生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_グリニャール反応による炭素−炭素結合の新規構築法
出願番号:2001208700
年次:2008
IPC分類:C07C 1/32,C07C 17/263,C07B 61/00


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神戸 宣明 寺尾 潤 JP 4058249 特許公報(B2) 20071221 2001208700 20010710 グリニャール反応による炭素−炭素結合の新規構築法 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 宮本 晴視 100110168 神戸 宣明 寺尾 潤 20080305 C07C 1/32 20060101AFI20080214BHJP C07C 17/263 20060101ALI20080214BHJP C07B 61/00 20060101ALN20080214BHJP JPC07C1/32C07C17/263C07B61/00 300 C07C 1/32 C07C 17/263 CA(STN) REGISTRY(STN) 社団法人日本化学会編,第4版実験化学講座25 有機合成VII−有機金属試薬による合成−,1991年,第390−396頁 3 2003026612 20030129 6 20041018 特許法第30条第1項適用 平成13年3月15日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第79春季年会2001年講演予稿集II」に発表 吉住 和之 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アルキルハライドをグリニャール試薬とのクロスカップリング反応により炭素−炭素結合を形成させる、新規な炭素−炭素結合形成反応を利用する化合物の合成方法に関する。【0002】【従来の技術】炭素−炭素結合を高選択的かつ高効率で構築することは、所望の炭素骨格の有機化合物を合成する上で重要である。近年、パラジウムやニッケル触媒を用いて炭素−炭素結合を形成させる反応に関する研究は飛躍的に発展し、現在様々な有機化合物の合成に広く利用されている。パラジウムやニッケル触媒を利用した炭素−炭素の結合を形成させる手法が多数提案されてきたがその中でも、有機ハロゲン化合物と有機金属化合物とのクロスカップリング反応は有用な炭素−炭素結合の形成の手法として広く利用されている〔Metal-Catalyzed Cross-coupling Reactions(Eds:F.Diederich.P.I.Stang),WILEY-VCH,Weinheim,1998〕。これらの反応では、種々の炭素官能基を有する有機金属化合物(Mg,Sn,B,Zn,Al、Li、Si等)を用いることが可能であるが、一般に有機ハロゲン化物の方はアリール及びアルケニルのみしか実質的に適用できず、アルキルハライド類には利用されない。この理由として、反応経路の中間に生成するアルキルメタル種からβ−水素脱離が進行することが主な原因の一つと考えられている。パラジウムやニッケル触媒によるアルキルハライドを用いるカップリング反応としては、本発明者の知る限り、3つの研究グループによる報告例があるが、いずれの場合も、基質のハライドとして、分子内に不飽和結合部位を持つもの又はβ水素を持たないもの等のように制限され、利用されているものは利用性の低いアルキルヨーダイド類である。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術において実質的に利用できなかったアルキルハライド類(ハロゲンの他に、OSO2PhCH3(トシラート、OTs)、OSO2CF3(トリフラート)、OSO2CH3(メシラート)基を含む概念である。)とグリニャール試薬からクロスカップリングにより炭素−炭素結合した化合物を形成させる方法を提供するものである。本発明者らは、前記課題を解決すべく種々のNi化合物について検討する中で、特にNiハライド触媒を用い、共役したジエン構造を少なくとも一個含む炭化水素化合物の共存下で前記ハロゲン化アルキル類とグリニャール試薬を反応させることにより前記課題の反応が進むことが確認され、前記課題を解決することができた。【0004】【課題を解決するための手段】本発明は、(1)一般式R−Xで表される〔Rは、炭素-炭素二重及び三重結合を有していてもよい1級または2級のアルキル基であり、Xはハロゲン、OSO2PhCH3(トシラート、OTs)、OSO2CF3(トリフラート)、OSO2CH3(メシラート)、である。〕化合物をR’−MX’(MはMg、R’は炭素-炭素二重及び三重結合を有していてもよい1級または2級のアルキル基、不飽和結合含有脂肪族基、芳香族基、脂環式基および複素環含有基から選択されるMgと炭素で結合している基であり、X’はBr、IおよびClから選択される。)で表されるグリニャール試薬、Niハライド又アセチルアセトン(acac)を配位子とするNi2+または/およびNi錯体触媒、および共役したジエン構造を少なくとも一個含む炭化水素の存在する極性有機溶媒中で反応させ前記RとR’が炭素−炭素結合したR−R’化合物を合成する方法である。好ましくは、(2)ジエン化合物がイソプレンまたは/および1,3−ブタジエンであることを特徴とする前記(1)に記載の一般式R−Xの化合物およびグリニャール試薬R’−MX’からRとR’が炭素−炭素結合したR−R’化合物を合成する方法であり、より好ましくは、(3)極性溶媒が含酸素系溶媒または含酸素系溶媒と炭化水素との混合溶媒であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の一般式R−Xの化合物およびグリニャール試薬R’−MX’からRとR’が炭素−炭素結合したR−R’化合物を合成する方法である。【0005】【本発明の実施の態様】本発明をより詳細に説明する。A.本発明の反応は以下の反応式1で表すことができる。また、推論されるNi触媒、特にNiCl2の関与する反応経路は図1に概念的に示した。【0006】【化1】R−X + R’−MgX’ ――――→ R−R’ 式1 Ni触媒【0007】前記反応を、図1の反応経路を参照しながら説明する。先ず、NiIIはグリニャール試薬により還元されNi0のニッケル錯体が生成し、この錯体が、もう1等量のグリニャール試薬と反応してニッケルのアート錯体が形成させる。これに有機ハライド(R−X)またはこれと同等の化合物が酸化的に付加し〔R’−Ni−R〕が形成される。次いで還元的にR−R’化合物が脱離する。更にNi0のニッケル錯体が再生し触媒サイクルが進行する。この反応経路は、配位化合物を用いた場合も同様に適用できる。B.本発明で用いるNi触媒は、以下のようになる。1、2価のNi化合物、例えばNiX2、Xは、Cl、Br、などのハロゲン化物2、Ni錯体を形成する配位子は、アセチルアセトン(acac)、1,5−シクロオクタジエン、ホスフィンであり、触媒の添加量は、触媒として機能する量として適宜決定しうるし、反応系、スケールなどの条件で変わりうるが、有機ハライドに対し0.01〜0.05モル当量程度の範囲で使用される。【0008】C.本発明では、前記反応系に、炭素−炭素二重結合を少なくとも一個含む化合物、好ましくは共役(ジエン)化合物、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン、より好ましくは、1,3−ブタジエンまたは/およびイソプレンを共存させることが好ましい。該共存させる化合物は、反応系中において、Niに対して配位子として機能しているものと推測できる。特にジエン化合物がNiに配位することにより、従来型のβ位のHが脱離をおこしにくい活性種が生成したものと考えられる。反応系に添加される前記ジエン類の量は、有機ハライド類に対し、0.1〜0.5当量程度が好ましい。【0009】D.R−Xで表される化合物のXは、上記で定義したとおりである。Rは、少なくともXと結合する部分の構造がβ−水素を持つ、−CHY−(YはH、または炭化水素基)である有機基である。E.グリニャール試薬としては従来のグリニャール反応で使用されるものが使用できる。F.反応溶媒としては、極性有機溶媒、例えば環状エーテルであるテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン−ヘキサン混合溶媒などを好ましいものとして挙げることができる。【0010】【実施例】実施例1n−デシルブロミド(nDec−Br)(1mmol)とn−ブチルグリニャール試薬(nBu−MgCl)(1.03mmol)とを、イソプレン(1mmol)、およびNiCl2(0.03mmol)の存在下で、テトラヒドロフラン(THF)溶液中で、室温で3時間行った。n−テトラデカン(nDec−nBu)が92%の収率で得られた。副生物は、n−デカン(n−Decane)や1−デセン(1−Decene)などである。前記反応は以下のようになる。 nDec-Br + nBuMgCl ――――― nDec-nBu +nDecane +1-Decene【0011】実施例2実施例1における、イソプレンに変えて共役したジエン構造を少なくとも一個含む炭化水素化合物を変えた場合の、結果とその収率を表1にまとめて示す。添加剤として1,3−ブタジエンを用いた場合がもっとも効率よく反応が進行し、この添加剤(0.1mmol)用いると触媒(0.01mmol)、反応時間30分で対応するカップリング生成物をほぼ定量的に与える。【0012】【表1】【0013】実施例3ここでは、実施例1と同じ触媒、ジエン、溶媒および反応条件で、種々のハロゲン化アルキルとグリニャール試薬を用いた場合の例を表2にまとめて示す。【0014】【表2】【0015】実施例4ここでは、アルキルクロリドを用いる場合の好ましい反応条件下で行った例を示す。オクチルクロリド(1mmol)とブチルグリニャール試薬(1.3mmol)との反応を1,3−ブタジエン(1mmol)、触媒(0.03mmol)存在下、24時間行うと、96%収率でドデカンが得られた。【0016】実施例5ここでは、環状ハライドを用いた例を示す。実施例1と同じ触媒、ジエン、溶媒および反応条件で、下記のハロゲン化アルキルをグリニャール試薬n−Bu−MgClを用いてBrを直鎖のブチル基(n−Bu)置換した化合物得る場合を示す。収率は60%であった。【0017】【化2】【0018】【発明の効果】以上述べたように、本発明の反応系に共役したジエン構造を少なくとも一個含む炭化水素を添加する方法により、R’’−CHY−X〔(R’’は有機基、YはH、または炭化水素基、Xはハロゲン、OSO2PhCH3(トシラート、OTs)、OSO2CF3(トリフラート)、OSO2CH3(メシラート))で表されるβ−水素を持つ有機化合物をグリニャール試薬とクロスカップリングさせる化合物として用いた場合にも、高収率でクロスカップリングした化合物を得ることができる、という優れた効果がもたらされる。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明のグリニャール反応の反応経路を模式図 一般式R−Xで表される〔Rは、炭素-炭素二重及び三重結合を有していてもよい1級または2級のアルキル基であり、Xはハロゲン、OSO2PhCH3(トシラート、OTs)、OSO2CF3(トリフラート)、OSO2CH3(メシラート)、である。〕化合物をR’−MX’(MはMg、R’は炭素-炭素二重及び三重結合を有していてもよい1級または2級のアルキル基、不飽和結合含有脂肪族基、芳香族基、脂環式基および複素環含有基から選択されるMgと炭素で結合している基であり、X’はBr、IおよびClから選択される。)で表されるグリニャール試薬、Niハライド又アセチルアセトン(acac)を配位子とするNi2+または/およびNi錯体触媒、および共役したジエン構造を少なくとも一個含む炭化水素の存在する極性有機溶媒中で反応させ前記RとR’が炭素−炭素結合したR−R’化合物を合成する方法。 ジエン化合物がイソプレンまたは/および1,3−ブタジエンであることを特徴とする請求項1に記載の一般式R−Xの化合物およびグリニャール試薬R’−MX’からRとR’が炭素−炭素結合したR−R’化合物を合成する方法。 極性溶媒が含酸素系溶媒または含酸素系溶媒と炭化水素との混合溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載の一般式R−Xの化合物およびグリニャール試薬R’−MX’からRとR’が炭素−炭素結合したR−R’化合物を合成する方法。


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