タイトル: | 特許公報(B2)_経血又は膣分泌物採取器具、キット及び方法 |
出願番号: | 2001179177 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 33/48,G01N 1/10 |
宮川 英二 水越 幹雄 JP 4534388 特許公報(B2) 20100625 2001179177 20010613 経血又は膣分泌物採取器具、キット及び方法 富士レビオ株式会社 306008724 谷川 英次郎 100088546 宮川 英二 水越 幹雄 20100901 G01N 33/48 20060101AFI20100812BHJP G01N 1/10 20060101ALI20100812BHJP JPG01N33/48 SG01N1/10 V G01N 33/48 G01N 1/10 国際公開第00/65347(WO,A2) 国際公開第94/13209(WO,A1) 特表平10−504205(JP,A) 8 2002372527 20021226 9 20080423 淺野 美奈 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、経血又は膣分泌物採取器具、キット及び方法に関する。【0002】【従来の技術】従来、生活習慣病、癌、感染症等の疾患を診断する方法として、血液から分離した血清、唾液、各種体液等が用いられてきた。血清の採取には、採血管で採血した血液を遠心分離する方法や、唾液や体液の取得には綿棒、ろ紙等が用いられてきた。近年、成人女性において、性器ヘルペス、クラミジア、梅毒など性感染症に関連する疾患が広まり、罹患率の増加や低年齢化が大きな社会問題にもなっている。また、子宮ガン、卵巣ガン、子宮筋腫、子宮頚ガンなど、女性固有のガン疾患も増加する傾向が見られ、特に若年発症者の増加が報告されている。従来の診断法では血清のほか、感染症の診断には患部の塗抹した標本を用いることが行われていた。【0003】【発明が解決しようとする課題】採血管による採取は、採取者や採取場所が限定され、採取には煩雑な手順を必要としていた。また、塗抹標本を用いる方法は、検体の採取に精神的な苦痛を伴い、低年齢の女性では使用への障害にもなっている。そこで、性器ヘルペス、クラミジア、梅毒など感染症患者の拡大や女性固有のガン疾患患者の増加とともに、その早期診断を行うための測定法が求められていた。【0004】従って、本発明の目的は、女性患者の精神的な苦痛を伴うことなく、簡便に経血及び/又は膣分泌物を採取することができる手段を提供することである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者等は鋭意研究を行った結果、経血及び/又は膣分泌物を採取し、その中から血液、膣分泌液、細胞又は細胞細片を検体として各種疾患を診断することができることを見出し、さらに、経血及び/又は膣分泌物の採取に適した器具の構造に想到し、本発明を完成した。【0006】 すなわち、本発明は、経血及び/又は膣分泌物が付着する材料から成る経血及び/又は膣分泌物採取部材を少なくとも含み、経血吸収部材を具備する生理用ナプキン又はタンポンの形態にあり、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材は、前記経血吸収部材に接触する位置に配置され、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材の端部が外部に突出しており、該端部を指で引っ張ることにより、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材を前記器具から離脱させることができる、診断に供される経血及び/又は膣分泌物の採取器具を提供する。また、本発明は、上記本発明の採取器具と、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材に付着された経血及び/又は膣分泌物を、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材から離脱させる液とを少なくとも含む、経血及び/又は膣分泌物の採取キットを提供する。【0007】 上記の通り、本発明の経血及び/又は膣分泌物の採取器具は、診断に供される経血及び/又は膣分泌物の採取に用いられるものであり、経血及び/又は膣分泌物が付着する材料から成る経血及び/又は膣分泌物採取部材(以下、単に「採取部材」)を少なくとも含む。本発明の経血及び/又は膣分泌物の採取器具は、経血吸収部材を具備する生理用ナプキン又はタンポンの形態にあり、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材は、前記経血吸収部材に接触する位置、特に好ましくは、経血吸収部材の表面上(膣と接する側)に配置される。この場合の生理用ナプキン又はタンポンは、市販されている周知の構造を有するものであってよい。採取部材の形状は何ら限定されるものではないが、扁平な細長い長方形状のもの、紐や糸のような線状のものを好ましく採用することができる。採取部材の材質は、経血及び/又は膣分泌物が付着するものであれば何ら限定されるものではないが、セルロース、セルロース誘導体などの天然繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維や、多孔性の天然又は合成樹脂などから形成されるろ紙、不織布などの吸水性のあるものを好ましく用いることができ、他のポリマーシートとラミネートして製造することもできる。採取部材は、その端部が採取器具の外側に突出して指でつまめるようになっており、この端部を指でつまんで引くことにより採取部材を取り出すことが可能になっている。なお、後で図面に基づいて詳細に説明するように、生理用ナプキンやタンポンは、経血吸収部材の表面が、水透過性の表面シートで被覆されている。この場合、採取部材は、好ましくは該表面シートと経血吸収部材の間に挿入される。また、好ましくは、採取部材を被覆する、表面シートの領域の周縁部にはミシン目が設けられており、前記端部を指で引っ張ると該ミシン目が破れて採取部材が、前記表面シートの一部と共に取り出される構造になっていることが好ましい。採取部材が表面シートの一部と共に取り出せる構造は、細胞診断を行う場合に特に好ましい。細胞が、主として表面シート上に付着するからである。なお、採取部材は、経血吸収部材及び/又は表面シートに接着剤等により物理的に固定してもよい。【0008】以下、図面に基づいて本発明の好ましい具体例について説明する。図1には、生理用ナプキンの形態にある本発明の採取器具の一例を模式的に示し、図2には図1中のA-A線断面図を示す。図1に示すように、この具体例の採取器具1は、通常の生理用ナプキンと同様に、水不透過性シート4と、該水不透過性シート4上に設けられた吸水性の材料から成る経血吸収層3と、該経血吸収層3上に設けられ、その周縁部が前記水不透過性シートに結合された水透過性の表面シート2とを具備する。これは市販されている周知の生理用ナプキンの構造である。経血吸収層3は、例えば、吸収紙、パルプ及び吸収性ポリマーを積層して構成することができ、水不透過性シート4は例えばポリエチレンフィルム、表面シート2は例えばセルロース繊維から成る水透過性の不織布で形成することができる。【0009】経血吸収層3の中央部表面と、表面シート2の間に細長い長方形状の採取部材5が挿入されている。採取部材5は、例えばセルロース不織布で構成することができ、そのサイズは特に限定されないが、例えば幅10mm、長さ50mm、厚さ3mm程度である。採取部材5の1つの端部6は、表面シート2に設けられた透孔を介して、採取器具1の外部に突出しており、該端部6を指でつまめるようになっている。そして、採取部材5を被覆する、表面シート2の領域の周縁部にはミシン目7が設けられており、前記端部6を指で引っ張ると該ミシン目が破れて採取部材を、これを被覆する表面シートの一部と共に取り出すことができるようになっている。【0010】図3には、本発明の他の好ましい形態であるタンポンの形態にある具体例を示し、図4には図3におけるB-B線断面図を示す。タンポンの形態にある採取器具10は、例えばセルロース繊維から成る略円筒状の経血吸収部材15と、経血吸収部材15に連結された、可撓性の線状体である取り出し紐12と、経血吸収部材15を囲包する、例えばセルロース繊維から成る水透過性の不織布から成る表面シート11とを具備する。これは市販の周知のタンポンの構造である。【0011】経血吸収部材15の一部の領域と表面シート11との間には、採取部材13が挿入されている。採取部材13は、例えばセルロース不織布で構成することができ、そのサイズは特に限定されないが、例えば幅10mm、長さ50mm、厚さ3mm程度である。採取部材5の1つの端部14は、タンポン状の採取器具10の基端部端面から外部に突出しており、該端部14を指でつまめるようになっている。そして、採取部材13を被覆する、表面シート2の領域の周縁部にはミシン目16が設けられており、前記端部14を指で引っ張ると該ミシン目が破れて採取部材を、これを被覆する表面シートの一部と共に取り出すことができるようになっている。【0012】上記した本発明の経血及び/又は膣分泌物の採取器具は、女性患者が膣部に当て又は膣内に挿入することにより着用する。着用の態様は、通常の生理用ナプキンやタンポンと同じである。ある程度の時間着用すると、採取部材に経血及び/又は膣分泌物が付着ないしは吸収される。次に、採取部材の端部を指でつまんで引っ張ることにより、採取部材を回収する。特に、図1〜図4に基づいて説明した本発明の好ましい具体例では、表面シートがミシン目で破れて採取部材と共に回収されるので、表面シートに多く付着する細胞を効率良く回収することができる。【0013】採取部材に付着された経血及び/又は膣分泌物は、そのまま検体として診断(特に直接観察)に供され(特に細胞診断)、あるいは、採取部材から経血及び/又は膣分泌物を離脱させる液中に浸漬することにより、経血及び/又は膣分泌物を緩衝液中に回収し、検体とすることができる。このような検体は、血液のほか、組織に由来する各種成分(細胞、体液、蛋白質、核酸、糖鎖、ペプチド、化学物質)を含有している。疾患マーカーとしては、例えば女性生殖器疾患関連マーカー、癌疾患関連マーカー、感染症マーカーなどを挙げることができる。このマーカーとして、検体中の抗原、抗体、染色体、生体代謝産物、ホルモン、酵素、細胞数、細胞形態、遺伝子、細菌、原虫の測定を行うことができる。女性生殖器疾患としては、例えば子宮癌、卵巣癌、子宮頚癌、卵巣膿腫、子宮筋腫、子宮内膜症、胎盤剥離等を挙げることができる。感染症としては、例えばクラミジア、膣トリコモナス症、膣カンジダ症、梅毒、子宮頚炎起因菌、卵管卵巣炎起因菌、骨盤腹膜炎起因菌、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、HIV感染、HTLV感染、HBV感染、HCV感染、風疹、B群溶連菌性器ヘルペス、パピローマウイルス感染等を挙げることができる。【0014】女性生殖器疾患や感染症のマーカーの測定には、経血及び/又は膣分泌物中から採取した血液、膣分泌液を検体として、周知の生化学試薬、免疫測定用試薬などの検査試薬を用いることができる。また、採取した細片に付着した細胞又は細胞細片は周知の細胞診断の材料として使用することができる。【0015】なお、上記液としては、体液や組織由来の検体の抽出や希釈に用いられている周知の緩衝液を好ましく用いることができる。また、長期間保存する場合には、防腐剤を添加しても良い。このような液は、取り外し可能な栓のついた容器に収容することが好ましい。【0016】以下に、実施例として、経血中に含まれる抗原若しくは抗体、又は膣分泌物中に含まれる細胞により各種疾患の診断が可能であったことを具体的に示す。【0017】実施例1 子宮頚癌の細胞測定擦過細胞診により子宮頚癌と診断された閉経前女性6人、及び健常女性6人より、経血を採取した。経血の採取は図1に示す生理用ナプキンの形態にある採取器具1を生理期間中の患者に装着し、経血を吸着させた。経血を吸収した採取部材5を取り出し、リン酸生理緩衝液(PBS)に浸漬して、経血を回収した。経血から細胞成分を遠心分離により分離し、スライドグラス上にスメアを作製し、95%エタノールに30分浸漬し、パパニコウ染色により細胞診を実施した。結果を表1に示す。表に示すとおり、経血中に含まれる細胞を用いて子宮頚癌の細胞診が可能であった。【0018】【表1】表1【0019】実施例2 経血を用いクラミジア抗原の検出経血の採取は、図3に示す採取用具10を用いて採取した。経血を吸収した採取用具から採取部材13を取り出し、PBSに浸漬して経血を回収し検体として試験に供した。この経血を検体としてクラミジア抗原の検出をクラミジア抗体を用いた間接蛍光抗体法(IF)及びPCRにより検討した。間接蛍光抗体法は経血より細胞成分を分離し、スライドグラスに固定し、抗クラミジアマウスモノクローナル抗体を反応させ、蛍光標識した抗マウス抗体を反応させ陽性細胞を検出した。PCRは経血よりDNAを抽出後、アンプリコアクラミジア(ロッシュ社)製を用いて測定した。結果を図2に示す。PCRとIFで良い相関を示し、経血中の感染細胞の検出及び感染因子の遺伝子検出が可能であった。【0020】【表2】表2【0021】実施例3 経血中の抗体測定経血の採取は、図3に示す採取用具10を用いて採取した。経血を吸収した採取用具13から採取部材を取り出し、PBSに浸漬して経血を回収し検体として試験に供した。この経血中の抗体と循環血中抗体価を比較した。HBs抗体、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)抗体について比較検討した。循環血血清を用いた試験においてHBs抗体、HCMV抗体陽性であった女性5名について、経血中のHBs抗体価、HCMV抗体価を測定した。HBs抗体価はセロディHBs抗体(富士レビオ社製)及びHCMV抗体はセロディアCMV(富士レビオ社製)を用いて測定した。その結果を表3に示す。表に示すように経血と循環血と抗体価はほぼ相関を示し、経血を用いて抗体測定が可能であった。【0022】【表3】表3【0023】【発明の効果】本発明により、女性患者の精神的な苦痛を伴うことなく、簡便に経血及び/又は膣分泌物を採取することができる手段が提供された。本発明の採取器具によれば、女性患者が任意の場所で独力で経血及び/又は膣分泌物を採取することができるので、女性患者の精神的な苦痛がなく、また、採血のための専門家(医師、看護婦)も不要である。従って、本発明は、女性患者の各種感染症や癌の診断に大いに貢献するものと期待される。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の好ましい一具体例である、生理用ナプキンの形態にある採取器具を模式的に示す図である。【図2】図1のA−Aにおける断面図である。【図3】本発明の好ましい一具体例である、タンポンの形態にある採取器具を模式的に示す図である。【図4】図3のB−Bにおける断面図である。【符号の説明】1 生理用ナプキン状の採取器具2 表面シート3 経血吸収層4 水不透過性シート5 採取部材6 採取部材の端部7 ミシン目10 タンポン状の採取器具11 表面シート12 取り出し紐13 採取部材14 採取部材の端部15 経血吸収部材16 ミシン目 経血及び/又は膣分泌物が付着する材料から成る経血及び/又は膣分泌物採取部材を少なくとも含み、経血吸収部材を具備する生理用ナプキン又はタンポンの形態にあり、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材は、前記経血吸収部材に接触する位置に配置され、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材の端部が外部に突出しており、該端部を指で引っ張ることにより、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材を前記器具から離脱させることができる、診断に供される経血及び/又は膣分泌物の採取器具。 前記経血及び/又は膣分泌物採取部材は、前記経血吸収部材の表面上に配置される請求項1記載の器具。 水不透過性シートと、該水不透過性シート上に設けられた吸水性の部材から成る経血吸収層と、該経血吸収層上に設けられ、その周縁部が前記水不透過性シートに結合された水透過性の表面シートとを少なくとも具備する生理用ナプキンの形態にあり、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材が、前記経血吸収層の一部領域上に、前記経血吸収層と前記表面シートの間に挿入されている請求項1又は2に記載の器具。 前記経血及び/又は膣分泌物採取部材の端部が前記表面シートの外部に突出しており、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材を被覆する、前記表面シートの領域の周縁部にはミシン目が設けられており、前記端部を指で引っ張ると該ミシン目が破れて前記経血及び/又は膣分泌物採取部材が、前記表面シートの一部と共に取り出される請求項3記載の器具。 経血吸収部材と、該経血吸収部材に連結された可撓性の線状体と、前記経血吸収部材を囲包する、水透過性の表面シートとを少なくとも具備するタンポンの形態にあり、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材が、前記経血吸収部材の一部領域上に、前記経血吸収部材と前記表面シートの間に挿入されている請求項1又は2に記載の器具。 前記経血及び/又は膣分泌物採取部材の端部が前記採取器具の外部に突出しており、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材を被覆する、前記表面シートの領域の周縁部にはミシン目が設けられており、前記端部を指で引っ張ると該ミシン目が破れて前記経血及び/又は膣分泌物採取部材が、前記表面シートの一部と共に取り出される請求項5記載の器具。 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の器具と、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材に付着された経血及び/又は膣分泌物を、前記経血及び/又は膣分泌物採取部材から離脱させる液とを少なくとも含む、経血及び/又は膣分泌物の採取キット。 前記液は緩衝液である請求項7記載のキット。