タイトル: | 特許公報(B2)_キノンレダクターゼ誘導剤 |
出願番号: | 2001227149 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/404,A61P 1/16,A61P 39/02,A61P 43/00,C07D 209/36 |
山本 憲朗 室山 幸太郎 室▲崎▼ 伸二 山本 佳弘 JP 4272824 特許公報(B2) 20090306 2001227149 20010727 キノンレダクターゼ誘導剤 ハウスウェルネスフーズ株式会社 306019030 谷 良隆 100071973 山本 憲朗 室山 幸太郎 室▲崎▼ 伸二 山本 佳弘 20090603 A61K 31/404 20060101AFI20090514BHJP A61P 1/16 20060101ALI20090514BHJP A61P 39/02 20060101ALI20090514BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090514BHJP C07D 209/36 20060101ALN20090514BHJP JPA61K31/404A61P1/16A61P39/02A61P43/00 111C07D209/36 A61K 31/404 A61K 35/78 C07D 209/36 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開2001−031581(JP,A) 国際公開第99/062503(WO,A1) 国際公開第00/061124(WO,A1) 国際公開第01/037819(WO,A1) Wen, Zhijian,Effects of indirubin on the histology and histochemistry of canine and ratlivers,Zhongyao Tongbao,1988年,Vol.13,No.5,pp.306-307 SUN,Y. et al,Current Status of Research on New Anticancer Drugs in China. ,癌と化学療法,1992年,Vol.19, No.8,p.1126-1133 HAN,R.,Traditional chinese medicine and herbal medicine. Current research and their clinical application for the treatment and prevention of cancer. ,和漢薬研究所年報,1994年,Vol.21,p.25-39 HAN,R. et al,Highlight on the Studies of Anticancer Drugs Derived from Plants in China. ,Stem Cells,1994年,Vol.12, No.1,p.53-63 HOESSEL,R. et al,Indirubin, the active constituent of a Chinese antileukaemia medicine, inhibits cyclin-dependent kinases,Nat Cell Biol,1999年,Vol.1, No.1,p.60-7 Ji, X. and Zhang, F.,Yaoxue Xuebao,中国,1985年,Vol.20,No.2,p.137-139 Li, C. et al.,Bull. Chem. Soc. Jpn.,日本,日本化学会,1996年,Vol.69,p.1621-1627 Gu, Y.C. et al.,Yaoxue Xuebao,中国,1989年,Vol.24,No.8,p.629-632 6 2003040774 20030213 14 20041227 安藤 倫世 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は天然由来あるいは合成のインジルビンを含有してなるキノンレダクターゼ誘導剤に関するものである。【0002】【従来の技術】キノンレダクターゼは、1960年頃にLars ErnsterによりDTジアフォラーゼ(EC 1.6.99.2)と命名されたフラボプロテインで、一般的にはキノンレダクターゼまたはキノンオキシドレダクターゼなどと呼ばれている。このキノンレダクターゼは、NADHやNADPHを補酵素として、キノン類や電子受容体となる化合物の還元を触媒する酵素であり、量の多少はあるものの生体内のあらゆる器官、組織に見出される酵素である。キノンレダクターゼが還元する基質には例えばキノン類、キノンイミン類、アゾ化合物や窒素酸化物などがある。キノンレダクターゼは、活性酸素や過酸化脂質などにより生じた酸化物、代謝により生じた酸化物や、食事、喫煙や排ガスなどから生体に取り込まれた化合物を還元する作用を有している。また、キノンレダクターゼは生体の機能成分であるビタミンK、ユビキノンなどの酸化還元反応や、酸化型ビタミンEを還元するなどの各種生体内反応にも関与しており、生体内の様々な機能調節に関与していると考えられる。【0003】キノンレダクターゼは第2相薬物代謝酵素に分類され、キノンレダクターゼの発現を誘導することは、薬物代謝亢進すなわち解毒作用の亢進のみならず、癌や生活習慣病など様々な疾病の発症の要因となる因子を除去することによる疾病リスクの低減効果すなわち疾病予防効果、さらにはマイトマイシンCやEO9などの還元性の抗腫瘍剤の活性を増強させることによる癌治療促進効果にも繋がる。【0004】近年、このキノンレダクターゼ発現を誘導する素材を見出すことに焦点をあてた研究が進められている。そして、ジチオレチンやイソチオシアナート類などの含硫化合物にその作用があることがわかり、それらを含むユリ科ネギ属やアブラナ科の植物が癌予防食品素材として脚光を浴びている。しかし、キノンレダクターゼ発現を誘導する化合物はそれ自体毒性の高いものがあり、より安全性の高い素材が求められている。【0005】インジルビンは、式(I)次に示す化学構造を有する物質である。【化1】【0006】この物質は、IUPAC命名法により3−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−2H−インドインドール−2−イリデン)−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンと命名される紫色の物質(CAS-No. 479-41-4)で、インジゴ植物(インジゴ色素の原料となる植物)に含有されていることや、インジゴ植物から青色の色素であるインジゴを作る際の副生産物として得られることが知られている。しかし近年、合成色素の登場により次第にその存在が忘れられつつある。【0007】インジゴ植物におけるインジルビン生成は、例えば次の様な経路で生じると考えられている。すなわち、β−グルコシダーゼの作用によりインドキシル配糖体のインジカン(植物型インジカン、3−O−β−グルコシド)がインドキシルとなり、そのインドキシルが酸化されてイサチンとなり、イサチンとインドキシルが重合してインジルビンとなる。このとき、2分子のインドキシルが酸化重合してインジゴが生成する反応が主反応で、インジルビンや別経路で生じるイソインジゴは微量の副生成物である。【0008】インジルビンは尿中にも見出される物質で、極く希に、尿カテーテルを使用している患者のカテーテルチューブが紫色に染まる現象が知られているが、この着色の本体がインジルビンである。インジルビンが尿中に多く検出される場合は、尿中に排出されたインジカン(動物型インジカン、3−硫酸インドキシル)が尿路に感染した細菌によって酸化されてインジルビンとなった可能性が強いが、トリプトファンなどの代謝により生じたインジカンが体内で加水分解および酸化重合してインジルビンが生じたり、食事からのトリプトファンやインドキシル配糖体などが腸内細菌により代謝されたりしてインジルビンが生成するので、通常の尿中にも微量は存在している。しかし、健常者の尿に検出されるインジルビンの量は、食事や活動状態などの影響を受けているので必ずしも一定ではない。【0009】インジルビン関連化合物については、フランスのCNRSのグループが精力的に研究を進め、インジルビンがサイクリン依存性タンパク質キナーゼ(CDK)という酵素の活動を妨げること、インジルビンやその誘導体が、CDKの阻害作用によって腫瘍細胞の増殖を抑制する(Ralph Hoessel et al, Nature Cell Biology, Vol. 1, p 60-67, (1999))ことが判明し、インジルビンやその誘導体を含有するCDK阻害剤として、WO 99/62503、EP 0966963A1が提案されている。【0010】CNRSのグループはインジルビンのCDK以外の酵素阻害活性、特にキナーゼ類の阻害について研究を進めて、グリコーゲン合成キナーゼ−3β(GSK−3β)およびCDKの一種のCDK5/P25の2種のキナーゼをインジルビンが抑制することをみつけた。そしてインジルビンは、GSK−3βとCDK5/P25を阻害することにより、アルツハイマー病やその他の神経伝達系疾患の治療剤としての可能性も有していることを見出した(Sophie Leclerc et al., The Jounal of Biological Chemistry, Vol. 276, p 251-260 (2001))。【0011】また特開2001-31580には、インジゴ植物であるタデ科のアイ(Polygonum tinctorium)の抽出物から単離精製したインジルビンが、リポポリサッカライド(LPS)などで刺激を受けた際のインターフェロン−γの産生抑制およびインターロイキン−10の産生促進作用を有することが報告されている。【0012】インジルビンは検討された際に既にその安全性についても調べられており、例えば、イヌに臨床投与量の5〜10倍量のインジルビンを連続して2〜3ヶ月服用させても、何ら毒性は認められていない。また、多量に投与した場合も副作用を伴うことなく、大部分のインジルビンは糞便に排出される。【0013】上述の通り、インジルビンは、色素として古くから知られた化合物であり、CDKやGSK−3βなどのキナーゼ阻害作用や免疫応答細胞の或る種のサイトカイン産生調節作用などが報告されている。しかしながら、インジルビンがキノンレダクターゼの発現を誘導する作用を有していることは未だ全く知られていなかった。【0014】【本発明が解決しようとする課題】本発明は、このような状況において、生体内の様々な機能に関与しているキノンレダクターゼの発現を誘導する、安全でかつ優れたキノンレダクターゼ誘導剤を提供すること、さらにはこのキノンレダクターゼ誘導剤をキノンレダクターゼの欠乏またはキノンレダクターゼ産生能の低下に起因する疾病の予防ならびに治療、再発予防、合併症予防や健康維持増進に貢献する医薬品や食品を提供することを課題とする。【0015】【課題を解決するための手段】本発明者らは、インジルビンの生理活性について広範な実験と研究を行ってきたところ、インジルビンに優れたキノンレダクターゼ発現誘導作用があることを突き止めた。すなわち天然物から単離精製したインジルビンおよび化学合成により調製したインジルビンを動物に投与することにより、生体のキノンレダクターゼ活性が増大することを見出した。しかも、インジルビンが安全性の高い物質であることは既に確かめられており、ヒトあるいは他の動物を対象とする安全でかつ優れた医薬品や食品を提供できることが判明した。【0016】 すなわち本発明は、 (1)インジルビンを含有してなるキノンレダクターゼ誘導剤、 (2)肝疾患の予防または治療剤である(1)記載のキノンレダクターゼ誘導剤、 (3)肝疾患による合併症の予防又は治療剤である(1)記載のキノンレダクターゼ誘導剤、 (4)解毒剤である(1)記載のキノンレダクターゼ誘導剤、 (5)肝機能亢進剤である(1)記載のキノンレダクターゼ誘導剤、 (6)第2相薬物代謝機能亢進剤である(1)記載のキノンレダクターゼ誘導剤、 である。【0017】【発明の実施の形態】本発明に用いられるインジルビンは、IUPAC命名法により、3−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−2H−インドインドール−2−イリデン)−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンと命名される化合物(CAS-No. 479-41-4)で、2−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−2H−インドール−2−イリデン)−1,2−ジヒドロ−3−H−インドール−3−オン(慣用名:インジゴ、CAS-No. 482-89-3)、3−(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−3H−インドール−3−イリデン)−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(慣用名:イソインジゴ、CAS No. 476-34-6)の構造異性体である。【0018】インジルビンの調製は、天然物や天然物の加工物から抽出して単離精製したり、化学合成したり、あるいは微生物により産出させたりして、公知の技術やそれらの組み合わせにより比較的容易に行うことができる。【0019】天然物からは、例えば、タデ科のアイ(学名Polygonum tinctorium)やキツネノマゴ科のリュウキュウアイ(学名Storobilanthes tlaccidifolium)、マメ科のタイワンコマツナギ(別名インドアイ、学名Indigofera tinctoria)、ラン科のエビネ(学名Calanthe discolor)、などの植物や、スエヒロタケ科のスエヒロタケ(学名Schizophyllum commune)などの真菌類から、各種の溶剤抽出および各種のクロマト技術、結晶化などを組み合わせてインジルビンを調製することができる。【0020】天然由来の加工物からは、例えば、生薬の「青黛(せいたい)」(5種類のインジゴ植物から選択された少なくとも1種の植物を加工した生薬)や「すくも」(アイを加工した染料の原料)などのインジルビンを含有する加工物から調製することもできる。【0021】化学合成においては、例えば、1H−インドール−2,3−ジオン(慣用名:イサチン、CAS No. 91-56-5)と酢酸インドキシル(CAS No. 608-08-2)を炭酸ナトリウムなどで弱アルカリ性としたメタノールなどの溶媒中で反応させてインジルビンを合成することができ、生じたインジルビンは、洗浄と再結晶により純度の高いものを得ることができる。【0022】これらの他にも、例えば細菌類の培養、真菌類の培養、植物カルスの培養等によりインジルビンを得ることができる。【0023】このようにして調製したインジルビンは、その使用目的や剤形、使用方法により、純度の高いものから低いものまで用途に合わせた純度のものが使用できる。例えば、化学合成は高純度のインジルビンを調製するために用い、天然物からはインジルビン含有抽出物を得るために用いてもよい。【0024】このようにして得られた精製インジルビンは、紫色の針状結晶として得られ、薄相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、赤外吸収スペクトル、可視紫外線吸収スペクトル、質量スペクトル、1H−核磁気共鳴分光法、13C−核磁気共鳴分光法などにより分析して、同定および定量することができる。インジルビン含有抽出物や精製インジルビンあるいはインジルビン含有抽出物を含む各種医薬品や食品のインジルビン含量も、薄相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの分析法により測定することができる。【0025】キノンレダクターゼは、NAD(P)H:キノンレダクターゼ、NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ、ニコチンアミド−キノンオキシドレダクターゼ、キノンアクセプターオキシドレダクターゼ、NAD(P)H:メナジオンオキシドレダクターゼ、メナジオンレダクターゼ、ビタミンKレダクターゼなどと呼ばれる酵素と同義である。【0026】キノンレダクターゼが還元の対象とする物質には、例えば、ベンゾピレンキノン類(例えばベンゾピレンの代謝物)、ベンゾキノン類(例えばベンゼンの代謝物)や、その他の環境由来や合成のキノン類で反応性が高く、1電子あるいは2電子還元されうる化合物が挙げられる。【0027】ベンゾピレンキノン類、ベンゾキノン類は、環境由来の発癌性物質として知られるベンゾピレンやベンゼンが、シトクロームP450やシトクロームP450レダクターゼなどの酵素により、キノン類などの代謝物に変換されることにより生じる。また、キノン類やその誘導体は、シトクロームP450、シトクロームP450レダクターゼ、ユビキノンオキシドレダクターゼ、キサンチンオキシドレダクターゼやシトクロームb5レダクターゼなどにより還元されて不安定なセミキノン類を生じる。セミキノン類は反応性が高く、DNAやタンパク質、その他生体内分子と反応して遺伝子の変異や酵素失活などを引き起こす。また、セミキノン類は酸素と反応して活性酸素を生じさせる。活性酸素もまた、DNA障害、脂質過酸化、膜障害、細胞毒性、変異、発癌などの原因となる。【0028】キノンレダクターゼは、環境からの毒物やそれらが代謝されて活性化した毒物などを代謝したり、生体内抗酸化物質が酸化して生じた酸化物を還元したりして、毒物除去、生体防御、活性酸素産生抑制などに寄与する。【0029】上述のシトクロームP450やシトクロームP450レダクターゼなどは、薬物代謝酵素の一般的な分類では、第1相薬物代謝酵素に分類される。第1相薬物代謝酵素は、基本的に、NAD、NADP、NADH、NADPHを補酵素として基質を酸化あるいは還元する酵素群である。第2相薬物代謝酵素は、薬物あるいは薬物が第1相薬物代謝された代謝物の排出を高めるため、すなわち水溶性を高めて尿などから排出させやすくするための酵素群で、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ、エポキシドヒドラーゼ、スルファターゼなどがある。【0030】キノンレダクターゼは、NAD(P)Hを補酵素として基質を還元する酵素であるが、その酵素の働きと、発現メカニズムすなわちその酵素のDNA相同性の解析から、第2相薬物代謝酵素として分類されている。ピケットらやジャイスワルらは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼとキノンレダクターゼの遺伝子にXRE(xenobiotic response element)とARE(antioxidant response element)を見付けだしている(L.V.Favreau,C.B.Pickett,The Journal of Biological Chemistry,Vol.266,4556-4561,(1991), L.V.Favreau,C.B.Pickett,The Journal of Biological Chemistry,Vol.268, 19875-19881,(1993), A.K.Jaiswal,Biochemistry,Vol.30,10647-10653,(1991))。【0031】キノンレダクターゼなどの第2相薬物代謝酵素をより多く発現させることの利点は、第1相も第2相も本来は解毒するために働くのであるが、第1相の反応が場合により却って生体にとって毒性の強い物質を作り出してしまうことがあるのに対し、第2相の反応はそうして生成した毒物をも解毒してくれるところにある。例えば、発癌性の高いことで知られるカビ毒のアフラトキシンは、第1相の反応で活性化されることで変異原性を現す。ベンゾピレンの発癌性も第1相薬物代謝により活性化される。こうして活性化された毒性物質は第2相薬物代謝により解毒されるので、第2相薬物代謝の亢進は発癌予防として重要となる。ダイオキシン類も第1相により活性化されて変異原となり、生じた変異原物質の解毒も第2相によって行われている。【0032】解熱鎮痛薬として良く知られるアセトアミノフェンは、多量に摂取したときや体調により急性中毒症をおこすことがある。アセトアミノフェンの解熱鎮痛効果はアセトアミノフェンそのものによる作用であり、かつアセトアミノフェンそのものの毒性はかなり低い。アセトアミノフェンによる肝機能障害を伴う中毒症は、実はアセトアミノフェンが第1相代謝により毒性物質となることにより引き起こされる。このときも生じた毒物は第2相が働いて解毒する。【0033】変異原性物質のみならず、細胞毒性を有する他の化合物や疾病を誘発する化学物質などを解毒することを亢進させるのにも、キノンレダクターゼなどの第2相薬物代謝酵素の活性化すなわち発現量の増大は極めて重要である。【0034】癌治療において、生還元性抗腫瘍剤が新しいクラスの抗癌剤として重要視されている。その例としてマイトマイシンCやEO9、プロフィロマイシン、ジアジクオンなどが挙げられ、これらは1電子あるいは2電子還元されて活性化され効果を発揮する。キノンレダクターゼは、これらの生還元性抗腫瘍剤の効果を増大することができる。例えば、キノンレダクターゼを誘導する作用のある化合物の1,2−ジチオールー3−チオンにより、マイトマイシンCやEO9の抗腫瘍活性が増大することが報告されている。【0035】EO9の抗腫瘍活性は前述の通り還元されて活性化するのであるが、これはEO9の還元体のセミキノン体やヒドロキノン体が腫瘍細胞の遺伝子に結合して抗腫瘍活性を示すからと考えられている。EO9の還元化には第1相薬物代謝のシトクロームP450レダクターゼによっても行うことができる。しかしながら、シトクロームP450レダクターゼが作用するときには、酸素分子から活性酸素のスーパーオキシドを産生してしまう。このスーパーオキシドは、新たな変異の原因となったり、細胞の機能を失わせる。キノンレダクターゼはEO9を還元して活性化するときにスーパーオキシドを産生させないので、EO9を使用した治療時にキノンレダクターゼ量を高めておけばスーパーオキシドによる毒性を低減することができる。【0036】キノンレダクターゼの生体内抗酸化作用亢進の機能について説明する。抗酸化性物質(アンチオキシダント)の多くは、その水素供与体としての作用により抗酸化作用を示すのであるが、水素供与した後の物質(酸化物)が水素受容体として働いて、逆に酸化促進物質(プロオキシダント)として作用することがある。こうして生じたプロオキシダントの消去にもキノンレダクターゼが活躍する。【0037】生体内抗酸化物質として良く知られるトコフェロール(ビタミンE)は、脂溶性ビタミンであるにも拘わらず副作用のほとんどないことが知られている。ビタミンEの機能は、その優れた水素供与能により膜脂質やリポ蛋白体での脂質過酸化を防止することにあると考えられている。トコフェロールは水素供与体として働くとその結果トコフェロールラジカルとなるのであるが、これはビタミンCやチオール化合物などの抗酸化分子により速やかに還元されて再生される。しかし、多量のトコフェロールラジカルが処理(トコフェロールへの再生)できなくなるようなことがあると、副作用のないといわれていたトコフェロールにも副作用がでてくることがある。すなわち、トコフェロールから生じたセミキノン体やキノン体の毒性が生じることがある。例えば、喫煙者に対し過剰のトコフェロール単独をサプリメントととして与え続けると、肺癌の発症リスクが上昇することが知られている。これは、トコフェロールから生じたキノン体によると考えられている。【0038】キノンレダクターゼは、トコフェロールから生じたキノン体のトコフェロールキノンを還元してトコフェロールハイドロキノンに戻すことができる。トコフェロールハイドロキノンは抱合化された後に尿などに排出される。すなわち、キノンレダクターゼは、トコフェロールの抗酸化性を損なうことなく、トコフェロールの副作用の原因となるとトコフェロールキノンの代謝を促進してその毒性を低減することができるのである。【0039】ユビキノンは、ミトコンドリアにおける呼吸鎖の電子伝達や酸化的リン酸化の重要な電子担体であるとともに、膜の安定性や抗酸化に寄与していると考えられている。ユビキノンは、核やミトコンドリア、ミクロソーム、サイトソールなどに多く見られ、特にミトコンドリアに多く、組織別にはミトコンドリアに富む心臓、肝臓、腎臓に多い。ユビキノンは1電子還元でセミキノンラジカル、さらに1電子還元でジヒドロキシ体となり、これらがそれぞれ電子受容体あるいは電子供与体となることで、電子担体として機能している。【0040】ミトコンドリアは、スーパーオキシド産生部位であり、電子伝達に伴って、スーパーオキシドを産生する。生体内で生じる活性酸素のうち一番多いのが、このミトコンドリアから漏れ出るスーパーオキシドである。ユビキノンは、ミトコンドリア膜上にてスーパーオキシドの消去を行っていると考えられる。実際には、ユビキノンが2電子還元されたジヒドロキシユビキノンがスーパーオキシドの消去に働く。【0041】キノンレダクターゼは、ユビキノンを2電子還元してジヒドロキシユビキノンを生じさすことができるので、キノンレダクターゼを誘導すると、ユビキノンによるミトコンドリアからのスーパーオキシドの漏洩を防止する作用が強くなる。すなわち、キノンレダクターゼを誘導することにより、ミトコンドリアからの活性酸素の漏洩を防ぎ、活性酸素毒を低減してくれる。【0042】ビタミンKは、フィロキノン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)などキノン構造を有するが、その機能の本質は酸化還元反応である。食事由来のビタミンK(キノン体)は生体内で還元されてヒドロキノンとなり、このヒドロキノンが各種ビタミンK依存性タンパク質をカルボキシル化する際のコファクターとして働く。このとき、ビタミンKヒドロキノンはビタミンKエポキシドとなり、ビタミンKエポキシドはビタミンKさらにビタミンKヒドロキノンへと再生される。【0043】キノンレダクターゼは、ビタミンKからヒドロキノンへの活性化や再生に関与する酵素であり、ビタミンKの機能を正常に働かせるために必要であるとともに、再生に関与することからビタミンK欠乏を予防する効果もある。抗生物質投与時にビタミンK欠乏となることがあるが、このような薬物での治療時に、キノンレダクターゼ活性を高めてビタミンK欠乏症を予防するためにも本発明のキノンレダクターゼを使用することができる。【0044】赤ワインにより心冠状動脈疾患の発症リスクが低減するフレンチパラドックスで脚光を浴びたワインポリフェノールに代表されるように、フラボノイド類などのポリフェノールの新しい機能が続々と報告されている。ところで、これらのポリフェノール類は、そのフェノール構造による水素供与体としての機能すなわち抗酸化性があるところに共通性があるのであるが、水素供与体として機能すると自らは酸化体となって水素受容体になってしまう。このようにして生じたキノン体などの水素受容体が、かえって酸化を促進したり生体に障害を与えたりする恐れがあることを、既に多くの学者が懸念している。【0045】キノンレダクターゼは、フラボノイドなどのポリフェノールから生じたキノン体などの水素受容体を還元して、その毒性を低減し、それらフラボノイドのさまざまな機能の発現に寄与している。したがって、キノンレダクターゼの発現を誘導することは、生体におけるキノンレダクターゼの機能、作用を強化することに繋がり、キノンレダクターゼの欠乏に起因するあらゆる疾病の予防、治療剤として有用である。【0046】抗酸化作用を有する機能性素材の多くが、ラジカル捕捉活性を有していることとそのラジカル捕捉能すなわち抗酸化活性からなる機能性を期待しているのに対し、本発明のキノンレダクターゼ誘導剤は、ラジカル捕捉活性をもたないインジルビンによってキノンレダクターゼの発現を強力に誘導して、その結果として生体内抗酸化作用を亢進させるという点で他のキノンレダクターゼ誘導剤と異なっている。【0047】本発明の、キノンレダクターゼ誘導剤の具体的な用途としては、キノンレダクターゼの欠乏に起因する各種疾病の治療剤、治療後の再発予防剤、治療中の合併症予防剤、治療に使用している他の医薬品の効果増強剤、解毒剤、疾病予防剤、健康増進剤などが挙げられる。より具体的には、肝炎などの肝疾患の予防、治療剤、肝疾患に起因する合併症の予防、治療剤、解毒剤、肝機能亢進剤、第2相薬物代謝機能亢進剤、生体の抗酸化機能亢進剤、抗腫瘍剤の活性増強剤、発癌予防剤、発癌性化学物質不活性化剤、それらを含有する飲食品などである。【0048】本発明のキノンレダクターゼ誘導剤の投与形態としては、その摂取または投与を容易ならしめる、例えば医薬形態であれば、エキス剤、エリキシル剤、顆粒剤、丸剤、軟膏剤、懸濁剤、乳剤、硬膏剤、坐剤、散剤、チンキ剤、錠剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、注射剤、点鼻剤、鼻噴霧剤、外気道用吸入剤などの形態として使用できる。【0049】食品形態では、通常の食品から加工食品、調理食品、半調理食品、さらには、カプセルや錠剤の形態が認められた保健機能食品の形態としても使用できる。【0050】本発明のキノンレダクターゼ誘導剤を先に述べたような医薬品や食品の形態で用いるにあたっては、その加工や摂取を容易ならしめる、例えば、油性基剤、水性基剤、着香料、着色剤、湿潤剤、乳化剤、ゲル化剤、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤、賦形剤などの添加物や食品素材、食品においては、野菜類、穀類、畜肉類、魚介類などの食品素材を含有する形態であってもよい。また、本発明のキノンレダクターゼ誘導剤は、ヒトに投与されまたは摂取する医薬品や食品のみならず、家畜、家禽、魚介など飼育動物の飼料および飼料添加物に配合することもできる。本発明のキノンレダクターゼ誘導剤を医薬として経口投与する場合、その投与量は成人(50Kg)1日当たり0.01〜1000mg、好ましくは1.0〜200mg程度であり、1日に1回または2〜4回に分けて投与することができる。また、食品中に添加する場合は、1日摂取量が医薬としての1日投与量の1/10から2倍量となるような量において使用することができる。【0051】【実施例】次に、本発明のキノンレダクターゼ誘導剤の機能について実験例、実施例をあげて説明するが、それらに限定されるものではない。【0052】実験例1 インジゴ植物からのインジルビンの調製徳島県で栽培されたアイの乾燥葉(福田龍株式会社より入手)20gをエタノール300mlにて3時間加熱還留抽出し、得られた抽出液をエバポレータにて濃縮し、溶媒を除去して抽出物を得た。得られた抽出物を少量の酢酸エチルに溶解して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーはヘキサン/酢酸エチル(3:2,v/v)にて溶出を行い、赤色色素画分を分画した。この画分を濃縮乾固後、酢酸エチルに溶解して、常温下で放置したところ、結晶が得られた。得られた結晶は、酢酸エチルに再度溶解して再結晶化を行い、少量のメタノール、次いで少量のアセトニトリルにて洗浄した。以上の操作により、紫色の針状結晶4.5mgが得られた。後に行う機器分析により、この結晶はインジルビンであると同定された。【0053】実験例2 インジルビンの同定実験例1で得られた化合物について各種機器分析を用いて化合物の同定を行った。【0054】質量スペクトル実験例1で得られた化合物につき、電子衝撃イオン化法による質量スペクトルをイオン化電圧70eVにて測定したところ、m/z 262(M+,100%)、234(50%)、205(23%)、131(10%)、103(10%)にピークが観察された。【0055】核磁気共鳴スペクトル実験例1で得られた化合物につき、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解して、1H−核磁気共鳴スペクトル、および、13C−核磁気共鳴スペクトルを測定した。それぞれの核磁気共鳴スペクトルにより観察されたシグナルの化学シフト並びに水素原子および炭素原子の帰属を〔表1〕、〔表2〕に示す。【0056】【表1】【0057】【表2】【0058】赤外線吸収スペクトル臭素カリウム錠剤法にて、実験例1で得られた化合物の赤外線吸収スペクトルを測定した。その結果を〔図1〕に示した。得られた赤外線吸収スペクトルは、後述の実験例3で得られた化学合成インジルビンの赤外線吸収スペクトルに一致した。【0059】以上の実験結果に基づき、実験例1で得られた化合物は、3−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−2H−インドインドール−2−イリデン)−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(通称名インジルビン、分子式C16H10N2O2、CAS-No. 479-41-4)であると同定された。【0060】実験例3 インジルビンの合成酢酸インドキシル500mgをメタノール20mlに溶解し、これにイサチン425mgと炭酸ナトリウム636mgを加えて、室温下にて30分間攪拌した。これを室温下にて一晩放置した後、吸引濾過して得られた沈殿物をメタノール洗浄、次いで水洗浄した。吸引濾過した際の濾液は酢酸エチルと水で液液分配した。酢酸エチル層を濃縮乾固したものと先に得られた沈殿物を合わせて、少量のジメチルホルムアミドに加熱溶解した。これを冷却した後、少量の水を添加していくことで、結晶が析出した。得られた結晶は、再度ジメチルホルムアミドに溶解して再結晶し、その結果、インジルビンの結晶668mgを得た。【0061】実施例1 インジルビンによるキノンレダクターゼ誘導作用(in vitro)マウス肝由来細胞株hepa-1c1c7を用いて、インジルビン処理により細胞に誘導されたキノンレダクターゼ量を測定した。キノンレダクターゼの活性測定原理は、メナジオンがキノンレダクターゼによりヒドロキノンとなること、このヒドロキノンがMTT試薬[ 3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロマイド ]を還元して生じるホルマゾンが発色することによる。以下にその操作方法を示す。【0062】活性炭処理した牛胎児血清を5%含有するα改変イーグル培地(α−MEM)に分散したhepa-1c1c7細胞を1x104個となるよう96穴培養プレートに撒き、24時間37℃、5%CO2下で培養した。培養後、プレートから培地を除去し、インジルビンをあらかじめジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解しておき、DMSO濃度1%となるようにインジルビンを添加したα−MEM培地に置換してさらに24時間培養した。以上の操作は2枚のプレートを用意して同じ操作を行った。【0063】培養後、一方のプレートから培地を除去し、PBSで2回洗浄を行い、0.8%ジギトニン溶液50μlを各ウェルに入れて20分間攪拌して細胞を溶解した。これに反応液200μlを加えて5分から10分間反応させた後、0.3mMジクマロール溶液を加えて反応を停止した。この反応液の組成は、25mM トリス-塩酸(pH7.4);0.7% 牛血清アルブミン;0.01% ツイーン20;5μM FAD;1mM グルコース6リン酸;30μM NADP;2units/ml グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ;0.3mg/ml MTT;50μM メナジオンである。反応を停止した後、速やかにマイクロプレートリーダーにて、測定波長630nm、参照波長700nmで「測定値A」を測定した。この値はウェルあたりのキノンレダクターゼ活性に相関する。【0064】次にもう他方のプレートから培地を除去し、0.2% クリスタルバイオレットを含有する2%エタノール溶液を100μlずつ加えて10分間放置後、プレートごと水道水に数回浸漬して洗浄し、0.5%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する50%エタノール溶液を200μlずつ加えて1時間放置することでウェルに残った色素を可溶化した。このプレートをマイクロプレートリーダーにて、測定波長550nm、参照波長700nmで「測定値B」を測定した。この値はウェル上の細胞数に相関する。【0065】以上の操作により得られた値から下記計算式1にて細胞あたりの活性を求め、インジルビンを含有しないDMSOだけを添加した群(対照群)の値を1として添加群のキノンレダクターゼ誘導比活性を算出した。計算式1(添加群の測定値A ÷ 添加群の測定値B)÷(対照群の測定値A ÷ 対照群の測定値B)= 比活性【0066】得られた結果を〔図2〕に示した。計算式1により求めた比活性と細胞数に相関する測定値Bの結果を図示した。〔図2〕で示すように、インジルビンはhepa-1c1c7細胞に対して用量依存的にキノンレダクターゼを誘導した。また、この試験で用いた濃度範囲においては、OD(吸光度)550−700nmの値に変化は認められず、細胞毒性が認められていない。以上の結果からインジルビンが優れたキノンレダクターゼ誘導物質であることが明らかとなった。【0067】実施例2 アセトアミノフェン誘発障害に対するインジルビンの保護作用アセトアミノフェンの多量投与により誘発される障害のインジルビンによる保護作用について、以下に示すマウスを用いた実験で証明した。【0068】16週齢の雌性、BALB/cマウスを5群(対照群;N−アセチル−L−システイン「NACと略す」200mg/kg投与群;インジルビン50mg/kg投与群;同200mg/kg投与群;同800mg/kg投与群、1群あたり4〜6匹)に分けて、24時間絶食させた後、対照群には0.5%メチルセルロースを、正対照群(NAC投与群)にはNACを0.5%メチルセルロースに溶解した水溶液を、試験群(インジルビン投与群)にはインジルビンを0.5%メチルセルロースに溶解した水溶液をそれぞれ経口投与した。その1時間後に生理食塩水に溶解したアセトアミノフェンを150mg/kgの投与量となるよう経口投与して、肝障害を誘発させた。アセトアミノフェン投与の24時間後に採血を行い、遠心分離して血漿を調製し、血漿中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の活性を、それぞれ和光純薬製の「GOT−UVテストワコー」、「GPT−UVテストワコー」および「Lタイプワコー LDH」を用いて日立自動分析装置7070で測定した。結果を〔表3〕に示す。【0069】【表3】【0070】〔表3〕から明らかなように、インジルビン投与群は、対照群に比較して血漿中のAST、ALT、LDH活性の上昇を顕著に抑制し、その作用は用量依存的であった。【0071】アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として知られ、風邪薬などに使用されている。常用量の服用による副作用は極めて稀であるが、過剰量を摂取すると肝機能障害、腎臓障害、意識障害などを起こすことが知られている。アセトアミノフェンは、肝臓においてシトクロームP450によりN−アセチル−p−キノミネンに変化した後にグルタチオン抱合により不活性化されて排出されるが、多量のアセトアミノフェンを服用すると、グルタチオンが枯渇したりしてN−アセチル−p−キノミネンが肝臓に障害を与え、さらに肝臓から漏出したN−アセチル−p−キノミネンが腎臓など他の臓器に障害を与える。したがって、このように実験動物に過剰のアセトアミノフェンを投与することにより、比較的容易に肝臓障害を誘発させることができ、肝機能障害の生化学的研究手段として広く使用されている。【0072】ASTは、アミノ酸合成の際にアミノ基の転移反応を触媒する酵素で、ほとんど全ての細胞に含まれ、細胞が障害を受けることにより漏出してくる逸脱酵素で、心筋、肝臓、骨格筋、腎臓などに多く含まれている。そのため、ASTは肝疾患、心疾患、骨格筋疾患の程度、臨床経過の指標として用いられる。ALTは、ASTと同様にアミノ酸合成に必要なアミノ基転移酵素であり、細胞が損傷を受けたときに漏出してくる逸脱酵素で、ASTに比較して特異性が高く、特に肝臓での含有量が圧倒的に多く、次いで腎臓に多く含有されている。このため、ALTは肝疾患の指標として用いられる。LDHは、細胞が損傷したときに漏出する逸脱酵素であるが、あらゆる臓器に含まれることから、LDHが血中に増加していることでどの組織が損傷を受けているかを特定することは難しい。LDHによる損傷部位の予測にはLDHのアイソザイムの解析が必要となるが、LDHはASTやALTなどと組み合わせて使用することにより生体内疾患の指標として広く使用されている。【0073】インジルビンは、アセトアミノフェン過剰投与によるALTの逸脱を顕著に抑制し、肝障害を抑制することが明らかとなった。また、ASTおよびLDHの逸脱も顕著に抑制しているので、インジルビンが生体内キノンレダクターゼ発現を誘導して、肝障害のみならず他の臓器の損傷をも抑制していると考えられる。【0074】【発明の効果】本発明のインジルピンを含んでなるキノンレダクターゼ誘導剤は、ヒトを含む動物生体のキノンレダクターゼの発現を誘導して、多彩な生理作用を発揮させ、例えば肝疾患、それに起因する他の疾病の予防、治療剤として有用であり、医薬品分野、化粧品分野、食品分野において、ヒトのみならず家畜、家禽、魚介類などまでをも対象にした多種多様の用途に使用できる。このような顕著な効果を奏する本発明は、医療、厚生分野に貢献するとともに、人々の健康な暮らしの向上に寄与する、意義のある発明である。【図面の簡単な説明】【図1】 3−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−2H−インドインドール−2−イリデン)−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、(〔化1〕、通称名インジルビン)の赤外線吸収スペクトル。【図2】 インジルビンによるキノンレダクターゼ誘導活性。 インジルビンを含有してなるキノンレダクターゼ誘導剤。 肝疾患の予防または治療剤である請求項1記載のキノンレダクターゼ誘導剤。 肝疾患による合併症の予防又は治療剤である請求項1記載のキノンレダクターゼ誘導剤。 解毒剤である請求項1記載のキノンレダクターゼ誘導剤。 肝機能亢進剤である請求項1記載のキノンレダクターゼ誘導剤。 第2相薬物代謝機能亢進剤である請求項1記載のキノンレダクターゼ誘導剤。