λ)/rr(λ))×Rr(λ)―――――(1)ここで、rr(λ)とrs(λ)はリファレンスと被測定物の分光反射強度、Rr(λ)はリファレンスの分光反射率である。【0013】反射光は膜の表面で反射した光R1と、膜を透過して基板との境界面で反射して戻ってくる光R2から成る。R2は膜内を往復して戻ってくるのでR1との間に行路差がある。この行路差により生ずるR1とR2間の位相差がちょうど2πだと、強められ、ちょうどπだと、弱められる。また、光は光学的に疎な媒質を進行してきて密な媒質との境界面で反射を受けた時、位相がπ変化する。屈折率が空気1.0、膜1.6、ガラス基板1.5程度であるので、R1で位相はπ変化する。従って、垂直入射の場合、膜厚d、膜屈折率nで、光学的行路差2ndが波長λの整数倍の時、その波長の光は弱められて極小値が現れ、(整数+0.5)倍の時には極大値が現れる。【0014】つまり、干渉次数mを整数としてλが極小波長のとき、2nd=mλ――――(2)λが極大波長のとき、2nd=(m+0.5)λ――――(3)が成り立つ。従って、分光反射率波形から極大値又は極小値を与える波長を求めて、mとnを与えれば膜厚dが計算できる。d=mλ/2n(極小値の場合)――――(4)d=(m+0.5)λ/2n(極大値の場合)――――(5)ここで、mを求めるためには以下の手順を取る。1. 分光反射率波形から全ての極大値と極小値を取る波長(λ1、λ2、λ3、…)を求める。λ1、λ2、λ3、…の算出は分光反射率データを微分処理して得られるデータの符号が変わる部分が極値となる。更に具体的には符号が−から+に変わるのが極小値を与える波長で、+から−に変わるのが極大値を与える波長である。2. 1で得られた極大、極小値を与える波長リストに対して、一番短い波長に対して極小値なら仮の干渉次数を任意の整数、極大値なら(整数+0.5)として与える。次の波長は最初の波長が極小値なら、極大値、最初の波長が極大値なら極小値を取るので、(最初の次数−0.5)となる。極大、極小値を与える波長リストは波長の短い順に並べると、極大、極小が交互に現れるので、一番短い波長から干渉次数は0.5ずつ減少する。このようにして波長リスト全ての波長で(4)式と(5)式を使ってd1、d2、d3、…を求める。3. 次に、最初に与える干渉次数を1増やして2と同様の計算を行う。これを3から9回程度行う。尚これは測定しようとする膜の光学特性やと膜厚により変わるが、1〜3μm厚のカラーフィルタ用カラーレジスト膜の場合は3〜9程度で十分である。これにより、極大、極小値波長リストに対する複数の干渉次数のセットとその干渉次数を用いて計算した膜厚の表が得られる。4. 各干渉次数セットで計算したd1、d2、d3、…の最大値と最小値の差を求め、これを最小とするときの干渉次数セットを求める。【0015】次に、この干渉次数セットを用いてdを計算する。極大、極小波長リストに対して得られたmとその波長における膜の屈折率nを(4)式、もしくは(5)式に与えて、複数の膜厚が算出されている。この平均値を計算して膜厚とする。【0016】続いて、屈折率決定方法の詳細を説明する。膜厚既知、屈折率不明のサンプルを用意し、これまで説明した方法で測定を行う。この時、屈折率は不明なので、例えば、1.6のような波長分散の無い固定値で計算する。本発明の方法では屈折率が正しくなくても、次数の決定は正しく行われる。(4)式、(5)式を変形すると膜厚既知の極大、極小波長に於ける屈折率が計算できる。n=mλ/2d(極小値の場合)――――(6)n=(m+0.5)λ/2d(極大値の場合)――――(7)従って、膜厚既知サンプル測定で得られた分光反射率データからm、λを求め、既知のdと共に(6)式、(7)式に代入すれば、極大、極小波長に於ける屈折率が求められる。一方、透明膜の屈折率はコーシー式で近似できるので、膜の屈折率の決定はコーシー式の係数の決定に等しい。コーシー式はnを屈折率、λを波長としてn=A+B/λ2+C/λ4――――(8)である。先に計算した複数の極大、極小波長に於ける屈折率の値に最も近似するコーシー式の係数を求める。この算出法としては公知の線形最小2乗法等を用いてプログラミングすればパーソナルコンピュータ等を用いて容易に求めることが出来る。【0017】【実施例】実施例としてBlueレジストをガラスに塗布したサンプルのケースを示す。このサンプルの膜厚を触針式の段差計で測定したところ、1690nmであった。図2はその分光反射率グラフである。このデータより極大、極小波長リストを求めると、表1のようになる。【0018】【表1】【0019】この極大、極小波長リストの最初の極小波長926nmにおける仮の干渉次数を5(ケース1)、6(ケース2)、7(ケース3)と変えて膜厚値を(4)式、(5)式で計算する。次に極大、極小波長リスト2番目の996nmでは極大値なので926nmに比べて干渉次数は0.5ずつ小さくして、4.5、5.5、6.5と変えて膜厚値を計算する。nは不明であるので、ガラス基板1.5程度より大きい1.6と仮の値を使用した。同様にして全ての極大、極小波長リスト波長に対して膜厚値を計算すると表2のようになった。【0020】【表2】【0021】尚、ここでは仮の干渉次数セットを3種類計算したが、想定される膜厚範囲により適宜増やせば良い。次にケース毎に計算した膜厚の最大値−最小値を計算するとケース2の場合が74と一番小さくなるのでこの時の仮の干渉次数を選択する。【0022】次に膜の屈折率を決定する。各極大、極小波長の屈折率を(6)式、(7)式で計算すると、以下の結果が得られる。【0023】【表3】【0024】これらのデータに近似するコーシー式の係数A,B,Cを最小2乗法で計算すると、A=1.5705、B=−21993、C=71545859968が得られる。この係数を用いてnを求めて膜厚を計算し直すと、表4のようになる。【0025】【表4】【0026】表2と比較して何れの波長でも触針式の測定値1690nmに近い値が得られた。また、図3に示すように極大、極小波長に於ける値と、近似式のカーブは良く一致している。【0027】【発明の効果】以上のように本発明によれば、簡便に屈折率を求める事が出来るので、品種が多く屈折率算出頻度が高い場合にも分光干渉式膜厚測定を適用することが出来る。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の実施例を示す装置概略図である。【図2】Blueレジストをガラスに塗布したサンプルを本発明の装置で測定した分光反射率グラフである。【図3】極大、極小波長における屈折率と、算出した近似式のグラフである。【符号の説明】1 光源部2 2分岐ファイバー3 対物レンズ4 分光器5 演算部6 分光器部7 制御部8 カラーレジストを塗布したガラス板(被測定物)9 カットフィルタ10 電球 分光反射率から干渉による極大、極小波長を全て求め、極大、極小値を与える波長に対応した仮の干渉次数を変えて膜厚を複数計算し、計算された複数の膜厚値のばらつきが一番小さい場合の干渉次数を真の干渉次数として、その干渉次数により算出された膜厚値の平均値を以って膜厚とすることを特徴とする膜厚測定方法であり、膜の屈折率を求める際に、膜厚既知のサンプルを測定し、仮の膜屈折率を使用して前記方法で干渉次数を算出し、得られた干渉次数と極大、極小波長値、膜厚値から極大、極小波長に於ける膜屈折率を複数ポイント算出し、それらを近似式で置き換えて膜の屈折率とすることを特徴とする膜厚測定方法。