タイトル: | 特許公報(B2)_多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法 |
出願番号: | 2001207146 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07D 301/28,C07D 303/30,B01J 21/02,B01J 23/14,C07B 61/00 |
山野 充彦 清水 裕巳 吉村 智 石川 浩二 JP 4812191 特許公報(B2) 20110902 2001207146 20010706 多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法 四日市合成株式会社 000180449 特許業務法人志成特許事務所 110000257 長谷川 一 100068065 松田 寿美子 100077436 近藤 久美 100077078 山野 充彦 清水 裕巳 吉村 智 石川 浩二 JP 2001120650 20010419 20111109 C07D 301/28 20060101AFI20111024BHJP C07D 303/30 20060101ALI20111024BHJP B01J 21/02 20060101ALI20111024BHJP B01J 23/14 20060101ALI20111024BHJP C07B 61/00 20060101ALN20111024BHJP JPC07D301/28C07D303/30B01J21/02 XB01J23/14 XC07B61/00 300 C07D 301/28 C07D 303/30 CAPLUS/REGISTRY/CASREACT(STN) 特開昭61−178974(JP,A) 特開平05−271211(JP,A) 特開2002−293755(JP,A) 特開平04−128279(JP,A) 特開昭63−135377(JP,A) 特開昭55−049365(JP,A) 特開平07−133269(JP,A) 特開平05−271138(JP,A) 英国特許出願公開第02166738(GB,A) 9 2003002880 20030108 12 20080520 伊藤 幸司 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法に関し、詳しくは、多価アルコールとエピハロヒドリンとを反応させてハロヒドリンエーテルを製造する際に、特定の二種の酸性触媒混合物を使用する、高選択率で、低粘度な多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】多価アルコールポリグリシジルエーテルは、合成樹脂の反応性希釈剤・原料・改質剤、紙・繊維・高分子材料の改質剤・接着剤等に用いられている。従来、その製造方法としては、1)アルコールとエピハロヒドリンとを、硫酸、三弗化ホウ素・エチルエーテル、四塩化錫等の酸性触媒の存在下に反応させて、ハロヒドリンエーテルを製造し、次いで、このハロヒドリンエーテルを脱ハロゲン化水素剤と反応させて閉環せしめる2段階法、及び2)アルコールとエピハロヒドリンとを、アルカリ水溶液を使用して、一挙にアルコールのグリシジルエーテルを1段階法により製造する方法が知られている。【0003】1)の方法は、多価アルコールポリグリシジルエーテルを選択的に得るのは困難であり、より高度な重合物が生成する。すなわち、多価アルコールとエピハロヒドリンから多価アルコールポリグリシジルエーテルを製造する場合、両者の当量比が1に近いと、より高度な重合物の生成反応が主となり、多価アルコールポリグリシジルエーテルの収率はかなり低い。【0004】2)の方法は一般的にアルカリ水溶液と有機相の2相系で反応が行われる。そのため、オキシラン環の開裂、グリシジルエーテルにさらにエピハロヒドリンが付加する等の副反応が起こりやすく、その結果、オリゴマーやポリマーが副生して目的とするグリシジルエーテルの収率が低下する。【0005】本発明は、上記1)の2段階法の改善に係るものであるが、これまでにも、この方法を改善するために種々の提案がなされている。例えば、特開昭61−178974号公報では、副反応を抑制するために多価アルコールとエピハロヒドリンとの反応を三弗化ホウ素エチルエーテル触媒の存在下、−20〜+5℃の低温で行うことが提案されている。この方法では、反応の制御が困難であるばかりでなく、冷凍装置等の設備付加が必至であり、大幅な設備投資が必要となる。【0006】英国特許第2166738号明細書には、エポキシ化合物とアルコールの付加物を製造するための触媒として、過塩素酸金属塩を使用することが提案されている。この方法ではエポキシ化合物がエチレンオキサイドでアルコールが一価の場合は良好な反応性を示すが、エポキシ化合物がエピハロヒドリンでアルコールが二価以上の場合には反応性が十分ではなかった。【0007】特開平5−271211号公報には、ルイス酸触媒の存在下に多価アルコールとモノエポキシ化合物とを付加させて製造されたエーテル結合含有第2級多価アルコールとエピクロロヒドリンとを相間移動触媒の存在下にアルカリで閉環する方法が提案されている。この方法によれば比較的エポキシ当量の小さい脂肪族ポリグリシジルエーテルが得られる利点はあるものの、収率が著しく低いために実用的な方法ではなかった。【0008】特開平5−271138号公報には、1級一価又は二価アルコールとエピクロロヒドリンとを特定の金属錯体触媒の存在下にアルカリで閉環する方法が提案されている。この方法によれば収率は比較的良好であるが、得られる脂肪族ポリグリシジルエーテルのエポキシ当量は大きく実用上満足できるものではなかった。【0009】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記のような従来の技術の状況に鑑み、高選択率で低粘度な多価アルコールグリシジルエーテル化合物の製造方法を提供すべく、鋭意検討した結果、酸性触媒として特定の二種のルイス酸混合物を用いることにより、上記目的を達成しうることを知見し、本発明に到達した。【0010】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、多価アルコールとエピハロヒドリンとを、酸性触媒の存在下に反応させてハロヒドリンエーテルを製造し、次いで、脱ハロゲン化水素剤と反応させて多価アルコールポリグリシジルエーテルを製造する方法において、該酸性触媒として三弗化ホウ素・コンプレックスと四塩化錫との混合物を使用することを特徴とする多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法に存する。【0011】【発明の実施の形態】多価アルコールとエピハロヒドリンとの反応本発明における、多価アルコールとエピハロヒドリンとの反応は、触媒として特定二種の酸性触媒、三弗化ホウ素・コンプレックスと四塩化錫との混合物を用いて行われる。これら二種の触媒は、反応当初から混合物として用いることが、反応速度及び選択率の点で好ましいが、反応当初には四塩化錫のみを用い、反応開始後に三弗化ホウ素・コンプレックスを添加し、二種の混合物として用いてもよい。この反応によって所期のハロヒドリンエーテルが生成し、低粘度な多価アルコールポリグリシジルエーテルを、高選択率で得ることが可能となる。【0012】三弗化ホウ素・コンプレックスはメチルエーテルコンプレックス、エチルエーテルコンプレックス、プロピルエーテルコンプレックス、n−ブチルエーテルコンプレックス等のエーテルコンプレックス、酢酸コンプレックス、フェノールコンプレックス等の有機酸コンプレックス、ピペリジンコンプレックス、モノエチルアミンコンプレックス等のアミンコンプレックス、水錯塩等から選ばれる。入手の容易さ、取扱い性(融点、沸点)、触媒活性、除去の容易性等の観点から、エーテルコンプレックスが好ましく、エチルエーテルコンプレックスが最も好ましい。【0013】四塩化錫は、無水物、三水和物、五水和物、八水和物等の水和物から選ばれるが、入手の容易さ、安定性、触媒活性等から無水物が好ましい。【0014】この反応を円滑に進めるには、多価アルコールと触媒とを、温度25〜100℃、好ましくは60〜85℃に加熱した後、エピハロヒドリンを滴下し反応させるのが良い。加熱温度が25℃よりも低いと、初期反応が非常に遅く、温度上昇も少ない。このため、誤ってエピハロヒドリンを入れすぎると、一旦温度が上昇しだした時、その温度上昇を抑えることが出来なくなり、最悪の場合暴走反応を引き起こす危険性がある。逆に、100℃よりも高いと、材質に悪影響を及ぼし、また、粗液着色を起こしやすい。【0015】触媒混合物中の、三弗化ホウ素・コンプレックス:四塩化錫の混合モル比は2:1〜1:4、好ましくは1:1が良い。混合モル比が2:1より高いと、反応は速いが、選択率は低下する。逆に1:4より低いと、選択率は高いが、反応は遅くなる。これは、四塩化錫は触媒活性が低いため、反応が遅く、1級アルコールへ選択的にエピハロヒドリンを付加させると考えられる。三弗化ホウ素・コンプレックスは触媒活性が高いため、反応が速く、1級、2級アルコールの区別なくエピハロヒドリンを付加させると考えられることから、四塩化錫の反応を三弗化ホウ素エチルエーテルが補助しているためだと考えられる。【0016】触媒混合物の使用量は、多価アルコールに対して、三弗化ホウ素・コンプレックスと四塩化錫との合計で、0.1〜6モル%、好ましくは0.2〜0.4モル%が良い。触媒混合物の使用量が6モル%より多いと、最終製品が着色する恐れがある。逆に、0.1モル%より少ないと、反応が遅くなり、極端な場合には反応が途中で停止し、所望する品質の製品が得られない恐れがある。【0017】多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール等、これらのアルキレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物等の二価アルコール;トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等、これらのアルキレンオキサイド付加物、フェノールノボラックのアルキレンオキサイド付加物等の、三価以上のアルコール等から選ばれる。好ましくは、二価アルコールであり、さらに好ましくは炭素数が5以上のもの、特に好ましくは1,6−ヘキサンジオール及びビスフェノールAエチレンオキサイド付加物である。エピハロヒドリンとしては、例えば、エピブロモヒドリン、エピクロロヒドリン、エピヨードヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリン等から選ばれる。入手の容易さ等から、好ましくは、エピクロロヒドリンである。【0018】エピハロヒドリンの使用量は、多価アルコールの水酸基1個当たり、0.9〜1.5当量、好ましくは1.0〜1.2当量が良い。エピハロヒドリンの使用量が0.9当量未満の場合には、グリシジルエーテル化されない水酸基が残存して純度が低下し、WPE、粘度が高くなる。逆に1.5当量を超えると反応速度が低下したり、エピハロヒドリン高モル付加体が多く生成し、WPE、粘度、塩素含有率が高くなるため好ましくない。【0019】脱ハロゲン化水素剤との反応上記多価アルコールとエピハロヒドリンとの反応生成物は、反応終了後必要に応じ熟成した後、通常、生成したハロヒドリンエーテルを単離・精製することなく、次いで、脱ハロゲン化水素剤と反応させる。脱ハロゲン化水素剤としては、強アルカリ、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好適であるが、他の弱アルカリ、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もまた使用することができる。特に、水酸化ナトリウムが好ましい。これらの脱ハロゲン化水素剤は、水溶液として用いることが好ましいが、場合によっては、粉末又は固形の脱ハロゲン化水素剤を、水と同時に若しくは別々に加えることもできる。好ましくは、10〜50%水溶液で添加するのが良く、より好ましくは20〜50%である。【0020】脱ハロゲン化水素剤として、水酸化ナトリウムのような1価のアルカリを用いる場合、その使用量は多価アルコールに対して1〜2当量、好ましくは1.2〜1.5当量が良い。また、水酸化バリウムのような2価のアルカリを用いる場合、その使用量は多価アルコールに対して0.5〜1.5当量、好ましくは0.5〜1.0当量が良い。さらに、炭酸アルカリを使用する場合、その使用量は多価アルコールに対して水酸化アルカリの量の1.2〜1.5倍量多く用いるのが好ましい。該アルカリの使用量が、多価アルコールに対して上記下限未満の場合には、グリシジルエーテル化されないハロヒドリンエーテル基が残存して純度が低下し、また、上記上限を超えても無駄となるばかりでなく、生成したグリシジルエーテルに水が付加し、グリセリルエーテル化する等の副反応によって製品の純度が低下するため好ましくない。【0021】脱ハロゲン化水素剤との反応温度は、20〜100℃の範囲であり、より好ましくは30〜80℃の範囲である。脱ハロゲン化水素剤との反応時間は、脱ハロゲン化水素剤の使用量、溶媒の使用有無によって異なるが、通常0.1〜10時間である。【0022】脱ハロゲン化水素反応終了後の多価アルコールポリグリシジルエーテルの単離は、常法によって行うことができ、例えば、必要に応じて炭化水素等の非水溶性溶媒を加え、水洗して生成する塩を除去した後、脱溶媒、脱水、濾過を行うことによって、目的の多価アルコールポリグリシジルエーテルを得ることができる。【0023】本発明の多価アルコールポリグリシジルエーテルは希釈性、反応性、他のエポキシ樹脂や硬化剤との相溶性に優れたものであるため、エポキシ樹脂の反応性希釈剤として好ましく用いることができる。また、その硬化物の諸物性は従来の製造方法で製造された多価アルコールポリグリシジルエーテルと同等あるいはそれ以上であり、非常に優れている。本発明の多価アルコールポリグリシジルエーテルは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に対して用いられるのが一般的であるが、これ以外に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂をはじめ種々のエポキシ樹脂、あるいは本発明以外の反応性希釈剤との組み合わせも可能である。また、硬化剤もポリアミン系、ポリアミド系、酸無水物系、フェノールノボラック系、イミダゾール系など一般に用いられているものはすべて使用可能である。また、溶剤、充填剤、難燃剤、離型剤、着色剤などの添加物も必要に応じて用いることができる。本発明の多価アルコールポリグリシジルエーテルは、エポキシ樹脂用反応性希釈剤以外に、種々の合成樹脂の反応性希釈剤・原料・改質剤、紙・繊維・高分子材料の改質剤・接着剤等に用いることもできる。【0024】【実施例】以下に本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における、部及び%は重量基準を示す。【0025】多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造【実施例1】攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱した1,6−ヘキサンジオール141.8部、三弗化ホウ素エチルエーテル0.26部及び四塩化錫0.47部を仕込み、80℃まで加熱した。85℃以上にならない様に、時間をかけてエピクロロヒドリン222.1部(ジオールの水酸基1個当たり1当量)を滴下した。80〜85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。22%水酸化ナトリウム水溶液528.0部を加え45℃に加熱して4時間激しく攪拌した。室温まで冷却して水相を分離除去し、残った油相を水で数回洗浄した後、減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン、水を除去し、目的とした1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル283.3部が得られた(収率95%、選択率62%)。得られた製品のWPEは143であった。一般分析結果を表−1に示す。【0026】【実施例2】攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱した1,6−ヘキサンジオール141.8部、三弗化ホウ素エチルエーテル0.13部及び四塩化錫0.70部を仕込み、80℃まで加熱した。85℃以上にならない様に、時間をかけてエピクロロヒドリン244.3部(ジオールの水酸基1個当たり1.1当量)を滴下した。80〜85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。22%水酸化ナトリウム水溶液528.0部を加え45℃に加熱して4時間激しく攪拌した。室温まで冷却して水相を分離除去し、残った油相を水で数回洗浄した後、減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン、水を除去し、目的とした1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル280.6部が得られた(収率94%、選択率63%)。得られた製品のWPEは144であった。一般分析結果を表−1に示す。【0027】【実施例3】攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱した1,6−ヘキサンジオール141.8部及び四塩化錫0.70部を仕込み、80℃まで加熱した。85℃以上にならない様に、時間をかけてエピクロロヒドリン122.2部(ジオールの水酸基1個当たり0.55当量)を滴下した。この時点で、発熱がほとんどなくなったため、80〜85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、GC分析を行ったところ、未反応のエピクロロヒドリンが残存していた。そこで、三弗化ホウ素エチルエーテル0.13部を追加したところ、発熱したため、残りのエピクロロヒドリン122.1部(ジオールの水酸基1個当たり0.55当量)を滴下し、80〜85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。22%水酸化ナトリウム水溶液528.0部を加え45℃に加熱して4時間激しく攪拌した。室温まで冷却して水相を分離除去し、残った油相を水で数回洗浄した後、減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン、水を除去し、目的とした1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル280.6部が得られた(収率94%、選択率63%)。得られた製品のWPEは144であった。一般分析結果を表−1に示す。【0028】【実施例4】攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた2L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱したビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物300部、三弗化ホウ素エチルエーテル1.4部及び四塩化錫2.6部を仕込み、65℃まで加熱した。70℃以上にならない様に、時間をかけてエピクロロヒドリン153部(ジオールの水酸基1個当たり1.1当量)を滴下した。65〜70℃に保ちながら0.5時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。分離溶媒としてイソブタノール454gを添加し、攪拌混合した後、25%水酸化ナトリウム水溶液235部を加え45℃に加熱して1時間激しく攪拌した。室温まで冷却して水相を分離除去し、残った油相を水で数回洗浄した後、減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン、水、溶媒のイソブタノールを除去し、目的としたビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物ジグリシジルエーテル369.8部が得られた(収率94%、選択率86.1%)。得られた製品のWPEは307であった。一般分析結果を表−1に示す。【0029】【比較例1】攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱した1,6−ヘキサンジオール141.8部及び四塩化錫0.94部を仕込み、80℃まで加熱した。85℃以上にならない様に、時間をかけてエピクロロヒドリン244.3部(ジオールの水酸基1個当たり1.1当量)を滴下した。80〜85℃に保ちながら3時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。エピクロロヒドリンの反応率が85%と反応が不充分であったため、この段階で反応を中断した。22%水酸化ナトリウム水溶液528.0部を加え45℃に加熱して4時間激しく攪拌した。室温まで冷却して水相を分離除去し、残った油相を水で数回洗浄した後、減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン、水を除去し、目的とした1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル268.6部が得られた(収率90%、選択率50%)。得られた製品のWPEは160であった。一般分析結果を表−1に示す。【0030】【比較例2】攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱した1,6−ヘキサンジオール141.8部及び三弗化ホウ素エチルエーテル0.51部を仕込み、80℃まで加熱した。85℃以上にならない様に、時間をかけてエピクロロヒドリン244.3部(ジオールの水酸基1個当たり1.1当量)を滴下した。80〜85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。22%水酸化ナトリウム水溶液528.0部を加え45℃に加熱して時間激しく攪拌した。室温まで冷却して水相を分離除去し、残った油相を水で数回洗浄した後、減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン、水を除去し、目的とした1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル283.6部が得られた(収率95%、選択率55%)。得られた製品のWPEは156であった。一般分析結果を表−1に示す。【0031】【比較例3】攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた1L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱した1,6−ヘキサンジオール141.8部及び四塩化錫0.70部を仕込み、80℃まで加熱した。85℃以上にならない様に、時間をかけてエピクロロヒドリン122.2部(ジオールの水酸基1個当たり0.55当量)を滴下した。この時点で、発熱がほとんどなくなったため、80〜85℃に保ちながら1時間熟成を行った後、GC分析を行ったところ、未反応のエピクロロヒドリンが残存していた。そこで、四塩化錫0.70部を追加したところ、異常に発熱したため、重合反応が進行したと判断し、重合反応を停止させるためにクエンチ水を添加し、室温まで冷却した。GPCにて組成分析を行ったところ、高分子量体(重合物)が多く生成していた。【0032】【比較例4】攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた2L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱したビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物300部、四塩化錫2.6部を仕込み、65℃まで加熱した。エピクロロヒドリンの滴下を開始したが、発熱が全く起こらなかった。四塩化錫2.6部を追加し、反応温度を90℃まであげたが、発熱が全く起こらなかったため、反応が進行していないと判断して、実験を中断した。【0033】【比較例5】攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた2L容ガラス製フラスコに、予め45℃に加熱したビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物300部、三弗化ホウ素エチルエーテル1.41部を仕込み、65℃まで加熱した。70℃以上にならない様に、時間をかけてエピクロロヒドリン153部(ジオールの水酸基1個当たり1.1当量)を滴下した。65〜70℃に保ちながら0.5時間熟成を行った後、45℃まで冷却した。分離溶媒としてイソブタノール454gを添加し、攪拌混合した後、25%水酸化ナトリウム水溶液235部を加え45℃に加熱して1時間激しく攪拌した。室温まで冷却して水相を分離除去し、残った油相を水で数回洗浄した後、減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン、水、溶媒のイソブタノールを除去し、目的としたビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物ジグリシジルエーテル367.7部が得られた(収率94%、選択率81.4%)。得られた製品のWPEは326であった。一般分析結果を表−1に示す。【0034】【表1】【0035】表−1から次のことがわかる。酸性触媒が四塩化錫触媒単独の比較例1、比較例3及び比較例4とから、エピクロロヒドリン反応率が低いことから、反応は遅く途中で停止するか、全く進行しない。また、三弗化ホウ素・エチルエーテル触媒単独の比較例2及び比較例5では、エピクロロヒドリン反応率が高いことから、反応は速いが、選択率が低い。三弗化ホウ素・エチルエーテルと四塩化錫とを併用した、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4では、エピクロロヒドリン反応率が高いことから反応が速く、また、選択率も高いことがわかる。実施例1及び実施例2から、モル比([エピクロロヒドリン]/[1,6−ヘキサンジオール])を上げると粘度が高くなることがわかるが、比較例2と実施例2とを比較してみると、同じモル比でも実施例2の方が、粘度が低いことがわかる。さらに、実施例3と比較例3とから、四塩化錫触媒単独でエピクロロヒドリンの付加反応が停止した時点で、三弗化ホウ素・エチルエーテルを添加すれば、通常のエピクロロヒドリンの付加反応が進行し、四塩化錫を添加すれば、所望としない副反応(重合反応)が進行することがわかる。【0036】希釈剤としての性能評価【実施例5】実施例1で得られた1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(以下、「希釈剤」と称する。)、エポキシ樹脂(JER社製、商品名:E−828)及び硬化剤(JER社製、商品名:B−002W)を、それぞれ所定量配合し、後記の手順に従って、希釈剤としての性能評価▲1▼〜▲5▼を行った。配合量を表−2に、評価結果を表−3に示す。【0037】【実施例6】実施例2で得られた希釈剤を用いたほかは、実施例5と同様に性能評価を行った。配合量を表−2に、評価結果を表−3に示す。【0038】【実施例7】実施例3で得られた希釈剤を用いたほかは、実施例5と同様に性能評価を行った。配合量を表−2に、評価結果を表−3に示す。【0039】【比較例6】比較例2で得られた希釈剤を用いたほかは、実施例5と同様に性能評価を行った。配合量を表−2に、評価結果を表−3に示す。【0040】【比較例7】ブランクとして、希釈剤を用いないほかは、実施例5と同様に性能評価を行った。配合量を表−2に、評価結果を表−3に示す。【0041】【表2】【0042】性能評価手順▲1▼1000mPa・s希釈率エポキシ樹脂(JER社製、商品名:E−828)に所定量の希釈剤を混合し、希釈割合の異なる2〜3種類の希釈樹脂(エポキシ樹脂と希釈剤との混合物)を調製する。調製された希釈樹脂の粘度を測定し、粘度−希釈率のグラフを作製する。作製されたグラフより、粘度が1000mPa・sとなるときの希釈率(希釈樹脂量に対する希釈剤量の比率:単位%)を求める。下記▲2▼〜▲5▼項目の性能評価においては、この希釈率の値に基づいて、粘度が1000mPa・sの希釈樹脂を混合調製し、各項目の測定及び対比を行った。【0043】▲2▼硬化特性(ポットライフ)希釈樹脂(1000mPa・sに調整した樹脂)及び硬化剤(JER社製、商品名:B−002W)を、それぞれ23℃の恒温槽で1日放置する。ディスポカップに、希釈樹脂と硬化剤を、それぞれ所定量はかりとり、ガラス棒で約1分間激しく撹拌し、樹脂中央部に熱伝対をセットする。撹拌開始時を0時間として、硬化樹脂の温度変化を測定する。温度が最も高くなった時点の温度を最高発熱温度、その時の時間を最高発熱時間として表示する。【0044】▲3▼曲げ強さ・曲げ弾性率[試験片の準備]試験片はJIS K6911に準拠して作製した。 [曲げ強さ、曲げ弾性率の測定]試験片の幅及び厚さを、マイクロメーターで0.01mmの単位まで4〜5ヶ所測定し、その平均値を試験片の幅W、厚さhとして記録する。一方、引張圧縮試験器SV−201(今田製作所製)を用い、テストスピード2mm/minで測定し、この時の荷重の変化を記録し、最大荷重Pと初期の荷重の変化(傾き)Fを読みとり、下記の式より、曲げ強さ及び曲げ弾性率を算出する。・曲げ強さ σ=(3PL)/(2Wh2)・曲げ弾性率E=(L3×F)/(4Wh3)ここで、・σ=曲げ強さ (MPa)・E=曲げ弾性率 (MPa)・P=最大荷重 (N)・F=傾き (N/mm)・L=支点間距離 (64mm)・W=試験片の幅 (mm)・h=試験片の厚み (mm)を意味する。【0045】▲4▼ガラス転移温度(Tg)所定量の希釈樹脂(1000mPa・sに調整した樹脂)と硬化剤を混ぜ、約1分間撹拌する。この撹拌混合物約1mgを計り取り、DSC測定用のアルミニウムパンに容れ、DSC測定用のアルミニウムカバーで蓋をし、サンプルシーラーにて密封する。この密封されたサンプルパンごと、23℃に調整された恒温槽内で24時間硬化させ、次いで、80℃に調整された恒温槽内で更に3時間硬化する。硬化物について、示差走査熱量計DSC20(セイコー電子工業製)を用いて、ガラス転移温度を測定する。測定条件は、−40〜160℃(昇温速度:20℃/min)で行った。【0046】▲5▼引張強さ[試験片の準備]試験片はJIS K6911に準拠して作製した。 [引張強さの測定]試験片の幅及び厚さをマイクロメーターで0.01mmの単位まで4〜5ヶ所測定し、その最小値を試験片の幅W、厚さtとして記録する。一方、引張圧縮試験器SV−201(今田製作所製)を用い、テストスピード2mm/minで測定する。この時の荷重の変化を記録し、最大荷重P(試験片が破断したときの荷重)を読みとり、次式より、引張強さを算出する。・引張強さ σP=P/A=P/(t×W)ここで、・σP =引張強さ (MPa)・P=最大荷重 (N)・A=試験片の最小断面積 (mm2)・t=試験片の厚さ (mm)・W=試験片の幅 (mm)を意味する。【0047】【表3】【0048】表−3から次のことがわかる。実施例5及び実施例6と比較例6とを比較すると、本発明で得られる多価アルコールポリグリシジルエーテルは、1000mPa・s希釈率が低く、希釈効果が高いことがわかる。他の性能、ポットライフや硬化物特性についても低下することがないことがわかる。また、実施例6と実施例7とから、四塩化錫触媒単独でエピクロロヒドリンの付加反応を開始し、反応が停止した時点で、三弗化ホウ素・エチルエーテルを添加し、エピクロロヒドリンの付加反応を進行させて得られた製品も、混合触媒で得られた製品と同等の性能を示すことがわかる。【0049】【発明の効果】本発明によれば、高選択率で、低粘度な多価アルコールポリグリシジルエーテルが得られる。また、本発明で得られる多価アルコールポリグリシジルエーテルは、1000mPa・s希釈率が低く、希釈効果が高いだけでなく、ポットライフや硬化物特性についても低下することがないので、希釈剤としての利用価値も高い。 多価アルコールとエピハロヒドリンとを、酸性触媒の存在下に反応させてハロヒドリンエーテルを製造し、次いで、脱ハロゲン化水素剤と反応させて多価アルコールポリグリシジルエーテルを製造する方法において、該酸性触媒として三弗化ホウ素・コンプレックスと四塩化錫との混合物を使用することを特徴とする多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法。 三弗化ホウ素・コンプレックスが三弗化ホウ素・エチルエーテルコンプレックスである請求項1に記載の多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法。 三弗化ホウ素・コンプレックス:四塩化錫の混合モル比が2:1〜1:4であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法。 該酸性触媒混合物の使用量が、多価アルコールに対して、0.1〜6モル%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法。 多価アルコールの水酸基1個当たり、0.9〜1.5当量のエピハロヒドリンを使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法。 多価アルコールが二価アルコールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法。 多価アルコールの炭素数が5以上であることを特徴とする請求項6に記載の多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法。 多価アルコールが1,6−ヘキサンジオールであることを特徴とする請求項7に記載の多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法。 多価アルコールがビスフェノールAエチレンオキサイド付加物であることを特徴とする請求項7に記載の多価アルコールポリグリシジルエーテルの製造方法。